(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記請求項1に記載の活物質の質量を100質量%としたときに前記ケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物の占める割合が20質量%以上75質量%以下である請求項1又は2に記載の非水電解質電池用負極活物質。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ケイ素酸化物を含む活物質の一般的な課題として、初回の充放電効率の問題がある。ケイ素酸化物は不均化処理あるいは充電によりリチウムが挿入されたときにケイ素と二酸化ケイ素の相とに分離する。この二酸化ケイ素を含むケイ素酸化物相は、リチウムと反応してリチウムシリケート相を形成し、放電時に放出されない、いわゆる非可逆容量となる。この問題は、正極材と組み合わせ、電池化した場合に特に問題となる。すなわち、負極の非可逆容量分のリチウムを予め正極側に持たせておくことが必要になり、エネルギー密度を低下させてしまうからである。したがって、エネルギー密度の向上には、一つにはこのケイ素酸化物相を減らして非可逆容量の低減を図る必要がある。
【0010】
リチウムを吸蔵・放出する無機質粒子の内部もしくは表面にシリケート化合物を含有する層を形成する方法が知られている。前記シリケート化合物は、活物質であるケイ素酸化物の一部を酸化物と反応させて作る。これにより、ケイ素酸化物の一部が減じされ、初回の充放電効率が向上するとしている。しかし、電極中の導電パスを、前記シリケート相を含む活物質と導電助剤粒子との結合により取るようにしているが、一般にシリケート相は電気伝導性が低いため、電極中の導電パスの形成が十分ではなかった。また、活物質であるケイ素酸化物の体積膨張に対する抑制効果も十分とはいえなかった。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
実施形態に係る負極活物質断面の基本的な構造模式図を
図1に示す。実施形態の活物質10は、リチウムを吸蔵・放出可能なケイ素を含む材料11が炭素質物12で覆われた複合構造を有する。
【0012】
活物質10は、ケイ素酸化物11b中にケイ素粒子11aを含むケイ素を内部に有するケイ素酸化物粒子11と、シリケート化合物と導電助剤が混合した相13とを有する。シリケート化合物と導電助剤が混合した相13は、ケイ素を内部に有するケイ素酸化物粒子11の少なくとも一部を被覆している。それらの単独粒子あるいは複数の粒子をさらに炭素質物12で被覆した構造を有している。シリケート化合物と導電助剤が混合した相13は、ケイ素を内部に有するケイ素酸化物粒子11と炭素質物12との間に存在する。
【0013】
活物質10は、の平均一次粒径は、0.1μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。この平均一次粒径が0.1μmより小さいと、比表面積が大きくなり、その分だけ電極化する際に多くの結着剤が必要となってしまう。この平均一次粒径が50μmより大きいと、電極化した時に意図しない空間が形成され易く、結果として体積あたりの容量の低下を引き起こす。また、粗大な粒子は塗工プロセスにおいて障害になる。より好ましくは0.2μm以上20μm以内である。この大きさの活物質10を得るために、たとえば、いったん複合化した粒子を粉砕・分級して得ることができる。ケイ素酸化物11b中に含まれるケイ素粒子11aのサイズは、2nm以上150nm以下にすることが好ましい。2nm以下は製造上困難であり、150nm以上になると充放電の繰り返しにより微粉化を起こしやすいからである。なお、活物質10の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)にて20000倍以上の倍率で観察した時に、視野の対角線上に存在する粒子を20個以上選択し、その平均径として求めることができる。粒子径とは二次元画像における一つの粒子の長径と短径の平均値をいう。
【0014】
ケイ素粒子11aは、結晶質であっても非晶質であっても、あるいはそれらの混合物であっても構わない。また、その内部にリンやホウ素などの微量元素を含んでいても構わない。ケイ素粒子11aは、リチウムの吸蔵と放出を繰り返すたびに体積変化を生じるため、活物質の崩壊を引き起こす恐れがある。そのため、微細なサイズであることが好ましい。ケイ素粒子11aの平均直径は、活物質の平均一次粒径と同様の方法で測定することができる。
【0015】
ケイ素粒子11aはケイ素酸化物11bによりくるまれた構造つまり、ケイ素粒子11aはケイ素酸化物11bに内包された形態にするとよい。本形態を採用することにより、ケイ素粒子11aが体積膨張を繰り返してもケイ素酸化物11bによって、ケイ素粒子11aの剥離、脱落を防止することができる。
【0016】
ケイ素酸化物11b中にケイ素粒子11aを有する粒子11は、例えば、一酸化ケイ素などのケイ素酸化物粒子を不均化処理することにより作製することができる。作製方法はこれに限ったものではなく、ケイ素粒子とケイ素酸化物粒子をメカノケミカルに混合するなどして作製してもよい。より均質に、かつより簡単に合成できる方法としては、熱処理による不均化法がより好ましい。
【0017】
ケイ素を内部に有するケイ素酸化物粒子11の平均一次粒径は、0.1μm以上10μm以下の範囲であることが好ましい。サイクル特性を考慮した場合、平均一次粒径をこの範囲にしておくと大きな劣化がなく、安定した充放電特性が得られるからである。
【0018】
ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物11の被覆層であるシリケート化合物と導電助剤との混合相13は、リチウムに対しては反応不活性で、充放電中、体積膨張を起こさないものであることが好ましい。
【0019】
シリケート化合物は、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素より選ばれる少なくとも一種を含む酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物である。
【0020】
シリケート化合物の例としては、MgSiO
3、Mg
2SiO
4、TiSiO
4、Mn
2SiO
4、FeSiO
3、Fe
2SiO
4、Co
2SiO
4、Ni
2SiO
4、Al
2SiO
5、ZrSiO
4、Y
2SiO
5、Y
2Si
2O
7などである。このシリケート化合物の生成にケイ素酸化物の一部を使うことによって、非可逆容量を低減し、初回の充放電効率を高めることができる。
