(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の型と前記第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも有する成形型と、前記第1の型と前記第2の型とのうち少なくとも1つの型の頂面に設けられたキャビティと、樹脂材料を前記キャビティに供給する材料供給機構と、前記成形型を型開きし型締めする型締め機構とを備え、前記キャビティの型面に沿って機能性フィルムが吸着され、前記樹脂材料から生成され前記キャビティの内部に存在する流動性樹脂が前記成形型が型締めされた状態において硬化することによって形成された硬化樹脂を含む成形品を製造する際に使用される樹脂成形装置であって、
前記キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、
前記外周吸着溝につながり前記1つの型を貫通する複数の外周貫通路と、
前記外周部の頂面において、前記キャビティを取り囲むようにして前記外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、
前記複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材と、
前記複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝と、
前記複数の主吸着溝にそれぞれ連通し前記1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路と、
前記キャビティの型面に形成された開口と、
前記開口につながり前記1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを備え、
前記外周吸着溝と前記複数の外周貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記外周吸着溝の内面に吸着され、
前記複数の主吸着溝と前記複数の主貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記複数の主吸着溝の内面に吸着され、
前記開口と前記キャビティ用貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記キャビティの型面に沿って吸着されることを特徴とする樹脂成形装置。
第1の型と前記第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも有する成形型のうち少なくとも1つの型の頂面に設けられたキャビティに機能性フィルムを供給する工程と、前記1つの型の頂面に前記機能性フィルムを吸着する工程と、前記キャビティに樹脂材料を供給する工程と、前記キャビティに前記樹脂材料を供給した後に型締め機構によって前記成形型を型締めする工程と、前記樹脂材料から生成され前記キャビティの内部に存在する流動性樹脂を前記成形型が型締めされた状態において硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、前記成形型を型開きする工程と、前記硬化樹脂を含む成形品を取り出す工程とを備えた樹脂成形方法であって、
前記機能性フィルムを吸着する工程は、次の工程を有することを特徴とする樹脂成形方法。
(11-1)前記キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、前記外周吸着溝につながり前記1つの型を貫通する複数の外周貫通路とを準備する工程。
(11-2)前記外周部の頂面において前記キャビティを取り囲むようにして前記外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、前記複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材とを準備する工程。
(11-3)前記複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝を準備する工程。
(11-4)前記複数の主吸着溝にそれぞれ連通し前記1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路を準備する工程。
(11-5)前記キャビティの型面に形成された開口と、前記開口につながり前記1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを準備する工程。
(11-6)前記1つの型の頂面に供給された前記機能性フィルムを加熱することによって前記機能性フィルムを軟らかくする工程。
(11-7)前記環状の外周吸着溝と前記複数の外周貫通路とを使用して、前記外周吸着溝の内面に前記機能性フィルムを吸着する工程。
(11-8)前記複数の主吸着溝と前記複数の主貫通路とを使用して、前記複数の主吸着溝の内面に前記機能性フィルムを吸着する工程。
(11-9)前記開口と前記キャビティ用貫通路とを使用して、前記キャビティの型面に前記機能性フィルムを吸着する工程。
外周吸着溝と主吸着溝とを使用して機能性フィルムを吸着 第1の型と、前記第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも備え、前記第1の型と前記第2の型とのうち少なくとも1つの型の頂面に設けられ樹脂材料が供給されるキャビティを更に備え、前記キャビティの型面に沿って機能性フィルムが吸着され、前記樹脂材料から生成され前記キャビティの内部に存在する流動性樹脂が前記成形型が型締めされた状態において硬化することによって形成された硬化樹脂を含む成形品を製造する際に使用される成形型であって、
前記キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、
前記外周吸着溝につながり前記1つの型を貫通する複数の外周貫通路と、
前記外周部の頂面において、前記キャビティを取り囲むようにして前記外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、
前記複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材と、
前記複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝と、
前記複数の主吸着溝にそれぞれ連通し前記1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路と、
前記キャビティの型面に形成された開口と、
前記開口につながり前記1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを備え、
前記外周吸着溝と前記複数の外周貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記外周吸着溝の内面に吸着され、
前記複数の主吸着溝と前記複数の主貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記複数の主吸着溝の内面に吸着され、
