(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の半導体チップまたは基板に形成された第1の電極に対向する位置に、他方の半導体チップまたは基板に第2の電極を形成する工程と、前記第2の電極の上に筒状電極を形成する工程とを含む筒状電極形成工程
を備え、
前記第2の電極を形成する工程および前記筒状電極を形成する工程は、
レジストを塗布する工程と、
前記レジストに露光して開口部を形成する工程と、
前記開口部に蒸着を行うことにより、前記開口部の底面に前記第2の電極となる部分が堆積され、前記開口部の内壁に前記筒状電極となる部分が堆積される工程と、
前記レジストを除去する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の概略断面図であり、
図2は、実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の信号読出し基板および対向基板の具体的な構成を示した概略断面図であり、
図3は、実施例に係る半導体検出器(放射線検出器)の信号読出し基板の単位画素当たりの等価回路である。本実施例では、半導体検出器は、放射線検出器として用いられる。なお、
図2では対向画素電極およびウォールバンプ電極の図示を省略する。
【0023】
放射線検出器は、
図1〜
図3に示すように、信号読出し基板1と、信号読出し基板1に対向配置した対向基板2とを備えている。信号読出し基板1は、2次元マトリックス状に配置された各々の画素電極11(第1の電極に相当)およびそれらを配列する画素配列層を含んで構成されている。一方、対向基板2は、共通電極21,光電変換半導体層23の順に積層形成されて構成されている。対向基板2の光電変換半導体層23側の面が画素毎に信号読出し基板1の画素電極11毎に電気的に接続されている。具体的には、後述するスパッタ蒸着によって形成された対向画素電極33(第2の電極に相当)およびウォールバンプ電極34(筒状電極に相当)により信号読出し基板1の画素電極11と対向基板2の光電変換半導体層23とを互いに対向させて貼り合わせる。
【0024】
信号読出し基板1はガラス基板で形成されている。信号読出し基板1には、上述の画素電極11の他に、画素容量12,スイッチングトランジスタ13が2次元マトリックス状に形成され、走査線14(
図3を参照)および信号読出線15(
図3を参照)が行および列方向にそれぞれ縦横にパターン形成されている。
【0025】
具体的には、
図2に示すように、信号読出し基板1上に画素容量12の基準電極12aおよびスイッチングトランジスタ13のゲート電極13aが積層形成され層間絶縁膜31で覆われている。その層間絶縁膜31に、画素容量12の容量電極12bが、層間絶縁膜31を介在させて基準電極12aに対向するように積層形成され、スイッチングトランジスタ13のソース電極13bおよびドレイン電極13cが積層形成され、画素電極11が存在する部分を除いて封止材料32で覆われている。なお、容量電極12bとソース電極13bとは相互に電気的に接続される。
図2に示すように、容量電極12bおよびソース電極13bを一体的に同時形成すればよい。基準電極13aは接地されている。層間絶縁膜31には、例えばプラズマSiNが使用される。
【0026】
図3に示すように、走査線14は、スイッチングトランジスタ13のゲート電極13a(
図2を参照)に電気的に接続され、信号読出線15は、スイッチングトランジスタ13のドレイン電極13c(
図2を参照)に電気的に接続されている。走査線14は、各々の画素の行方向にそれぞれ延びており、信号読出線15は、各々の画素の列方向にそれぞれ延びている。走査線14および信号読出線15は互いに直交している。
図3の符号23は、光電変換半導体層の等価回路である。これら走査線14や信号読出線15を含めて、画素容量12、スイッチングトランジスタ13および層間絶縁膜31は、半導体薄膜製造技術や微細加工技術を用いて信号読出し基板1の表面に画素配列層としてパターン形成されている。
【0027】
光電変換半導体層23は、CdTe(テルル化カドミウム),ZnTe(テルル化亜鉛),CdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛),GaAs(ガリウムヒ素)等で形成される。
【0028】
上述したように、信号読出し基板1の画素電極11と対向基板2の光電変換半導体層23とは、互いに対向させて貼り合わされる。層間絶縁膜31で覆われていない箇所の画素電極11に、Au(金),Cu(銅),Al(アルミニウム),Ni(ニッケル),In(インジウム),Pb(鉛),Zn(亜鉛)のいずれかを含んだ材料をスパッタ蒸着することにより形成された対向画素電極33およびウォールバンプ電極34を接続することにより、信号読出し基板1の画素電極11と対向基板2の光電変換半導体層23とを互いに対向させて貼り合わせる。
