特許第6430488号(P6430488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430488
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20181119BHJP
   H02M 7/21 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   H02M3/28 E
   H02M3/28 F
   H02M7/21 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-508550(P2016-508550)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】JP2015050357
(87)【国際公開番号】WO2015141243
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-56728(P2014-56728)
(32)【優先日】2014年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】作野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】岡 俊幸
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−294275(JP,A)
【文献】 特開平08−266054(JP,A)
【文献】 特開昭61−273173(JP,A)
【文献】 特開2001−025242(JP,A)
【文献】 特開2004−173383(JP,A)
【文献】 実開平06−068396(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0019156(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0063173(US,A1)
【文献】 特開2014−130831(JP,A)
【文献】 特開2002−015881(JP,A)
【文献】 特開2009−071158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0023070(US,A1)
【文献】 米国特許第6879500(US,B2)
【文献】 米国特許第3717808(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0212754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 7/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランスと、該トランスの1次側の電力をスイッチングするスイッチング電界効果トランジスタと、該トランスの2次側の電力を整流する整流素子とを備えたスイッチング電源回路において、
上記トランスの1次側端子の一端は、1次側高電圧安定電位ノードに接続され、
上記トランスの1次側端子の他端は、上記スイッチング電界効果トランジスタのドレインに接続され、
上記スイッチング電界効果トランジスタのソースは、1次側低電圧安定電位ノードに接続され、
上記トランスの2次側端子の一端は、上記整流素子のアノードに接続され、
上記整流素子のカソードは、2次側高電圧安定電位ノードに接続され、
上記トランスの2次側端子の他端は、2次側低電圧安定電位ノードに接続されていると共に、
上記1次側低電圧安定電位ノードと上記2次側低電圧安定電位ノードとの間には、低電圧ノード用コンデンサが接続され、
上記1次側高電圧安定電位ノードと上記整流素子のアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサが接続されていることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
前記高電圧ノード用コンデンサは、前記スイッチング電界効果トランジスタをターンオフしたときに、前記1次側低電圧安定電位ノードから前記トランスの寄生容量を介して前記2次側低電圧安定電位ノードに流れる高周波のコモンモードノイズ電流を、前記2次側高電圧安定電位ノードから前記1次側高電圧安定電位ノードに流れる高周波のコモンモードノイズ電流にて相殺することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
【請求項3】
前記高電圧ノード用コンデンサの容量値は、25pF以上かつ100pF以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング電源回路。
【請求項4】
前記整流素子は、前記アノードとしてのソースが前記トランスの2次側端子の一端に接続され、かつ前記カソードとしてのドレインが前記2次側高電圧安定電位ノードに接続されたスイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタからなっていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記高電圧ノード用コンデンサと低電圧ノード用コンデンサとの少なくとも一方は、複数のコンデンサの直列接続回路にて構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記高電圧ノード用コンデンサには、第1の高周波ノイズ減衰手段が直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスイッチング電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランスと、該トランスの1次側の電力をスイッチングするスイッチングトランジスタと、該トランスの2次側の電力を整流する整流素子とを備えたスイッチング電源回路に関するものであり、詳細には、スイッチング電源回路にて発生するノイズを低減する回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を作動させるためにはICやトランジスタを動作させるための安定な直流電圧が必要である。この安定な直流電圧つまり定電圧を作る方式として、入力側(1次側)が商用の交流電源であるAC(alternating current:交流)−DC(Direct Current :直流)方式と、入力側(1次側)がバッテリー等の直流電源であるDC−DC方式とがある。
【0003】
このような定電圧を作る電源装置としてはスイッチング方式を採用する電源装置であるスイッチング電源と、シリーズ方式(ドロッパ方式、リニア方式)を採用する電源装置とがある。近年では、高効率で軽いという長所を有するスイッチング電源が主流となっている。
【0004】
スイッチング電源は、高周波スイッチングにより小型のコイルやトランス等が使用可能なことが大きな利点であるが、高電圧を高速にスイッチングする必要があるためスイッチングノイズが発生し易い。
【0005】
特に、入出力がトランスにより絶縁されている方式のフライバック回路方式では、1次側スイッチング素子のターンオフ時に、入力電源電圧にフライバック電圧が重畳された電圧でのスイッチングとなる。このため、高電圧スイッチングに起因するノイズが発生し易い。
【0006】
