(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430631
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】リンカー要素、及び、それを使用してシーケンシングライブラリーを構築する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20181119BHJP
C40B 50/06 20060101ALI20181119BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20181119BHJP
C12Q 1/6855 20180101ALI20181119BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20181119BHJP
【FI】
C12N15/11 ZZNA
C40B50/06
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6855 Z
C12Q1/6874 Z
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-513707(P2017-513707)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-527295(P2017-527295A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】CN2014088592
(87)【国際公開番号】WO2016058136
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】518031479
【氏名又は名称】深▲せん▼華大智造科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】江媛
(72)【発明者】
【氏名】耿春雨
(72)【発明者】
【氏名】趙霞
(72)【発明者】
【氏名】傳書錦
(72)【発明者】
【氏名】賀玲瑜
(72)【発明者】
【氏名】李雅▲じょう▼
(72)【発明者】
【氏名】蘇小珊
(72)【発明者】
【氏名】呉凡子
(72)【発明者】
【氏名】章文蔚
(72)【発明者】
【氏名】蒋慧
(72)【発明者】
【氏名】アレケシェヤフ,アンデレ
(72)【発明者】
【氏名】デマナケ,ラドジェ
【審査官】
金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−515006(JP,A)
【文献】
特表2011−520420(JP,A)
【文献】
特表2012−533314(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/053127(WO,A1)
【文献】
Mertes, F. et al.,Targeted enrichment of genomic DNA regions for next-generation sequencing,Brief. Funct. Genomics,2011年,Vol. 10,pp. 374-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00−15/90
C40B10/00−99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS
(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンカー要素であって、5’末端にリン酸修飾を有する1本の核酸長鎖と3’末端がブロック修飾されて、酵素作用部位を有する1本の核酸短鎖とが相補的対合を行ってなるリンカーAと、3’末端がリンカーAの長鎖の5’末端と相補的対合を行えるが、残りがリンカーAと相補的対合を行えない核酸一本鎖であるリンカーBとで構成されることを特徴とするリンカー要素。
【請求項2】
前記リンカーAの長鎖は40〜48bp、リンカーAの短鎖は9〜14bpであることを特徴とする請求項1に記載のリンカー要素。
【請求項3】
前記リンカーBにおいて、リンカーAの長鎖と相補する長さは6〜12bp、リンカーAの長鎖と相補しない長さは9〜15bpであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリンカー要素。
