(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面にベルト長手方向又はベルト幅方向に延在する複数の凸部を有する圧縮層と、前記圧縮層における前記一方の面と反対側の他方の面において前記ベルト長手方向に延在する心線とを含む伝動ベルトの製造方法において、
前記圧縮層を含む環状のスリーブを形成する、スリーブ形成工程と、
前記スリーブ形成工程の後、前記スリーブにおける前記圧縮層の前記一方の面に前記複数の凸部を形成する、凸部形成工程と、
前記凸部形成工程の後、前記スリーブを加硫する、加硫工程と、を備え、
前記スリーブは、前記心線をさらに含み、
前記スリーブ形成工程は、前記圧縮層の前記他方の面に前記心線を前記加硫工程における加硫時のピッチ周長に一致するように配置する、心線配置工程を含み、
前記凸部形成工程は、前記複数の凸部に対応する複数の溝が形成された溝形成面を有する凸部形成部材の前記溝形成面を、前記圧縮層の前記一方の面に該当する前記スリーブの外周面に押圧することにより行うことを特徴とする、伝動ベルトの製造方法。
前記スリーブ形成工程において、円筒状のドラムの外周面上に、前記ドラムの前記外周面と前記圧縮層の前記他方の面とが前記心線を挟んで対向するように、前記スリーブを形成し、
前記凸部形成工程は、前記スリーブを前記ドラムの前記外周面に装着した状態で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
前記凸部形成工程は、前記スリーブの前記外周面に対する前記溝形成面の押圧位置を変更しながら行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成であるため、心線の整列状態を良好に保持し難く、さらに、心線の材料に高弾性率のものを用い難い等、心線の材料に制約が生じ得る。また、特許文献1に記載の方法において、第1スリーブと第2スリーブとの間隙を小さくして、第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときの心線の伸び量を抑えることも考えられる。しかし、第1スリーブに外型からの浮き上がりが生じている場合に、上記間隙が小さいと、第2スリーブを形成するとき第2スリーブが第1スリーブに接触し、スリーブ間の擦れや捲れが生じ得る。上記間隙はベルト周長が短くなるほど小さくなるため、ベルト周長が短くなるほど上記の問題は顕著化する。したがって、特許文献1に記載の方法では、ベルト周長にも制約が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、材料のロスを抑制することができると共に、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じ難い、伝動ベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観点によると、一方の面にベルト長手方向又はベルト幅方向に延在する複数の凸部を有する圧縮層と、前記圧縮層における前記一方の面と反対側の他方の面において前記ベルト長手方向に延在する心線とを含む伝動ベルトの製造方法において、前記圧縮層を含む環状のスリーブを形成する、スリーブ形成工程と、前記スリーブ形成工程の後、前記スリーブにおける前記圧縮層の前記一方の面に前記複数の凸部を形成する、凸部形成工程と、前記凸部形成工程の後、前記スリーブを加硫する、加硫工程と、を備え、前記スリーブは、前記心線をさらに含み、前記スリーブ形成工程は、前記圧縮層の前記他方の面に前記心線を
前記加硫工程における加硫時のピッチ周長に一致するように配置する、心線配置工程を含み、前記凸部形成工程は、前記複数の凸部に対応する複数の溝が形成された溝形成面を有する凸部形成部材の前記溝形成面を、前記圧縮層の前記一方の面に該当する前記スリーブの外周面に押圧することにより行うことを特徴とする、伝動ベルトの製造方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、研削によらずに凸部形成を行う構成であるため、材料のロスを抑制することができる。また、特許文献1に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じ難い。
【0008】
前記伝動ベルトは、前記圧縮層とで前記心線を挟む伸長層をさらに含むものであり、前記スリーブは、前記伸長層をさらに含み、前記スリーブ形成工程は、前記圧縮層とで前記心線を挟むように前記伸長層を配置する、伸長層配置工程をさらに含んでよい。この場合、心線が伸長層と圧縮層との間に埋没された状態で凸部形成を行うことで、心線の整列状態をより確実に良好に保持することができる。
【0009】
前記スリーブ形成工程において、円筒状のドラムの外周面上に、前記ドラムの前記外周面と前記圧縮層の前記他方の面とが前記心線を挟んで対向するように、前記スリーブを形成し、前記凸部形成工程は、前記スリーブを前記ドラムの前記外周面に装着した状態で行ってよい。この場合、スリーブ形成工程と凸部形成工程とにおいて工具(ドラム)を共通化したことで、凸部形成用の工具を別途用意する必要がなく製造コストを低減することができると共に、作業効率が向上する。
