特許第6430368号(P6430368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本製紙株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430368
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】成型用ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/16 20060101AFI20181119BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B32B27/16 101
   C08J7/04 KCER
   C08J7/04CEZ
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-510032(P2015-510032)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2014058620
(87)【国際公開番号】WO2014162956
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-75520(P2013-75520)
(32)【優先日】2013年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-202835(P2013-202835)
(32)【優先日】2013年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正英
(72)【発明者】
【氏名】江田 俊和
(72)【発明者】
【氏名】糸部 悟
(72)【発明者】
【氏名】日高 康博
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091497(JP,A)
【文献】 特開2011−131406(JP,A)
【文献】 特開2012−056236(JP,A)
【文献】 特開2012−056237(JP,A)
【文献】 特開2009−241458(JP,A)
【文献】 特開2008−260202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 45/14
B29C 45/16
B29C 51/10
C08J 7/04− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、下記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂を、混合比率が、(a)の電離放射線硬化型樹脂:(b)の電離放射線硬化型樹脂=80:20〜60:40(重量部)で混合させた樹脂を含有する塗料組成物を塗工し硬化させてなるハードコート層を設けたことを特徴とする成型用ハードコートフィルム。
(a)重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂。
(b)重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂。
【請求項2】
前記塗料組成物にさらに下記(c)の電離放射線硬化型樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の成型用ハードコートフィルム。
(c)重量平均分子量Mwが10,000を超え、150,000未満の電離放射線硬化型樹脂。
【請求項3】
前記(a)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の成型用ハードコートフィルム。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が50%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がB〜Hである。
【請求項4】
前記(b)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が1%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がH〜4Hである。
【請求項5】
前記(c)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が20%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がHB〜2Hである。
【請求項6】
前記ハードコート層は、平均粒子径5〜50nmの無機酸化物微粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項7】
前記無機酸化物微粒子はアルミニウムを主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項8】
前記無機酸化物微粒子の含有量が、塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜5.0重量部であることを特徴とする請求項6又は7に記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項9】
前記基材フィルムの前記ハードコート層を設けた面とは反対側の面に、プライマー層を介して加飾層を形成し、前記プライマー層は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂及びポリメチルメタクリレート樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項10】
前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)が80/20〜25/75の範囲であることを特徴とする請求項9に記載の成型用ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成型やインサート成型、または真空成型法による樹脂成型品の製造に用いられる成型用ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯情報端末機器スマートフォン、ノート型パソコン、家電製品、自動車内外装部品などには樹脂成型品が多く用いられている。製品のコモディティ化が進む中、これらの製品においては、デザインによる差別化ニーズが高まっている。従来、樹脂成型品への加飾方法としては、射出成型等による3次元形状の樹脂成型品の表面に、着色塗料を塗装し、またはスクリーン印刷を施していた。さらに製品の表面保護を目的としてスプレーやディッピングによりクリアハードコートを施す手法が行われていた。
【0003】
