【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行所:一般社団法人 日本ダイカスト協会、刊行物名: 「2014日本ダイカスト会議論文集」、発行日:平成26年10月30日、該当ページ:第77〜82ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質セラミックスは、アルミナ系セラミックス,コージェライト系セラミックス,炭化ケイ素系セラミックスより選ばれる1種以上よりなる請求項1記載のフィルタボックス。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金ダイカストにおいて、アルミニウム合金の溶湯(金属溶湯)をラドルで射出スリーブへ供給するに際して、金属溶湯に介在物が含まれていることが知られている。介在物としては、溶湯由来の酸化物や、金属溶湯を保持する保持炉の炉体の耐火物に由来する酸化物、あるいはその他の金属溶湯に混入した異物(例えば、酸化物)が挙げられる。
この介在物は、金属溶湯に対しては異物であり、その量を減少させることが、ダイカスト製品の品質において重要な課題となっていた。
【0003】
金属溶湯に介在する介在物を除去するために、高気孔率で透過性のある多孔質セラミックスで形成されたフィルタを用いて、介在物を除去することが知られている。
【0004】
具体的には、金属溶湯の保持炉から汲み出し位置への流入経路中に、板状のフィルタを配置する方法(炉の構成)が知られている。流入経路の間に板状のフィルタを配置することで、流入経路を流れる金属溶湯がフィルタを通過(透過)することとなり、このときフィルタが介在物を除去(濾別)する。
【0005】
しかしながら、この構成では、目詰まりを生じたフィルタを交換するために取り外したときに、金属溶湯から介在物を除去できなくなるという問題があった。つまり、フィルタを交換するためには、炉を停止する必要があった。また、フィルタを交換したときに、新たに設置されたフィルタと炉体とのシール性が低いという問題もあった。
更に、フィルタの設置位置から汲み出し位置までの距離が長くなるほど、流入経路を区画する炉体からの介在物を除去できないという問題があった。
【0006】
これらの問題に対して、板状のフィルタを組み付けてボックス形状(槽状)を形成し、金属溶湯の汲み出し位置をボックス形状の内部とする構成がある。この構成では、金属溶湯の汲み出し位置がボックス形状のフィルタの内部に位置するため、汲み出し位置の金属溶湯はフィルタを透過して介在物が除去されたものとなる。板状のフィルタを組み付けてボックス形状としたものは、フィルタボックスと呼ばれている。フィルタボックスは、板状のフィルタをモルタル等の接合材で接合して形成される。
【0007】
フィルタボックスは、金属溶湯から引き上げた後に別のフィルタボックスを浸漬することで交換できるため、炉を停止することなく交換できる。また、炉体に固定しない構成となるため、炉体とのシール性の問題も発生しない。更に、フィルタボックスが実質的に汲み出し位置を区画する構成となり、新たな介在物の混入が生じないという効果があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のフィルタボックスを、アルミニウムダイカストの溶湯保持炉で具体化した実施形態
及び参考形態について、図面を参照して説明する。すなわち、金属溶湯としてアルミニウムの溶湯を適用した形態である。
【0018】
[
参考形態1]
本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2、本体部3、を有する。本形態のフィルタボックス1の構成を、
図1に斜視図で、
図2に断面図(
図1中のフィルタ2,2を横断するII−II線での断面)で、それぞれ示した。
【0019】
本形態のフィルタボックス1は、上方に開口部を有する槽状を有する。ここで、槽状とは、開口部のみが開口した閉鎖空間を区画する形状である。本発明のフィルタボックスにおいて槽状の具体的な形状は限定されるものではない。本形態のフィルタボックス1は、見かけの外形が略立方体形状をなす、上面が全面で開口した有底筒状の形状を有する。
有底筒状の形状(断面での内周形状,外周形状)及び開口部の形状は、限定されるものではない。開口部は、後述の連続熔解保持炉4ではアルミニウムの溶湯の汲み出しを行うためのラドル48が挿入されるように、フィルタボックス1の内部の汲み出し位置からアルミニウムの溶湯を汲み出すための治具が挿入可能な形状及び大きさで形成される。
【0020】
本形態のフィルタボックス1は、対向する一対の側壁30,30のそれぞれにフィルタ2が保持される。
