(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、1は収納装置で、この収納装置1は、例えば食器等の被収納物(図示せず)が前面の開口部2を介して出し入れ可能に収納される収納空間部3を内部に有する固定部材である収納本体4を備えている。
【0018】
また、収納装置1は、収納本体4の開口部2を開閉する板状の可動部材である開閉扉5と、この開閉扉(回動部材)5を収納本体4に対して回動可能(開閉動作可能)に連結するばね付蝶番等の蝶番装置(図示せず)と、地震時等の震動時に開閉扉5の収納本体4に対する回動を規制する規制装置である施錠装置6とを備えている。
【0019】
収納本体4は、互いに離間対向する左右対をなす側板部8を有し、一方側である左側の側板部8に蝶番装置が取り付けられている。両側板部8の上端部同士は左右方向長手状の上板部9にて連結され、両側板部8の後端部同士は背板部10にて連結されている。
【0020】
そして、開閉扉5は、通常時(非震動時)には、収納本体4に対する一方向である開方向への回動(開動作)により開状態になって開口部2を開口させかつ収納本体4に対する他方向である閉方向への回動(閉動作)により閉状態になって開口部2を閉鎖する。つまり、通常時には、開閉扉5は、収納本体4に対して開方向および閉方向に回動可能である。
【0021】
しかし、例えば地震時等の震動時には、開閉扉5の収納本体4に対する開方向および閉方向への回動が施錠装置6によって規制される。つまり、震動時には、開閉扉5は、施錠装置6にて収納本体4に対してロック(施錠)され、開方向および閉方向に回動不能となる。
【0022】
施錠装置6は、
図1ないし
図4等に示されるように、開閉扉5の上端部の裏面にねじ等の取付具にて取り付けられる係合体11と、収納本体4の上板部9の下面にねじ等の取付具にて取り付けられる装置本体12とにて構成されている。
【0023】
また、装置本体12は、収納本体4の上板部9の下面に取り付けられる箱状の支持体であるケース体13と、このケース体13にて左右方向(水平方向)の回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能に収納支持され、震動時に係合体11との係合により開閉扉5の収納本体4に対する回動(動き)を規制する中空の球状(略球状を含む)である球殻状の感震体兼規制体である回動球体14と、ケース体13に脱着可能に取り付けられ、このケース体13の上面開口部16を閉鎖する蓋体15とを備えている。
【0024】
まず、係合体11は、
図6等に示されるように、開閉扉5の蝶番装置側とは反対側の端部における上端部裏面に取り付けられる矩形板状の取付板部21を有している。取付板部21の長手方向両端側には、ねじ挿通用の孔部22が形成されている。取付板部21の中央部には、平面視でT字状(略T字状を含む)をなす係合部23が一体に突設されている。
【0025】
このT字状の係合部23は、取付板部21の中央部から装置本体12側に向かって突出する前後方向長手状の長手状部分25と、この長手状部分25の先端部に一体に設けられ、回動球体14と係脱可能に係合する左右方向長手状の係合部分26とにて構成されている。
【0026】
長手状部分25は、基端側から先端側に向かって下り傾斜する傾斜上面27と、基端側から先端側に向かって上り傾斜する傾斜下面28とを有している。また、長手状部分25は、基端側から先端側に向かって互いに接近する左右1対の第1傾斜側面29と、この第1傾斜側面29の先端に連設され、基端側から先端側に向かって互いに離反する左右1対の第2傾斜側面30とを有している。なお、第1傾斜側面29の長手方向寸法は傾斜上面27や傾斜下面28の長手方向寸法よりも短く、第2傾斜側面30の長手方向寸法は第1傾斜側面29の長手方向寸法よりも短い。
【0027】
係合部分26は、基端側から先端側に向かって下り傾斜する傾斜上面31と、基端側から先端側に向かって上り傾斜する傾斜下面32と、基端側から先端側に向かって互いに接近する左右1対の傾斜側面33とを有している。また、係合部分26は、傾斜側面33の基端と長手状部分25の第2傾斜側面30の先端とを繋ぐ左右1対の凹状の係合面(係合凹部)35を有している。この各係合面35は、例えば平面視J字状(略J字状を含む)に形成されている。
【0028】
ケース体13は、
図1および
図2等に示されるように、上面開口部16、前面開口部17および後面開口部18を有する箱状に形成されている。つまり、ケース体13は、上板部41、下板部42、前板部43、後板部44および左右の側板部45を有し、上板部41に上面開口部16が形成され、前板部43に前面開口部17が形成され、後板部44に後面開口部18が形成されている。
【0029】
