特許第6430666号(P6430666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6430666マスクブランク、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430666
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】マスクブランク、位相シフトマスク、位相シフトマスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20181119BHJP
   G03F 1/58 20120101ALI20181119BHJP
   G03F 1/48 20120101ALI20181119BHJP
   G03F 1/74 20120101ALI20181119BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20181119BHJP
【FI】
   G03F1/32
   G03F1/58
   G03F1/48
   G03F1/74
   G03F1/80
【請求項の数】15
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-563153(P2017-563153)
(86)(22)【出願日】2017年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2017031748
(87)【国際公開番号】WO2018056033
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-186871(P2016-186871)
(32)【優先日】2016年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】堀込 康隆
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和丈
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−535702(JP,A)
【文献】 特開2015−225182(JP,A)
【文献】 特開2016−018192(JP,A)
【文献】 特開2014−137388(JP,A)
【文献】 特開2016−021075(JP,A)
【文献】 特開2015−111246(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141078(WO,A1)
【文献】 特開2004−062135(JP,A)
【文献】 特開2016−035559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板上に、位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または貴ガス、ケイ素及び窒素からなる材料で形成され、
前記低透過層の窒素の含有量は、50原子%以上56原子%以下であ
前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または貴ガス、ケイ素及び酸素からなる材料で形成され、
前記高透過層の酸素の含有量は、50原子%以上66原子%以下であ
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが1nm以上4nm以下であり、
前記低透過層および高透過層の界面に、前記低透過層および高透過層の各構成元素が混じり合う混合領域を有し、
前記混合領域は、厚さが0.1nm以上0.4nm以下であることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする請求項記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.1以下である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記低透過層は、厚さが20nm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
透光性基板上に、転写パターンを有する位相シフト膜を備えた位相シフトマスクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または貴ガス、ケイ素及び窒素からなる材料で形成され、
前記低透過層の窒素の含有量は、50原子%以上56原子%以下であ
前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または貴ガス、ケイ素及び酸素からなる材料で形成され、
前記高透過層の酸素の含有量は、50原子%以上66原子%以下であ
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが1nm以上4nm以下であり、
前記低透過層および高透過層の界面に、前記低透過層および高透過層の各構成元素が混じり合う混合領域を有し、
前記混合領域は、厚さが0.1nm以上0.4nm以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項8】
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする請求項に記載の位相シフトマスク。
【請求項9】
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.1以下である
ことを特徴とする請求項7または8に記載の位相シフトマスク。
【請求項10】
前記低透過層は、厚さが20nm以下であることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の位相シフトマスク。
【請求項11】
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする請求項から10のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【請求項12】
前記位相シフト膜上に、遮光帯を含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする請求項から11のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【請求項13】
請求項記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
ドライエッチングにより前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンを有する遮光膜をマスクとするドライエッチングにより前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と、
遮光帯を含むパターンを有するレジスト膜をマスクとするドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いた製造された位相シフトマスク及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、上記の位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。近年、半導体装置を製造する際の露光光源にArFエキシマレーザー(波長193nm)が適用されることが増えてきている。
【0003】
転写用マスクの一種に、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。ハーフトーン型位相シフトマスクは、露光光を透過させる透光部と、露光光を減光して透過させる(ハーフトーン位相シフト膜の)位相シフト部を有し、透光部と位相シフト部とで透過する露光光の位相を略反転(略180度の位相差)させる。この位相差により、透光部と位相シフト部の境界の光学像のコントラストが高まるので、ハーフトーン型位相シフトマスクは、解像度の高い転写用マスクとなる。
【0004】
ハーフトーン型位相シフトマスクは、ハーフトーン位相シフト膜の露光光に対する透過率が高いほど転写像のコントラストが高まる傾向にある。このため、特に高い解像度が要求される場合を中心に、いわゆる、高透過率ハーフトーン型位相シフトマスクが用いられる。
【0005】
ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜には、モリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられる。しかし、MoSi系膜は、ArFエキシマレーザーの露光光に対する耐性(いわゆるArF耐光性)が低いということが近年判明している。
【0006】
ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜として、ケイ素と窒素からなるSiN系の材料も知られており、例えば、特許文献1に開示されている。
また、所望の光学特性を得る方法として、Si酸化物層とSi窒化物層の周期多層膜からなる位相シフト膜を用いたハーフトーン型位相シフトマスクが特許文献2に開示されている。そこでは、Fエキシマレーザー光である157nmの波長の光に対して、透過率が5%で所定の位相差が得られることが記載されている。
SiN系の材料は高いArF耐光性を有するので、位相シフト膜としてSiN系膜を用いた高透過率ハーフトーン型位相シフトマスクが注目を集めている。
【0007】
また、転写用マスクには、その転写用マスクを用いて半導体基板(ウェハ)上のレジスト膜にパターン転写を行ったとき、転写欠陥を起こさないことが要求される。特に、高い解像度を要求されるハーフトーン型位相シフトマスクでは、転写用マスク上の微細な欠陥も転写され、問題になる。このため、高い精度のマスク欠陥修正が重要となる。
このようなことから、ハーフトーン型位相シフトマスクのマスク欠陥修正技術として、位相シフト膜の黒欠陥部分に対して、二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射することでその黒欠陥部分を揮発性のフッ化物に変化させてエッチング除去する欠陥修正技術(以下、このような電子線等の荷電粒子を照射して行う欠陥修正を単にEB欠陥修正という。)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3115185号公報
【特許文献2】特表2002−535702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
窒化ケイ素材料からなる単層の位相シフト膜を用いる場合、ArFエキシマレーザーの露光光(ArF露光光)に対する透過率に対して制約があり、透過率を18%より高めることは材料の光学特性上難しい。
【0010】
窒化ケイ素に酸素を導入すると、透過率を高くすることができる。しかし、酸化窒化ケイ素材料からなる単層の位相シフト膜を用いると、ドライエッチングによる位相シフト膜のパターニング時に、酸化ケイ素を主成分とする材料で形成された透光性基板とのエッチング選択性が小さくなるという問題がある。また、黒欠陥に対してEB欠陥修正を行ったとき、透光性基板に対する十分な修正レート比を確保することが困難という問題がある。
【0011】
上述の問題点を解決する方法としては、例えば、位相シフト膜を、透光性基板側から順に配置された窒化ケイ素層(低透過層)と酸化ケイ素層(高透過層)からなる2層構造とする方法が考えられる。特許文献1には、透光性基板側から順に配置された窒化ケイ素層と酸化ケイ素層とからなる2層構造の位相シフト膜を備えるハーフトーン型位相シフトマスクが開示されている。
位相シフト膜を窒化ケイ素層(低透過層)と酸化ケイ素層(高透過層)からなる2層構造にすることにより、ArF露光光に対する屈折率、消衰係数及び膜厚の設定自由度が増して、その2層構造の位相シフト膜をArF露光光に対して所望の透過率と位相差を有するものにすることができる。ここで、窒化ケイ素からなる膜と酸化ケイ素からなる膜はともにArF耐光性が高い。
【0012】
しかしながら、詳細に検討を行った結果、窒化ケイ素層と酸化ケイ素層とからなる2層構造の位相シフト膜を備えるハーフトーン型位相シフトマスクには以下に述べる問題があることがわかった。
【0013】
まず、EB欠陥修正を行ったとき透光性基板に対する修正レート比が十分に取れず、その結果、精度の高い黒欠陥修正を行うことが難しいという問題である。また、EB欠陥修正の修正レートが低くて、EB欠陥修正のスループットが低いという問題もある。
【0014】
EB欠陥修正において、黒欠陥部分に対してのみ電子線を照射することは容易ではなく、また黒欠陥部分に対してのみ非励起のフッ素系ガスを供給することも困難であるため、黒欠陥部分の近傍における透光性基板の表面がEB欠陥修正の影響を比較的受けやすい。このため、透光性基板と薄膜パターンとの間でEB欠陥修正に対する十分な修正レート比が必要であるが、窒化ケイ素層と酸化ケイ素層とからなる2層構造の位相シフト膜では修正レート比を十分に取ることができなかった。その結果、EB欠陥修正時に透光性基板の表面の掘り込みが進みやすく、転写に悪影響のない十分な精度の黒欠陥修正を行うことが難しかった。
