(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430805
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】液体燃料ガスの供給装置および供給方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/28 20060101AFI20181119BHJP
C10L 3/00 20060101ALI20181119BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20181119BHJP
F02C 9/00 20060101ALI20181119BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
F02C9/28 C
C10L3/00 D
F02C7/22 D
F02C9/00 A
F02C9/00 C
F23K5/00 307Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255072(P2014-255072)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-114010(P2016-114010A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】松冨 剛
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04277254(US,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02809195(FR,A1)
【文献】
特表2005−532527(JP,A)
【文献】
特開昭61−159142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/00
F23K 5/00
F02C 7/22,9/00,9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体原料の貯留槽と、該液体原料の供送量調整手段と、該液体原料の比重測定手段と、を備えた液体原料供送部と、
調整流体の貯留槽と、該調整流体の供送量調整手段と、を備えた調整流体供送部と、
前記液体原料供送部から供送された液体原料が、前記調整流体供送部から供送された調整流体と混合される混合槽と、混合された液体燃料ガスが供出される供出部と、を備えた混合部と、を有し、
前記混合槽において液体原料が低温液体状態で調整流体と混合されるとともに、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量の調整を行うことを特徴とする液体燃料ガスの供給装置。
【請求項2】
前記液体原料供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVa、前記液体原料の比重をGa、前記液体原料の供送流量をFa、前記調整流体供送部における供送量調整手段から混合槽までの空間容積をVo、前記調整流体の比重をGo、前記調整流体の供送流量をFoとし、前記液体原料と調整流体の各空間容積Va,Voでの空塔速度の関係を下式1の条件とし、かつ下式2に係る時間遅れ△Taとするとともに、下式3に示す作製された液体燃料ガスの比重Gaoを基に、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように、フィードファード制御を行うことを特徴とする請求項1記載の液体燃料ガスの供給装置。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
Gao=(Fa×Ga+Fo×Go)/(Fa+Fo) …式3
【請求項3】
前記貯留槽の液体原料が気化したオフガスまたは他の貯留槽から供出されたオフガスの供送量調整手段と、該オフガスの比重測定手段と、を備えたオフガス供送部を有し、
前記混合槽において液体原料が低温液体状態で調整流体およびオフガスと混合されるとともに、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値およびオフガスの比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記液体原料の供送量に対応する調整流体およびオフガスの供送量の調整を行うことを特徴とする請求項1記載の液体燃料ガスの供給装置。
【請求項4】
