特許第6430585号(P6430585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6430585マスクブランク、転写用マスクの製造方法及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430585
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスクの製造方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/58 20120101AFI20181119BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20181119BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20181119BHJP
【FI】
   G03F1/58
   G03F1/50
   G03F1/80
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-97967(P2017-97967)
(22)【出願日】2017年5月17日
(62)【分割の表示】特願2014-70685(P2014-70685)の分割
【原出願日】2014年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-161931(P2017-161931A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−191218(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/146421(WO,A1)
【文献】 特開昭56−085751(JP,A)
【文献】 特許第6150299(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
H01L 21/302、21/3065、21/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、光半透過膜、遮光膜及びハードマスク膜が順に積層された構造を有するマスクブランクであって、
前記光半透過膜は、少なくともケイ素を含有しており、
前記ハードマスク膜は、少なくともケイ素とタンタルのいずれか一方または両方を含有しており、
前記遮光膜は、下層、中間層及び上層の積層構造からなり
前記下層および中間層は、実質的にクロムと酸素と窒素と炭素とからなり、
前記上層は、実質的にクロムと窒素とからなり、
前記遮光膜のクロムの含有量は、前記上層が最も多く、前記下層が次に多く、
前記上層のクロムの含有量は、60原子%以上であり、
前記下層の酸素の含有量は、前記中間層の酸素の含有量よりも少ない
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記ハードマスク膜は、前記上層の表面に接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記上層は、厚さが3nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記中間層は、前記遮光膜の総膜厚に対して、30%〜70%の膜厚を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記中間層は、前記遮光膜の総膜厚に対して、50%〜60%の膜厚を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記光半透過膜と前記遮光膜の積層構造におけるArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が0.2%以下であり、かつ、800〜900nmの波長領域の少なくとも一部の波長における光の透過率が50%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記ハードマスク膜は、酸素を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記光半透過膜は、ケイ素と窒素を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記ハードマスク膜上に形成された光半透過膜のパターンを有するレジスト膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、
前記光半透過膜のパターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、
前記光半透過膜のパターンが形成された遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記光半透過膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、
前記遮光膜上に形成された遮光パターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に遮光パターンを形成する工程と、
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、リソグラフィー法により前記転写用マスクの転写パターンを半導体基板上にパターン転写する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造に用いられる転写用マスクの製造方法、該転写用マスクの製造に用いられるマスクブランクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスク(通常、フォトマスクとも呼ばれている)が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる遮光性の微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
この転写用マスクは同じ微細パターンを大量に転写するための原版となるため、転写用マスク上に形成されたパターンの寸法精度は、作製される微細パターンの寸法精度に直接影響する。半導体回路の集積度が向上するにつれ、パターンの寸法は小さくなり、転写用マスクの精度もより高いものが要求されている。
【0004】
従来より、このような転写用マスクとしては、ガラス基板等の透光性基板上に、遮光膜からなる転写パターンが形成されたバイナリマスクや、位相シフト膜、あるいは位相シフト膜及び遮光膜からなる転写パターンが形成された位相シフト型マスクなどがよく知られている。また、転写パターン形成領域の周辺部に遮光帯が形成されているハーフトーン型位相シフトマスクも知られている。
【0005】
たとえば下記特許文献1には、 ハーフトーン型転写用マスク製造用のマスクブランクとして、基板側から金属シリサイド系の転写用マスク膜(光半透過膜)、クロム系化合物からなる遮光膜及びケイ素化合物からなるハードマスク膜の薄膜構成を有するマスクブランクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/090635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているようなマスクブランクをパターニングする場合、まず、マスクブランクの表面に形成した所定のレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガスによるドライエッチングにより、ケイ素化合物からなるハードマスク膜をパターニングする。次に、パターニングされたハードマスク膜をマスクとして、塩素と酸素の混合ガスによるドライエッチングにより、クロム系化合物からなる遮光膜をパターニングする。続いて、パターニングされた遮光膜をマスクとして、フッ素系ガスによるドライエッチングにより、金属シリサイド系の転写用マスク膜(光半透過膜)をパターニングする。