発生するノイズのモードとしては、電源ライン間を伝達するノーマルモードノイズと、各電源ラインと大地との間を伝達するコモンモードノイズとがある。コモンモードノイズは、電源ラインと大地との間に存在する浮遊容量や電源ラインの伝達特性の非対称性等によって生じる。一般に、ノイズの発生箇所及び発生レベルを定量的に特定又は予測することが困難であり、スイッチング電源の入力部に配置されるフィルタでの対策だけではノイズ低減が十分にできない場合もある。
【0007】
スイッチング電源回路でのコモンモードノイズを低減する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたスイッチング電源回路、及び特許文献2に開示されたスイッチング回路のノイズ低減方法が知られている。
【0008】
特許文献1に開示されたスイッチング電源回路100では、図8に示すように、トランス110の1次側電圧ノード111と2次側ノード112との間に容量101を付加している。これにより、トランス110の寄生分布容量を経由するコモンモードノイズ電流に対して、逆位相のコモンモードノイズ電流を該容量101経由で伝達させることによって、アース点でのコモンモードノイズ電流を相殺させている。
【0009】
また、特許文献2に開示されたスイッチング回路200のノイズ低減方法では、図9に示すように、トランス210の1次側におけるメインのスイッチング用巻線211とは逆位相の起電圧を発生する補助巻線212を、該トランス210の1次側に付加している。
【0010】
これにより、ノイズの発生原因となる2次側巻線213と1次側のスイッチング用巻線211との間に発生する浮遊容量Coaを、2次側巻線213と1次側の補助巻線212との間に発生する逆位相の付加浮遊容量Csaにより相殺する。この結果、アース点でのコモンモードノイズ電流を相殺させるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開昭61−273173号公報(1986年12月3日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2004−173383号公報(1999年9月24日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来のコモンモードノイズを低減するための技術では、以下の問題点を有している。
【0013】
まず、特許文献1に開示されたスイッチング電源回路100では、付加された容量101によってトランス110の1次側の1次側電圧ノード111と2次側の2次側ノード(2次側整流ダイオードのアノード)112とが結合している。
【0014】
また、特許文献2に開示されたスイッチング回路200のノイズ低減方法では、付加された付加浮遊容量Csaによって1次側の電位変動ノード(補助巻線212の一端)と2次側の低電圧安定電位ノード(2次側アース)とが結合している。
【0015】
この結果、いずれの場合でも安定電位ノードが、付加された容量によってスイッチング時に高電圧で揺れる電位変動ノードと結合してしまうために、安定電位ノードの電位に撹乱が生じ、電源動作が不安定になり易くなるという問題点を有している。
【0016】
また、特許文献2に開示されたスイッチング回路200のノイズ低減方法では、補助巻線212が必要となり、トランス構造の複雑化やサイズ増大を招くという問題点を有している。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、簡易な構成でノイズ低減と安定電位ノードの電位安定化とを両立するスイッチング電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様におけるスイッチング電源回路は、上記の課題を解決するために、1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランスと、該トランスの1次側の電力をスイッチングするスイッチング電界効果トランジスタと、該トランスの2次側の電力を整流する整流素子とを備えたスイッチング電源回路において、上記トランスの1次側端子の一端は、1次側高電圧安定電位ノードに接続され、上記トランスの1次側端子の他端は、上記スイッチング電界効果トランジスタのドレインに接続され、上記スイッチング電界効果トランジスタのソースは、1次側低電圧安定電位ノードに接続され、上記トランスの2次側端子の一端は、上記整流素子のアノードに接続され、上記整流素子のカソードは、2次側高電圧安定電位ノードに接続され、上記トランスの2次側端子の他端は、2次側低電圧安定電位ノードに接続されていると共に、上記1次側低電圧安定電位ノードと上記2次側低電圧安定電位ノードとの間には、低電圧ノード用コンデンサが接続され、上記1次側高電圧安定電位ノードと上記整流素子のアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサが接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、簡易な構成でノイズ低減と安定電位ノードの電位安定化とを両立するスイッチング電源回路を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態1におけるスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図2】上記スイッチング電源回路におけるピーク検波ノイズスペクトル実測値の一例を示す図である。
図3】上記スイッチング電源回路における準尖頭検波ノイズのコモンモードノイズ相殺用コンデンサの容量値依存性実測値を示す図である。
図4】本発明の実施形態2におけるスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図5】本発明の実施形態3におけるスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図6】本発明の実施形態4におけるスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図7】本発明の実施形態5におけるスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図8】従来のスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
図9】従来の他のスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0022】
(スイッチング電源回路の構成)
本実施の形態のスイッチング電源回路の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本実施の形態のスイッチング電源回路の構成を示す回路図である。
【0023】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Aは、トランス1次側部10とトランス2次側部30とを絶縁分離し、かつ電力をトランス2次側部30に伝達するトランス20を備えている。
【0024】
トランス20は、1次側と2次側とが絶縁分離されたものからなっており、後述するスイッチングFET(Field effect transistor:電界効果トランジスタ)15のスイッチングによって電力をトランス1次側部10からトランス2次側部30に伝達するためのフライバックトランスにてなっている。尚、フライバックトランスとは、フライバックコンバータに用いられるトランスである。フライバックコンバータは、1次側と2次側とが絶縁分離されたトランスを用いて、スイッチングFET15のオン期間中に、1次側と2次側とが絶縁分離されたトランス20の1次側に電力を蓄える。そして、スイッチングFET15がオフに切り替わると、トランス20の逆起電力を利用して、1次側に蓄えられていた電力を2次側に出力する方式のスイッチング電源回路である。