しかし、このような従来方法は、高いデザイン性の加飾を行うことが困難であり、またスプレー塗装などでは使用する塗料等に含まれる揮発性溶剤などの化学物質による作業環境への影響の懸念がある。そこで代替方法として、フィルムの印刷や塗布によるハードコート層を設けた加飾フィルムが用いられるようになり、樹脂成型物の表面にデザイン性の高い加飾を設けるインモールド成型が普及してきた。
インモールド成型法は、射出成型用金型内で同時に真空成型と射出を行い、加飾フィルムを樹脂成型物表面へ接着する技術である。一工程で製品が得られる長所があり、工程の短縮・塗装の省略が可能となる。
【0004】
また、別の方法としてフィルムインサート成型法があり、加飾フィルムを加熱(予備加熱)し、金型により加飾フィルムの成型物を得てから、次工程として射出成型により予備成型した加飾フィルム成型物と樹脂成型物とを接着し、一体化させる方法である。この方法は汎用装置が流用できる長所があるが、二つの工程を経る必要がある。
【0005】
また、加飾フィルムを利用した成型方法として、上記インモールド成型法の他に、真空成型法がある。この真空成型法は、真空下で、加飾フィルムを加熱(予備加熱)軟化させた後、加飾フィルムとの間を真空にし、伸ばしながら樹脂成型物の表面に貼り合わせる。その後、冷却および真空開放して成形品を取り出す。この真空成型法では、インモールド成型のような金型で挟み込む機械的な強い力でなく弱い空気圧しか働かないため、加飾フィルムを成型物の表面形状に追従させるには、フィルムの軟化温度より十分に高い温度で予備加熱を行う必要がある。予備加熱の温度が低すぎると、深絞りの3次元形状を持つ樹脂成型物へ加飾フィルムを貼り合わせる場合では、フィルムの伸ばされ方が不十分となり、例えば樹脂成型物が凹んだ90度の曲げ部分では、加飾フィルムを貼合してもシャープな曲げとならず浅い丸みを帯びた形状となり、樹脂成型物の本来の形状を損なう。また、加飾フィルムの基材フィルムに用いられる樹脂組成種により適切な予備加熱温度を選択する必要がある。また、長所としては大型成型が容易である。
【0006】
以上のような加飾フィルムを利用した成型方法に用いられる加飾フィルムとして、従来より種々の構成が提案されている(特許文献1〜特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−193265号公報
【特許文献2】特開2012−81628号公報
【特許文献3】特開2012−51247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成型用ハードコートフィルムが様々な分野に利用されるようになるに伴い、3次元成型に追従する十分な伸長性(伸ばされてもハードコート層にクラック等が入らないこと)の他、表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)も要求される。しかしながら、成型用ハードコートフィルムのハードコート層に使用される伸長性の高い樹脂は柔らかいため十分な表面硬度が発現せず、表面硬度に優れる樹脂は硬いため十分な伸長性は発現しないといったように、表面硬度と伸長性とがトレードオフの関係にある。
【0009】
そこで、本発明は成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性の特性を向上させた成型用ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を有する発明を提供するものである。
第1の発明は、基材フィルム上に、下記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂を混合させた樹脂を含有する塗料組成物を塗工し硬化させてなるハードコート層を設けたことを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
(a)重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂。
(b)重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記塗料組成物にさらに下記(c)の電離放射線硬化型樹脂を含有することを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
(c)重量平均分子量Mwが10,000を超え、150,000未満の電離放射線硬化型樹脂。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記(a)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が50%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がB〜Hである。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記(b)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が1%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がH〜4Hである。
【0014】
第5の発明は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記(c)の電離放射線硬化型樹脂が以下の条件を満たすことを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が20%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がHB〜2Hである。
【0015】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記ハードコート層は、平均粒子径5〜50nmの無機酸化物微粒子を含有することを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
第7の発明は、第6の発明において、前記無機酸化物微粒子はアルミニウムを主成分とすることを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
【0016】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記無機酸化物微粒子の含有量が、塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜5.0重量部であることを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
第9の発明は、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記基材フィルムの前記ハードコート層を設けた面とは反対側の面に、プライマー層を介して加飾層を形成し、前記プライマー層は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂及びポリメチルメタクリレート樹脂を含有することを特徴とする成型用ハードコートフィルムである。
