(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430761
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】パウチ容器、パウチ包装体及び注出口部材
(51)【国際特許分類】
B65D 33/38 20060101AFI20181119BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20181119BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20181119BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
B65D33/38
B65D33/00 A
B65D83/06 R
B65D77/30 C
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-194664(P2014-194664)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2016-64850(P2016-64850A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】100104640
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 陽一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 忠
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 智貴
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−140329(JP,A)
【文献】
国際公開第99/019222(WO,A1)
【文献】
実開昭60−032280(JP,U)
【文献】
特開2014−043250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00 − 33/38
B65D 83/06
B65D 77/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性シートによって形成されたパウチと、前記パウチに装着された注出口部材とを備えたパウチ容器において、
前記注出口部材は、前記パウチに接合される装着部と、前記パウチの外側に突出する前記装着部に連設された口部と、前記口部を開閉する蓋部と、前記パウチ内に突出する前記装着部に連設された筒状の計量部とを有し、
前記計量部は、その先端が閉塞されていると共に、その周面に内容物の導入口が形成されており、
前記計量部の先端が上を向くように反転または傾倒させることにより前記計量部を内容物に埋没させた埋没姿勢から元の姿勢に戻すことで前記パウチ内に充填された内容物が前記導入口から前記計量部内に導入されるようになっており、
前記導入口は、前記埋没姿勢の状態で下側に位置している前記計量部の軸方向の基端部から中間部に至る領域に形成されていることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
前記導入口は、その口幅が前記装着部側に向かって大きくなっている請求項1に記載のパウチ容器。
【請求項3】
前記計量部は、その先端が先細形状を有している請求項1または2に記載のパウチ容器。
【請求項4】
前記パウチは、上端から斜め下方に延びる傾斜縁を有し、
前記傾斜縁に前記注出口部材が装着されており、
前記計量部に形成された前記導入口は、前記パウチの上端側を向くように開口されている請求項1、2または3に記載のパウチ容器。
【請求項5】
前記注出口部材の前記計量部または前記パウチにおける前記計量部に対応する部分には、計量目盛りが付されている請求項1、2、3または4に記載のパウチ容器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のパウチ容器と、
当該パウチ容器の内部に充填包装された内容物と、を備えるパウチ包装体。
【請求項7】
パウチに充填された内容物を注出するために前記パウチに装着される注出口部材であって、
前記パウチにヒートシールされる装着部と、
前記パウチの外側に突出するように、前記装着部に連設された口部と、
前記口部を開閉する蓋部と、
前記パウチ内に突出するように、前記装着部に連設された筒状の計量部と
を備え、
前記計量部は、その先端が閉塞されており、前記装着部に接続されている基端部の周面に内容物の導入口が形成されていることを特徴とする注出口部材。
【請求項8】
前記導入口は、その口幅が前記装着部側に向かって大きくなっている請求項7に記載の注出口部材。
【請求項9】
