(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0042】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器1の機能ブロックを示す図である。電子機器1は、例えば携帯電話(スマートフォン)であって、パネル10(取付部材の一例)と、表示部20と、圧電素子30と、入力部40と、制御部50と、を備える。
【0043】
パネル10は、接触を検出するタッチパネル、または表示部20を保護するカバーパネル等である。パネル10は、例えばガラス、またはアクリル等の合成樹脂、サファイア等により形成される。ここで、サファイアとは、酸化アルミニウム(Al
2O
3)の結晶からなり、工業的に製造されたものをいう。パネル10は、平板形状であっても良いし、曲面形状を有していても良い。曲面形状を有するパネルとしては、例えば、電子機器1の外部側を構成する面においては、中央部が凹んだ凹形状を有する一方で、電子機器1の内部側を構成する面は平面であるものも含まれる。このようなパネルは、利用者が通話を行うために電子機器1を側頭部に当てる際、パネル10の凹面が利用者の側頭部に填まり易く、使い勝手が良くなる一方で、パネル10における、電子機器1の内部側の面は平面であるため、例えば、柔軟性に乏しい平板形状の表示部20であっても容易に取り付けることができる。また、パネル10の形状は板状であるとよい。パネル10は、平板であってもよいし、表面が滑らかに傾斜する曲面パネルであってもよい。パネル10は、タッチパネルである場合、利用者の指、ペン、又はスタイラスペン等の接触を検出する。タッチパネルの検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式を用いることができる。
【0044】
表示部20は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示部20は、可撓性を有したフレキシブルディスプレイであってもよい。表示部20は、パネル10の背面に設けられる。表示部20は、接合部材(例えば接着剤)によりパネル10の背面に配設される。表示部20は、パネル10と離間して配設され、電子機器1の筐体により支持されてもよい。あるいは、好適な態様では、表示部20は、接合部材(例えば接着剤)によりパネル10の背面に接合されてもよい。接合部材は、例えば、透過させる光の屈折率を制御した、光学弾性樹脂などの弾性樹脂である。表示部20は、接合部材とパネル10を透過して種々の情報を表示する。
【0045】
圧電素子30は、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲(湾曲)する素子である。これらの素子は、例えばセラミック製や水晶からなるものが用いられる。圧電素子30は、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、ユニモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型ユニモルフ素子、又はバイモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型の圧電素子は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成される。積層型圧電素子は、電気信号(電圧)が印加されると、各層の積層方向、即ち、厚み方向に撓みの変位を起こす。ユニモルフは、電気信号(電圧)が印加されると伸縮し、バイモルフは、電気信号(電圧)が印加されると屈曲する。
【0046】
圧電素子30は、パネル10の背面(電子機器1の内部側の面)に配置される。圧電素子30は、接合部材(例えば両面テープ)によりパネル10に取り付けられる。圧電素子30は、中間部材(例えば板金)を介してパネル10に取り付けられてもよい。圧電素子30は、パネル10の背面に配置された状態で、筐体60の内部側の表面と所定の距離だけ離間している。圧電素子30は、伸縮または屈曲した状態でも、筐体60の内部側の表面と所定の距離だけ離間しているとよい。すなわち、圧電素子30と筐体60の内部側の面との間の距離は、圧電素子30の最大変形量よりも大きいとよい。
【0047】
入力部40は、利用者からの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタン(操作キー)から構成される。なお、パネル10がタッチパネルである場合には、パネル10も利用者からの接触を検出することにより、利用者からの操作入力を受け付けることができる。
【0048】
制御部50は、電子機器1を制御するプロセッサである。制御部50は、圧電素子30に所定の電気信号(音声信号に応じた電圧)を印加する。制御部50が圧電素子30に電気信号を印加すると、圧電素子30は厚み方向に撓みの変位を起こす。このとき、圧電素子30が取り付けられたパネル10は、圧電素子30の変位にあわせて変形し、パネル10が振動する。このため、パネル10は、気導音を発生させる。また、パネル10は、該パネル10に接触する対象物に人体振動音を伝える。対象物として、例えば、利用者の体の一部(外耳の軟骨等)がある。例えば、制御部50は、通話相手の音声に係る音声信号に応じた電気信号を圧電素子30に印加させ、その音声信号に対応する気導音及び人体振動音を発生させることができる。音声信号は、着信メロディ、または音楽を含む楽曲等に係るものであってもよい。なお、電気信号にかかる音声信号は、電子機器1の内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。制御部50が圧電素子30に対して印加する電圧は、例えば、人体振動音ではなく気導音による音の伝導を目的とした所謂パネルスピーカの印加電圧である±5Vよりも高い、±15Vであってよい。これにより、利用者が例えば3N以上の力(5N〜10Nの力)で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、圧電素子30は、パネル10に十分な振動を発生させ、利用者の体の一部を介する人体振動音を発生させることができる。尚、どの程度の印加電圧を用いるかは、パネル10の筐体または支持部材に対する固定強度もしくは圧電素子30の性能に応じて適宜調整可能である。制御部50が圧電素子30に電気信号を印加すると、圧電素子30は長手方向に伸縮または屈曲する。このとき、圧電素子30が取り付けられたパネル10は、圧電素子30の伸縮または屈曲にあわせて変形し、パネル10が振動する。パネル10は、圧電素子30の伸縮または屈曲によって湾曲する。パネル10は、圧電素子30によって直接的に曲げられる。「パネル10が圧電素子によって直接的に曲げられる」とは、従来のパネルスピーカで採用されているような、圧電素子をケーシング内に配設して構成される圧電アクチュエータの慣性力によりパネルの特定の領域が加振されてパネルが変形する現象とは異なる。「パネル10が圧電素子によって直接的に曲げられる」とは、圧電素子の伸縮または屈曲(湾曲)が、接合部材を介して、或いは接合部材及び後述の補強部材80を介して、直にパネルを曲げることを意味する。このため、パネル10は、気導音を発生させるとともに、利用者が体の一部(例えば外耳の軟骨)を接触させた場合、体の一部を介する人体振動音を発生させる。例えば、制御部50は、例えば通話相手の音声に係る音声信号に応じた電気信号を圧電素子30に印加させ、その音声信号に対応する気導音及び人体振動音を発生させることができる。音声信号は、着信メロディ、または音楽を含む楽曲等に係るものであってもよい。なお、電気信号にかかる音声信号は、電子機器1の内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。
【0049】
パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、取付領域から離れた領域も振動する。パネル10は、振動する領域において、当該パネル10の主面と交差する方向に振動する箇所を複数有し、当該複数の箇所の各々において、振動の振幅の値が、時間とともにプラスからマイナスに、あるいはその逆に変化する。パネル10は、ある瞬間において、振動の振幅が相対的に大きい部分と振動の振幅が相対的に小さい部分とがパネル10の略全体に一見ランダムにあるいは周期的分布した振動をする。即ちパネル10全域にわたって、複数の波の振動が検出される。利用者が例えば5N〜10Nの力で自身の体にパネル10を押し付けた場合であっても、パネル10の上述したような振動が減衰しないためには、制御部50が圧電素子30に対して印加する電圧は、±15Vであってよい。そのため、利用者は、上述したパネル10の取付領域から離れた領域に耳を接触させて音を聞く
ことができる。
【0050】
ここで、パネル10は、利用者の耳とほぼ同じ大きさであってよい。また、パネル10は、
図2に示すように、利用者の耳よりも大きいものであってもよい。この場合、利用者が音を聞く際、電子機器1のパネル10により耳全体が覆われやすいことから、パネル10は、周囲音(ノイズ)を外耳道に入りにくくできる。パネル10は、対耳輪下脚(下対輪脚)から対耳珠までの間の距離に相当する長さと、耳珠から対耳輪までの間の距離に相当する幅とを有する領域よりも広い領域が振動すればよい。パネル10は、好ましくは、耳輪における対耳輪上脚(上対輪脚)近傍の部位から耳垂までの間の距離に相当する長さと、耳珠から耳輪における対耳輪近傍の部位までの間の距離に相当する幅を有する領域が振動すればよい。長さ方向は、この例ではパネル10が延在する長手方向2aであり、その中心から一方の端部寄りに圧電素子30が配設される。また、幅方向は、長手方向と直交する方向2bである。上記の長さおよび幅を有する領域は、長方形状の領域であってもよいし、上記の長さを長径、上記の幅を短径とする楕円形状であってもよい。日本人の耳の平均的な大きさは、社団法人 人間生活工学研究センター(HQL)作成の日本人の人体寸法データベース(1992−1994)等を参照すれば知ることができる。尚、パネル10が日本人の耳の平均的な大きさ以上の大きさであれば、パネル10は概ね外国人の耳全体を覆うことができる大きさであると考えられる。
【0051】
上記のような寸法や形状を有することで、パネル10は、ユーザーの耳を覆うことができ、耳に当てたときの位置ずれに対して寛容になる。
【0052】
上記の電子機器1は、パネル10の振動により、気導音と、利用者の体の一部(例えば外耳の軟骨)を介する人体振動音とを利用者に伝えることができる。そのため、従来のダイナミックレシーバと同等の音量の音を出力する場合、パネル10が振動することで空気の振動により電子機器1の周囲へ伝わる音は、ダイナミックレシーバと比較して少ない。したがって、上記の電子機器1は、例えば録音されたメッセージを電車内等で聞く場合等に適している。
【0053】
また、上記の電子機器1は、圧電素子30が発生させるパネル10の振動が、人体内部に伝わる音を発生させる。人体内部に伝わる音は、人体の軟らかい組織(tissue)(例えば軟骨(cartilage))を経由して、中耳(middle ear)又は内耳(inner ear)を振動させる。上記の電子機器1は、パネル10の振動によって人体振動音を伝える。そのため、例えば利用者がイヤホンまたはヘッドホンを身につけていても、それらに電子機器1を接触させることで、利用者はイヤホンまたはヘッドホンおよび体の一部を介して音を聞くことができる。
【0054】
上記の電子機器1は、パネル10の振動により利用者に音を伝える。そのため、電子機器1が別途ダイナミックレシーバを備えない場合、音声伝達のための開口部(放音口)を筐体に形成する必要がなく、電子機器1の防水構造が簡略化できる。尚、電子機器1がダイナミックレシーバを備える場合、放音口は、気体は通すが液体は通さない部材によって閉塞されるとよい。気体は通すが液体は通さない部材は、例えばゴアテックス(登録商標)である。
【0055】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態に係る電子機器1の実装構造を示す図である。
図3(a)は正面図、
図3(b)は
図3(a)におけるb−b線に沿った断面図である。
図3に示す電子機器1は、ガラス板であるタッチパネルが筐体60(例えば金属や樹脂のケース)の前面にパネル10として配されたスマートフォンである。パネル10及び入力部40は筐体60に支持され、表示部20および圧電素子30は、それぞれ接合部材70によりパネル10に接着されている。接合部材70は、熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤や両面テープ等であり、例えば無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂でもよい。パネル10、表示部20および圧電素子30は、それぞれ略長方形状である。
