(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430801
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】装飾鏡の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 1/00 20060101AFI20181119BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20181119BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20181119BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20181119BHJP
B32B 33/00 20060101ALI20181119BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20181119BHJP
B05C 9/10 20060101ALI20181119BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20181119BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
A47G1/00 C
C09D11/30
B32B15/04 Z
B32B17/00
B32B33/00
B41J2/01 125
B41J2/01 501
B41J2/01 109
B05C9/10
B05C9/14
B05C5/00 101
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-243998(P2014-243998)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-106674(P2016-106674A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.展示会名:「第50回インターナショナルプレミアム・インセンティブショー秋2014」 2014年10月15日(水)〜17日(金)、サンシャインシティ・コンベンションセンターTOKYO 文化会館2・3・4階(東京・池袋) 2.展示会名:「大阪勧業展2014」 2014年10月22日(水)〜10月23日(木)、マイドームおおさか1〜3階 展示ホール
(73)【特許権者】
【識別番号】302003967
【氏名又は名称】有限会社エムアンドジーキタデ
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(72)【発明者】
【氏名】北出 善孝
【審査官】
片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−108120(JP,A)
【文献】
特開2000−262368(JP,A)
【文献】
特開2012−201703(JP,A)
【文献】
特開平10−060349(JP,A)
【文献】
特開平06−277138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/00
B05C 5/00
B05C 9/10
B05C 9/14
B32B 15/04
B32B 17/00
B32B 33/00
B41J 2/01
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス裏面に印刷インクを定着させた印刷層と、印刷層に重ねて形成されるアルミニウム又は銀によるメッキ層と、メッキ層を覆う保護層とを有する装飾鏡であって、
ガラス裏面は、算術平均粗さRaが、0.0007〜0.0025μmに加工され、このガラス裏面における接触角が、20度〜30度となる印刷インクをインクジェット方式で印刷して印刷層が形成されていることを特徴とする装飾鏡の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス裏面は、1.2〜1.4μmの酸化セリウム粒子を使用して、所定の算術平均粗さに研磨加工されている請求項1に記載の装飾鏡の製造方法。
【請求項3】
前記印刷インクは、3.0〜7.0重量%の染料と、4.0〜8.0重量%のスチレン・アクリルポリマーと、溶剤とでインク全体の99.1〜99.9重量%を構成している請求項1又は2に記載の装飾鏡の製造方法。
【請求項4】
前記溶剤は、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの全部又はその一部で構成されている請求項1〜3の何れかに記載の装飾鏡の製造方法。
【請求項5】
前記印刷層は、100〜200℃の温度で、20〜90分間、ガラス板を加熱して形成される請求項1〜4の何れかに記載の装飾鏡の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス鏡面に高画質の画像をカラー印刷して構成された装飾鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、入学式や卒業式や結婚式など、人生の節目を記念して家族や関係者が揃って記念写真を撮ることも多い。このような場合、その記念写真は、後日、配布されることも多いが、単なる写真としてではなく、その写真を鏡に表示することができれば、迫力が倍増して、記念写真としての価値が格段に上がる。
【0003】
また、著名な観光地やアイドル写真などを、高画質の状態で鏡に転写することができれば、部屋を飾る置物として、また、贈答品としての価値もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−201703号公報
【特許文献2】特願平08−225700号公報
【特許文献3】特開平06−277138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来、高画質の画像を、その品質を維持した状態でガラス鏡面に転写することはできないと考えられてきた。
【0006】
すなわち、印刷インクをガラス鏡面に確実に定着させるためインクの粘度を上げると、インクジェットプリンタの印刷ヘッドなどの目詰りの問題が生じ、一方、これを避けるインク組成では、ガラス鏡面への定着性に劣り、高画質の画像を描くことができないという問題があった。
【0007】
