特許第6430503号(P6430503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6430503鋼材からなるストリップを製造するための方法、特に、改善された耐用寿命を有する切断または切削工具を製造するための鋼材からなるストリップを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430503
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】鋼材からなるストリップを製造するための方法、特に、改善された耐用寿命を有する切断または切削工具を製造するための鋼材からなるストリップを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   B22D11/06 340C
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-532234(P2016-532234)
(86)(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公表番号】特表2016-528046(P2016-528046A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】DE2014000328
(87)【国際公開番号】WO2015018385
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】102013013407.2
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511220832
【氏名又は名称】ザルツギッター・フラッハシュタール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】エヴァーツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レデニウス,アレクサンダー
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−513607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/06
B22D 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材からなるストリップを製造するための方法、特に、改善された耐用寿命を有する切断工具または切削工具を製造するための鋼材からなるストリップを製造するための方法であって、硬化可能な鋼材の溶融液から鋳造法によりプレストリップが作製され、次いで前記プレストリップがホットストリップを形成するように圧延され、必要な場合には、次いで焼なましされて冷間圧延される、方法であって、
前記プレストリップが水平方向のストリップキャスティング設備で製作され、ここで、溶融液が、供給容器から、2つの方向転換ロールを介して循環運動する冷却されたコンベヤベルトの上に送り込まれ、前記溶融液の流動が沈静化された条件下で、6〜40mmの範囲内の曲げのないプレストリップを形成するように、鋳込まれ、次いでホットストリップを形成するように少なくとも50%の変形度で前記プレストリップが圧延され、
前記プレストリップの上面と下面の冷却速度は、ストリップ断面における残留凝固が生じる位置が後の切れ刃となる位置の範囲外になるようにそれぞれ異なるように設定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プレストリップの下面は前記プレストリップの上面よりも強力に冷却されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレストリップの下面の冷却は、前記プレストリップがその上に載置されているコンベヤベルトの下面の冷却によって間接的に行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンベヤベルトの下面の冷却は水によって冷却され、前記プレストリップの上面は静止した空気または保護ガス雰囲気中で冷却されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
凝固の後かつ更なる処理の開始前に前記プレストリップが均一化ゾーンを通過することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記更なる処理は前記プレストリップの板状への切断であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
板状への切断の後に板が圧延温度まで加熱され、次いで圧延されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記更なる処理は前記プレストリップのコイル巻取りであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記プレストリップがコイル巻取りの後にコイル巻出しされ、圧延温度まで加熱され、次いで圧延されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プレストリップがコイル巻出しの前に再加熱されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記プレストリップがインライン方式で圧延プロセスにかけられ、次いでコイル巻取りされることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