第10の発明は、第9の発明において、前記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)が80/20〜25/75の範囲であることを特徴とする成型用ハードコートフィルム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性の特性を向上させた成型用ハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の成型用ハードコートフィルムは、基材フィルム上に、下記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂を混合させた樹脂を含有する塗料組成物を塗工し硬化させてなるハードコート層を設けたことを特徴とするものである。
(a)重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂。
(b)重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂。
上記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂については後で詳しく説明する。
【0019】
[基材フィルム]
まず、上記基材フィルムについて説明する。
本発明に用いることのできる基材フィルムとしては、特に限定されないが、熱成型可能な材料であって、伸長時応力が低く、弱い力で伸ばすことが可能な材料であることが好ましい。本発明においては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)フィルム等のアクリルフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルムなどを好ましく使用することができる。上記PETフィルムの場合、汎用の二軸延伸PETフィルムを用いてもよいが、より良好な成型性を得るためには、二軸延伸易成型PETフィルムを用いることが特に好ましい。この二軸延伸易成型PETフィルムは、熱軟化温度が低く、弱い力で伸ばすことができ、しかも比較的安価な材料である。
【0020】
また、上記アクリルフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルムは、いずれも無延伸フィルムで、いずれの成型法にも好適に利用することができる。
基材フィルムの厚さについても特に制限はないが、例えば25μm〜150μm程度の厚さのフィルムが使用される。
【0021】
[ハードコート層]
次に、上記ハードコート層について説明する。
本発明において、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、特にハードコート層表面に硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また紫外線等の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の伸長性と表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)の調節が可能になるという点で、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
本発明に用いられる電離放射線硬化型樹脂は、紫外線(以下「UV」と略記する。)や電子線(以下「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等の中から適宜選択することができる。電離放射線型樹脂として好ましいものは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するUVまたはEBにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが挙げられる。分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するUVまたはEB硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート、多価アルコールと多価カルボン酸及び/またはその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られるウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なお、多官能アクリレートは3種以上混合して用いてもよい。
【0023】
本発明のハードコートフィルムにおいて、特徴的な構成は、前述のとおり、基材フィルム上に、前記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂を混合させた樹脂を含有する塗料組成物を塗工し硬化させてなるハードコート層を設けたことである。
ここで、(a)の電離放射線硬化型樹脂とは、重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂であり、(b)の電離放射線硬化型樹脂とは、重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂である。
なお、本発明において、電離放射線硬化型樹脂の重量平均分子量Mwは、標準サンプルにポリスチレンを使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0024】
このように、ハードコート層の樹脂成分として、重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂と、重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂を混合して用いることにより、成型用ハードコートフィルムの成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性のいずれの特性も向上させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、ハードコート層の樹脂成分として、重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂と、重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂の他に、さらに(c)の電離放射線硬化型樹脂として、重量平均分子量Mwが10,000を超え、150,000未満の電離放射線硬化型樹脂を混合して用いることがより好ましい。
【0026】