前記液体原料供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVa、前記液体原料の比重をGa、前記液体原料の供送流量をFa、前記オフガス供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVb、前記オフガスの比重をGb、前記オフガスの供送流量をFb、前記調整流体供送部における供送量調整手段から混合槽までの空間容積をVo、前記調整流体の比重をGo、前記調整流体の供送流量をFoとし、前記液体原料,オフガスおよび調整流体の各空間容積Va,Vb,Voでの空塔速度の関係を下式1および4の条件とし、かつ下式2および5に係る時間遅れ△Ta,△Tbとするとともに、下式6に示す作製された液体燃料ガスの比重Gaboを基に、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように、フィードファード制御を行うことを特徴とする請求項3記載の液体燃料ガスの供給装置。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
(Vb/Fb)>(Vo/Fo) …式4
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
△Tb=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式5
Gabo=(Fab×Gab+Fo×Go)/(Fab+Fo) …式6
ここで、FabおよびGabは、下式7および8とする。
Fab=Fa+Fb …式7
Gab=(Fa×Ga+Fb×Gb)/(Fa+Fb) …式8
【請求項5】
前記比重測定手段から混合槽に繋がる液体原料の供送流路において、所定の容積に設定可能な空間を設け、該空間容積と前記比重測定値を基に、前記調整流体の供送量、または前記調整流体およびオフガスの供送量の調整を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体燃料ガスの供給装置。
【請求項6】
液体原料の貯留槽から供出され、所望の供送量に調整された後、その比重を測定された液体原料が、低温液体状態で、調整流体の貯留槽から供出され、供送量が制御・調整された調整流体と、混合槽において混合されて液体燃料ガスが作製されるとともに、該液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記調整流体の供送量が調整されることを特徴とする液体燃料ガスの供給方法。
【請求項7】
前記液体原料が、前記調整流体、および前記液体原料の貯留槽または他の貯留槽から供出され、供送量が制御・調整された後、その比重を測定されたオフガスと、混合槽において混合されて液体燃料ガスが作製されるとともに、該液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料およびオフガスの比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記調整流体およびオフガスの供送量の供送量が調整されることを特徴とする請求項6記載の液体燃料ガスの供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料ガスの供給装置および供給方法に関し、例えば原料となる液化天然ガス(以下「LNG」ということがある)の組成変化に対応して発熱量が略均一な液体燃料ガスとして供給可能な供給装置および供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(NG)は、輸送や貯蔵の利便性などのため、LNGタンクに液体原料として貯蔵され、これを気化した燃料ガスが、火力発電用や都市ガス用等多岐にわたり用いられている。ここで、天然ガスの組成は、天然ガスの埋設地に大きく依存していることは広く知られており、天然ガスを使用するに際しては天然ガスの組成を調整する必要がある。昨今世界中で採掘が進められているいわゆるシェールガスにおいても同様である。このとき下式9に示されるウォッベ指数WI(Wobbe Index)が、調整に用いられることがある。
WI=H/(G)
1/2 …式9
また、ウォッベ指数WIは、天然ガスの総発熱量H(kcal/m
3)および比重Gによって決まり、ウォッベ指数WIを指標として用いた場合には、供給される天然ガスの組成が変化しても、数値が近いものであればバーナーや燃焼炉等燃焼設備の運転にそれほど影響が与えない。
【0003】
そのため、例えば発電所のガスタービン等(燃焼設備)に燃料ガスを供給する際に、ガスタービンが追従できる範囲内に燃料ガスの急速な発熱量の変化を緩和して、システムを安全かつスムーズに運転できる熱量制御方法が提案されている。具体的には、
図4に示すように、配管105を通して液化天然ガスタンク101からガスタービン113へ、ボイルオフガスが混入された燃料ガスを供給するに際して、配管105を流通する該燃料ガスの不連続的な熱量変動を緩和する熱量制御方法であって、熱量計測工程と、熱量変動が生じた際に、配管105中で熱量変化が生じる前後の燃料ガスに熱量調整用ガスを供給して、燃料ガスの熱量変化量とほぼ同等の熱量を増減させて変化前の熱量を有するガスとして安定化させた後、供給する熱量調整用ガスの量を減少させていき、一定時間内に熱量調整用ガスの供給を停止する、熱量調整工程と、燃料ガス供給工程と、を含む方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、102は気化器、103はBOG圧縮機、104はBOG配管、106は熱量測定器、107、108は流量調整弁、109は熱量調整装置、110、112はホルダー、114は熱量計測器を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような熱量制御方法では、なお以下のような種々の課題が生じることがあった。