上板部41の左右方向両端側には、ねじ挿通用の孔部46が形成されている。左右の各側板部45の中央部には、回動球体14の軸部52を左右方向の回動中心軸線Xを中心として回動可能に支持する軸支持孔部47が形成されている。この各軸支持孔部47は、回動球体14の軸部52を左右方向に移動可能に支持している。
【0030】
つまり、回動球体14は、取付誤差等に対応できるように、ケース体13にて左右方向に移動可能に支持されている(
図4(a)参照)。そして、回動球体14は、ケース体13内に回動可能に収納されているが、上面開口部16を介してケース体13内に対して出し入れ可能となっている。
【0031】
回動球体14は、
図1ないし
図4等に示されるように、中空の球状(略球状を含む)である球殻状の球本体部51を有している。球本体部51の左右両側には、左右方向に軸方向を有する丸軸状の軸部52が外側方に向かって突設され、この軸部52の軸芯を通る線が回動球体14の回動中心軸線Xである。なお、
図3から明らかなように、例えば前後2つの半球殻部材53が左右2つの軸カバー部材54にて互いに連結されることによって、球本体部51および軸部52が構成されている。
【0032】
また、球本体部51の下部における左右両側には、前後方向に長手方向を有する丸棒状の錘部55が設けられている。錘部55は、例えば金属製の錘棒部材56にて構成されたもので、この錘棒部材56は、球本体部51に形成された円筒状の錘取付筒部57に嵌入されて取り付けられている。
【0033】
さらに、球本体部51の前後両面には、係合体11の係合部23と係脱可能に係合する十字状(略十字状を含む)の係合孔部60がそれぞれ形成されている。なお、前後の各係合孔部60は、十字状の孔空間60aと、この孔空間60aの周囲に位置する孔周囲部分60bとからなるものである。
【0034】
そして、係合孔部60は、通常時に係合部23が当接せずに通過する左右方向長手状の横長孔部分61と、この横長孔部分61に対して直交状(交差状)に形成され、震動時に係合部23と係脱可能に係合する上下方向長手状の縦長孔部分62とを有している。
【0035】
また、係合孔部60の縦長孔部分62は、係合部23を嵌合保持できるように弾性変形可能となっている。このため、震動時に係合部23の長手状部分25の第2傾斜側面30が縦長孔部分62に当接すると、その縦長孔部分62は、第2傾斜側面30による押圧で孔空間60aが拡大するように弾性変形する。その後、第2傾斜側面30が縦長孔部分62の孔周囲部分60bから離れると、その縦長孔部分62は、弾性復元力でもとの形状に復帰し、係合部23の係合部分26の係合面35と係合、すなわち例えば嵌合する。その結果、係合部23の係合部分26は、前側の係合孔部60の縦長孔部分62にて嵌脱可能に嵌合保持される(
図9(d)参照)。
【0036】
蓋体15は、
図2等に示されるように、ケース体13の上面開口部16を閉鎖する蓋本体板部65を有している。蓋本体板部65の左右方向両端部には、上下方向長手状の下方突出部66が下方に向かって突設されている。各下方突出部66の下端面には、球殻状の回動球体14の軸部52を上方から支持する半円弧状の支持面67が形成されている。
【0037】
なお、ケース体13、回動球体14および蓋体15は、いずれも前後対称に構成されている。このため、ケース体13を前後逆にして収納本体4に取り付けた場合でも施錠装置6を使用可能である。
【0038】
次に、施錠装置6の作用等を説明する。
【0039】
通常時には、
図7に示すように、ケース体13内に回動可能に収納配設された回動球体14は、前側の十字状の係合孔部60が水平方向である前方を向いた状態(許容状態)で停止している。
【0040】
そして、この状態では、係合体11のT字状の係合部23は、回動球体14の係合孔部60の横長孔部分61を通過するため、係合孔部60とは係合しない。
【0041】
このため、例えば食器等の被収納物を収納本体4内に対して出し入れするために、開閉扉5を収納本体4に対して開方向および閉方向に回動させることが可能である。
【0042】
ここで、収納本体4の開口部2が閉状態の開閉扉5にて閉鎖された状態時において、例えば地震等によって震動が発生すると、
図8に示すように、回動球体14は、この回動球体14自体が震動を感知することで、ケース体13に対して回動中心軸線Xを中心として回動し、例えば前側の十字状の係合孔部60が傾斜方向である前斜め上方を向いた状態(規制状態)となる。
【0043】
このため、震動に基づいて開閉扉5が開方向に回動しようとすると、
図9に示すように、回動球体14内に挿入された状態の係合体11の係合部23と、回動球体14の前側の係合孔部60とが互いに係合し、この係合によって開閉扉5の収納本体4に対する開方向への回動が規制される。
【0044】
すなわち、係合体11の係合部23の先端側の係合部分26が、回動球体14の係合孔部60の縦長孔部分62にて嵌合保持されることによって、収納本体4に対する開閉扉5の開方向および閉方向の回動が規制される。