上記(a)の重量平均分子量Mwが150,000以上の電離放射線硬化型樹脂の中でも、以下の条件を満たす電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂の1.5μmの塗膜を形成させたフィルムを作製する。次に、当該作製したフィルムから、幅15mm×長さ150mmの試験片を作製し、温度25℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張った際に、前記塗膜にクラックが入るまでの伸び率が50%以上で、かつ、JIS K5600に規定される鉛筆硬度がB〜Hである。
【0027】
また、上記(b)の重量平均分子量Mwが10,000以下の電離放射線硬化型樹脂の中でも、上記と同様の試験法により測定した伸び率が1%以上で、かつ、鉛筆硬度がH〜4Hを有する電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。
また、上記(c)の重量平均分子量Mwが10,000を超え、150,000未満の電離放射線硬化型樹脂の中でも、上記と同様の試験法により測定した伸び率が20%以上で、かつ、鉛筆硬度がHB〜2Hを有する電離放射線硬化型樹脂であることが好ましい。
【0028】
本発明において、上記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂の混合比率は、(a):(b)=80:20〜60:40(重量部)であることが好ましい。この混合比率外であると、上記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂を併用することの効果が得られ難くなり、成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性のいずれの特性も向上させることが難しくなる。
また、本発明において、上記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂の他に、さらに(c)の電離放射線硬化型樹脂を混合して用いる場合、これら各樹脂の混合比率は、(a):(b):(c)=40〜605〜3020〜55(重量部)であることが好ましい。この混合比率外であると、上記(a)の電離放射線硬化型樹脂と(b)の電離放射線硬化型樹脂の他に、(c)の電離放射線硬化型樹脂を併用することの効果が得られ難くなる。
【0029】
また、上記ハードコート層に含まれる樹脂としては、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、ケイ素樹脂等の熱硬化性樹脂を本発明の効果、すなわちハードコート層の伸長性と硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で含有してもよい。
【0030】
また、上記ハードコート層に含まれる電離放射線硬化型樹脂の光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類などの公知のものが利用できる。
本発明においては、上記ハードコート層に無機酸化物微粒子を含有させることが好ましい。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5〜50nmであることが好ましく、さらに好ましくは平均粒子径10〜20nmである。平均粒子径が5nm未満であると十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えるとハードコート層の光沢、透明性が低下し、可撓性も低下する。
【0031】
本発明において上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層用塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜5.0重量部であることが好ましい。含有量が0.1重量部未満であると、耐擦傷性の向上効果が得られ難い。一方、含有量が5.0重量部を超えるとヘイズが上がってしまい、成型用ハードコートフィルムを用いた成型体の意匠性が損なわれることがある。
【0032】
また、上記ハードコート層に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損わない範囲で、消泡剤、レベリング剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収財、光安定化剤などを必要に応じて含有してもよい。
【0033】
本発明において、上記ハードコート層の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1〜10μm程度の範囲であることが好適である。塗膜厚さが1μmよりも薄いと必要な硬度が得られ難くなる。また、塗膜厚さが10μmよりも厚いと良好な伸長性が得られ難くなる。
【0034】
上記ハードコート層は、上述の電離放射線型樹脂の他に、無機酸化物微粒子、重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散した塗料を上記基材フィルム上に塗工、乾燥して形成される。溶媒としては、含有される前記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、重合開始剤、その他添加剤など)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等) 、エステル類( 酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類などが例示できる。また、溶媒は単独で使用しても2種類以上を混合して使用してもよい。
【0035】
ハードコート層の塗工方法については特に限定されないが、通常、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工など、塗膜厚さの調整が容易な方式で塗工が可能である。なお、塗工したハードコート層の膜厚は、例えばマイクロメーターで実測することにより測定可能である。
また、本発明の成型用ハードコートフィルムにおいては、上記基材フィルムのハードコート層を設けた側とは反対面に例えば印刷層などの加飾層や、着色・接着フィルムなどを設けてもよい。
【0036】
上記加飾層は、例えば絵柄層及び/又は隠蔽層、金属蒸着層等により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は全面ベタ層であり樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。また、金属蒸着層は、一部或いは全面を金属調に蒸着した層であり、樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層、或いは樹脂層を金属調に表現することを目的に設けられる層である。
【0037】
加飾層(例えば絵柄層及び/又は隠蔽層)は、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷法により形成することができる。加飾層の形成厚みは、特に制約は無いが、意匠性の観点からは例えば3〜50μmが好ましく、更に好ましくは10〜30μmである。また、上記金属蒸着層は、スパッタリングなどの方法で成膜することができる。
