【実施例1】
【0011】
まず本発明の実施例1について図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図7に示すエンジンシステムの全体構成図を用いてシステムの構成と動作を説明する。
破線で囲まれた部分が高圧燃料供給ポンプ(以下、高圧ポンプと呼ぶ)の本体を示し、この破線の中に示されている機構・部品はポンプボディ1に一体に組み込まれていることを示す。
【0013】
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられる。この燃料は適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧ポンプの低圧燃料吸入口10aに送られる。低圧燃料吸入口10aから吸入ジョイント51を通過した燃料は弁102を有する圧力脈動伝播防止機構100、圧力脈動低減機構9、吸入通路を介して容量可変機構を構成する電磁吸入弁300の吸入ポート31bに至る。
【0014】
電磁吸入弁300に流入した燃料は、燃料導入通路30p及び弁体30を通過し加圧室11に流入する。エンジンのカム機構93によりプランジャ2に往復運動する動力が与えられる。プランジャ2の往復運動により、プランジャ2の下降行程には弁体30から燃料を吸入し、上昇行程には、燃料が加圧される。吐出弁機構8を介し、圧力センサ26が装着されているコモンレール23へ燃料が圧送される。そしてECU27からの信号に基づきインジェクタ24がエンジンへ燃料を噴射する。本実施例はインジェクタ24がエンジンのシリンダ筒内に直接、燃料を吹きつける、いわゆる直噴エンジンシステムに適用される高圧ポンプである。
【0015】
高圧ポンプは、ECU27から電磁吸入弁300への信号により、所望の供給燃料となるよう燃料流量を吐出する。
【0016】
図1は本実施例の高圧ポンプの縦断面図を示し、
図2は高圧ポンプを上方から見た水平方向断面図である。また
図3は高圧ポンプを
図1と別方向から見た縦断面図である。なお、
図1においては吸入ジョイント51がダンパカバー上部に設けられているが、
図4はポンプボディ1の図示しない側面に吸入ジョイント51が設けられた高圧ポンプの縦断面図である。
【0017】
はじめに、
図1を用いて、本実施例について説明する。本実施例の高圧ポンプはポンプボディ1に設けられた取付けフランジ1eを用い内燃機関のシリンダヘッド90の平面に密着し、図示しない複数のボルトで固定される。
【0018】
シリンダヘッド90とポンプボディ1との間のシールのためにOリング61がポンプボディ1に嵌め込まれ、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
【0019】
ポンプボディ1にはプランジャ2の往復運動をガイドするためのシリンダが取り付けられている。また燃料を加圧室11に供給するための電磁吸入弁300と加圧室11から吐出通路に燃料を吐出し逆流を防止するための吐出弁機構8が設けられている。吐出弁機構8を通過した燃料は、吐出ジョイント12cによりエンジン側部品に接続される。
【0020】
シリンダ6はその外周側において、ポンプボディ1と圧入により固定される。円筒状の圧入部の表面によりポンプボディ1との隙間から加圧した燃料が低圧側に漏れないようシールしている。シリンダを軸方向に平面に接触させることで、ポンプボディ1とシリンダ6との円筒状の圧入部のシールに加え、二重のシールの機能をも果たす。
【0021】
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム93の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
【0022】
また、シールホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。これにより、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。同時に内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプボディ1の内部に流入するのを防止する。
【0023】
ポンプボディ1には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンク20からの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧ポンプ内部に供給される。吸入ジョイント51内の吸入フィルタ52は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物を燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ内に吸収することを防ぐ役目がある。
