(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430791
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】光学部材及び光ファイバの評価装置
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
G01M11/02 N
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-238124(P2014-238124)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-99290(P2016-99290A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構、「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】若山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 浩司
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−145361(JP,A)
【文献】
特開2003−098040(JP,A)
【文献】
特開平05−001971(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/052019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
光学部材を透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記光学部材の評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記光学部材は入射された光を所定の導波モードの光に変換する光学部材であり、
前記基準成分は、前記所定の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項2】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
光学部材を透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記光学部材の評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記光学部材は入射された光を所定の導波モードの光に変換する光学部材であり、
前記基準成分は、前記所定の導波モード以外の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項3】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記基準成分は、前記マルチモード光ファイバに入射された光の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項4】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記基準成分は、前記マルチモード光ファイバに入射された光の導波モード以外の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項5】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチコア・マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチコア・マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記物体光は前記マルチコア・マルチモード光ファイバの第1コアに第1導波モードに変換されて入射され、
前記基準成分は、前記第1コアの前記第1導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項6】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチコア・マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチコア・マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記物体光は前記マルチコア・マルチモード光ファイバの第1コアに第1導波モードに変換されて入射され、
前記基準成分は、前記第1コアの前記第1導波モード以外の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項7】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチコア・マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチコア・マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記物体光は前記マルチコア・マルチモード光ファイバの第1コアに第1導波モードに変換されて入射され、
前記基準成分は、前記第1コアとは異なるコアの前記第1導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【請求項8】
光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、
マルチコア・マルチモード光ファイバを透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、
前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、
前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記マルチコア・マルチモード光ファイバの評価値を求める処理を行う処理手段と、
を備え、
前記物体光は前記マルチコア・マルチモード光ファイバの第1コアに第1導波モードに変換されて入射され、
前記基準成分は、前記第1コアとは異なるコアの前記第1導波モード以外の導波モードの基準成分であることを特徴とする評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材及び光ファイバの評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの伝送容量の拡大のため1つのコアで複数の光信号をモード多重して伝送するマルチモード光ファイバや、1本の光ファイバに複数のコアを設けたマルチコア光ファイバが提案されている。
【0003】
マルチモード光ファイバでは、モード間結合が生じ、マルチコア光ファイバでは、コア間結合が生じる。また、モード変換器、つまり、マルチコア光ファイバにおいて光信号を所定の導波モードに変換する光学部材においても、当該所定の導波モード以外の導波モードの光信号が出力される。このため、特許文献1は、モード間結合やコア間結合の測定方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−153116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する方法は、評価対象のマルチモード光ファイバの導波モード数や、評価対象のマルチコア光ファイバのコア数と同じ数の光パルス試験機(OTDR)を必要とし、これら複数のOTDRでの測定を同期させる必要がある。したがって、評価システムが複雑、かつ、高価になる。さらに、OTDRを使用するため、モード変換器といった光学部材を単体で評価できない。
【0006】
本発明は、簡易な構成で、光学部材及び光ファイバを評価できる評価装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、評価装置は、光源が照射した光を分波して物体光及び参照光を出力する分波手段と、光学部