前記開口と前記キャビティ用貫通路とを介して、前記機能性フィルムが前記キャビティの型面に沿って吸着されることを特徴とする成形型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂封止金型によれば、次のような課題が発生する。使用する離型フィルムがある程度の柔らかさを有する材質であれば、環状突部によって離型フィルムに張力が加わるので、しわやたるみが発生することを防止できる。離型フィルムがある程度の硬さを有する材質の場合には、この環状突部があることによって、離型フィルムとキャビティとの間に隙間が発生し、離型フィルムをキャビティに密着させることができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するもので、離型フィルムにしわやたるみなどが発生しないようにして樹脂封止することができる樹脂成形装置及び樹脂成形方法並びに成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る樹脂成形装置は、第1の型と第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも有する成形型と、第1の型と第2の型とのうち少なくとも1つの型の頂面に設けられたキャビティと、樹脂材料をキャビティに供給する材料供給機構と、成形型を型開きし型締めする型締め機構とを備え、キャビティの型面に沿って機能性フィルムが吸着され、樹脂材料から生成されキャビティの内部に存在する流動性樹脂が成形型が型締めされた状態において硬化することによって形成された硬化樹脂を含む成形品を製造する際に使用される樹脂成形装置であって、キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、外周吸着溝につながり1つの型を貫通する複数の外周貫通路と、外周部の頂面において、キャビティを取り囲むようにして外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材と、複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝と、複数の主吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路と、キャビティの型面に形成された開口と、開口につながり1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを備え、外周吸着溝と複数の外周貫通路とを介して、機能性フィルムが外周吸着溝の内面に吸着され、複数の主吸着溝と複数の主貫通路とを介して、機能性フィルムが複数の主吸着溝の内面に吸着され、開口とキャビティ用貫通路とを介して、機能性フィルムがキャビティの型面に沿って吸着されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、外周部の頂面において複数の主凹部同士の間に設けられた複数の副凹部と、複数の副凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の副部材と、複数の副部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の副吸着溝と、複数の副吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の副貫通路とを備え、複数の副吸着溝と複数の副貫通路とを介して、機能性フィルムが複数の副吸着溝の内面に吸着されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、複数の副吸着溝は平面視して線分状の形状又は曲線状の形状を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、キャビティの平面形状は矩形であり、複数の主吸着溝は、キャビティの第1の辺と第1の辺に隣り合う第2の辺とにそれぞれ平行に設けられることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、機能性フィルムにおいて流動性樹脂に接触する機能面が有する要素が硬化樹脂の表面に転写されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、次の発明特定事項のうち少なくとも一方を有することを特徴とする。
・複数の主吸着溝は、複数の主貫通路の側が狭まる断面形状を有すること。
・複数の副吸着溝は、複数の副貫通路の側が狭まる断面形状を有すること。
【0015】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、次の発明特定事項のうち少なくとも一方を有することを特徴とする。
・複数の主吸着溝は、キャビティに近い側の内側面とキャビティから遠い側の内側面とが異なる傾きを有すること。
・複数の副吸着溝は、キャビティに近い側の内側面とキャビティから遠い側の内側面とが異なる傾きを有すること。
【0016】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、少なくとも複数の主凹部において、穴を有する板状部材を複数の主部材における頂面の反対面と複数の主凹部との間にそれぞれ配置して主吸着溝と穴とを連通させることによって、複数の主部材の頂面の高さ方向における位置が調整されることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、機能性フィルムは短冊状若しくは円状の形状又は長尺状の形状を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る樹脂成形装置は、上述の樹脂成形装置において、キャビティに少なくとも機能性フィルムを供給する材料供給モジュールと、成形型と型締め機構とを少なくとも有する少なくとも1つの成形モジュールとを備え、材料供給モジュールに対して1つの成形モジュールが着脱されることができ、他の成形モジュールに対して1つの成形モジュールが着脱されることができることを特徴とする。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明に係る樹脂成形方法は、第1の型と第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも有する成形型のうち少なくとも1つの型の頂面に設けられたキャビティに機能性フィルムを供給する工程と、1つの型の頂面に機能性フィルムを吸着する工程と、キャビティに樹脂材料を供給する工程と、樹脂材料から生成されキャビティの内部に存在する流動性樹脂を成形型が型締めされた状態において硬化させて硬化樹脂を形成する工程と、成形型を型開きする工程と、硬化樹脂を含む成形品を取り出す工程とを備えた樹脂成形方法であって、機能性フィルムを吸着する工程は、次の工程を有することを特徴とする。
・キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、外周吸着溝につながり1つの型を貫通する複数の外周貫通路とを準備する工程。
・外周部の頂面においてキャビティを取り囲むようにして外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材とを準備する工程。
・複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝を準備する工程。
・複数の主吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路を準備する工程。
・キャビティの型面に形成された開口と、開口につながり1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを準備する工程。
・1つの型の頂面に供給された機能性フィルムを加熱することによって機能性フィルムを軟らかくする工程。
・環状の外周吸着溝と複数の外周貫通路とを使用して、外周吸着溝の内面に機能性フィルムを吸着する工程。
・複数の主吸着溝と複数の主貫通路とを使用して、複数の主吸着溝の内面に機能性フィルムを吸着する工程。
・開口とキャビティ用貫通路とを使用して、キャビティの型面に機能性フィルムを吸着する工程。
・成形型を型締めする工程。
【0020】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、機能性フィルムを吸着する工程は、次の工程を更に有することを特徴とする。
・外周部の頂面において複数の主凹部同士の間に設けられた複数の副凹部と、複数の副凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の副部材とを準備する工程。
・複数の副部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の副吸着溝を準備する工程。
・複数の副吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の副貫通路を準備する工程。