【0045】
また、
図10に示すように、係合体11の係合部23が、前側の係合孔部60が前斜め下方を向いた状態の回動球体14の係合孔部60の縦長孔部分62にて、嵌合保持される場合もある。
【0046】
なお、震動が停止した後、回動球体14をケース体13に対して手動で閉方向へ回動させることによって、係合体11の係合部23と回動球体14の係合孔部60との嵌合(係合)を解除することが可能である。
【0047】
そして、上記施錠装置6によれば、地震時等の震動時に係合体11との係合により開閉扉5の収納本体4に対する動きを規制する規制体である回動球体14が、震動を感知して感震動作(回動)する感震体を兼ねているため、つまり規制体(ラッチ)の機能と感震体の機能とを兼ね備えているため、従来の構成に比べて、部品点数が少なく、構成がきわめて簡単である。
【0048】
また、係合体11はT字状の係合部23を有し、回動球体14は係合部23と係合する十字状の係合孔部60を有するため、震動時に係合部23と係合孔部60との係合によって開閉扉5の収納本体4に対する動きを適切に規制でき、よって収納本体4内からの被収納物の飛び出しを防止できる。
【0049】
さらに、回動球体14の係合孔部60は弾性変形可能であるため、例えば係合部23の係合部分26を係合孔部60の縦長孔部分62にて嵌合保持でき、震動時における開閉扉5の動きをより一層適切に規制できる。
【0050】
また、回動球体14の係合孔部60は、係合体11の係合部23が通過する横長孔部分61を有するため、通常時に係合体11と回動球体14とが接触せず、異音の発生を防止できる。
【0051】
さらに、回動球体14は、ケース体13にて左右方向に移動可能に支持されているため、例えば開閉扉5に対する係合体11の取付誤差や収納本体4に対するケース体13の取付誤差等に適切に対応できる。
【0052】
また、ケース体13を前後逆にして収納本体4に取り付けた場合でも、施錠装置6を使用可能であるため、取付作業や組立作業等が容易である。
【0053】
なお、上記実施の形態では、震動時に係合体11の係合部23が回動球体14の前側の係合孔部60と係合する構成について説明したが、例えば
図11(a)および(b)に示すように、震動時に係合体11の係合部23が複数、例えば前後2つの係合孔部60のうちのいずれか一つと係合する構成でもよい。
【0054】
この構成では、係合体11の係合部23の前後方向長さ寸法は、
図6に示すものに比べて長く、収納本体4の開口部2の閉鎖時に、係合部23の先端側の係合部分26が、回動球体14の後側の係合孔部60よりも後方に位置する。そして、係合体11の係合部23は、震動時にその震動の大きさ等に応じて、前後2つの係合孔部60のうちのいずれか一つと係合し、この係合によって開閉扉5の収納本体4に対する回動が規制される。
【0055】
また、例えば
図12(a)および(b)に示すように、震動時に係合体11の係合部23が複数、例えば前後方向に並ぶ3つの係合孔部60のうちのいずれか一つと係合する構成でもよい。
【0056】
この構成では、回動球体14は、球本体部51内の内部空間を前後に仕切る仕切板部71を有し、この仕切板部に十字状の係合孔部60が形成されている。この中間の係合孔部60は、前後の係合孔部60と同様、横長孔部分61および縦長孔部分62を有している。
【0057】
また、この構成でも、係合体11の係合部23の前後方向長さ寸法は、
図6に示すものに比べて長く、
図11に示すものと同じで、収納本体4の開口部2の閉鎖時に、係合部23の先端側の係合部分26が、回動球体14の後側の係合孔部60よりも後方に位置する。そして、係合体11の係合部23は、震動時にその震動の大きさ等に応じて、前後方向に並ぶ3つの係合孔部60のうちのいずれか一つと係合し、この係合によって開閉扉5の収納本体4に対する回動が規制される。なお、例えば図示しないが、回動球体14の球本体部51内に複数の仕切板部が設けられ、この各仕切板部に十字状の係合孔部60が形成された構成等でもよい。
【0058】
また一方、いずれの実施の形態においても、係合孔部60は、横長孔部分61と縦長孔部分62とが両長手方向中央部で直交する十字状のものには限定されず、例えば横長孔部分の長手方向中央部から縦長孔部分が下方側に延びるT字状のもの等でもよい。
【0059】
また、回動球体14等の感震体兼規制体は、下部に錘部55を有する構成が好ましいが、例えば錘部55を有しない構成でもよい。
【0060】
さらに、感震体兼規制体は、係合体11の係合部23を嵌合保持する構成には限定されず、例えば係合部と係合孔部とが互いに当接係合する構成等でもよく、例えば震動が停止すると感震体兼規制体が自重で回動して規制状態から許容状態に復帰するようにしてもよい。
【0061】
また、感震体兼規制体は、球状の回動球体(回転子)14には限定されず、例えば半球状や直方体状等の形状であってもよい。