【0008】
ところで、上記のクロム系遮光膜は、組成に含まれるクロム元素の割合が多ければ、消衰係数が高くなるので膜厚を薄くしても高い光学濃度が得られる点で有利であるが、クロム元素の割合が高いほどエッチングレートが遅くなりパターニングに時間を要するので、遮光膜のパターニングが完了する前に上層のハードマスク膜のパターンが消失してしまうおそれがある。
【0009】
一方、組成に含まれるクロム元素の割合が少なければ、エッチングレートは速くなるが、消衰係数が低くなるので所定の光学濃度を得るためには膜厚を厚くする必要がある。また、クロム系遮光膜のドライエッチングに用いる塩素と酸素の混合ガスは等方性エッチングの性質を有するため、クロム成分が少なくエッチングレートが速くて膜厚が厚ければパターンの側壁もエッチングガスによって侵食されてしまい、パターンの断面がえぐれた形状になるという問題もある。例えば寸法が80nm以上のパターンであれば、遮光膜のエッチングによって遮光膜パターンの断面がえぐれた形状になったとしても、形成された遮光膜パターンの高さに対して遮光膜パターンとその直下の転写用マスク膜(光半透過膜)との接触面積が稼げるので遮光膜パターンが倒れてしまう危険性はほとんどないが、寸法が50nm以下のSRAF(Sub Resolution Assist Features)パターンの場合に、上記と同程度のえぐれ現象が生じると、遮光膜パターンの高さに対して遮光膜パターンと転写用マスク膜(光半透過膜)との接触面積が狭くなりすぎてしまい、遮光膜パターンが倒れてしまうことがある。遮光膜パターンの倒れが生じると、該遮光膜パターンをマスクとした転写用マスク膜(光半透過膜)のパターニングが困難になる。
【0010】
また、遮光膜パターンの断面のえぐれの程度が大きいと、上層のハードマスク膜パターンよりも遮光膜パターンの寸法が細くなり、たとえ遮光膜パターンの倒れが生じないとしても、この遮光膜パターンをマスクとしてパターニングして形成される転写用マスク膜のパターン精度が劣化する。
以上のように、従来構成のマスクブランクを用いて、例えばSRAFパターンのような微細なパターンを転写用マスク膜に形成しようとする場合、高いパターン精度を得ることが困難である。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第1に、SRAFパターンのような微細な転写パターンであっても高精度で形成することができるマスクブランクを提供することであり、第2に、このようなマスクブランクを用いて、微細パターンが高精度で形成された転写用マスクの製造方法を提供することであり、第3に、かかる転写用マスクを用いて、パターン精度の優れた高品質の半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、透光性基板上に、光半透過膜、遮光膜及びハードマスク膜が順に積層された構造を有するマスクブランクにおいて、上記遮光膜を所定の積層構造とし、遮光膜の各層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートに着目して鋭意検討した結果、得られた知見に基づき本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
(構成1)
透光性基板上に、光半透過膜、遮光膜及びハードマスク膜が順に積層された構造を有するマスクブランクであって、前記光半透過膜は、少なくともケイ素を含有しており、前記ハードマスク膜は、少なくともケイ素とタンタルのいずれか一方または両方を含有しており、前記遮光膜は、下層、中間層及び上層の積層構造であって、クロムを含有しており、前記遮光膜における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、前記上層が最も遅く、次いで前記下層が遅い、ことを特徴とするマスクブランク。
構成1によれば、ハードマスク膜の直下にあるクロムを含有する遮光膜の上層は、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートが遮光膜の中で最も遅いため、エッチング中のサイドエッチが生じにくい(パターンの側壁が侵食されにくい)。遮光膜の上層のサイドエッチが生じにくいことで、遮光膜の上層には、直上のハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写される。ハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写された上層を遮光膜が有することで、遮光膜のパターンをマスクとしてパターニングされるケイ素含有の光半透過膜にも、ハードマスク膜のパターンをほぼ正確に形成することができる。
【0014】
また、構成1では、遮光膜の中間層のエッチングレートが最も速い膜設計となるため、遮光膜全体としてのエッチングレートを速くすることができる。
また、上層に次いでエッチングレートの遅い下層は、中間層よりもエッチングレートが遅いため、中間層よりもサイドエッチが生じにくい(パターンの側壁が侵食されにくい)。このため、下層のエッチング過程ではサイドエッチによる側壁の過度な侵食が抑制されるため、遮光膜パターンと光半透過膜との接触面積を遮光膜の下層で確保することができる。その結果、たとえば寸法が50nm以下のパターンを形成する場合も、遮光膜パターンが倒れてしまうことはない。
以上のように、構成1によれば、SRAFパターンのような微細な転写パターンであっても、本発明のマスクブランクの転写用マスク膜となる光半透過膜に高精度で形成することができ、結果、パターン精度に優れた転写用マスクを製造することができる。
【0015】
(構成2)
前記遮光膜において、クロムの含有量は、前記上層が最も多く、前記下層が次に多い、ことを特徴とする構成1に記載のマスクブランク。
構成2のように、遮光膜の上層部分にクロムの含有量が最も多い領域を有することで、上層が、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートが遮光膜の中で最も遅くなり、上記のとおり、遮光膜の上層には、直上のハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写されるため、最終的にはパターン形状に優れた転写用マスクを製造することができる。また、下層は、上層に次いでクロムの含有量が多いため、遮光膜とは異なる膜質の光半透過膜との密着性も良くなるので、遮光膜パターンの倒れをより効果的に抑制することができる。なお、中間層は、クロムの含有量が最も少ないため、エッチング時にパターンの側壁部分の侵食はあるものの、このような中間層を有することで遮光膜全体としてのエッチングレートを速めることができる。
【0016】
(構成3)
前記遮光膜にはさらに酸素が含まれており、酸素の含有量は、前記中間層よりも前記下層のほうが少ないことを特徴とする構成1又は2に記載のマスクブランク。
構成3のように、遮光膜中の酸素の含有量は、中間層よりも下層のほうが少ないことにより、中間層の酸素含有量が最も多くなるため、中間層のエッチングレートがより速くなる。このため、遮光膜全体のエッチングレートを速く保つことができる。また、下層に含まれる酸素含有量が中間層よりも少ないことで、中間層から下層にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが遅くなるが、下層におけるパターンのサイドエッチの進行も遅くなるため、下層でパターンの幅方向の寸法が保たれ、結果、遮光膜のパターンと光半透過膜との接触面積を保つことができる。さらに、下層の酸素含有量が相対的に少ないことによって遮光膜パターンと光半透過膜との密着性をより高める効果も得られる。
【0017】
(構成4)