・複数の副吸着溝と複数の副貫通路とを使用して、複数の副吸着溝の内面に機能性フィルムを吸着する工程。
【0021】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、複数の副吸着溝は平面視して線分状の形状又は曲線状の形状を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、キャビティの平面形状は矩形であり、複数の主吸着溝は、キャビティの第1の辺と第1の辺に隣り合う第2の辺とにそれぞれ平行に設けられることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、硬化樹脂を形成する工程において、機能性フィルムにおいて流動性樹脂に接触する機能面が有する要素を硬化樹脂の表面に転写させることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、次の発明特定事項のうち少なくとも一方を有することを特徴とする。
・複数の主吸着溝は、複数の主貫通路の側が狭まる断面形状を有すること。
・複数の副吸着溝は、複数の副貫通路の側が狭まる断面形状を有すること。
【0025】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、次の発明特定事項のうち少なくとも一方を有することを特徴とする。
・複数の主吸着溝は、キャビティに近い側の内側面とキャビティから遠い側の内側面とが異なる傾きを有すること。
・複数の副吸着溝は、キャビティに近い側の内側面とキャビティから遠い側の内側面とが異なる傾きを有すること。
【0026】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、少なくとも複数の主凹部において、穴を有する板状部材を複数の主部材における頂面の反対面と複数の主凹部との間にそれぞれ配置して主吸着溝と穴とを連通させることによって、複数の主部材の頂面の高さ方向における位置を調整する工程を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、機能性フィルムは短冊状若しくは円状の形状又は長尺状の形状を有することを特徴とする。
【0028】
本発明に係る樹脂成形方法は、上述の樹脂成形方法において、キャビティに少なくとも機能性フィルムを供給する材料供給モジュールを準備する工程と、成形型と型締め機構とを少なくとも有する少なくとも1つの成形モジュールを準備する工程とを備え、材料供給モジュールに対して1つの成形モジュールを着脱することができ、他の成形モジュールに対して1つの成形モジュールを着脱することができることを特徴とする。
【0029】
上記の課題を解決するために、本発明に係る成形型は、第1の型と、第1の型に相対向する第2の型とを少なくとも備え、第1の型と第2の型とのうち少なくとも1つの型の頂面に設けられ樹脂材料が供給されるキャビティを更に備え、キャビティの型面に沿って機能性フィルムが吸着され、樹脂材料から生成されキャビティの内部に存在する流動性樹脂が成形型が型締めされた状態において硬化することによって形成された硬化樹脂を含む成形品を製造する際に使用される成形型であって、キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に設けられた環状の外周吸着溝と、外周吸着溝につながり1つの型を貫通する複数の外周貫通路と、外周部の頂面において、キャビティを取り囲むようにして外周吸着溝の内側に設けられた複数の主凹部と、複数の主凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の主部材と、複数の主部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の主吸着溝と、複数の主吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の主貫通路と、キャビティの型面に形成された開口と、開口につながり1つの型を貫通するキャビティ用貫通路とを備え、外周吸着溝と複数の外周貫通路とを介して、機能性フィルムが外周吸着溝の内面に吸着され、複数の主吸着溝と複数の主貫通路とを介して、機能性フィルムが複数の主吸着溝の内面に吸着され、開口とキャビティ用貫通路とを介して、機能性フィルムがキャビティの型面に沿って吸着されることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る成形型は、上述の成形型において、外周部の頂面において複数の主凹部同士の間に設けられた複数の副凹部と、複数の副凹部のそれぞれに対して着脱できるようにしてはめ込まれた複数の副部材と、複数の副部材の頂面においてそれぞれ設けられた複数の副吸着溝と、複数の副吸着溝にそれぞれ連通し1つの型をそれぞれ貫通する複数の副貫通路とを備え、複数の副吸着溝と複数の副貫通路とを介して、機能性フィルムが複数の副吸着溝の内面に吸着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、キャビティの外側の部分からなる外周部の頂面に環状の外周吸着溝が設けられ、キャビティを取り囲むようにして外周吸着溝の内側に複数の主凹部が設けられる。主凹部に着脱できるようにして主部材がはめ込まれ、主部材の頂面において主吸着溝が設けられる。環状の外周吸着溝の内面に機能性フィルムが吸着された状態において、環状の外周吸着溝の内側に設けられた複数の主吸着溝の内面に、機能性フィルムが吸着される。複数の主吸着溝の内面に機能性フィルムが吸着された状態において、キャビティの型面に沿って、機能性フィルムが吸着される。機能性フィルムに均一な張力が加えられるので、機能性フィルムにしわやたるみなどが発生することが抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図2に示されるように、下型11を、周面部材9と底面部材10とによって構成する。周面部材9の外周に沿って外周吸着溝16を設ける。下型11に被覆された離型フィルム15を外周吸着溝16に吸着することによって離型フィルム15を下型11に固定する。外周吸着溝16の内側に複数の主凹部18を形成する。複数の主凹部18に主吸着溝20を有する組み込み用の主部材21を装着する。主吸着溝20の断面は、開口部が幅広でV字形になるように形成される。環状の外周吸着溝16の内面に離型フィルム15が吸着された状態において、離型フィルム15を主吸着溝20に吸着する。このことによって、離型フィルム15に均一な張力を加える。複数の主吸着溝20の内面に離型フィルム15が吸着された状態において、キャビティ13の型面に沿って離型フィルム15を吸着する。したがって、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することを防止できる。加えて、主吸着溝20が形成された主部材21を取り換えることによって、離型フィルム15の特性に対応した断面形状や深さを有する主吸着溝20を適用することができる。
【実施例1】
【0034】
本発明の実施例1に係る樹脂成形装置1が備える成形モジュール2の構成を、
図1を参照して説明する。本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0035】
図1(a)に示されるように、樹脂成形装置1において、成形モジュール2は下部基台3を有する。下部基台3の四隅に、支持部材である4本のタイバー4が固定される。上方に向かって伸びる4本のタイバー4の上部に、下部基台3に相対向する上部基台5が固定される。下部基台3と上部基台5との間において、下部基台3と上部基台5のそれぞれに相対向する昇降盤6が、4本のタイバー4にはめ込まれる。下部基台3の上には型締め機構7が固定される。型締め機構7は、型締めと型開きとを行うために昇降盤6を昇降させる機構である。昇降盤6は、型締め機構7によって上昇又は下降する。
【0036】