前記計量部は、その先端が先細形状を有している請求項7または8に記載の注出口部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柔軟性シートによって形成されたパウチと、パウチに装着された注出口部材とを備えたパウチ容器、そのパウチ容器に内容物が充填包装されたパウチ包装体及び注出口部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体洗剤や粉末洗剤等の液体、粉体、顆粒状の内容物を充填包装するパウチ容器には、内容物を注ぎ出すための注出口部材がパウチに装着されており、こういった注出口部材には、所定量の内容物を計量して注出することができるように、計量機能を有するものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
計量機能付きの注出口部材としては、例えば、
図15に示すようなものがある。この注出口部材50は、同図に示すように、一端側がパウチPに装着される、両端部が開放された筒状の口部本体51と、この口部本体51にスライド自在に嵌入される、両端部が閉塞された筒状の計量容器52とを備えており、計量容器52の周面には、その一端側に内容物の導入口52aが、他端側に内容物の注出口52bがそれぞれ形成されている。
【0004】
前記計量容器52を口部本体51の一端側にスライドさせて、計量容器52の一端側を口部本体51からパウチP内に突出させると、導入口52aが開放されると共に計量容器52の他端側が口部本体51内に入り込んで注出口52bが閉塞されるようになっており、計量容器52を逆方向にスライドさせて、その他端側を口部本体51の他端側から突出させると、注出口52bが開放されると共にパウチP内に突出している計量容器52の一端側が口部本体51内に入り込んで、導入口52aが閉塞されるようになっている。
【0005】
従って、
図16(a)に示すように、計量容器52の一端側を口部本体51からパウチP内に突出させることによって導入口52aを開放した状態で、口部本体51の一端側が下になるように、パウチ容器を逆さまにすると、内容物が導入口52aから計量容器52内に導入される。計量容器52で一定量の内容物を計量した後、同図(b)に示すように、計量容器52の他端側を口部本体51の他端側から突出させることによって導入口52aを閉塞すると共に注出口52bを開放すると、計量された一定量の内容物が注出口52bから注出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−206422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような注出口部材50は、計量容器52が口部本体51から脱落しないように、口部本体51に対して計量容器52が所定範囲でスライドする構造を採用しなければならず、構造が複雑で、製造コストが高くなると共に、内容物を計量して注出する際の計量容器52のスライド操作が面倒であるといった問題がある。また、内容物が粉粒体である場合、その粉や粒の大きさによっては、口部本体51と計量容器52の間に噛み込みスムースなスライド操作が困難になるおそれもある。
【0008】
また、上述したような注出口部材50は、所定長さの計量容器52を口部本体51に対してスライドさせなければならないので、注出口部材50がパウチPから大きく突出することになり、パウチ容器が嵩高になるといった問題もある。
【0009】
そこで、この発明の課題は、構造が簡単で廉価に製造することができると共に、内容物の計量作業も簡単に行うことができ、しかも、パウチから大きく突出することのない注出口部材及びそういった注出口部材を備えたパウチ容器、並びに、そういったパウチ容器に内容物が充填包装されたパウチ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、柔軟性シートによって形成されたパウチと、前記パウチに装着された注出口部材とを備えたパウチ容器において、前記注出口部材は、前記パウチに接合される装着部と、前記パウチの外側に突出する前記装着部に連設された口部と、前記口部を開閉する蓋部と、前記パウチ内に突出する前記装着部に連設された筒状の計量部とを有し、前記計量部は、その先端が閉塞されて
いると共に、その周面に内容物の導入口が形成されて
おり、前記計量部の先端が上を向くように反転または傾倒させることにより前記計量部を内容物に埋没させた埋没姿勢から元の姿勢に戻すことで前記パウチ内に充填された内容物が前記導入口から前記計量部内に導入されるようになっており、前記導入口は、前記埋没姿勢の状態で下側に位置している前記計量部の軸方向の基端部から中間部に至る領域に形成されていることを特徴とするパウチ容器を提供するものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明のパウチ容器において、前記導入口は、その口幅が前記装着部側に向かって大きくなっていることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明のパウチ容器において、前記計量部は、その先端が先細形状を有していることを特徴としている。