【0010】
前記凸部形成工程は、前記スリーブの前記外周面に対する前記溝形成面の押圧位置を変更しながら行ってよい。この場合、比較的小さな凸部形成部材を用いて凸部形成を容易に行うことができる。
【0011】
前記凸部形成部材は、前記溝形成面に該当する内周面が前記スリーブの前記外周面を包囲する、環状の部材であり、前記凸部形成工程は、前記スリーブの前記外周面を前記内周面で包囲した状態で行ってよい。この場合、凸部形成を容易に行うことができる。
【0012】
前記凸部形成部材は、少なくとも前記溝の部分がゴムで構成されており、前記ゴムは、前記ベルト幅方向に対応する前記凸部形成部材の軸方向に配向された短繊維を含んでよい。この場合、ゴムの軸方向に関する収縮が抑制され、ベルト幅方向に関する凸部のピッチずれを防止することができる。これにより、加硫工程においてスリーブが装着される部材にスリーブを確実に装着することができ、ひいては、製造される伝動ベルトの寸法精度を向上させることができる。また、ゴムの軸方向に関する経時的な収縮も抑制されるため、寸法精度等の観点から判断される凸部形成部材の使用可能回数が増加し、経済的である。
【0013】
前記心線がアラミド繊維から構成されてよい。アラミド繊維は、高強度、高弾性率(伸び難い)等の特性を有しており、心線をアラミド繊維で構成することで、伝動ベルトの薄型化、曲げ剛性の低減化等を実現することができ、伝動ベルトを高負荷のシステムに適用することができる。また、アラミド繊維は高弾性率で伸び難いが、本発明は、特許文献1に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線の材料としてアラミド繊維を好適に用いることができる。
【0014】
前記伝動ベルトは、前記一方の面において前記複数の凸部を被覆する編布からなる被覆層を有し、前記凸部形成工程は、前記凸部形成部材と前記圧縮層との間に前記被覆層を介在させた状態で、前記凸部形成部材の前記溝形成面を前記スリーブの前記外周面に押圧することにより行ってよい。この場合、被覆層により、通気性が良くなり空気の残留を抑制できるので、エア抜き効果が向上する(真空引きを不要にすることもできる)。また、凸部形成工程後に凸部形成部材をスリーブから容易に剥離することができる。さらに、凸部の形成状態が安定すると共に、凸部表面の摩擦係数が下がるため、加硫工程においてスリーブが装着される部材へのスリーブの装着性が向上する。また、ベルトの表面特性(摩擦係数等)の安定化を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、研削によらずに凸部形成を行う構成であるため、材料のロスを抑制することができる。また、特許文献1に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じ難い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本発明の第1実施形態に係る製造方法は、一方の面にベルト長手方向にそれぞれ延在する複数のリブ(凸部)を有するVリブドベルトを製造する方法であって、
図1に示すように、スリーブ形成工程S1と、凸部形成工程S2と、加硫工程S3とを含む。
【0019】
スリーブ形成工程S1では、凸部形成工程S2でも用いられるドラム10を用いて、環状のスリーブ1を形成する。
【0020】
ドラム10は、
図2に示すように、円筒状であり、溝のない平滑な外周面10xを有する。ドラム10は、一般構造用圧延鋼材(SS400等)や炭素鋼(S45C、S55C等)を機械加工して形成されたものであり、外周面10xはハードクロムメッキ等で保護されてよい。
【0021】
スリーブ1は、
図4に示すように、凸部形成工程S2において一方の面に複数の凸部1vが形成される圧縮層1aと、圧縮層1aにおける当該一方の面と反対側の他方の面においてベルト長手方向に延在する心線1bと、圧縮層1aとで心線1bを挟む伸長層1cと、複数の凸部1vを被覆する被覆層1dとを含む。圧縮層1aは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ミラブルウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム等のゴム成分を含むゴム組成物から構成されてよい。心線1bは、アラミド繊維から構成されている。伸長層1cは、圧縮層1aと同様、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ミラブルウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム等のゴム成分を含むゴム組成物から構成されてよく、さらに繊維補強が施されてよい。被覆層1dは、編布からなり、例えば、ポリエステル系複合糸とセルロース系天然紡績糸(例えば綿糸)とで編成されたものであってよい。
【0022】
スリーブ形成工程S1では、先ず、