【0056】
表示部20は、パネル10の短手方向におけるほぼ中央に配置される。圧電素子30は、パネル10の長手方向の端部から所定の距離だけ離間して、当該端部の近傍に、圧電素子30の長手方向がパネル10の短辺に沿うように配置される。表示部20と圧電素子30とは、パネル10の内部側の面に平行な方向において並んで配置される。
【0057】
図4乃至
図9を参照して、第1の実施形態に係る電子機器1の圧電素子30近傍の構造について説明する。
図4乃至
図9に示すように、圧電素子30には、FPC(フレキシブルプリント基板)25が接続される。FPC25は、制御部50から圧電素子30に印加される電気信号を伝達する。言い換えれば、制御部50からの電気信号は、FPC25を介して圧電素子30に伝達される。
【0058】
FPC25は、ベース25aと、信号線25b及び25cと、カバーレイ25dとがこの順に積層されて構成される。ベース25a及びカバーレイ25dは、例えばポリイミド等の樹脂により形成される。ベース25aは、FPC25の基材であり、樹脂部材の一例である。信号線25b及び25cは、例えば銅箔又は青銅箔によって形成される。尚、ベース25aと信号線25b及び25cとの間、並びに信号線25b及び25cとカバーレイ25dとの間は、熱硬化性樹脂等の接着剤(不図示)で接着されている。
【0059】
図4は、FPC25と圧電素子30とが接続された状態を示す斜視図である。
図5は、
図4に示すFPC25及び圧電素子30を、FPC25或いは圧電素子30の厚さ方向に視た図である。
図4に示すように、圧電素子30は、長尺状である。圧電素子30は、平板状である。圧電素子30は、第1主面30a及び第2主面30dを有する。FPC25と圧電素子30との電気的な接続は、主として圧電素子30の第1主面30aにおける長手方向の端部領域で行われる。
図4においては、FPC25と圧電素子30とは、圧電素子30の長手方向の左側の端部で電気的に接続される。FPC25と圧電素子30との接続構造については、後に詳述する。
【0060】
FPC25と圧電素子30との接続部分において、FPC25のベース25aは、ベース25aのその他の領域と比較して厚く形成される。ベース25aのうち圧電素子30と接続されない領域が例えば0.03mm程度であるのに対して、圧電素子30との接続部近傍は、例えば0.4mm程度の厚さに形成される。尚、ベース25aは、圧電素子30と接続されない領域における厚さと、圧電素子30との接続部近傍における厚さとが、同じであってもよい。FPC25と圧電素子30との接続部近傍におけるベース25aが相対的に厚く形成されることで、例えばFPC25と圧電素子30との接続部に外力が作用した場合に、FPC25と圧電素子30とが剥離しにくくなる。
【0061】
そして、ベース25aのうち相対的に厚く形成される部分は、圧電素子30の第1主面30aを覆っている。ベース25aのうち相対的に厚く形成される部分は、圧電素子30の第1主面30aの略全体を覆っている。尚、第1主面30aの略全体或いは全体とは、例えば第1主面30a全体の8割以上をいう。圧電素子30の破損を低減できれば、第1主面30aを完全に覆っていなくともよい。ベース25aのうち相対的に厚く形成される部分は、圧電素子30の長手方向においてFPC25との接続部と反対側の端部(
図4における圧電素子30の長手方向の右側の端部)まで延設されている。圧電素子30は、ベース25aによって覆われていない第2主面30dが、接合部材70によってパネル10に接着される。
【0062】
図6は、FPC25と圧電素子30との接続部を示す図である。
図6(a)は、FPC25側の接続部をカバーレイ25d側から視た図である。
図6(b)は、圧電素子30側の接続部を第1主面30a側から視た図である。
図6(a)に示すように、FPC25側の接続部においては、信号線25b及び信号線25cそれぞれの一部がカバーレイ25dから露出している。
図6(b)に示すように、圧電素子30側の接続部においては、プラス側電極端子30b及びマイナス側電極端子30cが第1主面30aから露出している。FPC25と圧電素子30とが接続される際には、FPC25の信号線25bが圧電素子30のプラス側電極端子30bと接続され、かつ、FPC25の信号線25cが圧電素子30のマイナス側電極端子30cと接続される。FPC25と圧電素子30とは、後述のACP(Anisotropic Conductive Paste)接続又はACF(Anisotropic Conductive Film)接続と呼ばれる手法によって接着される。
【0063】
図7及び
図8を用いて、FPC25と圧電素子30との接続構造について説明する。
図7は、FPC25と圧電素子30との接続構造の第1例を示す図である。
図8は、FPC25と圧電素子30との接続構造の第2例を示す図である。
【0064】
まず、
図7を用いて、ACP接続或いはACF接続を含めたFPC25と圧電素子30との接続構造の第1例について説明する。ACP接続或いはACF接続には、異方性導電性材料100が用いられる。異方性導電性材料100は、主にバインダ(接着剤)の中に導電性粒子が混合されて構成される。バインダは、接続部を機械的に固定するための部材であり、一方導電性粒子は対向する電極同士を電気的に導通させるための部材である。バインダは、例えば熱硬化性の合成ゴム系樹脂である。導電性粒子は、例えばポリスチレン等の樹脂の球体に金メッキを施したものである。導電性粒子は、ニッケル等の金属核に金メッキを施したもの又は金属核そのものであってもよい。
【0065】
FPC25と圧電素子30とを接続する際には、両者の接続部の間に上述の異方性導電性材料100を配置して重ね合わせ、熱圧着を行う。
図7は、FPC25と圧電素子30とが熱圧着されて接続された様子を示している。
図7は、
図5におけるVII―VII断面図である。
図7における100aはバインダ(接着剤)を示し、100bは導電性粒子を示す。熱圧着により圧着されたFPC25の信号線25b及び25cと圧電素子30のプラス側電極端子30b及びマイナス側電極端子30cは、両者の間に挟まれた導電性粒子100bによって機械的、電気的に接続される。一方、バインダは絶縁体であるため、導電性粒子100b同士の間では絶縁性が保たれている。
【0066】
尚、
図7では、圧電素子30のプラス側電極端子30bとマイナス側電極端子30cとがFPC25の信号線25b,25c及び導電性粒子100bを介して電気的に接続されているように描かれている。しかし、実際には、信号線25bと信号線25cとは、
図6(a)に示すように、圧電素子30の主面に沿う方向(
図7の紙面に垂直な方向)において離れて配置されており、信号線25bは、プラス側電極端子30bと接続されているがマイナス側電極端子30cとは接続されていない。同様に、信号線25cはマイナス側電極端子30cと接続されているがプラス側電極端子30bとは接続されていない。
【0067】
また、ベース25aは、FPC25と圧電素子30との接続部近傍から、圧電素子30の長手方向に沿って延設されている。ベース25aは、圧電素子30の第1主面30aを覆っている。
【0068】
このように、第1例によれば、圧電素子30の第1主面30a略全体が、例えばポリイミド等の樹脂から成るベース25aによって覆われる。当該構成により、例えば電子機器1が地面に落下することで筐体60が変形し、変形した筐体60が圧電素子30に衝突して圧電素子30が破損しにくくなる。また、圧電素子30の第1主面30aに設けられたプラス電極30b及びマイナス電極30cが絶縁性のベース25aによって覆われるため、筐体60内で圧電素子30の近傍に金属製の部材(例えば、回路基板又は表示部20を保持する板金部材等)が配置される場合に、これら金属製の部材と圧電素子30とが導通して電子機器1が誤動作することを低減できる。
【0069】
次に、
図8を参照して、FPC25と圧電素子30との接続構造の第2例について説明する。以下、上述の第1例と同様の構成については説明を省略し、主として異なる部分について説明を行う。
【0070】
図8に示す第2例では、
図7に示す第1例と比較して、FPC25の信号線25cと圧電素子30のマイナス側電極端子30cとの接続構造が異なる。
図8に示すように、第2例では、FPC25の信号線25cが、圧電素子30の長手方向(
図7及び
図8における左右方向)における右側の端部近傍まで延びている。また、マイナス側電極端子30cは、圧電素子30の長手方向における右側の端部近傍に設けられるが、圧電素子30の長手方向における中央部近傍及びプラス側電極端子30b近傍には設けられていない。一方、プラス側電極端子30bは、圧電素子30の長手方向における左側の端部近傍に設けられる。すなわち、FPC25と圧電素子30とは、圧電素子30の長手方向における一端部で信号線25bとプラス側電極端子30bとが接続され、他端部で信号線25cとプラス側電極30cとが接続される。尚、圧電素子30の長手方向における中央部近傍においては、FPC25のカバーレイ25dが信号線25b及び25cと圧電素子30との間に位置するため、中央部近傍において導電性粒子100bによってFPC25と圧電素子30が不必要に導通することはない。
【0071】
このように、第2例によれば、圧電素子30のプラス側電極端子30bが長手方向の一端部近傍に配置され、マイナス側電極端子30cが長手方向の他端部近傍に配置される。そのため、プラス側電極端子30bとマイナス側電極端子30cとが導電性粒子100bによってショートしにくくなる。また、
図7に示す第1例と比較すると、圧電素子30の第1主面30aにおいてマイナス側電極端子30cが配置される面積が小さいため、圧電素子30が湾曲しやすくなる。
【0072】
尚、
図8では、マイナス側電極端子30cが、圧電素子30の長手方向における右側の端部近傍のみに設けられ、圧電素子30の長手方向における中央部近傍及びプラス側電極端子30b近傍には設けられていなかったが、これに限定されない。マイナス側電極端子30cは、異方性導電性材料の導電性粒子100bによってプラス側電極端子30bとショートしない程度に離れて配置されていれば、圧電素子30の長手方向における中央部近傍及びプラス側電極端子30b近傍に設けられていてもよい。
【0073】
次に、
図9を参照して、FPC25と圧電素子30との接続構造の第3例について説明する。以下、上述の第1例及び第2例と同様の構成については説明を省略し、主として異なる部分について説明を行う。
【0074】
図9に示す第3例では、FPC25と圧電素子30との接続構造において、圧電素子30の長手方向の中央部近傍での構造が異なる。
図9に示すように、FPC25と圧電素子30とは、圧電素子30の長手方向における一端部で信号線25bとプラス側電極端子30bとが異方性導電性材料100によって接続され、他端部で信号線25cとプラス側電極30cとが異方性導電性材料100によって接続される。そして、圧電素子30の長手方向における中央部近傍のマイナス側電極端子30cとカバーレイ25dとの間には、空隙29が形成されている。すなわち、マイナス側電極端子30cとカバーレイ25dとは、所定の距離だけ離れて配置されている。
【0075】
このように、第3例によれば、FPC25と圧電素子30とは、圧電素子30の長手方向両端部で接続され、圧電素子30の長手方向の中央部近傍においては接続されていない。これにより、両者の電気的な導通を確保しつつ、圧電素子30の変形がFPC25により阻害されにくくなり、圧電素子30によりパネル10を効率的に振動させることができる。尚、圧電素子30は、上述したように電圧の印加により変形するが、FPC25は、この圧電素子30の変形を阻害しない程度に、例えば圧電素子30の長手方向の中央部近傍と対向する部分が撓んでいてよい。本発明における「圧電素子30の第1主面30a略全体がFPC25によって覆われる」とは、第1例及び第2例に示すような、両者の主面同士の略全体が異方性導電性材料100によって接着される構造、及び第3例に示すような、両者が圧電素子30の長手方向の両端部のみで接続されている構造の双方を含む概念である。空隙29には、例えばスポンジ等の弾性部材が配置されていても良い。
【0076】
次に、
図10を参照して、本発明に係る電子機器1の第1の変形例について説明する。
図10は、第1の変形例に係るFPC25及び圧電素子30を示す図である。