【0021】
また、一般にシリケート化合物は絶縁性でもあるため、導電助剤を混ぜて混合相として用いるのが良い。導電助剤としては、炭素質物もしくは炭化ケイ素、あるいはそれらの混合物であることが好ましい。炭素質物としては、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、アモルファス炭素またはアセチレンブラックなどがある。シリケート化合物と導電助剤との混合比率(シリケート化合物:導電助剤)は、典型的には、10:90(質量)から90:10(質量)である。
【0022】
導電助剤は、粒子状や繊維状のものであっても構わないし、粒子の形態をもたない非晶質な相であっても構わない。また、混合相は均一な組成の相であっても、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子11の表面部から炭素質物被覆層12の方に向けて導電助剤量の割合が徐々に増加する傾斜組成となっていても構わない。シリケート化合物と導電助剤との混合相とすることで、活物質10は、ケイ素粒子への導電パスが確保され、優れた電池特性を発揮することができる。
【0023】
シリケート化合物及び導電助剤は、TEMによる観察およびTEM−EDXによる組成分析で確認することができる。ケイ素粒子もしくはケイ素を内部に有するケイ素酸化物粒子と周りの炭素質物との境界層における少なくとも3点で点分析を行い、そこに含まれる元素成分を調べることでシリケート化合物の存在を確認できる。また同時に、その化合物相内にいる炭素質物の存在も調べることができる。
【0024】
炭素質物12は非晶質相であることが好ましい。この中に、結晶性の高い黒鉛やカーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどの炭素材料やアセチレンブラックなどの微粒子が含まれていてもよい。また、10nm以上10μm以下程度の微細な気孔を内包していても構わない。
【0025】
ケイ素を内部に有するケイ素酸化物11を内包する炭素質物12としては、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、アモルファス炭素またはアセチレンブラックなどから選ばれる少なくとも1種、好ましくはハードカーボンのみ、あるいはグラファイトとハードカーボンの混合物がよい。グラファイトは活物質の導電性を高め、容量を向上させる点で好ましく、ハードカーボンは活物質全体を被覆し膨張収縮を緩和する効果が大きい。
【0026】
活物質の質量を100質量%としたときにケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物の占める割合が20質量%以上75質量%以下であることが好ましい。20質量%より小さいとケイ素を高容量活物質として用いる効果が小さく、75%より大きいと、導電性の確保が難しく、かつサイクル性が大きく低下するからである。
【0027】
活物質中のケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物の占める割合は、電極のある断面を切り取った場合に、そこに存在する複合体について以下の分析を行うことにより調べることができる。20000倍以上の倍率にて観察し、複合体の面積と、その内部に存在するケイ素または/およびケイ素酸化物粒子の面積の割合を求める。次に、ケイ素粒子の密度2.3g/cm
3、ケイ素酸化物(二酸化ケイ素)の密度2.2g/cm
3、炭素質物として代表的なハードカーボンの密度1.8g/cm
3を用いて、複合体(炭素質物)内に存在するケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物の占める割合を推定する。
【0028】
ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子11は、
図2に示すようにケイ素酸化物粒子11bを含まないケイ素粒子21にそのまま置き換えた構造であってもよい。この場合の活物質は、ケイ素粒子21と、ケイ素粒子21を内包する炭素質物12と、シリケート化合物と導電助剤とを含む相をケイ素と炭素質物との間に有する。ケイ素粒子21を用いた活物質は、単体もしくは、
図2に示すようにケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子11とケイ素粒子21とを組み合わせた活物質ものであってもよい。
【0029】
(製造方法)
次に、第1の実施形態に係る非水二次電池用負極活物質10の製造方法について説明する。
まず始めに、
図1に示すケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子のシリケート化合物と導電助剤との混合相の被覆およびそれらの炭素質物による被覆の複合形態は、最終の形態であって、不均化反応によりケイ素を析出させる方法では、不均化のタイミングは、後に説明する炭素による被覆・複合化の時であっても構わない。ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子ではなくケイ素粒子にシリケート化合物と導電助剤との混合相を形成する場合は、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の代わりにケイ素粒子を用いればよい。以下の説明では、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子を用いることを前提に説明するが、ケイ素粒子を用いる場合も、同様の方法で、活物質を製造することができるため、共通する製造方法に関しての説明を省略する。
【0030】
まず、原料であるケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の周りに、シリケート化合物の前駆体として、微細なサイズの酸化物粒子あるいは酸化物前駆体の被覆層を形成する。被覆する酸化物を構成する元素としては、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素より選ばれる少なくとも一種を含む。微細なサイズの酸化物粒子の平均一次粒径は、例えば、5nm以上50nm以下が好ましい。また、酸化物前駆体の粒子の平均一次粒径は、例えば、2nm以上30nm以下が好ましい。
【0031】