(i)燃焼設備に供給されるLNG量は、一般に火力発電や都市ガス等の需要変動によって変動することがあり、供給されるLNGが減少した場合においても、燃焼設備の燃焼状態に対して影響を受けないように、発熱量等が安定なLNGを効率よく利用できる装置や方法が要求されている。
(ii)具体的には、LNGタンクが切り替わり産地の異なるためウォッベ指数が異なるLNGが天然ガスの使用点に供給された場合には、燃焼設備において、不完全燃焼や最悪は逆火による事故に至る可能性もあり、大きな課題となっていた。
(iii)さらに、タンクに貯留された天然ガスは、その取出し時間あるいはタンク内の取出し位置によっても組成変動が生じることがあることから、素早い応答性のある発熱量の制御が可能な装置の開発が望まれていた。
(iv)また、天然ガスの組成の測定については、日本工業規格K2301:2011「燃料ガス及び天然ガス−分析・試験方法」にあるように、ウォッベ指数を用いる方法が知られているが、窒素ガス等の減熱用ガスを用い、気相の高発熱量の天然ガスに混合した場合(例えば、特許文献1段落0009参照)、測定されたウォッベ指数と発熱量の相関がずれて正確な発熱量の制御ができないことがあった。
【0006】
本発明の目的は、供出される燃料ガスが、産地や貯留タンクが異なり、その組成が変動する場合であっても、迅速かつ安定的に燃焼設備に供給される燃料ガスのウォッベ指数を制御し、該燃料ガスの発熱量の変動が少ない液体燃料ガスの供給装置および供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液体燃料ガスの供給装置および供給方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明の液体燃料ガスの供給装置は、液体原料の貯留槽と、該液体原料の供送量調整手段と、該液体原料の比重測定手段と、を備えた液体原料供送部と、
調整流体の貯留槽と、該調整流体の供送量調整手段と、を備えた調整流体供送部と、
前記液体原料供送部から供送された液体原料が、前記調整流体供送部から供送された調整流体と混合される混合槽と、混合された液体燃料ガスが供出される供出部と、を備えた混合部と、を有し、
前記混合槽において液体原料が低温液体状態で調整流体と混合されるとともに、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量の調整を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の液体燃料ガスの供給方法は、液体原料の貯留槽から供出され、所望の供送量に調整された後、その比重を測定された液体原料が、低温液体状態で、調整流体の貯留槽から供出され、供送量が制御・調整された調整流体と、混合槽において混合されて液体燃料ガスが作製されるとともに、該液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記調整流体の供送量が調整されることを特徴とする。
【0010】
こうした構成によって、燃焼設備に供給される燃料ガスのウォッベ指数を安定的に制御し、該燃料ガスの発熱量の変動が少ない液体燃料ガスの供給を図ることができる。具体的には、液体原料(例えばLNG)に調整流体(例えば窒素)を混合して液体燃料ガスを作製するに当たり、混合前の液体原料の比重測定値を指標として調整流体の供送量が調整されるフィードファード制御を行うことによって、迅速に精度よく制御することができる。また、所望の発熱量に対応するウォッベ指数が所定値の範囲となるように、比重測定値から該ウォッベ指数を基に演算することによって、迅速かつ安定的に制御することが可能となった。さらに、低温液体状態あるいは過冷却液体状態の液体原料に、調整流体が溶け込む状態で混合されることによって、均一で安定性の高い液体燃料ガスを作製することが可能となった。
【0011】
本発明は、上記液体燃料ガスの供給装置において、前記液体原料供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVa、前記液体原料の比重をGa、前記液体原料の供送流量をFa、前記調整流体供送部における供送量調整手段から混合槽までの空間容積をVo、前記調整流体の比重をGo、前記調整流体の供送流量をFoとし、前記液体原料と調整流体の各空間容積Va,Voでの空塔速度の関係を下式1の条件とし、かつ下式2に係る時間遅れ△Taとするとともに、下式3に示す作製された液体燃料ガスの比重Gaoを基に、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように、フィードファード制御を行うことを特徴とする。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