【0015】
また、通常の位相シフト膜のパターニングの際に行われるフッ素系ガスによるドライエッチングの場合、窒化ケイ素層は酸化ケイ素層に比べてエッチングレートが大きい。EB欠陥修正の場合も同様の傾向を有するが、EB欠陥修正の場合、側壁が露出した状態の位相シフト膜のパターンに対してエッチングを行うことから、パターンの側壁方向に進行するエッチングであるサイドエッチングが特に窒化ケイ素層において入りやすい。このため、EB欠陥修正後のパターン形状が窒化ケイ素層と酸化ケイ素層とで段差を作る段差形状となりやすく、この観点からも転写に悪影響のない十分な精度の黒欠陥修正を行うことが難しかった。
【0016】
さらに、窒化ケイ素層と酸化ケイ素層との2層構造により位相シフト膜を構成する場合、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層のそれぞれに必要とされる厚さが厚いため、ドライエッチングによる位相シフト膜のパターニング時に、パターン側壁の段差が大きくなりやすいという問題がある。
【0017】
一方、上記の2層構造の位相シフト膜において、高透過層を形成する材料を酸化ケイ素から比較的酸素を多く含有した酸窒化ケイ素に代えた構成とした場合、高透過層を酸化ケイ素で形成した場合と同様の光学特性を得ることができる。しかし、この構成の位相シフト膜の場合でも、EB欠陥修正のスループットが低い問題や、ドライエッチング時に位相シフト膜のパターン側壁の段差が大きくなりやすい問題が生じる。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、透光性基板上にArF露光光を10%以上の透過率で透過させる位相シフト膜を備えたマスクブランクにおいて、位相シフト膜は、ArF耐光性が高く、EB欠陥修正を行ったとき透光性基板に対する修正レート比が高く、EB欠陥修正の修正レートも高いものである。その結果、精度の高い黒欠陥修正を高いスループットで行うことができ、位相シフトパターンの側壁形状の段差を抑制できるハーフトーン型位相シフトマスク用のマスクブランクを提供することを目的としている。ここで、位相シフト膜のArF露光光に対する透過率を10%以上に設定した理由については、実施の形態において述べる。
また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクを提供することを目的としている。さらに、本発明は、このような位相シフトマスクを製造する方法を提供することを目的としている。そして、本発明は、このような位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0020】
(構成1)
透光性基板上に、位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、
前記低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素及び酸素を含有し、酸素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが4nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0021】
(構成2)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
【0022】
(構成3)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
【0023】
(構成4)
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.1以下である
ことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
【0024】
(構成5)
透光性基板上に、位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、
前記低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素を含有し、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上である材料で形成されており、
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが4nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0025】
(構成6)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とする構成5記載のマスクブランク。
【0026】
(構成7)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする構成5記載のマスクブランク。
【0027】
(構成8)
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.15以下である
ことを特徴とする構成5から7のいずれかに記載のマスクブランク。
【0028】
(構成9)
前記低透過層は、厚さが20nm以下であることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
【0029】
(構成10)
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載のマスクブランク。
【0030】
(構成11)
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする構成1から10のいずれかに記載のマスクブランク。
【0031】
(構成12)
透光性基板上に、転写パターンを有する位相シフト膜を備えた位相シフトマスクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み
前記低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素及び酸素を含有し、酸素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが4nm以下である
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【0032】
(構成13)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とする構成12記載の位相シフトマスク。
【0033】
(構成14)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする構成12記載の位相シフトマスク。
【0034】
(構成15)
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.1以下である
ことを特徴とする構成12から14のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【0035】
(構成16)
透光性基板上に、転写パターンを有する位相シフト膜を備えた位相シフトマスクであって、
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、
前記位相シフト膜は、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み
前記低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素を含有し、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上である材料で形成されており、
前記低透過層の厚さは、前記高透過層の厚さよりも厚く、
前記高透過層は、厚さが4nm以下である
ことを特徴とする位相シフトマスク。
【0036】
(構成17)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成されており、
前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成されている
ことを特徴とする構成16記載の位相シフトマスク。
【0037】
(構成18)
前記低透過層は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成されており、前記高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料で形成されていることを特徴とする構成16記載の位相シフトマスク。
【0038】
(構成19)
前記低透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0以上であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.2以上であり、
前記高透過層は、前記露光光の波長における屈折率nが2.0未満であり、かつ前記露光光の波長における消衰係数kが0.15以下である
ことを特徴とする構成16から18のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【0039】
(構成20)
前記低透過層は、厚さが20nm以下であることを特徴とする構成12から19のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【0040】
(構成21)
前記位相シフト膜は、前記透光性基板から最も離れた位置に、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素、非金属元素及び貴ガスから選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層を備えることを特徴とする構成12から20のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【0041】
(構成22)
前記位相シフト膜上に、遮光帯を含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする構成12から21のいずれかに記載の位相シフトマスク。
【0042】
(構成23)
構成11記載のマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法であって、
ドライエッチングにより前記遮光膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンを有する遮光膜をマスクとするドライエッチングにより前記位相シフト膜に転写パターンを形成する工程と、
遮光帯を含むパターンを有するレジスト膜をマスクとするドライエッチングにより前記遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【0043】
(構成24)
構成22記載の位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0044】
(構成25)
構成23記載の位相シフトマスクの製造方法により製造された位相シフトマスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0045】
本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、位相シフト膜は、ArF露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、高透過層は、ケイ素及び酸素を含有し、酸素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、低透過層の厚さは、高透過層の厚さよりも厚く、高透過層は、厚さが4nm以下であることを特徴としている。
【0046】
また、本発明のマスクブランクは、透光性基板上に、位相シフト膜を備えたマスクブランクであって、位相シフト膜は、ArF露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素を含有し、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上である材料で形成されており、低透過層の厚さは、高透過層の厚さよりも厚く、高透過層は、厚さが4nm以下であることを特徴としている。
これらの構造のマスクブランクとすることにより、位相シフト膜のArF耐光性を高くしつつ、位相シフト膜のEB欠陥修正に対する修正レートを大幅に速くすることができ、位相シフト膜の透光性基板との間でのEB欠陥修正に対する修正レート比を高めることができる。
【0047】