フィルタ2は、請求項のフィルタ部に相当する部材であり、四角形の板状の多孔質セラミックスよりなる。フィルタ2を形成する多孔質セラミックスは、多数の細孔が連続した状態で形成されたセラミックスである。フィルタ2が多孔質セラミックスよりなることで、溶湯保持炉で使用されたときに、介在物の通過を阻害しながらアルミニウム溶湯を通過させることができる。
【0021】
フィルタ2の四角形の大きさは、限定されるものではない。フィルタ2を通過(透過)するアルミニウムの溶湯を所定の量で確保できる程度の大きさとすることができる。
板状のフィルタ2の厚さは、限定されるものではないが、フィルタ2を保持する側壁30の厚さと同じ厚さであることが好ましい。
【0022】
フィルタ2を形成する多孔質セラミックスは、その材質が限定されるものではない。多孔質セラミックスの材質は、アルミナ系セラミックス,コージェライト系セラミックス,炭化ケイ素系セラミックスより選ばれる1種以上より選択できる。炭化ケイ素系セラミックスよりなることが好ましい。
【0023】
フィルタ2を形成する多孔質セラミックスは、その細孔特性(気孔率,平均細孔径,細孔径分布等)が限定されるものではない。従来のアルミニウムダイカストの介在物の除去に用いられているフィルタと同様の細孔特性とすることが好ましい。
【0024】
フィルタ2は、対向する一対の側壁30,30にフィルタ2の外形と一致する孔が形成され、この孔にフィルタ2を嵌入することで保持される(係止される)。フィルタ2は、フィルタボックス1をアルミニウムダイカストの溶湯に浸漬したときに、アルミニウム溶湯の液面より下方の位置(液面から上方で露出しない位置)に設けられている。
【0025】
本体部3は、フィルタ2を保持するとともに、フィルタボックス1のその他の部分を形成する。本形態のフィルタボックス1は、アルミニウムの溶湯がフィルタ2を通過(透過)する構成であり、本体部3をアルミニウムの溶湯が通過(透過)することは許容されていない。
本体部3は、アルミニウムの溶湯に対して損傷(アルミニウムと反応,溶湯への熔解)を生じない材質であれば限定されるものではない。
【0026】
本形態の本体部3は、不定形の耐火性材料を固化してなる。不定形の耐火性材料を固化してなるとは、粉末状の耐火性材料が、所定の形状に集積(圧縮)した状態を示す。より具体的には、粉末やスラリー状の耐火性材料を、成形型等に投入して成形手段を用いて所定の形状に圧縮成形(及び乾燥,熱処理,焼成)してなる状態(本体部3を構成する耐火性材料の粒子が、隣接する粒子との相互作用により自由に移動することが規制された状態)を示す。
粉末やスラリー状の耐火性材料を圧縮成形する成形手段については、限定されるものではないが、金型でのプレスやCIP成形(冷間静水圧加圧成形)を用いることができる。
【0027】
なお、本形態においては、側壁30にフィルタ2が嵌装される孔を形成した状態で本体部3を形成する態様(その後、フィルタ2が嵌入される)を用いたが、成形型内にフィルタ2を配置した状態で耐火性材料を固化(成形)して一体に成形する態様を採用しても良い。
【0028】
本体部3を形成する耐火性材料は、アルミニウムの溶湯(金属溶湯)に対して安定な材質(本体部3が損傷を生じない材質)であれば、具体的な材質が限定されるものではない。たとえば、上記した成形性から、アルミナ系セラミックス,コージェライト系セラミックス,炭化ケイ素系セラミックスより選ばれる1種以上の耐火性セラミックスであることが好ましい。これらの耐火性セラミックスは、仮に本体部3から剥落を生じても、アルミニウムの溶湯(金属溶湯)に溶解しないため、容易に除去できる。
【0029】
本形態のフィルタボックス1は、その他の図示しない必要な構成を有する。図示しない必要な構成とは、たとえば、フィルタボックス1を操作(固定)するときに保持(把持)するための金具等の部材である。
【0030】
[連続熔解保持炉]
本形態のフィルタボックス1は、アルミニウムダイカストの連続熔解保持炉4で使用できる。
連続熔解保持炉4は、
図3に概略構成を示したように、溶解室40と、給湯室45と、ラドル48と、を有する。
【0031】
溶解室40には、原料投入口41から予熱室42を介してアルミニウム原料50が投入される。溶解室40は、溶解バーナ43で加熱され、アルミニウム原料50が溶融して溶湯となる。アルミニウムの溶湯は、溶解室40から給湯室45に流出する。
【0032】
給湯室45は、溶解室40からのアルミニウムの溶湯が貯留する貯留部46を有する。貯留部46に貯留したアルミニウムの溶湯にフィルタボックス1が浸漬する。フィルタボックス1は、開口部が液面上に露出した状態で浸漬される。
【0033】