【0025】
上記トランス20の1次側には1次側巻線21が設けられ、トランス20の2次側には2次側巻線22が設けられている。上記1次側巻線21と2次側巻線22との間には、寄生容量Ctが存在するものとなっている。
【0026】
上記トランス1次側部10は、AC(alternating current:交流)入力端子11a・11bと、ノイズフィルタ12と、整流回路13と、整流後の電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14と、スイッチングFET15とを備えている。
【0027】
上記AC(alternating current:交流)入力端子11a・11bには、例えば、商用の交流電源が接続される。
【0028】
ノイズフィルタ12は、スイッチング電源回路1Aにて発生する高周波ノイズが規格値内に収まるように設置されるものである。本実施の形態では、ノイズフィルタ12は、例えば、コンデンサ及びコイルにて構成されている。ただし、必ずしもこれに限らない。
【0029】
整流回路13は、電流を一方向にだけ流す整流作用を有する回路であり、交流を直流に変換する例えばダイオードからなっている。
【0030】
電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14は、整流回路13に負荷を接続した場合に、負荷端子間の脈動成分を減らすために、該整流回路13の出力端子間に挿入されるものである。この場合、電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14の静電容量が大きく、又は抵抗負荷電流が小さい程、電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14からの放電が緩やかになり、脈動成分は小さくなる。
【0031】
ここで、本実施の形態では、電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14の上側端子14aが接続されているノードを1次側高電圧安定電位ノードHN1と称し、電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14の下側端子14bが接続されているノードを1次側低電圧安定電位ノードLN1と称することにする。これら1次側高電圧安定電位ノードHN1及び1次側低電圧安定電位ノードLN1の電位は変動しないことが好ましい。しかし、スイッチングFET15がスイッチング動作することによって生じる電圧変化の影響により、ある程度の電位変動が実用上生じ得る。
【0032】
スイッチングFET15は、電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ14の出力からトランス20の1次側への電力の蓄積と2次側への電力の放出とを交互に行うためにオン・オフ制御される。このスイッチングFET15は、高電圧を高速にスイッチングできるようになっている。
【0033】
上記スイッチングFET15のソースは、1次側低電圧安定電位ノードLN1に接続され、スイッチングFET15のドレインはトランス20の1次側低電圧端子21bに接続されている。
【0034】
一方、トランス2次側部30には、整流素子31と、電圧平滑用コンデンサ32と、DC出力端子33a・33bとが設けられている。
【0035】
上記整流素子31は、本実施の形態では、例えばダイオード31aからなっており、このダイオード31aは、トランス2次側部30に発生した電流を整流する。ダイオード31aのアノードは、トランス20の2次側高電圧端子22aに接続されており、ダイオード31aのカソードは、2次側高電圧安定電位ノードHN2に接続されている。
【0036】
電圧平滑用コンデンサ32は、2次側整流後の脈流を平滑化するものである。
【0037】
DC出力端子33a・33bは、直流(DC)の出力をとり出す端子である。
【0038】
(スイッチング電源回路に発生するノイズの抑制)
ところで、上記構成のスイッチング電源回路1Aでは、大地2との間に浮遊容量Cが存在している。この浮遊容量Cを介してスイッチング電源回路1Aと大地2との経路で流れるコモンモードノイズを、ノイズ計測器3にて測定することによって検出することができる。
【0039】
ノイズ計測器3は、伝導エミッション測定を行う場合に、スイッチング電源回路1Aと機器との間に挿入されるLISN(Line Impedance Stabilizing Network:ラインインピーダンス安定化回路網)として使用されるものである。尚、LISN(ラインインピーダンス安定化回路網)は、米国FCC(Federal Communications Commission:米国連邦通信委員会)規格の用語である。
【0040】
ここで、トランス20の1次側低電圧端子21bは、スイッチングFET15のスイッチングによって電位が大きく変動するホットノイズノードとなっている。また、トランス20の2次側高電圧端子22aは、ダイオード31aのオン・オフ動作によって電位が大きく変動するホットノイズノードとなっている。
【0041】
上記ダイオード31aは、スイッチングFET15と同期してオン・オフする。このため、1次側低電圧端子21bにて生成されるノイズと、2次側高電圧端子22aにて生成されるノイズとの間には相関がある。具体的には、スイッチングFET15のターンオフによって1次側低電圧端子21bの電位は上昇し、それと同期して2次側高電圧端子22aの電位も上昇する。この相関があるので、1次側低電圧端子21b及び2次側高電圧端子22aにて発生したノイズを適切な位相と振幅で合成できれば、両ノイズの相殺が可能となる。
【0042】
そこで、本実施の形態では、1次側低電圧安定電位ノードLN1と2次側低電圧安定電位ノードLN2との間には、低電圧ノード用コンデンサ5が接続されている。また、1次側高電圧安定電位ノードHN1とダイオード31aのアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサ4が接続されている。
【0043】
これにより、低電圧ノード用コンデンサ5によって1次側低電圧安定電位ノードLN1及び2次側低電圧安定電位ノードLN2同士が電気的に結合される。このため、1次側低電圧安定電位ノードLN1及び2次側低電圧安定電位ノードLN2の電位の安定化を実現することができる。
【0044】
また、この状態で、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値を適切な値に設定する。これによって、高電圧ノード用コンデンサ4を経由して流れるコモンモードノイズ電流は、低電圧ノード用コンデンサ5とトランス20の寄生容量Ctを経由して流れるコモンモードノイズ電流と逆位相となる。この結果、大地2との浮遊容量Cを介して流れるコモンモードノイズ電流が抑制される。すなわち、ノイズ計測器3にて観測されるコモンモードノイズが低減する。
【0045】
詳細には、スイッチングFET15がターンオフするとき、1次側低電圧端子21bの電位は上昇していく。このとき、寄生容量Ctの2次側の接続端電位は安定電位であるので、高周波のコモンモードノイズ電流Iaは、図1において、破線矢印の方向に流れる。