また、本発明の位相シフトマスクは、転写パターンを有する位相シフト膜が上記本発明の各マスクブランクの位相シフト膜と同様の構成としていることを特徴としている。このような位相シフトマスクとすることにより、位相シフト膜のArF耐光性が高いことに加え、この位相シフトマスクの製造途上で位相シフト膜の黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った場合においても、黒欠陥近傍の透光性基板の表面が過度に掘り込まれることを抑制できる。また、位相シフトパターンの側壁形状は段差の少ないものとなる。このため、本発明の位相シフトマスクは、黒欠陥修正部を含め、転写精度の高い位相シフトマスクとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
まず、本発明の完成に至った経緯を述べる。
本発明者らは、マスクブランクの位相シフト膜を、ケイ素と窒素を含有する材料で形成される低透過層と、ケイ素と酸素を含有する材料で形成される高透過層を、多段に積層した構造とした場合について、その位相シフト膜の光学特性(ArF露光光に対する透過率及び位相差)、EB欠陥修正レート及びパターン側壁形状の観点から研究を行った。位相シフト膜のEB欠陥修正レートが速いと、位相シフト膜の透光性基板との間でのEB欠陥修正に対する修正レート比も高まる。ここで、位相シフト膜を形成する材料として、ケイ素と窒素を含有する材料と、ケイ素と酸素を含有する材料を選んだのは、これらの材料からなる膜が、高透過率のハーフトーン型位相シフトマスクとして適当な屈折率及び消衰係数を有することと、高いArF耐光性を有するからである。また、多段の積層構造としたのは1層当たりの膜厚を薄くして、EB欠陥修正やドライエッチングのときに発生するパターン側壁段差を低減することを目的としたためである。
【0050】
まず、ケイ素と窒素を含有する材料で形成される低透過層と、ケイ素と酸素を含有する材料で形成される高透過層からなる積層膜が、ArF露光光に対して透過率10%以上の高透過率ハーフトーン型位相シフト膜として適当な光学特性になるように各々の層の材料組成の検討を行った。その検討の結果、低透過層は、窒素の含有量が50原子%以上のケイ素と窒素を含有する材料(SiN系材料)、高透過層は、酸素の含有量が50原子%以上のケイ素と酸素を含有する材料(SiO系材料)とすればよいことを見出した。
【0051】
次に、SiO系材料からなる高透過層とSiN系材料からなる低透過層の2層構造の位相シフト膜と、その高透過層と低透過層の組み合わせを3組設けた構造(6層構造)の位相シフト膜を、ほぼ同じ透過率と位相差となるように各層の膜厚を調整して2枚の透光性基板の上にそれぞれ形成した。そして、その2つの位相シフト膜のそれぞれに対してEB欠陥修正を行い、EB欠陥修正の修正レートをそれぞれ測定した。その結果、2層構造の位相シフト膜に比べて、6層構造の位相シフト膜の方が、EB欠陥修正の修正レートが明らかに速いことが判明した。
2層構造の位相シフト膜における高透過層の膜厚と6層構造の位相シフト膜における3つの高透過層の合計膜厚との差はほとんどなく、2層構造の位相シフト膜における低透過層の膜厚と6層構造の位相シフト膜における3つの低透過層の合計膜厚との差もほとんどない。このことから、計算上はEB欠陥修正の修正レートの差はほとんどないはずであった。
【0052】
この結果を受けて、次に、位相シフト膜を、高透過層と低透過層の組み合わせを2組設けた構造(4層構造)とした場合について調べた。そこでは、2層構造及び6層構造の位相シフト膜とほぼ同じ透過率と位相差となるように各層の膜厚を調整して透光性基板の上に形成し、その位相シフト膜に対してEB欠陥修正を行い、EB欠陥修正の修正レートを測定した。その結果、この4層構造の位相シフト膜と2層構造の位相シフト膜の間でのEB欠陥修正の修正レートの差はかなり小さく、6層構造の位相シフト膜と4層構造の位相シフト膜の間でのEB欠陥修正の修正レートのような顕著な差にはならなかった。
【0053】
また、位相シフト膜を、高透過層と低透過層の2層構造とした場合と、高透過層と低透過層の組み合わせを3組設けた構造(6層構造)とした場合について、EB欠陥修正及びドライエッチングによる位相シフトパターン側壁の段差の評価を行ったところ、6層構造とすることにより、位相シフトパターン側壁の段差は大幅に抑制できることを確認した。
高透過層と低透過層の組み合わせを3組設けた構造(6層構造)とすることで、実用上十分なEB欠陥修正レートとパターン側壁形状が得られることがわかった。
【0054】
さらに、高透過層と低透過層の組み合わせを3組以上設けた構造(6層構造以上)とした場合についてEB欠陥修正レートを調べたところ、層数を増やすほど修正レートは速まることを確認した。
また、高透過層と低透過層の組み合わせを3組以上設けた構造(6層構造以上)とした場合についてEB欠陥修正及びドライエッチングによる位相シフトパターン側壁の段差を調べたところ、層数を増やすほど段差が少なくなることを確認した。
これらの結果から、位相シフト膜を、高透過層と低透過層の組み合わせを3組以上設けた構造(6層構造以上)とすることにより、EB欠陥修正レートを大幅に速められ、またEB欠陥修正及びドライエッチングによる位相シフトパターン側壁の段差を大幅に抑制出来ることを見出した。
【0055】
さらに、位相シフト膜が、SiN系材料からなる低透過層とSiO系材料からなる高透過層との組み合わせを3組以上設けた構造(6層以上の構造)を前提にして、ArF露光光に対して透過率が10%以上のハーフトーン型位相シフトマスクとして適する低透過層と高透過層の厚さの検討を行った。そこでは、光学的観点はもとより、EB欠陥修正レートも念頭に置いて検討した。SiO系材料からなる高透過層はSiN系材料からなる低透過層よりもEB欠陥修正レートが大幅に遅いので、なるべく高透過層の厚さが薄くなる方向で検討した。詳細な検討を行った結果、低透過層の厚さは高透過層の厚さよりも厚く、高透過層の厚さは4nm以下とすればよいということがわかった。
【0056】
以上の検討結果から、マスクブランクを、透光性基板上に位相シフト膜を備えたマスクブランクとし、位相シフト膜は、ArF露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜を透過した露光光に対して位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成され、高透過層は、ケイ素及び酸素を含有し、酸素の含有量が50原子%以上である材料で形成され、低透過層の厚さは、高透過層の厚さよりも厚く、高透過層は、厚さが4nm以下とすることにより、前記課題を解決できるという結論に至った(第1の実施形態のマスクブランク)。
【0057】
一方、本発明者らは、マスクブランクの位相シフト膜を、ケイ素と窒素を含有する材料で形成される低透過層と、ケイ素と窒素と酸素を含有する材料で形成される高透過層を、多段に積層した構造とした場合についても、その位相シフト膜の光学特性(ArF露光光に対する透過率及び位相差)、EB欠陥修正レート及びパターン側壁形状の観点から、同様の研究を行った。
【0058】
まず、ケイ素と窒素を含有する材料で形成される低透過層と、ケイ素と窒素と酸素を含有する材料で形成される高透過層からなる積層膜が、ArF露光光に対して透過率10%以上の高透過率ハーフトーン型位相シフト膜として適当な光学特性になるように各々の層の材料組成の検討を行った。その検討の結果、低透過層は、窒素の含有量が50原子%以上のケイ素と窒素を含有する材料(SiN系材料)、高透過層は、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上のケイ素と酸素を含有する材料(SiON系材料)とすればよいことを見出した。
【0059】
次に、SiON系材料からなる高透過層とSiN系材料からなる低透過層の2層構造の位相シフト膜と、その高透過層と低透過層の組み合わせを3組設けた構造(6層構造)の位相シフト膜を、ほぼ同じ透過率と位相差となるように各層の膜厚を調整して2枚の透光性基板の上にそれぞれ形成した。そして、SiO系材料の高透過層を備える位相シフト膜の場合と同様、その2つの位相シフト膜のそれぞれに対してEB欠陥修正を行い、EB欠陥修正の修正レートをそれぞれ測定した。その結果、2層構造の位相シフト膜に比べて、6層構造の位相シフト膜の方が、EB欠陥修正の修正レートが明らかに速いことが判明した。また、6層構造とすることにより、位相シフトパターン側壁の段差は大幅に抑制できることが確認できた。さらに、6層構造以上とすることによって、層数を増やすほど修正レートは速まること、EB欠陥修正及びドライエッチングによる位相シフトパターン側壁の段差が少なくなることがそれぞれ確認できた。
【0060】
これらの結果から、位相シフト膜を、SiON系材料からなる高透過層とSiN系材料からなる低透過層の組み合わせを3組以上設けた構造(6層構造以上)とすることにより、EB欠陥修正レートを大幅に速められ、またEB欠陥修正及びドライエッチングによる位相シフトパターン側壁の段差を大幅に抑制出来ることを見出した。
【0061】
位相シフト膜が、SiN系材料からなる低透過層とSiO系材料からなる高透過層との組み合わせを3組以上設けた構造(6層以上の構造)を前提にして、ArF露光光に対して透過率が10%以上のハーフトーン型位相シフトマスクとして適する低透過層と高透過層の厚さの検討を行った。そこでは、光学的観点はもとより、EB欠陥修正レートも念頭に置いて検討した。SiON系材料からなる高透過層はSiN系材料からなる低透過層よりもEB欠陥修正レートが大幅に遅いので、なるべく高透過層の厚さが薄くなる方向で検討した。詳細な検討を行った結果、低透過層の厚さは高透過層の厚さよりも厚く、高透過層の厚さは4nm以下とすればよいということがわかった。
【0062】
以上の検討結果から、マスクブランクを、透光性基板上に位相シフト膜を備えたマスクブランクとし、位相シフト膜は、ArF露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜を透過した露光光に対して位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、透光性基板側から低透過層と高透過層がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成され、高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素を含有し、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上である材料で形成され、低透過層の厚さは、高透過層の厚さよりも厚く、高透過層は、厚さが4nm以下とすることにより、前記課題を解決できるという結論に至った(第2の実施形態のマスクブランク)。
【0063】
なお、上記の第1および第2の実施形態の位相シフト膜とすることで、EB欠陥修正の修正レートが速くなる理由について検討したところ、以下のことによるものと推察される。なお、以下の推察は、出願時点における本発明者らの推測に基づくものであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0064】
低透過層と高透過層の界面では、互いの構成元素が混じり合うとともに、その構造がよりアモルファスに近づく界面層(混合領域)を形成する傾向にある。これらの混合領域の厚さは、高透過層及び低透過層の厚さによって大きく変わるものではない。なお、これらの混合領域は、位相シフト膜に対して後述の加熱処理あるいは光照射処理を行ったときに少しではあるが大きくなる傾向にある。この混合領域の厚さは、混合領域が形成されたとしても、0.1nmから0.4nmと推定される薄いものであるが、本発明では高透過層の厚さは4nm以下であるので、混合領域の厚さは高透過層に対して無視できない厚さである。特に、高透過層が低透過層に挟まれている場合は高透過層の両面にこの混合領域が形成されるので、この場合の高透過層は、混合領域を除いた高透過層の部分(バルク部)が大変薄いものとなる。
【0065】
SiO系材料やSiON系材料からなる高透過層は、SiN系材料からなる低透過層よりもXeFガスを用いたEB欠陥修正の修正レートが大幅に遅い。低透過層と高透過層が交互に6層以上積層した構造ではこの混合領域の数は5以上と多くなり、そのぶん積算した厚さは厚くなる。一方、高透過層のバルク部の厚さは、上述の混合領域の厚さの増大により、積算しても薄いものとなる。このため、本発明のマスクブランクにおける位相シフト膜のEB欠陥修正の修正レートが速くなると考えられる。
【0066】
[マスクブランクとその製造方法]
次に、本発明の各実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1および第2の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。図1に示すマスクブランク100は、透光性基板1上に、位相シフト膜2、遮光膜3及びハードマスク膜4がこの順に積層した構造を有する。
【0067】
[[透光性基板]]
透光性基板1は、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
【0068】
[[位相シフト膜]]
位相シフト膜2は、位相シフト効果を有効に機能させるために、ArFエキシマレーザーの露光光(ArF露光光)に対する透過率が10%以上であることが好ましく、15%以上であるとより好ましく、20%以上であるとさらに好ましい。