【0011】
また、請求項
4に係る発明は、請求項1
、2または3に係る発明のパウチ容器において、前記パウチは、上端から斜め下方に延びる傾斜縁を有し、前記傾斜縁に前記注出口部材が装着されており、前記計量部に形成された前記導入口は、前記パウチの上端側を向くように開口されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項
5に係る発明は、請求項1
、2、3または
4に係る発明のパウチ包容器において、前記注出口部材の前記計量部または前記パウチにおける前記計量部に対応する部分に、計量目盛りが付されていることを特徴としている。
【0013】
また、上記の課題を解決するため、請求項
6に係る発明は、請求項1ないし
5のいずれかに記載のパウチ容器と、当該パウチ容器の内部に充填包装された内容物と、を備えるパウチ包装体を提供するものである。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、請求項
7に係る発明は、パウチに充填された内容物を注出するために前記パウチに装着される注出口部材であって、前記パウチにヒートシールされる装着部と、前記パウチの外側に突出するように、前記装着部に連設された口部と、前記口部を開閉する蓋部と、前記パウチ内に突出するように、前記装着部に連設された筒状の計量部とを備え、前記計量部は、その先端が閉塞されており、
前記装着部に接続されている基端部の周面に内容物の導入口が形成されていることを特徴とする注出口部材を提供するものである。
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明の注出口部材において、前記導入口は、その口幅が前記装着部側に向かって大きくなっていることを特徴としている。
請求項9に係る発明は、請求項7または8に係る発明の注出口部材において、前記計量部は、その先端が先細形状を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、請求項1に係る発明のパウチ容器は、パウチに装着された注出口部材が、パウチに接合される装着部と、パウチの外側に突出する、装着部に連設された口部と、口部を開閉する蓋部と、パウチ内に突出する、装着部に連設された筒状の計量部とを有し、計量部は、その先端が閉塞されており、その周面に内容物の導入口が形成されているので、このパウチ容器に内容物が充填包装された、請求項
6に係る発明のパウチ包装体では、まず、注出口部材の口部を蓋部で閉塞した状態で、
計量部の先端が上を向くように反転または傾倒させることにより計量部を内容物に埋没させた埋没姿勢から元の姿勢に戻すことでパウチ内に充填された内容物を導入口から計量部内に導入した後、パウチ包装体全体を揺すって振動させることによって、計量部内に余分に導入された内容物を導入口から排出することで、一定量の内容物を計量し、最後に、蓋部による口部の閉塞を解除した状態で、導入口から計量部に内容物が導入されないように、パウチ包装体全体を傾けながら、計量部に貯留されている内容物を口部から注出することによって、一定量の内容物だけを確実に取り出すことができる。
また、請求項2に係る発明のパウチ容器は、導入口の口幅が装着部側に向かって大きくなっているので、一旦計量した内容物を注出する際に内容物が導入口からこぼれにくい。
また、請求項3に係る発明のパウチ容器は、計量部の先端が先細形状を有しているので、パウチ容器を製造する際、柔軟性シートによって形成されたパウチ内への注出口部材(計量部)の挿入作業性が向上し、パウチ容器の製造適性を良化させることができる。
【0016】
以上のように、このパウチ容器に採用されている注出口部材は、通常の注出口部材に導入口が形成された計量部を連設するだけでよいので、計量容器を口部本体にスライド自在に嵌入している従来の注出口部材に比べて廉価に製造することができる。
【0017】
また、このパウチ容器に内容物が充填包装された、請求項
6に記載のパウチ包装体では、上述したように、パウチ包装体全体を傾けたり、揺すったりするだけで、一定量の内容物を取り出すことができるので、内容物を計量して注出する際に計量容器をスライド操作しなければならない注出口部材を採用している従来のパウチ包装体に比べて、内容物を計量して注出するまでの作業を簡単に行うことができる。
【0018】
また、このパウチ容器では、通常の注出口部材に付加された計量部がパウチ内に位置しているので、その外形は、計量機能を備えていない一般的なパウチ容器と異なることがなく、計量容器をスライド操作しなければならない注出口部材を採用している従来のパウチ容器のように、注出口部材がパウチから大きく突出することもない。
【0019】
また、請求項
4に係る発明のパウチ容器は、パウチが、上端から斜め下方に延びる傾斜縁を有し、その傾斜縁に注出口部材が装着されており、計量部に形成された導入口は、パウチの上端側を向くように開口されているので、このパウチ容器に内容物が充填包装された、請求項