図4(a)に示すように、ドラム10の外周面10xに離型紙2(例えば、紙等からなる基材の両面にシリコーン離型剤をコーティングしたもの)を配置し、その上に伸長層1cを巻き付け、さらにその上に心線1bをドラム10の周方向(以下、単に「周方向」という場合がある。また、当該「周方向」は、ベルト長手方向に相当する。)に螺旋状にスピニングし、さらにその上に圧縮層1aと被覆層1dとを順次巻き付けて、スリーブ1を形成する。換言すると、スリーブ形成工程S1は、圧縮層1aの他方の面に心線1bを配置する心線配置工程S1aと、圧縮層1aとで心線1bを挟むように伸長層1cを配置する伸長層配置工程S1bとを含む。このとき心線1bは、加硫時のピッチ周長に一致するように配置される。
【0023】
スリーブ形成工程S1の後に行われる凸部形成工程S2では、ドラム10の外周面10xにスリーブ1を装着した状態で、ドラム10を移動させて
図2及び
図3に示す凸部形成装置100に組み込み、凸部形成装置100を用いて、スリーブ1の外周面1x(即ち、スリーブ1における圧縮層1aの一方の面)に複数の凸部1vを形成する。
【0024】
凸部形成装置100は、スリーブ形成工程S1でも用いられるドラム10と、ドラム10を支持する支持部15と、支持部15がドラム10を支持しつつ旋回するように駆動する駆動部16と、複数の凸部1vに対応する複数の溝20vが形成された溝形成面20xを有する凸部形成部材20と、ドラム10を挟んで凸部形成部材20と対向するように配置された反力部材30と、凸部形成部材20を加熱するヒータ40と、凸部形成部材20及び反力部材30の外側に配置された押圧手段50と、押圧手段50を支持する一対のフレーム60と、上記各構成要素を支持する架台70とを含む。
【0025】
支持部15は、ドラム10の下面を支持する円盤状のベース11と、ベース11の上面中心部から上方に突出した上軸12と、ベース11の下面中心部から下方に突出した下軸13とを含む。上軸12は、ドラム10の下壁中央に形成された孔を貫通し、ドラム10の内部に挿入されている。下軸13は、架台70を貫通し、その下端に駆動部16が設けられている。ベース11及び下軸13は、それぞれ支持ロール11a及び軸受け13aを介して、架台70に回転可能に支持されている。
【0026】
凸部形成部材20は、ドラム10の軸方向(以下、単に「軸方向」という場合がある。また、当該「軸方向」は、ベルト幅方向に相当する。)に関してドラム10と略同じ長さを有すると共に、周方向に関してドラム10よりも短い、ドラム10の外周面10xに沿って湾曲した板状の部材である。凸部形成部材20は、炭素鋼(S55C等)等を機械加工して形成されたものであり、その内周面である溝形成面20xはハードクロムメッキ等で保護されてよい。
【0027】
反力部材30は、基部31と、一対の当接部32とを含む。基部31は、軸方向に関してドラム10と略同じ長さを有すると共に、周方向に関してドラム10よりも短い、矩形状の平板部材である。一対の当接部32は、基部31におけるドラム10の外周面10xと対向する面の軸方向両端近傍に固定されており、ドラム10の外周面10xにおける軸方向両端近傍(スリーブ1が配置されていない部分)にそれぞれ当接している。一対の当接部32の内面(ドラム10の外周面10xに当接する面)は、平坦であってもよいし、外周面10xに沿って湾曲していてもよい。反力部材30のうち、一対の当接部32のみがドラム10の外周面10xと接触し、基部31はドラム10の外周面10xと接触していない。また、反力部材30の基部31及び一対の当接部32はいずれも、スリーブ1と接触していない。基部31は炭素鋼(例えばS55C)等から形成され、一対の当接部32は硬質な樹脂材料(例えばナイロン樹脂)等から形成されてよい。
【0028】
ヒータ40は、発熱体(ニクロム線)を絶縁体(マイカ(雲母))で挟み込んだプレートヒータであり、凸部形成部材20の外周面に配置されている。
【0029】
押圧手段50は、凸部形成時に溝形成面20xをスリーブ1の外周面1xに押圧するのに用いられるものであり、凸部形成部材20及び反力部材30のそれぞれに対して1組ずつ設けられた上下一対のシリンダ(空圧シリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等)を含む。
【0030】
一対のフレーム60は、架台70上に立設されており、凸部形成部材20及び反力部材30それぞれの外側において、押圧手段50のシリンダを支持している。
【0031】
凸部形成工程S2では、先ず、
図4(a)に示すように、ドラム10の外周面10xと凸部形成部材20の溝形成面20xとをスリーブ1を挟んで対向するように配置する。このとき、ドラム10を挟んで凸部形成部材20と反対側では、
図2及び
図3(a),(b)に示すように、反力部材30の一対の当接部32がドラム10の外周面10xと当接している。そして、ヒータ40で加熱された状態の凸部形成部材20を押圧手段50で押圧し、
図4(b)に示すように、凸部形成部材20と圧縮層1aとの間に被覆層1dを介在させた状態で、溝形成面20xをスリーブ1の外周面1xに押圧する。このとき、ドラム10を挟んで凸部形成部材20と反対側では、
図2及び
図3(a),(b)に示すように、押圧力によってドラム10が移動しないように反力部材30がドラム10を支持している。これにより、スリーブ1の外周面1xの一部(溝形成面20xで押圧された部分)に凸部1vが形成される。
【0032】