シリケート化合物前駆体の被覆には、金属塩溶液法やゾルゲル法などを用いることができる。方法は、これに限ったものではない。ただし、ケイ素酸化物粒子の周りに形成する酸化物はできるだけ反応性が高くなるように、より微粒子を形成できる方法が好ましい。また、厚く形成すると容量が低下するなど充放電特性に影響を与えるため、薄い被膜を形成できる方法が好ましい。
【0032】
シリケート化合物の前駆体をケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の周りに形成する際に、導電助剤となる粒子または炭素前駆体とが混合するように形成してもよい。また、シリケート化合物の前駆体をケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の周りに形成した後に、シリケート化合物の前駆体と同様の方法で、導電助剤となる粒子または炭素前駆体をシリケート化合物前駆体で被覆されたケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の周りに形成又は被覆してもよい。
【0033】
シリケート化合物の前駆体とケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子またはシリケート化合物の前駆体と導電助剤となる粒子または炭素前駆体とケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子との混合攪拌処理は、例えば各種攪拌装置、ボールミル、ビーズミル装置およびこれらの組み合わせにより行うことができる。ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒と酸化物前駆体との混合は分散媒を用いた液中で液相混合を行うと良い。分散媒としては有機溶媒、水等を用いることができる。スプレードライ法などを用いてもよい。
【0034】
次に、混合攪拌処理された被処理物を乾燥、熱処理する。これにより、酸化物前駆体を酸化物化し、生成した酸化物とケイ素酸化物とを反応させてシリケート化合物を合成する。または、混合攪拌処理された被処理物を乾燥、熱処理して酸化物とケイ素酸化物とを反応させてシリケート化合物を合成する。熱処理の温度は形成する酸化物およびシリケート化合物によって異なり、それぞれに合った適切な温度にて行うことが好ましい。このシリケート化合物と導電助剤との混合相は、粒子の一部を覆っていても、全体を覆っていても、あるいは複数の粒子をまとめて覆っていても構わないが、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子と密着し結合している。また、未反応の酸化物(シリケート化合物前駆体)は一部が残留していても構わない。ただし、必要以上に多いと導電性の阻害要因となるため、できる限りケイ素酸化物との反応で消費される量であることが好ましい。炭素前駆体を同時に被覆した場合には、この時点で、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の周りにシリケート化合物と導電助剤の混合物らなる被覆相を形成することができる。
【0035】
熱処理温度に特に限定されないが、900℃以下が好ましい。900℃より高温にすると、ケイ素酸化物の不均化反応も同時に起こる。後の炭素被覆による複合化処理での再度の熱処理工程を考えると、一度析出したケイ素粒子が必要以上に粒成長してしまうのは好ましくないので、この段階では不均化温度より下の温度で行うのがより好ましい。ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の代わりにケイ素粒子を用いる場合は、熱処理温度は、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子と同様の温度条件でよい。
【0036】
次に、シリケート化合物と導電助剤の混合相により被覆されたケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子を炭素質物内に内包させて複合化させる。炭素質物による被覆は、単一のケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子に対してでもよいし、複数のケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子が同時に内包されたものであってもよい。このとき、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の一部が炭素質物相の表面に露出していても構わない。また、シリケート化合物と導電助剤の混合相により被覆されたケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の他にシリケート化合物と導電助剤の混合相により被覆されたケイ素粒子が炭素質物との複合体に含まれても良いし、シリケート化合物と導電助剤の混合相により被覆されたケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子の代わりにシリケート化合物と導電助剤の混合相により被覆されたケイ素粒子と炭素質物との複合体でもよい。このように、構造体中にリチウムを吸蔵放出する物質を分散させることにより、炭素質物相が体積膨張による応力を緩和するバッファー相として働き、活物質の微粉化および脱落を防止することができる。また、炭素質物相は良好な導電剤でもあるため、充放電容量や充放電効率の向上にも大きく貢献する。
【0037】
(複合化処理)
次に、シリケート化合物と導電助剤との混合相により被覆されたケイ素粒子又はケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子を炭素質物で被覆・複合化する方法について説明する。前述のシリケート化合物形成の熱処理プロセスで不均化反応も同時に起こさせている場合には、ケイ素酸化物粒子はこの時点ですでにケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子となっている。
【0038】
複合化処理では、混合相被覆ケイ素粒子又は混合相被覆ケイ素酸化物粒子と、炭素前駆体からなる有機材料を混合し、複合、炭化処理により行う。この複合粒子の中には炭素質物そのものが含まれていても構わない。
【0039】
有機材料としては、グラファイト、コークス、低温焼成炭、ピッチなどの炭素材料および炭素材料前駆体のうち少なくとも一種を用いることができる。特に、ピッチなど加熱により溶融するものは力学的なミル処理中には溶融して複合化が良好に進まないため、コークス・グラファイトなど溶融しないものと混合して使用すると良い。有機材料には、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、アモルファス炭素やアセチレンブラック等の炭素質物を更に添加してもよい。