【0046】
一方、スイッチングFET15がターンオフするとき、ダイオード31aはターンオンする。このため、2次側高電圧端子22aの電位も上昇していく。このとき、高電圧ノード用コンデンサ4の1次側高電圧端子21aの電位は安定電位であるので、高周波のコモンモードノイズ電流Ibは、図1に示す実線矢印の方向に流れる。
【0047】
これら破線矢印のコモンモードノイズ電流Ia及び実線矢印のコモンモードノイズ電流Ibの方向は互いに逆極性となる。このため。高電圧ノード用コンデンサ4の容量値を適切な値に設定すれば、互いのコモンモードノイズが相殺され、ノイズ計測器3にて計測されるコモンモードノイズが低減される。
【0048】
尚、スイッチングFET15がターンオンするときは、コモンモードノイズ電流Ia・Ibの流れの方向がそれぞれ逆転するだけである。この結果、コモンモードノイズの相殺関係は維持され、コモンモードノイズが低減される。
【0049】
ここで、破線矢印で示されるコモンモードノイズ電流Iaは、寄生容量Ct及び低電圧ノード用コンデンサ5を経由するが、低電圧ノード用コンデンサ5の両端はいずれも高周波的に安定電位ノードである。このため、コモンモードノイズ電流Iaの多くは寄生容量Ctを経由すると考えられる。
【0050】
上述したように、本実施の形態のスイッチング電源回路1Aでは、低電圧ノード用コンデンサ5及び高電圧ノード用コンデンサ4によって、コモンモードノイズ低減と安定電位ノードの電位安定化の両立が可能となる。
【0051】
その効果について、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、ノイズ計測器3にて計測したスイッチング電源回路1Aにおけるピーク検波ノイズスペクトル実測値の一例を示す図である。ここで、測定周波数範囲は、150kHz〜30MHzである。尚、図2は、高電圧ノード用コンデンサ4を付加しない状態での計測結果である。図3は、図2の測定データを取得した状態からスイッチング電源回路1Aに図1に示す高電圧ノード用コンデンサ4を付加し、その容量値を変えたときの準尖頭値検波ノイズ値Qp(Quasi-Peak)を示す図である。準尖頭値検波ノイズ値Qpは、雑音端子電圧規格で規定されるノイズ指標であり、LISNでの計測値を示すものである。計測した周波数は170kHzを中心とするスイッチング周波数帯である。
【0052】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Aでは、低電圧ノード用コンデンサ5が接続されており、その容量値は例えば470pFとしている。ここで、測定周波数範囲は150kHz〜30MHzである。
【0053】
図1において、破線で囲まれた部分がスイッチング周波数でのノイズスペクトルであり、スイッチングの中心周波数は約170kHzである。10MHz以上の高周波のノイズは小型のフィルタにて低減可能である。しかし、スイッチング周波数帯のノイズは周波数が低いことに起因して、ノイズフィルタ12にて除去しようとすると、フィルタサイズが大きくなってしまう。
【0054】
ここで、ノイズフィルタ12は、一般には結合インダクタタイプであるが、そのインダクタンス値は数mH〜数10mHである。
【0055】
次に、図3に示すように、計測した170kHzを中心とするスイッチング周波数帯においては、準尖頭値検波ノイズ値Qpは、高電圧ノード用コンデンサ4を付加することによって低減され、65pFで極小になっている。準尖頭値検波ノイズ値Qpが高電圧ノード用コンデンサ4の容量値に対して極小値を有することは、高電圧ノード用コンデンサ4を付加したことによるコモンモードノイズの相殺効果を明示していると考えられる。
【0056】
準尖頭値検波ノイズ値Qpが極小になる高電圧ノード用コンデンサ4が65pFの状態では、高電圧ノード用コンデンサ4を付加しない0pFの状態に比べて20dB以上の準尖頭値検波ノイズ値Qpの低減が実現できていることが分かる。高電圧ノード用コンデンサ4が、数10pFの容量値であればチップタイプの小型面実装型コンデンサが使用できる。このため、高電圧ノード用コンデンサ4を付加してもスイッチング電源回路1Aのサイズに与える影響は小さい。
【0057】
一方、高電圧ノード用コンデンサ4を付加することにより、図1に示すノイズフィルタ12に要求されるノイズ減衰量を低減することができるので、ノイズフィルタ12の小型化が可能となる。
【0058】
特に、スイッチング周波数が雑音端子電圧規格で規定される周波数帯域内で動作するスイッチング電源回路1Aに対してより効果を奏する。
【0059】
ここで、近年では、窒化ガリウム(GaN)やSiC(炭化ケイ素)等のワイドバンドギャップ半導体を用いた高速応答のスイッチングデバイスが実用化されてきている。このため、スイッチングの高周波化による電源回路を構成するコンデンサ、インダクタ、トランスの小型化も進展すると考えられる。本実施の形態のスイッチング電源回路1Aでは、このようなスイッチングの高周波化が進展した場合に、一層の効果を奏する。
【0060】
ノイズフィルタ12の小型化のため、そのインダクタンス値を半減した場合、図3に示すように、ノイズフィルタ12の減衰量は6dB減少する。この減少量を、高電圧ノード用コンデンサ4を付加することによって補完した場合、図3に示すように、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値は25pF〜100pFが好適であることがわかる。また、本実施の形態では、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値は例えば470pFである。このため、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値の高電圧ノード用コンデンサ4に対する比率としては5倍〜18倍が好適ということになる。
【0061】
ノイズフィルタ12の更なる小型化のため、そのインダクタンス値を1/4にした場合、ノイズフィルタ12の減衰量は12B減少する。この減少量を、高電圧ノード用コンデンサ4を付加することによって補完した場合、図3に示すように、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値は45pF〜85pFが好適であることが分かる。本実施の形態では、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値は例えば470pFであるので、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値の高電圧ノード用コンデンサ4に対する比率としては5.5倍〜10倍が好適ということになる。
【0062】
このように、本実施の形態のスイッチング電源回路1Aでは、1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランス20と、該トランス20の1次側の電力をスイッチングするスイッチングFET15と、該トランス20の2次側の電力を整流する整流素子31としてのダイオード31aとを備えている。そして、トランス20の1次側高電圧端子21aは、1次側高電圧安定電位ノードHN1に接続され、トランス20の1次側低電圧端子21bは、スイッチングFET15のドレインに接続され、スイッチングFET15のソースは、1次側低電圧安定電位ノードLN1に接続され、トランス20の2次側高電圧端子22aは、整流素子31としてのダイオード31aのアノードに接続され、整流素子31としてのダイオード31aのカソードは、2次側高電圧安定電位ノードHN2に接続され、トランス20の2次側低電圧端子22bは、2次側低電圧安定電位ノードLN2に接続されている。