その後、押圧手段50による押圧を解除し、凸部形成部材20及び反力部材30をスリーブ1の外周面1xから離隔させる(
図4(c)参照)。そして、駆動部16により支持部15をドラム10と共に周方向に所定角度(溝形成面20xに相当する角度)旋回させ、スリーブ1の外周面1xにおいて凸部1vが未だ形成されていない部分と溝形成面20xとが対向する状態とし、再び溝形成面20xをスリーブ1の外周面1xに押圧する。
【0033】
上記のような動作を繰り返し、スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vを形成する。即ち、凸部形成工程S2は、スリーブ1の外周面1xに対する溝形成面20xの押圧位置を変更しながら行う。
【0034】
そして、スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vが形成された後、ドラム10からスリーブ1を取り出す。例えば、
図4(c)に示すように、スリーブ1を軸方向に移動させることで、スリーブ1を離型紙2と共にドラム10から引き抜く。或いは、ドラム10の外周面10xにスリーブ1を押し付けながら、又は、ドラム10の外周面10xとスリーブ1との間にエアを吹き込みながら、ドラム10を軸方向に移動させてもよい。このとき、スリーブ1を作業者の手で把持して移動させてもよいし、任意の装置を用いてスリーブ1やドラム10を移動させてもよい。また、この取出し作業を容易にするため、ドラム10の外周面10xに予め離型剤を塗布しておいてもよく、離型紙2と離型剤とを併用してもよいし、どちらか一方のみを用いてもよい。
【0035】
この段階において、スリーブ1は未加硫の状態である。即ち、凸部形成工程S2では、加硫が行われないように、圧力、温度、時間等を制御する。
【0036】
凸部形成工程S2の後に行われる加硫工程S3では、
図5に示す加硫装置150を用いて、スリーブ1を加硫する。
【0037】
加硫装置150は、内型160及び外型170を含む。内型160は、円筒状のドラム161、円筒状の可撓性ジャケット162、上蓋163等を含む。外型170は、複数の凸部1vに対応する複数の溝170vが内周面に形成された円筒状の加熱用ジャケットである。
【0038】
加硫工程S3では、先ず、離型紙2をスリーブ1から剥離した上で、複数の凸部1vがそれぞれ複数の溝170vに収容されるように、スリーブ1を外型170に装着する。その後、
図5(a)に示すように、外型170に内型160を取り付ける。そして、
図5(b)に示すように、内部に蒸気を供給することで外型170を加熱し、かつ、可撓性ジャケット162を膨張させて、スリーブ1を加硫する。加硫後は、可撓性ジャケット162を膨張させた状態で、外型170の内部に水を循環させ、スリーブ1を冷却する。そして、
図5(c)に示すように、可撓性ジャケット162を真空引きにより吸引してスリーブ1から離隔させた後、内型160を上方に移動させて外型170と分離し、その後、スリーブ1を外型170から取り出す。
【0039】
さらにその後、ベルト幅に合わせたスリーブ1の輪切りを行うことで、Vリブドベルトが完成する。
【0040】
以上に述べたように、本実施形態によれば、研削によらずに凸部形成を行う構成であるため、材料のロスを抑制することができる。また、特許文献1に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線の整列状態を良好に保持することができ、かつ、心線の材料やベルト周長等に制約が生じ難い。
【0041】
スリーブ形成工程S1は、圧縮層1aとで心線1bを挟むように伸長層1cを配置する、伸長層配置工程S1bを含む。この場合、心線1bが伸長層1cと圧縮層1aとの間に埋没された状態で凸部形成を行うことで、心線1bの整列状態をより確実に良好に保持することができる。
【0042】
スリーブ形成工程S1において、ドラム10の外周面10x上にスリーブ1を形成し、凸部形成工程S2は、スリーブ1をドラム10の外周面10xに装着した状態で行う。この場合、スリーブ形成工程S1と凸部形成工程S2とにおいて工具(ドラム10)を共通化したことで、凸部形成用の工具を別途用意する必要がなく製造コストを低減することができると共に、作業効率が向上する。
【0043】
凸部形成工程S2は、スリーブ1の外周面1xに対する溝形成面20xの押圧位置を変更しながら行う。この場合、比較的小さな凸部形成部材20を用いて凸部形成を容易に行うことができる。
【0044】
心線1bがアラミド繊維から構成されている。アラミド繊維は、高強度、高弾性率(伸び難い)等の特性を有しており、心線1bをアラミド繊維で構成することで、伝動ベルトの薄型化、曲げ剛性の低減化等を実現することができ、伝動ベルトを高負荷のシステムに適用することができる。また、アラミド繊維は高弾性率で伸び難いが、本発明は、特許文献1に記載の方法のように第2スリーブを第1スリーブと一体化させるときに心線を伸ばす構成ではないため、心線1bの材料としてアラミド繊維を好適に用いることができる。
【0045】