【請求項4】
リンカーの連結方法であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリンカー要素を測定対象のDNA断片の両端に連結させることを特徴とするリンカーの連結方法。
【請求項5】
(1)連結反応によって、前記リンカーAを測定対象のDNA断片の両端に付けるステップと、
(2)短鎖における酵素作用部位に基づき、リンカーAを連結したDNA断片を対応酵素で処理するステップと、
(3)連結反応によって、ステップ(2)で処理したリンカーAを連結したDNA断片の両端にリンカーBを付けるステップとを順に含むことを特徴とする請求項4に記載のリンカーの連結方法。
【請求項6】
前記リンカー要素を連結させる前に、測定対象のDNA断片に脱リン酸化と平滑末端修復を行うステップを更に含むことを特徴とする請求項5に記載のリンカーの連結方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記DNA断片の未連結5’末端にリン酸化処理を行うステップを更に含むことを特徴とする請求項6に記載のリンカーの連結方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリンカー要素又は請求項4〜7のいずれか1項に記載のリンカーの連結方法によってリンカーを連結させるシーケンシングライブラリーの構築方法。
【請求項9】
1)測定対象のDNAを断片化するステップと、
2)ステップ1)で得たDNA断片に脱リン酸化と平滑末端修復を行うステップと、
3)連結反応によって、ステップ2)で得たDNA断片の両端にリンカーAを付けるように、リンカーAを連結させ、
リンカーAの短鎖における酵素作用部位に基づき、リンカーAを連結したDNA断片を対応酵素で処理して、断片の未連結5’末端にリン酸化処理を行うように、酵素処理、リン酸化を行い、
連結反応によって、リンカーAを連結したDNA断片の両端にリンカーBを付けるように、リンカーBを連結させる、リンカー連結のステップと、
4)ステップ3)で得たDNA断片をテンプレートとして、リンカーAの長鎖と相補的対合を行う核酸一本鎖C、リンカーBと同じ塩基配列を有する核酸一本鎖Dとをプライマーペアとして、ポリメラーゼ連鎖反応を行う、DNA断片増幅のステップと、
5)オリゴヌクレオチドプローブを使用して、ステップ4)で得た産物に対してハイブリッドキャプチャーを行うとともに、ハイブリッド産物を濃縮させるステップにおいて、核酸二本鎖の一方の鎖の5’末端に分離標識を導入して、他方の鎖の5’末端にリン酸基修飾を導入する、ハイブリッドキャプチャーのステップと、
6)分離標識によって、ステップ5)で得た産物を分離して分離標識のない他方の核酸一本鎖を得て、得た核酸一本鎖を環化して一本鎖環状核酸産物、すなわちシーケンシングライブラリーを得る、一本鎖分離及び環化のステップとを含むことを特徴とする請求項8に記載の構築方法。
【請求項10】
ステップ1)において、前記測定対象のDNAはゲノムDNAであることを特徴とする請求項9に記載の構築方法。
【請求項11】
ステップ2)において、前記脱リン酸化は、アルカリホスファターゼを使用して行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の構築方法。
【請求項12】
ステップ5)において、前記オリゴヌクレオチドプローブはオリゴヌクレオチドプローブライブラリーであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の構築方法。
【請求項13】
ステップ5)において、分離標識はビオチン修飾であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の構築方法。
【請求項14】
核酸のシーケンシング方法であって、
請求項8〜13のいずれか1項に記載の構築方法によってシーケンシングライブラリーを構築し、得られたシーケンシングライブラリーに対してシーケンシングを行うことを特徴とする核酸のシーケンシング方法。
【請求項15】
シーケンシングライブラリー構築キットであって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリンカー要素を含むことを特徴とするキット。
【請求項16】
