【実施例1】
【0015】
図1〜
図3に示されるように、力検知装置1は、例えば、圧力容器の容器内圧を検知する半導体圧力センサであり、半導体基板2及び力伝達ブロック4を備える。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、半導体基板2は、n型の単結晶シリコンであり、その主面2Sが(110)結晶面である。半導体基板2の主面2Sには複数の溝11が形成されている。複数の溝11は、半導体基板2の主面2Sに検知部10を画定する。
【0017】
図3に示されるように、検知部10は、ブリッジ回路を構成するメサ型ゲージ12,14,16,18を有する。
図1及び
図2に示されるように、メサ型ゲージ12,14,16,18は、溝11の底面からメサ状に突出しており、その高さは約0.5〜5μmである。メサ型ゲージ12,14,16,18の頂面は、溝11の周囲の半導体基板2の主面2Sと同一面に位置する。即ち、メサ型ゲージ12,14,16,18は、例えばドライエッチング技術を利用して、半導体基板2の主面2Sに複数の溝11を形成した残部として形成される。
【0018】
図3に示されるように、検知部10のメサ型ゲージ12,14,16,18は、正方形の辺に対応して配置されている。対向する一対の辺を構成するメサ型ゲージ14,18はそれぞれ、第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18と称する。対向する他の一対の辺を構成するメサ型ゲージ12,16はそれぞれ、第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16と称する。
【0019】
第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18は、半導体基板2の<110>方向に沿って伸びている。半導体基板2の<110>方向に伸びる第1高感度メサ型ゲージ14及び第2高感度メサ型ゲージ18は、圧縮応力に応じて電気抵抗値が大きく変化することを特徴としており、ピエゾ抵抗効果を有する。
【0020】
第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16は、半導体基板2の<100>方向に沿って伸びている。半導体基板2の<100>方向に伸びる第1低感度メサ型ゲージ12及び第2低感度メサ型ゲージ16は、圧縮応力に応じて電気抵抗値がほとんど変化しないことを特徴としており、ピエゾ抵抗効果を実質的に有しない。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、メサ型ゲージ12,14,16,18の表面には、p型不純物が導入されたゲージ部12a,14a,16a,18aが形成されている。ゲージ部12a,14a,16a,18aの不純物濃度は、約1×10
18〜1×10
21cm
−3である。ゲージ部12a,14a,16a,18aは、pn接合によって、n型の半導体基板2から実質的に絶縁されている。
【0022】
図3に示されるように、半導体基板2は、主面2Sにp型不純物が導入された配線部22,24,26,28を有する。配線部22,24,26,28の不純物濃度は、約1×10
18〜1×10
21cm
−3である。配線部22,24,26,28は、検知部10と電極32,34,36,38を電気的に接続する。電極32,34,36,38は、半導体基板2の主面2S上に設けられており、力伝達ブロック4で覆われる範囲外に配置されている。
【0023】
第1配線部22は、一端が第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aと第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aが接続する第1接続部13に接続されており、他端が第1電極32に接続されている。第1配線部22は、メサ型ゲージ12,14の第1接続部13側に第1メサ型リード22aを有する。第1メサ型リード22aは、溝11の底面からメサ状に突出しており、メサ型ゲージ12,14,16,18と同一工程で形成される。
【0024】