凸部形成工程S2は、凸部形成部材20と圧縮層1aとの間に被覆層1dを介在させた状態で、凸部形成部材20の溝形成面20xをスリーブ1の外周面1xに押圧することにより行う。この場合、被覆層1dにより、通気性が良くなり空気の残留を抑制できるので、エア抜き効果が向上する(真空引きを不要にすることもできる)。また、凸部形成工程S2後に凸部形成部材20をスリーブ1から容易に剥離することができる。さらに、凸部1vの形成状態が安定すると共に、凸部1v表面の摩擦係数が下がるため、加硫工程S3においてスリーブ1が装着される部材(外型170)へのスリーブ1の装着性が向上する。また、ベルトの表面特性(摩擦係数等)の安定化を実現することができる。
【0046】
続いて、
図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る製造方法について説明する。第2実施形態は、凸部形成工程S2及び当該工程で用いられる凸部形成装置が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0047】
第2実施形態では、凸部形成工程S2において、
図3に示す凸部形成装置100の代わりに、
図6に示す凸部形成装置200を用いる。凸部形成装置200は、
図3(a),(b)に示す凸部形成部材20の代わりに
図6(a),(b)に示す凸部形成部材220を含む点、
図3(a),(b)に示す反力部材30の代わりに
図6(a),(b)に示す反力部材230を含む点、及び、ヒータ40の代わりに、凸部形成部材220の内部に熱水(熱媒体)を循環させるように構成されたヒータ(図示略)を含む点において、凸部形成装置100と異なる。
【0048】
凸部形成部材220は、円筒状であり、溝形成面220xに該当する外周面に、複数の凸部1vに対応する複数の溝220vが形成されている。凸部形成部材220は、ドラム10の軸方向に沿った軸を中心に回転可能に、基部221に支持されている。凸部形成部材220は、軸方向に関してドラム10と略同じ長さを有する。凸部形成部材220は、炭素鋼(S55C等)等を機械加工して形成されたものであり、その外周面である溝形成面220xはハードクロムメッキ等で保護されてよい。
【0049】
反力部材230は、基部231と、一対の当接部232とを含む。一対の当接部232は、それぞれ円柱状であり、基部231におけるドラム10の外周面10xと対向する面の軸方向両端近傍において、ドラム10の軸方向に沿った軸を中心に回転可能に支持されており、ドラム10の外周面10xにおける軸方向両端近傍(スリーブ1が配置されていない部分)にそれぞれ当接している。反力部材230のうち、一対の当接部232のみがドラム10の外周面10xと接触し、基部231はドラム10の外周面10xと接触していない。また、反力部材230の基部231及び一対の当接部232はいずれも、スリーブ1と接触していない。基部231は炭素鋼(例えばS55C)等から形成され、一対の当接部232は硬質な樹脂材料(例えばナイロン樹脂)等から形成されてよい。
【0050】
第2実施形態の凸部形成工程S2では、先ず、ドラム10の外周面10xと凸部形成部材220の溝形成面220xとをスリーブ1を挟んで対向するように配置する。このとき、ドラム10を挟んで凸部形成部材220と反対側では、反力部材230の一対の当接部232がドラム10の外周面10xと当接している。そして、ヒータ(図示略)で加熱された状態の凸部形成部材220を押圧手段50で押圧し、
図6(c)に示すように、凸部形成部材220と圧縮層1aとの間に被覆層1dを介在させた状態で、溝形成面220xをスリーブ1の外周面1xに押圧する。このとき、ドラム10を挟んで凸部形成部材220と反対側では、押圧力によってドラム10が移動しないように反力部材230がドラム10を支持している。これにより、スリーブ1の外周面1xの一部(溝形成面220xで押圧された部分)に凸部1vが形成される。
【0051】
第2実施形態では、溝形成面220xをスリーブ1の外周面1xに押圧しながら、駆動部16により支持部15をドラム10と共に周方向に旋回させることで、スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vを形成する。即ち、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、凸部形成工程S2は、スリーブ1の外周面1xに対する溝形成面220xの押圧位置を変更しながら行う。スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vが形成された後の工程は、第1実施形態と同様である。
【0052】
続いて、
図7及び
図8を参照し、本発明の第3実施形態に係る製造方法について説明する。第3実施形態は、凸部形成工程S2及び当該工程で用いられる凸部形成装置が第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
【0053】
第3実施形態では、凸部形成工程S2において、
図3に示す凸部形成装置100の代わりに、
図8に示す凸部形成装置300を用いる。凸部形成装置300は、
図3(a),(b)に示す凸部形成部材20の代わりに
図7(c)に示す凸部形成部材320を含む点、
図3(a),(b)に示す反力部材30、ヒータ40及びフレーム60を含まない点、及び、押圧手段としてシリンダではなく円筒状の可撓性ジャケット350を採用した点において、凸部形成装置100と異なる。