熱間圧延の際の変形度が>70%であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ホットストリップが冷却後に冷間圧延されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載されているような、鋼材からなるストリップを製造するための方法、特に、改善された耐用寿命を有する切断または切削工具を製造するための鋼材からなるストリップを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような種類の切断または切削工具は、たとえば、工業用もしくは個人向けの分野で使用されるナイフの刃や鋸の刃であり得る。
【0003】
通常、切断または切削工具には、高い硬度と耐摩耗性によって特徴づけられる、炭素が豊富なマルテンサイト系鋼材からなる薄板が用いられる。約0.4〜1.25重量%の比較的高い炭素含有率に加えて、硬度をより向上させるためにクロムがしばしば鋼材に添加され、クロムはカーバイド形成剤として機能する。このような利用分野では、たとえば鋼材−鉄−素材シートに記載されている鋼材100Cr6については、1.5重量%のクロム含有率が普通である。また、鋼材がステンレスであるべき場合、特許文献1によると11〜16重量%の量でクロムが追加される。
【0004】
切断工具や切削工具の硬度は、工具がオーステナイト化温度まで加熱されて急冷され、引き続いて焼戻しされる調質プロセスの結果としてもたらされる。より高い炭素含有率に加えて、合金元素クロムはクリティカルな冷却速度の低減を引き起こし、かつ、カーバイド形成の結果として硬度の大幅な向上を引き起こす。
【0005】
切断工具や切削工具のための鋼材の典型的な製造方法は、インゴットキャスティング法や連続鋳造法である。しかし、インゴットキャスティングで知られている粗いカーバイド析出物は、細かく分散して析出するカーバイドに比べて低い強度向上作用をもたらし、そのため、より高いCr含有率が必要となる。しかしながら、より高いCr含有率は切欠き靭性をさらに引き下げてしまう。
【0006】
さらに、0.80%のCを明らかに上回る特別に高炭素含有率の鋼材、ならびにカーバイド形成をする合金元素を含む高炭素含有率の鋼材(たとえばCrおよびMoならびにカーバイド形成をしない元素Siが合計で1.5%を上回る)は、従来式の連続鋳造技術によっては、確実かつ不具合なしにブルームとして製作することができないことが一般に知られている。このような鋼材タイプの不良リスクは不釣合いに高い。その原因は、鋳造直後のストリップが曲げられたり曲げ戻されたりするときの素材の不十分な延性にあり、このことは亀裂形成につながりかねない。このことは基本的に、0.8%を超える高い炭素の質量割合を含む鋼材タイプにも当てはまる。
【0007】
特許文献1より、切断工具を製造するために、反対方向へ回転するローラの間での垂直方向のストリップキャスティングにより製作され、引き続いて圧延される鋼材を使用することが公知である。垂直方向のストリップキャスティングは、インゴットキャスティングと比べたとき、鋼材が凝固するときに発生する一次カーバイドがインゴットキャスティングの場合よりもはるかに小さいので、ナイフの刃やカミソリの刃を研いだときに、切れ刃のところでエッジ破損が起こる危険が明らかに低減されるという利点を有しているとされる。連続鋳造によるこのような種類の鋼材の製造も知られている。鋳造されたストリップが引き続いて熱間圧延され、次いで、求められる最終厚みまで冷間圧延される。
【0008】
切断工具または切削工具を製造するための鋼材ストリップのための公知の製造方法で欠点となるのは、インゴットキャスティング、連続鋳造、垂直方向のストリップキャスティングにおいては、凝固に起因して、ちょうど後に切れ刃となる領域で残留凝固が中心部で行われることにある。問題の要は、産業用および家庭用の刃が主として対称の形状を有し、したがって、製作される鋼材ストリップの中核領域すなわち中心部に切れ刃の領域がくるという点にある。
【0009】
実験が明らかにしているところでは、通常、この領域では凝固中に収縮空洞(引け巣)がいっそう多く生じるだけでなく、大きな析出物(硫化物、カーバイド)を含む粗い凝固組織も生じる。
【0010】
さらに実験は、このような製造方法における偏析領域の存在および析出物のライン状の構造の存在も裏づけていて、刃や鋸のエッジで生じるような静的な引張負荷、せん断負荷および周期的な負荷のもとで、これらが亀裂の開始点となり得る。
【0011】
残留凝固ゾーンの中心部の配置によって、かつこれと結びついて早期に発生する欠け、亀裂等による摩減によって、工具の耐用寿命が引き下げられ、相応のコスト負担を伴う早期の交換が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第11 2010 004 925 T5号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の課題は、公知の方法の欠点を回避し、鋼材ストリップを製造するときの凝固組織に影響を及ぼして、そこから製造される切断または切削工具の顕著な耐用寿命向上が公知の方法に比べて達成されるような、鋼材からなるストリップを製造するための方法、特に、切断または切削工具を製造するための鋼材からなるストリップを製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の開示によると、硬化可能な鋼材の溶融液から鋳造法によりプレストリップが作製され、次いでプレストリップはホットストリップを形成するように圧延され、必要な場合には、次いで焼なましプロセスと冷間圧延プロセスが施される、ストリップを製造する方法が提供される。