【0038】
加飾層の形成に使用される印刷インキのバインダーとしては、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル2液硬化型樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等を例示できる。印刷インキは、通常、溶剤に溶解又は分散した態様で提供される。溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、或いは前記の溶剤の混合物を使用できる。通常、溶剤系塗料を調整の際に使用する汎用溶剤を用いることができる。
【0039】
なお、基材フィルム上に直接印刷して上記加飾層を形成した場合、加飾層(印刷層)と基材フィルムとの密着性が不十分となりやすく加飾層の脱落といった問題が発生するおそれがある。このため、基材フィルムと加飾層の間に基材フィルムと加飾層の両者との密着性を有するプライマー層を設けることが好ましい。また、このプライマー層を設けた加飾フィルムを成型用フィルムとして使用する場合、プライマー層の特性として基材フィルムと加飾層の両者との密着性の他、成型時の基材フィルムの伸びに追従する物性(伸び)が良好であることも必要とされる。
【0040】
本発明において、上記プライマー層は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂及びポリメチルメタクリレート樹脂を主成分として含有する構成とすることが好ましい。また、この場合、その配合比率(重量部)を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂/ポリメチルメタクリレート樹脂=80/20〜25/75の範囲とすることが好ましい。
【0041】
上記ポリメチルメタクリレート樹脂に対する上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の配合比率が80重量部超では、プライマー層2の乾燥塗膜の耐溶剤性が低下するため、加飾層を形成する塗料(インキなど)に含まれる溶剤(例えばインキ溶剤の代表的な組成:NPR(n−プロピルアルコール)/トルエン/酢酸エチル/MEK(メチルエチルケトン)=30/30/20/20(重量部)など)でプライマー層塗膜が侵食され、加飾性、密着性の低下を生じ易いこと、また耐熱性が低下するため、操業上の問題が生じる場合がある。さらに、成型用フィルムを巻き取った際に圧着あるいはブロッキングなどの問題を発生する。一方、上記ポリメチルメタクリレート樹脂に対する上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の配合比率が25重量部未満では、基材フィルムあるいは加飾層との密着性が低下する。
【0042】
上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂における塩化ビニルと酢酸ビニルとの比率は特に限定されるものではないが、塩化ビニル/酢酸ビニル=65/35〜90/10(重量部)であることが好ましく、より好ましくは70/30〜90/10(重量部)である。塩化ビニルの比率が低いと、耐熱性の低下による操業上の問題、巻き取った際の圧着、ブロッキングなどの問題が発生する懸念がある。たとえば、塩化ビニルの比率が65重量部未満では塗膜の硬度低下や耐溶剤性が低下し易くなる問題点がある。一方、上記比率が90重量部超では柔軟性の低下や耐溶剤性の向上に伴い溶剤への溶解性が低下するため好ましくない。
【0043】
なお、塩化ビニルと酢酸ビニルとの比率は下記の式Iから算出することができる。
[式I]
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度(Tg)=ポリ塩化ビニルのガラス転移温度(87℃)×塩化ビニルの比率(a)+ポリ酢酸ビニルのガラス転移温度(29℃)×酢酸ビニルの比率(b=1−a)
【0044】
本発明において、上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度(Tg)が65℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が65℃未満では、耐熱性の低下による操業上の問題、フィルムを巻き取った際の圧着、ブロッキングなどの問題が発生する懸念がある。なお、上記ポリメチルメタクリレート樹脂は、ホモポリマーであり、通常、ガラス転移温度は105℃である。
【0045】
上記プライマー層には、耐光性の付与を目的にベンゾトリアゾール系或いはベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、塗工性の改善を目的とした各種レベリング剤(フッ素系、シロキサン系、アクリル系等)、光安定剤、静防処理剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合することも可能である。また、プライマー層用塗料の溶剤として使用する場合には、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、或いは前記の溶剤の混合物を使用することができる。通常、溶剤系塗料を調整の際に使用する汎用溶剤を用いることができる。
【0046】
上記プライマー層の形成(成膜)方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜100℃程度の温度で乾燥する。
【0047】
上記プライマー層の乾燥後の塗工厚みに関しては、特に限定されないが、通常、0.1μmから1.0μmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.2μmから0.5μmの範囲である。塗工厚みが0.1μm未満では、基材フィルムとの密着性の低下や、プライマー層上に加飾層を形成する際、加飾層塗料中の溶剤でプライマー層表層が浸食され密着性の低下を生じ易い問題点がある。一方、塗工厚みが1.0μm超では、基材フィルム、加飾層とのより一層の密着性の向上効果は得られず、かえってコスト高となること、また成型用フィルムを延伸の際、白化が生じ易くなるため好ましくない。
【0048】
上記プライマー層には、さらに無機あるいは有機微粒子を配合することは成型用フィルムを巻き取った際の圧着、ブロッキングなどの防止の点から好ましい。その場合、配合量(重量部)は、プライマー層を形成する熱可塑性樹脂/無機或いは有機微粒子=99.8/0.2〜95.0/5.0であることが好ましい。上記微粒子の配合量が5.0重量部を超えると透明性の低下や成型用ハードコートフィルムの延伸時に白化が発生し易くなるため好ましくない。一方、上記微粒子の配合量が0.2重量部未満であると十分な効果が発現しない懸念がある。
【0049】
