特許第6430352号(P6430352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430352
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/36 20060101AFI20181119BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20181119BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20181119BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   F01N3/36 D
   F02M37/00 N
   F02M37/00 341D
   F01N3/025 101
   F01N3/24 L
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-189135(P2015-189135)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66870(P2017-66870A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】秋朝 智也
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 直也
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−51580(JP,A)
【文献】 特開2005−256769(JP,A)
【文献】 特開2005−282447(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0212641(US,A1)
【文献】 特開2008−14157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/36
F01N 3/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス生成用燃料供給ポンプ(2)で液体燃料(5)がガス生成用燃料供給通路(12)を介して可燃性ガス生成器(3)に供給され、可燃性ガス生成器(3)で液体燃料(5)から可燃性ガス(6)が生成され、可燃性ガス(6)がエンジン排気(31)に混入され、可燃性ガス(6)の燃焼熱でエンジン排気(31)が昇温され、エンジン排気(31)の熱でDPF(4)に堆積されたPMが焼却除去される排気処理装置を備えた、ディーゼルエンジンにおいて、
燃料タンク(1)の液体燃料(5)が燃料供給ポンプ(8)により燃料供給通路(8a)を介して燃料噴射ポンプ(9)に供給され、液体燃料(5)が燃料噴射ポンプ(9)により燃料噴射管(9a)を介して燃料噴射弁(10)から噴射され、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)からオーバーフローした液体燃料(5)が燃料還流通路(11)を介して燃料タンク(1)に還流される燃料供給装置を備え、
燃料供給通路(8a)と燃料還流通路(11)で構成された燃料循環通路(7)が入熱通路(13)を備え、ガス生成用燃料供給通路(12)は燃料循環通路(7)から導出され、エンジンで発生した熱が入熱通路(13)を介して液体燃料(5)に入熱され、入熱された液体燃料(5)が燃料循環通路(7)からガス生成用燃料供給通路(12)を介してガス生成用燃料供給ポンプ(2)に供給されるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
シリンダヘッド(19)を備え、入熱通路(13)としてヘッド内入熱通路(13a)が用いられ、ヘッド内入熱通路(13a)はシリンダヘッド(19)内を通過し、ヘッド内入熱通路(13a)で液体燃料(5)にシリンダヘッド(19)の熱が入熱されるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
入熱通路(13)として熱媒体入熱通路(13b)が用いられ、熱媒体通路(14)と熱媒体(15)を備え、エンジンで発生した熱が熱媒体通路(14)を通過する熱媒体(15)を介して熱媒体入熱通路(13b)で液体燃料(5)に入熱されるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
熱媒体(15)はエンジン冷却水とエンジン排気とブローバイガスのいずれかである、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたディーゼルエンジンにおいて、
ガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料供給ポンプ(8)よりも燃料供給方向下流で、燃料供給通路(8a)から導出されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたディーゼルエンジンにおいて、
ガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)と入熱通路(13)よりも燃料還流方向下流で、燃料還流通路(11)から導出されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載されたディーゼルエンジンにおいて、
ガス生成用燃料供給通路(12)は下突形状部分(12a)を備え、下突形状部分(12a)は燃料循環通路(7)から下向きに導出された後、上向きに反転された下突形状とされ、下突形状部分(12a)よりも燃料供給方向下流にガス生成用燃料供給ポンプ(2)が配置されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載されたディーゼルエンジンにおいて、