【0063】
このようなスイッチング電源回路1Aでは、従来では、1次側低電圧安定電位ノードLN1と2次側高電圧安定電位ノードHN2、又は1次側高電圧安定電位ノードHN1と2次側低電圧安定電位ノードLN2とが結合される状態となっていた。このため、スイッチング時に各安定電位ノードの電位に撹乱が生じ、電源動作が不安定になり易くなるという問題点を有していた。
【0064】
そこで、本実施の形態では、1次側低電圧安定電位ノードLN1と2次側低電圧安定電位ノードLN2との間には、低電圧ノード用コンデンサ5が接続されている。このため、低電圧ノード用コンデンサ5によって1次側低電圧安定電位ノードLN1と2次側低電圧安定電位ノードLN2とが電気的に結合されるので、安定電位ノードの電位変動が抑制される。
【0065】
また、本実施の形態では、1次側高電圧安定電位ノードHN1と整流素子31としてのダイオード31aのアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサ4が接続されている。このため、高電圧ノード用コンデンサ4を経由して流れるコモンモードノイズ電流Ibは、低電圧ノード用コンデンサ5とトランス20の寄生容量Ctとを経由して流れるコモンモードノイズ電流Iaとは逆位相となる。この結果、2次側高電圧安定電位ノードHN2と大地2との浮遊容量Cを介して流れるコモンモードノイズ電流が抑制される。すなわち、ノイズ計測器3にて観測されるコモンモードノイズが低減する。
【0066】
また、本実施の形態では、低電圧ノード用コンデンサ5と高電圧ノード用コンデンサ4とを付加しただけであるので、構成は簡易である。
【0067】
したがって、簡易な構成でノイズ低減と安定電位ノードの電位安定化とを両立するスイッチング電源回路1Aを提供することができる。
【0068】
また、コモンモードノイズを低減することにより、ノイズフィルタ12の小型化も可能になるという効果もある。
【0069】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Aでは、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値は、25pF以上かつ100pF以下である。これにより、ノイズフィルタ12のインダクタンス値を半減し得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値を変えるという簡単な構成にて、ノイズフィルタ12を小型化することができる。
【0070】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Aでは、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値は、45pF以上かつ85pF以下であることが好ましい。
【0071】
これにより、ノイズフィルタ12のインダクタンス値を1/4になし得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値を変えるという簡単な構成にて、ノイズフィルタ12をさらに小型化することができる。
【0072】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Aでは、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値は、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値の5倍以上かつ18倍以下である。
【0073】
これにより、安定電位ノードの電位安定化を図ると共に、ノイズフィルタ12のインダクタンス値を半減し得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、ノイズフィルタ12を、小型化することができる。
【0074】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Aでは、低電圧ノード用コンデンサ5の容量値は、高電圧ノード用コンデンサ4の容量値の5.5倍以上かつ10倍以下であることが好ましい。
【0075】
これにより、安定電位ノードの電位安定化を図ると共に、ノイズフィルタ12のインダクタンス値を1/4になし得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、ノイズフィルタ12を、さらに小型化することができる。
【0076】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Aでは、トランス20、スイッチングFET15及び整流素子31にてフライバックコンバータの動作を行うようになっている。
【0077】
すなわち、フライバックコンバータでは、1次側と2次側とが絶縁分離されたトランス20を用いて、スイッチングFET15のオン期間中に、1次側と2次側とが絶縁分離されたトランス20の1次側に電力を蓄える。そして、スイッチングFET15がオフに切り替わると、トランス20の逆起電力を利用して、1次側に蓄えられていた電力を2次側に出力する。
【0078】
このフライバックコンバータでは、1〜200W程度といった小電力〜中電力の用途に適している。また、部品点数が少ないにもかかわらず、比較的高い変換効率が得られるため、パソコンや産業機器等の電子機器への適用に適している。
【0079】
したがって、小型化及び軽量化が図れ、低コスト化にも有利なスイッチング電源回路1Aを提供することができる。
【0080】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0081】
前記実施の形態1のスイッチング電源回路1Aでは、整流素子31は、ダイオード31aからなっていた。しかし、本実施の形態のスイッチング電源回路1Bでは、整流素子31が、MOSFET31bからなっている点が異なっている。
【0082】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Bの構成について、図4に基づいて説明する。図4は、本実施の形態のスイッチング電源回路1Bの構成を示す回路図である。
【0083】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Bは、図4に示すように、整流素子31は、スイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタとしてのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)31bからなっている。
【0084】
上記整流素子31としてのMOSFET31bは、ソースが整流素子31のアノードに相当し、ドレインがカソードに相当する。MOSFET31bのゲートは、トランス1次側部10のスイッチングFET15に逆位相で同期してスイッチングされる、いわゆる同期整流回路構成になっている。その他の構成は、実施の形態のスイッチング電源回路1Aの構成と同じである。
【0085】
このような構成であっても、2次側高電圧端子22aが1次側低電圧端子21bとは逆位相のホットノイズノードになるため、前記実施の形態1のスイッチング電源回路1Aと同様に、コモンモードノイズの相殺効果により、ノイズ計測器3にて計測されるノイズを低減することが可能である。