前記上層は、クロムの含有量が60原子%以上であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク。
構成4のように、遮光膜の上層のクロム含有量が60原子%以上であることにより、上層によって遮光膜全体の光学濃度を高められるとともに、上層におけるドライエッチングのエッチングレートが遅くなり、上層部分でのサイドエッチが抑制されるので、直上のハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写され、最終的にはパターン形状に優れた転写用マスクを製造することができる。
【0018】
(構成5)
前記上層は、厚さが3nm以上8nm以下であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載のマスクブランク。
構成5のように、遮光膜の上層の厚さを3nm以上8nm以下の範囲とすることにより、上層のエッチング時間を好適に抑制しつつ、上層でのパターニング精度を良好に維持することができる。
【0019】
(構成6)
前記中間層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、前記上層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートの3倍以上であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載のマスクブランク。
構成6にあるように、中間層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートが、上層におけるエッチングレートの3倍以上であることにより、上層から中間層にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが速まり、上層でのサイドエッチの進行を抑制しつつ中間層の深さ方向のエッチングを完結することができる。
【0020】
(構成7)
前記中間層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、前記下層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートの2倍以下であることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のマスクブランク。
構成1のように中間層から下層にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが遅くなるが、構成7にあるように、中間層におけるエッチングレートが下層におけるエッチングレートの2倍以下であることにより、下層のエッチング時に、中間層のサイドエッチがより進行する前に下層のエッチング及び必要なオーバーエッチングが完了するため、とくにパターン側壁の中間層と下層との界面での段差形成を抑制することができる。
【0021】
(構成8)
前記ハードマスク膜は、さらに酸素を含有することを特徴とする構成1乃至7のいずれかに記載のマスクブランク。
ハードマスク膜は、直下の遮光膜とエッチング選択性の高い素材であることが必要であるが、構成8にあるように、ハードマスク膜にケイ素やタンタルの酸化物等を含有する素材を選択することにより、クロム系の素材からなる遮光膜との高いエッチング選択性を確保することができ、レジストの薄膜化のみならずハードマスク膜の膜厚も薄くすることが可能である。したがって、マスクブランク表面に形成されたレジストパターンの転写精度が向上する。
【0022】
(構成9)
前記光半透過膜は、ケイ素と窒素を含有することを特徴とする構成1乃至8のいずれかに記載のマスクブランク。
構成9にあるように、光半透過膜にケイ素と窒素を含有する素材を適用することで、クロム系の遮光膜とのエッチング選択性を確保することができる。また、ケイ素と窒素を含有する素材であれば、エッチングガスとして異方性のフッ素系ガスを使用したパターニングを適用することができる。したがって、ハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写された遮光膜パターンをマスクとすることによって光半透過膜にもパターン精度に優れたパターンを形成することができる。
【0023】
(構成10)
前記光半透過膜と前記遮光膜の積層構造におけるArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が0.2%以下であり、かつ、800〜900nmの波長領域の少なくとも一部の波長における光の透過率が50%以下であることを特徴とする構成1乃至9のいずれかに記載のマスクブランク。
波長800〜900nmの近赤外領域の光はレジストを感光しないため、露光機にマスクブランクを配置する場合の位置決めに使用される光である。構成10にあるように、光半透過膜と遮光膜の積層構造におけるArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が0.2%以下であり、かつ、800〜900nmの波長領域の少なくとも一部の波長における光の透過率が50%以下であることによって、露光光のArFエキシマレーザーに対する良好な遮光性を備え、かつ、露光機へのマスクブランクの配置が容易になるため好ましい。
【0024】
(構成11)
前記ハードマスク膜および光半透過膜は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングされることを特徴とする構成1乃至10のいずれかに記載のマスクブランク。
構成11によれば、ハードマスク膜および光半透過膜は、異方性のフッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングされるので、遮光膜の上層に直上のハードマスク膜のパターン形状がほぼ正確に転写されることと相俟って、該遮光膜をマスクとするパターニングにより光半透過膜にパターン形状精度に優れた転写パターンを形成することができる。
【0025】
(構成12)
構成1乃至11のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、前記ハードマスク膜上に形成された光半透過膜のパターンを有するレジスト膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記ハードマスク膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、前記光半透過膜のパターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、前記光半透過膜のパターンが形成された遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、前記光半透過膜に光半透過膜のパターンを形成する工程と、前記遮光膜上に形成された遮光パターンを有するレジスト膜をマスクとし、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、前記遮光膜に遮光パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
構成12にあるように、本発明に係るマスクブランクを用いて上記製造工程により転写用マスクを製造することによって、SRAFパターンのような微細パターンが高精度で形成された転写用マスクを得ることができる。
【0026】
(構成13)
構成11に記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、リソグラフィー法により前記転写用マスクの転写パターンを半導体基板上にパターン転写する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