下突形状部分(12a)は燃料ドレイン装置(16)を備えている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載されたディーゼルエンジンにおいて、
ガス生成用燃料供給通路(12)は、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料入口(2a)に接続されたエア抜き装置(17)を備えている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに関し、詳しくは、ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができるディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンとして、ガス生成用燃料供給ポンプで液体燃料がガス生成用燃料供給通路を介して可燃性ガス生成器に供給され、可燃性ガス生成器で液体燃料から可燃性ガスが生成され、可燃性ガスエンジン排気に混入され、可燃性ガスの燃焼熱でエンジン排気が昇温され、エンジンの排気の熱でDPFに堆積されたPMが焼却除去される排気処理装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−51580号公報(図1図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度が低くなることがある。
特許文献1のものでは、寒冷時に低温の液体燃料がガス生成用燃料供給ポンプに供給され、液体燃料の高粘度化やワキシング(パラフィン成分の固化)により、ガス生成用燃料供給ポンプから可燃性ガス生成器への燃料供給量が変動し、ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度が低くなることがある。
【0005】
本発明の課題は、ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができるディーゼルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1図3に例示するように、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)で液体燃料(5)がガス生成用燃料供給通路(12)を介して可燃性ガス生成器(3)に供給され、可燃性ガス生成器(3)により液体燃料(5)から可燃性ガス(6)が生成され、可燃性ガス(6)がエンジン排気(31)に混入され、可燃性ガス(6)の燃焼熱でエンジン排気(31)が昇温され、エンジン排気(31)の熱によりDPF(4)に堆積されたPMが焼却除去される排気処理装置を備えた、ディーゼルエンジンにおいて、
図1図3に例示するように、燃料タンク(1)の液体燃料(5)が燃料供給ポンプ(8)により燃料供給通路(8a)を介して燃料噴射ポンプ(9)に供給され、液体燃料(5)が燃料噴射ポンプ(9)により燃料噴射管(9a)を介して燃料噴射弁(10)から噴射され、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)からオーバーフローした液体燃料(5)が燃料還流通路(11)を介して燃料タンク(1)に還流される燃料噴射装置を備え、
図1図3に例示するように、燃料供給通路(8a)と燃料還流通路(11)で構成された燃料循環通路(7)が入熱通路(13)を備え、ガス生成用燃料供給通路(12)は燃料循環通路(7)から導出され、エンジンで発生した熱が入熱通路(13)を介して液体燃料(5)に入熱され、入熱された液体燃料(5)が燃料循環通路(7)からガス生成用燃料供給通路(12)を介してガス生成用燃料供給ポンプ(2)に供給されるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができる。
図1図3に例示するように、燃料供給通路(8a)と燃料還流通路(11)で構成された燃料循環通路(7)が入熱通路(13)を備え、ガス生成用燃料供給通路(12)は燃料循環通路(7)から導出され、エンジンで発生した熱が入熱通路(13)を介して液体燃料(5)に入熱され、入熱された液体燃料(5)が燃料循環通路(7)からガス生成用燃料供給通路(12)を介してガス生成用燃料供給ポンプ(2)に供給されるように構成されているので、寒冷時でも、ガス生成用燃料供給通路(12)に供給される液体燃料(5)は、燃料噴射ポンプ(9)や燃料噴射弁(10)を介してシリンダブロック(18)やシリンダヘッド(19)の熱で加温されるとともに、入熱通路(13)を介してエンジンで発生した熱により加温され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)での液体燃料(5)の高粘度化やワキシングが防止され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)から可燃性ガス生成器(3)への燃料供給量が変動する不具合が防止され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料供給精度を高めることができる。
【0008】
《効果》 液体燃料の加温に新たな熱源を必要としない。
エンジンで発生した熱が入熱通路(13)を介して液体燃料(5)に入熱されるので、液体燃料(5)の加温に新たな熱源を必要としない。
【0009】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 簡易な配管で液体燃料の加温を行うことができる。
図1図2(A),図3に例示するように、入熱通路(13)としてヘッド内入熱通路(13a)が用いられるので、簡易な配管で液体燃料(5)の加温を行うことができる。
