(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)シリカ源、(2)アルミナ源、(3)鋳型としてN,N,N',N'−テトラアルキルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウム(但し、アルキル基は、同じであっても異なってもよい。)の水酸化物又はハロゲン化物、(4)アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、及び(5)水から成る原料混合物を、水熱処理することから成り、該シリカ源及びアルミナ源中のシリカ(SiO2に換算)100モルに対するアルミナ(Alに換算)の量が5〜25モルであるAFX型ゼオライトの製法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】AFX型ゼオライトの結晶構造を示す図である。aはAFX型ゼオライトの結晶構造の一部、bはAFTケージ、cはGMEケージを示す。
【
図2】得られたAFX型ゼオライトのSEM写真である。(a)は実施例1、(b)は比較例1で合成したAFX型ゼオライト(焼成後)のものを示す。
【
図3】実施例1で得たAFX型ゼオライト(合成したまま)の粉末X線回折スペクトル図である。
【
図4】実施例1で得たAFX型ゼオライト(焼成後)の粉末X線回折スペクトル図である。
【
図5】比較例1で得たAFX型ゼオライト(合成したまま)の粉末X線回折スペクトル図である。
【
図6】比較例1で得たAFX型ゼオライト(焼成後)の粉末X線回折スペクトル図である。
【0008】
本発明のAFX型ゼオライトは、International Zeolite Association Structure Commission (IZA-SC)により"AFX"の三文字コードが与えられたアルミノシリケートであり、表1の空間群と原子座標で特定される骨格トポロジーを有する。なお、表1の解析結果はAFX型のうち特にSSZ-16という特定の物質のものであり、格子定数は物質によってa (= b) =13.6±0.1 A, c = 19.7±0.1 Aの範囲でわずかに変化する。
【表1】
【0009】
図1に、AFX型ゼオライトの結晶構造の一部を球棒モデルで示す。大小2種類の球のうち、大きな球はシリコンまたはアルミ原子を表し、小さな球は酸素原子を表す。AFX型ゼオライト(
図1(a))は酸素8員環(0.33 nm×0.35 nm)の3次元細孔構造を持つゼオライトである。細孔は大小異なる2つのケージから構成されており、一方は9つの窓を持ったz軸方向に長いケージ(AFTケージ、1.38 nm × 0.56 nm、
図1(b))であり、他方は3つの窓を持ったz軸方向にひしゃげているケージ (GMEケージ、0.74 nm × 0.33 nm、
図1(c))である。
【0010】
本発明のAFX型ゼオライトの製法は、原料混合物を水熱処理することから成る。
(A)原料混合物
本願で用いる原料混合物は、(1)シリカ源、(2)アルミナ源、(3)鋳型としてN,N,N',N'−テトラアルキルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウムの水酸化物又はハロゲン化物、(4)アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、及び(5)水から成る。
【0011】
本発明で用いるシリカ源として、Y型ゼオライト、ケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、シリコンアルコキシド、石英など、好ましくはフュームドシリカが挙げられる。
本発明で用いるアルミナ源として、Y型ゼオライト、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなど、好ましくはY型ゼオライトが挙げられる。
なお、Y型ゼオライトを使用して、シリカ源とアルミナ源の両者を兼ねてもよい。
【0012】
本発明で用いる鋳型(SDA)は、下式
【化1】
で表されるN,N,N',N'−テトラアルキルビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウムであり、この化合物は二価陽イオンである。
式中、R
1及びR
2(これらはいずれもアルキル基である)は、それぞれ、同じであっても異なってもよく、その炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4であり、R
1及びR
2の炭素数の合計は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4である。また、R
1及びR
2はそれらが結合する窒素原子と共同して環を形成してもよく、この環の炭素数は、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜5である。
このアルキル基としては、例えば、CH
3-、CH
3CH
2-、CH
3CH
2CH
2-、(CH
3)
2CH-、
CH
3CH
2CH
2CH
2-、(CH
3)
2CHCH
2-、CH
3CH