構成13にあるように、上記の微細パターンが高精度で形成された転写用マスクを用いて、パターン精度の優れた高品質の半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のマスクブランクによれば、SRAFパターンのような微細な転写パターンであっても高精度で形成することができる。すなわち、本発明のマスクブランクによれば、遮光膜の上層のエッチングレートが最も遅く上層パターンのサイドエッチが少ないため、レジスト膜ないしはハードマスク膜に形成された転写パターン形状がほぼ正確に転写された遮光膜パターンを形成することができるので、該遮光膜パターンをマスクとして、光半透過膜に形成するパターン精度を高くすることができる。また、遮光膜の下層のエッチングレートが上層に次いで遅く、中間層と比較しても遅く、下層パターンのサイドエッチを少なくできるので、遮光膜パターンと光半透過膜との十分な接触面積を確保でき、良好な密着性を得ることができる。したがってSRAFパターンのような微細なパターンを形成しても、遮光膜パターンが倒れないので、光半透過膜のパターンも高精度で形成することができる。
また、このような本発明のマスクブランクを用いることにより、微細パターンが高精度で形成された転写用マスクを製造することができる。
さらに、かかる転写用マスクを用いて、パターン精度の優れた高品質の半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るマスクブランクの一実施の形態の断面概略図である。
図2】(a)〜(e)は本発明に係るマスクブランクを用いた転写用マスクの製造工程を示すマスクブランク等の断面概略図である。
図3】本発明の実施例における遮光膜パターンの断面形状を示す断面図である。
図4】本発明の比較例における遮光膜パターンの断面形状を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳述する。
前述のように、本発明者は、透光性基板上に、光半透過膜、遮光膜及びハードマスク膜が順に積層された構造を有するマスクブランクにおいて、上記遮光膜を所定の積層構造とし、遮光膜の各層における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートに着目して鋭意検討した結果、以下の構成を有する本発明によって前記の課題を解決できることを見出したものである。
【0030】
すなわち、本発明は、上記構成1にあるとおり、透光性基板上に、光半透過膜、遮光膜及びハードマスク膜が順に積層された構造を有するマスクブランクであって、前記光半透過膜は、少なくともケイ素を含有しており、前記ハードマスク膜は、少なくともケイ素とタンタルのいずれか一方または両方を含有しており、前記遮光膜は、下層、中間層及び上層の積層構造であって、クロムを含有しており、前記遮光膜における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、前記上層が最も遅く、次いで前記下層が遅い、ことを特徴とするマスクブランクである。
【0031】
図1は、本発明に係るマスクブランクの一実施の形態を示す断面概略図である。
図1にあるとおり、本発明に係るマスクブランクの一実施の形態10は、透光性基板1上に、光半透過膜2、遮光膜3、及びハードマスク膜4が順に積層された構造を有する。また、上記遮光膜3は、下層31、中間層32、及び上層33の積層構造である。
【0032】
上記マスクブランク10において、上記光半透過膜2は少なくともケイ素を含有しており、上記ハードマスク膜4は少なくともケイ素とタンタルのいずれか一方または両方を含有しており、また上記積層構造の遮光膜3はクロムを含有している。なお、詳しくは後述するが、上記光半透過膜2は、ケイ素と窒素を含有する素材を適用することが特に好ましく、上記ハードマスク膜4は、ケイ素やタンタルのほかに酸素を含有する素材を適用することが特に好ましい。
【0033】
ここで、上記マスクブランク10における透光性基板1としては、半導体装置製造用の転写用マスクに用いられる基板であれば特に限定されない。位相シフト型マスク用のブランクに使用する場合、使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されず、合成石英基板や、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)が用いられる。この中でも合成石英基板は、微細パターン形成に有効なArFエキシマレーザー(波長193nm)又はそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、特に好ましく用いられる。
【0034】
上記ハードマスク膜4は、ケイ素(Si)を含有する材料やタンタル(Ta)を含有する材料を用いることができる。ハードマスク膜4に好適なケイ素(Si)を含有する材料としては、ケイ素(Si)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)および水素(H)から選らばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。また、このほかのハードマスク膜4に好適なケイ素(Si)を含有する材料としては、ケイ素(Si)および遷移金属に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)および水素(H)から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。また、この遷移金属としては、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)が挙げられる。
【0035】
一方、ハードマスク膜4に好適なタンタル(Ta)を含有する材料としては、タンタル(Ta)に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、ホウ素(B)および水素(H)から選らばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。これらの中でも、タンタル(Ta)に、酸素(O)を含有する材料が特に好ましい。このような材料の具体例としては、酸化タンタル(TaO)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化酸化タンタル(TaBO)、ホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)等が挙げられる。
【0036】
また、ハードマスク膜4は、ケイ素(Si)やタンタル(Ta)の他に、酸素(O)を含有する材料で形成されていることが好ましい。このようなハードマスク膜4は、クロム(Cr)を含有する材料で形成された遮光膜3との間で十分なエッチング選択性を有しており、遮光膜3にほとんどダメージを与えずにハードマスク膜4をエッチング除去することが可能である。
【0037】
このようなハードマスク膜4を構成する材料の具体例としては、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化タンタル(TaO)、酸化窒化タンタル(TaON)、ホウ化酸化タンタル(TaBO)及びホウ化酸化窒化タンタル(TaBON)が挙げられる。
なお、ケイ素と酸素を含有する材料で形成されたハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。
【0038】
上記ハードマスク膜4の膜厚は特に制約される必要はないが、少なくとも直下の遮光膜3のエッチングが完了する前に消失しない程度の膜厚が必要である。一方、ハードマスク膜4の膜厚が厚いと、直上のレジストパターンを薄膜化することが困難である。このような観点から、本実施の形態においては、上記ハードマスク膜4の膜厚は、1.5nm以上20nm以下の範囲であることが好ましく、特に2.5nm以上6nm以下であることが好適である。