【0010】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 簡易な熱媒体通路の形成で液体燃料の加温を行うことができる。
図2(B)(C)に例示するように、エンジンで発生した熱が熱媒体通路(14)を通過する熱媒体(15)を介して熱媒体入熱通路(13b)で液体燃料(5)に入熱されるように構成されているので、簡易な熱媒体通路(14)の形成で液体燃料(5)の加温を行うことができる。
【0011】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 液体燃料の加温を効率的に行なうことができる。
熱媒体(15)はエンジン冷却水とエンジン排気とブローバイガスのいずれかであるため、液体燃料(5)の加温を効率的に行なうことができる。
【0012】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ガス生成用燃料供給ポンプをコンパクト化することができる。
図1に例示するように、ガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料供給ポンプ(8)よりも燃料供給方向下流で、燃料供給通路(8a)から導出されているので、燃料供給ポンプ(8)からガス生成用燃料供給ポンプ(2)への強い圧送力により、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の吸い込み力を省力化することができ、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)をコンパクト化することができる。
【0013】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができる。
図3に例示するように、ガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)と入熱通路(13)よりも燃料還流方向下流で、燃料還流通路(11)から導出されているので、燃料噴射ポンプ(9)や燃料噴射弁(10)や入熱通路(13)で加温された後、燃料タンク(1)に還流する前の高温の液体燃料(5)をガス生成用燃料供給ポンプ(2)に供給することができ、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の液体燃料(5)の高粘度化やワキシングが防止され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)から可燃性ガス生成器(3)への燃料供給量が変動する不具合が防止される。
また、燃料圧送ポンプ(8)や燃料噴射ポンプ(9)による液体燃料(5)の脈動圧は燃料還流通路(11)と燃料噴射弁(10)とガス生成用燃料供給通路(12)で減衰されるので、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)が燃料供給ポンプ(8)や燃料噴射ポンプ(9)による液体燃料(5)の脈動圧の影響を受け難く、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)から可燃性ガス生成器(3)への燃料供給量が変動する不具合が防止される。
これらの理由により、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料供給精度を高めることができる。
【0014】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができる。
図3に例示するように、ガス生成用燃料供給通路(12)は下突形状部分(12a)を備え、下突形状部分(12a)は、燃料循環通路(7)から下向きに導出された後、上向きに反転された下突形状とされ、下突形状部分(12a)よりも燃料供給方向下流にガス生成用燃料供給ポンプ(2)が配置されているので、下突形状部分(12a)で燃料循環通路(7)内の空気がガス生成用燃料供給通路(12)に流入し難く、ガス生成用燃料供給通路(12)の空気溜まりでガス生成用燃料供給ポンプ(2)から可燃性ガス生成器(3)への燃料供給量が変動する不具合が防止され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料供給精度を高めることができる。
【0015】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項7のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 寒冷地でガス生成用燃料供給通路を液体燃料のワキシングや凍結で詰らせてしまう不具合を防止することができる。
図1図3に例示するように、ガス生成用燃料供給通路(12)は燃料ドレイン装置(16)を備えているので、ガス生成用燃料供給通路(12)に溜まる液体燃料(5)を燃料ドレイン装置(16)で排出することができ、エンジンを寒冷地仕様として出荷する場合、排気処理装置の出荷前試験で用いた通常温度仕様の液体燃料をガス生成用燃料供給通路(12)に残留させてしまう不備が防止され、寒冷地でガス生成用燃料供給通路(12)を液体燃料(5)のワキシングや凍結で詰らせてしまう不具合を防止することができる。
【0016】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ガス生成用燃料供給ポンプの燃料供給精度を高めることができる。