図10に示すように、FPC25は、
図7及び
図8と同様に圧電素子30と接続されるが、さらに、電子部品55とも接続される。FPC25は、圧電素子30の長手方向の端部からさらに延設される。FPC25の端部には、電子部品55が接続される。電子部品55は、例えば、照度センサ、近接センサ、カメラ或いは赤外線通信部である。FPC25は、上述の圧電素子30と接続される信号線25b及び25cの他に、電子部品55と接続される信号線を有している。
【0077】
このように、圧電素子30の第1主面30a全体を覆っているFPC25をさらに延設し、延設された部分(延設部)の端部に電子部品55を設けることで、圧電素子30及び電子部品55を一つのFPC25により不図示の回路基板と接続することができ、部品点数の削減が図られる。尚、圧電素子30の変形に起因してFPC25も変形するため、FPC25の変形が電子部品55に伝わって電子部品55が振動することが考えられる。この場合には、電子部品55を例えばスポンジ等の弾性部材で覆うことで電子部品55の振動を低減できる。尚、FPC25の延設部をより長くすることで、延設部に張力が掛らないようにしてもよい。この場合には、FPC25の変形により生じる振動が電子部品に伝わり難くすることができる。
【0078】
以上に説明した、電子機器1では、圧電素子30の第2主面30dが、接合部材70によってパネル10に接着され、圧電素子30における、第2主面30dとは反対側の第1主面30aをFPC25のベース25aが覆っている構成を有している。即ち、圧電素子30は、パネル10とFPC25との間に配設されている。しかしながら、本発明に係る電子機器1の構成はこれに限定されない。
【0079】
図11を参照して、電子機器1の第2の変形例について説明する。
図11は、第2の変形例に係るパネル10、FPC25及び圧電素子30を示す図である。本変形例では、FPC25がパネル10と圧電素子30との間に配設されている。FPC25は、例えば、ベース25aが接合部材70によってパネル10に取り付けられ、FPC25のカバーレイ25dが前述したACF接続によって圧電素子30に取り付けられている。
【0080】
本変形例では、基材がポリイミド等の樹脂から成るFPC25がパネル10と圧電素子30との間に配設されている。このような構成により、例えば電子機器1が地面に落下することで生じる外部からの衝撃がパネル10を介して圧電素子30に伝搬する際に、該衝撃がFPC25によって緩和され、圧電素子30が破損しにくくなる。
【0081】
圧電素子30における、FPC25に取り付けられた面とは反対側の面は、電子機器1の内部おいて露出している。しかしながら、この露出した面は、樹脂等から成る保護部材が被覆された構成となっていても良い。当該構成により、前述と同様にして、電子機器1の落下による変形した筐体60が圧電素子30に衝突することによる圧電素子30の破損を生じ難くすることができる。
【0082】
また、本変形例において、FPC25は、接合部材70によってパネル10に取り付けられることを例示したが、これに限定されない。FPC25は、前述したACF接続によってパネル10に取り付けられていても良い。このとき、FPC25に対して、圧電素子30と接続される信号線25b、25cとは異なる他の信号線をさらに設け、該他の信号線がパネル10に設けられた電極端子に接続された構成とすることができる。当該構成によれば、FPC25を介して、圧電素子30のみでなく、パネル10にも電気信号を印加することが可能となる。
【0083】
また、FPC25と圧電素子30とは、ACF接続ではなく、はんだ部材によって接続されていても良い。
【0084】
図1乃至
図11を用いて説明した第1の実施形態に係る第1の例、第2の例及び変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0085】
図12は、第1の実施形態に係る電子機器1のパネル10の振動の一例を示す図である。第1の実施形態に係る電子機器1では、表示部20がパネル10に取り付けられている。このため、パネル10の下部は、圧電素子30が取り付けられたパネル10の上部に比して振動しにくくなる。そのため、パネル10の下部において、パネル10の下部が振動することによる音漏れが低減できる。パネル10は、圧電素子30によってその上部が直接的に曲げられ、当該上部に比して下部では振動が減衰する。パネル10は、圧電素子30の長辺方向において該圧電素子30の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、圧電素子30によって曲げられる。また、パネル10は、当該パネル10の長辺方向において該圧電素子30の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、圧電素子30によって曲げられる。
【0086】
このように、本実施形態に係る電子機器1によれば、パネル10の背面に取り付けられた圧電素子30の変形に起因してパネル10が変形し、当該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と人体振動音とを伝える。尚、圧電素子30の変形に伴い、FPC25も変形する。これにより、振動体を筐体60の外面に突出させることなく気導音と人体振動音とを利用者に伝えることができるため、筐体に比べて非常に小さな振動体を人体に接触させる特許文献1に記載の電子機器よりも使い勝手が向上する。また、圧電素子自体に利用者の耳を当てる必要がないので圧電素子30そのものが破損しにくい。また、パネル10ではなく筐体60を変形させる場合には、振動を発生させる際に、利用者が端末を落としてしまいやすいのに対して、パネル10を振動させた場合には、このようなことが起きにくい。
【0087】
また、圧電素子30はパネル10に接合部材70により接合されている。これにより、圧電素子30の変形の自由度を阻害しにくい状態で圧電素子30をパネル10に取り付けることができる。また、接合部材70は、非加熱型硬化性の接着剤とすることができる。これにより、硬化時に、圧電素子30とパネル10との間に熱応力収縮が発生しにくいという利点がある。また、接合部材70は、両面テープとすることができる。これにより、圧電素子30とパネル10との間に接着剤使用時のような収縮応力がかかりにくいという利点がある。
【0088】
(第2の実施形態)
図13は第2の実施形態に係る電子機器1の実装構造を示す図である。
図13(a)は正面図、
図13(b)は
図13(a)におけるb−b線に沿った断面図、
図13(c)は
図13(a)におけるc−c線に沿った断面図である。
図13に示す電子機器1はパネル10として表示部20を保護するカバーパネル(アクリル板)が上側の筐体60の前面に配された折りたたみ式の携帯電話である。第2の実施形態では、パネル10と圧電素子30との間には、補強部材80が配置される。補強部材80は、例えば樹脂製の板、板金またはガラス繊維を含む樹脂製の板である。すなわち、第2の実施形態に係る電子機器1は、圧電素子30と補強部材80とが接合部材70により接着され、さらに補強部材80とパネル10とが接合部材70により接着される構造である。また、第2の実施形態では、表示部20は、パネル10に接着されるのではなく、筐体60によって支持されている。すなわち、第2の実施形態に係る電子機器1は、表示部20がパネル10と離間しており、表示部20と筐体60の一部である支持部90とが接合部材70により接着される構造である。なお、支持部90は、筐体60の一部としての構成に限定されず、金属や樹脂等により筐体60から独立した部材として構成することが可能である。
【0089】
図14は、第2の実施形態に係る電子機器1のパネル10の振動の一例を示す図である。第2の実施形態に係る電子機器1では、パネル10がガラス板と比較し剛性の低いアクリル板であり、また、パネル10の背面に表示部20が接着されていない。そのため、
図11に示す第1の実施形態に係る電子機器1に比べ、圧電素子30により生じる振幅が大きくなる。また、パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、取付領域から離れた領域も振動する。このため、利用者は、空気を介する気導音に加え、パネル10の任意の位置に耳を接触させて人体振動音を聞くことができる。
【0090】
このように、本実施形態に係る電子機器1によれば、パネル10に補強部材80を介して取り付けられた圧電素子30の変形に起因して補強部材80およびパネル10が変形し、当該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と人体振動音とを伝える。これにより、振動体自体を耳に当てることなく気導音と人体振動音とを利用者に伝えることができる。また、圧電素子30は、パネル10の筐体60内部側の面に取り付けられる。このため、振動体を筐体60の外面に突出させることなく気導音と人体振動音とを利用者に伝えることができる。また、パネル10は、圧電素子30が取り付けられた取付領域だけでなく、パネル10のいずれの箇所においても気導音と人体振動音とを伝えるための変形が発生する。このため、利用者は、空気を介する気導音に加え、パネル10の任意の位置に耳を接触させて人体振動音を聞くことができる。
【0091】
また、圧電素子30とパネル10との間に補強部材80を配置することで、例えばパネル10に外力が加わった場合に、その外力が圧電素子30に伝達され圧電素子30が破損する可能性を低減することができる。また、人体にパネル10を強く接触させても、パネル10の振動が減衰しにくくできる。また、圧電素子30とパネル10との間に補強部材80を配置することで、パネル10の共振周波数が下がり、低周波帯域の音響特性が向上する。なお、補強部材80に換えて、板状の錘を接合部材70により圧電素子30に取り付けてもよい。
【0092】
(第3の実施形態)
図15は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器1の構造を示す図である。
図15(a)は正面図、
図15(b)は
図15(a)におけるY−Y線に沿った断面図である。
図15に示す電子機器1はパネル10としてガラス板であるタッチパネルが筐体60(例えば金属や樹脂のケース)の前面に配されたスマートフォンである。パネル10は、接合部材70により筐体60に接合されることで、該筐体60に取り付けられている。ここで、接合部材70は、例えば、接着剤や両面テープである。また、表示部20及び圧電素子30は、接合部材70によりパネル10に接合されて、取り付けられている。パネル10への表示部20の取り付けに好適な接合部材70としては、例えば、無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂がある。また、パネル10への圧電素子30の取り付けに好適な接合部材70としては、例えば、防水性を有した両面テープや熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤がある。入力部40は、パネル10と同様にして、筐体60に取り付けられている。ここで、パネル10、表示部20および圧電素子30は、それぞれ略長方形状である。
【0093】
表示部20は、パネル10の短手方向におけるほぼ中央に配設される。圧電素子30は、パネル10の長手方向の端部から所定の距離だけ離間して、該端部の近傍に、圧電素子30の長手方向がパネル10の短辺に沿うように設けられる。表示部20と圧電素子30とは、パネル10の内部側の面に平行な方向において並んで設けられる。
【0094】
本実施形態に係る電子機器1は、上記の構成を有することにより、パネル10の背面に取り付けられた圧電素子30の変形に起因してパネル10が変形し、該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝えることができる。
【0095】
図16は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器1のパネル10の振動の一例を示す図である。本実施形態に係る電子機器1では、図に示すように、パネル10の上部に圧電素子30が取り付けられ、該上部よりも下側において表示部20が取り付けられている。パネル10は、該パネル10の長辺方向2aにおいて圧電素子30の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、圧電素子30によって曲げられる。一方、パネル10の下部は、表示部20が取り付けられていることにより、圧電素子30が取り付けられたパネル10の上部に比して振動しにくくなる。そのため、パネル10の下部において、パネル10の下部が振動することによる音漏れが低減できる。