【0039】
上記光半透過膜2は、少なくともケイ素を含有する材料で形成されるが、本発明に適用可能な上記光半透過膜2の構成は特に限定される必要はなく、例えば従来から使用されている位相シフト型マスクにおける光半透過膜の構成を適用することができる。
このような光半透過膜2の例としては、例えば遷移金属及びケイ素からなる金属シリサイド、あるいは遷移金属とケイ素に、酸素、窒素及び炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料からなる金属シリサイド系の光半透過膜、ケイ素に酸素、窒素、炭素、ホウ素等を含有させた材料からなるケイ素系の光半透過膜が好ましく挙げられる。上記金属シリサイド系の光半透過膜に含まれる遷移金属としては、例えばモリブデン、タンタル、タングステン、チタン、クロム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム等が挙げられる。この中でも特にモリブデンが好適である。
【0040】
上記遷移金属とケイ素を含有する材料としては、具体的には、遷移金属シリサイド、または遷移金属シリサイドの窒化物、酸化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、あるいは炭酸窒化物を含む材料が好適である。また、上記ケイ素を含有する材料としては、具体的には、ケイ素の窒化物、酸化物、炭化物、酸窒化物(酸化窒化物)、炭酸化物(炭化酸化物)、あるいは炭酸窒化物(炭化酸化窒化物)を含む材料が好適である。
【0041】
また、本発明においては、上記光半透過膜2が、単層構造、あるいは、低透過率層と高透過率層とからなる積層構造のいずれにも適用することができる。
上記光半透過膜2の好ましい膜厚は、材質によっても異なるが、特に位相シフト機能、光透過率の観点から適宜調整されることが望ましい。通常は、100nm以下、さらに好ましくは80nm以下の範囲であることが好適である。
【0042】
また、上記積層構造の遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成される。
上記クロムを含有する材料としては、例えばCr単体、あるいはCrX(ここでXはN、C、O等から選ばれる少なくとも一種)などのCr化合物(例えばCrN,CrC,CrO,CrON,CrCN,CrOC,CrOCNなど)が挙げられる。
【0043】
図1に示すマスクブランク10のような透光性基板1上に光半透過膜2、遮光膜3、及びハードマスク膜4が順に積層された積層膜からなる薄膜を形成する方法は特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。
【0044】
本実施の形態に係るマスクブランク10においては、上述の構成1にあるとおり、遮光膜3は、下層31、中間層32及び上層33の積層構造であって、クロムを含有しており、この遮光膜3における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、上層33が最も遅く、次いで下層31が遅い、ことを特徴としている。
【0045】
上記のように、ハードマスク膜4の直下にあるクロムを含有する遮光膜3の上層33は、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレート(以下、説明の便宜上、単に「エッチングレート」と説明することもあるが、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートを意味するものとする。)が遮光膜3の中で最も遅いため、エッチング中のサイドエッチが生じにくい(換言すれば、パターンの側壁が侵食されにくい)。遮光膜3の上層33部分でのサイドエッチが生じにくいことで、遮光膜3の上層33には、直上のハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写される。マスクブランク10の表面に形成するレジスト膜を薄膜化することで、ハードマスク膜4には、最終的に光半透過膜2に形成されるべき転写パターンを有するレジストパターンが正確に転写されるので、ハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写され、レジスト膜に形成されたパターン形状(たとえばパターン寸法)との差異が極めて少ない上層33を遮光膜3が有することで、該遮光膜3のパターンをマスクとして異方性エッチングによりパターニングされるケイ素含有の光半透過膜2にも、ハードマスク膜4のパターンをほぼ正確に形成することができる。要するに、光半透過膜2のパターンをレジストパターンないしはハードマスク膜パターンと寸法の乖離することなく形成することができるので、光半透過膜2に形成するパターン精度を高くすることができる。
【0046】
また、遮光膜3の中間層32のエッチングレートが最も速い膜設計となるため、遮光膜3全体としてのエッチングレートを速くすることができる。なお、中間層32は、遮光膜3の総膜厚に対して、30%〜70%の膜厚であることが好ましく、50%〜60%の膜厚がより好ましい。中間層32の膜厚が薄すぎると、遮光膜3全体のエッチングレートを速める効果が少なくなり、膜厚が厚すぎると、中間層32でのサイドエッチが深くなりすぎてしまい下層31でのパターン形状の回復が不十分になる恐れがある。
【0047】
また、上層33に次いでエッチングレートの遅い下層31は、中間層32よりもエッチングレートが遅いため、中間層32よりもサイドエッチが生じにくい(パターンの側壁が侵食されにくい)。このため、下層31のエッチング過程ではサイドエッチによる側壁の過度な侵食が抑制されるため、上層33のパターン形状が回復でき、しかも遮光膜3のパターンと光半透過膜2との接触面積を遮光膜3の下層31で確保することができる。その結果、たとえば寸法が50nm以下のパターンを形成する場合も、遮光膜パターンが倒れてしまうことはない。
【0048】
以上のように、本実施形態のマスクブランク10において、上記遮光膜3は、ハードマスク膜4のパターンを出来るだけ忠実に光半透過膜2に転写する目的で設けられている。上記マスクブランク10を用いて製造される転写用マスク、すなわち位相シフト型マスクにおいては、最終的な転写パターンは光半透過膜2に形成されたパターンであり、上記遮光膜3に形成されるパターンは転写パターンとはならないため遮光膜パターンの断面形状自体は然程重要ではない。遮光膜3のパターンの断面形状において、上記中間層32部分において多少サイドエッチによる側壁の侵食があっても、上述したように本発明の上記積層構造の遮光膜3は、ハードマスク膜4のパターンを出来るだけ忠実に光半透過膜2に転写することができるので、遮光膜3の断面形状の問題はない。
【0049】
本実施の形態によれば、SRAFパターンのような微細な転写パターンであっても、転写用マスク膜となる光半透過膜に高い精度で形成することができ、結果、パターン精度に優れた転写用マスクを製造することができる。
なお、遮光膜3の各層のエッチングレートの調整方法は特に限定されないが、遮光膜3を構成する各層の組成をそれぞれ異ならせることによって行うことが本発明には好適である。基本的には、各層のクロム含有量を調整することで可能であるが、例えば、各層で、クロムの酸化度や窒化度等を調整したり、各層の組成におけるクロム以外の構成を異ならせたりすることで調整することができる。また、エッチングレートを速めることができる元素(たとえばインジウムやモリブデン)の添加量を調整することによって各層のエッチングレートを調整するようにしてもよい。
【0050】
上記遮光膜3において、クロムの含有量は、上層33が最も多く、下層31が次に多いことが好適である(構成2の発明)。