槽状のフィルタボックス1の内部には、貯留部46に貯留したアルミニウムの溶湯が流入する。アルミニウムの溶湯は、フィルタ2を通過(透過)してフィルタボックス1の内部に流れ込む。このとき、アルミニウムの溶湯に含まれる介在物は、フィルタ2を通過(透過)しない。つまり、フィルタボックス1の内部には、介在物が除去されたアルミニウム溶湯が流れ込んで貯留される。
【0034】
ラドル48は、フィルタボックス1の内部に流れ込んだアルミニウムの溶湯を汲み出す。ラドル48は、アルミニウムの溶湯を汲み出すことができる桶状の部材であり、図示しないロボットアーム等の手段を用いて操作される。
ラドル48が汲み出したアルミニウムの溶湯は、ダイカストマシン等に供給される。
【0035】
以上のように、連続溶解保持炉4から、アルミニウムの溶湯が汲み出される。なお、フィルタボックス1の内部に流れ込んだアルミニウムの溶湯は、フィルタ2を通過(透過)することで介在物が除去されており、ラドル48で汲み出されたアルミニウムの溶湯は、介在物を含まない溶湯となっている。
【0036】
本形態の連続溶解保持炉4では、フィルタ2に介在物の目詰まり等が生じたときに、フィルタボックス1を引き上げ、フィルタボックス1からフィルタ2を取り外し、新たなフィルタ2を嵌合する。これにより、本形態のフィルタボックス1は再利用できる。
【0037】
(本形態の効果)
本形態のフィルタボックス1は、上記したように、連続熔解保持炉4で使用したときに、介在物が除去されたアルミニウムの溶湯を汲み出すことができる。
そして、本形態のフィルタボックス1は、高価なフィルタ2を部分的に使用し、その他はフィルタ2よりも安価な本体部3で形成されている。このため、フィルタボックス1自体のコストを低減できる。
【0038】
更に、本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2の交換のみで再使用できる。つまり、繰り返しの使用が可能となり、この点からも、コストの上昇が抑えられたものとなっている。
【0039】
また、本形態のフィルタボックス1は、フィルタボックス1の本体部3を、耐火性材料を固化して形成している。このようにして形成することで、形状の自由度に優れたフィルタボックス1を安価(容易)に製造できる。なお、本形態のフィルタボックス1(本体部3)は、図に示したように、外周形状が角部を持たないなめらかな湾曲形状となっている。耐火性材料を固化して形成していることで、このような形状に容易に形成できる。
【0040】
[
参考形態2]
本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2が本体部3に固定されていること以外は、
参考形態1と同様なフィルタボックス1である。本形態のフィルタボックス1におけるフィルタ2の近傍の構成を、
図4に拡大断面図で示した。
本形態のフィルタボックス1は、
図4に示したように、本体部3の底壁31にフィルタ2が接合材32で接合して固定されている。
接合材32は、フィルタ2が本体部3に固定できる材質であれば、その材質が限定されるものではない。例えば、モルタル等の接合材を用いることができる。
【0041】
本形態のフィルタボックス1は、
参考形態1と同様の効果を発揮できる。
また、本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2と本体部3との固定に接合材32が用いられている。この構成によると、フィルタ2と本体部3とを強固に固定できる。
なお、本形態では、接合材32が配されるフィルタ2と本体部3との接合部が、フィルタ同士を接合する従来の構成よりも少なくなっており、接合材32の使用量を低減できる。このため、接合材32自身が剥離するおそれが低下している。
【0042】
[
参考形態3]
本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2が保持されている場所が異なること以外は、
参考形態1と同様なフィルタボックス1である。本形態のフィルタボックス1の構成を、
図5に断面図(上記した
図2と同様な断面)で、それぞれ示した。
本形態のフィルタボックス1は、
図5に示したように、本体部3の底壁31にフィルタ2が保持されている。
本形態のフィルタボックス1は、
参考形態1と同様の効果を発揮できる。
【0043】
本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2が底壁31に保持されている。この構成によると、底壁31に保持されたフィルタ2を通過(透過)するアルミニウムの溶湯は、ドロス(介在物)の影響を受けにくく、フィルタ2の目詰まりが生じにくい。つまり、フィルタ2の交換までの時間を長くすることができ(フィルタ2の長寿命化)、この点からも、コストの上昇が抑えられたものとなっている。