【0096】
電子機器1は、パネル10の振動により音を伝える。ここで、圧電素子30が筐体60に取り付けられ、筐体60を振動させる場合と比較すると、利用者が電子機器を手に取って通話する際に、筐体60の振動により電子機器を落としてしまう可能性がある(通常、利用者は電子機器の筐体部分を持って通話を行う)。一方、パネル10を振動させる電子機器1ではこのような問題が起き難い。尚、それ程振動が大きくない場合は、勿論、圧電素子30が筐体60に取り付けられていても良い。
【0097】
再度、
図15を参照すると、
図15(b)より、圧電素子30における、パネル10に取り付けられた面(以後、第1主面)とは反対側の面(以後、第2主面)には、保護部材85が取り付けられている。保護部材85は、例えば、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系に代表される有機系の合成ゴムや、シリコーン等の無機系の合成ゴム等の弾性部材からなる。また、保護部材85は、熱硬化性、熱可塑性、湿気硬化性、紫外線硬化性等を有する硬化性樹脂であっても良い。また、保護部材85は、有機系物質と無機系物質(あるいは金属)との複合体から成っていても良い。例えば、ポリアミド系樹脂を母材とし、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を含ませることにより得られる複合部材(強化樹脂)であってもよい。ポリアミド系樹脂に対するガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等の付加量に応じて、強度、剛性および弾性が適宜調整される。上記のような強化樹脂は、例えば、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を編みこんで形成された基材に樹脂を含浸させ、硬化させて形成される。強化樹脂は、液状の樹脂に細かく切断された繊維片を混入させた後に硬化させて形成されるものであってもよい。強化樹脂は、繊維を編みこんだ基材と樹脂層とを積層したものであってもよい。
【0098】
本発明に係る電子機器1では、圧電素子30の第2主面に、保護部材85が取り付けられている。そのため、例えば、電子機器1の落下等により受ける衝撃によって、圧電素子30と、圧電素子30に近接して配設される他部材(例えば、筺体60の内部に突出した角部や電子部品等)とが接触する場合に、該接触による衝撃を保護部材85が緩和することによって、圧電素子30を破損し難くすることができる。
【0099】
保護部材85は、該保護部材85における圧電素子30に取り付けられた面とは反対側の面が凸状の湾曲形状を有していても良い。例えば、
図15(b)に示すような、保護部材85が、Y−Y線に沿った断面において凸状の湾曲形状を有している場合、保護部材85が平板形状で、かつ、凸状の保護部材における最も厚い部分と同じ厚みである場合と比較して、圧電素子30の撓み変位に伴って変形し易いことが経験的に分かっている。即ち、保護部材85が凸状の湾曲形状を有している場合は、保護部材85が平板形状である場合と比較して、圧電素子30の変形を阻害し難く、従って、音圧の低下を軽減しつつ、外力による圧電素子30の破損を低減することができる。
【0100】
保護部材85を圧電素子30に取り付ける方法として、例えば、有機系あるいは無機系の合成ゴムを、圧電素子30に取り付けるための平面形状部と該平面形状部に対向する湾曲形状部とを有するように加工して、圧電素子30に取り付けても良いし、前述した硬化性樹脂を、圧電素子30におけるパネル10に取り付けられる面とは反対側の面に塗布、あるいは滴下し、硬化させることで保護部材85を形成させても良い。硬化性樹脂は、常温下においては、硬化する前であってもある程度の粘性を有しており、圧電素子30の上に塗布、あるいは滴下した場合に、硬化性樹脂の表面張力により湾曲形状を形成し、該湾曲形状を有した状態で硬化させることができる。
【0101】
図15において、保護部材85は、圧電素子30の第2主面を覆っているがこれに限定されず、保護部材85は、圧電素子30の第2主面に加えて、該面から延設される側面も覆う構成であっても良い。また、保護部材85は、圧電素子30における、第1主面以外の面を覆う構成であっても良い。このような構成により、保護部材85は、圧電素子30の側面に対する衝撃であっても緩和することができる。
【0102】
図17は、本発明の第3の実施形態の第1の変形例を示す図である。
図17(a)は、電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図17(b)、(d)は、
図17(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図17(c)、(e)は、
図17(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。尚、
図17(a)は、パネル10における、圧電素子30が配置される側から視認される面を示している(以後の変形例においても同様である)。ここで、圧電素子30は、保護部材85により覆われているため、パネル10における圧電素子30が配置される側の面を視た場合に、視認されない。しかしながら、圧電素子30と他部材との配置の関係を理解し易くするために、
図17(a)においては、圧電素子30が視認されるように、圧電素子30の部分を白抜きで示してある(以後の変形例においても同様である)。
【0103】
本変形例では、パネル10と圧電素子30との間に中間部材110が配設されている。中間部材110は、第1接合部材71(例えば、両面テープ)あるいは第2接合部材81(例えば、硬化性樹脂からなる接着剤)により、パネル10及び圧電素子30に取り付けられている。ここで、中間部材110は、例えば、前述した強化樹脂である。
【0104】
圧電素子30における、中間部材110に取り付けられた面(第1主面)とは反対側の面(第2主面)には、FPC(Flexible printed circuits;フレキシブルプリント基板)120が取り付けられている。FPC25は、例えば、ポリイミド等の樹脂からなるフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に導体層(信号線)を形成し、さらに、導体層における、端子部に該当する領域を除いて、絶縁体が被覆された構成を有している。FPC25の端子部と圧電素子30に備えられた電極端子部とは、例えば、はんだ材料、又は、電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(Anisotropic Conductive Paste、或いは、Anisotropic Conductive Film)等からなる接合材によって、接着されて、接続されている。
【0105】
FPC25は、圧電素子30の第2主面における、左側の端部に取り付けられ、該取り付けられた箇所から延設されて、図示していない制御部50に電気的に接続され、制御部50から印加される電気信号を圧電素子30に伝達する。
【0106】
圧電素子30の第2主面には、保護部材85が取り付けられている。ここで、前述したように、圧電素子30の第2主面の一部には、FPC25が取り付けられているため、実際には、保護部材85は、圧電素子30とFPC25との双方を覆うように、配設されている。従って、
図17(a)においては、FPC25の一部、特に圧電素子30に取り付けられている部分が保護部材85によって覆われているため、視認されないことから、このような部分を点線で示している。尚、保護部材85は、圧電素子30の第2主面における、FPC25が取り付けられた領域を避けて、該圧電素子30に取り付けられている構成であっても良い。尚、以後の変形例においても、FPC25の配置の構成は同様であるため、特に言及する必要がある場合を除き、FPC25についての説明は省略する。
【0107】
保護部材85は、該保護部材85における、圧電素子30に取り付けられた面とは反対側の面(
図17(b)、(c)、(d)、(e)における上側の面)が凸形状の湾曲形状を有している。このような形状を有することにより、保護部材85が平板形状である場合と比較して、圧電素子30の変形を阻害し難く、従って、音圧の低下を軽減しつつ、外力による圧電素子30の破損を低減することができる。
【0108】
図17において、保護部材85は、圧電素子30の第2主面を覆っているがこれに限定されず、保護部材85は、圧電素子30の第2主面に加えて、該面から延設される側面も覆う構成であっても良い。このような構成により、保護部材85は、圧電素子30の側面に対する衝撃であっても緩和することができる。
【0109】
図17(b)、(c)(パターン1)において、中間部材110は、該中間部材110における、圧電素子30に取り付けられる面の領域が、圧電素子30の第1主面の領域よりも大きい。中間部材110は、X−X方向及びY−Y方向において、圧電素子30の第1主面よりも大きな面を有しており、該面を覆うように、保護部材85としての硬化性樹脂を滴下することで、圧電素子30の第1主面以外の面を樹脂で覆うことが可能となっている。この時、圧電素子30の第1主面よりも大きな面を有する中間部材110を該圧電素子30とパネル10との間に配設しているため、滴下される硬化性樹脂がパネル10に付着する恐れを低減できる。
【0110】
図17(d)、(e)(パターン2)において、中間部材110は、凹形状を有しており、開口面がパネル10に取り付けられている。また、パネル10と中間部材110との間に形成される空間には、例えば、第2接合部材81としての硬化性樹脂が充填されている(硬化性樹脂は、例えば、中間部材110の一部に形成された貫通孔100を介して注入される)。また、
図17(e)に示すように、中間部材110における内部側の面には、1つまたは複数の溝が形成されている。中間部材110に溝が形成されることにより、第2接合部材81としての硬化性樹脂と中間部材110とが接合する面積を増大させることができ、ひいては硬化性樹脂と中間部材110とをより強固に接合させることができる。尚、中間部材110における、パネル10あるいは圧電素子30に取り付けられる面に溝を形成してもよい。これにより、中間部材110とパネル10あるいは圧電素子30とをより強固に取り付けることができる。
【0111】
図18は、本発明の第3の実施形態の第2の変形例を示す図である。
図18(a)は電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図18(b)は、
図18(a)におけるX−X線に沿った断面図、
図18(c)は、
図18(a)におけるY−Y線に沿った断面図を示している。圧電素子30は、第1接合部材71と第2接合部材81とによってパネル10に取り付けられている。本変形例において、電子機器1は、圧電素子30を囲う枠部材95がパネル10に取り付けられている。圧電素子30は、該圧電素子30の第1主面における縁の領域が第1接合部材71によってパネル10に取り付けられている。ここで第1接合部材71は、例えば、両面テープである。尚、第1接合部材71は、圧電素子30の第1主面の縁の全域に取り付けられているわけではない。即ち、圧電素子30に第1接合部材71が取り付けられる領域は、閉領域となっていない。例えば、
図18(b)に示すように、圧電素子30の第1主面におけるX−X方向の左端の一部には、第1接合部材が配設されていない。第1接合部材が配設されていない部分は、後述する、第2接合部材81としての硬化性樹脂の通過経路となる。
【0112】
圧電素子30の第1主面における縁の領域以外の領域は、第2接合部材81によってパネル10に取り付けられている。第2接合部材81は、例えば、硬化性樹脂である。硬化性樹脂は、予め、圧電素子30が第1接合部材71によりパネル10に取り付けられた状態で、パネル10と枠部材95の内壁面とからなる略箱状の型に流し込まれることで、パネル10と圧電素子30との間の空間に浸入し、硬化後に、パネル10と圧電素子30とを取付けることができる。ここで、硬化性樹脂は、圧電素子30における、第1接合部材が配設されていない部分を介して、パネル10と圧電素子30との間の空間に浸入する。
【0113】
このような方法によれば、予め、第1接合部材71により圧電素子30をパネル10に取り付けておくことで、圧電素子30とパネル10との間の空間を保持して、該空間内において硬化性樹脂が十分な厚さを有した状態で該樹脂を硬化させることができ、ひいては、圧電素子30とパネル10とをより強固に取り付けることができる。