上部基台5の下面には上型8が固定される。上型8の真下には、上型8に相対向して枠状の周面部材9が設けられる。周面部材9の上面が上型8の下面に対向する。周面部材9の中央部には、平面視して矩形の貫通穴が設けられる。周面部材9の貫通穴にはめ込まれて、矩形の平面形状を有する底面部材10が設けられる。周面部材9の貫通穴において、底面部材10は周面部材9に対して相対的に昇降することができる。周面部材9と底面部材とは、型締め機構7(具体的には昇降盤6)によって一括して上下に駆動される。
【0037】
周面部材9と底面部材10とは、併せて下型11を構成する。上型8と下型11とは、併せて1組の成形型12(以下単に「成形型12」という。)を構成する。上型8と下型11とにはヒータ(図示なし)が設けられる。
【0038】
図1(b)に示されるように、下型11の上面には、樹脂材料が供給される空間からなるキャビティ13が形成される。キャビティ13は、長辺と短辺とを持つ矩形の平面形状を有する。キャビティ13を取り囲む部分を「キャビティの側面」と呼び、キャビティ13の底を構成する部分を「キャビティの内底面」と呼ぶ。キャビティ13の側面は周面部材9の内周面によって構成される。キャビティ13の内底面は底面部材10の頂面(図では上面)によって構成される。キャビティ13は、周面部材9の内周面と底面部材10の頂面とによって囲まれた空間である。
【0039】
図1(a)に示されるように、昇降盤6の上面には、底面部材10と複数の弾性体(コイルばね、皿ばねなど)14とが固定される。複数の弾性体14の上には周面部材9が置かれる。型締め機構7により昇降盤6が昇降することによって、下型11(周面部材9及び底面部材10)が昇降する。底面部材10と昇降盤6との間において複数の弾性体(図示なし)を設けてもよい。
【0040】
図2を参照して、本発明の実施例1に係る樹脂成形装置1において使用される下型11の構成を説明する。下型11は、周面部材9と底面部材10とによって構成される。周面部材9の貫通穴に底面部材10がはめ込まれる。周面部材9の内周面と底面部材10の内底面とによって囲まれた空間がキャビティ13になる。下型11の上方には機能性フィルムの一種である離型フィルム15が供給され、離型フィルム15によって下型11が被覆される。離型フィルム15における流動性樹脂に接触する面からなる機能面FSは、キャビティ13において成形された硬化樹脂に対する低密着性を有する。ヒータ(図示なし)によって離型フィルム15が加熱されることにより、離型フィルム15が軟化して伸展する。言い換えれば、離型フィルム15の柔軟性、伸展性などの特性は、加熱されることによって変化する。
【0041】
離型フィルム15としては、耐熱性、離型性、柔軟性、伸展性などの特性を有する樹脂材料が使用される。例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンなどが用途に応じて使用される。離型フィルム15の特性は材料によって異なる。離型フィルム15としては、短冊状にカットされる離型フィルム、又は、フィルム供給リールからフィルム巻き取りリールまで連続して供給される長尺状(ロール状)の離型フィルムのいずれかが使用される。
【0042】
図2(a)に示されるように、周面部材9の外周に沿って、キャビティ13を取り囲むように、平面視して閉じた環状の平面形状を有する外周吸着溝16が設けられる。外周吸着溝16は、離型フィルム15を吸着して周面部材9の上面(頂面)に固定するための吸着溝である。環状の平面形状を有する外周吸着溝16は、つながっていてもよく、1箇所又は複数箇所において途切れていてもよい。
【0043】
外周吸着溝16は、所定の幅と所定の深さと所定の断面形状とを有する。
図2においては、例えば、外周吸着溝16の内側面が垂直になるように形成されている。外周吸着溝16には、離型フィルム15を吸着して固定するための複数の外周貫通路17が一定の間隔をおいて形成される。外周貫通路17は、外周吸着溝16の表面から周面部材9を貫通する。
【0044】
図2(b)に示されるように、周面部材9において、外周吸着溝16の内側には分割された複数の主凹部18が形成される。複数の主凹部18の底面から周面部材9を貫通する複数の主貫通路19が形成される。複数の主凹部18には、主吸着溝20を有する組み込み用の主部材21がそれぞれはめ込まれて装着される。それぞれの主吸着溝20は、外周吸着溝16に吸着された離型フィルム15を吸着してその離型フィルム15に張力を加えるための吸着溝である。
【0045】
各主部材21において、主吸着溝20の表面から主部材21を貫通して、離型フィルム15を吸着して張力を加えるための複数の主吸着路22が、一定の間隔をおいて形成される。各主部材21がそれぞれの主凹部18に装着された状態で、複数の主吸着路22は、周面部材9に形成されたそれぞれの主貫通路19に連通する。周面部材9に形成された主貫通路19の内径は、主部材21に形成された主吸着路22の内径よりも大きく形成されている。周面部材9において、主吸着溝20の表面から主吸着路22と主貫通路19とを経由して吸引通路が形成される。言い換えれば、主部材21に形成されたそれぞれの主吸着路22は、周面部材9に形成されたそれぞれの主貫通路19に連通して、周面部材9における吸引通路として機能する。
【0046】
各主吸着溝20は、それぞれ組み込み用の主部材21に予め形成されている。各主部材21が周面部材9に形成された複数の主凹部18にそれぞれはめ込まれて装着されることによって、キャビティ13の周囲を取り囲む主吸着溝20の集合体が構成される。周面部材9において分割される主凹部18の数(言い換えれば、組み込み用の主部材21の数又は主吸着溝20の数)は、下型11の大きさ、使用する離型フィルム15の特性などに対応して任意に設定される。
【0047】
例えば、周面部材9において、キャビティ13の長辺に隣接して平行に、長辺用の主凹部18が形成される。長辺用の主凹部18は、
図2(a)において上下方向に沿って伸びる相対向する2個の主凹部18として示される。これらの長辺用の主凹部18に長辺用の主部材21が装着される。長辺用の主部材21には、長辺方向に沿う主吸着溝20が予め形成されている。同様に、キャビティ13の短辺に隣接して平行に、短辺用の主凹部18が形成される。短辺用の主凹部18は、
図2(a)において左右方向に沿って伸びる相対向する2個の主凹部18として示される。これらの短辺用の主凹部18に短辺用の主部材21が装着される。短辺用の主部材21には、短辺方向に沿う主吸着溝20が予め形成されている。
【0048】
主吸着溝20は、所定の幅と所定の深さと所定の断面形状とを有する。
図2において、主吸着溝20の断面は、それぞれの内側面が斜めになるようにV字形に形成されている。主吸着溝20の開口部を幅広に形成することによって、主吸着溝20に離型フィルム15を安定して吸着することができる。主吸着溝20の内側面については、少なくともどちらか一方の内側面が斜めになるように形成してもよい。主吸着溝20が主貫通路19に直接つながるようにして、主吸着溝20の形状を形成してもよい。この場合には、主吸着路22を設ける必要がない。主吸着溝20と主貫通路19とが連通する態様には、主吸着溝20と主貫通路19とが直接連通する態様と、主吸着溝20と主貫通路19とが主吸着路22を介して連通する態様との双方が、含まれる。
【0049】
図2(b)に示されるように、周面部材9の貫通穴23には底面部材10がはめ込まれる。周面部材9の内周面と底面部材10の側面との間には、わずかな隙間が形成される。この隙間が形成されることによって、周面部材9の貫通穴23において底面部材10が昇降することができる。底面部材10には、離型フィルム15をキャビティ13の型面に沿って吸着するための複数のキャビティ用貫通路24が形成される。複数のキャビティ用貫通路24は、底面部材10の側面から底面に向かって形成される。複数のキャビティ用貫通路24は、底面部材10の側面においてそれぞれ開口Aを形成する。したがって、キャビティ13は、開口Aと、その開口Aにつながるキャビティ用貫通路24とを経由して、下型11の外部の空間に連通する。
図2においては、複数のキャビティ用貫通路24を底面部材10に形成した。これに限らず、複数のキャビティ用貫通路24を周面部材9に形成してもよい。