【0044】
[
参考形態4]
本形態のフィルタボックス1は、本体部3の形状が異なること以外は、
参考形態1と同様なフィルタボックス1である。本形態のフィルタボックス1の構成を、
図6に斜視図で、
図7に断面図(
図6中のVII−VII線での断面)で、それぞれ示した。
【0045】
本形態のフィルタボックス1は、
図6〜
図7に示したように、本体部3の底壁31が平面ではなく、下方に凸となる形状に形成されている。より具体的には、底壁31は、平板状の底壁部310と、底壁部310と側壁30とを接続する傾斜した傾斜壁部311と、から形成される。
なお、本形態のフィルタボックス1では、底壁部310に接続する二つの側壁30,30にフィルタ2が保持される。
上記したように、本体部3が耐火性材料を固化してなる。図に示した形状で成形して固化させることで、本形態のフィルタボックス1(本体部3)を得られる。
本形態のフィルタボックス1は、
参考形態1と同様の効果を発揮できる。
【0046】
本形態のフィルタボックス1は、底壁31が下方に凸となる形状に形成されている。本形態のフィルタボックス1は、
図8に示した給湯室45(貯留部46)を有する連続熔解保持炉4で使用することができる。
図8に示したように、給湯室45(貯留部46)は、貯留部46の内部方向に凸となる部分46Aを有する。そして、本形態のフィルタボックス1は、底壁31(傾斜壁部311)がこの凸となる部分46Aに対応した形状を有するため、フィルタボックス1が貯留部46の凸となる部分46Aと干渉を生じない。
【0047】
本形態のフィルタボックス1は、本体部3の形状を任意の形状とすることができ、
図8に示したように、給湯室45(貯留部46)の内周形状に沿った形状とすることで、アルミニウムの溶湯のロスを抑えることができる。
【0048】
[
参考形態4の変形形態]
参考形態4では、フィルタボックス1(本体部3)の外周形状を給湯室45(貯留部46)の内周形状に沿った形状としているが、フィルタボックス1(本体部3)の内周形状についても同様に任意の形状とすることができる。すなわち、ラドル48でアルミニウムの溶湯を汲み出すときにラドル48の動きに干渉しない形状としてもよい。
【0049】
[
参考形態1〜4の変形形態]
上記した各形態の構成を組み合わせても良い。
たとえば、フィルタ2の数を1以上の任意の数とすることができる。また、本体部3の側壁30についても、平板形状以外の凹凸形状や湾曲形状としても良い。
【0050】
[
実施形態1]
本形態のフィルタボックス1は、フィルタ2、本体部6、を有する。本形態のフィルタボックス1の構成を、
図9に斜視図で、
図10に断面図(
図9中のX−X線での断面)で、それぞれ示した。なお、本形態の特に言及しない構成は、上記した各形態と同様である。
本形態のフィルタボックス1は、上記した
参考形態1〜2と同様に、上方に開口部を有する槽状を有する。
【0051】
本形態のフィルタボックス1は、槽状を区画する底壁(底面)をフィルタ2が形成する。フィルタ2は、上記した
参考形態1〜2と同様に、四角形の板状の多孔質セラミックスよりなる。フィルタ2は、筒状の本体部6の底に保持される(係止される)。
本体部6は、耐火性材料よりなる板材60を組み合わせて形成された断面四角形の四角筒を有する。
【0052】
板材60は、
図11に示したように、側辺が隣接する別の板材60’と係合可能な凹凸形状をなすように形成されている。この板材60は、
図11に示したように、一方の板材60の凸部61が別の板材60’の凹部62’(二つの凸部63’,63’に挟まれた部分)に係合する。このとき、一方の板材60の凹部62がさらに別の板材60の凸部61(二つの凸部63,63に挟まれた部分)に係合する。
板材60,60’は、垂直な方向をなすように係合される。
【0053】
この組み合わせを4枚の板材60で行い、本形態の本体部6が形成される。そして、本体部6の底にフィルタ2を保持させて(係止させて)、本形態のフィルタボックスが得られる。
板材60を形成する耐火性材料は、具体的な材質が限定されるものではない。本形態では、黒鉛系耐火材を用いることが好ましい。
本形態のフィルタボックス1は、槽状を区画する底壁をフィルタ2が形成する構成であり、上記した
参考形態2と同様の効果を発揮できる。
【0054】
本形態のフィルタボックス1は、本体部6を形成する板材60を黒鉛系耐火材で形成している。黒鉛系耐火材は、熱伝導性に優れている。このため、フィルタボックス1内のアルミニウムの溶湯の温度が、フィルタボックス1外の溶湯の温度と同等程度に維持できる。つまり、その後のダイカスト工程で、溶湯の温度低下による不具合の発生が生じにくくなっている。