なお、特許文献1〜3に記載の技術は知られているが、印刷される画像の品質が十分ではなく、記念品や贈答品としては、見栄えに劣るという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、記念品や贈答品としても活用できる装飾鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る装飾鏡
の製造方法は、ガラス裏面に印刷インクを定着させた印刷層と、印刷層に重ねて形成されるアルミニウム又は銀によるメッキ層と、メッキ層を覆う保護層とを有
する装飾鏡であって、ガラス裏面は、算術平均粗さRaが、0.0007〜0.0025μmに加工され、このガラス裏面における接触角が、20度〜30度となる印刷インクをインクジェット方式で印刷して印刷層が形成されている。
【0010】
接触角は、好ましくは22度〜28度、より好ましくは24度〜27度とすべきである。また、算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0031に基づき、うねり成分を消去した後の粗さ曲線y=f(x)について、その絶対値ABS(f(x))を評価方向xに積分し、積分値ΣABS(f(x))を、評価距離Lで平均化して算出される(Ra=1/L×ΣABS(f(x)))。好ましくは、この算術平均粗さが0.0011〜0.0020μm、より好ましくは、0.0011〜0.0016μmとなるよう加工すべきである。
【0011】
本発明では、好ましくは、ガラス裏面は、1.2〜1.4μmの酸化セリウム粒子を使用して、所定の算術平均粗さに研磨加工されるべきである。また、印刷インクは、3.0〜7.0重量%の染料と、4.0〜8.0重量%のスチレン・アクリルポリマーと、溶剤とでインク全体の99.1〜99.9重量%を構成しているのが好ましく、溶剤は、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの全部又はその一部で構成されているのが好適である。
【0012】
また、印刷層は、100〜200℃の温度で、20〜90分間、ガラス板を加熱して形成されるのが好適である。加熱温度は、好ましは120〜180℃、より好ましくは130〜170℃であり、加熱時間は、加熱温度にほぼ逆比例して、好ましくは、30〜60分である。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明によれば、高品質の印刷面を形成することができ、記念品や贈答品としても活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例に係る装飾鏡の製造手順と完成状態を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例の装飾鏡の製造方法について更に詳細に説明する。但し、具体的な記載内容は、特に本発明を限定するものではない。
図1(a)は、製造工程を概略的に示すフロー図であり、
図1(b)は完成状態の装飾鏡である。
【0016】
図1(a)に示す通り、最初に、ガラス元板の表面洗浄を兼ねて、酸化セリウム粒子を使用して仕上げ研磨洗浄をする。好適には、ガラス元板として、ケイ砂(SiO
2)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カルシウム(CaCO
3)を混合して製造されるソーダ石灰ガラスが使用される。
【0017】
但し、特に限定されず、ソーダ石灰ガラスに代えて、ホウ砂を用いるホウケイ酸ガラスを使用しても良く、また、高級感を高めるため、酸化鉛(PbO)を用いる鉛ガラス(クリスタルガラス)を使用しても良い。
【0018】
何れの場合にも、印刷面となるガラス表面は、粒径1.2〜1.4μm程度の酸化セリウム粒子を使用して研磨され、算術平均粗さ(Ra)が0.0007〜0.0025μm、好ましくは、0.0011〜0.0020μm、より好ましくは、0.0011〜0.0016μmに加工される。
図2は、研磨洗浄後のガラス板について、SUPERCORDER ET3000(小坂研究所製)を用い、カットオフ値2.5mm、評価長さ25mm、送り速度0.2mm/Sの条件で計測した表面粗さの計測結果を示している。
【0019】
ここで、
図2(b)は、評価長さ(25mm)方向におけるガラスの表面うねりを示しており、その縦軸一目盛は、0.20μである。また、
図2(a)は、表面うねりを消去した状態における、評価長さ方向16026ポイントの表面粗さを示しており、その縦軸一目盛は、0.2/100μmである。
【0020】
次に、このようなレベルに研磨洗浄した後のガラス板を、所望の大きさ形状に切断する(ST2)。そして、切断ゴミの除去など、ガラス表面を清浄化した後、適度に加温した状態で、インクジェットプリンタを使用する印刷工程に移行する(ST3)。この印刷工程では、6色の印刷インクを用いてフルカラー印刷を実行するが、カラー写真などの画像原稿が、パソコンその他で適宜に編集されて印刷データに生成され、これがインクジェットプリンタに供給される。
【0021】
このように、この実施例では、シルク印刷ではなく、インクジェット印刷を採るので、迅速に印刷工程を終えることができ、また、製造コストを抑制することができる。印刷インクとしては、色彩の異なるインク毎に染料が異なるが、何れの印刷インクも、染料4.0〜5.0重量%と、スチレン・アクリルポリマー5.0〜7.0重量%に、イソプロピルアルコール8.0〜12.0重量%、イソブチルアルコール13.0〜17.0重量%、ジアセトンアルコール13.0〜17.0重量%、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル48.0〜50.0重量%の溶剤と、表面調整剤0.3〜0.5重量%とを含んだ組成物が使用される。
【0022】
また、何れのインクも研磨後のガラス板に対する接触角が、20度〜30度、好ましくは22度〜28度、より好ましくは24度〜27度となるよう調製されている。
【0023】
次に、100〜200℃、好ましくは120〜180℃、より好ましくは130〜170℃の環境下で、20〜90分程度、ガラス板を加熱することで、印刷インクを確実に定着させる(ST13)。なお、加熱時間は、より好ましくは、30〜60分である。
【0024】
以上の処理が終われば、温水によってガラス板を軽くブラシ洗浄した後(ST14)、アルミ真空蒸着によって、印刷層の上面にアルミニウムによるメッキ層を形成して裏面鏡としての反射層を形成する(ST15)。なお、アルミニウムに代えて、銀など他の金属を蒸着させても良い。
【0025】
次に、保護塗装によって、アルミ鏡面を保護膜で覆った後(ST16)、乾燥工程を経ると実施例に係る装飾鏡が完成する。乾燥温度150〜300℃で、5〜30分の乾燥時間である。
【0026】
図1(b)は、記念写真を印刷した装飾鏡であり、適宜な保持部材に保持されて卓上を彩ることになる。