【0054】
凸部形成部材320は、溝形成面320xに該当する内周面がスリーブ1の外周面1xを包囲する、環状の部材である。溝形成面320xには、複数の凸部1vに対応する複数の溝320vが形成されている。
【0055】
凸部形成部材320の製造方法は、例えば
図7(a),(b)に示すように、平板状の上板391と上面に複数の溝320vに対応する複数の凸部392vが形成された下板392との間に凸部形成部材320となる基材(ゴムマトリックス)320aを挟んでプレス及び加硫を行う工程、当該工程の後、未加硫の端部同士をプレス接合する工程等を含む。なお、凸部形成部材320を上板391から容易に剥離する観点から、上板391と下板392とでプレスを行うとき、上板391と基材320aとの間に離型紙2を介在させることが好ましい。
【0056】
凸部形成部材320の製造方法は、上記の方法に限定されず、例えばドラムに基材320aを巻き付けて加硫缶で加硫を行う工程を含んでもよい。
【0057】
凸部形成部材320及び可撓性ジャケット350は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ミラブルウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム、ブチルゴム等のゴム成分を含むゴム組成物から構成されてよい。凸部形成部材320は、さらに、軸方向に配向された短繊維(例えば、ナイロン、綿(デニム)をRFL処理したもの)を含む。なお、後述する実施例4で用いた凸部形成部材320の基材320aは、ゴム成分としてクロロプレンゴムを含むゴム組成物から構成されたものであり、カット長さ6mmのナイロン及び綿(デニム)をRFL処理した短繊維をゴム成分100重量部に対して各々10重量部(合計20重量部)の割合で配合し、厚み5mmとなるように作製されたものである。また、後述する実施例4で用いた可撓性ジャケット350は、ゴム成分としてブチルゴムを含むゴム組成物から構成された厚み6mmの基材を、公知の方法で加硫(例えば、当該基材をドラムに巻きつけて加硫缶で加硫)して、製造されたものである。
【0058】
通気性やエア抜き効果向上等の観点から、溝形成面320xに編布からなる被覆層を設けてもよい。また、凸部形成部材320の軸方向に関する収縮抑制等の観点から、凸部形成部材320を覆う円筒状の外覆体をさらに設けてもよい。
【0059】
第3実施形態の凸部形成工程S2では、
図8(a),(b)に示すように、ドラム10の外周面10xと凸部形成部材320の溝形成面320xとをスリーブ1を挟んで対向するように配置し、さらにこれらを可撓性ジャケット350内に配置する。その後、ドラム10及び可撓性ジャケット350を上蓋360と底板(図示略)とで軸方向に挟んだ状態で、加硫が行われないように圧力、温度、時間等を制御しつつ、可撓性ジャケット350の外側から外圧(蒸気圧)をかける。これにより、スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vが形成される。このように、第3実施形態においては、第1及び第2実施形態と異なり、凸部形成工程S2は、スリーブ1の外周面1xを溝形成面320xで包囲した状態で行う。
【0060】
スリーブ1の外周面1xの全体に凸部1vが形成された後は、上蓋360を取り外してから可撓性ジャケット350を取り外し、凸部形成部材320と共にスリーブ1をドラム10から取り出した後、スリーブ1を凸部形成部材320から取り外す。
【0061】
以上に述べたように、本実施形態によれば、凸部形成工程S2は、スリーブ1の外周面1xを溝形成面320xで包囲した状態で行う。これにより、凸部形成を容易に行うことができる。
【0062】
凸部形成部材320は、少なくとも溝320vの部分がゴムで構成されており、当該ゴムは、ベルト幅方向に対応する凸部形成部材320の軸方向に配向された短繊維を含む。この場合、ゴムの軸方向に関する収縮が抑制され、ベルト幅方向に関する凸部1vのピッチずれを防止することができる。これにより、加硫工程S3においてスリーブ1が装着される部材(外型170)にスリーブ1を確実に装着することができ、ひいては、製造される伝動ベルトの寸法精度を向上させることができる。また、ゴムの軸方向に関する経時的な収縮も抑制されるため、寸法精度等の観点から判断される凸部形成部材320の使用可能回数が増加し、経済的である。
【0063】
続いて、
図9を参照し、本発明の第4実施形態に係る製造方法について説明する。第4実施形態に係る製造方法は、一方の面にベルト幅方向にそれぞれ延在する複数のコグ(凸部)を有するローエッジコグタイプのVベルト(ローエッジコグベルト)を製造する方法であって、凸部形成工程S2及び当該工程で用いられる凸部形成装置が第3実施形態と異なり、それ以外は第3実施形態と同様である。なお、第4実施形態に係るスリーブ1における伸長層1cは、帆布等で構成される被覆層(図示略)を含む。
【0064】
第4実施形態では、凸部形成工程S2において、
図8に示す凸部形成装置300の代わりに、