Gao=(Fa×Ga+Fo×Go)/(Fa+Fo) …式3
液体原料への調整流体の混合においては、液体原料が比重測定時から混合槽で混合されるまでの時間と、制御された時から調整流体が実際に混合槽で混合される時までの時間に差があれば、混合流体の均一性に影響を与えることがある。例えば、供送量が増大するように制御された調整流体が、制御の基になった比重測定時に供送された液体原料よりも早く混合槽に到達した場合、混合槽においては制御値よりも濃度の高い調整流体を含む混合流体が形成される。つまり、こうした制御要素の時間ズレによって、発熱量に対してスパイクノイズ様の液体燃料ガスが供給される可能性がある。また、両者の流量の差によって生じる制御要素の立上り特性(例えば90%立上り時間T90)のズレは、こうした時間ズレの影響を増大させる。本発明は、こうした制御要素に影響を与える液体原料と調整流体に係る空間容積を制限するとともに、調整流体の供送量の制御基準を混合槽での混合開始時に設定し、実測の液体原料の比重測定時からのズレを補正することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することが可能となった。
【0012】
本発明に係る液体燃料ガスの供給装置は、前記貯留槽の液体原料が気化したオフガスまたは他の貯留槽から供出されたオフガスの供送量調整手段と、該オフガスの比重測定手段と、を備えたオフガス供送部を有し、
前記混合槽において液体原料が低温液体状態で調整流体およびオフガスと混合されるとともに、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料の比重測定値およびオフガスの比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記液体原料の供送量に対応する調整流体およびオフガスの供送量の調整を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る液体燃料ガスの供給方法は、前記液体原料が、前記調整流体、および前記液体原料の貯留槽または他の貯留槽から供出され、供送量が制御・調整された後、その比重を測定されたオフガスと、混合槽において混合されて液体燃料ガスが作製されるとともに、該液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、前記液体原料およびオフガスの比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、前記調整流体およびオフガスの供送量の供送量が調整されることを特徴とする。
【0014】
貯留槽内のLNG等の液体原料は、供送に伴い液相とは異なる組成の気相(ボイルオフガスBOG:以下「オフガス」という)が発生する。こうしたオフガスは、液相の減少とともに徐々に増量し、その組成が変化する。例えば、LNGの場合にはメタン(CH
4)成分が多くなり、後述する表1に示すように、オフガスはLNGに比較して小さな発熱量を有する。また、LPGの場合にはプロパン(C
3H
8)成分が多いオフガスの場合には、オフガスはLPGに比較して小さな発熱量を有し、ブタン(C
4H
10)成分が多いオフガスの場合には、オフガスはLPGに比較して大きな発熱量を有する。本発明は、液体燃料ガスの作製に当たり、別途液体原料に混合する調整流体を備えるとともに、調整流体の一部としてオフガスを使用することによって、所望の発熱量を広い範囲で調整することを可能とした。後述するように、例えば、LNGを液体原料とし、メタンを主成分とするオフガスとして用い、窒素を調整流体として用いた場合には、LNGの大きな発熱量の増加変動に対して、両者が発熱量減量方向に機能し効率的に調整することが可能となる。また、LPGを液体原料とし、ブタンを主成分とするオフガスを発熱量増量用に用い、窒素を調整流体として発熱量減量用として用いた場合には、LPGの大きな発熱量の変動に対して、発熱量増減両方向に調整することが可能となる。
【0015】
本発明は、上記液体燃料ガスの供給装置において、前記液体原料供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVa、前記液体原料の比重をGa、前記液体原料の供送流量をFa、前記オフガス供送部における比重測定手段から混合槽までの空間容積をVb、前記オフガスの比重をGb、前記オフガスの供送流量をFb、前記調整流体供送部における供送量調整手段から混合槽までの空間容積をVo、前記調整流体の比重をGo、前記調整流体の供送流量をFoとし、前記液体原料,オフガスおよび調整流体の各空間容積Va,Vb,Voでの空塔速度の関係を下式1および4の条件とし、かつ下式2および5に係る時間遅れ△Ta,△Tbとするとともに、下式6に示す作製された液体燃料ガスの比重Gaboを基に、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように、フィードファード制御を行うことを特徴とする。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