遮光膜3の上層33部分にクロムの含有量が最も多い領域を有することで、上層33が、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートが遮光膜3の中で最も遅くなる。そのため、上層33でのサイドエッチが少なく、遮光膜3の上層33には、直上のハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写されるため、最終的にはパターン形状に優れた転写用マスクを製造することができる。また、クロム含有量の最も多い上層33は、消衰係数が高いため遮光膜3全体の光学濃度を高める効果も有する。
【0051】
また、下層31は、上層33に次いでクロムの含有量が多いため、遮光膜3とは異なる膜質の光半透過膜2との密着性も良くなるので、遮光膜パターンの倒れをより効果的に抑制することができる。つまり、下層31は、クロムの含有量が比較的多いことからクロムの結合サイトに空き(正孔)が相対的に多くなるため、異なる膜質の光半透過膜2との密着性も良くなるので、遮光膜パターンの倒れをより効果的に抑制することができる。特に、アニール処理を施した金属ケイ素系の光半透過膜である場合には、光半透過膜の表面が酸素リッチな状態になるため、遮光膜3と光半透過膜2の界面で、上述のクロムの空きサイトと光半透過膜の酸素が化学的結合を持って接合するため密着性が高くなる。
なお、中間層32は、遮光膜3中でクロムの含有量が最も少ない膜構成となるため、エッチング時にパターンの側壁部分の侵食はあるものの、このような中間層32を有することで遮光膜3全体としてのエッチングレートを速めることができる。
【0052】
上記遮光膜3において、上層33は、クロムの含有量が60原子%以上であることが好ましい(構成4の発明)。
遮光膜3の上層33のクロム含有量が60原子%以上であることにより、上層33によって遮光膜3全体の光学濃度を高められるとともに、上層33におけるエッチングレートが遅くなり、上層部分でのサイドエッチが抑制されるので、直上のハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写され、最終的にはパターン形状に優れた転写用マスクを製造することができる。
【0053】
また、上記遮光膜3にはさらに酸素を含有する場合、酸素の含有量は、中間層32よりも下層31のほうが少ないことが好ましい(構成3の発明)。
遮光膜3中の酸素の含有量が、中間層32よりも下層31のほうが少ないことにより、中間層32の酸素含有量が最も多くなるため、中間層32のエッチングレートがより速くなる。このため、遮光膜3全体のエッチングレートを速く保つことができる。また、下層31に含まれる酸素含有量が中間層32よりも少ないことで、中間層32から下層31にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが遅くなるが、下層31におけるパターンのサイドエッチの進行も遅くなるため、下層31で上層33のパターン形状が回復し、パターンの幅方向の寸法が保たれ、結果、遮光膜3のパターンと光半透過膜2との接触面積を保つことができる。さらに、下層31の酸素含有量が相対的に少ないことによって光半透過膜2の酸素とのやりとりが生じ、化学的結合を持って接合するため、遮光膜3のパターンと光半透過膜2との密着性をより高める効果も得られる。
【0054】
また、上記遮光膜3において、上層33は、厚さが3nm以上8nm以下であることが好適である(構成5の発明)。
上層33の厚さが3nmを下回ると、ドライエッチング時の上層33のパターン側壁の侵食のリスクが高くなる、また、上層33の厚さが8nmを超えると、上層33のエッチング時間が長くなる恐れが生じる。したがって、遮光膜3の上層33の厚さを、上記の3nm以上8nm以下の範囲とすることにより、上層33のエッチング時間を好適に抑制しつつ、上層33でのパターニング精度を良好に維持することができる。
【0055】
また、本発明においては、上記のとおり、遮光膜3における塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングのエッチングレートは、上層33が最も遅く、次いで下層31が遅いことが特徴となっており、よって中間層32が最もエッチングレートが速い構成となっている。そして、この場合、上記遮光膜3の中間層32におけるエッチングレートは、上層33における上記エッチングレートの3倍以上であることが好適である(構成6の発明)。
このように、中間層32におけるエッチングレートが、上層33におけるエッチングレートの3倍以上であることにより、上層33から中間層32にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが速まり、上層33でのサイドエッチの進行を抑制しつつ中間層32の深さ方向のエッチングを完結することができるので好ましい。
【0056】
また、上記の場合、中間層32におけるエッチングレートは、下層31におけるエッチングレートの2倍以下であることが好適である(構成7の発明)。
中間層32から下層31にエッチングが移行するときに深さ方向のエッチングレートが遅くなるが、このとき中間層32におけるエッチングレートが下層31におけるエッチングレートの2倍以下であることにより、下層31のエッチング時に、中間層32のサイドエッチがより進行する前に下層31のエッチング及び必要なオーバーエッチングが完了するため、とくにパターン側壁の中間層32と下層31との界面での段差形成を抑制することができる。
【0057】
また、本発明において、上記ハードマスク膜4は、少なくともケイ素とタンタルのいずれか一方または両方を含有しているが、特にケイ素やタンタルに加えて酸素を含有する材料で形成されることが好ましい(構成8の発明)。
上記ハードマスク膜4は、直下の遮光膜3とエッチング選択性の高い素材であることが必要であるが、とくにハードマスク膜4にケイ素と酸素を含有する素材やタンタルと酸素を含有する素材を選択することにより、クロム系の素材からなる遮光膜3との高いエッチング選択性を確保することができるため、レジスト膜の薄膜化のみならずハードマスク膜4の膜厚も薄くすることが可能である。したがって、マスクブランク表面に形成された転写パターンを有するレジストパターンのハードマスク膜4への転写精度が向上する。
【0058】
また、本発明において、上記光半透過膜2は、少なくともケイ素を含有しているが、特にケイ素と窒素を含有する材料で形成されることが好ましい(構成9の発明)。
上記光半透過膜2にケイ素と窒素を含有する素材を適用することで、クロム系の遮光膜3とのエッチング選択性を確保することができる。また、ケイ素と窒素を含有する素材であれば、エッチングガスとして異方性のフッ素系ガスを使用したパターニングを適用することができる。したがって、ハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写された遮光膜3のパターンをマスクとする異方性エッチングによって光半透過膜2にもパターン精度に優れた転写パターンを形成することができる。
【0059】
また、本実施形態のマスクブランク10は、上記光半透過膜2と上記遮光膜3の積層構造におけるArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が0.2%以下であり、かつ、800〜900nmの波長領域の少なくとも一部の波長における光の透過率が50%以下であることが好ましい(構成10の発明)。
波長800〜900nmの近赤外領域の光はレジストを感光しないため、露光機にマスクブランクを配置する場合の位置決めに使用される光である。本構成のように、光半透過膜2と遮光膜3の積層構造におけるArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が0.2%以下であり、かつ、800〜900nmの波長領域の少なくとも一部の波長における光の透過率が50%以下であることによって、たとえば遮光帯に要求される露光光のArFエキシマレーザーに対する良好な遮光性を備え、かつ、露光機へのマスクブランクの配置が容易になるため好ましい。