【0029】
放射線検出器の動作を、
図1〜
図3を参照して説明する。共通電極21にバイアス電圧を印加した状態で、放射線(例えばX線)が入射することにより光電変換半導体層23で電子−正孔対キャリアが生成され、画素容量12に一旦蓄積される。必要なタイミングで走査線14を駆動させることで、当該走査線14に接続されたスイッチングトランジスタ13がON状態に移行し、画素容量12に蓄積された電子−正孔対キャリアが信号電荷として読み出され、スイッチングトランジスタ13に接続された信号読出線15を介して後段の信号収集回路(図示省略)に読み出される。
【0030】
各々の画素電極11は各々の画素にそれぞれ対応しているので、画素電極11に対応して読み出された信号電荷を画素値に変換することで、画素に応じた画素値を2次元に並べて2次元画像(2次元分布を有した放射線画像)を取得することができる。
【0031】
放射線検出器の製造方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、実施例に係る対向画素電極およびウォールバンプ電極を形成する工程を示した概略断面図である。なお、
図4では光電変換半導体層の図示を省略する。
【0032】
例えば、直径:φ3μm、高さ:3μmのAu(金)のウォールバンプ電極を形成する場合の工程を
図4に示す。
図4(a)に示すように、光電変換半導体層23(
図1および
図2を参照)が形成された共通電極21(以下、「支持基板」と総称する)に厚みが3μmのレジストRを塗布する。そして、
図4(b)に示すようにレジストRに露光して、直径:φ3μmの開口部Oを形成する。このとき、開口部Oの上部が下部よりも狭まるようなレジストを選択する。
【0033】
スパッタリングのAuソースとレジストRとが近接しているので、
図4(b)の開口部OにAuのスパッタ蒸着を行うと、
図4(c)に示すようにAuの一部のみが開口部O内の底面に対向画素電極33として堆積され、それ以外は開口部O内の底面に堆積されず、ほとんどが開口部Oの内壁に付着してサイドウォール(側壁)となる。このように、対向画素電極33の上に開口部Oの内壁に付着してサイドウォールの筒状電極が形成される。以下、この筒状電極を「ウォールバンプ電極」と呼ぶ。なお、開口部O以外では、
図4(c)に示すようにAuの層MがレジストR上に形成される。
【0034】
開口部Oの形状にしたがって、
図4(c)に示すウォールバンプ電極34の形状が決定される。例えば、開口部Oの形状が略円筒状の場合には、ウォールバンプ電極34も略円筒形状となり、開口部Oの形状が略角筒状の場合には、ウォールバンプ電極34も略角筒形状となる。開口部Oやウォールバンプ電極34の形状は、特に限定されない。本実施例では、開口部Oの形状は、画素電極11に接続される側(図示上側)の径が対向画素電極33側(図示下側)の径に対して漸減するように内側に向けて湾曲している。つまり、開口部Oは、上側が下側よりも狭くなっている。したがって、ウォールバンプ電極34は、画素電極11に接続される側の内径および外径が、対向画素電極33側の内径および外径に対して漸減するように内側に向けて湾曲した筒状に形成される。
【0035】
続いて、
図4(c)のAuの層MやレジストRを除去することにより、
図4(d)に示すような構造の放射線検出器が形成される。すなわち、対向画素電極33およびウォールバンプ電極34が同一材料であるAuによって一体的に形成される。
図1に示すように、信号読出し基板1の画素電極11と対向基板2の光電変換半導体層23とを互いに対向させて貼り合わせることにより、
図1に示すような信号読出し基板1の画素電極11と、対向基板2のウォールバンプ電極34とが互いに機械的・電気的に接続された構造の放射線検出器が形成される。
【0036】
なお、両方の基板1,2を互いに対向させて貼り合わせる際には、画素電極11,ウォールバンプ電極34のいずれか少なくとも一方に、圧力,熱または超音波のエネルギーを加えることにより、両方の電極11,34を互いに接合して機械的・電気的に接続する。両方の基板1,2を互いに対向させて貼り合わせることにより、
図1に示すように、ウォールバンプ電極34は、画素電極11に接触する側が内側に向けて若干押しつぶされるので、筒の内壁が内側に折り曲げられた構造となる。
【0037】