【0069】
近年、半導体基板(ウェハ)上のレジスト膜に対する露光・現像プロセスとしてNTD(Negative Tone Development)が用いられるようになってきていて、そこではブライトフィールドマスク(パターン開口率が高い転写用マスク)がよく用いられる。ブライトフィールドの位相シフトマスクでは、位相シフト膜の露光光に対する透過率を10%以上とすることにより、透光部を透過した光の0次光と1次光のバランスがよくなる。このバランスがよくなると、位相シフト膜を透過した露光光が0次光に干渉して光強度を減衰させる効果がより大きくなって、レジスト膜上でのパターン解像性が向上する。このため、位相シフト膜2のArF露光光に対する透過率が10%以上であると好ましい。
ArF露光光に対する透過率が20%以上と高い場合は、位相シフト効果による転写像(投影光学像)のパターンエッジ強調効果がより高まる。加えて、ケイ素と窒素を含む材料膜からなる単層膜でArF露光光に対し透過率が20%以上の位相シフト膜を得ることは困難であることから、本発明は特に有効になる。
【0070】
また、位相シフト膜2は、ArF露光光に対する透過率が50%以下になるように調整されていることが好ましく、40%以下であるとより好ましい。透過率が50%を超えると、位相シフト膜2の全体の厚さが急激に厚くなってしまい、マスクパターンの電磁界効果に係るバイアス(EMFバイアス)を許容範囲に収めることが難しくなり、また、位相シフトパターン2aへの微細パターン形成の難度も急激に高まるためである。
【0071】
位相シフト膜2は、適切な位相シフト効果を得るために、透過するArF露光光に対し、この位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で所定の位相差を生じさせる機能を有することが求められる。また、その位相差は、150度以上200度以下の範囲になるように調整されていることが好ましい。位相シフト膜2における前記位相差の下限値は、160度以上であることがより好ましく、170度以上であるとさらに好ましい。他方、位相シフト膜2における前記位相差の上限値は、190度以下であることがより好ましく、180度以下であるとさらに好ましい。この理由は、位相シフト膜2にパターンを形成するときのドライエッチング時に、透光性基板1が微小にエッチングされることによる位相差の増加の影響を小さくするためである。また、近年の露光装置による位相シフトマスクへのArF露光光の照射方式が、位相シフト膜2の膜面の垂直方向に対して所定角度で傾斜した方向からArF露光光を入射させるものが増えてきているためでもある。
【0072】
本発明の位相シフト膜2は、低透過層21と高透過層22とからなる1組の積層構造を3組以上有する構造(6層構造)が少なくとも含まれる。図1の位相シフト膜2は、低透過層21と高透過層22とからなる1組の積層構造を3組備え、最も上の高透過層22の上に最上層23をさらに積層した構造を有している。
【0073】
低透過層21は、ケイ素及び窒素を含有する材料、好ましくはケイ素及び窒素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素とからなる材料で形成される。低透過層21には、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、低透過層21には、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性を否定できないため、含有させないことが望ましい。低透過層21は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
【0074】
低透過層21は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。ここで、本発明における非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲン及び貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。低透過層21は、酸素の含有量を10原子%以下に抑えることが好ましく、5原子%以下とすることがより好ましく、積極的に酸素を含有させることをしない(XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)ことがさらに好ましい。SiN系材料膜に酸素を含有させると、消衰係数kが大きく低下する傾向があり、位相シフト膜2の全体の厚さが厚くなってしまう。
【0075】
透光性基板1は、合成石英ガラス等のSiOを主成分とする材料が好んで用いられる。低透過層21は透光性基板1の表面に接して形成されるので、その層が酸素を含有すると、酸素を含むSiN系材料膜の組成とガラスの組成との差が小さくなる。このため、低透過層21が酸素を含有すると、位相シフト膜2にパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスによるドライエッチングにおいて、透光性基板1に接する低透過層21と透光性基板1との間でエッチング選択性が得られにくくなるという問題が生じやすい。
【0076】
低透過層21は、貴ガスを含有してもよい。貴ガスは、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成粒子が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に積層されて薄膜が形成される。このターゲット構成粒子がターゲットから飛び出し、透光性基板に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取り込ませることができる。
【0077】
低透過層21の窒素含有量は、50原子%以上であることが求められる。
ケイ素系膜はArF露光光に対する屈折率nが非常に小さく、ArF露光光に対する消衰係数kが大きい(以降、単に屈折率nと表記されている場合、ArF露光光に対する屈折率nのことをいい、単に消衰係数kと表記されている場合、ArF露光光に対する消衰係数kのことをいう。)。ケイ素系膜中の窒素含有量が多くなるに従い、屈折率nが大きくなっていき、消衰係数kが小さくなっていく傾向がある。位相シフト膜2に求められる透過率を得て、薄い厚さで求められる位相差も確保するために、低透過層21の窒素含有量を50原子%以上とすることが求められ、51原子%以上であるとより好ましく、52原子%以上であるとさらに一層好ましい。また、低透過層21の窒素含有量は、57原子%以下であると好ましく、56原子%以下であるとより好ましい。ここで、位相シフト膜の膜厚が薄くなると、マスクパターン部の電磁界効果に係るバイアス(EMFバイアス)及びマスクパターン立体構造起因のシャドーイング効果が小さくなって、転写精度が高まる。また、薄膜であると、微細な位相シフトパターンを形成しやすい。
【0078】
低透過層21は、ArF露光光に対する高い耐光性を有しつつも、屈折率nが大きく、かつ消衰係数kが所定以上に小さいという光学特性を満たすことが望まれる。このことを考慮すると、低透過層21は、ケイ素及び窒素からなる材料で形成することが好ましい。
なお、貴ガスは、薄膜に対してRBS(Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やXPSのような組成分析を行っても検出することが容易ではない元素である。貴ガスは、低透過層21をスパッタリングにより形成する際に用いられるガスであり、その際に低透過層21にわずかに取り込まれる。このため、前記のケイ素及び窒素からなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
【0079】
第1の実施形態のマスクブランクの場合、高透過層22は、ケイ素及び酸素を含有する材料、好ましくはケイ素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素とからなる材料で形成される。この高透過層22には、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、この高透過層22には、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性を否定できないため、含有させないことが望ましい。この高透過層22は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
【0080】
第1の実施形態の高透過層22は、酸素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。ここで、本発明における非金属元素は、狭義の非金属元素(窒素、炭素、酸素、リン、硫黄、セレン)、ハロゲン及び貴ガスを含むものをいう。この非金属元素の中でも、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。高透過層22は、窒素の含有量を5原子%以下に抑えることが好ましく、3原子%以下とすることがより好ましく、積極的に窒素を含有させることをしない(XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)等による組成分析を行ったときに検出下限値以下。)ことがさらに好ましい。SiO系材料膜に窒素を含有させると、消衰係数kが大きくなるという問題が生じる。
【0081】
第1の実施形態の高透過層22は、貴ガスを含有してもよい。貴ガスは、反応性スパッタリングで薄膜を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成粒子が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に積層されて薄膜が形成される。このターゲット構成粒子がターゲットから飛び出し、透光性基板に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取り込ませることができる。
【0082】
第1の実施形態の高透過層22の酸素含有量は、50原子%以上であることが求められる。
ケイ素系膜はArF露光光に対する屈折率nが非常に小さく、ArF露光光に対する消衰係数kが大きい。ケイ素系膜中の酸素含有量が多くなるに従い、屈折率nが少しずつ大きくなっていき、急激に消衰係数kが小さくなっていく傾向がある。ここで、ケイ素に酸素を添加した場合は、同量の原子%の窒素を添加した場合より、屈折率の増加は小さく、消衰係数の減少は大幅に大きい。このため、位相シフト膜2に求められる透過率を得て、薄い厚さで求められる位相差も確保するには、高透過層22の酸素含有量を50原子%以上とすることが求められ、52原子%以上であるとより好ましく、55原子%以上であるとより一層好ましい。また、高透過層22の酸素含有量は、67原子%以下であると好ましく、66原子%以下であるとより好ましい。
【0083】
第1の実施形態の高透過層22は、消衰係数kを小さくするため、ケイ素及び酸素からなる材料で形成することが好ましい。
なお、貴ガスは、薄膜に対してRBS(Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やXPSのような組成分析を行っても検出することが容易ではない元素である。貴ガスは、高透過層22をスパッタリングにより形成する際に用いられるガスであり、その際に高透過層22にわずかに取り込まれる。このため、前記のケイ素及び窒素からなる材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
【0084】
また、低透過層21をケイ素及び窒素からなる材料で形成し、高透過層22をケイ素及び酸素からなる材料で形成することが好ましい。このようにすると、位相シフト膜2は、薄膜で所定の位相差と透過率を得ることができるという効果がある。
【0085】
低透過層21及び高透過層22は、窒素と酸素を除いて同じ構成元素からなることが好ましい。高透過層22及び低透過層21のいずれかが異なる構成元素を含んでおり、これらが接して積層している状態で加熱処理または光照射処理が行われた場合やArF露光光の照射が行われた場合、その異なる構成元素がその構成元素を含んでいない側の層に移動して拡散する恐れがある。そして、低透過層21及び高透過層22の光学特性が、成膜当初から大きく変わってしまう恐れがある。また、特にその異なる構成元素が半金属元素である場合、低透過層21及び高透過層22を異なるターゲットを用いて成膜する必要が生じる。
【0086】
一方、第2の実施形態のマスクブランクの場合、高透過層22は、ケイ素、窒素及び酸素を含有する材料、好ましくはケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と酸素と酸素とからなる材料で形成される。この高透過層22も、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る遷移金属は含有しない。また、この高透過層22も、遷移金属を除く金属元素についても、ArF露光光に対する耐光性が低下する要因となり得る可能性を否定できないため、含有させないことが望ましい。この高透過層22も、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。この半金属元素の中でも、ホウ素、ゲルマニウム、アンチモン及びテルルから選ばれる1以上の元素を含有させると、スパッタリングターゲットとして用いるケイ素の導電性を高めることが期待できるため、好ましい。