デホスホリラーゼと、DNAポリメラーゼと、User酵素と、ホスホリラーゼとを更に含むことを特徴とする請求項15に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ技術分野に関し、具体的には、リンカー要素、該リンカー要素を使用してシーケンシングライブラリーを構築する方法、構築されたシーケンシングライブラリー及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイスループットシーケンシングは近代分子生物学、バイオ技術、医学等の様々な分野の基盤の一つとなっている。近年、遺伝子の発現レベルとヌクレオチド配列を迅速且つ正確に、低コストで測定する方法についての研究は活発に行っており、合成時解読(sequencing−by−synthesis)を基本的な原理とする次世代ハイスループットシーケンシング技術は成熟して、シーケンシングを行う大手企業は新しいシーケンシング製品の開発、シーケンシングプロセスの短縮及びコスト削減に注目している。現在、既存の次世代シーケンシング技術に基づくシーケンシング製品としては、全ゲノムリシーケンシング、全トランスクリプトームシーケンシング、小分子RNAシーケンシング等が挙げられる。特に、次世代シーケンシング技術とマイクロアレイ技術を組み合わせて誘導された使用――ターゲット配列キャプチャ・シーケンシング技術は、大量のオリゴヌクレオチドプローブとゲノムにおける特定領域とを相補的結合することで、特定セグメントでの遺伝子断片をキャプチャして濃縮してシーケンシングを行い、疾患遺伝子の検査診断及び研究に用いることができる。
【0003】
現在、Complete Genomics(CG)社は自主開発したヒト全ゲノムシーケンシングに適用可能な次世代シーケンシング技術を保有している。そのライブラリーの構築プロセスは、主に、ゲノムDNA切断、一回目のリンカー連結、二本鎖の環化及び酵素切断、二回目のリンカー連結、一本鎖分離及び環化を含む。その中、二回のリンカー連結は、ライブラリーの全構築プロセスに対して非常に重要な工程である。リンカーは、設計した特殊なDNA配列であり、連結等の方法によってDNA断片の両端に固定した後、シーケンシング際に、識別されてシーケンシングの開始部位として、機器によってその以降の配列情報を読み取ることができる。読み取った配列情報の分析し易さを保証するために、1つのDNA断片の両端(5’末端と3’末端)に2種類の異なるリンカーを付けなければならない。このような特定の方向性連結を実現すると同時にリンカー同士の相互連結を回避するために、粘着末端にリンカーを連結させる手法を使用できるが、この手法では、粘着末端を有する断片が必要であることから、断片同士の相互連結を回避できない。Complete Genomics社によるシーケンシングライブラリーの構築には、複数のステップで両端にそれぞれリンカーを付ける手法が使用される。両端のいずれにもリンカーを連結させた断片を得るには、DNA断片の一端へのリンカー連結、変性−アニール−伸長、DNA断片の他端へのリンカー連結、ギャップフィリング、ポリメラーゼ連鎖反応といった5つのステップが必要である。その中、複数の伸長反応に必要な試薬の費用が高価で、ステップ間に複数回の精製回収が必要であるため、全コストが高まるとともに、効率が低い。
【0004】
Complete Genomics社によるシーケンシングプラットフォームライブラリーの構築に存在する、リンカー連結のステップが多すぎて、ライブラリーを構築するのにかかる総時間が長すぎて、コストが高すぎるという問題を解決するために、特に本発明を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の欠陥に対して、本発明は、リンカー要素、該リンカー要素を使用してシーケンシングライブラリーを構築する方法、構築されたシーケンシングライブラリー及びその使用を提供することを目的とする。本発明のシーケンシングライブラリーの構築方法では、リンカーを連結させる時に、従来のように複数のステップで両端にそれぞれリンカーを付ける手法の代わりとして、特定の配列構造を有する連結リンカー、及びリンカー連結+一本鎖置換である同様に新規なリンカーの連結方法によって、リンカーの連結方向性を保証すると同時に、断片の相互連結、リンカーの自己連結、低い断片連結効率の問題を解決し、且つリンカーの全連結過程を4つの新しいステップに簡略化させるとともに、ステップ間の精製反応を減少させ、リンカー連結にかかる時間を大幅に短縮させて、コストを顕著に削減させた。