6に係る発明のパウチ包装体では、内容物を計量した後は、導入口の位置等を意識することなく、同一タイプのパウチ包装体と同様に内容物を注出することができ、取扱性がよい。
【0020】
また、請求項
5に係る発明のパウチ容器は、注出口部材の計量部またはパウチにおける計量部に対応する部分に、計量目盛りが付されているので、このパウチ容器に内容物が充填包装された、請求項
6に記載のパウチ包装体では、一定量の内容物を精度良く計量することができる。
【0021】
また、請求項
7〜9に係る発明の注出口部材は、パウチに装着することによって、請求項1
〜3に係る発明のパウチ容器と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明に係るパウチ包装体の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同上のパウチ包装体を構成しているパウチ容器を示す正面図である。
【
図3】(a)は同上のパウチ包装体を構成しているスパウトを側面図、(b)は同上のスパウトを示す正面図、(c)は(a)のX−X線に沿った断面図である。
【
図4】同上のパウチ容器におけるスパウト部分を示す部分拡大正面図である。
【
図5】同上のスパウトを構成している計量部の導入穴の形成状態を説明するための説明図である。
【
図6】同上のパウチ包装体から一定量の内容物を計量して注出する作業を示す工程図である。
【
図7】同上のパウチ包装体から一定量の内容物を計量して注出する作業を示す工程図である。
【
図8】同上のパウチ包装体から一定量の内容物を計量して注出する作業を示す工程図である。
【
図9】一定量の内容物を計量した状態を示す同上のパウチ包装体の部分拡大正面図である。
【
図10】同上のパウチ包装体から一定量の内容物を計量して注出する作業を示す工程図である。
【
図11】同上のパウチ包装体の変形例を示す部分拡大正面図である。
【
図12】(a)は同上のスパウトの変形例を示す側面図、(b)は同上のスパウトを示す正面図である。
【
図13】(a)、(b)は同上のスパウトの変形例を示す正面図、(c)は(b)のX−X線に沿った断面図である。
【
図14】(a)、(b)は同上のスパウトの変形例を示す正面図である。
【
図15】従来のパウチ包装体に採用されている計量機能付きのスパウトを示す断面図である。
【
図16】(a)、(b)は同上のスパウトによる内容物の計量方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、液体洗剤や粉末洗剤等の液体、粉体、顆粒状の内容物がパウチ容器2に充填包装されたパウチ包装体1を示している。パウチ容器2は、同図に示すように、厚さ80〜200μm程度の柔軟性シートによって形成された、扁平状態に折り畳み可能なパウチ10と、注出口部材としてこのパウチ10に装着される熱接着性樹脂によって形成されたスパウト20ととから構成されている。
【0024】
前記パウチ10を形成している柔軟性シートは、通常、単層又は複層の樹脂フィルムから構成されており、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
【0025】
前記ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0026】
前記シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0027】
前記ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0028】
前記パウチ10は、
図1及び
図2に示すように、正面部及び背面部を形成する外装シート11、12及び両外装シート11、12の間に下部から内側に折り込まれてボトムガセット部を形成するガセットシート13から構成されている。外装シート11、12は、上端コーナー部の一方に傾斜縁を有する略5角形状であり、当該傾斜縁がスパウト装着縁部10Aとなる。折り込まれたガセットシート13の周縁部が外装シート11、12の下部周縁にヒートシールされると共に、外装シート11、12におけるガセットシート13にヒートシールされない両側縁部同士が相互にヒートシールされることで袋状に形成されている。また、ガセットシート13の両側縁には、二つ折りした状態で相互に一致する切欠部13aがそれぞれ形成されており、この切欠部13aを介して、外装シート11、12の両側縁における下端部同士が部分的にヒートシールされている。なお、
図1及び
図2における交斜線部分が、パウチ10のヒートシール部分を示している。
【0029】
パウチ容器2において、傾斜縁であるスパウト装着縁部10Aには、スパウト20が挟み込まれた状態でヒートシールされているが、スパウト装着縁部10Aに隣接する上端縁は、内容物を充填するための充填口となる充填口形成縁部10Bとして、未シール状態となっている。充填口形成縁部10Bは、内容物の充填後に、ヒートシールすることによって閉塞される。
【0030】