2(CH
3)CH-、(CH
3)
3C-、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
この化合物(鋳型)は、通常水酸化物又はハロゲン化物(ヨウ化物、臭化物、塩化物、フッ化物)として用いる。
【0013】
本発明で用いるアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、例えば、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Sr(OH)
2又はBa(OH)
2、好ましくはNaOHが挙げられる。KOHの場合は純度85%以上、その他の場合は95%以上のものを使用し、脱イオン水で5〜50%に希釈して用いるか、又は予め希釈されたものを使用する。
用いる水は高純度の水、例えば、イオン交換水(脱イオン水)が好ましい。
【0014】
シリカ源とアルミナ源の比率は、シリカ源及びアルミナ源中のシリカ(SiO
2に換算)100モルに対して、アルミナ(Alに換算)の量を5〜25モル、好ましくは8〜15モルとなるようにする。アルミナの量をこれより減らすと、MSE型ゼオライトなどの他の相が副生する。アルミナの量をこれより増やすと、AFX型ゼオライトの結晶化は起こらない。
また、シリカ(SiO
2)100モルに対して、鋳型を10〜50モル、好ましくは10〜30モル、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を1〜30モル、好ましくは10〜30モル、水を500〜10000モル、好ましくは2000〜7000モルの割合で用いる。
【0015】
(B)水熱処理
水熱処理は以下の条件で行われる。
−温度:加熱温度は、100〜200℃、好ましくは150〜175℃である。加熱時間は一般に20〜400時間、好ましくは40〜200時間である。この温度が低すぎると縮合が進まず、一方この温度が高すぎて鋳型などの有機物が分解すると、AFX型ゼオライトが得られない。
−時間:通常2〜16日 この範囲よりも短いと結晶化が不十分になり、一方長いと別の相(例えば、ANA相)が副生することがある。
水熱反応は好ましくはオートクレーブを用いて行う。
水熱反応終了後、固液分離、洗浄、乾燥を行うことにより、合成したまま(as-synthesized)のAFX型ゼオライトが得られる。
【0016】
(C)生成物
この工程で得られる合成したままのAFX型ゼオライトは、以下の組成式で表される。
M
(n−2m)/lQ
mSi
48−nAl
nO
96
(式中、nは6〜18、mは1.5〜2.5、Mは金属カチオン (典型的にはNa) 、lはMの価数、またQは鋳型(化1)に由来する陽イオンを示す。)
また、X線回折データは以下の値を含む。(強度比10%以上のピーク)
2θ=7.46±0.15,8.68±0.15,11.56±0.15,12.98±0.15,15.00±0.15,15.64±0.15,17.42±0.15,17.66±0.15,19.90±0.15,20.38±0.15,21.80±0.15,22.60±0.15,23.40±0.15,26.16±0.15,27.72±0.15,30.64±0.15,31.62±0.15,33.50±0.15
【0017】
(D)焼成
得られた結晶性シリケートを、その後焼成してもよい。焼成は、通常、マッフル炉又は管状炉を用いて、O
2:N
2=0:100〜100:0、好ましくは20:80〜30:70の雰囲気で、0.1〜100ml/分の流量で1〜12時間流通させて行う。温度は400〜800℃、好ましくは550〜650℃である。
焼成後(calcined)のAFX型ゼオライトは、以下の組成式で表される。
M
(n−2m)/lH
2mSi
48−nAl
nO
96
(式中、n、m、M及びlは上記と同様を表す。)
この結晶性多孔質シリケートは、上述のAFX構造を持ち、上記表1の空間群と原子座標で特定される骨格トポロジーを有する。
【0018】
焼成後のAFX型ゼオライトのX線回折データは以下の値を含む。(強度比10%以上のピーク)
2θ=7.46±0.15,8.70±0.15,11.64±0.15,12.94±0.15,14.94±0.15,15.60±0.15,17.44±0.15,17.90±0.15,19.82±0.15,20.32±0.15,21.78±0.15,23.68±0.15,26.04±0.15,28.08±0.15,30.14±0.15,30.52±0.15,31.52±0.15,33.72±0.15
焼成後のAFX型ゼオライトは,長軸(c軸)方向の長さLが400〜600nm、短軸(a又はb軸)方向の長さDが300〜500nmの六方両錐型粒子である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
X線回折(XRD)は以下の条件で測定した。
使用装置 : リガク社製Ultima IV粉末X線解析装置
X線源 : CuKα=1.5405Å, 印加電圧 : 40 kV, 管電流: 20 mA
測定範囲 : 2θ=2.040〜52.000deg
スキャン速度 : 2.000 deg. / min, サンプリング間隔 : 0.040 deg.