また、本発明のシーケンシングライブラリーの構築方法では、核酸プローブキャプチャ技術を導入することにより、ターゲットゲノム領域のシーケンシングを実現し、一本鎖環状ライブラリーシーケンシングプラットフォームに基づくターゲット領域のキャプチャ・シーケンシング製品の開発を成功した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一局面によれば、本発明は、5’末端にリン酸修飾を有する1本の核酸長鎖と3’末端がブロック修飾されて、酵素作用部位を有する1本の核酸短鎖とが相補的対合を行ってなるリンカーAと、3’末端がリンカーAの長鎖の5’末端と相補的対合を行えるが、残りがリンカーAと相補的対合を行えない核酸一本鎖であるリンカーBとで構成されるリンカー要素を提供する。
【0007】
上記リンカー要素において、好ましくは、前記リンカーAの長鎖は40〜48bp、リンカーAの短鎖は9〜14bpである。
【0008】
好ましくは、前記リンカーBにおいて、リンカーAの長鎖と相補する長さは6〜12bp、リンカーAの長鎖と相補しない長さは9〜15bpである。
【0009】
好ましくは、前記ブロック修飾はジデオキシブロック修飾である。
【0010】
好ましくは、前記短鎖における酵素作用部位はU又はdU、対応した酵素はUser酵素である。
【0011】
好ましくは、前記リンカーBにはタグ配列を有するため、タグ配列の存在によって、後続ステップではタグが異なるサンプルを混合した後、同一反応系に入れて反応させることが可能であり、操作ステップを更に減少させてコストを削減できる。
【0012】
好適な実施形態では、前記リンカーAの長鎖配列は、/Phos/GTCTCCAGTCTCAACTGCCTGAAGCCCGATCGAGCTTGTCT(すなわち、SEQ ID NO:1)、前記リンカーAの短鎖配列はGACUGGAGAC/ddC/(すなわち、SEQ ID NO:2)、前記リンカーBの配列はTCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:3)であり、なお、「//」で囲んだ内容は末端修飾基、「Phos」はリン酸化、「dd」はジデオキシを示す。
【0013】
第二局面によれば、本発明は第一局面に記載のリンカー要素を測定対象のDNA断片の両端に連結させるリンカーの連結方法を提供する。
【0014】
好ましくは、前記リンカーの連結方法は、
(1)連結反応によって、前記リンカーAを測定対象のDNA断片の両端に付けるステップと、
(2)短鎖における酵素作用部位に基づき、リンカーAを連結したDNA断片を対応酵素で処理するステップと、
(3)連結反応によって、ステップ(2)で処理したリンカーAを連結したDNA断片の両端にリンカーBを付けるステップとを順に含む。
【0015】
好ましくは、前記リンカー要素を連結させる前に、測定対象のDNA断片に脱リン酸化と平滑末端修復を行うステップを更に含み、より好ましくは、ステップ(2)において、前記DNA断片の未連結5’末端にリン酸化処理を行うステップを更に含み、更に好ましくは、ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化処理を行う。
【0016】
第三局面によれば、本発明は、第一局面に記載のリンカー要素又は第二局面に記載のリンカーの連結方法によってリンカーを連結させるシーケンシングライブラリーの構築方法を提供する。
【0017】
好適な一実施形態では、前記構築方法は、
1)測定対象のDNAを断片化するステップと、
2)ステップ1)で得たDNA断片に脱リン酸化と平滑末端修復を行うステップと、
3)連結反応によって、ステップ2)で得たDNA断片の両端にリンカーAを付けるように、リンカーAを連結させ、
リンカーAの短鎖における酵素作用部位に基づき、リンカーAを連結したDNA断片を対応酵素で処理して、断片の未連結5’末端にリン酸化処理を行うように、酵素処理、リン酸化を行い、
連結反応によって、リンカーAを連結したDNA断片の両端にリンカーBを付けるように、リンカーBを連結させる、リンカー連結のステップと、
4)ステップ3)で得たDNA断片をテンプレートとして、リンカーAの長鎖、リンカーBの核酸鎖と相補的対合を行う核酸一本鎖C、Dをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応を行う、DNA断片増幅のステップと、