仮にサイドウォールではなく、開口部に通常のバンプを形成するには、スパッタ蒸着ではなく、(基板とソースとの間の距離を長くして成膜速度が遅い)ロングスローの蒸着装置を使用しなければならず、蒸着の効率が格段に下がる。スパッタ蒸着以外の通常の蒸着法では、ソースは基板の中央に設置され、基板とソースとを近接させて蒸着を行うと指向性が強く、端部において斜めに堆積される、あるいは堆積されない箇所が存在するからである。したがって、指向性を弱め通常のバンプを一様に形成するには、ロングスローの蒸着装置を採用しなければならなくなる。また、バンプの高さのバラツキも生じやすくなる。
【0038】
これに対して、スパッタ蒸着を採用することにより、
図4(d)に示すようなウォールバンプ電極34を一様に形成することができる。また、ウォールバンプ電極34の高さは、レジスト厚でほぼ決定される。
【0039】
実際に、ピッチ:20μm、開口径:3μm、高さ:3μmのAuのウォールバンプ電極を形成した走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope) 写真を
図5に示す。
図5(a)は、倍率が500倍の平面SEMであり、
図5(b)は、倍率が4000倍の平面SEMであり、
図5(c)は、倍率が7000倍の断面SEMである。
図5に示すように、ウォールバンプ電極が再現性よく形成され、上述したようにウォールバンプ電極の高さはレジスト厚でほぼ決まるので、
図5の場合には高さのバラツキは0.2μm程度である。
【0040】
対向画素電極を含んだウォールバンプ電極の材料として、
図5で述べたAuの他に、上述したようなCu,Al,Ni等が挙げられる。また、CdTe等のように比較的軟らかい半導体を接続するには、軟らかいバンプ材料として、上述したようなIn,Pb,Zn等も使用することができる。また、これらの混合物でウォールバンプ電極を形成してもよい。
【0041】
実際に、機械的・電気的に接合させるには、上述したように圧力や熱や超音波のエネルギーを加えて接合する。通常の柱状バンプに比べて接合面積は小さくなるが、その分、接合の際にかける全体の圧力を下げることができる。
【0042】
レジスト厚(≒バンプ高さ)をtとし、バンプの直径(バンプ径)をdとしたとき、アスペクト比t/dはt/d≧1/2の条件を満足するのが好ましい。t/d<1/2の場合には、レジスト厚(≒バンプ高さ)tが低く、あるいはバンプ径dが大きくなり、ウォールバンプ電極の形状を維持するのが難しくなる。したがって、t/d≧1/2の条件を満足するならばt/dは高ければ高いほどより好ましい。ただし、t/dが高過ぎると、ウォールバンプ電極が対向画素電極の上に形成されなくなる、あるいは対向画素電極そのものが形成されなくなる。よって、レジスト厚(≒バンプ高さ)tは高過ぎず、例えばバンプ径dが3μmの場合には、通常、レジスト厚(≒バンプ高さ)tは3μm以下で1.5μm(=d/2)以上の範囲がより好ましい。なお、t/d≧1/2の条件を満足するならば、バンプ径dの大きさに応じて好適なレジスト厚(≒バンプ高さ)tの具体的な範囲は変わることに留意されたい。
【0043】
上述の構成を備えた本実施例に係る放射線検出器によれば、ウォールバンプ電極34が筒状であるので、従来のバンプ形状のバンプ電極と比べて接合面積が小さくなる分、半導体チップまたは基板(本実施例では信号読出し基板1)にかける圧力を下げることができる。また、接合面積が小さくなる分、電極の径も再現性よく形成することができ、接続を確実に行うことができる。
【0044】
画素電極11とウォールバンプ電極34とが接続される際に、ウォールバンプ電極34は、画素電極11に接触する側が内側に向けて若干押しつぶされるので、より確実に接触させることができる。また、対向画素電極33およびウォールバンプ電極34が同一材料により一体形成されている。この場合、製造工程を簡素化することができるとともに、対向画素電極33とウォールバンプ電極34との剥離の問題もなく、確実な電気的接続を維持することができる。
【0045】
また、本実施例に係る放射線検出器は、上述した
図1の構造を有し、いずれか一方の半導体チップまたは基板(本実施例では対向基板2)が、放射線を検出し、検出されて得られた信号を、いずれか他方の半導体チップまたは基板(本実施例では信号読出し基板1)から取り出すよう構造されている。
【0046】
画素ピッチが50μm未満(本実施例では20μm)になるように、画素電極11,対向画素電極33およびウォールバンプ電極34が1次元もしくは2次元(本実施例では2次元)に配置されている。本実施例では、1つの画素電極内に1つの対向画素電極33およびウォールバンプ電極34が形成されている。
【0047】