図1図3に例示するように、ガス生成用燃料供給通路(12)はガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料入口(2a)に接続されたエア抜き装置(17)を備えているので、エア抜き装置(17)でエア抜きを行いながら、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料入口(2a)までガス生成用燃料供給通路(12)に液体燃料(5)を満たすことができ、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)への空気の進入で、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)から可燃性ガス生成器(3)への燃料供給量が変動する不具合が防止され、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料供給精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るディーゼルエンジンを説明する図である。
図2図1の装置で用いる入熱通路の説明図で、図2(A)は基本例、図2(B)は第1変形例、図2(C)は第2変形例を示す。
図3】本発明の第2実施形態に係るディーゼルエンジンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図2は本発明の第1実施形態に係るエンジンを説明する図、図3は本発明の第2実施形態に係るエンジンを説明する図であり、各実施形態では、立形の直列4気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0019】
まず、第1実施形態について説明する。
このエンジンは、排気処理装置を備えている。
図1に示すように、排気処理装置では、液体燃料(5)とガス生成用燃料供給ポンプ(2)とガス生成用燃料供給通路(12)と可燃性ガス生成器(3)とDPF(4)を備え、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)で液体燃料(5)がガス生成用燃料供給通路(12)を介して可燃性ガス生成器(3)に供給され、可燃性ガス生成器(3)で液体燃料(5)から可燃性ガス(6)が生成され、可燃性ガス(6)がエンジン排気(31)に混入され、可燃性ガス(6)の燃焼熱でエンジン排気(31)が昇温され、エンジン排気(31)の熱によりDPF(4)に堆積されたPMが焼却除去される。
【0020】
ガス生成用燃料供給ポンプ(2)は電動ポンプである。可燃性ガス生成器(3)は可燃性ガス生成触媒(3a)を備えている。可燃性ガス生成触媒(3a)は酸化触媒である。排気処理装置は、ブロワ(20)、排気処理ケース(21)、DOC(22)、制御装置(23)、DOC入口温度センサ(24)、DPF入口温度センサ(25)、差圧センサ(26)、着火装置(30)を備えている。ブロワ(20)は電動式ブロワであり、エンジンの吸気通路(27)を空気供給源としている。排気処理ケース(21)はエンジンの排気経路(28)の途中に配置され、排気処理ケース(21)内の排気方向上流側にはDOC(22)が収容され、下流側にはDPF(4)が収容されている。DOCはディーゼル酸化触媒、DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称である。制御装置(23)はエンジンECUである。ECUは電子制御ユニットの略称であり、マイコンである。着火装置(30)はグロープラグである。
【0021】
制御装置(23)には、上記各センサ(24)(25)(26)と燃料供給ポンプ(2)とブロワ(20)と着火装置(30)が電気的に接続され、上記各センサ(24)(25)(26)からの検出信号が制御装置(23)で受信され、検出信号に基づいて、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)とブロワ(20)と着火装置(30)が制御装置(23)で制御される。
具体的には、差圧センサ(26)によるDPF(4)の入口と出口の差圧の検出に基づいて、制御装置(23)がDPF(4)に堆積したPM堆積量を推定し、このPM堆積値が所定値に至ったら、制御装置(23)の指令信号に基づいて、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)とブロワ(20)と着火装置(30)が制御され、可燃性ガス生成器(3)に液体燃料(5)と空気(29)が供給され、液体燃料(5)が可燃性ガス生成触媒(3a)で酸化され、可燃性ガス(6)となり、排気経路(28)の排気(15c)に混入され、可燃性ガス(6)はDOC(22)で触媒燃焼され、この燃焼熱で排気(15c)が昇温され、DPF(4)に堆積したPMが焼却除去され、DPF(4)が再生される。
【0022】
なお、DOC入口温度がDOC(22)の活性化温度未満の場合には、着火装置(30)で可燃性ガス(6)が着火され、可燃性ガス(6)の火炎燃焼で排気(15c)が昇温され、DOC入口温度がDOC(22)の活性化温度とされる。また、DPF入口温度が所定のPM焼却温度となるように、制御装置(23)でガス生成用燃料供給ポンプ(2)とブロワ(20)が制御され、可燃性ガス生成器(3)への液体燃料(5)と空気(29)の供給量が調節される。また、可燃性ガス(6)は排気(15c)中の酸素によって燃焼されるが、燃焼促進のため、可燃性ガス(6)にはブロワ(20)から二次空気が供給される。
【0023】
このエンジンは、燃料噴射装置を備えている。
図1に示すように、燃料噴射装置では、燃料タンク(1)の液体燃料(5)が燃料供給ポンプ(8)により燃料供給通路(8a)を介して燃料噴射ポンプ(9)に供給され、液体燃料(5)が燃料噴射ポンプ(9)により燃料噴射管(9a)を介して燃料噴射弁(10)から噴射され、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)からオーバーフローした液体燃料(5)が燃料還流通路(11)を介して燃料タンク(1)に還流される。
【0024】
燃料供給ポンプ(8)は、メカ式ポンプで、シリンダブロック(18)に取り付けられ、燃料噴射カム軸(図示せず)のポンプカムで駆動される。燃料噴射ポンプ(9)はカム駆動式のプランジャ式列型ポンプで、シリンダブロック(18)に取り付けられ、燃料噴射カム軸の燃料噴射カムで駆動される。燃料噴射カム軸はクランク軸(図示せず)で駆動される。燃料噴射弁(10)は、シリンダヘッド(19)に取り付けられている。