第2配線部24は、一端が第1高感度メサ型ゲージ14のゲージ部14aと第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aが接続する第2接続部15に接続されており、他端が第2電極34に接続されている。第2配線部24は、メサ型ゲージ14,16の第2接続部15側に第2メサ型リード24aを有する。第2メサ型リード24aは、溝11の底面からメサ状に突出しており、メサ型ゲージ12,14,16,18と同一工程で形成される。
【0025】
第3配線部26は、一端が第2低感度メサ型ゲージ16のゲージ部16aと第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aが接続する第3接続部17に接続されており、他端が第3電極36に接続されている。第3配線部26は、メサ型ゲージ16,18の第3接続部17側に第3メサ型リード26aを有する。第3メサ型リード26aは、溝11の底面からメサ状に突出しており、メサ型ゲージ12,14,16,18と同一工程で形成される。
【0026】
第4配線部28は、一端が第2高感度メサ型ゲージ18のゲージ部18aと第1低感度メサ型ゲージ12のゲージ部12aが接続する第4接続部19に接続されており、他端が第4電極38に接続されている。第4配線部26は、メサ型ゲージ12,18の第4接続部19側に第4メサ型リード28aを有する。第4メサ型リード28aは、溝11の底面からメサ状に突出しており、メサ型ゲージ12,14,16,18と同一工程で形成される。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、力伝達ブロック4は、直方体形状を有しており、シリコン層4aと酸化シリコン層4bを有する。半導体基板2と力伝達ブロック4は、常温個相接合技術を利用して接合される。具体的には、アルゴンイオンを用いて半導体基板2の主面2S及び力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を活性化させた後に、超高真空中で半導体基板2の主面2Sと力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの表面を接触させ、両者を接合させる。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bの一部が除去されており、力伝達ブロック4の半導体基板2側の面に溝4cが形成されている。溝4cが形成されていることにより、力伝達ブロック4の酸化シリコン層4bは、封止部分40aと押圧部分40bに区画される。また、このような溝4cが形成されていることにより、半導体基板2と力伝達ブロック4の間には、外部から隔てられた封止空間6が構成される。
【0029】
力伝達ブロック4の封止部分40aは、メサ型ゲージ12,14,16,18の周囲を一巡するように、半導体基板2の主面2Sに接合する。半導体基板2のうちの封止部分40aが接合する部分を封止部20という。半導体基板2の封止部20と力伝達ブロック4の封止部分40aは、気密に接合する。
【0030】
図4に、力伝達ブロック4の押圧部分40bとメサ型ゲージ12,14,16,18の位置関係を示す。押圧部分40bは、点対称な形態を有しており、メサ型ゲージ12,14,16,18の頂面の一部に接合する。押圧部分40bは、高感度メサ型ゲージ14,18の頂面の大部分に接合する。押圧部分40bは、高感度メサ型ゲージ14,18の両端部の頂面(接続部13,15,17,19に近接する部分の頂面)に接しない。押圧部分40bは、低感度メサ型ゲージ12,16の頂面の大部分に接合する。押圧部分40bは、低感度メサ型ゲージ12,16の両端部の頂面(接続部13,15,17,19に近接する部分の頂面)に接しない。押圧部分40bは、メサ型リード22a,24a,26a,28aの頂面及び接続部13,15,17,19の頂面に接しない。
【0031】
次に、力検知装置1の動作を説明する。まず、力検知装置1は、第1電極32に定電流源が接続され、第3電極36が接地され、第2電極34と第4電極38の間に電圧測定器が接続して用いられる。力検知装置1では、力伝達ブロック4に加わる容器内圧が変化すると、力伝達ブロック4を介してメサ型ゲージ12,14,16,18のゲージ部12a,14a,16a,18aに加わる圧縮応力も変化する。ピエゾ抵抗効果が現われる高感度メサ型ゲージ14,18のゲージ部14a,18aの電気抵抗値は、圧縮応力に比例して変化する。このため、第2電極34と第4電極38の電位差は、ゲージ部14a,18aに加わる圧縮応力に比例する。これにより、電圧測定器で計測される電圧変化から力伝達ブロック4に加わる容器内圧が検知される。