【0055】
[
実施形態1の変形形態]
実施形態1では、板材60を組み合わせてなる本体部6が四角形の筒状であったが、この形状に限定されない。たとえば、
図12に示した6角形状等の多角形状としても良い。
【0056】
また、
図13に示したように、板材60の内表面の下端に凹状の係止溝64を形成しておき、筒状の本体部6を形成したときに、この係止溝64にフィルタ2の端部を挿入して係止する構成としてもよい。
これらの形態においても、
参考形態4と同様の効果を発揮できる。
【0057】
[
各形態のその他の変形形態]
上記した各形態のフィルタボックス1は、アルミニウムの連続熔解保持炉4で使用したときに、上記した効果を発揮するが、同様の機能を発揮できる溶湯であれば金属溶湯がアルミニウムの溶湯のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
本発明の実施例
及び参考例として、上記した
各形態のフィルタボックスを製造した。
各例において、フィルタ2には、連続した細孔を有するSiCフィルタ(孔数;11〜15個/25mm、厚さ;2cm)を用いた。SiCフィルタは、その組成を表1に示した。また、本体部3,6には表2に示した材質を用いた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
(
参考例1)
本例は、上記した
参考形態4の態様のフィルタボックスである。
本例のフィルタボックスは、本体部3が、表2に示したSiC系プレキャストにより製
造された。
【0062】
(
実施例1)
本例は、上記した
実施形態1の態様のフィルタボックスである。
本例のフィルタボックスは、フィルタ2が一つである。本体部3は、表2に示したC−SiC系を用いた。このC−SiC系は、黒鉛ルツボに用いられる材質であり、厚さ2cmの板材である。
【0063】
(評価)
上記の各例の評価として、実際の連続熔解保持炉4でアルミニウムの溶湯の汲み出しに使用し、評価を行った。
【0064】
なお、
参考例1のフィルタボックスは、層流ダイカストに適用した連続熔解保持炉4を評価に用いた。
実施例1のフィルタボックスは、普通ダイカストに適用した連続熔解保持炉4を評価に用いた。
【0065】
(フィルタ機能)
フィルタ機能の評価は、ラドルで汲み出されたアルミニウムの溶湯に含まれる介在物を調べた。いずれの例でも介在物が確認されず、介在物の除去ができたことが確認できた。すなわち、各例のフィルタボックスは、介在物が除去されたアルミニウムの溶湯を汲み出すことができることが確認できた。
【0066】
(損傷の有無)
損傷の有無の評価は、フィルタボックスの使用中の損傷の有無を目視で確認することで行った。
【0067】
参考例1では、早期から微細なクラックが確認されたが、それ以上の損傷は観察されなかった。このクラックは、最初にアルミニウムの溶湯に浸漬したときにフィルタボックスの内部と外部の温度差(あるいは、本体部3の厚さ方向での表面部と内部の温度差)に起因すると考えられる。すなわち、アルミニウムの溶湯に浸漬した状態(溶湯の汲み出し可能な状態)に保持されていれば、この温度差が生じないため、クラックの進展及びフィルタボックスの損傷が生じない。
実施例1では、本体部6に損傷は確認できなかった。
【0068】
(交換時期)
各例のフィルタボックスは、従来のフィルタのみから形成されるフィルタボックスよりも1ヶ月以上経過した後に、フィルタの交換を行った。
すなわち、実施例1
,参考例1のフィルタボックスは、従来のフィルタボックスよりも長寿命となっていることが確認できた。
【0069】
(内外温度差)
各例のフィルタボックスの使用時に、フィルタボックスの内部と外部のアルミニウムの溶湯の温度差を測定した。
各例のフィルタボックスでの温度差は、最大でおよそ30℃であった。この温度差は低いことが好ましく、実用上問題のない温度差であった。
【0070】
(まとめ)
上記したように、本発明のフィルタボックスを具体的に実施した各例のフィルタボックスによると、介在物が除去されたアルミニウムの溶湯を得ることができる。
その上で、高価なフィルタ2の使用量を少なくしているため、フィルタボックス自身のコストを低減できる。
【0071】
また、フィルタボックスの内外でのアルミニウムの溶湯の温度差の増大が抑えられており、その後のダイカストでの不良の発生が抑えられる。
更に、
参考例1のフィルタボックスでは、その形状を自由に形成できる。つまり、形状自由度に優れたフィルタボックスとなっている。