該方法は、プレストリップが水平方向のストリップキャスティング設備で製作され、その際には、溶融液が供給容器から、2つの方向転換ロールを介して循環運動する冷却されたコンベヤベルトの上に送り込まれ、流動が沈静化された条件下で、曲げなしに、6〜40mmの範囲内でプレストリップを形成するように鋳込まれ、次いで、プレストリップはホットストリップをなすように少なくとも50%の変形度で圧延され、プレストリップの上面と下面における冷却速度はプレストリップの残留凝固の偏心的な位置となるようにそれぞれ異なるように設定されることを特徴とする。
【0015】
本発明による水平方向に連続したストリップキャスティング法は、切断工具や切削工具を製造するためのストリップの作製には従来適用されておらず、切断工具が製造される鋼材ストリップのこれまで知られている製造方法と比べたとき、鋳造されるストリップの残留凝固の線がもはやストリップ平面の中心に位置するのではなく偏心的に位置し、それにより、切れ刃の領域が残留凝固の範囲外に位置することになり、それに伴って、公知の方法の中心に位置する凝固領域という上述した欠点を回避するという利点を有している。それによって切断工具の耐用寿命と刃先耐久性が明らかに改善される。
【0016】
それと同時に、水平方向のストリップキャスティングで実現可能なストリップの高い冷却速度は、たとえばカーバイドなどの析出物が非常に細かく均一に分布することをもたらし、このことは、切断工具や切削工具の刃先耐久性と長期耐久性に好ましく作用する。場合によっては、たとえばクロムのようなカーバイド形成剤の割合もそれによって減らすことができ、このことは製造コストも減少させる。
【0017】
より細かい組織および細かく分散した析出物の結果により、強度を大幅に向上させることができ、それにより、インゴットキャスティング法に比べてクロム、モリブデンなどの合金元素を節約することができ、連続鋳造の観点からは亀裂形成による不良リスクを明らかに低減することができる。
【0018】
プレストリップを熱間圧延するときの少なくとも50%の変形度は、できる限り細かい粒子の均一な組織を作製するために必要である。作製されるべきホットストリップの厚みや合金組成に応じて、変形度が70%を超えることもあり得る。
【0019】
したがって本発明による方法は、特にカーバイド形成をする合金元素(たとえばクロムおよびモリブデンならびにカーバイド形成をしない元素のケイ素が合計で1.5%を上回る)と0.80%を上回る炭素含有率との組合せにより、ブルームとして不具合なく連続鋳造することができない、切断工具のための硬化可能な鋼材タイプの製作にも特に適している。
【0020】
さらに本発明による方法では、プレストリップの残留凝固の平面の位置は、プレストリップの上面と下面とでそれぞれ異なる冷却条件によって制御可能であり、ストリップ面のうちの一方はたとえば水によって加速度的に冷却され、他方はたとえば静止した空気で冷却される。たとえばプレストリップの下面は、キャスターベルトとも呼ばれるコンベヤベルトの下面の集中的な水冷を通じて間接的に実現することができ、それに対してプレストリップの上面は空気で冷却される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の方法において、残留凝固の領域が「幾何学的な中心」から上方に向かって移り、ストリップ上面から約1/3のところに位置することを示した図である(左図)。連続鋳造設備を通る従来の製造ルートやインゴットキャスティングで発生する可能性がある粗いカーバイドや引け巣を示した図である(右図)。
図2】本発明の方法において、切れ刃が残留凝固の線の領域に位置することがないことを示した図である。
図3】本発明で使用されるプレストリップを製造する装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の方法によって製造されるホットストリップを、下に掲げる表1に示すさまざまな合金組成で実験した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1aは、1.25重量%のC含有率と0.35重量%のCr含有率とを有する鋼材125Cr1を示している。
【0025】
表1bでは、鋼材は特に1.50重量%という高いクロム含有率を有し、それに対して表1cの鋼材は2.70重量%という他の鋼材に比べて明らかに高いSi含有率を有している。
【0026】
いずれの合金バリエーションでも、非常に細かい粒子の均等な組織を生成することができ、ストリップ平面における残留凝固の位置は的確にストリップ中心部の範囲外に、すなわち後に切れ刃となる位置の範囲外に調整することができた。
【0027】
本発明による方法は、プレストリップの上面と下面についてそれぞれ異なる冷却戦略を適用するものであり、これらがそれぞれ別様に冷却される。1つの好ましい実施形態では、プレストリップの下面は水冷式のコンベヤベルト(キャスターベルトとも呼ばれる)によって加速度的に冷却され、それに対してストリップ上面は保護ガス雰囲気のもとでより遅い速度で冷却される。その結果として、残留凝固の領域が「幾何学的な中心」から上方に向かって移り、ストリップ上面から約1/3のところに位置する(図1、左図)。
【0028】