【0040】
液相での混合攪拌により複合化を行う方法について以下に説明する。混合攪拌処理は例えば各種攪拌装置、ボールミル、ビーズミル装置およびこれらの組み合わせにより行うことができる。シリケート化合物と導電助剤との混合相により被覆されたケイ素粒子又はケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子と炭素前駆体および炭素材との複合化は分散媒を用いた液中で液相混合を行うと良い。より均一に分散させるためである。分散媒としては有機溶媒、水等を用いることができるが、シリケート化合物、ケイ素粒子、ケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子と有機材料との双方と良好な親和性をもつ液体を用いることが好ましい。具体例として、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン(NMP)などを挙げることができる。
【0041】
また、炭素前駆体はシリケート化合物と導電助剤との混合相により被覆されたケイ素粒子又はケイ素粒子を内部に有するケイ素酸化物粒子と均一に混合するために混合段階で液体あるいは分散媒に可溶であるものが好ましく、液体であり容易に重合可能なモノマーあるいはオリゴマーであると特に好ましい。例えば、フラン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルアルコール、スクロースなどの有機材料が挙げられる。液相で混合を行った材料は、固化あるいは乾燥工程を経て、最後に焼成して複合化物を形成する。
【0042】
(炭化焼成処理)
炭化焼成は、Ar等の不活性な雰囲気下にて行なわれる。雰囲気はこれに限ったものではなく、水素を含むArなどの混合雰囲気であってもよい。前記有機材料で複合化したシリケート化合物被覆ケイ素粒子あるいはケイ素酸化物粒子を熱処理して炭化させる。この炭化焼成の温度は、使用する有機材料化合物の熱分解温度にもよるが、900℃以上1200℃以下であることが好ましい。ケイ素酸化物粒子に関しては、この段階で炭化処理と不均化反応を同時に起こさせてもよい。
【0043】
炭素焼成を1050℃以上1200℃以下の間の温度とした場合、ケイ素粒子と炭素質物とが直接接触する部分において炭化ケイ素相を生成する反応が起こり得る。炭化ケイ素は電気伝導性があるため、適度に存在することは好ましい。しかし、1200℃より高い温度では、必要以上に炭化ケイ素化が進んでしまい、充放電容量が大きく低下してしまう可能性があるため好ましくない。焼成温度は1200℃以下とするのが好ましい。焼成時間については、10分から12時間程度の範囲であることが好ましい。
【0044】
以上のような合成方法により本実施形態に係る負極活物質が得られる。炭化焼成後の生成物は各種ミル、粉砕装置、グラインダー等を用いて粒径、比表面積等を調製してもよい。
【0045】
以上、説明した第1実施形態に係る負極活物質は、粉末X線回折測定において少なくとも2θ=28.4°に回折ピークを有する。2θ=28.4°のピークは、ケイ素に由来するものである。このような負極活物質を用いることで、初回充放電効率とサイクル寿命を高めることができるため、エネルギー密度に優れ長寿命な非水電解質二次電池を実現することができるようになる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態は、
図3の断面図に示すように、負極合剤層101と集電体102とを含む。負極合剤層101は集電体102上に配置された、活物質を含む合剤の層である。負極合剤層101は、負極活物質103と、導電剤104と結着剤105とを含む。結着剤105は、負極合剤層101と集電体を接合する。負極合剤層101は、集電体102の片面または両面に形成されている。
【0047】
負極合剤層101の厚さは、10μm以上150μm以下の範囲であることが望ましい。従って負極集電体の両面に担持されている場合は負極合剤層101の合計の厚さ、20μm以上300μm以下の範囲となる。片面の厚さのより好ましい範囲は、10μm以上100μm以下である。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は大幅に向上する。
【0048】
負極合剤層101の負極活物質103、導電剤104および結着剤105の配合割合は、負極活物質103が57質量%以上95質量%以下、導電剤104が3質量%以上20質量%以下、結着剤105が2質量%以上40質量%以下の範囲にすることが、良好な大電流放電特性とサイクル寿命を得られるために好ましい。
【0049】
実施形態の集電体102は、負極合剤層101と結着する導電性の部材である。集電体102としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板を用いることができる。これら導電性基板は、例えば、銅、ステンレスまたはニッケルから形成することができる。集電体の厚さは5μm以上20μm以下であることが望ましい。この範囲内であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
【0050】
負極活物質103としては、第1実施形態の活物質10、20を用いることが好ましい。
【0051】
また、負極合剤層101は、導電剤104を含んでいてもよい。導電剤104としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などを挙げることができる。
【0052】
負極合剤層101は負極材料同士を結着する結着剤105を含んでいてもよい。結着剤105としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド、ポリアラミド等を用いることができる。また、結着剤には2種またはそれ以上のものを組み合わせて用いてもよく、活物質同士の結着に優れた結着剤と活物質と集電体の結着に優れた結着剤の組み合わせや、硬度の高いものと柔軟性に優れるものを組み合わせて用いると、寿命特性に優れた負極を作製することができる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る非水電解質二次電池を説明する。
第3実施形態に係る非水電解質二次電池は、外装材と、外装材内に収納された正極と、外装材内に正極と空間的に離間して、例えばセパレータを介在して収納された負極と、外装材内に充填された非水電解質とを具備する。