【0025】
図1に示すように、燃料供給通路(8a)と燃料還流通路(11)で構成された燃料循環通路(7)が入熱通路(13)を備え、ガス生成用燃料供給通路(12)は燃料循環通路(7)から導出され、エンジンで発生した熱が入熱通路(13)を介して液体燃料(5)に入熱され、入熱された液体燃料(5)が燃料循環通路(7)からガス生成用燃料供給通路(12)を介してガス生成用燃料供給ポンプ(2)に供給されるように構成されている。
【0026】
図1図2(A)に示すように、エンジンはシリンダヘッド(19)を備え、入熱通路(13)としてヘッド内入熱通路(13a)が用いられ、ヘッド内入熱通路(13a)はシリンダヘッド(19)内を通過し、ヘッド内入熱通路(13a)で、燃料還流通路(11)を通過する液体燃料(5)にシリンダヘッド(19)の熱が入熱されるように構成されている。
クランク軸(図示せず)の架設方向を前後方向として、ヘッド内入熱通路(13a)はシリンダヘッド(19)の前後方向端部のうち、温度が高い側の端部に設けられている。このエンジンでは、シリンダヘッド(19)の前方に、エンジン冷却ファン(図示せず)とラジエータ(図示せず)が配置され、シリンダヘッド(19)の後側端部の方が、前端部よりも温度が高くなるため、シリンダヘッド(19)の後側端部にヘッド内入熱通路(13a)が設けられている。
なお、このエンジンは副室式ディーゼルエンジンであり、シリンダヘッドカバー(図示せず)の外側に燃料噴射弁(10)と燃料還流通路(11)が配置され、燃料還流通路(11)の一部がヘッド内入熱通路(13a)として、シリンダヘッド(19)内を通過する。
【0027】
図1図2(A)に示すように、この実施形態では、入熱通路(13)の基本例となるヘッド内入熱通路(13a)が用いられているが、図2(B)(C)に示すように、入熱通路(13)の変形例となる熱媒体入熱通路(13b)を用いてもよい。
この場合、エンジンは、熱媒体通路(14)と熱媒体(15)を備え、エンジンで発生した熱が熱媒体通路(14)を通過する熱媒体(15)を介して熱媒体入熱通路(13b)で液体燃料(5)に入熱されるように構成する。
熱媒体(15)はエンジン冷却水とエンジン排気とブローバイガスのいずれかが用いられる。
【0028】
図2(B)に示す第1変形例では、燃料循環通路(7)はクロスパイプ(7a)を備え、クロスパイプ(7a)を介して燃料循環通路(7)が熱媒体通路(14)と交差し、クロスパイプ(7a)内に熱媒体入熱通路(13b)が設けられ、熱媒体入熱通路(13b)で燃料循環通路(7)が一連に繋がれ、熱媒体入熱通路(13b)の外周に沿うクロスパイプ(7a)の内部空間で熱媒体通路(14)が一連に繋がれている。
クロスパイプ(7a)には熱伝導性の低いニッケルクロム合金が用いられ、熱媒体入熱通路(13b)には熱伝導性の高い銅が用いられている。
【0029】
図2(C)に示す第2変形例では、燃料循環通路(7)は途中に熱媒体入熱通路(13b)を備え、熱媒体通路(14)の途中に放熱パイプ(14a)を備え、放熱パイプ(14a)に沿って熱媒体入熱通路(13b)がロウ付けされている。放熱パイプ(14a)と熱媒体入熱通路(13b)には熱伝導性の高い銅が用いられている。
【0030】
図1に示すように、ガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料供給ポンプ(8)よりも燃料供給方向下流で、燃料供給通路(8a)から導出されている。
【0031】
図1に示すように、ガス生成用燃料供給通路(12)は下突形状部分(12a)を備え、下突形状部分(12a)は燃料循環通路(7)から下向きに導出された後、上向きに反転された下突形状とされ、下突形状部分(12a)よりも燃料供給方向下流にガス生成用燃料供給ポンプ(2)が配置されている。
下突形状部分(12a)は、燃料供給通路(8a)から下向きに導出されている。
下突形状部分(12a)は燃料ドレイン装置(16)を備えている。
ガス生成用燃料供給通路(12)は、ガス生成用燃料供給ポンプ(2)の燃料入口(2a)に接続されたエア抜き装置(17)を備えている。
下突形状部分(12a)は、V字状の下突形状とされている。
燃料ドレイン装置(16)とエア抜き装置(17)は、いずれも手動開閉式コックである。
【0032】
次に、図3に示す第2実施形態について説明する。
図3に示すようにガス生成用燃料供給通路(12)は、燃料噴射ポンプ(9)と燃料噴射弁(10)と入熱通路(13)よりも燃料還流方向下流で、燃料還流通路(11)から導出されている。下突形状部分(12a)は、U字状の下突形状とされている。
他の構造は、第1実施形態と同じであり、図3中、第1実施形態と同一の要素には、図1と同一の符号を付しておく。この第2実施形態でも、図3に示すように、入熱通路(13)の基本例であるヘッド内入熱通路(13a)が用いられているが、この第2実施形態でも、第1実施形態と同様、入熱通路(13)の変形例である図2(B)(C)に示す熱媒体入熱通路(13b)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
(1) 燃料タンク
(2) ガス生成用燃料供給ポンプ
(2a) 燃料入口
(3) 可燃性ガス生成器
(4) DPF
(5) 液体燃料
(6) 可燃性ガス
(7) 燃料循環通路
(8) 燃料供給ポンプ
(8a) 燃料供給通路
(9) 燃料噴射ポンプ
(9a) 燃料噴射管
(10) 燃料噴射弁
(11) 燃料還流通路
(12) ガス生成用燃料供給通路
(12a) 下突形状部分
(13) 入熱通路
(13a) ヘッド内通路
(13b) 熱媒体入熱通路
(14) 熱媒体通路
(15) 熱媒体
(16) 燃料ドレイン装置
(17) エア抜き装置
図1
図2
図3