前記スパウト20は、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等)等の熱接着性樹脂の成形物からなり、
図3に示すように、外装シート11、12のスパウト装着縁部10Aに挟み込まれた状態で外装シート11、12にヒートシールされる平面舟形状の装着部21と、パウチ10の外側に突出するように、装着部21に連設された口部22と、この口部22に樹脂ヒンジ24を介して連設されたキャップ23と、パウチ10内に突出するように、装着部21に連設された筒状の計量部25とを備えている。
【0031】
前記計量部25は、同図に示すように、先端部が先細形状で閉塞されており、装着部21に接続されている基端部の周面には、平面舟形状の装着部21の長手方向の一端側(パウチ10の上端側)に、内容物を導入するための略2等辺三角形状の導入口25aが形成されている。そして、
図4に示すように、その導入口25aがパウチ10の上端縁を向くように、パウチ10に装着されている。
【0032】
前記計量部25の形状は特に限定されないが、スパウト20をパウチ10に装着する際、装着部21や計量部25を開口したスパウト装着縁部10A内に挿入しやすくするため、前記計量部25は、先端が先細に形成されていることが望ましい。
【0033】
前記導入口25aは、
図3(c)及び
図5に示すように、円筒体CB(計量部25)の周面を部分的に切除したときに形成される穴の形状を有しており、同図に示す切除部の寸法SDが円筒体CBの直径D(計量部25の直径)の1/4以内であることが望ましい。内容物が導入口25aから計量部25に導入され易くなければならず、しかも、後述するように、計量部25に導入した内容物の余剰分を導入口25aから排出することによって計量するので、ある程度の排出性も必要であり、双方の要求を満たす必要があるからである。また、内容物の導入性を考慮すると、導入口25aの軸方向の長さSLは、計量部25の直径Dの1/4以上であることが望ましい。
【0034】
また、このパウチ包装体では、上述したように、計量部25に導入した内容物の余剰分を導入口25aから排出することによって計量するので、パウチ10の外側から、計量部25内における内容物の貯留状態を確認することができるように、スパウト20の計量部25及びパウチ10における計量部25に対応する部分は透明または半透明になっていることが望ましい。
【0035】
パウチ容器2においてスパウト装着縁部10Aにスパウト20を装着した状態では、
図2に示すように、スパウト20の計量部25が、充填口形成縁部10B側に張り出すことになる。そこで、スパウト20の計量部25の先端は、内容物を充填する際、充填ノズルを充填口形成縁部10Bからパウチ10内に円滑かつ確実に挿入するために、充填口形成縁部10Bにおける内容物の充填口となる未シール部分の長さをLとしたときに、その未シール部分のスパウト装着縁部10A側の端部から他方の端部側にL/3だけ離反した、同図に二点鎖線で示す位置を越えて張り出さないようにしておくことが望ましい。なお、このスパウト20では、装着部21をパウチ10のスパウト装着縁部10Aにヒートシールしたときに、計量部25の軸芯がスパウト装着縁部10Aに直交するように、計量部25が装着部21に連設されているが、計量部25を充填口形成縁部10B側に張り出し難くするために、装着部21をパウチ10の傾斜したスパウト装着縁部10Aにヒートシールしたときに、計量部25の軸芯がより下方側を向くように、口部22の軸芯に対して計量部25の軸芯が傾いた状態で、装着部21に計量部25を連設してもよい。
【0036】
以上のように構成されたパウチ包装体1から一定量の内容物を計量して注出する作業は、例えば、以下のようにして行う。まず、
図6に示すように、スパウト20のキャップ23部分が下を向くように、パウチ包装体1を傾けてスパウト20の計量部25を内容物に埋没させた後、
図7に示すように、パウチ包装体1を元の姿勢に戻しながら、内容物を導入口25aから計量部25内に導入する。
【0037】
パウチ包装体1を元の姿勢に戻した後は、
図8に示すように、パウチ包装体1全体を上下に揺すって振動させることによって、
図9に示すように、計量部25内に導入された内容物の上面が、導入口25aの下端位置で略水平になるように、計量部25内に余分に導入された内容物を導入口25aから排出することで、一定量の内容物を計量し、最後に、
図10に示すように、キャップ23を外して口部22を開放した状態で、導入口25aから計量部25に内容物が導入されないように、パウチ包装体1全体を傾けながら、計量部25に貯留されている内容物を口部22から注出する。
【0038】
以上のように、このパウチ包装体1に採用されているスパウト20は、通常のスパウトに導入口25aが形成された計量部25を連設するだけでよいので、計量機能付きのスパウトを廉価に製造することができる。
【0039】
また、このパウチ包装体1では、上述したように、パウチ包装体1全体を傾けたり、揺すったりするだけで、一定量の内容物を取り出すことができるので、面倒な軽量操作を行う必要がなく、内容物を計量して注出するまでの作業を簡単に行うことができる。