【0054】
実施形態に係る非水電解質二次電池200の一例を示した
図4の模式図を参照してより詳細に説明する。
図4は、外装材202がラミネートフィルムからなる扁平型非水電解質二次電池200の断面模式図である。
【0055】
扁平状の捲回電極群201は、2枚の樹脂層の間にアルミニウム箔を介在したラミネートフィルムからなる袋状外装材202内に収納されている。扁平状の捲回電極群201は、一部を抜粋した模式図である
図5に示すように、負極203、セパレータ204、正極205、セパレータ204の順で積層されている。そして積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成されたものである。袋状の外装材202に最も近い電極は負極であり、この負極は、外装材202側の負極集電体には、負極合剤が形成されておらず、負極集電体の電池内面側の片面のみに負極合剤を形成した構成を有する。その他の負極203は、負極集電体の両面に負極合剤を形成して構成されている。正極205は、正極集電体の両面に正極合剤を形成して構成されている。
【0056】
捲回電極群201の外周端近傍において、負極端子は最外殻の負極203の負極集電体に電気的に接続され、正極端子は内側の正極205の正極集電体に電気的に接続されている。これらの負極端子206及び正極端子207は、外装材202の開口部から外部に延出されている。例えば液状非水電解質は、外装材202の開口部から注入されている。袋状外装材202の開口部を負極端子206及び正極端子207を挟んでヒートシールすることにより捲回電極群201及び液状非水電解質を密封している。
【0057】
負極端子206は、例えばアルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子206は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料であることが好ましい。
正極端子207は、リチウムイオン金属に対する電位が3〜4.25Vの範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子207は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料であることが好ましい。
【0058】
以下、非水電解質二次電池200の構成部材である外装材202、正極205、電解質、セパレータ204について詳細に説明する。
【0059】
1)外装材202
外装材202は、厚さ0.5mm以下のラミネートフィルムから形成される。或いは、外装材は厚さ1.0mm以下の金属製容器が用いられる。金属製容器は、厚さ0.5mm以下であることがより好ましい。
【0060】
外装材202の形状は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、及びボタン型から選択できる。外装材の例には、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に積載される小型電池用外装材、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池用外装材などが含まれる。
【0061】
ラミネートフィルムは、樹脂層間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装材の形状に成形することができる。
【0062】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。合金中に鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属が含まれる場合、その量は100質量ppm以下にすることが好ましい。
【0063】
2)正極205
正極205は、活物質を含む正極合剤が正極集電体の片面もしくは両面に担持された構造を有する。
前記正極合剤の片面の厚さは1.0μm以上150μm以下の範囲であることが電池の大電流放電特性とサイクル寿命の保持の点から望ましい。従って正極集電体の両面に担持されている場合は正極合剤の合計の厚さは20μm以上300μm以下の範囲となることが望ましい。片面のより好ましい範囲は30μm以上120μm以下である。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は向上する。
正極合剤は、正極活物質と正極活物質同士を結着する結着剤の他に導電剤を含んでいてもよい。
【0064】
正極活物質としては、種々の酸化物、例えば二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えばLiCOO
2)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えばLiNi
0.8CO
0.2O
2)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn
2O
4、LiMnO
2)を用いると高電圧が得られるために好ましい。
【0065】
導電剤としてはアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などを挙げることができる。
【0066】
結着材の具体例としては例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ弗化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を用いることができる。
【0067】
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、正極活物質80質量%以上95質量%以下、導電剤3質量%以上20質量%以下、結着剤2質量%以上7質量%以下の範囲にすることが、良好な大電流放電特性とサイクル寿命を得られるために好ましい。
【0068】
集電体としては、多孔質構造の導電性基板かあるいは無孔の導電性基板を用いることができる。集電体の厚さは5μm以上20μm以下であることが望ましい。この範囲であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
【0069】