無機微粒子としては、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ等の微粒子を例示することができ、有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレート、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物等の微粒子を例示することができる。粒子径としては、例えば0.085μm〜0.50μmの微粒子の使用が好ましい。粒子径が0.085μm未満では、プライマー層面とハードコート層面とを重ねて巻き取った際にブロッキングの発生はないが圧着し易いため好ましくない。一方、粒子径が0.50μm超では、それ以上の圧着或いはブロッキングの防止効果は得られず、かえってコスト高となること、外部ヘイズが高くなり透明性の低下を生じ易くなるため好ましくない。
【0050】
以上説明したように、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂及びポリメチルメタクリレート樹脂を、好ましくは、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)が80/20〜25/75の範囲で含有するプライマー層を設けることにより、該プライマー層は基材フィルムと加飾層の両者との密着性に優れ、該プライマー層を介しての基材フィルムと加飾層との密着性を向上させることができる。また、上記構成によるプライマー層は、成型時の基材フィルムの伸びに追従する物性(伸び)が良好である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
なお、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
なお、以下で使用するウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」は、重量平均分子量Mw180,000、伸び率はベース基材PETが破断するまでクラック入らず、鉛筆硬度HBであり、前記の電離放射線硬化型樹脂(a)に相当する。また、ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」は、重量平均分子量Mw4,100、伸び率4.0%、鉛筆硬度2Hであり、前述の電離放射線硬化型樹脂(b)に相当する。また、アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」は、重量平均分子量Mw29,000、伸び率40%、鉛筆硬度Hであり、前述の電離放射線硬化型樹脂(c)に相当する。
なお、上記の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。GPC測定の標準サンプルにはポリスチレンを使用した。
【0052】
[実施例1]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)80部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)20部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF製)5部と、ヒンダードアミン系化合物「TINUVIN770DF(商品名)」(BASF製)0.5部と、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物「TINUVIN 479(商品名)」(BASF製)0.5部と、レベリング剤RS75(フッ素系レベリング剤、DIC(株)社製)0.3部とアルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)の対固形分3%を酢酸ブチル/n-プロピルアルコール=50/50(重量%)で紫外線硬化性樹脂の塗料中の固形分濃度が20%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
【0053】
<ハードコートフィルム作製>
伸び試験用として厚さ125μmの二軸延伸易成型PETフィルム「ルミラーU463(商品名)」(東レ製)の一方の面に上記塗料をバーコーターで塗工し、80℃で1分間熱風乾燥した後、紫外線光量450mJ/mで硬化させた。得られた塗膜の厚さは5μmであった。次いで、鉛筆硬度、耐擦傷性試験用として厚さ75μmのPMMAフィルム(住友製)の一方の面に上記塗料をバーコーターで塗工し、80℃で1分間熱風乾燥した後、紫外線光量450mJ/mで硬化させた。得られた塗膜の厚さは1.5μmであった。
【0054】
[実施例2]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)70部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)30部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0055】
[実施例3]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)65部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)35部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0056】
[実施例4]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)60部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)40部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0057】
[実施例5]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)45部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)5部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0058】
[実施例6]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0059】
[実施例7]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)35部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)15部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0060】
[実施例8]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)30部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)20部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0061】