【0087】
第2の実施形態の高透過層22は、窒素及び酸素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。第2の実施形態の高透過層22は、非金属元素の中でも、炭素、フッ素及び水素から選ばれる1以上の元素を含有させると好ましい。第2の実施形態の高透過層22は、貴ガスを含有してもよい。第2の実施形態の高透過層22は、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上であることが求められる。この高透過層22の酸素含有量は、35原子%以上であるとより好ましい。この高透過層22の酸素含有量は、45原子%以下であるとより好ましい。この高透過層22の窒素含有量は、30原子%以下であるとより好ましく、25原子%以下であるとさらに好ましい。また、第2の実施形態の低透過層21及び高透過層22は、窒素と酸素を除いて同じ構成元素からなることが好ましい。なお、第2の実施形態の高透過層22に係るその他の事項については、第1の実施形態の高透過層22の場合と同様である。
【0088】
第1および第2の実施形態のマスクブランクにおいて、高透過層22は、厚さが4nm以下であることが求められる。高透過層22の厚さを4nm以下とすることで、EB欠陥修正の修正レートを速くすることができる。高透過層22の厚さは、3nm以下であるとより好ましい。一方、高透過層22の厚さは、1nm以上であることが好ましい。高透過層22の厚さが1nm未満であると、実質的に高透過層22は混合領域のみになってしまい、高透過層22に求められる所望の光学特性が得られなくなる恐れがある。また、高透過層22の厚さが1nm未満であると、面内の膜厚の均一性を確保するのが困難になる。
【0089】
低透過層21は、その厚さが高透過層22の厚さよりも厚いことが求められる。低透過層21の厚さが高透過層22の厚さよりも薄いと、そのような低透過層21を有する位相シフト膜2は求められる透過率と位相差が得られなくなる。また、低透過層21は、厚さが20nm以下であることが求められ、18nm以下であるとより好ましく、16nm以下であるとさらに好ましい。低透過層21の厚さが20nmを超えると、そのような低透過層21を有する位相シフト膜2は求められる透過率と位相差が得られなくなる。
【0090】
位相シフト膜2における低透過層21と高透過層22とからなる積層構造の組数は、3組(合計6層)以上であることが求められる。その積層構造の組数は、4組(合計8層)以上であるとより好ましい。これは、低透過層21と高透過層22とからなる積層構造の組数を3組(合計6層)以上とすることにより、低透過層21と高透過層22の各層の厚さが薄くなり、位相シフト膜2のEB欠陥修正の修正レートを大幅に速くすることができるためである。前述のように、EB欠陥修正の修正レートが速いと、位相シフト膜2の透光性基板1との間でのEB欠陥修正に対する修正レート比も高くなる。また、この積層構造の組数を3組(合計6層)以上とすることにより、位相シフト膜2をEB欠陥修正したとき、及びドライエッチングしたときのパターン側壁の段差が実用上十分に小さなものとなる。
一方、低透過層21と高透過層22とからなる積層構造の組数が2組(合計4層)以下、または、その2組とその上に形成される最上層23を含めた合計5層以下の場合は、所定の位相差を確保するために低透過層21と高透過層22の各層の厚さを厚くする必要が生じるため、実用上十分なEB欠陥修正の修正レートを得ることが難しい。また、この積層構造の組数を2組(合計4層)以下、または、その2組とその上に形成される最上層23を含めた合計5層以下の場合は、位相シフト膜をEB欠陥修正したとき、及びドライエッチングしたときのパターン側壁に段差が目立つものとなる。
【0091】
また、位相シフト膜2における高透過層22と低透過層21とからなる積層構造の組数は、6組(合計12層)以下であると好ましく、5組(合計10層)以下であるとより好ましい。7組を超える積層構造では、高透過層22の厚さが薄くなりすぎて高透過層22が上記の混合領域のみになってしまうおそれがあるという問題がある。
【0092】
位相シフト膜2における低透過層21と高透過層22は、他の膜を介さずに、直接互いに接して積層する構造であることが好ましい。この互いに接した構造とすることにより、低透過層21と高透過層22の間に混合領域を形成させて、位相シフト膜2のEB欠陥修正に対する修正レートを速くすることができる。
【0093】
低透過層21と高透過層22からなる積層構造は、位相シフト膜2に対するEB欠陥修正の終点検出精度の観点から、透光性基板1側から低透過層21と高透過層22がこの順に積層していることが求められる。
EB欠陥修正では、黒欠陥部分に対して電子線を照射したときに、照射を受けた部分から放出されるオージェ電子、2次電子、特性X線、後方散乱電子の少なくともいずれか1つを検出し、その変化を見ることで修正の終点を検出している。例えば、電子線の照射を受けた部分から放出されるオージェ電子を検出する場合には、オージェ電子分光法(AES)によって、主に材料組成の変化を見ている。また、2次電子を検出する場合には、SEM像から主に表面形状の変化を見ている。さらに、特性X線を検出する場合には、エネルギー分散型X線分光法(EDX)や波長分散X線分光法(WDX)によって、主に材料組成の変化を見ている。後方散乱電子を検出する場合には、電子線後方散乱回折法(EBSD)によって、主に材料の組成や結晶状態の変化を見ている。
【0094】
透光性基板1は、酸化ケイ素を主成分とする材料で形成されているEB欠陥修正を行う場合における位相シフト膜2と透光性基板1との間での終点検出では、修正の進行に伴う窒素の検出強度の低下から酸素の検出強度の上昇への変化を見て判定することになる。この点を考慮すると、位相シフト2の透光性基板1と接する側の層は、窒素が50原子%以上含有されている低透過層21とすることが、EB欠陥修正時の終点検出に有利である。
【0095】
また、位相シフト膜2をドライエッチングする際にも同じことが言える。位相シフト2の透光性基板1と接する側の層を窒素が50原子%以上含有されている低透過層21とすることにより、位相シフト膜2のドライエッチングの終点検出に窒素を使用でき、エッチング終点の検出精度が高まるので好ましい。
【0096】
第1および第2の実施形態のマスクブランクにおいて、低透過層21は、ArF露光光に対する屈折率nが2.0以上であることが好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましく、そして、消衰係数kが0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、低透過層21は、ArF露光光に対する屈折率nが3.0未満であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、そして、消衰係数kが1.0未満であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることがより一層好ましい。
第1の実施形態のマスクブランクにおいて、高透過層22は、ArF露光光に対する屈折率nが2.0未満であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましく、そして、消衰係数kが0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、高透過層22は、ArF露光光に対する屈折率nが1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、そして、消衰係数kが0.0以上であることが好ましい。
一方、第2の実施形態のマスクブランクにおいて、高透過層22は、ArF露光光に対する屈折率nが2.0未満であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.6以下であることがさらに好ましく、そして、消衰係数kが0.15以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。また、高透過層22は、ArF露光光に対する屈折率nが1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、そして、消衰係数kが0.0以上であることが好ましい。
【0097】
6層以上の積層構造で位相シフト膜2を構成した場合に、位相シフト膜2として求められる光学特性であるArF露光光に対する所定の位相差と所定の透過率を満たすには、第1および第2の実施形態のマスクブランクの高透過層22及び低透過層21は、それぞれ上記の屈折率nと消衰係数kの範囲になければ実現が困難であるためである。
【0098】
薄膜の屈折率n及び消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度及び結晶状態なども、屈折率n及び消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率n及び消衰係数kとなるように成膜する。低透過層21及び高透過層22を、上記の屈折率n及び消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガスの混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、ターゲットに印加する電力、ターゲットと透光性基板との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。また、これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される薄膜が所望の屈折率n及び消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
【0099】
低透過層21及び高透過層22は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリング及びイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
【0100】
低透過層21を反応性スパッタリングによって形成する場合は、ターゲットとしてケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、ガスとして窒素系ガスと貴ガスを含むスパッタリングガスを用いるのが好ましい。この反応性スパッタリングでは、スパッタリングガスが、成膜が不安定になる傾向を有する遷移モードとなる窒素ガスの混合比率の範囲よりも多い窒素ガスの混合比率、いわゆるポイズンモード(反応モード)に選定されることが好ましい。このことにより、面内及び製造ロット間で安定した膜厚及び組成の低透過層21を形成することが可能になる。
【0101】
低透過層形成工程で用いられる窒素系ガスは、窒素を含有するガスであればいずれのガスも適用可能である。上記の通り、低透過層21は、酸素含有量を低く抑えることが好ましいため、酸素を含有しない窒素系ガスを適用することが好ましく、窒素ガス(Nガス)を適用することがより好ましい。
また、低透過層形成工程で用いられる貴ガスは、いずれの貴ガスも適用可能である。この貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取り込ませることができる。
【0102】
第1の実施形態の高透過層22は、例えば、ターゲットとして二酸化ケイ素(SiO)を、スパッタリングガスとして貴ガスを用いたRFスパッタリングによって形成することができる。この方法は、成膜レートも高く、形成される膜の組成が面内及び製造ロット間で安定しているという特徴がある。
高透過層22を反応性スパッタリングによって形成する場合は、ターゲットとしてケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、ガスとして酸素ガスと貴ガスを含むスパッタリングガスを用いるのが好ましい。
ここで、高透過層形成工程で用いられる貴ガスは、いずれの貴ガスも適用可能である。この貴ガスとして好ましいものとしては、アルゴン、クリプトン、キセノンが挙げられる。また、薄膜の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを薄膜に積極的に取り込ませることができる。
【0103】
一方、第2の実施形態の高透過層22は、ターゲットとしてケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガス及び酸素ガスの反応性ガスと貴ガスを含むスパッタリングガスを用いた反応性スパッタリングによって形成することが好ましい。なお、高透過層22を反応性スパッタリングで形成するときに用いる反応性ガスに、酸化窒素系ガスを選択してもよい。
【0104】