【0114】
尚、
図18(b)において、圧電素子30の第1主面におけるX−X方向の左端の一部に、第1接合部材が配設されていない構成を示したが、これに限定されず、X−X方向の左端の一部に加え、該左端とは反対側の右端の一部にも第1接合部材が配設されていない部分を設けても良い。このような構成とすることにより、X−X方向の左端の経路を通じて硬化性樹脂が侵入するとともに、パネル10と圧電素子30との間の空間に存在する空気をX−X方向の右端の経路を通じて排気させることができる。
【0115】
第2接合部材81としての硬化性樹脂は、パネル10と枠部材95の内壁面とからなる箱状の内部空間の略全体に流し込まれても良い。これにより、例えば、枠部材95の内壁面が圧電素子30の第2主面(圧電素子30の上面)よりも高い場合に、該第2主面及び圧電素子30の側面が硬化性樹脂により被覆される構成となる(即ち、圧電素子30の略全体が樹脂によって覆われる)。このような構成により、第2接合部材81としての硬化性樹脂は、前述した保護部材85と同様にして、外力による圧電素子30に対する衝撃の伝搬を緩和することができる。従って本変形例における第2接合部材81は、本発明における保護部材85と同等の効果を奏する。また、圧電素子30を硬化性樹脂で固定することによって、例えば、外部から衝撃がかかった際に圧電素子30がパネル10から外れる可能性を低減することができる。
【0116】
本発明によれば、パネル10と枠部材95の内壁面とからなる略箱状の型に第2接合部材81としての硬化性樹脂を流し込むため、パネル10に取り付けられた圧電素子30が樹脂により覆われた構造を容易に実現することができる。
【0117】
図18に示した電子機器1では、圧電素子30が、第1接合部材71と第2接合部材81によってパネル10に取り付けられている構成を示したが、必ずしもこのような構成を有している必要はなく、圧電素子30が、第1接合部材71と第2接合部材81のいずれか一方のみによってパネル10に取り付けられている構成であっても良い。例えば圧電素子30の第1主面の全域が、第1接合部材71としての両面テープによってパネル10に取り付けられていても良い。ここで使用される両面テープは、例えば、ポリマーフィルムの上下面を粘着剤で被覆した3層構造を有するシートであり、柔軟性に富み、圧電素子30の変形を阻害し難く、ひいては音圧特性を向上させる。一方で、一般的に、両面テープよりも接着力が高い硬化性樹脂を使用した場合には、圧電素子30とパネル10とをより強固に取り付けることができ、パネル10等に対する衝撃が、圧電素子30に伝搬して、該圧電素子30の一部がパネル10から剥離する可能性を低くすることができる。圧電素子30とパネル10とが剥離し難くなるため、パネル10等への衝撃が圧電素子30の局所に伝搬する可能性を低減し、ひいては圧電素子30の破損の可能性を低減することができる。
【0118】
尚、
図18(b)において、圧電素子30の第1主面における縁領域の一部に第1接合部材71が配設されていない領域を設ける構成を示したが、これに限定されず、第1接合部材71が圧電素子30の第1主面における縁の全領域に取り付けられていても良い(即ち、第1接合部材71が取り付けられる領域は閉領域を形成しても良い)。この場合、圧電素子30の第1主面における縁の領域以外の領域は、接合部材を介してパネル10と接合していない。従って、圧電素子30の第1主面における縁の領域以外の領域は、圧電素子30の変形が接合部材によって阻害されない領域となる。これにより、例えば、圧電素子30の第1主面の全域が第1接合部材71あるいは第2接合部材81によってパネル10に取り付けられている場合と比較して、圧電素子30の変形の阻害が軽減されることによる、電子機器1の音圧特性の向上が可能となる。
【0119】
図19は、本発明の第3の実施形態の第3の変形例を示す図である。
図19(a)は電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図19(b),(d),(f),(h)は、
図19(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図19(c),(e),(g),(i)は、
図19(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。本変形例は、前述した第1の変形例と比較して、電子機器1が備える枠部材95が、圧電素子30を囲う壁面部に加えて、該壁面部に延設される底面部を有している点が異なる。枠部材95の底面部は、パネル10と圧電素子30との間に配置され、第1接合部材71と第2接合部材81によってパネル10及び圧電素子30に取り付けられている。ここで、圧電素子30における、枠部材95の底面部に取り付けられる面を第1主面と称する。圧電素子30は、該圧電素子30の第1主面における縁の領域が第1接合部材71(例えば両面テープ)によって枠部材95の底面部に取り付けられている。尚、該圧電素子30の第1主面における縁の領域の一部に第1接合部材71が取り付けられない領域を有していても良い。また、
図19(b)、(c)(パターン1)に示すように、枠部材95の底面部は、該底面部の縁の領域が第1接合部材71によってパネル10に取り付けられている。
【0120】
枠部材95は、壁面部と底面部とからなる略箱形状を有しているため、第2接合部材81としての硬化性樹脂を枠部材95の内部に流し込むことができる。従って、枠部材95内部において、圧電素子30を樹脂により固定することができ、ひいては、圧電素子30が枠部材95の底面部から外れ難くすることができる。また、枠部材95の内部に流し込まれた硬化性樹脂は、圧電素子30の第1主面の縁領域における、一部、第1接合部材71が設けられていない部分を通過経路として、圧電素子30と枠部材95の底面部との間の空間にも侵入することができ、該樹脂によって圧電素子30と枠部材95とを固定することができる。
【0121】
枠部材95の底面部は、一部に貫通孔を有していても良い。例えば、
図19(b),(d)に示すように、枠部材95の底面部における、X−X方向の左端近傍に貫通孔が設けられていている。貫通孔を設けることにより、枠部材95の内部に流し込まれた硬化性樹脂が該貫通孔を通じて、枠部材95の底面部とパネル10との間の空間に浸入し、硬化後に、枠部材95とパネル10とを取付けることができる。なお、前述したように、
図19(b),(c)(パターン1)においては、第1接合部材71によって、枠部材95の底面部の縁領域がパネル10に取り付けられているため、該底面部とパネル10との間に、硬化性樹脂が侵入するための空間を形成することができる。
【0122】
尚、枠部材95の底面部の縁領域の一部に第1接合部材71が取り付けられない部分を設けても良い。このような部分は、例えば、枠部材95の底面部に形成した貫通孔を介して、該底面部とパネル10との間の空間に硬化性樹脂が侵入した際に、該空間に存在する空気を排気するための経路とすることができる。なお、空気を排気するための経路が、
図19(b)に示すような、枠部材95の底面部に貫通孔が形成された側の端部とは反対側の端部(X−X方向における右端)の近傍に設けられる場合、侵入した硬化性樹脂が該経路を通じて外部に漏れ難くなる。
【0123】
枠部材95の底面部は、該底面部の縁領域が、必ずしも、第1接合部材71によってパネル10に取り付けられている必要はない。例えば、
図19(d)、(e)(パターン2)に示すように、パネル10を凹形状とすることによっても、パネル10と枠部材95の底面部との間に、第2接合部材81が侵入するための空間を設けることができる。
【0124】
また、
図19(b)、(c)(パターン1)及び(d)、(e)(パターン2)に示す構成では、枠部材95の底面部の一部に貫通孔が形成されているが、必ずしも貫通孔は形成されていなくても良い。
図19(f)、(g)(パターン3)及び(h)、(i)(パターン4)は、枠部材95の底面部に貫通孔が形成されていない場合を示している。
図19(f)、(g)(パターン3)では、枠部材95の底面部の縁領域が第1接合部材71によりパネル10に取り付けられているとともに、パネル10における枠部材95の底面部が取り付けられた領域の内部側において、パネル10に貫通孔100が形成されている。パネル10に形成された貫通孔100から硬化性樹脂を注入することで、パネル10と枠部材95の底面部との間に形成される空間において硬化性樹脂を充填させることができ、ひいては、該樹脂により枠部材95とパネル10とを取付けることができる。
【0125】
枠部材95の底面部は、該底面部の縁領域が、必ずしも、第1接合部材71によってパネル10に取り付けられている必要はない。例えば、
図19(h)、(i)(パターン4)に示すように、パネル10を凹形状とすることによっても、パネル10と枠部材95の底面部との間に、第2接合部材81が侵入するための空間を設けることができる。
【0126】
図19(f)、(g)(パターン3)及び(h)、(i)(パターン4)に示す構成においては、パネル10に形成された貫通孔100を覆うように、ベゼルが設けられていても良い。ベゼルは、例えば、筐体60における電子機器1の側面を構成する部分から延設されている。ベゼルにより、パネル10の貫通孔100が覆われることで、貫通孔100が電子機器1の外部に露出することがなくなり、美観性を損ねることがない。
【0127】
枠部材95の底面部は、パネル10及び圧電素子30に取り付けられるとともに、パネル10と圧電素子30との間に配置される。ここで、例えば、枠部材95が鉄、ステンレス、アルミニウム等からなる場合、枠部材95の底面部は、パネル10に外力が加わった場合に、その外力が圧電素子30に伝搬され、圧電素子30が破損する可能性を低減する補強板としての役割も果たす。
【0128】
上記の構成では、圧電素子30は、枠部材95の底面部に取り付けられるが、これに限定されず、圧電素子30は、枠部材95の壁面部に取り付けられていても良い。
【0129】
ところで、本発明における電子機器1を製造する際、該電子機器1を構成する複数の部材を組み立てるに当って、部材単体あるいは幾つかの部材を予め組み合わせたユニット等を運搬する場合が想定される。このような場合、前述のように、圧電素子30の所定の面に保護部材85を取付けたユニットとしておけば、運搬時における外部からの衝撃等による破損の可能性を低減することができる。このとき、圧電素子30の少なくとも一部を硬化性樹脂が覆う構成となっていれば、運搬時における外部からの衝撃を硬化性樹脂によって緩和し得る。また、これらのユニットは当然ながら、圧電素子30における保護部材85が取り付けられた面以外の面を所定の板状部材に取り付けたときに、圧電素子30の変形に起因して、該板状部材を変形させ、該板状部材に接触する対象物に人体振動音を伝えることができる。
【0130】
また、保護部材85は、圧電素子30に取り付けられる面とは反対側の面が凸状の湾曲形状であってもよい。これにより、保護部材85が平板形状である場合と比較して、圧電素子30の変形を阻害し難くすることができる。
【0131】
また、圧電素子30を前述のような壁面部と底面部とから構成される枠部材(このような枠部材を箱状部材と称する)の内部側の底部に取り付け、箱状部材の内部に硬化性樹脂を流し込むことで、予め圧電素子30を枠部材95の内部において固定させたユニットとしても、運搬時における外部からの衝撃等による破損の可能性を低減することができる。このとき、箱状部材の底部における、圧電素子30が取り付けられた面とは反対側の面を所定の板状部材に取り付けたときに、圧電素子30の変形に起因して、該板状部材を変形させ、該板状部材に接触する対象物に人体振動音を伝えることができる。
【0132】
また上記ユニットにおいて、圧電素子30が取り付けられる部材は箱形状を有している必要は必ずしもない。例えば、所定の板状部材(第1板状部材)に圧電素子30が取り付けられ、圧電素子30における、第1板状部材に取り付けられた面(第1主面)とは反対側の面(第2主面)に所定の保護部材が取り付けられた構成を有するユニットであっても良い。所定の保護部材は、例えば、前述した弾性部材や硬化性樹脂等からなり、圧電素子30の第2主面を覆うことで、外部からの衝撃を緩和することができる。
【0133】
図20は、本発明の第3の実施形態の第4の変形例を示す図である。
図20(a)は電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図20(b)、(d)は、