【0040】
また、このパウチ包装体1では、通常のスパウトに付加された計量部25がパウチ10内に位置しているので、その外形は、計量機能を備えていない一般的なパウチ包装体と異なることがなく、デザイン性が低下することもない。
【0041】
また、このパウチ包装体1は、パウチ10における上端縁から側端縁に向けて斜め下方に形成された傾斜縁であるスパウト装着縁部10Aにスパウト20が装着されており、計量部25に形成された導入口25aは、パウチ10の上端縁側を向くように開口されているので、内容物を計量した後は、導入口25aの位置等を意識することなく、計量機能を備えていない同一タイプのパウチ包装体と同様に内容物を注出することができ、取扱性がよい。
【0042】
なお、上述した実施形態では、スパウト20の装着部21部分だけがパウチ10のスパウト装着縁部10Aにヒートシールされているが、例えば、
図11に示すように、スパウト装着縁部10Aの内縁から計量部25の周面における導入口25aの両側部分にわたってヒートシールしてもよい。このようにすれば、導入口25a部分が区画されるので、
図10に示すように、計量後の内容物を注出する際、内容物が導入口25a側に回り込みにくくなり、導入口25aから余分な内容物が導入されにくいという効果が得られる。この場合、計量部25に対する外装シート11、12のヒートシール性を向上させるために、計量部25におけるヒートシールされる外面部分をフラットに形成しておくことが望ましい。
図11における交斜線部分が、ヒートシール部分を示している。
【0043】
なお、上述した実施形態では、計量部25に形成された導入口25aが三角形状を有しているが、これに限定されるものではなく、
図12(a)、(b)に示すように、寸法SDが直径Dの1/4以内であれば、その形状が四角形状であってもよい。ただし、このような四角形状の場合は、一旦計量した内容物を注出する際に導入口25aからこぼれやすくなるので、
図3(b)に示すように、導入口25aの周縁部が、装着部21側に向かって計量部25の軸芯側に傾斜していること、即ち、導入口25aは三角形状であることが望ましい。
【0044】
また、内容物を計量しやすくするために、スパウト20の計量部25やパウチ10における計量部25に対応する部分に、計量用の目盛を付してもよく、
図13(a)に示すように、複数の目盛S1、S2を付すことによって、異なる容量の内容物を計量することが可能となる。
【0045】
また、計量部25Aの形状や大きさは特に限定されず、例えば、同図(b)に示すスパウト20Aのように、計量部25Aの容量を大きくするために、計量部25Aにおける内容物が貯留される部分の断面形状を楕円形にしてもよい。その場合は、計量後の注出時に円滑に注出されるように、導入口25a側に突出させておくことが好ましい。
【0046】
また、上述した実施形態では、口部22に樹脂ヒンジ24を介してキャップ23が連設されたスパウト20について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図14(a)に示すように、スクリューキャップ23Bによって口部22Bを開閉するタイプのスパウト20Bを使用してもよい。
【0047】
また、計量部25が装着部21に一体的に形成されたスパウト20について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、同図(b)に示すスパウト20Cのように、
独立して形成された計量部25Cを装着部21に嵌着するようにしてもよい。このような構成を採用すると、容量の異なる計量部を装着部にすることによって、計量すべき容量を簡単に変更することができるという利点がある。
【0048】
また、上述した実施形態では、スパウト20が装着されたパウチ10のスパウト装着縁部10Aが傾斜縁であるパウチ容器2を使用しているが、これに限定されるものではなく、パウチの上縁にスパウトが装着されたパウチ容器についても、本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0049】
また、上述した実施形態では、ボトムガセットタイプのパウチ容器2を使用しているが、これに限定されるものではなく、例えば、サイドガセットタイプや平袋タイプのパウチ容器についても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、内容物の計量機能付きのパウチ包装体に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 パウチ包装体
2 パウチ容器
10 パウチ
10A スパウト装着縁部
10B 充填口形成縁部
11、12 外装シート
13 ガセットシート
13a 切欠部
20、20A、20B、20C スパウト(注出口部材)
21 装着部
22、22B 口部
23 キャップ
23B スクリューキャップ
24 樹脂ヒンジ
25、25A、25C 計量部
25a 導入口