位相シフト膜2は、図1に示されているように、透光性基板1から最も離れた位置に、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層23を備えることが好ましい。
位相シフト膜2の高透過層22は低透過層21に比べてEB欠陥修正の修正レートが大幅に遅いので、低透過層21の層数に比較して高透過層22の層数を少なくするのが好ましい。また、高透過層22としては最も高いところに位置する高透過層(最上高透過層22′)の上にケイ素と窒素を含有する材料からなる最上層23を形成すると、EB欠陥修正の修正レートが速い混合層が最上高透過層22′の上に形成され、EB欠陥修正の修正レートが速くなる。これらのことから、位相シフト膜2の最上層は、高透過層22ではなくケイ素、窒素及び酸素からなる材料、またはこの材料に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層23であることが好ましい。また、この最上層23を設けることによって、位相シフト膜2の膜応力の調整が容易になる。
【0105】
酸素を積極的に含有させず、かつ窒素を含有させたケイ素系材料膜は、ArF露光光に対する耐光性は高いが、酸素を積極的に含有させたケイ素系材料膜に比べて耐薬性が低い傾向にある。また、位相シフト膜2の透光性基板1側とは反対側の最上層23として、酸素を積極的に含有させず、かつ窒素を含有させた低透過層21または高透過層22を配置したマスクブランクの場合、そのマスクブランクから作製した位相シフトマスクに対してマスク洗浄を行うことや大気中での保管を行うことによって、位相シフト膜2の表層が酸化していくことを回避することは難しい。位相シフト膜2の表層が酸化すると、薄膜の成膜時の光学特性から大きく変わってしまう。そこで、低透過層21及び高透過層22の積層構造の上に、さらに、ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、またはこの材料に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成された最上層23を設けることが好ましい。
【0106】
ケイ素、窒素及び酸素からなる材料、または半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素とケイ素と窒素と酸素とからなる材料で形成された最上層23は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成のほか、層の厚さ方向で組成傾斜した構成(最上層23が透光性基板1から遠ざかっていくに従い層中の酸素含有量が増加していく組成傾斜を有する構成)も含まれる。層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層23に好適な材料としては、SiONが挙げられる。層の厚さ方向で組成傾斜した構成の最上層23としては、透光性基板1側がSiNであり、透光性基板1から遠ざかっていくに従って酸素含有量が増加して、表層がSiOまたはSiONである構成であることが好ましい。
【0107】
最上層23は、スパッタリングによって形成されるが、DCスパッタリング、RFスパッタリング及びイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。導電性が低いターゲット(ケイ素ターゲット、半金属元素を含有しないあるいは含有量の少ないケイ素化合物ターゲットなど)を用いる場合においては、RFスパッタリングやイオンビームスパッタリングを適用することが好ましいが、成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
【0108】
また、マスクブランク100の製造方法では、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、貴ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって、位相シフト膜2の透光性基板1から最も離れた位置に最上層23を形成する最上層形成工程を有することが好ましい。
さらに、このマスクブランク100の製造方法では、ケイ素ターゲットを用い、窒素ガスと貴ガスからなるスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって、位相シフト膜2の透光性基板1から最も離れた位置に最上層23を形成し、前記最上層23の少なくとも表層を酸化させる処理を行う最上層形成工程を有することがより好ましい。この場合における最上層23の表層を酸化させる処理としては、大気中などの酸素を含有する気体中における加熱処理、大気中などの酸素を含有する気体中でのフラッシュランプ等の光照射処理、オゾンや酸素プラズマを最上層23に接触させる処理などが挙げられる。
【0109】
最上層23の形成には、ケイ素ターゲットまたはケイ素に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガスと酸素ガスと貴ガスとを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成する最上層形成工程を適用することができる。この最上層形成工程は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層23、及び組成傾斜した構成の最上層23のいずれの最上層23の形成にも適用できる。
また、最上層23の形成には、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットまたは二酸化ケイ素(SiO)に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素系ガスと貴ガスを含むスパッタリングガス中でのスパッタリングによって形成する最上層形成工程を適用することができる。この最上層形成工程は、層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成の最上層23と、組成傾斜した構成の最上層23のいずれの最上層の形成にも適用できる。
なお、最上層23は必須ではなく、位相シフト膜2の最上面が高透過層22(22′)となっていてもよい。
【0110】
[[遮光膜]]
マスクブランク100において、位相シフト膜2上に遮光膜3を備えることが好ましい。一般に、位相シフトマスク200(図2参照)では、転写パターンが形成される領域(転写パターン形成領域)の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。位相シフトマスク200の外周領域では、光学濃度が2.0よりも大きいことが少なくとも求められている。上記の通り、位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは上記の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク100を製造する段階で位相シフト膜2の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜3を積層しておくことが望まれる。このようなマスクブランク100の構成とすることで、位相シフト膜2を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に上記の光学濃度が確保された位相シフトマスク200を製造することができる。なお、マスクブランク100は、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度が2.5以上であると好ましく、2.8以上であるとより好ましい。また、遮光膜3の薄膜化のため、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度は4.0以下であると好ましい。
【0111】
遮光膜3は、単層構造及び2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜3及び2層以上の積層構造の遮光膜3の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
【0112】
遮光膜3は、位相シフト膜2との間に別の膜を介さない場合においては、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。この場合、遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。この遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素及びフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。
【0113】
一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素及びフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。また、遮光膜3を形成するクロムを含有する材料に、インジウム、モリブデン及びスズのうち1以上の元素を含有させてもよい。インジウム、モリブデン及びスズのうち1以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
【0114】
一方、マスクブランク100において、遮光膜3と位相シフト膜2との間に別の膜を介する構成とする場合においては、前記のクロムを含有する材料でその別の膜(エッチングストッパ兼エッチングマスク膜)を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜3を形成する構成とすることが好ましい。クロムを含有する材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングされるが、有機系材料で形成されるレジスト膜は、この混合ガスでエッチングされやすい。ケイ素を含有する材料は、一般にフッ素系ガスや塩素系ガスでエッチングされる。これらのエッチングガスは基本的に酸素を含有しないため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングする場合よりも、有機系材料で形成されるレジスト膜の減膜量が低減できる。このため、レジスト膜の膜厚を低減することができる。
【0115】
遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。これは、このマスクブランク100から位相シフトマスク200を作製した場合、遮光膜3で形成されるパターンは、基本的に外周領域の遮光帯パターンであり、転写パターン形成領域に比べてArF露光光が照射される積算量が少ないことや、この遮光膜3が微細パターンで残っていることは稀であり、ArF耐光性が低くても実質的な問題は生じにくいためである。また、遮光膜3に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜の厚さを薄くすることが可能となるためである。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
【0116】
一方、遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料として、ケイ素及び窒素からなる材料、またはケイ素及び窒素からなる材料に半金属元素及び非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を適用してもよい。
【0117】
上記の位相シフト膜2に積層して遮光膜3を備えるマスクブランク100において、遮光膜3の上に遮光膜3をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜4をさらに積層させた構成とするとより好ましい。遮光膜3は、所定の光学濃度を確保する機能が必須であるため、その厚さを低減するには限界がある。ハードマスク膜4は、その直下の遮光膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学特性の制限を受けない。このため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができる。
【0118】
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO、SiN、SiON等で形成されることがより好ましい。また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素及び炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その材料として、例えば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。一方、このハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合は、上記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