(Vb/Fb)>(Vo/Fo) …式4
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
△Tb=(
Vb/Fb)−(Vo/Fo) …式5
Gabo=(Fab×Gab+Fo×Go)/(Fab+Fo) …式6
ここで、FabおよびGabは、下式7および8とする。
Fab=Fa+Fb …式7
Gab=(Fa×Ga+Fb×Gb)/(Fa+Fb) …式8
上記のように、液体燃料ガスの作製に当たり、液体原料に混合する調整流体の一部としてオフガスを使用することができる。このとき、オフガスの液体原料および調整流体への混合条件は、上記のように制御要素に対する影響を与えないように設定する必要がある。本発明は、液体原料への調整流体の混合条件を基本とし、さらにオフガスと調整流体の混合に係る空間容積を制限するとともに、調整流体およびオフガスの供送量の制御基準を混合槽での混合開始時に設定し、実測の液体原料の比重測定時からのズレを補正することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することが可能となった。
【0016】
本発明は、上記液体燃料ガスの供給装置であって、前記比重測定手段から混合槽に繋がる液体原料の供送流路において、所定の容積に設定可能な空間を設け、該空間容積と前記比重測定値を基に、前記調整流体の供送量、または前記調整流体およびオフガスの供送量の調整を行うことを特徴とする。
調整流体または調整流体およびオフガスの液体原料への混合条件は、上記のように制御要素に対する影響を与えないように設定する必要がある。本発明は、液体原料への調整流体の混合条件を基本とし、調整流体または調整流体およびオフガスの混合に係る空間容積を制限し、比重測定手段から混合槽に繋がる液体原料の供送流路において、所定の容積に設定可能な空間を設けるとともに、調整流体およびオフガスの供送量の制御基準を混合槽での混合開始時に設定し、実測の液体原料の比重測定時からの時間的・空間的ズレを補正することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る液体燃料ガスの供給装置の基本構成例を示す概略図
【
図2】本発明に係る液体燃料ガスの供給装置の第2構成例を示す概略図
【
図3】本発明に係る液体燃料ガスの供給装置の第3構成例を示す概略図
【
図4】従来技術に係る熱量制御システムの構成例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<液体燃料ガスの供給装置の構成>
本発明に係る液体燃料ガスの供給装置(以下「本装置」という)は、液体原料の貯留槽と、液体原料の供送量調整手段と、液体原料の比重測定手段と、を備えた液体原料供送部と、調整流体の貯留槽と、調整流体の供送量調整手段と、を備えた調整流体供送部と、液体原料供送部から供送された液体原料が、調整流体供送部から供送された調整流体と混合される混合槽と、混合された液体燃料ガスが供出される供出部と、を備えた混合部と、を有し、混合槽において液体原料が低温液体状態で調整流体と混合されるとともに、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量の調整を行うことを特徴とする。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各部の温度、圧力、流量などの条件は、ガスの種類や流量等、その他の条件に応じて適宜変更することができる。
【0019】
〔本装置の基本構成〕
本装置の基本構成の概要を、
図1に例示する。本装置は、液体原料の貯留槽11と、液体原料の供送量調整手段12と、液体原料の比重測定手段13と、を備えた液体原料供送部10と、調整流体の貯留槽21と、該調整流体の供送量調整手段22と、を備えた調整流体供送部20と、液体原料供送部10から供送された液体原料が、調整流体供送部
20から供送された調整流体と混合される混合槽31と、混合された液体燃料ガスが供出される供出部32と、を備えた混合部30と、を有する。貯留槽11から供出された液体原料(例えばLNG)は、供送量調整手段12によって所望の供送量が調整され、比重測定手段13によって比重を測定された後、低温液体状態で混合槽31に導入される。貯留槽21から供出された調整流体(例えば窒素)は、供送量調整手段22によって液体原料の供送量に対応する供送量に調整され、混合槽31に導入される。混合槽31においては、低温液体状態を維持したまま液体原料に調整流体が混合され、所望の発熱量を有する液体燃料ガスとして供出部32から供出される。低温液体状態あるいは過冷却液体状態の液体原料に、調整流体が溶け込む状態で混合されることによって、均一で安定性の高い液体燃料ガスを作製することができる。なお、