5)オリゴヌクレオチドプローブを使用して、ステップ4)で得た産物に対してハイブリッドキャプチャーを行うとともに、ハイブリッド産物を濃縮させるステップにおいて、核酸二本鎖の一方の鎖の5’末端に分離標識を導入して、他方の鎖の5’末端にリン酸基修飾を導入する、ハイブリッドキャプチャーのステップと、
6)分離標識によって、ステップ5)で得た産物を分離して分離標識のない他方の核酸一本鎖を得て、得た核酸一本鎖を環化して一本鎖環状核酸産物、すなわちシーケンシングライブラリーを得る、一本鎖分離及び環化のステップとを含む。
【0018】
上記構築方法では、ステップ1)において、好ましくは、前記測定対象のDNAはゲノムDNAであり、
好ましくは、前記断片化とは、物理方法又は化学方法によって、測定対象のDNAをランダムに切断することであり、
好ましくは、超音波を用いる物理的方法又は酵素反応法によって測定対象のDNAを断片化し、
好ましくは、前記DNA断片の長さは150〜250bpである。
【0019】
ステップ2)において、好ましくは、前記脱リン酸化は、アルカリホスファターゼ、好ましくはエビアルカリホスファターゼを使用して行い、
好ましくは、前記平滑末端修復はT4DNAポリメラーゼを使用して行う。
【0020】
好適な一実施形態では、ステップ3)において、前記リンカーAの長鎖配列は、/Phos/GTCTCCAGTCTCAACTGCCTGAAGCCCGATCGAGCTTGTCT(すなわち、SEQ ID NO:1)、前記リンカーAの短鎖配列はGACU
GGAGAC/ddC/(すなわち、SEQ ID NO:2)、前記リンカーBの配列はTCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:3)であり、なお、「//」で囲んだ内容は末端修飾基、「Phos」はリン酸化、「dd」はジデオキシを示す。さらに好適な実施形態では、ステップ4)において、前記核酸一本鎖Cの配列は/Phos/AGACAAGCTCGATCGGGCTTC(すなわち、SEQ ID NO:4)、前記核酸一本鎖Dの配列はTCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:5)であり、なお、「//」で囲んだ内容は末端修飾基、「Phos」はリン酸化を示す。
【0021】
ステップ5)において、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプローブはオリゴヌクレオチドプローブライブラリーである。オリゴヌクレオチドプローブを用いるハイブリッドキャプチャーのステップによって、本発明のシーケンシングライブラリーによる全エクソンシーケンシングを可能にし、且つ、使用されるオリゴヌクレオチドプローブを交換することによって、他の異なるシーケンシング要求を満足できる。
【0022】
好ましくは、前記分離標識はビオチン修飾である。
【0023】
ステップ6)において、好ましくは、一本鎖核酸環化後、エクソヌクレアーゼ等の方法で処理することで、残った未環化一本鎖を除去するステップを更に含む。
【0024】
上記構築方法によって得られた一本鎖環状核酸産物をそのまま後続のシーケンシングステップに用いて、ローリングサークル型複製をして核酸ナノスフィア(DNB)を得て、核酸配列情報を読み取る。
【0025】
第四局面によれば、本発明は第三局面に記載の構築方法によって製造されるシーケンシングライブラリーを提供する。
【0026】
第五局面によれば、本発明は第四局面に記載のシーケンシングライブラリーのゲノムシーケンシングへの使用、好ましくは、ターゲットゲノム領域のシーケンシングへの使用を提供し、好ましくは、一本鎖環状ライブラリーシーケンシングプラットフォームを使用してシーケンシングを行い、より好ましくは、Complete Genomics社製のシーケンシングプラットフォームを使用してシーケンシングを行う。
【0027】
第六局面によれば、本発明は第四局面に記載のシーケンシングライブラリーに対してシーケンシングを行うステップを含む核酸のシーケンシング方法を提供する。
【0028】
好ましくは、一本鎖環状ライブラリーシーケンシングプラットフォームを使用してシーケンシングを行い、より好ましくは、Complete Genomics社製のシーケンシングプラットフォームを使用してシーケンシングを行う。
【0029】