図9に示す凸部形成装置400を用いる。凸部形成装置400は、凸部形成部材320の代わりに凸部形成部材420を含む点において、凸部形成装置300と異なる。
【0065】
凸部形成部材420は、凸部形成部材320と同様、溝形成面420xに該当する内周面がスリーブ1の外周面1xを包囲する環状の部材であり、溝形成面420xに複数の凸部1vに対応する複数の溝420vが形成されている。ただし、本実施形態では、各凸部1vがベルト幅方向に延在することから、各溝420vがベルト幅方向に延在している。
【0066】
凸部形成部材420の製造方法、凸部形成部材420の構成材料等は、凸部形成部材320と同様であってよい。また、第4実施形態の凸部形成工程S2は、第3実施形態と同様であり、押圧手段として可撓性ジャケット350を用いて行う。
【実施例】
【0067】
本発明者は、
図10(a)に示すように、特許文献1の製造方法に係る比較例1〜4と、第1実施形態の製造方法に係る実施例1〜3と、第3実施形態の製造方法に係る実施例4とを行い、加硫後のスリーブにおけるリブの外観、及び、加硫後のスリーブにおける心線の配列状態を確認した。
【0068】
比較例1〜4及び実施例1〜4のスリーブは、それぞれ、
図5(b)に示すスリーブ1と同様の構成であり、圧縮層1a(厚み2.0mm)、心線1b(アラミド心線の場合は直径0.7mm、ポリエステル心線の場合は直径1.0mm)、伸長層1c(厚み0.8mm)及び編布からなる被覆層1d(厚み0.8mm)を有し、加硫前の段階で全厚4.3mm・幅400mm、加硫後の段階で全厚4.1mm・幅400mmであり、加硫後のベルト周長POCは
図10(a)のとおりである。
【0069】
伸長層1c用のゴム、圧縮層1a用のゴム、及び、被覆層1dの接着処理用ゴムは、それぞれ比較例1〜4及び実施例1〜4において同じ組成であり、材料及び配合比率は
図10(b)のとおりである。伸長層1c及び圧縮層1aについては、
図10(b)に示す配合のゴムをバンバリーミキサ等の公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定の厚みとした。被覆層1dについては、
図10(b)に示す配合の接着処理用ゴムを有機溶媒に溶かしてゴム糊とし、当該ゴム糊に被覆層1dの編布を浸漬処理した。
【0070】
被覆層1dを構成する編布は、比較例1〜4及び実施例1〜4において同じであり、ベルト表面(摩擦伝動面)側にセルロース系天然紡績糸(綿糸)を用い、圧縮層1a側に嵩高加工したポリエステル系複合糸(PTT/PETコンジュゲート糸:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)とポリエチレンテレフタレート(PET)をコンジュゲートした複合糸)を用いたものである。また、セルロース系複合糸の編成比率を60質量%とし、親水化処理剤(親水性柔軟剤)として非イオン界面活性剤であるポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤を含有・付着させて編布組織を多層とし、嵩高性を3.2cm
3/gとした。
【0071】
心線1bについて、比較例1,2及び実施例1では、1100dtex/1×3構成(総計3300dtex)、諸撚り(上撚り係数3.0、下撚り係数3.0)、引張応力100N時の伸度2.0%、引張応力140N時の伸度3.3%の、ポリエステル心線を用いた。比較例3,4及び実施例2〜4では、1670dtex/1×2構成、ラング撚り(上撚り係数4.5、下撚り係数1.0)、引張応力100N時の伸度0.9%、引張応力140N時の伸度1.2%の、パラ系アラミド心線を用いた。また、比較例1〜4及び実施例1〜4共に、心線1bについて、ゴムとの接着性を高めるため、水溶性エポキシ化合物を添加したレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)に浸漬処理した。その後、比較例3,4及び実施例2〜4の心線1bについては、さらに、EPDMを含むゴム組成物を有機溶媒(トルエン)に溶解しポリメリックイソシアネートを添加した処理液でコーティング処理を行った。
【0072】
先ず、心線1bとしてポリエステル心線をそれぞれ用いた比較例1,2と実施例1とについて考察する。比較例1,2は、特許文献1の製造方法(圧縮層を含む第1スリーブと心線や伸長層を含む第2スリーブとを一体化させる際に心線を伸ばす構成)によるものであり、第1スリーブと第2スリーブとの間隙を1.0mm確保できた比較例1(ベルト周長500mm)では、加硫後のスリーブにおけるリブ(凸部)の外観及び心線の配列状態共に問題がなかったが、上記間隙が1.0mm未満となった比較例2(ベルト周長450mm)では、加硫後のスリーブにおいて、リブの表面(被覆層)に部分的に皺が生じ、また、心線の配列状態にも部分的な乱れが生じた。したがって、特許文献1の製造方法では、ポリエステル心線を採用した場合、伝動ベルトの品質確保の点から上記間隙を1.0mm以上確保する(即ち、ベルト周長を500mm以上とする)必要があることがわかった。一方、実施例1は、ベルト周長が450mmであるが、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかった。
【0073】