【0050】
下型11の型面に離型フィルム15を吸着する工程を説明する。まず、加熱されることによって軟化し始めた離型フィルム15の外周部付近を、外周吸着溝16の内側面に吸着する。次に、外周部付近が吸着され引き続き軟化して伸展する離型フィルム15を、外周部付近よりも内側において主吸着溝20の内側面に吸着する。次に、外周部付近と外周部付近よりも内側の部分とにおいて吸着され引き続き軟化して伸展する離型フィルム15における中央部付近を、開口Aによってキャビティ13の型面に吸着する。ここまでの工程によって、キャビティ13の型面に離型フィルム15を吸着する。
【0051】
以下、次の工程によって樹脂封止を行う。まず、キャビティ13に(正確には、キャビティ13の型面に吸着された離型フィルム15によって囲まれた空間に)、樹脂材料を供給する。次に、樹脂材料を加熱して溶融させて溶融樹脂(流動性樹脂)を生成した後に、上型8と下型11とを型締めする。これによって、予め上型8の下面に吸着した基板に装着されたチップを、溶融樹脂に浸漬する。次に、溶融樹脂を硬化させて硬化樹脂を生成する。次に、上型8と下型11とを型開きして、基板とチップと硬化樹脂とを有する成形品を取り出す。
【0052】
本実施例によれば、第1に、主吸着溝20の開口部が幅広になるように、主吸着溝20の断面がV字形に形成されることによって、離型フィルム15を主吸着溝20の内側面に安定して吸着することができる。このことによって、離型フィルム15に均一な張力を加えることができるので、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することを防止できる。
【0053】
第2に、各主吸着溝20はそれぞれの主部材21に形成され、それぞれの主部材21が1つの構成単位として周面部材9に装着される。それぞれの主部材21を取り換えることによって主吸着溝20の断面形状や深さなどを変更することができる。したがって、離型フィルム15の特性、例えば、離型フィルム15の柔軟性、伸展性などに対応して主吸着溝20の断面形状や深さなどを最適化することができる。離型フィルム15が柔らかい材質であれば深い主吸着溝20を適用することができる。離型フィルム15が硬い材質であれば浅い主吸着溝20を適用することができる。各主吸着溝20が設けられたそれぞれの主部材21を取り換えることによって、様々な特性を有する離型フィルム15に対応した主吸着溝20を適用することができる。したがって、離型フィルム15の特性に対応するように新しい周面部材9を作製する必要がないので、下型11を効率的に使用することができる。加えて、下型11を作製する費用を安くすることができる。
【0054】
なお、「キャビティ13の型面」という文言は、流動性樹脂が存在する空間であるキャビティ13を構成する面を意味し、成形型12の型面に限定されない。「キャビティ13の型面」という文言は、成形型
12を構成する部材同士の間の隙間が空間としてのキャビティ13に接する面を含む。
【0055】
本実施例においては、組み込み用の主部材21の上面と周面部材9の上面とが一致するように主凹部18の深さと主部材21の高さとを同じ大きさに設定した。これに限らず、主凹部18の深さを主部材21の高さよりも大きくして、主部材21の上面を周面部材9の上面よりも低くすることができる。主凹部18の内底面と主部材21の下面との間に、主貫通路19に対応する貫通穴を有する薄い部材をスペーサとして配置してもよい。このことによって、主部材21の上面と周面部材9の上面との高さ位置を調整することができる。主部材21の上面を周面部材9の上面よりも低くすることによって、離型フィルム15を主吸着溝20にいっそう安定して吸着することができる。したがって、離型フィルム15にいっそう均一な張力を加えることができる。
【0056】
本実施例においては、周面部材9に複数の主凹部18を形成して、各主凹部18に組み込み用の主部材21をそれぞれ装着した。これに限らず、周面部材9に複数の主凹部18に代えて複数の貫通口を形成して、各貫通口に組み込み用の主部材21をそれぞれはめ込んで装着することができる。この場合であれば、周面部材9に複数の主貫通路19を形成する必要がなく、主吸着溝20に形成された複数の主吸着路22自体が、周面部材9における吸引通路として機能する。
【実施例2】
【0057】
図3を参照して、本発明の実施例2に係る樹脂成形装置1において使用される下型11の構成を説明する。
図2に示した下型11との違いは、主吸着溝20に加えてコーナー溝(副吸着溝)を更に設けたことである。それ以外の構成は、
図2に示した下型11と同じなので説明を省略する。
【0058】
図3(a)に示されるように、周面部材9の4隅には、キャビティ13のコーナー(角部)用の凹部である副凹部25が、それぞれ形成される。各副凹部25には、コーナー溝(副吸着溝)26を有する組み込み用の副部材27が、それぞれはめ込まれて装着される。
図3においては、コーナー用の部材である副部材27に、直線状の形状を有するコーナー溝26が予め設けられている。コーナー溝26は、離型フィルム15に張力を加えるための吸着溝である。コーナー溝26は、所定の平面形状と所定の幅と所定の深さと所定の断面形状とを有する。主吸着溝20と同様に、コーナー溝26は、内側面が斜めになるようにV字形に形成される。コーナー溝26には、離型フィルム15を吸着して張力を加えるための吸着孔(副貫通路)28が1個又は複数個形成される。コーナー溝26に形成された吸着孔(副貫通路)28は、周面部材9に形成されたそれぞれの主貫通路19に連通して、周面部材9における吸引通路として機能する。主吸着溝20に加えてコーナー溝26を設けることによって、離型フィルム15におけるキャビティ13の4辺付近において、加えて、4つのコーナー付近において、離型フィルム15に対していっそう均一な張力を加えることができる。したがって、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することをいっそう防止できる。
【0059】
本実施例によれば、周面部材9に複数の主吸着溝20と複数のコーナー溝26とを設けて、離型フィルム15に張力を加える。このことによって、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することを防止できる。主吸着溝20と同様に、コーナー溝26は、コーナー用の副部材27を取り換えることによってコーナー溝26の平面形状、断面形状、深さなどを変更することができる。したがって、離型フィルム15の柔軟性、伸展性などに対応してコーナー溝26の平面形状、断面形状、深さなどを最適化することができる。離型フィルム15が柔らかい材質であれば深いコーナー溝26を適用することができる。離型フィルム15が硬い材質であれば浅いコーナー溝26を適用することができる。各コーナー溝26が設けられたそれぞれの副部材27を取り換えることによって、様々な離型フィルム15に対応したコーナー溝26を適用することができる。したがって、離型フィルム15の特性に対応して新しい周面部材9を作製する必要がないので、下型11を効率的に使用することができる。加えて、下型11を作製する費用を安くすることができる。
【0060】
図4(a)〜(c)は、周面部材9に設けられるコーナー溝26の平面形状をそれぞれ示す。
図4(a)は、
図3に示された直線状(線分状)のコーナー溝26を示す。コーナー溝26は、内側面が斜めになるようにV字形に形成される。
図3に示されるように、直線状のコーナー溝26は、キャビティ13の長辺及び短辺に対して45度の傾きを持つ。直線状のコーナー溝26は、その垂直2等分線がキャビティ13のコーナー(角部)に向かうようにして、周面部材9の4隅に設けられる。コーナー溝26には、1個又は複数個の吸着孔28が形成される。コーナー溝26を周面部材9に設けることによって、キャビティ13の各コーナーを通ってコーナー溝26に垂直な方向に沿って離型フィルム15に均一な張力を加えることができる。「直線状のコーナー溝26の垂直2等分線がキャビティ13のコーナー(角部)に向かう」という文言は、その垂直2等分線がキャビティ13のコーナーの近傍に向かう場合を含む。