【0086】
また、本実施の形態のスイッチング電源回路1Bでは、実施の形態1に示すスイッチング電源回路1Aにおいて整流素子31としてのダイオード31aがオンしたときの該ダイオード31aの順方向電圧を低オン電圧のMOSFET31bにて置換することができる。この結果、スイッチング電源回路1Bの損失も低減される。
【0087】
このように、本実施の形態のスイッチング電源回路1Bでは、整流素子31は、アノードとしてのソースがトランス20の2次側高電圧端子22aに接続され、かつカソードとしてのドレインが2次側高電圧安定電位ノードHN2に接続されたMOSFET31bからなっている。
【0088】
これにより、整流素子31として、MOSFET31bを使用する。このMOSFET31bは、オン抵抗が極めて低い。この結果、MOSFET31bを整流素子31として用いると、大電流を僅かな電圧降下で効率よく整流でき、スイッチング電源回路1Bの損失が低減される。
【0089】
したがって、整流素子31してシリコンからなるダイオード31aを使用するよりも効率の優れたスイッチング電源回路1Bを提供することができる。
【0090】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
前記実施の形態1のスイッチング電源回路1Aでは、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5は、それぞれ1個ずつ設けられていた。しかし、本実施の形態のスイッチング電源回路1Cでは、低電圧ノード用コンデンサ5及び高電圧ノード用コンデンサ4は、それぞれ複数個ずつ設けられている点が異なっている。
【0092】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Cの構成について、図5に基づいて説明する。図5は、本実施の形態のスイッチング電源回路1Cの構成を示す回路図である。
【0093】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Cは、図5に示すように、低電圧ノード用コンデンサ5は、複数個としての2個が直列に設けられており、高電圧ノード用コンデンサ4についても複数個としての2個が直列に設けられている。
【0094】
すなわち、実施の形態1に示すスイッチング電源回路1Aにおいて、図1に示すように、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5は、トランス1次側部10とトランス2次側部30とに接続されるため、安全上その接続点間は一定の距離を確保する必要がある。
【0095】
そこで、本実施の形態では、コンデンサを直列に接続することにより、コンデンサ自身の物理サイズを利用して、1次側接続点と2次側接続点との距離をより確保し易くなるようにしている。具体的には、高電圧ノード用コンデンサ4では、第1の高電圧ノード用コンデンサ4aと第2の高電圧ノード用コンデンサ4bとが、直列接続されている。また、低電圧ノード用コンデンサ5では、第1の低電圧ノード用コンデンサ5aと第2の低電圧ノード用コンデンサ5bとが、直列接続されている。
【0096】
直列に接続するコンデンサの個数は3個以上であってもよい。また、高電圧ノード用コンデンサ4又は低電圧ノード用コンデンサ5のみにて安全距離が確保できる場合はコンデンサの直列接続をしなくてもよい。
【0097】
このように、本実施の形態のスイッチング電源回路1Cでは、高電圧ノード用コンデンサ4と低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方は、複数のコンデンサの直列接続回路にて構成されている。
【0098】
これにより、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5におけるそれぞれの接続点間の距離をより確保し易くすることができる。
【0099】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、実施の形態1に示すスイッチング電源回路1Aにおいて、高電圧ノード用コンデンサ4と低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方を、複数個のコンデンサの直列配列としている。
【0100】
しかしながら、必ずしもこれに限らず、例えば、実施の形態2に示すスイッチング電源回路1Bにおいて、高電圧ノード用コンデンサ4と低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方を、複数個のコンデンサの直列配列としてもよい。
【0101】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
前記実施の形態1のスイッチング電源回路1Aでは、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5がそれぞれ1個ずつ設けられていた。しかし、本実施の形態のスイッチング電源回路1Dでは、低電圧ノード用コンデンサ5及び高電圧ノード用コンデンサ4に加えて、それぞれ第1の高周波ノイズ減衰手段6及び第2の高周波ノイズ減衰手段7が直列に接続されている点が異なっている。
【0103】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Dの構成について、図6に基づいて説明する。図6は、本実施の形態のスイッチング電源回路1Cの構成を示す回路図である。
【0104】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Dは、図6に示すように、高電圧ノード用コンデンサ4に直列に第1の高周波ノイズ減衰手段6が接続され、低電圧ノード用コンデンサ5に直列に第2の高周波ノイズ減衰手段7が接続されている。
【0105】
第1の高周波ノイズ減衰手段6及び第2の高周波ノイズ減衰手段7の具体例としては、例えば抵抗、フェライトビーズ、インダクタ又はこれら複数の組合せ回路が使用できる。
【0106】
スイッチング周波数帯にてコモンモードノイズが低減するように高電圧ノード用コンデンサ4の容量値を設定した場合でも、スイッチング電源回路1Dの伝送路、及び大地2との浮遊容量Cのインピーダンスは周波数特性を有する。このため、スイッチング周波数以外の周波数では、コモンモードノイズの相殺効果が弱くなると共に、高電圧ノード用コンデンサ4又は低電圧ノード用コンデンサ5を介した高周波ノイズの増大の可能性もあり得る。
【0107】
雑音の規格周波数帯で考えると、スイッチング周波数よりも高い周波数帯の占める比帯域が大きく、スイッチング周波数よりも高い周波数帯でのノイズ増大が特に懸念される。
【0108】
本実施の形態では、高電圧ノード用コンデンサ4に直列に第1の高周波ノイズ減衰手段6を接続すると共に、低電圧ノード用コンデンサ5に直列に第2の高周波ノイズ減衰手段7を接続している。このため、特にスイッチング周波数よりも高い周波数帯でのノイズも抑制することが可能となる。
【0109】
尚、第1の高周波ノイズ減衰手段6及び第2の高周波ノイズ減衰手段7は、両方又は一方のみであってもよい。
【0110】
このように、本実施の形態のスイッチング電源回路1Dでは、高電圧ノード用コンデンサ4には、第1の高周波ノイズ減衰手段6が直列に接続されている。
【0111】