【0024】
低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構9、低圧燃料流路10dを介して電磁吸入弁300の吸入ポート31bに至る。
【0025】
加圧室11の出口に設けられた吐出弁機構8は、吐出弁シート8a、吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c、吐出弁8bのストローク(移動距離)を決めるストッパ8dから構成される。吐出弁ストッパ8dとポンプボディ1は当接部8eで溶接により接合され燃料と外部を遮断している。
【0026】
加圧室11と吐出弁室12aに燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、吐出弁室12aの燃料圧力よりも大きくなった時に初めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁する。そして、加圧室11内の高圧の燃料は吐出弁カバー12dに覆われている吐出弁室12a、燃料吐出通路12b、燃料吐出口12を経てコモンレール23へと吐出される。吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8dと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、吐出弁室12aへ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧ポンプの効率低下が抑制できる。また、吐出弁8bが開弁および閉弁運動を繰り返す時に、吐出弁8bがストローク方向にのみ運動するように、吐出弁ストッパ8dの外周面にてガイドしている。以上のようにすることで、吐出弁機構8は燃料の流通方向を制限する逆止弁となる。
【0027】
以上に説明したように、加圧室11は、ポンプハウジング1、電磁吸入弁300、プランジャ2、シリンダ6、吐出弁機構8にて構成される。
【0028】
カム93の回転により、プランジャ2がカム93の方向に移動して吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入通路10dの圧力よりも低くなると、弁体30は開口状態にある。そのため燃料は弁体30が開弁して形成される開口部を通り、ポンプボディ1に設けられた連通穴1aと、シリンダ6の溝6a、連通孔6bを通過し、加圧室11に流入する。
【0029】
プランジャ2が吸入行程を終了した後、プランジャ2が上昇運動に転じ圧縮行程に移る。ここで電磁コイル43は無通電状態を維持したままであり磁気付勢力は作用しない。ロッド付勢ばね40は、無通電状態において弁体30を開弁維持するのに必要十分な付勢力を有するよう設定されている。本実施例ではいわゆるノーマルオープン式の高圧ポンプを示しているが、本発明はこれに限定される訳ではなく、ノーマルクローズ式の高圧ポンプにも適用可能である。加圧室11の容積は、プランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度、加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の弁体30の開口部を通して吸入通路10dへと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
【0030】
ここから、電磁吸入弁300について
図6を用いて説明する。電磁吸入弁300とは、電磁コイル43への通電により磁性コア39、可動コア36、ロッド35とこれらに続き配置される弁体30を可動させることで、燃料を吸入し、加圧室11に送る機構のことを指す。以下にこれらの機能について詳述する。
【0031】
前記したとおり、無通電状態では、強力なロッド付勢ばね40によって、弁体30が開弁方向に稼働するためにノーマルオープン式となっているが、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと呼ぶ)からの制御信号が電磁吸入弁300に印加されると、電磁コイル43には端子46を介して電流が流れる。電流が流れることにより、磁性コア39は磁気吸引力を生じる。
【0032】
これに伴い、
図6にも記載の磁気吸引面Sにおいて可動コア36が磁性コア39の磁気吸引力により閉弁方向に引き寄せられる。可動コア36の間には、可動コア36を係止するフランジ部35aを備えたロッド35が配置される。なお、ロッド付勢ばね40は、蓋保持部材39及び蓋部材44により覆われている。ロッド35はフランジ部35aを有することにより、可動コア36を係止することができるため、可動コア36とともに移動することが可能となる。よって可動コア36間に配置されたロッド35は、磁気吸引力が働いたときに閉弁方向に移動することができる。また、ロッド35は可動コアの下部に閉弁付勢ばね41及び、燃料通路37を備えたロッドガイド部37bの間に配置される。