【0061】
図4(b)は、円弧状のコーナー溝29が、その円弧を含む円の中心がキャビティ13のコーナーの側に位置し、かつ、その円弧の中点とその円弧を含む円の中心とを結ぶ線がキャビティ13のコーナー又はコーナーの近傍を通るようにして形成された場合を示す。コーナー溝29は、内側面が斜めになるようにV字形に形成されている。コーナー溝29には、1個又は複数個の吸着孔30が形成される。円弧状のコーナー溝29とキャビティ13のコーナーとの位置関係に起因して、キャビティ13の各コーナーを通って各コーナー溝29の中点に向かう方向に沿って離型フィルム15に均一な張力を加えることができる。
【0062】
図4(c)は、円弧状の複数のコーナー溝31、32が、キャビティ13のコーナーに対してコーナー溝31が遠い側になりコーナー溝32が近い側になるようにして形成された場合を示す。コーナー溝31、32は、それらの円弧を含む円の中心がキャビティ13のコーナーの側に位置し、かつ、それらの円弧の中点とそれらの円弧を含む円の中心とを結ぶ線がキャビティ13のコーナー又はコーナーの近傍を通るようにして形成される。コーナー溝31、32は、それぞれの内側面が斜めになるようにV字形に形成されている。コーナー溝31、32には、それぞれ1個又は複数個の吸着孔33が形成される。円弧状の複数のコーナー溝31、32とキャビティ13のコーナーとの位置関係に起因して、キャビティ13の各コーナーを通って各コーナー溝31、32の中点に向かう方向に沿って離型フィルム15にいっそう均一な張力を加えることができる。
図4(a)〜(c)に示されたそれぞれの吸着孔28、30、33は、
図3に示された周面部材9に形成されたそれぞれの主貫通路19に連通して、周面部材9における吸引通路として機能する。
【実施例3】
【0063】
図5〜
図8を参照して、本発明の実施例3に係る樹脂成形方法において、基板を樹脂封止する工程について説明する。下型11としては、
図3に示したコーナー溝26を有する下型11を使用する。
図5(a)に示されるように、まず、上型8と下型11とを型開きする。上型8には基板を装着する基板装着部34が設けられる。次に、基板搬送機構(図示なし)を使用して、例えば、半導体チップ35が装着された基板36を上型8と下型11との間の所定位置に搬送する。次に、基板36を上昇させて、上型8に設けられた基板装着部34に基板36を吸着又はクランプによって固定する。基板36は、半導体チップ35を装着した主面が下側に向くようにして上型8の下面に固定される。
【0064】
下型11において、外周吸着溝16に形成された外周貫通路17、主吸着溝20に形成された主吸着路22及び主貫通路19、コーナー溝26に形成された吸着孔28及び主貫通路19(
図3(b)参照)、貫通穴23及び底面部材10に形成されたキャビティ用貫通路24は、それぞれ吸引用配管37を介して、例えば、吸引機構である真空ポンプ38に接続される。3系統の吸引用配管37には、開閉弁(図示なし)がそれぞれ設けられる。吸引機構として、真空ポンプに接続された減圧タンクを使用してもよい。
【0065】
次に、
図5(b)に示されるように、離型フィルム供給機構(図示なし)を使用して、下型11に離型フィルム15を供給する。離型フィルム15としては、予め短冊状にカットされた離型フィルム、又は、長尺状の離型フィルムのいずれかを使用する。
図5(b)は、短冊状にカットされた離型フィルム15を下型11に供給した場合を示す。
【0066】
次に、周面部材9において、外周吸着溝16に形成されたそれぞれの外周貫通路17と真空ポンプ38とをつなぐ吸引用配管37aに設けられた開閉弁(図示なし)を開ける。これにより、離型フィルム15を外周吸着溝16の内面に吸着する。下型11に被覆された離型フィルム15は、下型11の外周吸着溝16に引き込まれ、離型フィルム15の外周部が外周吸着溝16の内面に沿って吸着される。このことによって、離型フィルム15が下型11の上面に固定される。
【0067】
次に、
図6(a)に示されるように、周面部材9に形成されたそれぞれの主貫通路19を経由して、主吸着溝20に形成されたそれぞれの主吸着路22及びコーナー溝26に形成されたそれぞれの吸着孔28(
図3(b)参照)と真空ポンプ38とをつなぐ吸引用配管37bに設けられた開閉弁(図示なし)を開ける。これにより、離型フィルム15を主吸着溝20の内面とコーナー溝26の内面とに吸着する。主吸着溝20の断面とコーナー溝26の断面とは、開口部が幅広でV字形に形成される。これらのことにより、離型フィルム15をそれぞれの主吸着溝20の内面とコーナー溝26の内面とに安定して吸着することができる。このことによって、離型フィルム15に均一な張力が加わるので、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することを防止できる。主吸着溝20に加えてコーナー溝26を設けているので、いっそう均一な張力を離型フィルム15に加えることができる。
【0068】
次に、
図6(b)に示されるように、貫通穴23と底面部材10に形成されたキャビティ用貫通路24と真空ポンプ38とをつなぐ吸引用配管37cに設けられた開閉弁(図示なし)を開ける。これにより、離型フィルム15をキャビティ13の型面に沿うように吸着する。貫通穴23において周面部材9の内周面と底面部材10の側面との間に形成された隙間と底面部材10に形成されたキャビティ用貫通路24とを介して、離型フィルム15がキャビティ13の型面に沿って吸着される。離型フィルム15には主吸着溝20とコーナー溝26とによって均一な張力が加わっているので、キャビティ13の形状に対応して離型フィルム15をキャビティ13の型面に密着させることができる。
【0069】
次に、
図7(a)に示されるように、樹脂材料供給機構(図示なし)を使用して、下型11に設けられたキャビティ13に所定量の樹脂材料39を供給する。樹脂材料39としては、顆粒状、粉状、粒状、ペースト状、ゼリー状などの樹脂、又は、常温で液状の樹脂(液状樹脂)などを使用することができる。本実施例においては、樹脂材料39として顆粒状の樹脂(顆粒樹脂)を使用する場合について説明する。なお、
図7、
図8においては、吸引用配管37及び真空ポンプ38の図示を省略する。
【0070】
次に、
図7(b)に示されるように、上型8及び下型11に設けられた加熱手段(図示なし)によって顆粒樹脂39を加熱する。加熱することによって顆粒樹脂39を溶融し流動性樹脂40を生成する。なお、樹脂材料39としてキャビティ13に液状樹脂を供給した場合には、その液状樹脂自体が流動性樹脂40に相当する。次に、型締め機構7(
図1(a)参照)を使用して昇降盤6を上昇させる。昇降盤6を上昇させることによって、下型11を構成する周面部材9と底面部材10とが同時に上昇する。昇降盤6が上昇することによって、周面部材
9の上面が基板36の主面(図では下面)における周縁部に接触して基板36をクランプする。このことによって、上型8と下型11とが型締めされる。したがって、キャビティ13は上型8と下型11とによって密閉される。この状態において、半導体チップ35が流動性樹脂40の中に浸漬される。
【0071】
なお、上型8と下型11と型締めする過程において、真空引き機構(図示なし)を使用してキャビティ13内を吸引して減圧することが好ましい。このことによって、キャビティ13内に残留する空気や流動性樹脂40中に含まれる気泡などを成形型12(上型8及び下型11)の外部に排出することができる。
【0072】
次に、
図8(a)に示されるように、型締め機構7(
図1(a)参照)を使用して昇降盤6を更に上昇させる。周面部材9の上面はすでに上型8の下面と密着しているので、底面部材10のみが周面部材9の貫通穴23において上昇する。この状態において、底面部材10が所定の圧力で流動性樹脂40を加圧する。所定温度で所定時間加圧することによって流動性樹脂40を硬化させて硬化樹脂41を形成する。このことによって、キャビティ13における基板36に装着された半導体チップ35と基板36の主面(図では下面)とは、硬化樹脂41によって樹脂封止される。
【0073】
次に、