図20(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図20(c)、(e)は、
図20(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。本変形例において、枠部材95は、底面部を有し、該底面部における圧電素子30が取り付けられる側の面から立設される第1壁面部と、圧電素子30が取り付けられる側の面とは反対側の面から立設される第2壁面部を有している。枠部材95は、第2壁面部を有することにより、該第2壁面部をパネル10に取り付けた際に、パネル10と枠部材95の底面部との間に空間を生じ、該空間内において第2接合部材81としての硬化性樹脂等を充填させることができる。従って、本変形例では、枠部材95の底面部とパネル10との間に第1接合部材71を設ける、あるいは、パネル10の一部を凹形状にすることなく、容易に、底面部とパネル10との間の空間を形成させることができる。尚、
図20に示されるように、枠部材95の底面部に立設される第1壁面部と第2壁面部とは、面一、即ち、一体となって枠部材95の側面を形成していても良い。
【0134】
図20(b)、(c)(パターン1)の構成においては、枠部材95の底面部の一部に貫通孔を形成させ、枠部材95に流し込まれる硬化性樹脂が、貫通孔を通じてパネル10と枠部材95の底面部との間の空間に浸入する。
図20(d)、(e)(パターン2)の構成においては、パネル10に貫通孔100が形成され、該貫通孔100から硬化性樹脂を注入することで、パネル10と枠部材95の底面部との間に形成される空間に硬化性樹脂を充填させることができる。尚、パネル10に形成された貫通孔100は、例えば、筐体60から延設されたべゼルによって覆われている。
【0135】
図21は、本発明の第3の実施形態の第5の変形例を示す図である。
図21(a)は電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図21(b)、(d)は、
図21(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図21(c)、(e)は、
図21(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。本変形例に係る電子機器1において、パネル10には蓋部材91が取り付けられている。蓋部材91は、圧電素子30を囲う壁面部と、該壁面部から延設される上面部とから構成されている。
【0136】
図21に示すように、圧電素子30は、パネル10と蓋部材91とにより形成される空間内に配置されている。従って、圧電素子30は、蓋部材91よって、外部から生じた衝撃から保護される。
【0137】
本変形例において、蓋部材91とパネル10とにより形成される空間内には第2接合部材81としての硬化性樹脂等が充填されていても良い。このような構成とすることで、圧電素子30が樹脂により固定されるため、外部から衝撃がかかった際に圧電素子30がパネル10から外れる可能性を低減できる。
図21(b)、(c)(パターン1)の構成においては、蓋部材91の一部に貫通孔を形成させ、該貫通孔100から硬化性樹脂を注入することで、蓋部材91の内部の空間に硬化性樹脂を充填させることができる。
図21(d)、(e)(パターン2)の構成においては、パネル10に貫通孔100を形成させ、該貫通孔100から硬化性樹脂を注入することで、蓋部材91の内部の空間に硬化性樹脂を充填させることができる。
【0138】
本変形例において、FPC25は、例えば、
図21(b)、(c)(パターン1)に示すように、圧電素子30に取り付けられた部分から、貫通孔100を介して、蓋部材91の外部に延設されている。尚、このような構成に限定されず、例えば、
図21(d)、(e)(パターン2)に示されるように、FPC25を延設させるための孔を、別途、蓋部材91に形成させても良い。
【0139】
(第4の実施形態)
図22は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器1の構造を示す図である。
図22(a)は正面図、
図22(b)は
図22(a)におけるY−Y線に沿った断面図である。
図22に示す電子機器1はパネル10としてガラス板であるタッチパネルが筐体60(例えば金属や樹脂のケース)の前面に配されたスマートフォンである。パネル10は、接合部材70により筐体60に接合されることで、該筐体60に取り付けられている。パネル10と筺体60との取付けに使用される接合部材70は、例えば、接着剤や両面テープである。また、表示部20は、接合部材70によりパネル10に接合されて、取り付けられている。パネル10への表示部20の取り付けに好適な接合部材70としては、例えば、無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂がある。また、圧電素子30は、中間部材110を介してパネル10に取り付けられている。圧電素子30は、接合部材70によって中間部材110に取付けられ、中間部材110は接合部材70によってパネル10に取付けられている。尚、中間部材110とパネル10及び圧電素子30との取付けに関しては後に詳述する。入力部40は、パネル10と同様にして、筐体60に取り付けられている。ここで、パネル10、表示部20および圧電素子30は、それぞれ略長方形状である。
【0140】
表示部20は、パネル10の短手方向におけるほぼ中央に配設される。圧電素子30は、パネル10の長手方向の端部から所定の距離だけ離間して、該端部の近傍に、圧電素子30の長手方向がパネル10の短辺に沿うように設けられる。表示部20と圧電素子30とは、パネル10の内部側の面に平行な方向において並んで設けられる。
【0141】
本実施形態に係る電子機器1は、上記の構成を有することにより、パネル10の背面に取り付けられた圧電素子30の変形に起因してパネル10が変形し、該変形するパネル10に接触する対象物に対して気導音と振動音とを伝えることができる。
【0142】
図23は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器1のパネル10の振動の一例を示す図である。本実施形態に係る電子機器1では、図に示すように、パネル10の上部に圧電素子30が取り付けられ、該上部よりも下側において表示部20が取り付けられている。パネル10は、該パネル10の長辺方向2aにおいて圧電素子30の直上がその周囲と比較して最も高く隆起するように、圧電素子30によって曲げられる。一方、パネル10の下部は、表示部20が取り付けられていることにより、圧電素子30が取り付けられたパネル10の上部に比して振動しにくくなる。そのため、パネル10の下部において、パネル10の下部が振動することによる音漏れが低減できる。
【0143】
電子機器1は、パネル10の振動により音を伝える。ここで、圧電素子30が筐体60に取り付けられ、筐体60を振動させる場合と比較すると、利用者が電子機器を手に取って通話する際に、筐体60の振動により電子機器を落としてしまう可能性がある(通常、利用者は電子機器の筐体部分を持って通話を行う)。一方、パネル10を振動させる電子機器1ではこのような問題が起き難い。尚、それ程振動が大きくない場合は、勿論、圧電素子30が筐体60に取り付けられていても良い。
【0144】
図24は、本発明の第4の実施形態に係る電子機器1の構造を詳細に説明するための図である。
図24(a)は電子機器1における、圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図24(b)、(d)は、
図24(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図24(c)、(e)は、
図24(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。尚、
図24(a)は、パネル10における、圧電素子30が配置される側から視認される面を示している(以後の変形例においても同様である)。
図24に示すように、圧電素子30は、中間部材110を介してパネル10に取り付けられている。
【0145】
圧電素子30における、中間部材110に取り付けられた面(第1主面)とは反対側の面(第2主面)には、FPC(Flexible printed circuits;フレキシブルプリント基板)120が取り付けられている。FPC25は、例えば、ポリイミド等の樹脂からなるフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に導体層(信号線)を形成し、さらに、導体層における、端子部に該当する領域を除いて、絶縁体が被覆された構成を有している。FPC25の端子部と圧電素子30に備えられた電極端子部とは、例えば、はんだ材料、又は、電気絶縁性の樹脂中に導電性粒子が混入された異方導電性材料(Anisotropic Conductive Paste、或いは、Anisotropic Conductive Film)等からなる接合材によって、接着されて、接続されている。
【0146】
FPC25は、圧電素子30の第2主面における、左側の端部に取り付けられ、該取り付けられた箇所から延設されて、図示していない制御部50に電気的に接続され、制御部50から印加される電気信号を圧電素子30に伝達する。尚、以後の変形例においても、FPC25の配置の構成は同様であるため、特に言及する必要がある場合を除き、FPC25についての説明は省略する。
【0147】
中間部材110は、例えば、外力による圧電素子の破損を低減するため、外力が圧電素子30に伝達されることを緩和する部材である。このような部材を構成するものとして、例えば、ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系に代表される有機系の合成ゴムや、シリコーン等の無機系の合成ゴム等の弾性素材であっても良い。また、熱硬化性、熱可塑性、湿気硬化性、紫外線硬化性等を有する硬化性樹脂から構成されていても良い。
【0148】
また、中間部材110は、例えば、圧電素子30の変形が過剰になることを低減する部材である。このような部材を構成するものとして、例えば、銅板、鉄板、またはリン青銅板であってもよい。また、例えば、ある程度の弾性を有するアルミニウム等から成る金属板やステンレス板であってもよい。ステンレス板等の金属板の厚さは、圧電素子30に印加される電圧値等に応じて、例えば0.2mm〜0.8mmのものが適宜用いられる。また、例えば銅板に銀メッキを施した金属板または銅板とアルミニウム板を積層した板等、複数の種類の金属から構成されてもよい。
【0149】
また、中間部材110は、有機系物質と無機系物質(あるいは金属)との複合体から成っていても良い。例えば、ポリアミド系樹脂を母材とし、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を含ませることにより得られる複合部材(強化樹脂)であってもよい。ポリアミド系樹脂に対するガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等の付加量に応じて、強度、剛性および弾性が適宜調整される。上記のような強化樹脂は、例えば、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を編みこんで形成された基材に樹脂を含浸させ、硬化させて形成される。強化樹脂は、液状の樹脂に細かく切断された繊維片を混入させた後に硬化させて形成されるものであってもよい。強化樹脂は、繊維を編みこんだ基材と樹脂層とを積層したものであってもよい。
【0150】
前述にて、圧電素子30は、接合部材70によって中間部材110に取付けられ、中間部材110は接合部材70によってパネル10に取付けられていることを説明した。ここで、接合部材70として、異なる複数の接合部材(第1接合部材71、第2接合部材81)が組み合わされて使用される。本発明において、第2接合部材81は、第1接合部材71よりも柔軟な部材である。例えば、第1接合部材71は、前述した硬化性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂)であり、一方で、第2接合部材81は、アクリルやPET(Polyethylene terephthalate)からなる基材に粘着剤を被覆して構成される両面テープである。アクリルやPETからなる基材の形状は、フィルム形状や不織布膜形状や発泡体形状等であるため、そのような基材を備える両面テープは硬化した樹脂よりも柔軟性に富む。従って、第2接合部材81は、第1接合部材71と比較して、該接合部材と接合する他部材の変形に追従して変形し易い、或いは他部材に伝搬される外力をより緩和することができる。