これにより、高電圧ノード用コンデンサ4によるスイッチング周波数でのコモンモードノイズの相殺効果に加えて、第1の高周波ノイズ減衰手段6によるスイッチング周波数以外の周波数でのコモンモードノイズの相殺効果を付加することができる。
【0112】
したがって、例えば、スイッチング周波数よりも高い周波数帯でのコモンモードノイズも抑制することが可能となる。
【0113】
また、本実施の形態におけるスイッチング電源回路1Dでは、低電圧ノード用コンデンサ5には、第2の高周波ノイズ減衰手段7が直列に接続されている。
【0114】
これにより、低電圧ノード用コンデンサ5による安定電位ノードの電位変動の抑制に加えて、第2の高周波ノイズ減衰手段7によるスイッチング周波数以外の周波数でのコモンモードノイズの減衰効果を付加することができる。
【0115】
したがって、例えば、スイッチング周波数よりも高い周波数帯でのコモンモードノイズも抑制することが可能となる。
【0116】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、実施の形態1に示すスイッチング電源回路1Aにおいて、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方に、第1の高周波ノイズ減衰手段6又は第2の高周波ノイズ減衰手段7を直列接続している。
【0117】
しかしながら、必ずしもこれに限らず、例えば、実施の形態2に示すスイッチング電源回路1Bにおいて、高電圧ノード用コンデンサ4及び低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方に、第1の高周波ノイズ減衰手段6又は第2の高周波ノイズ減衰手段7を直列接続することも可能である。
【0118】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態4と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態4の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
本実施の形態5のスイッチング電源回路1Eでは、図7に示すように、実施の形態3のスイッチング電源回路1Cと、実施の形態4のスイッチング電源回路1Dとを与わせたものとなっている点が異なっている。
【0120】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Eの構成について、図7に基づいて説明する。図7は、本実施の形態のスイッチング電源回路1Eの構成を示す回路図である。
【0121】
本実施の形態のスイッチング電源回路1Eは、図7に示すように、第1の高電圧ノード用コンデンサ4aと第2の高電圧ノード用コンデンサ4bと第1の高周波ノイズ減衰手段6とが直列接続されている。また、第1の低電圧ノード用コンデンサ5aと第2の低電圧ノード用コンデンサ5bと第2の高周波ノイズ減衰手段7とが直列接続されている。
【0122】
尚、第1の高電圧ノード用コンデンサ4aと第2の高電圧ノード用コンデンサ4bと第1の高周波ノイズ減衰手段6とが直列接続されているか、又は、第1の低電圧ノード用コンデンサ5aと第2の低電圧ノード用コンデンサ5bと第2の高周波ノイズ減衰手段7とが直列接続されているかのいずれか一方であってもよい。
【0123】
また、本実施の形態においても、実施の形態2に示すスイッチング電源回路1Bにおける整流素子31としてのMOSFET31bを用いることが可能である。
【0124】
〔まとめ〕
本発明の態様1におけるスイッチング電源回路1A・1Bは、1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランス20と、該トランス20の1次側の電力をスイッチングするスイッチング電界効果トランジスタ(スイッチングFET15)と、該トランス20の2次側の電力を整流する整流素子31(ダイオード31a、MOSFET31b)とを備えたスイッチング電源回路において、上記トランス20の1次側端子の一端(1次側高電圧端子21a)は、1次側高電圧安定電位ノードHN1に接続され、上記トランス20の1次側端子の他端(1次側低電圧端子21b)は、上記スイッチング電界効果トランジスタ(スイッチングFET15)のドレインに接続され、上記スイッチング電界効果トランジスタ(スイッチングFET15)のソースは、1次側低電圧安定電位ノードLN1に接続され、上記トランス20の2次側端子の一端(2次側高電圧端子22a)は、上記整流素子31(ダイオード31a、MOSFET31b)のアノードに接続され、上記整流素子31(ダイオード31a、MOSFET31b)のカソードは、2次側高電圧安定電位ノードHN2に接続され、上記トランス20の2次側端子の他端(2次側低電圧端子22b)は、2次側低電圧安定電位ノードLN2に接続されていると共に、上記1次側低電圧安定電位ノードLN1と上記2次側低電圧安定電位ノードLN2との間には、低電圧ノード用コンデンサ5が接続され、上記1次側高電圧安定電位ノードHN1と上記整流素子31(ダイオード31a、MOSFET31b)のアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサ4が接続されていることを特徴としている。
【0125】
上記の発明によれば、1次側低電圧安定電位ノードと2次側低電圧安定電位ノードとの間には、低電圧ノード用コンデンサが接続されている。このため、低電圧ノード用コンデンサによって1次側低電圧安定電位ノードと2次側低電圧安定電位ノードとが電気的に結合されるので、安定電位ノードの電位変動が抑制される。
【0126】
また、本発明では、1次側高電圧安定電位ノードと整流素子のアノードとの間には、高電圧ノード用コンデンサが接続されている。このため、高電圧ノード用コンデンサを経由して流れるコモンモードノイズ電流は、低電圧ノード用コンデンサとトランスの寄生容量とを経由して流れるコモンモードノイズ電流とは逆位相となる。この結果、2次側低電圧安定電位ノードと大地との浮遊容量を介して流れるコモンモードノイズ電流が抑制される。
【0127】
さらに、本発明では、低電圧ノード用コンデンサと高電圧ノード用コンデンサとを付加しただけであるので、構成は簡易である。
【0128】
したがって、簡易な構成でノイズ低減と安定電位ノードの電位安定化とを両立するスイッチング電源回路を提供することができる。
【0129】
本発明の態様2におけるスイッチング電源回路は、態様1におけるスイッチング電源回路において、前記高電圧ノード用コンデンサの容量値は、25pF以上かつ100pF以下であることが好ましい。
【0130】
これにより、コモンモードノイズフィルタのインダクタンス値を半減し得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、高電圧ノード用コンデンサの容量値を変えるという簡単な構成にて、コモンモードノイズフィルタを小型化することができる。
【0131】
本発明の態様3におけるスイッチング電源回路は、態様1又は2におけるスイッチング電源回路において、前記高電圧ノード用コンデンサの容量値は、45pF以上かつ85pF以下であることが好ましい。
【0132】
これにより、コモンモードノイズフィルタのインダクタンス値を1/4になし得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、高電圧ノード用コンデンサの容量値を変えるという簡単な構成にて、コモンモードノイズフィルタをさらに小型化することができる。
【0133】