図8(b)に示されるように、基板36と半導体チップ35と硬化樹脂41とを有する成形品42を形成した後に、型締め機構7(
図1(a)参照)を使用して下型11を下降させる。この状態で、上型8と下型11とが型開きされる。次に、樹脂封止された成形品42に対する吸着又はクランプを解除した後に、成形品42を上型8から取り出す。取り出された成形品42を基板搬送機構(図示なし)によって基板収納部に収納する。下型11から取り出された離型フィルム15を廃棄する。ここまでの工程によって樹脂封止が完了する。
【0074】
次に、硬化樹脂41によって半導体チップ35が樹脂封止された成形品42を、最終製品に相当する領域を単位にして個片化する。領域には、例えば、1個の半導体チップ35が含まれる。ここまでの工程によって、最終製品としての個片化された電子部品が完成する。
【0075】
本実施例によれば、第1に、外周吸着溝16に沿って離型フィルム15を下型11の上面に固定する。次に、主吸着溝20とコーナー溝26とに離型フィルム15を吸着することによって離型フィルム15に均一な張力を加える。次に、貫通穴23における隙間と底面部材10に形成されたキャビティ用貫通路24とを介して離型フィルム15をキャビティ13の型面に吸引する。このことによって、離型フィルム15にしわやたるみなどが発生することなく、離型フィルム15をキャビティ13の型面に沿って密着させることができる。
【0076】
第2に、主吸着溝20が設けられた主部材21及びコーナー溝26が設けられた副部材27をそれぞれ取り換えることによって、主吸着溝20及びコーナー溝26の断面形状や深さなどを変更することができる。したがって、離型フィルム15の柔軟性、伸展性などに対応して主吸着溝20及びコーナー溝26の断面形状や深さなどを最適化することができる。
【実施例4】
【0077】
図9を参照して、本発明の実施例4に係る樹脂成形装置1を説明する。
図9に示される樹脂成形装置1は、基板供給・収納モジュール43と、3つの成形モジュール44A、44B、44Cと、材料供給モジュール45とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素である基板供給・収納モジュール43と、成形モジュール44A、44B、44Cと、材料供給モジュール45とは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。例えば、基板供給・収納モジュール43と成形モジュール44Aとが装着された状態において、成形モジュール44Aに成形モジュール44Bが装着され、成形モジュール44Bに材料供給モジュール45が装着されることができる。
【0078】
基板供給・収納モジュール43には、封止前基板46を供給する封止前基板供給部47と、封止済基板48を収納する封止済基板収納部49と、封止前基板46及び封止済基板48を受け渡しする基板載置部50と、封止前基板46及び封止済基板48を搬送する基板搬送機構51とが設けられる。基板載置部50は、基板供給・収納モジュール43内において、Y方向に移動する。基板搬送機構51は、基板供給・収納モジュール43及びそれぞれの成形モジュール44A、44B、44C内において、X方向及びY方向に移動する。所定位置S1は、基板搬送機構51が動作しない状態において待機する位置である。
【0079】
各成形モジュール44A、44B、44Cには、それぞれ成形モジュール2が設けられる。成形モジュール2には、昇降可能な下型11と、下型11に相対向して配置された上型8(
図1参照)とが設けられる。各成形モジュール2は、上型8と下型11とを型締め及び型開きする型締め機構7(二点鎖線で示す円形の部分)を有する。離型フィルム15と樹脂材料39(
図7(a)参照)とが供給されるキャビティ13が下型11に設けられる。下型11と上型8とは、相対的に移動して型締め及び型開きできればよい。
【0080】
材料供給モジュール45には、X−Yテーブル52と、X−Yテーブル52上に離型フィルム15(
図2(b)参照)を供給する離型フィルム供給機構53と、所定量の樹脂材料39を収容する樹脂材料収容機構54と、樹脂材料収容機構54に樹脂材料39を投入する樹脂材料投入機構55と、離型フィルム15及び樹脂材料収容機構54を搬送する材料搬送機構56とが設けられる。X−Yテーブル52は、材料供給モジュール45内においてX方向及びY方向に移動する。材料搬送機構56は、材料供給モジュール45及びそれぞれの成形モジュール44A、44B、44C内において、X方向及びY方向に移動する。所定位置T1は、X−Yテーブル52が動作しない状態において待機する位置である。所定位置M1は、材料搬送機構56が動作しない状態において待機する位置である。
【0081】
図9を参照して、樹脂成形装置1を使用して樹脂封止する工程について説明する。まず、基板供給・収納モジュール43において、封止前基板供給部47から基板載置部50に封止前基板46を送り出す。次に、基板搬送機構51を所定位置S1から−Y方向に移動させて基板載置部50から封止前基板46を受け取る。基板搬送機構51を所定位置S1に戻す。次に、例えば、成形モジュール44Bの所定位置P1まで+X方向に基板搬送機構51を移動させる。次に、成形モジュール44Bにおいて、基板搬送機構51を−Y方向に移動させて下型11上の所定位置C1に停止させる。次に、基板搬送機構51を上昇させて封止前基板46を上型8に固定する(
図5(b)参照)。基板搬送機構51を基板供給・収納モジュール43の所定位置S1まで戻す。
【0082】
次に、材料供給モジュール45において、離型フィルム供給機構53からX−Yテーブル52の上に載置された離型フィルム15を所定の大きさにカットする。次に、材料搬送機構56を所定位置M1から−Y方向に移動させてX−Yテーブル52から離型フィルム15を受け取る。材料搬送機構56を所定位置M1に戻す。次に、成形モジュール44Bの所定位置P1まで−X方向に材料搬送機構56を移動させる。次に、成形モジュール44Bにおいて、材料搬送機構56を−Y方向に移動させて下型11上の所定位置C1に停止させる。次に、材料搬送機構56を下降させて離型フィルム15を下型11に載置する(
図5(b)参照)。材料搬送機構56を材料供給モジュール45の所定位置M1まで戻す。
【0083】
次に、X−Yテーブル52を所定位置T1から−Y方向に移動させて、X−Yテーブル52を樹脂材料収容機構54の下方の所定位置に停止させる。X−Yテーブル52の上に樹脂材料収容機構54を載置する。樹脂材料収容機構54が載置されたX−Yテーブル52を+X方向に移動させて、樹脂材料収容機構54を樹脂材料投入機構55の下方の所定位置に停止させる。X−Yテーブル52をX方向及びY方向に移動させることによって、樹脂材料投入機構55から樹脂材料収容機構54に所定量の樹脂材料39(
図7(a)参照)を供給する。樹脂材料収容機構54が載置されたX−Yテーブル52を所定位置T1に戻す。
【0084】
次に、材料搬送機構56を所定位置M1から−Y方向に移動させて、X−Yテーブル52の上に載置されている樹脂材料収容機構54を受け取る。材料搬送機構56を所定位置M1に戻す。次に、材料搬送機構56を成形モジュール44Bの所定位置P1まで−X方向に移動させる。次に、成形モジュール44Bにおいて、材料搬送機構56を−Y方向に移動させて下型11上の所定位置C1に停止させる。材料搬送機構56を下降させて、樹脂材料39をキャビティ13に供給する(
図7(a)参照)。材料搬送機構56を所定位置M1まで戻す。
【0085】
次に、成形モジュール2において、型締め機構7によって下型11を上昇させ、上型8と下型11とを型締めする(
図7(b)参照)。所定時間が経過した後、上型8と下型11とを型開きする(
図8(b)参照)。次に、基板供給・収納モジュール43の所定位置S1から下型11上の所定位置C1に基板搬送機構51を移動させて、封止済基板48を受け取る。次に、基板搬送機構51を移動させ、基板載置部50に封止済基板48を受け渡す。基板載置部50から封止済基板収納部49に封止済基板48を収納する。この段階において、樹脂封止が完了する。
【0086】