【0060】
また、本実施形態のマスクブランク10においては、上記ハードマスク膜4および光半透過膜2は、いずれもフッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングすることができるので、遮光膜3の上層33に直上のハードマスク膜4のパターン形状がほぼ正確に転写されることと相俟って、該遮光膜3をマスクとする異方性エッチングによるパターニングによって光半透過膜2にパターン形状精度に優れた転写パターンを形成することができる。
【0061】
本発明は、上記の本発明に係るマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法についても提供するものである。
図2は、本発明の実施形態に係るマスクブランク10を用いた転写用マスクの製造工程を示すマスクブランク等の断面概略図である。なお、図2は製造工程の理解を容易にするためのものであり、図2に示すパターンの断面形状は実際に形成される断面形状を正確に現したものではない。
【0062】
まず、マスクブランク10の表面に所定のレジストパターン5を形成する(図2(a)参照)。このレジストパターン5は最終的な転写パターンとなる光半透過膜2に形成されるべき所望のパターンを有する。
次に、マスクブランク10のハードマスク膜4上に形成された上記の光半透過膜のパターンを有するレジストパターン5をマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、ハードマスク膜4に光半透過膜のパターンに対応するハードマスク膜パターン4aを形成する(図2(b)参照)。
【0063】
次に、上記のように形成されたハードマスク膜パターン4aをマスクとして、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、積層構造の遮光膜3に光半透過膜のパターンに対応する遮光膜パターン3aを形成する(図2(c)参照)。
次に、上記のように形成された遮光膜パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、光半透過膜2に光半透過膜パターン2aを形成する(図2(d)参照)。なお、この光半透過膜2のエッチング工程において、表面に露出しているハードマスク膜パターン4aは除去される。
【0064】
次いで、上記遮光膜パターン3a上の全面にレジスト膜を塗布し、所定の露光、現像処理によって遮光膜に形成する遮光パターン(例えば遮光帯パターン)に対応するレジストパターン(図示せず)を形成する。そして、該レジストパターンをマスクとして、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングにより、光半透過膜パターン2a上に所定の遮光パターン3bを形成する。最後に残存するレジストパターンを除去することにより、転写用マスク(たとえばハーフトーン型位相シフトマスク)20が出来上がる(図2(e)参照)。
【0065】
上述の説明からも明らかなように、本発明の実施形態に係るマスクブランク10を用いて上記製造工程にしたがって転写用マスクを製造することにより、SRAFパターンのような微細パターンであっても高いパターン精度で形成された転写用マスクを得ることができる。すなわち、本発明の実施形態に係るマスクブランク10によれば、遮光膜3の上層33のエッチングレートが最も遅く上層パターンのサイドエッチが少ないため、レジスト膜ないしはハードマスク膜4に形成された転写パターン形状がほぼ正確に転写された遮光膜3のパターンを形成することができるので、該遮光膜パターンをマスクとして、光半透過膜2に形成するパターン精度を高くすることができる。また、遮光膜3の下層31のエッチングレートが上層33に次いで遅く、中間層32と比較しても遅く、下層パターンのサイドエッチを少なくできるので、遮光膜パターンと光半透過膜2との十分な接触面積を確保でき、良好な密着性を得ることができる。したがってSRAFパターンのような微細なパターンを形成しても、遮光膜パターンが倒れないので、光半透過膜2のパターンも高いパターン精度で形成することができる。
【0066】
また、上述の本発明に係る転写用マスクの製造方法により製造された、上記の微細パターンが高いパターン精度で形成された転写用マスクを用いて、リソグラフィー法により当該転写用マスクの転写パターンを半導体基板上にパターン転写する工程を含む半導体装置の製造方法によれば、パターン精度の優れた高品質の半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
本実施例は、波長193nmのArFエキシマレーザーを露光光として用いるハーフトーン型位相シフトマスクの製造に使用するマスクブランクに関する。
本実施例に使用するマスクブランクは、図1に示すような、透光性基板(ガラス基板)1上に、光半透過膜2、3層積層構造の遮光膜3、ハードマスク膜4を順に積層した構造のものである。このマスクブランクは、以下のようにして作製した。
【0068】
ガラス基板として合成石英基板(大きさ約152mm×152mm×厚み6.35mm)を準備した。
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に上記合成石英基板を設置し、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合焼結ターゲット(Mo:Si=12原子%:88原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N:He=8:72:100,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、合成石英基板上に、モリブデン、シリコンおよび窒素からなるMoSiN光半透過膜(位相シフト膜)を69nmの厚さで形成した。形成したMoSiN膜の組成は、Mo:Si:N=4.1:35.6:60.3(原子%比)であった。この組成はXPSにより測定した。
【0069】
次に、スパッタリング装置から基板を取り出し、上記合成石英基板上の光半透過膜に対し、大気中での加熱処理を行った。この加熱処理は、450℃で30分間行った。この加熱処理後の光半透過膜に対し、位相シフト量測定装置を使用してArFエキシマレーザーの波長(193nm)における透過率と位相シフト量を測定したところ、透過率は6.44%、位相シフト量は174.3度であった。
【0070】
次に、上記光半透過膜を成膜した基板を再びスパッタリング装置内に投入し、上記光半透過膜の上に、CrOCN膜からなる下層、CrOCN膜からなる中間層、CrN膜からなる上層の積層構造の遮光膜を形成した。具体的には、クロムからなるターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:CO:N:He=20:25:13:30、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記光半透過膜上に厚さ15.4nmのCrOCN膜からなる遮光膜下層を形成した。続いて、同じくクロムターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:CO:N:He=20:24:22:30、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記下層の上に厚さ26.6nmのCrOCN膜からなる遮光膜中間層を形成し、続いて、同じくクロムターゲットを用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:N=25:5、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記中間層の上に厚さ3.5nmのCrN膜からなる遮光膜上層を形成した。