【0151】
圧電素子30は、第1接合部材71と第2接合部材81との何れによって中間部材110に取付けられていても良い。尚、
図24において、圧電素子30は、第2接合部材81によって中間部材110に取付けられている。この場合、第2接合部材81の柔軟性により、圧電素子30の変位が阻害され難く、結果として、音圧特性の向上を可能にする。また、第2接合部材81の代わりに第1接合部材71を使用した場合、より強固に中間部材110と圧電素子30とを取付けることができるため、圧電素子30の中間部材110からの剥離を生じ難くすることができる。
【0152】
本発明に係る電子機器1において、中間部材110は、パネル10と中間部材110と圧電素子30との積層方向における、圧電素子30の直下の領域を少なくとも含む所定の領域において、第1接合部材71によりパネル10に取り付けられ、該所定の領域の周囲の少なくとも一部の領域においては、第2接合部材81によりパネル10に取り付けられている。
【0153】
中間部材110は、パネル10と中間部材110と圧電素子30との積層方向における圧電素子30の直下の領域を少なくとも含む所定の領域において第1接合部材71によりパネル10に強固に取り付けられているため、電子機器1の落下等によりパネル10に掛る外部からの衝撃が圧電素子30に伝搬し難くすることができ、ひいては、圧電素子30の割れ等を生じ難くすることができる。
【0154】
また、中間部材110は、第1接合部材71の周囲の一部の領域において、第1接合部材71よりも柔軟な第2接合部材81によりパネル10に取り付けられているため、パネル10における、中間部材110が取り付けられた取付領域の周囲から、パネル10の主面に沿って取付領域へと伝搬される衝撃を第2接合部材81によって緩和することができ、ひいては、圧電素子30の割れ等を生じ難くすることができる。
【0155】
尚、
図24においては、パネル10と中間部材110との取付領域の周囲の全域に第2接合部材81としての両面テープを配設した構成を示したが、必ずしもそのような構成を有する必要はない。例えば、パネル10の上側の端部に中間部材110(あるいは圧電素子30)が取り付けられている場合には、その取付領域に対して、パネル10の下側の領域から衝撃が伝搬する可能性が高いため、取付領域における、パネル10の下部側(パネル10の上側の端部と反対側)のみに両面テープを配設しても良い。これにより、第2接合部材81によって、パネル10の主面に沿って伝搬される衝撃を効率的に緩和できる。
【0156】
本発明に係る電子機器1は、上記構成により、中間部材110におけるパネル10に取り付けられる面(第1主面)の縁の領域が第2接合部材81としての両面テープによってパネル10に取り付けられている。そこで、第1接合部材71としての硬化性樹脂を配設する前に、予め、中間部材110の第1主面における縁の領域を両面テープによってパネル10に取り付け、パネル10と中間部材110と両面テープとの間に、空間を形成させることで、該空間に第2接合部材81としての硬化性樹脂を充填することができる。即ち、パネル10と中間部材110との間に両面テープを配置させることで、硬化性樹脂の通過経路を形成することができる。予め、第2接合部材81によりパネル10と中間部材110とを取り付け、パネル10と中間部材110との間の空間を保持することにより、該空間内において硬化性樹脂が十分な厚さを有した状態で該樹脂を硬化させることができ、ひいては、パネル10と中間部材110とをより強固に取り付けることができる。
尚、
図24(b)(パターン1)に示すように、中間部材110の一部に、又は、
図24(d)(パターン2)に示すように、パネル10の一部に、貫通孔100を形成させることによって、貫通孔100から第2接合部材81としての硬化性樹脂を充填可能とする。貫通孔100は、即ち、パネル10と中間部材110と両面テープとの間に形成される空間から空間外へと連通する第1の孔である。尚、
図24(d)、(e)(パターン2)に示す構成においては、パネル10に形成された貫通孔100を覆うように、ベゼルが設けられていても良い。ベゼルは、例えば、筐体60における電子機器1の側面を構成する部分から延設されている。ベゼルにより、パネル10の貫通孔100が覆われることで、貫通孔100が電子機器1の外部に露出することがなくなり、美観性を損ねることがない。
【0157】
また、中間部材110またはパネル10に第1の孔としての貫通孔100とは異なる第2の孔を形成しても良い。これによって、第1の孔からパネル10と中間部材110との間の空間へ接着剤を充填すると共に、該空間に存在する気体を第2の孔から空間外へ排気することができる。
【0158】
また、第1の孔及び第2の孔は中間部材110又はパネル10に形成される構成を示したが、このような構成である必要は必ずしもなく、第1の孔と第2の孔との少なくとも一方を、中間部材110とパネル10とを取付ける両面テープに一部切欠きを形成させることによって設けても良い。
【0159】
中間部材110が
図24に示すような略長方形状である場合には、第2接合部材81としての両面テープを中間部材110の第1主面における、長手方向に沿った両縁部に取り付け、短手方向の両端部には取付けない構成とすることにより、パネル10と中間部材110との間に略長方形状の空間を形成させつつ、該空間の長手方向における一端に第1の孔を形成させ、該空間の長手方向における他端に第2の孔を形成させても良い。
【0160】
図25は、本発明の第4の実施形態の第1の変形例を示す図である。
図25(a)は電子機器1における、中間部材110及び圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図25(b)、(d)は、
図25(a)におけるX−X線に沿った断面図を各パターン毎に、
図25(c)、(e)は、
図25(a)におけるY−Y線に沿った断面図を各パターン毎に示している。本変形例では、圧電素子30における中間部材110に取付けられる面(第1主面)とは反対側の面(第2主面)に保護部材85としての硬化性樹脂が被覆している構成が示されている。従って、
図25(a)においては、パネル10における圧電素子30が配置される側の面を視た場合に、圧電素子30は、保護部材85に覆われているため、視認されない。しかしながら、圧電素子30と他部材との配置の関係を理解し易くするために、
図24(a)においては、圧電素子30が視認されるように、圧電素子30の部分を白抜きで示してある(以後の変形例においても同様である)。また、前述したように、圧電素子30の第2主面の一部には、FPC25が取り付けられているため、実際には、保護部材85は、圧電素子30とFPC25との双方を覆うように、配設されている。従って、
図25(a)においては、FPC25の一部が保護部材85によって覆われているため、視認されないことから、このような部分を点線で示している。尚、保護部材85は、圧電素子30の第2主面における、FPC25が取り付けられた領域を避けて、該圧電素子30に取り付けられている構成であっても良い(以後の変形例においても同様である)。
【0161】
本発明に係る電子機器1では、圧電素子30の第2主面に、保護部材85が取り付けられている。そのため、例えば、電子機器1の落下等により受ける衝撃によって、圧電素子30と、圧電素子30に近接して配設される他部材(例えば、筺体60の内部に突出した角部や電子部品等)とが接触する場合に、該接触による衝撃を保護部材85が緩和することによって、圧電素子30を破損し難くすることができる。
【0162】
保護部材85は、該保護部材85における圧電素子30に取り付けられた面とは反対側の面が凸状の湾曲形状を有していても良い。例えば、
図25(b)に示すような、保護部材85が、Y−Y線に沿った断面において凸状の湾曲形状を有している場合、保護部材85が平面形状で、かつ、凸状の保護部材における最も厚い部分と同じ厚みである場合と比較して、圧電素子30の撓み変位に伴って変形し易いことが経験的に分かっている。即ち、保護部材85が凸状の湾曲形状を有している場合は、保護部材85が平面形状である場合と比較して、圧電素子30の変形を阻害し難く、従って、音圧の低下を軽減しつつ、外力による圧電素子30の破損を低減することができる。
【0163】
保護部材85を圧電素子30に取り付ける方法として、例えば、有機系あるいは無機系の合成ゴムを、圧電素子30に取り付けるための平面形状部と該平面形状部に対向する湾曲形状部とを有するように加工して、圧電素子30に取り付けても良いし、前述した硬化性樹脂を、圧電素子30におけるパネル10に取り付けられる面とは反対側の面に塗布、あるいは滴下し、硬化させることで保護部材85を形成させても良い。硬化性樹脂は、常温下においては、硬化する前であってもある程度の粘性を有しており、圧電素子30の上に塗布、あるいは滴下した場合に、硬化性樹脂の表面張力により湾曲形状を形成し、該湾曲形状を有した状態で硬化させることができる。
【0164】
尚、保護部材85は、圧電素子30の第2主面を覆っていれば、圧電素子30の破損の可能性を低減できるが、このような構成に限定されず、保護部材85は、圧電素子30の第2主面に加えて、該面から延設される側面も覆う構成であっても良い。このような構成により、保護部材85は、圧電素子30の側面に対する衝撃であっても緩和することができる。
【0165】
保護部材85が硬化性樹脂であって、パネル10と第1接合部材71としての硬化性樹脂と同じものである場合には、保護部材85と第1接合部材71とを一体として設けていても良い。即ち、
図25(b)、(d)に示すように、中間部材110に形成された貫通孔100を介してパネル10と中間部材110との間の空間に硬化性樹脂を充填した後、中間部材110の上面及び圧電素子30の上面(第2主面)を覆うように硬化性樹脂を滴下し、硬化させることによって保護部材85を形成させる。このような方法により、第1接合部材71と保護部材85とを別体として設ける場合と比較して、作業の簡略化を可能とする。
【0166】
図25において、中間部材110は、該中間部材110における、圧電素子30に取り付けられる面の領域が、圧電素子30の第1主面の領域よりも大きい。中間部材110は、X−X方向及びY−Y方向において、圧電素子30の第1主面よりも大きな面を有しており、該面を覆うように、保護部材85としての硬化性樹脂を滴下することで、圧電素子30の第1主面以外の面を樹脂で覆うことが可能となっている。この時、圧電素子30の第1主面よりも大きな面を有する中間部材110を該圧電素子30とパネル10との間に配設しているため、滴下される硬化性樹脂がパネル10に付着する恐れを低減できる。
【0167】
図25(d)、(e)(パターン2)においては、
図25(e)に示すように、中間部材110におけるパネル10に取り付けられる面(第1主面)には、1つまたは複数の溝が形成されている。中間部材110に溝が形成されることにより、第1接合部材71としての硬化性樹脂と中間部材110とが接合する面積を増大させることができ、ひいては硬化性樹脂と中間部材110とをより強固に接合させることができる。尚、中間部材110における、パネル10あるいは圧電素子30に取り付けられる面に溝を形成してもよい。これにより、中間部材110とパネル10あるいは圧電素子30とをより強固に取り付けることができる。
【0168】
図26は、本発明の第4の実施形態の第2の変形例を示す図である。
図26(a)は電子機器1における、中間部材110及び圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図26(b)は、
図26(a)におけるX−X線に沿った断面図を、
図26(c)は、
図26(a)におけるY−Y線に沿った断面図を、其々示している。本変形例において、中間部材110は、圧電素子30が取り付けられる底面部と、該底面部から立設される壁面部とを有している。
【0169】
中間部材110の底面部と壁面部とからなる箱状の内部空間には、保護部材85としての硬化性樹脂を流し込むことができる。これにより、例えば、中間部材110の内壁面が圧電素子30の第2主面(圧電素子30の上面)よりも高い場合に、該面及び圧電素子30の側面を硬化性樹脂によって覆うことができる。(即ち、圧電素子30の略全体が樹脂によって覆われる)。そのため、保護部材85としての硬化性樹脂によって、外力による圧電素子30に対する衝撃の伝搬をより緩和することができる。また、圧電素子30を硬化性樹脂で固定することによって、例えば、外部から衝撃がかかった際に圧電素子30が中間部材110から外れる可能性を低減することができる。