【0033】
なお、ロッド35はフランジ部35aの内周部で、可動コア36と接触する位置において、内周側に凹む凹み部35bが形成される。これにより可動コア36が接触した際の逃げ部を形成できるため、ロッド35、あるいは可動コア36の衝突による破損を防止できる。さらにロッド35は弁体30の側の先端部において、先端に向かう程、径が小さくなる傾斜部35cが形成される。これによりロッド35に可動コア36を挿入する際に多少、芯がずれていたとしても容易に組み込み可能であり生産効率を上げることが可能である。なお、ロッド35は旋盤加工により形成されるため、弁体30の側の先端部において、弁体30と反対側に凹む凹み部が形成される。
【0034】
ロッド35の下部(吸入弁側)には弁体30、吸入弁付勢ばね33、ストッパ32を備える。弁体30は加圧室側に突出し、吸入弁付勢ばね33によりガイドされるガイド部30bが形成される。弁体30はロッド35の移動に伴って弁体ストローク30eの隙間の分だけ移動することにより、開弁状態で供給通路10dから供給された燃料は加圧室に供給される。ガイド部30bは、吸入弁機構のハウジング内部に圧入され、固定されたストッパ32に衝突することにより動きを停止する。なお、ロッド35と弁体30は別体で独立した構造をとっている。
【0035】
なお、弁体30は吸入側に配置された弁座部材31の弁座に接触することで加圧室11への流路を閉じ、また弁座から離れることで加圧室11への流路を開くように構成される。ここで、近年の高圧燃料ポンプは吐出燃料が30MPa以上となるなど、さらなる高圧化が求められており、したがって、加圧室11が高圧となって、弁体30が弁座部材31に衝突する際の衝撃、あるいは、弁体30がストッパ32に衝突する際の衝撃が非常に大きく、これの強度を増すことが必要となっている。
【0036】
本実施例では弁体30は、平板形状で配置され、平板部とこれに上記した加圧室側に突出するガイド部30bとを備えて構成される。ここで強度に影響を与える要素として本実施例では平板部の厚みに着目した。つまり、
図6に示すように弁体30の平板部の吸入弁付勢ばね33の移動方向における厚みを厚くすることで、強度の向上を図る。具体的には、平板部から突出するガイド部30bの厚みに対し、平板部の厚みを厚くするように構成する。また
図6は弁座部材31に形成される吸入ポート31b(流路)が最も大きい位置の断面図を示すが、このとき吸入ポート31bに対して下流側における弁座部材31の平板部と接触する弁座部の上記移動方向における厚みよりも弁体30の平板部の厚みを厚くすることが望ましい。このように構成することで、弁体30の強度を持たせることが可能である。
【0037】
まとめると、磁気付勢力がロッド付勢ばね40の付勢力に打ち勝ってロッド35が吸入弁30から離れる方向に移動する。よって、吸入弁付勢ばね33による付勢力と燃料が吸入通路10dに流れ込むことによる流体力により吸入弁30が閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇し、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して高圧燃料の吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称する。
【0038】
すなわち、プランジャ2の圧縮行程(下始点から上始点までの間の上昇行程)は、戻し行程と吐出行程からなる。そして、電磁吸入弁300のコイル43への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。電磁コイル43へ通電するタイミングを早くすれば、圧縮行程中の、戻し行程の割合が小さく、吐出行程の割合が大きい。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が少なく、高圧吐出される燃料は多くなる。一方、通電するタイミングを遅くすれば圧縮行程中の、戻し行程の割合が大きく吐出行程の割合が小さい。すなわち、吸入通路10dに戻される燃料が多く、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル43への通電タイミングは、ECU27からの指令によって制御される。
【0039】
以上のように電磁コイル43への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することが出来る。リリーフバルブ200は、リリーフバルブカバー201、ボール弁202、リリーフバルブ押え203、ばね204、ばねホルダ205で構成される。リリーフバルブ200は、コモンレール23やその先の部材に何らかの問題が生じ、異常に高圧になった場合にのみ作動するよう構成された弁であり、コモンレール23やその先の部材内の圧力が高くなった場合にのみ開弁し、燃料を加圧室に戻すという役割を持つ。そのため、非常に強力なばね204を有している。