また、本実施例に係る放射線検出器の製造方法によれば、筒状電極形成工程に相当する
図4の工程では、一方の半導体チップまたは基板(本実施例では信号読出し基板1)に形成された複数の画素電極11に対向する位置に、他方の半導体チップまたは基板(本実施例では対向基板2)に対向画素電極33を形成する工程と、対向画素電極33の上にウォールバンプ電極34を形成する工程とを含む。
【0048】
本実施例に係る放射線検出器の製造方法では、第1の電極を形成する工程では、一方の半導体チップまたは基板(本実施例では信号読出し基板1)に複数の画素電極11を形成する。そして、電極接触工程では、一方の半導体チップまたは基板(信号読出し基板1)に形成された画素電極11、他方の半導体チップまたは基板(本実施例では対向基板2)に形成されたウォールバンプ電極34が互いに接触するように、両方の半導体チップまたは基板(本実施例では基板1,2)の各電極(本実施例では電極11,34)の位置合わせを行って貼り合わせる。さらに、電極接合工程では、画素電極11,ウォールバンプ電極34のいずれか少なくとも一方に、圧力,熱または超音波のエネルギーを加えることにより、両方の電極11,34を互いに接合して機械的・電気的に接続する。
【0049】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した実施例では、半導体検出器は、放射線検出器として用いられていたが、光を検出する光検出器として用いられてもよい。具体的には、いずれか一方の半導体チップまたは基板が、光を検出し、検出されて得られた信号を、いずれか他方の半導体チップまたは基板から取り出す構造の光検出器に適用する。
【0051】
(2)上述した実施例では、半導体装置は放射線検出器に用いられていたが、必ずしも放射線検出器や光検出器などの半導体検出器に用いられる必要はない。例えば、上述したフリップチップボンディングのように半導体検出器以外の用途でもよい。
【0052】
(3)上述した実施例では、対向画素電極や筒状電極(ウォールバンプ電極)を形成する対象は基板(実施例では対向基板2)であるとともに、画素電極を形成する対象は基板(実施例では信号読出し基板1)であったが、接合の対象として基板の替わりに半導体チップを用いてもよい。例えば、上述したフリップチップボンディングのように、接合の対象の一方を基板として、接合の対象の他方を半導体チップとしてもよい。また、接合の対象として半導体チップを両方用いてもよい。半導体チップは化合物半導体で構成し、上述した実施例の光電変換半導体層と同様に、化合物半導体の材料として、CdTe,ZnTe,CdZnTe,GaAs等が挙げられる。
【0053】
(4)上述した実施例では、対向画素電極や筒状電極(ウォールバンプ電極)を形成する半導体チップ/基板が放射線や光を検出し、検出されて得られた信号を、画素電極を形成する半導体チップ/基板から取り出したが、逆でもよい。つまり、画素電極を形成する半導体チップ/基板が放射線や光を検出し、検出されて得られた信号を、対向画素電極や筒状電極(ウォールバンプ電極)を形成する半導体チップ/基板から取り出してもよい。
【0054】
(5)上述した実施例では、画素ピッチが50μm未満(実施例では20μm)になるように、画素電極,対向画素電極および筒状電極(ウォールバンプ電極)が2次元に配置されていたが、画素電極,対向画素電極および筒状電極(ウォールバンプ電極)が1次元に配置された構造の半導体装置にも適用することができる。
【0055】
(6)上述した実施例では、1つの画素電極内に1つの対向画素電極および筒状電極(ウォールバンプ電極)が形成されていたが、接合面積を大きくするために1つの画素電極内に複数の対向画素電極および筒状電極(ウォールバンプ電極)を形成してもよい。つまり、1つの第1の電極(実施例では画素電極11)に対応付けて、複数の第2の電極(実施例では対向画素電極33)および筒状電極(ウォールバンプ電極)が形成される。1つの画素電極内に3つの対向画素電極およびウォールバンプ電極を形成した例を
図6の概略平面図に示す。
【0056】
(7)上述した実施例では、スパッタ蒸着によって対向画素電極および筒状電極(ウォールバンプ電極)を形成したが、スパッタ蒸着以外の蒸着でもウォールバンプ電極を形成してもよい。ソースを基板の中央に設置すると、基板とソースとを近接させて蒸着を行えば、上述したように端部において斜めに堆積される、あるいは堆積されない箇所が存在する恐れがある。そこで、ソースを基板の全面にわたって設置して、基板とソースとを近接させて蒸着を行えば、指向性を弱め、かつ成膜速度が速い状態で、スパッタ蒸着以外の蒸着でもウォールバンプ電極を一様に形成することが可能である。