[実施例9]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「NANOBYK-3601(商品名)」(平均粒径40nm、ビックケミー製)を対固形3%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0062】
[実施例10]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形0.05%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0063】
[実施例11]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形1.0%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0064】
[実施例12]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形2.0%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0065】
[実施例13]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形5.0%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0066】
[実施例14]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形10%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0067】
[実施例15]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)40部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)50部とウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)10部を主剤とし、アルミニウムを主成分とした微粒子「ALMIBKH06(商品名)」(平均粒径13nm、CIKナノテック製)を対固形15%添加した。他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と鉛筆硬度、耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0068】
[実施例16]
<塗料調製>
実施例6の塗料からアルミニウムを主成分とした微粒子を除外して調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0069】
[比較例1]
<塗料調製>
アクリルポリマー系紫外線硬化性樹脂「8KX-012C(商品名)」(固形分39%、大成ファインケミカル製)100部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0070】
[比較例2]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「8BR-500(商品名)」(固形分37%、大成ファインケミカル製)100部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0071】
[比較例3]
<塗料調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂「UN904(商品名)」(固形分100%、根上工業製)100部を主剤とし、他の添加剤は実施例1に準じて調製した。
<ハードコートフィルム作製>
上記塗料を用いて実施例1と同様にして伸び試験用と耐擦傷性用ハードコートフィルムを作製した。
【0072】
以上のようにして作製された実施例及び比較例のハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
(1)鉛筆硬度
JIS K5600に示される試験法により鉛筆硬度を測定した。
(2)成型性(伸び率)
前述の伸び試験用のハードコートフィルムを使用し、サンプルサイズ幅15mm×長さ150mmの試験片を作製する。引張速度50mm/分、チャック間距離100mmで引張り、表面のハードコート層にクラックが入るまでの引張伸度を測定した。
(3)耐擦傷性
堅牢度試験機(テスター産業製)により、ハードコート層の磨耗及び摩擦に対する堅牢性試験を行った。PMMAフィルム上に塗工されたハードコート層とスチールウール#0000を荷重102g/cm2×10往復にて互いに摩擦し、試験前と後のヘイズ値の差を測定した(以下「ΔHaze」と略記する。)。なお、上記ヘイズ値は、村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM150」を用いて測定した。
ΔHaze=(耐擦傷性試験後のヘイズ値)−(耐擦傷性試験前のヘイズ値)
上記ΔHazeが低い方がハードコート表層の傷が少ないことを示す。
【0073】
【表1】
【0074】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性のいずれの特性も良好な成型用ハードコートフィルムが得られる。さらに、実施例2と実施例6、実施例4と実施例7を比較した場合、樹脂2成分(実施例2,4)と樹脂3成分(実施例6,7)は、ヘイズ値は同程度であるが、樹脂3成分の方が高い伸びを示している。このことから、樹脂2成分より樹脂3成分の方が優位である。
これに対し、ハードコート層の樹脂成分として前記電離放射線硬化型樹脂(a)、(b)、(c)のいずれかを単独で使用した比較例1〜3では、成型性(伸び率)と表面硬度、耐擦傷性のうちの少なくともいずれかの特性が不良であり、これらの特性をすべて向上させることが困難である。
【0075】
[実施例A]
実施例1で作製した成型用ハードコートフィルム(基材フィルムは前記PMMAフィルム)のハードコート層を設けた面とは反対の面に、下記プライマー層塗料をバーコーターで塗工し、90℃で1分間熱風乾燥し、塗膜厚み0.3μmのプライマー層を形成した(評価サンプル1)。次に、上記評価サンプル1のプライマー層上に、200μmスクリーンメッシュを用い、加飾層塗料(二液反応硬化型スクリーンインキ「SS16−000(商品名)」(ウレタン系、東洋インキ製造社製))をベタ印刷し、60℃で30分間熱風乾燥し、塗膜厚み20μmの加飾層(ベタ印刷層)を形成した(評価サンプル2)。
また、後記の伸び試験用として、実施例1で作製した前記二軸延伸易成型PETフィルムを基材フィルムとした成型用ハードコートフィルムのハードコート層を設けた面とは反対の面に、上記と同様にしてプライマー層を形成した(評価サンプル3)。
【0076】
<プライマー層塗料の調製>