図1においては、液体原料供送部10の比重測定手段13の下流および調整流体供送部20の供送量調整手段22の下流に、逆流防止等観点から各々バルブ14および24を備えた構成を例示したが、これらを省いた構成とすることが可能である。
【0020】
また、本装置は、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数WIが所定値の範囲となるように、液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量の調整が行われる。
図1に例示するように、本装置の制御に必要な入力および出力を制御部40において集中的に管理する構成が好ましい
。制御部40では、供送量調整手段12,22からの供送量信号および比重測定手段13からの比重測定値信号の入力を受け、供送量調整手段12,22への供送量制御信号が出力される。また、本装置に適用する制御方法は、混合のベースとなる混合前の液体原料の比重測定値を指標として、フィードファード制御を行うことが好ましい。液体原料の組成の変化を迅速に把握し、直ちに調整することによって、下流段での変化に対する影響を大きく低減することができる。また、比重測定値を指標とすることによって、液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数WIを所定の範囲となるように調整することができる。
【0021】
液体原料は、本実施形態では、主としてLNGの場合を例示することがあるが、液化石油ガス(LPG)や液化ブタンガス等の他の液体原料にも同様にして適用することができる。調整流体は、所望の発熱量の液体燃料ガスを作製するために、液体原料よりも低い発熱量または高い発熱量を有し、かつ液体原料と均一に混合する特性を有する流体であり、液体原料が低温液体状態で混合されることが好ましい。過冷却状態の液体原料に溶解し混合することによって、非常に均一性の高い安定した液体燃料ガスを作製することができる。例えば液体原料がLNGの場合、低い発熱量を有する流体として、窒素や水素,メタン,二酸化炭素,空気あるいはアルゴン等を用いることでき、高い発熱量を有する流体として、プロパンやLPG等を用いることできる。液体原料がLPGの場合、低い発熱量を有する流体として、窒素や水素等を用いることでき、高い発熱量を有する流体として、ブタン等を用いることできる。また、単一物質ではなくこれらのいくつかを混合して用いることができる。下表1に、典型的な燃料成分の熱的特性(高発熱量,ウォッベ指数)およびガス比重を示す。貯留槽11,21に低温高圧条件下で貯留される。
【0023】
〔ウォッベ指数について〕
本装置においては、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、液体原料の比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量の調整を行うことを特徴とする。このとき、例えばLNGを液体原料として使用する場合においては、日本工業規格K2301:2011「燃料ガス及び天然ガス−分析・試験方法」の適用に際して、各国産のLNGの組成の大きな相違に適した制御方法が必要となる。本装置は、発熱量の変動が少ない液体燃料ガスを作製することができ、迅速かつ安定的に制御することができる。
【0024】
具体的には、作製された液体燃料ガスの比重Gaoは、調整流体(比重Go)の供送量Fo,供送量調整手段12からの液体原料の供送量Faおよび比重測定手段13からの比重測定値Gaを基に、下式3に示す演算式で求められる。
Gao=(Fa×Ga+Fo×Go)/(Fa+Fo) …式3
このとき、液体燃料ガスのウォッベ指数Waは、所望の発熱量Haと上記比重Gaoを基に、下式3aに示す演算式で求められる。
Wa=Ha/√(Gao) → Ha
2=Wa
2×Gao …式3a
従って、液体燃料ガスの所望の発熱量Ha,これに対応するウォッベ指数Waに対する調整流体の供送量Foの関係は、下式3bに示す演算式で求められる。
Ha
2=Wa
2×(Fa×Ga+Fo×Go)/(Fa+Fo) …式3b
以上から、調整流体の供送量Foを、下式3cに基づき、液体原料の比重Gaを指標として制御することによって、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように調整することができる。
Fo=(Ha
2×Fa−Wa
2×Fa×Ga)/(Wa
2×Go−Ha
2) …式3c
【0025】
〔混合条件について〕
本装置においては、液体燃料ガス(混合流体)の均一性を確保することが非常に重要であり、そのために、液体原料が比重測定時から混合槽で混合されるまでの時間と、制御された時から調整流体が実際に混合槽で混合される時までの時間の差に伴う制御のズレを補正する必要がある。例えば、供送量が増大するように制御された調整流体が、制御の基になった比重測定時に供送された液体原料よりも早く混合槽に到達した場合、混合槽においては制御値よりも濃度の高い調整流体を含む混合流体が形成される。また、両者の流量の差によって生じる制御要素の立上り特性(例えば90%立上り時間T90)のズレは、こうした時間ズレの影響を増大させる。こうしたズレは、組成の異なる液体原料への切換や使用に伴う貯留槽内での組成の変化等により生じることから、その影響を補正することによって、制御要素の時間ズレによって生じるスパイクノイズ様の混合流体の形成を防止することができる。