さらに別の利点は、連続鋳造設備を通る従来の製造ルートやインゴットキャスティングで発生する可能性がある粗いカーバイドや引け巣(図1、右図)を回避しながら細かい組織を生じさせる、本発明のニアネットシェイプ鋳造法における高い冷却速度からもたらされる。
【0029】
このように、引け巣、粗い析出物、たとえば粗いカーバイドなどを特に切れ刃の領域で回避するという鋼材消費者の要求を、本発明による水平方向のストリップキャスティングにより、ストリップの上面と下面でそれぞれ異なる冷却戦略が具体化されることによって、いっそう良好に満たすことができる。
【0030】
対称な刃では切れ刃をそのまま中央に製作することができ、ないしは、非対称の切れ刃では相応に向かい合う側で製作することができ、それによって切れ刃が残留凝固の線の領域に位置することがない(図2)。
【0031】
特に、鋳造されるストリップの偏心的な凝固は、同時に幾何学的なストリップ中心(コア)に関してカッターの切れ刃領域を中心に位置させながら、あらゆる欠点(粗いカーバイド、引け巣)をもたらす残留凝固の領域を回避することを可能にする。切れ刃領域が偏心的な位置にあるカッターでは、鋳造されたストリップの上面と下面の位置を的確に考慮して、残留凝固の領域の範囲外に切れ刃領域を位置させることができる。残留凝固のゾーンに対する切れ刃の位置は、仕上研削によっても変化することがない。切れ刃の加工性も同じく改善され、引け巣や粗い析出物によって切れ刃が破損する危険が回避される。
【0032】
特に粗いクロムカーバイドは、カッターが衝撃的な負荷を受けたときに刃の局所的な破壊を引き起こし、頻繁な再研削あるいは一式の取替を必要とするが、本発明の方法ではそれが回避される。
【0033】
産業用カッターのための用途の他、これに加えて、木材やプラスチックを切削するための鋸板としての利用も可能である。ストリップキャスティングを通じて可能になる高い炭素およびケイ素の質量割合は、場合により縁部領域で、鋸刃の場合における硬質金属切れ刃の使用の省略を可能にする。分析によると、基本素材が既に、硬質で耐摩耗性の層の適用を可能とするからである。特に細かく分散して分布するカーバイドを含む均一な組織は、少ない取替回数と結びついた大幅に長い耐用寿命を可能にする。
【0034】
図3には、偏心的な凝固が行われ、引き続いて要求されるストリップ厚みを製作するために熱間圧延プロセスが行われる、プレストリップを製造する装置が模式的に示されている。
【0035】
熱間圧延プロセスの前に、循環するコンベヤベルト2と、2つの方向転換ロール3,3’とで構成される水平方向のストリップキャスティング設備1による鋳造法が行われる。塗布された溶融液5がコンベヤベルト2から左右へ流れ落ちるのを防止する側方シール材4も示されている。溶融液5は取鍋6によってストリップキャスティング設備1へ運ばれ、取鍋の底面に設けられた開口部7を通って供給容器8へと流れる。この供給容器8はオーバーフロー容器のように構成されている。
【0036】
コンベヤベルト2の上側車間部の下面を集中的に冷却するための装置K、ならびに、相応の保護ガス雰囲気を含むストリップキャスティング設備1の全面的なハウジング11も同じく図示されている。
【0037】
循環運動をするコンベヤベルト2の上に溶融液5が送り込まれた後、集中的な冷却の結果としてプレストリップ9の凝固と形成がなされ、コンベヤベルト2の最後のところではほとんどの部分で完全に凝固する。冷却装置Kにより、本発明に基づき、プレストリップ9の上面と比較したときに、プレストリップ9の偏心的な凝固(冶金学的な中心)が実現されるように、的確に冷却に影響を及ぼすことができる。
【0038】
温度調整と応力除去をするため、ストリップキャスティング設備1に均一化ゾーン10が後続している。この均一化ゾーン10は断熱性のハウジング11と、ここには図示しないローラテーブルとで成り立っている。
【0039】
その次に後続する第1のフレーム12は、場合により小さなパスを有する純粋な駆動集成装置としてのみ構成されるか、または所定のパスを有する圧延集成装置として構成される。
【0040】
これに続いて中間加熱部が、好ましくは誘導加熱部として、たとえばコイル13の形態で構成されている。本来の熱間成形は後続のフレーム編成部14で行われ、最初の3つのフレーム15,15’,15’’が本来のパス圧下を惹起し、それに対して最後のフレーム16は平滑ローラ機構として構成されている。
【0041】
最後のパスの後には、完成したホットストリップが巻取温度まで冷却される冷却区間17が続いている。
【0042】
冷却区間17の端部と巻取機19,19’との間にはハサミ20が配置されている。このハサミ20には、両方の巻取機19,19’のうちの一方が最後まで巻き付けられるとただちに、ホットストリップ18を横方向に分割するという役割がある。そして後続するホットストリップ18の先頭部が、空いている第2の巻取機19,19’の上で案内される。それにより、ストリップの進行がストリップ長さ全体にわたって維持されたまま保たれることが保証される。このことは、特に薄いホットストリップを製作するときに意義がある。
【0043】
任意選択のホットストリップの焼なましや冷間圧延をするための設備部品は、図面には図示していない。
【符号の説明】
【0044】
1 ストリップキャスティング設備
2 コンベヤベルト
3,3’ 方向転換ロール
4 側方シール材
5 溶融液
6 取鍋
7 開口部
8 供給容器
9 プレストリップ
10 均一化ゾーン
11 ハウジング
12 第1のフレーム
13 誘導コイル
14 フレーム編成部
15,15’,15’’ 圧延フレーム
16 平滑化フレーム
17 冷却区間
18 完成したホットストリップ
19,19’ 巻取機
20 ハサミ
K 冷却装置
図1
図2
図3