【0170】
本変形例によれば、中間部材110が、底面部と壁面部とからなる略箱状の形状を有しているため、硬化性樹脂を流し込むことで、圧電素子30が樹脂により覆われた構造を容易に実現することができる。
【0171】
尚、圧電素子30は、第1接合部材71と第2接合部材81とによって中間部材110に取り付けられている。圧電素子30は、該圧電素子30の第1主面における縁の領域が第2接合部材81(例えば両面テープ)によって中間部材110に取り付けられている。尚、第2接合部材81は、圧電素子30の第1主面の縁の全域に取り付けられているわけではない。例えば、前述のように、中間部材110と圧電素子30とを取付ける両面テープに一部切欠きが設けられている。
図26(b)においては、圧電素子30の第1主面におけるX−X方向の左端の一部に、第2接合部材81(両面テープ)が配設されていない(切欠きが設けられている)。第2接合部材81が配設されていない部分は、第1接合部材71としての硬化性樹脂の通過経路となる。
【0172】
第1接合部材71としての硬化性樹脂は、予め、圧電素子30が第2接合部材81により中間部材110に取り付けられた状態で、中間部材110の略箱状の内部に流し込まれる。これにより、圧電素子30と中間部材110との間の空間が保持された状態で、該空間内に硬化性樹脂が侵入し、該樹脂が十分な厚さを有した状態で硬化することができ、ひいては、圧電素子30と中間部材110とをより強固に取り付けることができる。
【0173】
尚、
図26における電子機器1では、圧電素子30が、第1接合部材71と第2接合部材81によって中間部材110に取り付けられている構成を示したが、必ずしもこのような構成を有している必要はなく、圧電素子30が、第1接合部材71と第2接合部材81のいずれか一方のみによって中間部材110に取り付けられている構成であっても良い。例えば圧電素子30の第1主面の全域が、第2接合部材81としての両面テープによって中間部材110に取り付けられていても良い。
【0174】
尚、
図26(b)において、圧電素子30の第1主面における縁領域の一部に第2接合部材81が配設されていない領域を設ける構成を示したが、これに限定されず、第2接合部材81が圧電素子30の第1主面における縁の全領域に取り付けられていても良い(即ち、第2接合部材81が取り付けられる領域は閉領域を形成しても良い)。この場合、圧電素子30の第1主面における縁の領域以外の領域は、接合部材を介してパネル10と接合していない。従って、圧電素子30の第1主面における縁の領域以外の領域は、圧電素子30の変形が接合部材によって阻害されない領域となる。これにより、例えば、圧電素子30の第1主面の全域が第1接合部材71あるいは第2接合部材81によってパネル10に取り付けられている場合と比較して、圧電素子30の変形の阻害が軽減されることによる、電子機器1の音圧特性の向上が可能となる。
【0175】
尚、本変形例においても、中間部材110の一部(底面部)に貫通孔100が形成されていても良い。貫通孔100を設けることにより、中間部材110の内部空間に流し込まれた硬化性樹脂が該貫通孔を通じて、中間部材110とパネル10との間の空間に浸入し、硬化後に、中間部材110とパネル10とを取付けることができる。
【0176】
ところで、本発明における電子機器1を製造する際、該電子機器1を構成する複数の部材を組み立てるに当って、部材単体あるいは幾つかの部材を予め組み合わせたユニット等を運搬する場合が想定される。このようなユニットは、例えば、所定の板状部材(第1板状部材)に圧電素子30を取付けたものである。また、このようなユニットは、圧電素子30と第1板状部材との積層方向における該圧電素子30の直下の領域を少なくとも含む所定の領域において第1接合部材(例えば、硬化性樹脂)により第1板状部材に取り付けられ、該所定の領域の周囲の少なくとも一部の領域において、該第1接合部材よりも柔軟な第2接合部材(例えば、両面テープ)により前記第1板状部材に取り付けられていても良い。このような構成としておけば、運搬時において、外部から第1板状部材にかかる衝撃が、該第1板状部材に沿って圧電素子30に伝搬される際に、該衝撃が第2接合部材によって緩和され得る。また、このようなユニットは当然ながら、第1板状部材における、圧電素子30が取り付けられた面とは反対側の面を、該第1板状部材と異なる所定の板状部材(第2板状部材)に取り付けたときに、圧電素子30の変形に起因して、該第2板状部材を変形させ、該第2板状部材に接触する対象物に人体振動音を伝えることができる。
【0177】
また、このようなユニットは、圧電素子30における、パネル10に取り付けられた面とは反対側の面に保護部材85が取り付けられていても良い。また、保護部材85は、該保護部材85における圧電素子30に取り付けられる面とは反対側の面が凸状の湾曲形状であってもよい。
【0178】
また上記ユニットにおいて、圧電素子30が取り付けられる部材は板状部材である必要は必ずしもない。例えば、所定の箱状部材の底面に圧電素子30が取り付けられていても良い。このとき、箱状部材の内部に硬化性樹脂を流し込むことで、予め圧電素子30を箱状部材の内部に固定させたユニットとしておけば、運搬時における外部からの衝撃等による破損の可能性をより低減することができる。このとき、圧電素子30の少なくとも一部を硬化性樹脂が覆う構成となっていれば、運搬時における外部からの衝撃を硬化性樹脂によって緩和し得る。
【0179】
本発明に係る電子機器1の構成について、これまでに、中間部材110の平面部分とパネル10との間に第2接合部材81を介在させることで、第1接合部材71としての硬化性樹脂を充填するための空間を形成することが可能であることを示したが、該空間を形成する手段はこれに限定されない。
【0180】
図27は、本発明の第4の実施形態の第3の変形例を示す図である。
図27(a)は電子機器1における、中間部材110及び圧電素子30が取り付けられたパネル10の背面図、
図27(b)は、
図27(a)におけるX−X線に沿った断面図を、
図27(c)は、
図27(a)におけるY−Y線に沿った断面図を、其々示している。
図27に示すように、凹形状の中間部材110を使用し、該中間部材110の開口面がパネル10に、第2接合部材81によって取り付けられている。このような構成とすることにより、中間部材110の平面部分とパネル10とを取付ける場合と比較して、第1接合部材71としての硬化性樹脂を充填するためのより大きな空間を形成させることができる。
【0181】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0182】
例えば、
図28に示すとおり、パネル10が筐体60に接合部材70により接合されている構成としても良い。このように、筐体60にパネル10からの振動がダイレクトに伝わりにくくすることで、筐体自体が大きく振動する場合と比較して、ユーザーが電子機器1を落としてしまう恐れを低減できる。また、接合部材70は、非加熱型硬化性の接着剤とすることができる。これにより、硬化時に、筐体60とパネル10との間に熱応力収縮が発生しにくいという利点がある。また、接合部材70は、両面テープとすることができる。これにより、筐体60とパネル10との間に接着剤使用時のような収縮応力が発生しにくいという利点がある。
【0183】
例えば、パネル10と表示部20とが重畳しない構成である場合、圧電素子30は、パネル10の中央に配設されてもよい。圧電素子30がパネル10の中央に配設された場合、圧電素子30の振動がパネル10全体に均等に伝わり、気導音の品質を向上させたり、利用者が耳をパネル10の様々な位置に接触させても人体振動音を認識させたりすることができる。なお、上述の実施形態と同様に、圧電素子30は複数個搭載してもよい。
【0184】
また、上記の電子機器1においては、圧電素子30はパネル10に貼り付けられているが、パネル10と異なる場所に取り付けられてもよい。例えば、圧電素子30は、筐体60に取り付けられてバッテリを覆うバッテリリッドに貼り付けられてもよい。バッテリリッドは携帯電話機等の電子機器1においてパネル10と異なる面に取り付けられることが多いため、そのような構成によれば、利用者はパネル10と異なる面に体の一部(例えば耳)を接触させて音を聞くことができる。
【0185】
また、パネル10は、表示パネル、操作パネル、カバーパネル、充電池を取り外し可能とするためのリッドパネルのいずれかの一部または全部を構成することができる。特に、パネル10が表示パネルのとき、圧電素子30は、表示機能のための表示領域の外側に配置される。これにより、圧電素子30は、表示を阻害しにくいという利点がある。操作パネルは、第1の実施形態のタッチパネルを含む。また、操作パネルは、例えば折畳型携帯電話において操作キーのキートップが一体に形成され操作部側筐体の一面を構成する部材であるシートキーを含む。
【0186】
なお、第1の実施形態および第2の実施形態では、パネル10と圧電素子30とを接着する接合部材およびパネル10と筐体60とを接着する接合部材等を同一の符号を有する接合部材70として説明した。しかしながら、第1の実施形態および第2の実施形態で用いられる接合部材は、接合する対象である部材に応じて適宜異なるものが用いられてよい。
【0187】
また、例えば、パネル10と筺体60とを接合させるための接合部材70として、両面テープあるいは接着剤を例示したが、これらを単独で用いるのではなく、併用しても良い。この場合、例えば、筐体60に対して両面テープを貼り、その上に、両面テープよりも接着力が高い接着剤を塗布し、パネル10を接合させても良い。両面テープ及び接着剤は互いに強固に接着し、ひいては、パネル10と筐体60とを強固に接合することができる。また、両面テープ上に接着剤を塗布するのではなく、両面テープを一部繰り抜いて、形成された空間に接着剤を充填させて、パネル10と筐体60とを接合させる構成としても良い。ここで使用される接着剤としては、例えば、非加熱型硬化性の接着剤であり、また、空気中の水分(湿気)と反応して硬化する湿気硬化型弾性接着剤である。湿気硬化型弾性接着剤は、例えば、シリル基を含む特殊ポリマーを主成分としている。
【0188】
また、本発明に係る電子機器1は、パネル10に圧電素子30が取り付けられ、圧電素子30の変位によって、音を発生させるものとして説明したが、音を発生させる部材はパネル10に限定されない。電子機器1を構成し、略平板形状を一部に有する部材であれば、音を発生させることができる。このような部材として、例えば、電子機器1の筐体を構成するケース部材や、あるいは、ポリカーボネートから成り、ケース部材に着脱自在に取り付けられるバッテリーカバー等が挙げられる。例えば、略矩形状の底面と、底面の4辺の端部から垂直に延設された側面部とからなる箱形状のケース部材において、圧電素子30は、ケース部材の底面に取り付けられる。このとき、圧電素子30の変位によりケース部材の底面が振動し、音を発生させる。
【0189】
また、本発明の実施例は、スマートフォンを例にとって説明してきたが、これに限られない。操作部側筐体と表示部側筐体とが、折り畳み可能に連結された携帯電話機であっても良い。また、操作部側筐体と表示部側筐体とが重ね合った状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、操作部側筐体と表示部側筐体との重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転(ターン)式や、操作部側筐体と表示部側筐体とが一つの筐体に配置され連結部を有さない型式(ストレートタイプ)でもよい。また、携帯電話機は、開閉及び回転可能ないわゆる2軸ヒンジタイプであってもよい。
【0190】
なお、ここでは、特定の機能を実行する種々の機能部を有するものとしての電子機器及びユニットを開示している。これらの機能部は、その機能性を簡略に説明するために模式的に示されたものであって、必ずしも、特定のハードウェア及びソフトウェアを示すものではないことに留意されたい。その意味において、これらの機能部、及びその他の構成要素は、ここで説明された特定の機能を実質的に実行するように実装されたハードウェア及びソフトウェアであればよい。異なる構成要素の種々の機能は、ハードウェア及びソフトウェアのいかなる組合せまたは分離したものであってもよく、それぞれ別々に、またはいずれかの組合せにより用いることができる。このように、本開示内容の種々の側面は、多くの異なる態様で実施することができ、それらの態様はすべて本開示内容の範囲に含まれる。