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインC(商品名)」(ガラス転移点70℃、日信化学工業社製)を酢酸エチル/メチルイソブチルケトン=40/60(重量部)からなる混合溶剤で溶解し、固形分15%の溶解液を作製した。次に、溶解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインC」50部と、ポリメチルメタクリレート樹脂「アクリット0404EA−P(商品名)」(固形分40%、ガラス転移点105℃、大成ファインケミカル社製)50部を主剤とし、レベリング剤「BYK−354(商品名)」(アクリル系レベリング剤、ビッグケミージャパン社製)0.2部、紫外線吸収剤「TINUVIN928(商品名)」(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製)1.0部をトルエン/メチルイソブチルケトン=30/70(重量%)で塗料中の固形分が5%となるように調整し、プライマー層塗料を調製した。
なお、本実施例Aでは、プライマー層塗料に用いた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインC」とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)は50/50である。
【0077】
[実施例B]
プライマー層塗料に用いた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインC」とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)を80/20に変更した以外は、実施例Aと同様にして成型用ハードコートフィルムを作製した。
【0078】
[実施例C]
プライマー層塗料に用いた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂「ソルバインC」とポリメチルメタクリレート樹脂との配合比率(重量部)を25/75に変更した以外は、実施例Aと同様にして成型用ハードコートフィルムを作製した。
【0079】
[実施例D]
プライマー層塗料に、無機系微粒子である球状シリカ「MEK−ST−ZL(商品名)」微粒子分散物(固形分30%、粒子径0.085μm、日産化学社製、トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤中にガラスビーズを添加しビーズ分散)2部を添加した以外は、実施例Aと同様にして成型用ハードコートフィルムを作製した。
【0080】
[実施例E]
上記プライマー層を設けなかった(つまり、基材フィルム表面に直かに加飾層を形成)以外は、実施例Aと同様にして成型用ハードコートフィルムを作製した。
【0081】
以上のようにして作製した実施例A〜Eの成型用ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて後記表2に示した。
【0082】
(1)耐溶剤性
プライマー層塗膜上に、3cm角の脱脂綿を載せ、その脱脂綿上に混合溶剤「NPR/トルエン/酢酸エチル/MEK=30/30/20/20(重量部)」を滴下し、3分間の溶剤試験後に脱脂綿を除去し、プライマー層表面の状態を目視観察し、各試料の表面状態を3段階評価した。評価基準は、下記の通りである。なお、◎、○評価品を耐溶剤性は合格と判定した。
評価基準
◎:変化無し ○:僅かに白化有り △:全面白化有り ×:溶解
(2)耐熱性
プライマー層を形成したフィルムを用い、プライマー層が向き合うように折り重ね、熱傾斜試験機HG−100−2「東洋精機社製」にて、圧力3kg/cm、時間10秒間圧着させた後、圧着面を剥離し、面荒れの無き温度を耐熱温度とした。なお、耐熱温度70℃以上は合格と判定した。
【0083】
(3)密着性
上記各実施例で得られた成型用ハードコートフィルムおける、基材フィルムとプライマー層と密着性を評価サンプル1、プライマー層と加飾層の密着性を評価サンプル2を用いて次の方法で評価した。
評価サンプル1、2について、恒温恒湿条件下(23℃、53%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mmのクロスカットを100個作製し、積水化学工業社製粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、90度方向に剥離し、各層の残存個数を4段階評価した。評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品を密着性は合格と判定した。なお、表2中の項目「PR層」はプライマー層と基材フィルムとの密着性、「加飾層」はプライマー層と加飾層との密着性の評価結果である。
評価基準
◎:100個 ○:99〜95個 △:94〜50個 ×:49〜0個
なお、ハードコート層と基材フィルムとの密着性(表2中の項目「HC層」)についても同様の方法で評価したところ、いずれの実施例においても合格であった。
【0084】
(4)透明性
各実施例で作製した各成型用ハードコートフィルムについて、JIS K7136に示される試験法により全光線透過率を測定した。評価基準は、下記の通りであり、◎と○評価品を透明性は合格と判定した。
評価基準
◎:92%以上 ○:91%以上92%未満 ×:91%未満
(5)伸度
前述の伸び試験用フィルム(評価サンプル3)を使用し、サイズ15mm×長さ150mmの試験片を作製する。引張速度50mm/分、チャック間距離100mmで引張り、表面のハードコート層にクラックが入る迄の引張伸度を測定した。
【0085】
(6)鉛筆硬度
各実施例で作製した各成型用ハードコートフィルムについて、JIS K5600に示される試験法により鉛筆硬度を測定した。表面にキズの発生なき硬度を表2に表記した。(7)巻取り適性
各実施例で作製した各成型用ハードコートフィルムについて、各試料とも各10cm角に裁断し、プライマー層面とハードコート層面とを重ねた試料を2組作製し、温度40℃の環境下に48時間保存後、試料を取出し、表裏面の圧着状態、及び試料を剥離した際、各面の表面状態により4段階評価した。評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品を巻き取り適性は合格と判定した。
評価基準
◎:圧着、面荒れ無し ○:圧着ややあるが、面荒れ無し
△:圧着強く、面荒れ無し ×:圧着強く、面あれ大
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2の結果から明らかなように、プライマー層によって基材フィルムと加飾層の両者との密着性に優れ、且つ成型性(伸度)、ハード性(鉛筆硬度)、巻取り適性のほか、耐溶剤性、耐熱性、透明性にも優れた成型用ハードコートフィルムが得られる。
また、上記プライマー層を設けずに、基材フィルム表面に直かに加飾層を形成した実施例Eでは、耐溶剤性、加飾層との密着性が大きく低下する。また、成型用フィルムを巻き取った際に圧着あるいはブロッキングなどの問題を発生しやすくなる。