材を透過した前記物体光を前記参照光と干渉させて干渉光を生成する干渉手段と、前記干渉光の干渉縞を撮像して前記干渉縞を示すデータを取得する撮像手段と、前記干渉縞を示すデータをフーリエ変換して1次回折成分を取出し、前記1次回折成分と基準成分を比較することで前記
光学部材の評価値を求める処理を行う処理手段と、を備え
、前記光学部材は入射された光を所定の導波モードの光に変換する光学部材であり、前記基準成分は、前記所定の導波モードの基準成分であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
簡易な構成で、光学部材及び光ファイバを評価できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0011】
図1は、本実施形態による評価装置の基本構成図である。被測定物3は、測定対象の光学部材又は光ファイバである。分波器2は、光源1が照射した光を2分岐し、一方の光を物体光として被測定物3に出力し、他方の光を参照光として出力する。干渉計4は、被測定物3を通過した物体光と参照光を干渉させ、干渉光を撮像部5に出力する。撮像部5は、例えば、CCDセンサを有し、干渉光による干渉縞を撮影してデジタル・データに変換する。処理部6は、このデジタル・データを2次元フリーリエ変換し、1次回折成分を取り出す。これにより、被測定物3を通過してきた物体光の複素振幅分布を得る。この複素振幅分布を所定の目標分布と比較することでモード間結合やコア間結合等、光学部材又は光ファイバの評価値を計算する。
【0012】
図2は、モード変換器31を被測定物3とする場合の評価装置の構成図を示している。分波器2は、物体光をシングルモード光ファイバ7に出力し、参照光をシングルモード光ファイバ8に出力する。シングルモード光ファイバ7及びシングルモード光ファイバ8の分波器2とは逆の端面から、物体光及び参照光はそれぞれ空間に放射される。レンズ91は、シングルモード光ファイバ7から放射された物体光を平行光にしてモード変換器31に出力する。モード変換器31は、物体光を所定の導波モード(以下、第1導波モード)の光に変換してハーフ・ミラー10に向けて出力する。レンズ92は、シングルモード光ファイバ8から放射された参照光を平行光にしてミラー11に出力する。参照光は、ミラー11でハーフ・ミラー10に向けて反射され、さらに、ハーフ・ミラー10において、ハーフ・ミラー10を透過する物体光と略同じ方向に反射される。これにより物体光と参照光は干渉させられ、干渉光となる。この干渉光は撮像部5に入力され、撮像部5のCCDセンサを照射する。撮像部5は、干渉光の干渉縞を撮影してデジタル・データに変換する。処理部6は、このデジタル・データを2次元フーリエ変換して1次回折成分を取り出す。この1次回折成分は、モード変換器31が変換した第1導波モードの空間分布の周波数成分を示し、これを、第1導波モードの理想的な周波数成分を示す基準成分と比較することで、モード変換器12がどの程度、理想的にモードを変換しているかを示す評価値を計算することができる。例えば、評価値は、モード変換器12が出力する導波モードが理想値である場合に1となる様に正規化した値として計算される。この場合、評価値は0〜1の値を取る。なお、周波数領域ではなく、空間領域に変換してから評価値を計算することもできる。また、1次回折成分と、モード変換器31が変換すべき第1導波モードとは異なる1つ以上の導波モード(以下、第2導波モード)それぞれの基準成分と比較することで、モード変換器が、各第2導波モードの光をどの程度出力しているかを示す評価値を計算することができる。
【0013】
図3は、マルチモード光ファイバ32を被測定物3とする場合の評価装置の構成図を示している。分波器2は、物体光をシングルモード光ファイバ7に出力し、参照光をシングルモード光ファイバ8に出力する。シングルモード光ファイバ7及びシングルモード光ファイバ8の分波器2とは逆の端面から、物体光及び参照光はそれぞれ空間に放射される。レンズ91は、シングルモード光ファイバ7から放射された物体光を平行光にしてモード変換器31に出力する。モード変換器31は、物体光を第1導波モードの光に変換する。この物体光は、レンズ93を通過してマルチモード光ファイバ32に入射される。マルチモード光ファイバ32を伝搬した物体光は、他方の端面から空間に放射される。レンズ94は、この空間に放射された物体光を平行光にしてハーフ・ミラー10に向けて出力する。レンズ92は、シングルモード光ファイバ8から放射された参照光を平行光にして偏波制御器12に出力する。偏波制御器12は、参照光の偏波面を調整する。より詳しくは、偏波制御器12は、後述する偏波ビーム・スプリッタ(PBS)13が出力する直交する2つの偏波の光の強度が同程度となる様に、参照光の偏波面を制御する。偏波制御器12が出力する参照光はミラー11で反射され、ハーフ・ミラー10において物体光と干渉させられる。ハーフ・ミラー10からの干渉光は、PBS13において、互いに直交する偏波面の光に変換され、撮像部5に出力される。撮像部5は、互いに直交する2つの干渉光の干渉縞をそれぞれデジタル・データに変換する。
【0014】
処理部6は、2つの干渉縞に対応するデジタル・データをそれぞれ2次元フーリエ変換して1次回折成分を取り出す。処理部6は、第1導波モードの各偏波の基準成分と対応する偏波の干渉縞から求めた1次回折成分をそれぞれ比較して各偏波の評価値を求め、これを合わせることで、モード変換器31が変換し、マルチモード光ファイバ32を伝搬した第1導波モードの光がどの程度理想値に近いかを示す評価値を計算することができる。また、1次回折成分を、各第2導波モードの基準成分それぞれと比較することで、どの程度、第2導波モードの光が生成されるかを示す評価値を計算することができる。なお、マルチモード光ファイバ32のみの評価値は、モード変換器31のみの評価値を
図2の構成により予め測定しておくことにより求めることができる。
【0015】
なお、
図3は、1つのコアを有するマルチモード光ファイバ32を評価する構成であったが、例えば、複数のコアを有するマルチコア・マルチモード光ファイバを被測定物3とすることができる。この場合、レンズ93を透過した光は、複数のコアの内の1つのコア(以下、第1コア)に入力される。撮像部5は、参照光と、マルチコア・マルチモード光ファイバの各コアから出力される物体光との干渉光による干渉縞を撮影してデジタル・データに変換し、処理部6は、デジタル・データを変換して1次回折成分を取り出す。処理部6は、各コアと各導波モードの組み合わせ毎の基準成分を有しており、1次回折成分と各基準成分を比較することで、各コアと各導波モードの組み合わせに対する評価値を得ることができる。具体的には、第1コアの第1導波モードの基準成分と1次回折成分を比較することで、マルチコア・マルチモード光ファイバを伝搬した光がどの程度理想的に近いかを示す評価値を計算することができる。また、第1コアの各第2導波モードの基準成分それぞれと1次回折成分を比較することで、第1コアに生成される第2導波モードの光を示す評価値を計算することができる。さらに、第1コア以外の各コア(以下、第2コア)の第1導波モードの基準成分それぞれと1次回折成分を比較することで、各第2コアに生成される第1導波モードの光を示す評価値を計算することができる。さらに、第2コアの第2導波モードの基準成分それぞれと1次回折成分を比較することで、各第2コアに生成される各第2導波モードの光を示す評価値を計算することができる。
【0016】
以上、本実施形態の評価装置は、被測定物3を透過した物体光と参照光の干渉縞をフーリエ変換して一次回折成分を取り出すことで、物体光の空間分布を求め、これにより、被測定物3の評価を行う。本実施形態の評価装置は、OTDRを使用せず、よって、光学部材の評価を行うことができる。また、導波モード数や、コア数に拘らず、同じ簡易な構成で光学部材や光ファイバの評価を行うことができる。