正極205は、例えば活物質、導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製し、このスラリーを集電体に塗布し、乾燥し、その後、プレスを施すことにより作製される。正極205はまた活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して正極層とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
【0070】
3)負極203
負極203としては、第2実施形態に記載した負極100を用いる。
【0071】
4)電解質
電解質としては非水電解液、電解質含浸型ポリマー電解質、高分子電解質、あるいは無機固体電解質を用いることができる。
非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される液体状電解液で、電極群中の空隙に保持される。
【0072】
非水溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)とPCやECより低粘度である非水溶媒(以下第2溶媒と称す)との混合溶媒を主体とする非水溶媒を用いることが好ましい。
【0073】
第2溶媒としては、例えば鎖状カーボンが好ましく、中でもジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン(BL)、アセトニトリル(AN)、酢酸エチル(EA)、トルエン、キシレンまたは、酢酸メチル(MA)等が挙げられる。これらの第2溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。特に、第2溶媒はドナー数が16.5以下であることがより好ましい。
【0074】
第2溶媒の粘度は、25℃において2.8cmp以下であることが好ましい。混合溶媒中のエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートの配合量は、体積比率で1.0%〜80%であることが好ましい。より好ましいエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートの配合量は体積比率で20%〜75%である。
【0075】
非水電解質に含まれる電解質としては、例えば過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六弗化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウ弗化リチウム(LiBF
4)、六弗化砒素リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF
3SO
2)
2]等のリチウム塩(電解質)が挙げられる。中でもLiPF
6、LiBF
4を用いるのが好ましい。
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5mol/L以上2.0mol/L以下とすることが望ましい。
【0076】
5)セパレータ204
非水電解質を用いる場合、および電解質含浸型ポリマー電解質を用いる場合においてはセパレータ204を用いることができる。セパレータ204は多孔質セパレータを用いる。セパレータ204の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ弗化ピニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を用いることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、二次電池の安全性を向上できるため好ましい。
【0077】
セパレータ204の厚さは、30μm以下にすることが好ましい。厚さが30μmを越えると、正負極間の距離が大きくなって内部抵抗が大きくなる恐れがある。また、厚さの下限値は、5μmにすることが好ましい。厚さを5μm未満にすると、セパレータ204の強度が著しく低下して内部ショートが生じやすくなる恐れがある。厚さの上限値は、25μmにすることがより好ましく、また、下限値は1.0μmにすることがより好ましい。
セパレータ204は、120℃の条件で1時間おいたときの熱収縮率が20%以下であることが好ましい。熱収縮率が20%を超えると、加熱により短絡が起こる可能性が大きくなる。熱収縮率は、15%以下にすることがより好ましい。
【0078】
セパレータ204は、多孔度が30以上60%以下の範囲であることが好ましい。これは次のような理由によるものである。多孔度を30%未満にすると、セパレータ204において高い電解質保持性を得ることが困難になる恐れがある。一方、多孔度が60%を超えると十分なセパレータ204強度を得られなくなる恐れがある。多孔度のより好ましい範囲は、35%以上70%以下である。
【0079】
セパレータ204は、空気透過率が500秒/100cm
3以下であると好ましい。空気透過率が500秒/100cm
3を超えると、セパレータ204において高いリチウムイオン移動度を得ることが困難になる恐れがある。また、空気透過率の下限値は、30秒/100cm
3である。空気透過率を30秒/100cm
3未満にすると、十分なセパレータ強度を得られなくなる恐れがあるからである。
空気透過率の上限値は300秒/100cm
3にすることがより好ましく、また、下限値は50秒/100cm
3にするとより好ましい。
【0080】
セパレータ表面に、セラミックスの粒子がコーティングされていてもよい。これにより、安全性を高めることができる。セラミックス粒子の例としては、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2などである。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る電池パックを説明する。
第4実施形態に係る電池パックは、上記第3実施形態に係る非水電解質二次電池(即ち、単電池)を一以上有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、或いは、直列と並列に接続して配置される。
図6の模式図及び
図7のブロック図を参照して電池パック300を具体的に説明する。
図6に示す電池パック300では、単電池301として
図4に示す非水電解液電池200を使用している。
【0082】
複数の単電池301は、外部に延出した負極端子302及び正極端子303が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ304で締結することにより組電池305を構成している。これらの単電池301は、
図7に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0083】