好ましくは、シーケンシング結果をアセンブリ及び/又はスプライスするステップを更に含む。
【0030】
第七局面によれば、本発明は第一局面に記載のリンカー要素を含むことを特徴とするシーケンシングライブラリー構築キットを提供する。
【0031】
好ましくは、前記キットは、デホスホリラーゼと、DNAポリメラーゼと、User酵素と、ホスホリラーゼとを更に含み、前記デホスホリラーゼとしては、アルカリホスファターゼが好ましく、エビアルカリホスファターゼがより好ましく、前記DNAポリメラーゼとしては、T4DNAポリメラーゼが好ましく、前記ホスホリラーゼとしては、ポリヌ
クレオチドキナーゼが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
断片化した測定対象のDNAをステップ2)で処理した後、ターゲット核酸断片の脱リン酸化した末端にブロック処理を行って、両端がブロックされた平滑末端断片となることによって、断片同士の相互作用の発生を完全に回避して、連結前の極めて高いDNA断片利用率が保証される。
【0033】
本発明では、リンカーAの長鎖の5’末端にリン酸基を導入し、且つリンカーAの短鎖の3’末端にブロック修飾を導入し、ブロック修飾の存在によって、ブロックした末端がターゲット核酸断片と連結できず、更に、長鎖と短鎖自体の特殊な構造によってもリンカー同士の連結が不可能になるので、リンカーAを連結させる時、リンカーの長鎖の5’末端はターゲット断片の3’末端に正確に連結されることが保証される。このような設計によれば、リンカーの相互連結の発生を十分効果的に防止して、連結反応の効率を保証する。
【0034】
リンカーAを連結させた後に行うターゲット断片のリン酸化ステップを設計することによって、ターゲット断片のリンカーを連結していない一端をリン酸化し、リンカーAを連結した後の酵素処理過程において、リンカーAの短鎖の短縮・欠落によって、リンカーBの一部はリンカーAの長鎖に対合できるようになる。上記により、リンカーBの指向性連結は可能となり、リンカーの連結方向性は保証される。Complete Genomics社による従来のリンカー連結ステップにおいて、リンカーAを連結させた後、変性、アニール、伸長(
図2の番号1に示される)によって、両端に同じリンカーを連結することを防止するという方法は、リンカーの連結方向性を保証したが、ハイフィデリティホットスタート酵素の使用が必要であるので、コストが高まり、反応には時間がかかる。それに対して、本発明の連結方式に使用される処理酵素(例えばUser酵素)は相対的に低価で、酵素の反応条件が温和であり、且つ、反応系への要求が低く、酵素処理前に精製処理のステップを省略することができる。要するに、コストを削減させるだけでなく、処理時間を短縮させる。
【0035】
リンカーBの連結にも、リンカーAの構造における長鎖と短鎖の特性がうまく利用される。酵素処理後、短鎖の相補的対合塩基が少なくなり、結合が不安定になるので、比較的温和な温度条件でも長鎖と分離してしまう課題に対して、比較的長い塩基相補的対合配列を有して結合能力がより優れるリンカーBの一本鎖がリンカーAの長鎖と相補的対合を行わせることによって、ターゲット断片の欠如した末端に正確に連結させる。リンカーBの他の相補的対合ができない配列は、リンカーAとリンカーBとの差異性を保証する。後続のポリメラーゼ連鎖反応によって、最終に異なる末端配列(すなわち、一端はリンカーAの長鎖、他端はリンカーBである)を有するターゲット断片を形成した。このユニークな設計とポリメラーゼ連鎖反応とを組み合わせることによって、平滑末端に連結させる時に、如何に断片の両端に異なるリンカーを低コスト且つ効果的に導入するかという問題を解決する。その同時に、末端にアデニル酸を連結させるステップの導入によって断片の粘着末端に連結させることによる、断片/リンカー同士の相互作用の発生を回避する。
【0036】
Complete Genomics社による従来のリンカーBの連結方法(
図2の番号2に示される)に比べて、一部の塩基が対合した特殊な一本鎖リンカーを設計することによって、リンカーの連結、ギャップフィリングを1つのステップで完成させることによって、プロセスを大幅に短縮させて、コストを削減させる。
【0037】
Complete Genomics社による従来のシーケンシングライブラリーの構築形態を基に、本発明は新規なリンカー構造とリンカーの連結方式に基づくシーケンシン