【0032】
力検知装置1では、力伝達ブロック4の押圧部分40bがメサ型リード22a,24a,26a,28aの頂面に接していない。このため、力伝達ブロック4に加わる容器内圧は、高感度メサ型ゲージ14,18に効率的に伝達される。これにより、力検知装置1のセンサ感度が向上する。
【0033】
この種の力検知装置1では、メサ型リード22a,24a,26a,28aの寄生抵抗値による電圧降下分がセンサ感度を悪化させる。このため、力検知装置1では、メサ型リード22a,24a,26a,28aの幅(半導体基板2の主面2Sに対して平行であり、メサ型リード22a,24a,26a,28aの長手方向に対して直交する方向の幅)が、メサ型ゲージ12,14,16,18の幅(半導体基板2の主面2Sに対して平行であり、メサ型ゲージ12,14,16,18の長手方向に対して直交する方向の幅)よりも大きいのが望ましい。これにより、メサ型リード22a,24a,26a,28aの寄生抵抗値を低下させることができるので、力検知装置1のセンサ感度が向上する。
【0034】
なお、従来の力検知装置のように、メサ型リードの頂面にも力伝達ブロックが接する構成では、メサ型リードの幅を大きくすると、力伝達ブロックに加わる容器内圧がメサ型リードにも伝達されるので、高感度メサ型ゲージに加わる圧縮応力が低下する。このように、従来の力検知装置では、メサ型リードの幅を大きくして寄生抵抗値を下げても、高感度メサ型ゲージに加わる圧縮応力が低下するので、センサ感度を向上させることが難しい。一方、本実施例の力検知装置1では、力伝達ブロック4がメサ型リード22a,24a,26a,28aの頂面に接しないので、メサ型リード22a,24a,26a,28aの幅を大きくしても、高感度メサ型ゲージ14,18に加わる圧縮応力は低下しない。これにより、本実施例の力検知装置1では、メサ型リード22a,24a,26a,28aの幅が大きくなると、センサ感度が効果的に向上する。
【0035】
以下、変形例及び比較例の力検知装置について説明する。上記実施例の力検知装置1と共通する構成については共通の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図5に示される変形例の力検知装置では、力伝達ブロックの押圧部分40bが、高感度メサ型ゲージ14,18と低感度メサ型ゲージ12,16の間で異なるレイアウトで構成されている。押圧部分40bは、高感度メサ型ゲージ14,18の頂面の大部分に接しており、押圧部分40bと高感度メサ型ゲージ14,18の接触面積が相対的に大きい。高感度メサ型ゲージ14,18の頂面の全面積に占める押圧部分40bと接する部分の占有面積は相対的に大きい。押圧部分40bは、低感度メサ型ゲージ12,16の中央付近の頂面に選択的に接しており、押圧部分40bと低感度メサ型ゲージ12,16の接触面積が相対的に小さい。低感度メサ型ゲージ12,16の頂面の全面積に占める押圧部分40bと接する部分の占有面積は相対的に小さい。このように、変形例の力検知装置では、押圧部分40bが接する面積を高感度メサ型ゲージ14,18と低感度メサ型ゲージ12,16の間で異なっている。このため、力伝達ブロックに加わる容器内圧は、高感度メサ型ゲージ14,18に効率的に伝達される。これにより、この変形例の力検知装置では、センサ感度が向上する。
【0037】
ここで、変形例の力検知装置の他の特徴を説明するために、比較例の力検知装置を説明する。
図6に示される比較例の力検知装置では、力伝達ブロックの押圧部分40bが、一対の高感度メサ型ゲージ14,18にのみ接する。このような構成を採用すると、力伝達ブロックに加わる容器内圧は、高感度メサ型ゲージ14,18に効率的に伝達される。
【0038】
ところが、
図7に示されるように、力伝達ブロック4に容器内圧が加わったときに、メサ型ゲージで囲まれる領域の中心点が凸の頂部となるように半導体基板2側に向けて撓む。このような力伝達ブロック4の撓みにより、高感度メサ型ゲージ14,18が内側に向けて片変形し、圧縮応力と電気抵抗値の間の直線性が悪化する。