本実施例においては、基板供給・収納モジュール43と材料供給モジュール45との間に、3個の成形モジュール44A、44B、44CをX方向に並べて装着した。基板供給・収納モジュール43と材料供給モジュール45とを1つのモジュールにして、そのモジュールに1個の成形モジュール44AをX方向に並べて装着してもよい。これにより、成形モジュール44A、44B、・・・を増減することができる。したがって、生産形態や生産量に対応して、樹脂成形装置1の構成を最適にすることができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0087】
本実施例においては、離型フィルム15を供給する離型フィルム供給機構53を材料供給モジュール45内に設けた。これに限らず、離型フィルム15を供給する離型フィルム供給機構53を、材料供給モジュール45内でなく、新たに離型フィルム供給モジュールとして設けることができる。この場合には、離型フィルム供給モジュールが、成形モジュール44Cと材料供給モジュール45との間に装着される。このようにすれば、従来の装置に離型フィルム供給モジュールを追加するだけで樹脂成形装置1を構成することができる。
【0088】
本実施例においては、材料搬送機構56を使用して、離型フィルム15と樹脂材料39とをそれぞれ別々にキャビティ13に搬送した。これに限らず、材料供給モジュール45において、離型フィルム15の上に樹脂材料収容機構54を載置し、離型フィルム15の上に樹脂材料39を直接収容することができる。この場合であれば、材料搬送機構56を使用して、離型フィルム15と樹脂材料39とを一括してキャビティ13に搬送することができる。
【0089】
なお、上述した各実施例においては、半導体チップを樹脂封止する際に使用される樹脂成形装置及び樹脂成形方法を説明した。樹脂封止する対象は、ICチップ、トランジスタチップ、LEDチップなどの半導体チップでもよい。樹脂封止する対象は、キャパシタ、インダクタなどの受動素子のチップでもよく、半導体チップと受動素子のチップとが混在するチップ群でもよい。樹脂封止する対象には、センサ、発振子、アクチュエータなどが含まれてもよい。リードフレーム、プリント基板、セラミック基板などの基板に装着された1個又は複数個のチップを硬化樹脂によって樹脂封止する際に本発明を適用することができる。したがって、マルチチップパッケージ、マルチチップモジュール、ハイブリッドICなどを製造する際にも本発明を適用することができる。各実施例において製造される電子部品には、高周波信号用モジュール、電力制御用モジュール、機器制御用モジュール、LEDパッケージなどが含まれる。
【0090】
ここまでの説明において、基板36に装着された半導体チップ35を樹脂封止する例を説明した(
図5〜8を参照 )。基板36には、プリント基板、セラミック基板、リードフレーム、半導体ウェーハ(semiconductor wafer )などが含まれる。基板36の形状は、
図2(a)に示された長辺と短辺とを有する矩形でもよく、正方形でもよい。基板36の形状は、ノッチ(notch )、オリエンテーションフラット(orientation flat )などを有する半導体ウェーハのような実質的な円形でもよい。
【0091】
図2(a)は、長辺と短辺とを有する矩形の基板36に対応して、長辺に沿って形成された2個の主凹部18と短辺に沿って形成された2個の主凹部18とを示す。これに限らず、長辺とこれに隣接する短辺とにそれぞれ対応する、L字状の1個の凹部及び逆L字状の1個の凹部を形成してもよい。この場合には、それぞれキャビティを取り囲むL字状の1個の凹部(
図2(a)の左下に形成される)と逆L字状の1個の凹部(
図2(a)の右上に形成される)とが形成される。
図2(a)に示された主凹部18を更に分割してもよい。
【0092】
実質的な円形を有する基板に対応して、それぞれキャビティを取り囲む半円状の2個の凹部を形成してもよい。キャビティを取り囲む円を3分割したそれぞれ円弧状の3個の凹部を形成してもよい。キャビティを取り囲む円を4分割したそれぞれ円弧状の4個の凹部を形成してもよい。
【0093】
本発明は、一般的な樹脂成形品を成形する樹脂成形装置又は樹脂成形方法にも適用される。言い換えれば、本発明は、チップを樹脂封止する場合に限らず、レンズ、光学モジュール、導光板などの光学製品、その他の樹脂成形品(樹脂製品)を樹脂成形技術によって製造する場合にも適用される。言い換えれば、本発明は樹脂成形品を製造する場合にも適用される。本発明は、製造される樹脂製品に対する品質に関する要求(例えば、機能性フィルムのしわ、たるみに起因する傷の有無のような外観品位、表面の平滑性など)が厳しい場合に、特に有効である。
【0094】
各実施例においては熱硬化性樹脂からなる樹脂材料を使用した。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを使用できる。熱可塑性樹脂からなる樹脂材料を使用してもよい。
【0095】
本発明が適用される成形型12として、周面部材9と底面部材10とを有する下型11にキャビティ13が形成される例を説明した。これに限らず、一体的に構成された下型にキャビティ13が形成されてもよい。加えて、上型8にキャビティ13が形成されてもよく、上型8と下型11との双方にキャビティ13が形成されてもよい。上型8と下型11との間に中間型が設けられてもよい。その中間型の型面がキャビティ13の型面を構成してもよい。
【0096】
成形型12として、上型8と下型11とが、鉛直方向に沿って相対向する例について説明した。これに限らず、上型8と下型11とが、水平方向に沿って相対向する成形型12でもよい。上型8と下型11とが、鉛直方向でもなく水平方向でもない方向に沿って相対向する成形型12でもよい。
【0097】
本発明が適用される樹脂成形の方式として、圧縮成形について説明した。樹脂成形の方式としては、圧縮成形に限定されず、射出成形、トランスファ成形を採用できる。トランスファ成形を採用する場合には、キャビティの内底面にゲート(流動性樹脂の注入口)を設ける構成を採用できる。
【0098】
外周吸着溝16、主吸着溝20及び開口Aを使用して(加えて、実施例によってはコーナー溝26を使用して)、下型11の型面に離型フィルム15を吸着した。開口Aは、キャビティ13を構成する型面におけるいずれかの部分に形成されればよい。離型フィルム15が加熱されることによって軟化して伸展し、軟化して伸展した離型フィルム15がキャビティ13を構成する型面に密着して吸着されるように、開口Aが形成される。
【0099】
硬化樹脂41が形成され成形型12を型開きした後に、外周吸着溝16、主吸着溝20及び開口Aを順次使用して(加えて、実施例によっては、コーナー溝26を使用して)、下型11の型面における離型フィルム15に高圧の気体(圧縮空気など)を噴射してもよい。これにより、下型11の型面から離型フィルム15を確実に引き離すことができる。外周吸着溝16、主吸着溝20及び開口Aなどにつながるキャビティ側の配管系に、吸引系と噴射系との2系統の配管系を接続する。必要に応じて、切替弁を使用して2系統の配管系のいずれかをキャビティ側の配管系に接続すればよい。
【0100】
機能性フィルムとして、離型フィルム15を例に挙げて説明した。
図8(b)に示されたように、離型フィルム15は、キャビティ13の型面側から硬化樹脂41を容易に離型させるという機能を有する。離型フィルム15以外の機能性フィルムとしては、転写フィルムが挙げられる。転写フィルムは、流動性樹脂に接触する面からなる機能面が有する要素を硬化樹脂の表面に転写するという機能を有する。転写フィルムの機能面が有する要素は、第1に、機能面に形成された形状である。形状には、鏡面に対応する形状、梨地に対応する凹凸の形状、マイクロレンズアレイに対応する凹凸の形状、フレネルレンズに対応する凹凸の形状などが含まれる。転写フィルムの機能面が有する要素は、第2に、機能面に形成された層、膜などである。層、膜などには、絵柄・模様を含む層、導電層、金属箔などが含まれる。
【0101】
本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。