グライブラリーの構築形態を提供し、更に、プローブハイブリッドキャプチャーのステップを導入することで、一本鎖環状ライブラリーシーケンシングプラットフォームに基づく新規なターゲット領域キャプチャライブラリーのシーケンシング製品を開発することによって、一本鎖環状ライブラリーシーケンシングプラットフォームに基づく小領域キャプチャライブラリーシーケンシングの無しから在りへの突破を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明のシーケンシングライブラリーの構築形態を図示し、1は切断したDNA断片、2は脱リン酸化、末端修復を行われた断片(各末端はヒドロキシ基である)、3はリンカーAの長鎖と短鎖、4はリンカーBの一本鎖、5はライブラリーの構築による最終産物としての核酸一本鎖環である。
【
図2】Complete Genomics社による従来のリンカーの連結方法を図示し、1はリンカーA’、B’連結間の処理ステップ、2はリンカーB’連結に関連する3つのステップである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を理解しやすくするために、本発明は下記実施例を例示する。当業者にとっては、前記実施例は本発明を理解しやすくするためのものに過ぎず、本発明の詳細を制限するものではないことが明らかなことである。
【0040】
実施例1 本発明のシーケンシングライブラリーの構築
【0041】
1、ゲノムDNAの切断:ゲノムDNAの切断方法として複数あり、超音波を用いる物理的方法でも酵素反応法でも、市場上、十分成熟した形態がある。本実施例では、超音波を用いる超音波切断法が使用される。
【0042】
96ウェルPCRプレートを1枚準備して、ポリテトラフルオロエチレンワイヤを1本加え、ゲノムDNAを1μg投入した後、TE緩衝溶液又はヌクレアーゼフリー水を80μlになるまで添加した。プレートをシーリングした後、E220超音波切断装置において超音波切断を行った。切断条件は以下のように設定された。
【0044】
2、切断断片の選択:磁気ビーズ精製法又はゲル回収法を使用できる。本実施例では、磁気ビーズ精製法が使用された。
【0045】
切断したDNAを取って、Ampure XP磁気ビーズ80μlを加え、均一に混合した後、7〜15min放置し、磁気ラックに入れて上澄みを収集し、上澄みにAmpure XP磁気ビーズ40μlを加えて、均一に混合した後、7〜15min放置し、磁気ラックに入れて上澄みを吸い取り、75%エタノールで磁気ビーズを2回洗浄し、干した後、TE緩衝溶液又はヌクレアーゼフリー水50μlを加えて、均一に混合した後、7〜15min放置して産物を溶解して回収した。
【0046】
3、脱リン酸化反応:前のステップでの回収産物を使用して、下表に従って系を調製した。
【0048】
反応液4.8μlを前のステップの回収産物に加えて、均一に混合し、下表の条件下で反応させた。反応産物を次のステップに直接用いた。
【0050】
4、断片の末端修復:下表に従って系を調製した。
【0052】
系を均一に混合した後、前のステップの産物に加えて、均一に混合し、次に12℃で20minインキュベートした。Ampure XP磁気ビーズ90μlで精製して、TE緩衝溶液18μlで産物を溶解して回収した。(反応産物を精製するには、複数の方式があり、例えば、磁気ビーズ法、カラム精製法、ゲル回収法等のいずれも使用できる。本実施例では、特に断らない限り、全て磁気ビーズ法によって精製することになる。)
【0053】
5、リンカーAの連結:本形態に使用されるリンカーの配列は以下のとおりである(配列は左から右へ5’末端から3’末端になり、「//」で囲んだ内容は末端修飾基、「phos」はリン酸化、「dd」はジデオキシ、「bio」はビオチンを示す)。
【0054】
リンカーAの長鎖:
/Phos/GTCTCCAGTCTCAACTGCCTGAAGCCCGATCGAGCTTGTCT(すなわち、SEQ ID NO:1)
【0055】
リンカーAの短鎖:
GACUGGAGAC/ddC/(すなわち、SEQ ID NO:2)
【0059】
以上の系と前の産物を均一に混合して、下表に従って反応させた。
【0061】
6、リン酸化、脱ウラシル化:下表に従って系を調製した。
【0063】
以上の反応系をステップ5の産物に加えて、均一に混合した後、37℃で15min放置した。
【0064】