【0039】
図5に示される変形例の力検知装置では、力伝達ブロックの押圧部分40bが、低感度メサ型ゲージ12,16の頂面の一部にも接する。これにより、力伝達ブロックの撓みが抑えられ、高感度メサ型ゲージ14,18の片変形が抑えられる。したがって、この変形例の力検知装置では、圧縮応力と電気抵抗値の間の直線性が良好である。このように、この変形例の力検知装置では、センサ感度と直線性を両立することができる。
【0040】
図8に示される変形例の力検知装置では、力伝達ブロックの押圧部分40bが、低感度メサ型ゲージ12,16の長手方向に沿って互いに離間して形成された複数の複数部分40cを有する。複数部分40cの各々は、低感度メサ型ゲージ12,16の頂面に接する。複数部分40cは、低感度メサ型ゲージ12,16の長手方向に沿って等間隔に配置されている。この変形例の力検知装置では、力伝達ブロック4の撓みが抑えられ、圧縮応力と電気抵抗値の間の直線性が改善される。
【0041】
次に、
図9及び
図10の変形例の力検知装置を説明する。これらの変形例の力検知装置の特徴を理解するために、
図9及び
図10に示されるように、低感度メサ型ゲージ12,16を長手方向に沿って3つの領域に区画して説明する(図示明瞭化のために、第1低感度メサ型ゲージ12に対応する領域のみを図示するが、第2低感度メサ型ゲージ16も同様である)。低感度メサ型ゲージ12,16は、中央領域12Aと一対の周辺領域12Bを有する。中央領域12Aは、長手方向に沿って中央付近を伸びている。一対の周辺領域12Bの各々は、メサ型ゲージの接続部13,15,17,19から長手方向に沿って中央領域12Aまで伸びている。中央領域12Aと一対の周辺領域12Bの各々の長手方向の長さは同一である。即ち、低感度メサ型ゲージ12,16を長手方向に沿って3等分したときに、中央付近に配置されるのが中央領域12Aであり、周辺付近に配置されるのが周辺領域12Bである。
【0042】
図9に示される変形例の力検知装置では、中央領域12Aと周辺領域12Bを対比すると、中央領域12Aの頂面と複数部分40cの接する面積が、一方の周辺領域12Bの頂面と複数部分40cの接する面積よりも大きい。換言すれば、中央領域12Aの頂面の全面積に占める複数部分40cと接する部分の占有面積が、一方の周辺領域12Bの頂面の全面積に占める複数部分40cと接する部分の占有面積よりも大きい。前記したように、力伝達ブロックは、容器内圧が加わったときに、力伝達ブロックの中心点が凸の頂部となるように撓む。低感度メサ型ゲージ12,16の中央領域12Aは、その中心点に近いので、この部分で力伝達ブロックと広い面積で接することにより、力伝達ブロックの撓みを効果的に抑えることができる。即ち、力伝達ブロックと低感度メサ型ゲージ12,16の接触面積の増加を抑えながら、力伝達ブロックの撓みを効果的に抑えることができる。これにより、この変形例の力検知装置は、センサ感度と直線性を両立することができる。なお、要求される特性に応じて、周辺領域12Bに対応する複数部分40cを形成しなくてもよい。このような例は、
図5に示される変形例の力検知装置に対応する。したがって、
図5に示される変形例の力検知装置も、力伝達ブロックと低感度メサ型ゲージ12,16の接触面積の増加を抑えながら、力伝達ブロックの撓みを効果的に抑えることができるので、センサ感度と直線性を両立することができる。
【0043】
図10に示される変形例の力検知装置では、中央領域12Aと周辺領域12Bを対比すると、中央領域40cに対応して配置される複数部分40cは、周辺領域12Bに対応して配置される複数部分40cに比べて、間隔がより密に形成されている。この変形例の力検知装置でも、中央領域12Aの頂面の全面積に占める複数部分40cと接する部分の占有面積が、一方の周辺領域12Bの頂面の全面積に占める複数部分40cと接する部分の占有面積よりも大きい関係が得られる。このため、この変形例の力検知装置でも、力伝達ブロックの撓みを効果的に抑えることができ、感度と直線性を両立することができる。
【0044】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。