【0026】
具体的には、液体原料供送部10における比重測定手段13から混合槽31までの空間容積をVa、液体原料の比重をGa、液体原料の供送流量をFa、調整流体供送部20における供送量調整手段22から混合槽31までの空間容積をVo、調整流体の比重をGo、調整流体の供送流量をFoとし、液体原料と調整流体の各空間容積Va,Voでの空塔速度の関係を下式1の条件とし、かつ下式2に係る時間遅れ△Taとし、フィードファード制御を行う。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
下式1は、制御要素に影響を与える液体原料と調整流体に係る空間容積Va,Voを制限することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することができる。また、調整流体の供送量の制御基準を混合槽31での混合開始時に設定し、実測の液体原料の比重測定時からのズレを補正することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することが可能となった。
【0027】
〔混合条件に係るシミュレーションについて〕
上記液体原料と調整流体に係る空間容積Vo,Vaの差異および該空間を液体原料と調整流体が通過する時間の差異に伴う影響を、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数
の変動としてシミュレーションを行った。
(i)検証条件
空間容積Voに液体原料としてLNGを約7326L/min(圧力約0.7MPa)、空間容積Vaに調整流体として窒素を約5830L/min(圧力約0.7MPa)供送し、上式1および式2の条件の有無による混合後のウォッベ指数の変動について、シミュレーションを行った。
(ii)検証結果
両者を対比すると、ウォッベ指数の変動として約50%低減することができた。
【0028】
〔本装置を用いた液体燃料ガスの供給方法〕
本装置を用いた液体燃料ガスの供給方法は、以下の工程から構成される。
(1)液体原料が、貯留槽11から供出され、所望の供送量に調整され、その比重が測定された後、混合槽31に導入される。
(2)調整流体が、貯留槽21から供出され、混合槽31に導入される。
(3)このとき、その供送量は、上記(1)において測定された比重を指標としたフィードファード制御によって調整される。具体的には、要求される液体燃料ガスの発熱量に対応し、ウォッベ指数が所定値の範囲となるように調整される。
(4)混合槽31内において、導入された液体原料が、低温液体状態または過冷却液体状態で、供送量が制御・調整されて導入された調整流体と混合される。
(5)混合槽31において混合されて作製された液体燃料ガスが、供出部32から供出される。
【0029】
<本装置の他の構成例(第2構成例)>
本装置の他の1の構成例(第2構成例)の概要を、
図2に示す。第2構成例では、基本構成例の構成に加え、貯留槽11の液体原料が気化したオフガスまたは他の貯留槽から供出されたオフガスが貯留される貯留槽51と、オフガスの供送量調整手段52と、オフガスの比重測定手段53と、バルブ54(基本構成例同様省略可)を備えたオフガス供送部50を有し、混合槽31において液体原料が低温液体状態で調整流体およびオフガスと混合され、液体燃料ガスが作製される。作製された液体燃料ガスは、供出部32を介して供出される。液体燃料ガスの作製に当たり、液体原料に混合する調整流体の一部としてオフガスを使用することによって、所望の発熱量を広い範囲で調整することができる。
【0030】
ここで、オフガスとは、LNG等の液体原料の貯留槽内において発生する気相成分をいい、液相とは異なる組成を有し、ボイルオフガス(BOG)という。こうしたオフガスは、液体原料の供送に伴い液相とは異なる組成を形成し、液相の減少とともに徐々に増量し、それに伴い、さらにその組成が変化する。例えば、液体原料がLNGの場合、オフガスは、LNGに比較して小さな発熱量を有するメタン(CH
4)成分が多くなる。従って、例えば、LNGを液体原料とし、メタンを主成分とするオフガスとして用い、調整流体として窒素を用いた場合、オフガスが増量するLNG組成の変動に伴う発熱量の減量に対して、窒素の混合量を減量することによって迅速に発熱量を増加させることができ、精度の高い発熱量の調整を行うことができる。一方、液体原料がLPGの場合、オフガスは、プロパン(C
3H
8)やブタン(C
4H