【0119】
マスクブランク100において、透光性基板1と位相シフト膜2との間に、透光性基板1及び位相シフト膜2ともにエッチング選択性を有する材料(上記のクロムを含有する材料、例えば、Cr、CrN、CrC、CrO、CrON、CrC等)からなるエッチングストッパー膜を形成してよい。なお、このエッチングストッパー膜をアルミニウムを含有する材料で形成してもよい。
【0120】
マスクブランク100において、上記ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜4に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution
Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。
【0121】
[位相シフトマスクとその製造方法]
図2に、本発明の実施形態であるマスクブランク100から位相シフトマスク200を製造する工程の断面模式図を示す。
【0122】
本発明の第1の実施形態の位相シフトマスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)を備えた位相シフトマスクであって、位相シフト膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜2を透過した露光光に対して位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、位相シフト膜2は、透光性基板1側から低透過層21と高透過層22がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層21は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、高透過層22は、ケイ素及び酸素を含有し、酸素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、低透過層21の厚さは、前記高透過層22の厚さよりも厚く、高透過層22は、厚さが4nm以下であることを特徴とするものである。
【0123】
また、本発明の第2の実施形態の位相シフトマスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)を備えた位相シフトマスクであって、位相シフト膜2は、ArFエキシマレーザーの露光光を10%以上の透過率で透過させる機能と、位相シフト膜2を透過した露光光に対して位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有し、位相シフト膜2は、透光性基板1側から低透過層21と高透過層22がこの順で交互に6層以上積層した構造を含み、低透過層21は、ケイ素及び窒素を含有し、窒素の含有量が50原子%以上である材料で形成されており、高透過層は、ケイ素、窒素及び酸素を含有し、窒素の含有量が10原子%以上かつ酸素の含有量が30原子%以上である材料で形成されており、低透過層21の厚さは、前記高透過層22の厚さよりも厚く、高透過層22は、厚さが4nm以下であることを特徴とするものである。
【0124】
この第1の実施形態の位相シフトマスク200は、第1の実施形態のマスクブランク100と同様の技術的特徴を有している。また、第2の実施形態の位相シフトマスク200は、第2の実施形態のマスクブランク100と同様の技術的特徴を有している。各実施形態の位相シフトマスク200における透光性基板1、位相シフト膜2の低透過層21、高透過層22及び最上層23、並びに遮光膜3に関する事項については、各実施形態のマスクブランク100と同様である。
【0125】
また、本発明の第1および第2の実施形態の位相シフトマスク200の製造方法は、上記の第1および第2の実施形態のマスクブランク100を用いるものであって、ドライエッチングにより遮光膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜3(遮光パターン3a)をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程と、遮光帯を含むパターンを有するレジスト膜(レジストパターン6b)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜3(遮光パターン3a)に遮光帯を含むパターン(遮光パターン3b)を形成する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0126】
このような位相シフトマスク200は、ArF耐光性が高く、ArFエキシマレーザーの露光光を積算照射された後のものであっても、位相シフトパターン2aのCD(Critical Dimension)変化(太り)を小さい範囲に抑制できる。
【0127】
近年のDRAM hp32nm世代に対応する微細パターンを有する位相シフトマスク200を製造する場合、マスクブランク100の位相シフト膜2にドライエッチングによって転写パターンを形成した段階で、黒欠陥部分が全くないというケースはかなり少ない。また、上記の微細パターンを有する位相シフト膜2の黒欠陥部分に対して行う欠陥修正には、EB欠陥修正が適用されることが多い。位相シフト膜2は、EB欠陥修正に対する修正レートが速く、位相シフト膜2の透光性基板1との間でのEB欠陥修正に対する修正レート比が高い。このため、位相シフト膜2の黒欠陥部分に対して、透光性基板1の表面を過度に掘り込まれることが抑制され、修正後の位相シフトマスク200は高い転写精度を有する。
【0128】
これらのことから、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、黒欠陥部分に対するEB欠陥修正とArF露光光の積算照射が行われた位相シフトマスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写する際も、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。
【0129】
以下、図2に示す製造工程にしたがって、第1および第2の実施形態の位相シフトマスク200の製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用している。
【0130】
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(図2(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成する(図2(b)参照)。
【0131】
次に、レジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図2(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aも除去する(図2(d)参照)。
【0132】
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(図2(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成する(図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得る(図2(g)参照)。
【0133】
上記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。例えば、塩素系ガスとして、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、BCl等が挙げられる。また、上記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。例えば、フッ素系ガスとして、SF、CHF、CF、C、C等が挙げられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス材料の透光性基板1に対するエッチングレートが比較的低いため、透光性基板1へのダメージをより小さくすることができる。
【0134】
[半導体デバイスの製造方法]
本発明の第1および第2の実施形態の半導体デバイスの製造方法は、前記の第1および第2の実施形態の位相シフトマスク200または前記の第1および第2の実施形態のマスクブランク100を用いて製造された第1および第2の実施形態の位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴としている。本発明の位相シフトマスク200やマスクブランク100は、上記の通りの効果を有するため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに、黒欠陥部分に対するEB欠陥修正とArF露光光の積算照射が行われた位相シフトマスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写する際も、半導体デバイス上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。このため、このレジスト膜のパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、精度不足に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面及び主表面が所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理を施されたものであった。
【0136】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)及び窒素(N)の混合ガス(流量比 Kr:He:N=1:10:3,圧力=0.09Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を2.8kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、透光性基板1上に、ケイ素及び窒素からなる低透過層21(Si:N=44原子%:56原子%)を14.5nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で低透過層のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの低透過層の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが2.66、消衰係数kが0.38であった。
【0137】
なお、この低透過層21を成膜する際に用いた条件は、その使用した枚葉式RFスパッタ装置で事前に、スパッタリングガスにおけるKrガス、Heガス及びNガスの混合ガス中のNガスの流量比と、成膜速度との関係を検証し、ポイズンモード(反応モード)の領域で安定的に成膜できる流量比等の成膜条件を選定している。また、低透過層21の組成は、XPS(X線光電子分光法)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
【0138】
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、低透過層21が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、低透過層21上に、ケイ素及び酸素からなる高透過層22(Si:O=34原子%:66原子%)を2.0nmの厚さで形成した。別の透光性基板の主表面に対して、同条件で高透過層22のみを形成し、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 M−2000D)を用いてこの高透過層22の光学特性を測定したところ、波長193nmにおける屈折率nが1.59、消衰係数kが0.0であった。
【0139】
以上の手順により、透光性基板1の表面に接して、低透過層21と高透過層22がこの順に積層した1組の積層構造が形成された。次に、この1組の積層構造が形成された透光性基板1の高透過層22の表面に接して、同様の手順で低透過層21と高透過層22の積層構造をさらに2組形成した。
【0140】
次に、この低透過層21と高透過層22の積層構造を3組(層数6)備える透光性基板1を枚葉式RFスパッタ装置内に設置し、低透過層21を形成するときと同じ成膜条件で、透光性基板1側から最も遠い高透過層22の表面に接して最上層23を14.5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、低透過層21と高透過層22の積層構造を3組有し、その上に最上層23を有する、合計7層構造の位相シフト膜2を合計膜厚64.0nmで形成した。
【0141】
次に、この位相シフト膜2が形成された透光性基板1に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM−193)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率及び位相差を測定したところ、透過率は17.9%、位相差が175.4度であった。