本発明の態様4におけるスイッチング電源回路は、態様1、2又は3におけるスイッチング電源回路において、前記低電圧ノード用コンデンサの容量値は、前記高電圧ノード用コンデンサの容量値の5倍以上かつ18倍以下であることが好ましい。
【0134】
これにより、安定電位ノードの電位安定化を図ると共に、コモンモードノイズフィルタのインダクタンス値を半減し得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、コモンモードノイズフィルタを小型化することができる。
【0135】
本発明の態様5におけるスイッチング電源回路は、態様1〜4のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記低電圧ノード用コンデンサの容量値は、前記高電圧ノード用コンデンサの容量値の5.5倍以上かつ10倍以下であることが好ましい。
【0136】
これにより、安定電位ノードの電位安定化を図ると共に、コモンモードノイズフィルタのインダクタンス値を1/4になし得るノイズ低減効果を得ることができる。この結果、コモンモードノイズフィルタをさらに小型化することができる。
【0137】
本発明の態様6におけるスイッチング電源回路1Bは、態様1〜5のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記整流素子31は、前記アノードとしてのソースが前記トランス20の2次側端子の一端(2次側高電圧端子22a)に接続され、かつ前記カソードとしてのドレインが前記2次側高電圧安定電位ノードHN2に接続されたスイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET31b)からなっていることが好ましい。
【0138】
これにより、整流素子として、スイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタを使用する。このスイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタは、オン抵抗が極めて低い。この結果、スイッチング金属酸化物半導体電界効果トランジスタを整流素子として用いると、大電流を僅かな電圧降下で効率よく整流でき、スイッチング電源回路の損失が低減される。
【0139】
したがって、整流素子としてシリコンダイオードを使用するよりも効率の優れたスイッチング電源回路を提供することができる。
【0140】
本発明の態様7におけるスイッチング電源回路1A〜1Eは、態様1〜6のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記トランス20、スイッチング電界効果トランジスタ(スイッチングFET15)及び整流素子31にてフライバックコンバータの動作を行うようになっていることが好ましい。
【0141】
フライバックコンバータでは、1〜200W程度といった小電力〜中電力の用途に適している。また、部品点数が少ないにもかかわらず、比較的高い変換効率が得られるため、パソコンや産業機器等の電子機器への適用に適している。
【0142】
したがって、フライバックコンバータ方式を採用することにより、小型化及び軽量化が図れ、低コスト化にも有利なスイッチング電源回路を提供することができる。
【0143】
本発明の態様8におけるスイッチング電源回路1Cは、態様1〜7のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記高電圧ノード用コンデンサ4と低電圧ノード用コンデンサ5との少なくとも一方は、複数のコンデンサの直列接続回路にて構成されていることが好ましい。
【0144】
高電圧ノード用コンデンサ及び低電圧ノード用コンデンサは、トランスの1次側と2次側とに接続されるため、安全上、その接続点間は一定の距離を確保する必要がある。
【0145】
そこで、前記高電圧ノード用コンデンサと低電圧ノード用コンデンサとの少なくとも一方を、複数のコンデンサの直列接続回路にて構成することによって、その接続点間の距離をより確保し易くなる。
【0146】
本発明の態様9におけるスイッチング電源回路は、態様1〜8のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記高電圧ノード用コンデンサには、第1の高周波ノイズ減衰手段が直列に接続されていることが好ましい。
【0147】
これにより、高電圧ノード用コンデンサによるスイッチング周波数でのコモンモードノイズの相殺効果に加えて、第1の高周波ノイズ減衰手段によるスイッチング周波数以外の周波数でのコモンモードノイズの相殺効果を付加することができる。
【0148】
したがって、例えば、スイッチング周波数よりも高い周波数帯でのコモンモードノイズも抑制することが可能となる。
【0149】
本発明の態様10におけるスイッチング電源回路は、態様1〜9のいずれか1におけるスイッチング電源回路において、前記低電圧ノード用コンデンサには、第2の高周波ノイズ減衰手段が直列に接続されていることが好ましい。
【0150】
これにより、低電圧ノード用コンデンサによる安定電位ノードの電位変動の抑制に加えて、第2の高周波ノイズ減衰手段によるスイッチング周波数以外の周波数でのコモンモードノイズの減衰効果を付加することができる。
【0151】
したがって、例えば、スイッチング周波数よりも高い周波数帯でのコモンモードノイズも抑制することが可能となる。
【0152】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、1次側と2次側とを絶縁分離し、かつ電力を2次側に伝達するトランスと、該トランスの1次側の電力をスイッチングするスイッチングトランジスタと、該トランスの2次側の電力を整流する整流素子とを備えたスイッチング電源回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
1A スイッチング電源回路
1B スイッチング電源回路
1C スイッチング電源回路
1D スイッチング電源回路
1E スイッチング電源回路
2 大地
3 ノイズ計測器
4 高電圧ノード用コンデンサ
4a 第1の高電圧ノード用コンデンサ
4b 第2の高電圧ノード用コンデンサ
5 低電圧ノード用コンデンサ
5a 第1の低電圧ノード用コンデンサ
5b 第2の低電圧ノード用コンデンサ
6 第1の高周波ノイズ減衰手段
7 第2の高周波ノイズ減衰手段
10 トランス1次側部
11a・11b AC入力端子
12 ノイズフィルタ(コモンモードノイズフィルタ)
13 整流回路
14 電圧平滑用高電圧ノード用コンデンサ
14a 上側端子
14b 下側端子
20 トランス
21 1次側巻線
21a 1次側高電圧端子(トランスの1次側端子の一端)
21b 1次側低電圧端子(トランスの1次側端子の他端)
22 2次側巻線
22a 2次側高電圧端子(トランスの2次側端子の一端)
22b 2次側低電圧端子(トランスの2次側端子の他端)
30 トランス2次側部
31 整流素子
31a ダイオード
31b MOSFET
32 電圧平滑用コンデンサ
33a・33b DC出力端子
C 浮遊容量
Ct 寄生容量
HN1 1次側高電圧安定電位ノード
HN2 2次側高電圧安定電位ノード
Ia コモンモードノイズ電流
Ib コモンモードノイズ電流
LN1 1次側低電圧安定電位ノード
LN2 2次側低電圧安定電位ノード
Qp 準尖頭値検波ノイズ値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9