次に、心線1bとしてアラミド心線をそれぞれ用いた比較例3,4と実施例2〜4とについて考察する。比較例3,4は、特許文献1の製造方法(圧縮層を含む第1スリーブと心線や伸長層を含む第2スリーブとを一体化させる際に心線を伸ばす構成)によるものであり、アラミド心線の場合、伸び難い特性を有するため、上撚り係数を増加させて伸び易くしても、第1スリーブと第2スリーブとの間隙をある程度確保する必要があり、比較例3(ベルト周長1100mm)では、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかったが、比較例4(ベルト周長1000mm)では、加硫後のスリーブにおいて、リブの表面(被覆層)に部分的に皺が生じ、また、心線の配列状態にも部分的な乱れが生じた。したがって、特許文献1の製造方法では、アラミド心線を採用した場合、伝動ベルトの品質確保の点からベルト周長を1100mm以上とする必要があることがわかった。一方、実施例2はベルト周長が1000mmであり、実施例3,4は共にベルト周長が450mmであるが、加硫後のスリーブにおけるリブの外観及び心線の配列状態共に問題がなかった。
【0074】
つまり、本発明によれば、心線1bとしてポリエステル心線及びアラミド心線のいずれを採用した場合でも、特許文献1の製造方法では品質確保の点から製造し難いベルト周長が比較的短いベルトを好適に製造することができる(換言すると、特許文献1の製造方法に比べ、ベルト周長の制約が生じ難い)ことがわかった。
【0075】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0076】
・凸部形成部材、ドラム等の構成材料は、特に限定されない。例えば、第1及び第2実施形態において、凸部形成部材は、炭素鋼(S55C等)等を機械加工して形成されたものであるが、硬質な樹脂材料(例えばナイロン樹脂)等から形成されたものであってもよく、また、溝形成面を含む部分が硬質な樹脂材料で形成されかつそれ以外の部分が金属材料で形成されてもよい。
・第1及び第2実施形態では、スリーブ1に対して、ドラム10を挟んで互いに対向する凸部形成部材20;220と反力部材30;230とを1組配置しているが、スリーブ1に対して、ドラム10を挟んで互いに対向する凸部形成部材20;220と反力部材30;230とを2組以上配置してもよい。この場合、2以上の凸部形成部材20;220についてのスリーブ1の外周面1xに対する押圧タイミングを、同じにしてもよいし、ずらしてもよい。
・第1及び第2実施形態では、ドラム10が支持部15によって片持ち支持されているが、ドラム10が支持部15によって両持ち支持されてもよい。
・第1及び第2実施形態では、ドラム10が支持部15によって片持ち支持されているため、凸部形成部材20;220に対して反力部材30;230を設けることが好ましいが、ドラム10が支持部15によって両持ち支持されている等の場合には、反力部材30;230を省略してもよい。
・第1実施形態の凸部形成部材20は、ドラム10の外周面10xに沿って湾曲した板状の部材であるが、平坦な板状の部材であってもよい。この場合、凸部形成工程S2において、溝形成面とスリーブの外周面とが線接触することになり、凸部形成部材20が湾曲した板状の部材である場合に比べ、凸部形成部材とスリーブとの接触面積が小さくなる分、スリーブに対して大きな押圧力が作用し、凸部を容易に形成することができ、ひいては設備負荷を低減することができる。
・第1実施形態において、ヒータ40として、凸部形成部材20の外周面に配置されるものではなく、凸部形成部材20に内蔵されるタイプのヒータ(カートリッジヒータ等)を用いてもよい。
・押圧手段は、上述した実施形態の構成に限定されない。例えば、第1及び第2実施形態では、凸部形成部材20;220及び反力部材30;230のそれぞれに対して上下一対のシリンダを1組ずつ設けているが、凸部形成部材20;220及び反力部材30;230のそれぞれに対して上下一対のシリンダを複数組設けてもよい。また、第1又は第2実施形態において、反力部材30;230側に設けられるシリンダとして、電動シリンダを採用し、一対の当接部32;232がドラム10の外周面10xに当接する位置に反力部材30;230が固定されるように、電動シリンダを制御してもよい。この場合、凸部形成時にスリーブに対して大きな押圧力が作用し、凸部を容易に形成することができ、ひいては設備負荷を低減することができる。
・第1及び第2実施形態の反力部材30;230を、ドラム10の軸方向に沿った軸を中心に回転可能なプーリに置き換えてもよい。第1実施形態に当該構成を採用した場合、凸部形成位置を変更する度に当接部32を外周面10xから離隔させて再び外周面10xに当接させるという動作が不要になる。
・スリーブ形成工程で積層された各構成要素(圧縮層、心線、伸長層、被覆層等)の圧着を、スリーブ形成工程で行ってもよいし、凸部形成工程で凸部形成と同時に行ってもよい。
・伝動ベルトの各構成要素(圧縮層、心線、伸長層、被覆層等)に、他の要素との接着性を高めるための処理(接着層のコーティング)を行ってよい。
・上述の実施形態では、リブ又はコグが凸部に該当する場合を例示したが、伝動ベルトが歯付きベルトの場合は歯部が凸部に該当する。