発散スリット: 1.00 deg, 散乱スリット: 1.00 deg, 受光スリット: 0.30 mm
縦型ゴニオメータ, モノクロメータ使用
測定方法:連続法, 通常法
なお、X線回折測定において、試料台は20 mm×20 mm×0.2 mmの溝があるガラス製のものを使い、粉末試料がこの溝に収まるように、ガラス板で押し付けながらセッティングをした。
走査型電子顕微鏡(SEM)写真は以下の条件で測定した。
使用装置:JEOL社製 JSM-7001F
加速電圧:3.00 kV
【0020】
製造例1
本製造例では、後記の実施例1で用いる鋳型を合成した。
まず、下式で示すようにN,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミドを合成した。
【化2】
ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物(アルドリッチ製)15.7 g (63 mmol)にエチルアミン(関東化学)(70wt% in water) 100 ml (1.26 mol)を加えて室温で2時間攪拌した。ここに蒸留水(46 ml)を加え、70℃で24時間、次いで100℃で20時間攪拌した。放冷後、濃塩酸(11ml)をpHが約2になるまでゆっくり滴下した。これを吸引濾過し、蒸留水(500 ml)で洗浄して得られた固体を乾燥した。生成物(N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシジイミド)の収量は17.1 g (収率 90%)であった。
【0021】
次に、N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジンを合成した。
【化3】
N
2雰囲気の1000 ml 二口フラスコに水素化リチウムアルミニウム(LiAlH
4、和光純薬製) 6.2 g (164 mmol)を入れ、攪拌しながらテトラヒドロフラン(THF) 300 mlを加え、攪拌を開始した。ここに上記で得たジイミド体16.0 g (53 mmol)を少しずつ加え、THF (240 ml)で洗い入れた。その後68時間還流下攪拌した。放冷後、過剰のLiAlH
4を分解するために、よく撹拌しながら蒸留水(6.2 g)、15wt% NaOH (6.2 g)、蒸留水(18.7 g)を約30分間隔で順次ゆっくり加え、さらに2時間攪拌した。次にグラスフィルター(G3)を用いて吸引濾過後、フィルター上の固形物をTHF (120 mL)でよく洗浄し、濾液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた油状物質から水分を完全に除去し、油状の生成物(N,N'-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジン)を得た。収量は12.1 g (収率 93%)であった。
【0022】
次に、N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物を合成した。
【化4】
上記で合成したジピロリジン体12.1 g (49 mmol)をエタノール(EtOH) 90 mLに溶解し、攪拌しつつヨウ化エチル(EtI) 17 ml (212 mmol)を滴下した後157時間還流下攪拌した。放冷後、アセトン100 mlを加え、これをグラスフィルター(G3)で吸引濾過して結晶生成物を得た。この結晶生成物をアセトン(80 ml x 2)で加熱洗浄して放冷後、アセトン(50 ml)及びベンゼン(40 ml)で順次洗浄し、真空乾燥した。生成物(N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物)の収量は19.4 g(収率 71%)であった。
生成物の分析値を以下に示す。
1H NMR(400 MHz, D
2O) δ: 1.25 (12H, t, J=7.2Hz, -CH
3), 2.82 (8H, s, CH-C
H2-N
+), 2.89 (2H, s, -CH=CH-), 3.28 (8H, q, J=7.5Hz, CH
3-C
H2-N
+), 3.78 (4H,d, CH-C
H-CH
2), 6.42 (2H, t, J=3.8 Hz, -C
H-CH=)
13C NMR(100 MHz, D
2O) δ: 8.14, 8.99, 33.71, 40.59, 53.32, 56.24, 65.05, 134.75