【0040】
低圧燃料室10には高圧ポンプ内で発生した圧力脈動が燃料配管28へ波及するのを低減減させる圧力脈動低減機構9が設置されている。また、圧力脈動低減機構9の上下にはそれぞれ、間隔を持ってダンパ上部10b、ダンパ下部10cが設けられている。一度加圧室11に流入した燃料が、容量制御のため再び開弁状態の吸入弁体30を通して吸入通路10dへと戻される場合、吸入通路10dへ戻された燃料により低圧燃料室10には圧力脈動が発生する。しかし、低圧燃料室10に設けた圧力脈動低減機構9は、波板状の円盤型金属板2枚をその外周で張り合わせ、内部にアルゴンのような不活性ガスを注入した金属ダイアフラムダンパで形成されており、圧力脈動はこの金属ダンパが膨張・収縮することで吸収低減される。9bは金属ダンパをポンプボディ1の内周部に固定するための取付金具であり、燃料通路上に設置されるため、ダンパとの支持部を全周では無く、一部とし前記取付金具9bの表裏に流体が自由に行き来できるようにしている。
【0041】
プランジャ2は、大径部2aと小径部2bを有し、プランジャの往復運動によって副室7aの体積は増減する。副室7aは燃料通路10eにより低圧燃料室10と連通している。プランジャ2の下降時は、副室7aから低圧燃料室10へ、上昇時は、低圧燃料室10から副室7aへと燃料の流れが発生する。
【0042】
このことにより、ポンプの吸入行程もしくは、戻し行程におけるポンプ内外への燃料流量を低減することができ、高圧ポンプ内部で発生する圧力脈動を低減する機能を有している。
【0043】
図4及び、
図8には、ポンプボディ1に対して横方向に低圧燃料吸入口を接続した場合の縦方向、水平方向の断面図を示す。図の符号に関しては、前記した図の説明と重複するため省略する。本実施例に記載の構成を用いることにより、低圧燃料吸入口の向きがいかなる場合においても容易に、かつ応力の集中を防いだ溶接が可能となる。以下に発明の内容を詳述する。
【0044】
本高圧燃料ポンプにおいては、機能部品である、吸入ジョイント51、吐出ジョイント12c、あるいは電磁吸入弁機構300が高圧燃料ポンプに対し、径方向に自在に設置されることが望まれる。これは、エンジンにおけるレイアウトの自由度を増すためである。
【0045】
本高圧燃料ポンプと機能部品は溶接により接合される。ここでポンプボディ1の外表面から外側へ突き出す上記機能部品が例えばレーザ溶接により結合される場合、前記レーザ溶接のためのビームが、お互いの機能部品或いはフランジ1eと干渉することなく配置される必要がある。
【0046】
例えば、吐出ジョイント12cを溶接する場合に、レーザビーム500が
図1に示される如く照射されるが、そのビームがフランジ1eやその他の機能部品と干渉しないような配置とする必要がある。この時、レーザビーム500はより機能部品の軸方向と平行に近くなる様に照射されれば、干渉を防ぐことができ、各機能部品の配置の自由度をより高めることができる。
【0047】
それと同時に、各機能部品のボディ1との結合部の信頼性は、ポンプ内部の燃料が外部に漏れることを防止するためにも十分に確保する必要がある。すなわち前記結合部は十分な強度を確保する必要がある。
【0048】
上記の如く、これら各機能部品の配置の自由度を増すため、また、各機能部品の結合部の信頼性を確保するため、本実施例の高圧ポンプは、ポンプボディ1に形成される穴部に挿入される機能部品、例えば
図5に示す様に、吐出ジョイント12cを備え、ポンプボディ1の外周面において機能部品の外周部と前記穴部の内周部とが接触面12eにおいて溶接により固定され、溶接された部位に対して外周面と反対側に空間400が形成される。
【0049】
空間400を有しない場合、溶接時に接合部へ応力が集中し、鋭角のあるいは隅部半径が小さい切欠き形状が形成されてしまう場合がある。しかし、空間400を備えた場合においては、十分な空間容積を有するために、溶接部近傍、特には溶接終端部401に応力が集中するような鋭角の或いは隅部半径が小さい切欠き形状が生成しない。そのため溶接部に荷重が作用した場合においても溶接部に応力集中を起こさない形状とすることができる。
【0050】
上記の構成により、溶接部品の溶接部の応力集中を抑制し、ポンプの信頼性向上を図った高圧燃料ポンプを提供することが可能となる。また空間400は、請求項2に記載の通り、ポンプボディ1と機能部品との双方に環状の凹み形状が設けられることにより形成されることを特徴とする。例えば具体的には、ボディの環状凹み形状1f、吐出ジョイント12の環状凹み形状12fとである。これにより一方のみの部品に環状に凹み形状が設けられる場合に比べ、応力集中を抑制することができ、ポンプの信頼性向上を図ることが可能である。このとき、凹み形状は、四角ではなく円形に近い形状であることが望ましい。これは、四角形に近い形状にした場合、角部に応力が集中しやすいためである。