【0071】
形成した遮光膜下層のCrOCN膜の組成は、Cr:O:C:N=55.2:22.1:11.6:11.1(原子%比)であった。また、遮光膜中間層のCrOCN膜の組成は、Cr:O:C:N=49.2:23.8:13.0:14.0(原子%比)、遮光膜上層のCrN膜の組成は、Cr:N=76.2:23.8原子%比)であった。これらの組成はXPSにより測定した。
【0072】
次いで、上記遮光膜の上に、SiON膜からなるハードマスク膜を形成した。具体的には、シリコンのターゲットを用い、アルゴン(Ar)と一酸化窒素(NO)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気(流量比 Ar:NO:He=8:29:32、圧力0.3Pa)中で、反応性スパッタリングを行うことにより、上記遮光膜の上に厚さ15nmのSiON膜からなるハードマスク膜を形成した。形成したSiON膜の組成は、Si:O:N=37:44:19(原子%比)であった。この組成はXPSにより測定した。
【0073】
上記光半透過膜と遮光膜の積層膜の光学濃度は、ArFエキシマレーザーの波長(193nm)において3.0以上(透過率0.1%以下)であった。また、波長880nm(露光装置に搭載する基板位置決めに用いられる波長)における透過率は50%以下であった。
以上のようにして本実施例のマスクブランクを作製した。
【0074】
次に、このマスクブランクを用いて、前述の図2に示される製造工程に従って、ハーフトーン型位相シフトマスクを製造した。なお、以下の符号は図1および図2中の符号と対応している。
まず、上記マスクブランク10の上面にHMDS処理を行い、スピン塗布法によって、電子線描画用の化学増幅型レジスト(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を塗布し、所定のベーク処理を行って、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
【0075】
次に、電子線描画機を用いて、上記レジスト膜に対して所定のデバイスパターン(光半透過膜2(位相シフト層)に形成すべき位相シフトパターンに対応するパターンで、ラインアンドスペース(40nm)を含む。)を描画した後、レジスト膜を現像してレジストパターン5を形成した(図2(a)参照)。
【0076】
次に、上記レジストパターン5をマスクとして、ハードマスク膜4のドライエッチングを行い、ハードマスク膜パターン4aを形成した(図2(b)参照)。ドライエッチングガスとしてはフッ素系ガス(SF)を用いた。
上記レジストパターン5を除去した後、上記ハードマスク膜パターン4aをマスクとして、上層、中間層及び下層の積層膜からなる遮光膜3のドライエッチングを連続して行い、遮光膜パターン3aを形成した(図2(c)参照)。ドライエッチングガスとしてはClとOの混合ガス(Cl:O=8:1(流量比))を用いた。なお、遮光膜3のエッチングレートは、上層が2.9Å/秒、中間層が9.1Å/秒、下層が5.1Å/秒であった。
【0077】
続いて、上記遮光膜パターン3aをマスクにして、光半透過膜2のドライエッチングを行い、光半透過膜パターン2a(位相シフト膜パターン)を形成した(図2(d)参照)。ドライエッチングガスとしてはフッ素系ガス(SF)を用いた。なお、この光半透過膜2のエッチング工程において、表面に露出しているハードマスク膜パターン4aは除去された。
【0078】
次に、上記図2(d)の状態の基板上の全面に、スピン塗布法により、前記レジスト膜を再び形成し、電子線描画機を用いて、所定のデバイスパターン(たとえば遮光帯パターンに対応するパターン)を描画した後、現像して所定のレジストパターンを形成した。続いて、このレジストパターンをマスクとして、露出している遮光膜パターン3aのエッチングを行うことにより、たとえば転写パターン形成領域内の遮光膜パターン3aを除去し、転写パターン形成領域の周辺部には遮光帯パターン3bを形成した。この場合のドライエッチングガスとしてはClとOの混合ガス(Cl:O=8:1(流量比))を用いた。
最後に、残存するレジストパターンを除去し、ハーフトーン型位相シフトマスク20を作製した(図2(e)参照)。
【0079】
[遮光膜パターンの評価]
上記の光半透過膜2のエッチング工程(図2(d)の工程)終了後の遮光膜パターンの断面形状を確認したところ、図3に示されるような断面形状であった。すなわち遮光膜の中間層部分ではパターンの壁面にエッチングの侵食による括れがあるものの、下層部分でパターン幅が回復するような形状でパターニングされていた。なお、この時点でハードマスク膜パターン4aは除去されているため、図3ではその前の状態を破線で示している。
また、遮光膜3のパターニング工程(図2(c)の工程)終了後に洗浄を行い、ラインアンドスペース40nm(SRAFパターンのパターン寸法に相当)のパターンの状態を確認したところ、遮光膜パターンに倒れは生じていなかった。これは、遮光膜下層と光半透過膜との接触面積が確保され、かつ、遮光膜下層と光半透過膜の界面での接合性が良好で、密着性が確保されたことによるものと考えられる。
【0080】
[光半透過膜パターンの評価]
上記遮光膜パターンをマスクとしたドライエッチングにより形成された光半透過膜パターンについて評価したところ、図3からも明らかなように、ラインアンドスペース40nmのような微細パターンであっても、ハードマスク膜パターンとの寸法の乖離も少ないパターン精度の優れた転写パターンを形成することができた。
【0081】
(比較例)
光半透過膜とハードマスク膜は実施例1と同様の膜で、遮光膜の構成のみ異なるマスクブランクを作製した。すなわち、本比較例の遮光膜は、単層構造の遮光膜で、実施例1の遮光膜における中間層の組成と同じ組成で、光学濃度が3.0以上で、膜厚100nmの薄膜である。
この比較例のマスクブランクを用いて、実施例と同様の方法でハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
【0082】
[遮光膜パターンの評価]
遮光膜3のパターニング工程(図2(c)の工程)終了後の遮光膜パターンの断面形状を確認したところ、図4に示されるような断面形状であった。すなわち遮光膜はパターンの壁面にエッチングの侵食によって大きくえぐれた形状になっていた。また、ハードマスク膜のパターンよりもライン幅が細くなっており、ハードマスク膜パターンとの寸法の乖離が大きい傾向となった。
また、実施例と同様に、遮光膜3のパターニング工程(図2(c)の工程)終了後に洗浄を行い、ラインアンドスペース40nm(SRAFパターンのパターン寸法に相当)のパターンの状態を確認したところ、遮光膜パターンに倒れが生じていた。パターン寸法を10nmずつ増加させて同じく遮光膜パターンの状態を確認したところ、パターンに倒れが生じなくなったのは、ラインアンドスペース80nmであった。これは、遮光膜パターンの壁面の侵食が大きく、遮光膜と光半透過膜との接触面積が狭くなったことと、遮光膜と光半透過膜の界面で洗浄に耐える接合状態(密着状態)が確保できなかったことによるものと考えられる。
したがって、本比較例のマスクブランクを用いて、例えばラインアンドスペース40nmのような微細パターンを形成しようとしても、遮光膜パターンの倒れが生じてしまい、最終的な転写パターンとなる光半透過膜のパターニングは困難である。
【0083】
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載した技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 透光性基板
2 光半透過膜
3 遮光膜
31 遮光膜の下層
32 遮光膜の中間層
33 遮光膜の上層
4 ハードマスク膜
5 レジストパターン
10 マスクブランク
20 転写用マスク
図1
図2
図3
図4