プリント配線基板306は、負極端子302及び正極端子303が延出する単電池301側面と対向して配置されている。プリント配線基板306には、
図7に示すようにサーミスタ307、保護回路308及び外部機器への通電用端子309が搭載されている。なお、組電池305と対向するプリント配線基板306の面には組電池305の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0084】
正極側リード310は、組電池305の最下層に位置する正極端子303に接続され、その先端はプリント配線基板306の正極側コネクタ311に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード312は、組電池305の最上層に位置する負極端子302に接続され、その先端はプリント配線基板306の負極側コネクタ313に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ311、313は、プリント配線基板306に形成された配線314、315を通して保護回路308に接続されている。
【0085】
サーミスタ307は、単電池305の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路308に送信される。保護回路308は、所定の条件で保護回路308と外部機器への通電用端子309との間のプラス側配線316a及びマイナス側配線316bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ307の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単電池301の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池301もしくは単電池301全体について行われる。個々の単電池301を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池301中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。
図5及び
図6の場合、単電池301それぞれに電圧検出のための配線317を接続し、これら配線317を通して検出信号が保護回路308に送信される。
【0086】
正極端子303及び負極端子302が突出する側面を除く組電池305の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート318がそれぞれ配置されている。
組電池305は、各保護シート318及びプリント配線基板306と共に収納容器319内に収納される。すなわち、収納容器319の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート318が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板306が配置される。組電池305は、保護シート318及びプリント配線基板306で囲まれた空間内に位置する。蓋320は、収納容器319の上面に取り付けられている。
【0087】
なお、組電池305の固定には粘着テープ304に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0088】
図6、
図7では単電池301を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、または直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
以上記載した本実施形態によれば、上記第3実施形態における優れた充放電サイクル性能を有する非水電解質二次電池を備えることにより、優れた充放電サイクル性能を有する電池パックを提供することができる。
【0089】
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質二次電池を用いた電池パックは車載用に好適に用いられる。
【実施例】
【0090】
以下に具体的な実施例を挙げ、その効果について述べる。但し、これらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
次のような条件で、活物質複合粒子を作製した。
市販の一酸化ケイ素粒子(平均粒径45μm)をボールミルにて粉砕し、平均粒径0.3μmの粉末を得た。
硝酸マグネシウム6水和物6gを20ccの水+エタノール混合液に溶かして水溶液とし、これに0.06gのスクロース(C
12H
22O
11)と前記粉砕した一酸化ケイ素粉末4gを加え、マグネットスターラーにて1時間混合した。混合液をエバポレータを用いて乾燥し、さらに100℃にて真空乾燥したのち、得られた粉末を回収して電気炉に入れ、Arガス流通下で150℃に加熱し、表面が酸化物前駆体と炭素質物前駆体で被覆された一酸化ケイ素粒子を作製した。次に、続けてアルゴンガス雰囲気中で700℃、1時間の加熱処理を行った。これにより、酸化物と炭素質物で被覆された一酸化ケイ素粒子(シリケート化合物を含む)を得た。
【0092】
次に、酸化物と炭素質物で被覆された一酸化ケイ素粒子を以下のような手順でハードカーボンと複合化した。フルフリルアルコール5gとエタノール10gの混合液に、被覆一酸化ケイ素粒子4gと黒鉛粉末0.3gを加え、遊星ボールミルにより混合しスラリーを作製した。得られたスラリーをろ過してボールを除去したのち、フルフリルアルコールの重合触媒となる希塩酸を0.5g加え、室温で放置し乾燥、固化して炭素複合前駆体を得た。得られた炭素複合前駆体を電気炉に入れ、1000℃で2時間、Arガス雰囲気中にて焼成し、室温まで冷却後、乳鉢を用いて粉砕し、目開き20μmのふるいにかけて負極活物質複合粉末を得た。
【0093】
得られた負極活物質複合粉末0.6gに平均粒径3μmの黒鉛粉末0.1gを混合し、ポリイミドを16質量%となるようにN-メチルピロリドン分散媒で調整した溶液に混ぜ、ミキサーを用いて混合した。得られたペースト状のスラリーを厚さ12μmの銅箔上に塗布してプレスした後、400℃で2時間、Arガス中にて熱処理した。
【0094】
(充放電試験)
前記電極付き銅箔を20mm×20mmサイズに裁断した後、100℃で12時間、真空乾燥し、試験電極とした。対極および参照極を金属Liとし、LiN(CF3SO2)2を電解質とするEC・DEC(体積比EC:DEC=1:2)混合溶液を電解液として電池を作製し、充放電試験を行った。電池の組み立てはすべてアルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス中にて行った。