【0051】
次に請求項3に記載のように、機能部品はポンプボディ1の表面から突出する部分の直径、例えば吐出ジョイントの突出部直径12gに対し、穴部と対向する外周部の直径、例えば吐出ジョイントの溶接部直径12hが大きくなるように構成されることを特徴とする。この構成により、機能部品の軸方向に沿ってレーザ溶接をし易くすることが可能となる。ここで、
図4や
図8には、エンジンの置き場の都合により、低圧燃料吸入口10aを横方向に接続した場合のポンプボディ1の縦方向、水平方向の断面図を示す。このように、機能部品や低圧燃料吸入口10aの横方向の接続が多い場合においても、機能部品の軸方向からレーザを当てることにより、容易に溶接することが可能となる。
【0052】
また、請求項4に記載の通り、機能部品の突出する部分の直径と外周部の直径との差12iに対し、空間の径方向の大きさ402が大きいことが望ましい。このような大きさの空間とすることで上記した応力集中を抑制することが可能である。
【0053】
さらには、機能部品の前記凹み形状12fが作る断面積よりも、ボディ1の前記凹み形状1fが作る断面積が大きい方が好ましい。具体的には、また実際にポンプを稼働させる際、ポンプ内部に加わる圧力により、ボディ側に発生する応力の方が大きくなるために、大きい空間で応力の集中を拡散し、応力集中を避けることが可能である。
【0054】
上記結合部には、空間400のさらにボディ1の中心側に、接触部12jを設けることが望ましい。接触部12jを設置する利点は次の2点である。一つは、吐出ジョイント12cの溶接による傾きの抑制、二つは、溶接時に発生するスパッタ(金属の微小な粉末)のポンプ内部への侵入防止である。
【0055】
空間400aは、電磁吸入弁機構300がボディ1に溶接接合された部分における空間である。ボディ1側には環状の凹み形状が形成され、電磁吸入弁機構300側にも空間400aを形成できる形状としている。
【0056】
ここで、請求項5に記載の通り、機能部品と穴部とは、機能部品の挿入方向に沿ってレーザが当てられることにより溶接されることが望ましい。たとえばレーザ溶接を行う場合に、レーザの照射部と溶接部との間にフランジ部が配置されているとレーザ溶接を行うことができない。逆に言うと、レーザの照射部と溶接部との間にフランジ部などの他の部材が介在しないように、フランジ部やその他の機能部品を配置する必要がある。つまり、この場合にはフランジ部やその他の機能部品のレイアウトが限定されるため、レイアウト性が悪いということができる。これに対して上記したように機能部品と穴部とを構成することで、レイアウト性を向上することが可能である。
【0057】
さらに請求項6に記載の通り、ポンプボディ1には、高圧燃料ポンプをエンジンへ取り付けるためのフランジ部を備え、ポンプボディ1とフランジ部とは鍛造により一体で形成されることが望ましい。別体に構成し、溶接を行い締結する場合と比較して、部品点数の削減が可能となり、構造体としての信頼性の向上が期待できる。
【0058】
この空間は、請求項7にも記載のように、機能部品の外周部の全周に渡って円環状に形成される。具体的には、請求項8に記載のように、空間400は、ポンプボディ1と機能部品との間に全周に渡って円環状に形成される。これは、溶接部がポンプ内部燃料のシール機能を兼ねるためと、強度確保のためである。このためにポンプボディ1と機能部品との間を全周溶接する必要があり、また応力を分散させるためである。
【0059】
請求項9に記載のように、機能部品の軸方向断面図において、ポンプボディ1に設けられた環状の凹み形状の断面積は機能部品に設けられた環状の凹み形状の断面積よりも大きく構成されることを特徴とする。これは実際にポンプを稼働させた際、機能部品に発生する応力よりもポンプボディ1に発生する応力が大きくなる傾向にある。この構成は、その実際に稼働させる際にかかる応力を分散させるという役割を果たすために備えられる。
【0060】
本実施例で指す機能部品は、請求項10に記載のように、燃料を吸入する吸入ジョイント51、加圧室で加圧された燃料を吐出する吐出ジョイント12、又は電磁吸入弁機構300の何れかである。ポンプボディ1に対し、より大きな溶接強度が必要とされるものに関しては上記に限らず、本実施例を適用することができる。
【0061】
以上で、実施例に関する説明を終えるが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく幅広く変形して、実施することができる。例えば、上記実施形態は高圧燃料ポンプに本発明を適用したものであるが、溶接を要する金属部品に適応してもよい高圧燃料ポンプ内における機能部品の配置位置や配置方法においても、上記実施形態の例示に限るものではない。