【0023】
次に、N,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジウムジヒドロキシドを合成した。
【化5】
三角フラスコ中で、製造例1で得たN,N,N',N'-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物(8.83 g, 15.8 mmol)を蒸留水(100 ml)に溶解した。これに、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製 SA10A(OH))45 gと蒸留水100 mlを加えて、室温で48時間穏やかに撹拌した。これを濾過し、16.5gまで減圧濃縮し、蒸留水で(28.7 g)に希釈して、N, N, N', N'-テトラエチルビシクロ[2. 2. 2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウムジヒドロキシド(以下「TEBOP
2+(OH
-)
2」という。)を得た。0.05 M HClで滴定した結果、濃度(R
2+として)0.516 mmol/g、交換率 93.6 %であった。
1H NMR(400 MHz, D
2O) δ: 1.21 (12H, t, J=7.3Hz, -CH
3), 2.77 (8H, s, CH-C
H2-N
+), 2.84 (2H, s, -CH=CH-), 3.24 (8H, q, J=7.5Hz, CH
3-C
H2-N
+), 3.73 (4H,d, CH-C
H-CH
2), 6.37 (2H, t, J=3.8 Hz, -C
H-CH=)
13C NMR(100 MHz, D
2O) δ: 7.93, 8.81, 33.62, 40.54, 53.17, 56.16, 64.95, 134.61
【0024】
製造例2
本製造例では、後記の比較例1で用いる鋳型(1,1'-テトラメチレンビス(1-アゾニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタン) ジヒドロキシド、「Dab-4-OH」という。)を合成した。
まず、下式で示すように1,1'-テトラメチレンビス(1-アゾニア-4-アザビシクロ[2.2.2]オクタン) ジブロミド(Dab-4-Br)を合成した。
【化6】
1,4-ジアザビシクロ-[2.2.2]-オクタン(アルドリッチ製)51.51g(450mmol)を1Lナスフラスコに入れ、続いて400mLのアセトンを加え、室温で10分間撹拌した。ここに1,4-ジブロモブタン(和光純薬工業株式会社製)17.66g(80mmol)を15分間かけて滴下し、80mLのアセトンで洗い入れた。その後37時間室温で撹拌した。次にグラスフィルター(G4)を用いて吸引濾過後、フィルター上の固形物をアセトン(150mL)およびベンゼン(200mL)でよく洗浄し、真空乾燥した。生成物(DAB-4-Br)の収量は35.36g(収率100%)であった。生成物(DAB-4-Br)の分析値を以下に示す。
1H-NMR (400 MHz, D
2O) : δ1.91~1.94(m, 4H, C-C
H2-C
H2-C), 3.26(t, J=7.4 Hz, 12H, NCH
2), 3.36~3.45(m, 4H, N
+CH
2), 3.48(t, J=7.4 Hz, 12H, N
+CH
2)
13C-NMR (100 MHz, D
2O) : δ19.46, 45.03, 53.07 and 64.20(CH
2)
IR (KBr) [cm
-1] 596, 704, 793, 845, 901, 988, 1057, 1101, 1325, 1383, 1468, 1641, 2893, 2963, 3425
【0025】
次に、下式で示すようにDAB-4-BrをDAB-4-OHに変換した。
【化7】
上記で合成したDAB-4-Br 35.17 gを500mL PPボトルに入れ、続いて強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製 SA10A(OH))182.66gを加えた。次にH
2O(Milli-Q)350mLを加え、容器を軽く振り混ぜたのち60時間冷暗所に静置した。次にグラスフィルター(G4)により吸引濾過し、フィルター上の樹脂をH