【0142】
別の透光性基板1に対し、同様の手順で加熱処理を行った後の位相シフト膜2を形成し、位相シフト膜2の断面をTEM(Transmission Electron Microscopy)で観察したところ、最上層23は、透光性基板1側から遠ざかるに従い、酸素含有量が増加している組成傾斜を有する構造となっていた。また、低透過層21と高透過層22の界面近傍に約0.4nmの混合領域があることが確認された。
【0143】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に加熱処理後の位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、及びヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO:He=18:33:28,圧力=0.15Pa)をスパッタリングガスとし、DC電源の電力を1.8kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2の表面に接して、CrOCからなる遮光膜3を56nmの厚さで形成した。
【0144】
さらに、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2及び遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとし、RF電源の電力を1.5kWとし、RFスパッタリングにより遮光膜3上に、ケイ素及び酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、透光性基板1上に、低透過層21と高透過層22が交互に6層形成され、さらにその上に最上層23が形成された計7層構造の位相シフト膜2、遮光膜3及びハードマスク膜4が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
【0145】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理及び洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。なお、このとき、電子線描画した第1のパターンには、位相シフト膜2に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンのほかにプログラム欠陥を加えておいた。
【0146】
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図2(b)参照)。
【0147】
次に、第1のレジストパターン5aを除去した。続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=13:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(図2(c)参照)。
【0148】
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(図2(d)参照)。
【0149】
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光帯等の遮光膜3に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した(図2(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(図2(g)参照)。
【0150】
製造した実施例1のハーフトーン型の位相シフトマスク200に対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン2aに黒欠陥の存在が確認された。その黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行ったところ、透光性基板1に対する位相シフトパターン2aの修正レート比が3.7と高く、透光性基板1の表面へのエッチングを最小限にとどめることができた。
【0151】
次に、このEB欠陥修正後の実施例1の位相シフトマスク200の位相シフトパターン2aに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量40kJ/cmで間欠照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターン2aのCD変化量は、1.2nm以下であり、位相シフトマスク200として使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0152】
EB欠陥修正及びArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の実施例1の位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。
このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。また、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、それ以外の領域の転写像に比べてそん色のないものであった。この結果から、EB欠陥修正及びArFエキシマレーザーの積算照射を行った後の実施例1の位相シフトマスク200を露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合でも、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。また、SiOよりもSiONの方が、EB修正を幾分しやすいことを考慮すると、第2の実施形態における窒素を含有させた高透過層22を有する位相シフトマスク200を用いた場合でも、実施例1の位相シフトマスク200と同様の効果が得られるものと考えられる。
【0153】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、位相シフト膜を透光性基板上に厚さ58nmの低透過層と厚さ6nmの高透過層をこの順に1層ずつ計2層に変更した以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造された。したがって、比較例1のマスクブランクの位相シフト膜は低透過層と高透過層からなる合計膜厚64nmの2層構造膜である。ここで、低透過層と高透過層の形成条件は実施例1と同じである。
【0154】
この比較例1の場合においても、位相シフト膜が形成された透光性基板に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。
【0155】
以上の手順により、透光性基板上に、2層構造の位相シフト膜、遮光膜及びハードマスク膜が積層した構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
【0156】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを製造した。位相シフトパターンの断面形状を観察したところ、低透過層がサイドエッチングされた段差形状であった。
また、製造した比較例1のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行った。その結果、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターンに黒欠陥の存在が確認された。その黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行ったところ、位相シフトパターンと透光性基板との間の修正レート比が1.5と低いことから、透光性基板の表面へのエッチングが進んでいた。また、位相シフトパターンの断面形状は低透過層の側壁面が後退した段差形状であった。
【0157】
次に、このEB欠陥修正後の比較例1の位相シフトマスクの位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザー光を積算量40kJ/cmで間欠照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は1.2nm以下であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0158】
次に、EB欠陥修正及びArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の比較例1の位相シフトマスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。
このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、EB欠陥修正を行った部分以外では、概ね設計仕様を十分に満たしていた。しかし、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、透光性基板へのエッチングの影響等に起因して転写不良が発生するレベルのものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。
【0159】
(比較例2)
[マスクブランクの製造]
比較例2のマスクブランクは、位相シフト膜の高透過層の厚さを2.0nmから13nmに変更し、位相シフト膜が所定の透過率と位相差となるように低透過層の厚さも26nmに変更し、最上層を設けない以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で製造された。具体的には、比較例2の位相シフト膜は、透光性基板の表面に接して、実施例1と同じ手順で26nmの厚さの低透過層と13nmの厚さの高透過層を交互に計4層形成し、その上に実施例1と同じ構成の遮光膜及びハードマスク膜を形成した。
【0160】
この比較例2の場合においても、位相シフト膜が形成された透光性基板に対し、大気中において加熱温度500℃、処理時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理後の位相シフト膜2に対し、位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM−193)でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率及び位相差を測定したところ、透過率が20.7%、位相差は170度であった。
【0161】
以上の手順により、透光性基板上に、厚さが26nmの低透過層と厚さが13nmの高透過層が交互に形成された計4層構造の位相シフト膜、遮光膜及びハードマスク膜が積層した構造を備えるマスクブランクを製造した。
【0162】
[位相シフトマスクの製造]
次に、この比較例2のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例2の位相シフトマスクを製造した。製造した比較例2のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターンに黒欠陥の存在が確認された。その黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行ったところ、位相シフトパターンと透光性基板との間の修正レート比が2.6と低いことから、透光性基板の表面へのエッチングが進んでいた。
【0163】
次に、このEB欠陥修正後の比較例2の位相シフトマスクの位相シフトパターンに対して、ArFエキシマレーザー光を積算照射量40kJ/cmで間欠照射する処理を行った。この照射処理の前後における位相シフトパターンのCD変化量は1.2nm以下であり、位相シフトマスクとして使用可能な範囲のCD変化量であった。
【0164】
EB欠陥修正及びArFエキシマレーザー光の照射処理を行った後の比較例2の位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。
このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、EB欠陥修正を行った部分以外では、概ね設計仕様を十分に満たしていた。しかし、EB欠陥修正を行った部分の転写像は、透光性基板へのエッチングの影響等に起因して転写不良が発生するレベルのものであった。この結果から、EB欠陥修正を行った後の比較例2の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージをセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンには、回路パターンの断線や短絡が発生することが予想される。
【符号の説明】
【0165】
1 透光性基板
2 位相シフト膜
2a 位相シフトパターン
21 低透過層
22 高透過層
22′ 最上高透過層
23 最上層
3 遮光膜
3a,3b 遮光パターン
4 ハードマスク膜
4a ハードマスクパターン
5a 第1のレジストパターン
6b 第2のレジストパターン
100 マスクブランク
200 位相シフトマスク
図1
図2