充放電試験の条件は、参照極と試験電極間の電位差0.01Vまで1mAの定電流で充電し、その後定電圧での充電を行った(CC/CV充電)。放電は、1mAの定電流で1.5Vまで行った(CC放電)。このときの初回の充電容量に対する放電容量の割合を初回充放電効率とした。
【0095】
さらにその後、参照極と試験電極間の電位差0.01Vまで6mAの定電流で充電、その後定電圧で充電し、6mAの定電流で1.5Vまで放電するというサイクルを30回繰り返し、この6mAでの充放電の1回目の放電容量に対する30回目の放電容量の比を放電容量維持率とした。
【0096】
実施例と比較例の結果について、表1にまとめて示す。以下の実施例および比較例については実施例1と異なる部分のみ説明し、その他の合成および評価手順については実施例1と同様に行ったので説明を省略する。
【0097】
(実施例2)
炭素複合化の熱処理温度を1100℃にした以外はすべて実施例1と同様の方法にて試料を作製し、電極化して実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0098】
(実施例3)
硝酸マグネシウム塩の代わりに硝酸アルミニウム9水和物を14g用いた以外はすべて実施例1と同様の方法にて試料を作製し、電極化して実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0099】
(実施例4)
硝酸マグネシウム塩の代わりに硝酸鉄9水和物を8g用いた以外はすべて実施例1と同様の方法にて試料を作製し、電極化して実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0100】
(実施例5)
硝酸マグネシウム塩の代わりにオキシ硝酸ジルコニウム2水和物4gを用いた以外はすべて実施例1と同様の方法にて試料を作製し、電極化して実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0101】
(実施例6)
一酸化ケイ素粉末の代わりに平均粒径40nmのケイ素粉末を用い、実施例1と同様の方法にて酸化マグネシウムと炭素材を被覆し、前記被覆ケイ素粒子1gとフルフリルアルコール3.2gとエタノール10gを混合してスラリーとしたのち、同様に複合化処理して負極活物質とした。この活物質を用いて実施例1と同様の方法で電極化し、実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0102】
(比較例1)
実施例1と同様に粉砕した一酸化ケイ素酸化物粒子を酸化物および炭素質物で被覆処理せずに、直接炭素質物で複合化処理したことを除いてすべて実施例1に示す方法で試料を作製し、電極化して実施例1と同様の方法で充放電試験を行った。
【0103】
(比較例2)
酸化マグネシウム被覆を行わない以外はすべて実施例6と同様の方法にて試料を作製し、電極化したのち、充放電試験を行った。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1から6において得られた各電極層のX線回折測定ならびにTEM−EDXによる測定・分析の結果、2θ=28.4°に代表される回折ピークを有するケイ素の他、それぞれ表1に示されるシリケート化合物相を含む相が検出された。また、一部に被覆に用い反応せずに残留した酸化物の相も観察された。このように、シリケート化合物が形成されることで非可逆容量の原因となるケイ素酸化物相が減少し、初回の充放電効率が向上していることがわかる。また、新たに形成されるシリケート化合物相は、リチウムに不活性な相であり、また、導電助剤による電子伝導性もあるため、サイクル寿命に優れている。
【0106】
複合化熱処理の温度を1100℃とした実施例2においては、一部ケイ素粒子が炭化ケイ素化しているのが明らかになった。一部不均化で生じたケイ素が炭化ケイ素化することによって、容量は若干低下したが、初回の充放電効率にはほとんど影響せず、寿命も改善されている。
【0107】
ケイ素酸化物の代わりにケイ素粒子を用いた場合にも同様な効果があることがわかる。このように、ケイ素を含むケイ素酸化物の周りに反応により形成したシリケート化合物と導電助剤とを含む相を有し、さらにその周りを炭素質物で被覆複合化することによって、初回の充放電効率を高めるとともに、サイクル時の導電パスが維持され、サイクル寿命が向上することがわかった。
【0108】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
以下、国内移行時の特許請求の範囲を付記1−6として付記する。
[付記1]
(補正後)
ケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物と、
前記ケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物を内包する炭素質物と、
前記ケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物と前記炭素質物との間にシリケート化合物と導電助剤とを含む相を有し、
前記シリケート化合物がアルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素より選ばれる少なくとも一種を含む酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物であることを特徴とする非水電解質電池用負極活物質。
[付記2]
(削除)
[付記3]
前記付記1に記載の活物質の質量を100質量%としたときに前記ケイ素またはケイ素を内部に有するケイ素酸化物の占める割合が20質量%以上75質量%以下であることを特徴とする付記1に記載の非水電解質電池用負極活物質。
[付記4]
(補正後)
集電体と、
前記集電体上に、前記付記1又は3のいずれか1項に記載の非水電解質電池用負極活物質と、導電剤と、結着剤を含む電極合剤層とを有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
[付記5]
外装材と、
前記外装材内に収納された正極と、
前記外装材内に前記正極と空間的に離間して、セパレータを介在して収納された前記付記4に記載の電極を用いた負極と、
前記外装材内に充填された非水電解質とを具備することを特徴とする非水電解質二次電池。
[付記6]
前記付記5に記載された非水電解質二次電池をセルとして用いた電池パック。