Ampure XP磁気ビーズ60μlで精製して、ヌクレアーゼフリー水又はTE緩衝液62.5μlで溶解して回収した。
【0066】
リンカーBの配列:
TCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:3)
【0069】
ステップ6の回収産物に上記系を加えて均一に混合し、20℃で20min反応させた。
【0070】
Ampure XP磁気ビーズ120μlで精製して、TE緩衝溶液45μlで産物を溶解して回収した。
【0072】
プライマーCの配列:
/phos/AGACAAGCTCGATCGGGCTTC(すなわち、SEQ ID
NO:4)
【0073】
プライマーDの配列:
TCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:5)
【0076】
前のステップの回収産物を以上の系に加えて均一に混合した後、下表の条件下で反応させた。
【0078】
反応終了後、Ampure XP磁気ビーズ240μlで精製して、ヌクレアーゼフリー水25μlで産物を溶解して回収した。
【0079】
9、ハイブリッドキャプチャー:前のステップの反応産物500ng〜1μgを取り、濃縮させて乾固するまで蒸発した後、以下の系1に加えて溶解した。
【0080】
ブロック配列1:GAAGCCCGATCGAGCTTGTCT(すなわち、SEQ ID NO:6)
ブロック配列2:GTCTCCAGTC(すなわち、SEQ ID NO:7)
ブロック配列3:GTCTCCAGTGCGGTCTTAGGA(すなわち、SEQ
ID NO:8)
【0082】
混合した反応系1を95℃で5min反応させ、65℃で継続放置した。
【0085】
系2を系1に加え、65℃で継続放置した。
【0087】
【表14】
系3を系1、2に加え、65℃で20〜24h反応させた。
【0088】
反応終了後、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用して結合し、結合終了後、磁気ビーズをヌクレアーゼフリー水50μlに溶解した。
【0090】
ビオチン修飾付きのプライマーD配列:
/bio/TCCTAAGACCGCACTGGAGAC(すなわち、SEQ ID NO:9)
【0092】
溶解した磁気ビーズを反応系に加えて均一に混合し、下表に従って反応させた。
【0094】
反応終了後、Ampure XP磁気ビーズ240μlで精製し、TE緩衝液又はヌクレアーゼフリー水80μlで産物を溶解して回収した。
【0095】
10、一本鎖分離:ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを使用して、ステップ9で得られたビオチン付きターゲット断片と結合した。0.1M水酸化ナトリウム78μlで磁気ビーズを結合していない一本鎖を分離して、酸性緩衝液を加えて、得た分離産物を中和し、中和後の産物の全体積は112μlであった。
【0096】
11、一本鎖環化:以下の反応系1を調製した:核酸一本鎖Eには、一本鎖の両端に連結するための対応相補配列を有する。一本鎖Eの配列:TCGAGCTTGTCTTCCTAAGACCGC(すなわち、SEQ ID NO: 10)
【0098】
反応系1をステップ10の一本鎖産物に加えて、均一に混合した。
【0101】
反応系2を反応系1に加えて、均一に混合し、37℃で1.5hインキュベートした。
【0102】
12、エクソヌクレアーゼ1、エクソヌクレアーゼ3による処理:
【0105】
反応緩衝液23.7μlをステップ11の反応産物350μlに加えて、均一に混合し、37℃で30minインキュベートした。
【0106】
500mMエチレンジアミン四酢酸15.4μlを加えて、均一に混合した。
【0107】
Ampure XP磁気ビーズ800μlで精製して回収し、ヌクレアーゼフリー水/TE緩衝液40〜80μlで再溶解した。
【0109】
出願者により、本発明は、上記実施例によって本発明の詳細な機器及びプロセスを説明したが、上記の詳細な機器及びプロセスに制限されず、つまり、本発明は上記詳細な機器及びプロセスに頼らなければ実施できないと意味していないことを声明する。当業者であれば、本発明に対する全ての改良、本発明の製品の各原料の同等置換及び補助成分の添加、実施形態の選択等が、全て本発明の保護範囲及び開示範囲に属することが明らかなことである。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]