2O(Milli-Q)200mLでよく洗浄し、濾液と洗液を合わせて減圧濃縮した。得られた溶液の重量は127.31gであり、0.05Mの塩酸滴定により求めたOH体(DAB-4-OH)の濃度は0.534mmol/g(イオン交換率91%)であった。Dab-4-BrからDab-4-OHへの変換は単なるイオン交換であり、そのNMRスペクトルはDab-4-Brと同様である。
【0026】
実施例1
内容積23 mLのフッ素樹脂(PTFE)製容器にY型ゼオライト (H
30.5Al
30.5Si
161.5O
384、東ソー、HSZ-350HUA)を1.84 g (20 mmol, SiO
2)入れ、2.87 gのH
2O (Milli-Q)、製造例1で得たTEBOP
2+(OH
-)
2水溶液 (0.489 mmol/g) を4.09 g、0.543 gのNaOH水溶液 (3.68 mmol/g) を順次加えた。得られた混合物の組成は1.0 SiO
2−0.094 Al
2O
3−0.10 TEBOP
2+(OH
-)
2−0.10 NaOH−20 H
2Oとなる。Y型ゼオライトを液中によく分散させたのち、オートクレーブを用いて160℃のオーブンに10日間静置した。得られた固体生成物はろ過で回収し、100℃オーブン中で90分間乾燥させた。得られた白色粉末(合成したまま;XRDを
図3に示す)の重量は1.89 gであった。このうち1.15 gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中空気雰囲気下で室温から毎分1℃の速度で昇温し、600℃で2時間保持し、その後放冷した。こうして白色粉末(焼成後)0.975 gを得た。
得られた焼成後の結晶のSEM写真を
図2(a)に、X線回折分析結果を
図3及び
図4並びに表2に示す。この表2は焼成後の結晶のX線回折分析結果を示し、比較のため、AFX型ゼオライトの公知データ(特許文献1)を載せる。XRDパターンよりAFX相のみが認められた(
図3、4、表2)。元素分析によるSi/Al値は6.1であった。SEM観察によれば、粒子径約500 nmの六方両錐型の粒子が確認された(
図2(a))。
【0027】
比較例1
製造例2で得たDAB-4-OHの水溶液(0.574 mmol/g) 31.37 gを125 mLフッ素樹脂(PTFE)製容器に入れ、6.77 gのNaOH水溶液(3.68 mmol/g)、10.40 gのH
2O (Milli-Q)、42.41 gのケイ酸ナトリウム水溶液 (SiO
2:23.1wt%, Na
2O:5.96wt%) を順次加えた。
容器を軽くゆすって混合物を均一にしたのち、30分間室温で放置した。つぎに3.89 gのY型ゼオライト (H
50.5Al
50.5Si
141.5O
384、東ソー、HSZ-320HOA) を加え、容器を軽くゆすることで液中に分散させた。得られた混合物の組成は1.0 SiO
2−0.033 Al
2O
3−0.09 Dab-4-OH−0.55NaOH−20 H
2Oとなる。つぎにオートクレーブを用いて140℃オーブンに43時間静置した。得られた固体生成物は遠心分離で回収し、100℃オーブン中で一晩乾燥させた。得られた白色粉末(合成したまま)の重量は5.19 gであった。このうち4.59 gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中空気雰囲気下で室温から1 ℃毎分の速度で昇温し、520℃で3時間保持し、その後放冷した。こうして得られた白色粉末(焼成後)は4.35 gであった。
得られた焼成後の結晶のSEM写真を
図2(b)に、X線回折分析結果を
図5及び
図6並びに表2に示す。合成したまま及び焼成後のサンプルのXRDパターンよりAFX相のみが認められた (
図5、6、表2)。元素分析によるSi/Al値は4.4であった。SEM観察によれば、粒子は粒子径約200 nmの不明瞭なモルフォロジーであった (
図2(b))。
【0028】
本発明のAFX型ゼオライトは結晶性が高いことは、SEM写真から明らかである(
図2(b)に対する
図2(a))。
また、実施例1で得た結晶と比較例1で得た結晶のX線回折分析は同じ条件で行っており、それらの焼成後のX線回折の各ピークのピーク強度と半値幅の比較を表2に示す。実施例1で得た結晶は、比較例1で得た結晶に比べて、各ピークのピーク強度は強く、かつ半値幅は小さい。即ち、実施例1で得た結晶は、比較例1で得た結晶に比べて、結晶性が高いといえる。
本発明のAFX型ゼオライトは結晶性が高いため、触媒反応で用いる場合、水熱安定性や触媒寿命が良好になると考えられる。
【0029】
【表2】