10)が主成分のLPGに比較して大きな発熱量を有するプロパンの比率が高くなり、これをオフガスとして用い、オフガスが増量するLPG組成の変動に伴う発熱量の増量に対して、窒素の混合量を増量することによって迅速に発熱量を減量させることができ、精度の高い発熱量の調整を行うことができる。また、LNGあるいはLPG自体の発熱量の変動に対しても、オフガスと窒素の混合量を調整することによって精度の高い発熱量の調整を行うことができる。つまり、LNGの発熱量の増量変動に対して、オフガスおよび/または窒素の混合量を増量することによって迅速に発熱量を減量させることができ、LNGの発熱量の減量変動に対して、オフガスおよび/または窒素の混合量を減量することによって迅速に発熱量を増量させることができる。また、LPGの発熱量の増量変動に対して、オフガスの混合量を減量および/または窒素の混合量を増量することによって迅速に発熱量を減量させることができ、LPGの発熱量の減量変動に対して、オフガスの混合量を増量および/または窒素の混合量を減量することによって迅速に発熱量を増量させることができる。
【0031】
具体的には、ウォッベ指数54.0(MJ/Nm
3)の液体燃料ガスが所望され、ウォッベ指数55.0(MJ/Nm
3)のLNGを200t/h用いた場合について、下表2に例示する。メタンを主成分としウォッベ指数53.2(MJ/Nm
3)のオフガス(BOG)100t/hが混合された場合(Case−1)、窒素2.45t/hを混合させることによって、実現することができる。同様の条件で、オフガスが混合されない場合(Case−2)、必要とされる窒素は、4.45t/hとなる。
【0033】
また、LNGにおけるオフガスは、炭化水素としてメタンのみに近い組成であり、比重計測によってオフガスの発熱量を推定することができ、調整流体の流量設定における計算の基として必要となる。しかしながら、本発明の検証過程において、オフガス中には窒素が混入している場合があるとの知見を得た。従って、ウォッベ指数を制御し、供給される液体燃料ガスの発熱量を安定させるためには、オフガス中に含まれる窒素成分に対応した調整流体の混合量の調整が必要となる。具体的には、以下のような関係が成立し、LNGにオフガスを混合する場合、オフガス中に混入している窒素の影響を考慮する必要がある。オフガス中の窒素の混入量が多い場合には、実質的に調整流体である窒素の過剰混合により、所望の発熱量の減量を招来するおそれがある。これを防ぐために、オフガス中の窒素の混入量を、オフガスの比重測定値Gfを利用して特定する。オフガス中のメタンのモル比率をYm,窒素の比重をGn(空気の比重を1とする),メタンの比重をGm,メタンの発熱量をHm[KJ/Nm
3]とすると、オフガスの発熱量Hf[KJ/Nm
3]は、下式9a〜9cに示すようになる。
Gf=Gn×(1−Ym)+Gm×Ym …式9a
Ym=(Gn−Gf)/(Gn−Gm) …式9b
Hf=Hm×Ym …式9c
【0034】
〔ウォッベ指数について〕
第2構成例において、混合された液体燃料ガスのウォッベ指数が所定値の範囲となるように、液体原料の比重測定値およびオフガスの比重測定値を指標とするフィードファード制御によって、液体原料の供送量に対応する調整流体の供送量およびオフガスの供送量の調整を行う。
【0035】
具体的には、オフガスの比重をGb、オフガスの供送流量をFbとした場合、作製された液体燃料ガスの比重Gaboは、調整流体(比重Go)の供送量Fo,液体原料の供送量Faおよび比重測定値Ga,オフガスの供送量Fbおよび比重測定値Gbを基に、下式6に示す演算式で求められる。
Gabo=(Fab×Gab+Fo×Go)/(Fab+Fo) …式6
ここで、FabおよびGabは、下式7および8とする。
Fab=Fa+Fb …式7
Gab=(Fa×Ga+Fb×Gb)/(Fa+Fb) …式8
このとき、液体燃料ガスのウォッベ指数Wbは、所望の発熱量Hbと上記比重Gaboを基に、下式6aに示す演算式で求められる。
Wb=Hb/√(Gabo) → Hb
2=Wb
2×Gabo …式6a
従って、液体燃料ガスの所望の発熱量Hb,これに対応するウォッベ指数Wbに対する調整流体の供送量Foの関係は、下式6bに示す演算式で求められる。
Hb
2=Wb
2×(Fab×Gab+Fo×Go)/(Fab+Fo) …式6b
以上から、調整流体の供送量Foを、下式
6cに基づき、液体原料の比重Gaを指標として制御することによって、該液体燃料ガスの所望の発熱量の範囲に対応するウォッベ指数が所定の範囲となるように調整することができる。
Fo=(Hb
2×Fab−Wb
2×Fab×Gab)/(Wb
2×Go−Hb
2)
…式6c
ここで、FabおよびGabは、上式7および8とする。
【0036】
〔混合条件について〕
第2構成例において、液体原料供送部10における比重測定手段13から混合槽31までの空間容積をVa、液体原料の比重をGa、液体原料の供送流量をFa、オフガス供送部50における比重測定手段53から混合槽31までの空間容積をVb、オフガスの比重をGb、オフガスの供送流量をFb、調整流体供送部20における供送量調整手段22から混合槽31までの空間容積をVo、調整流体の比重をGo、調整流体の供送流量をFoとし、前記液体原料,オフガスおよび調整流体の各空間容積Va,Vb,Voでの空塔速度の関係を下式1および4の条件とし、かつ下式2および5に係る時間遅れ△Ta,△Tb
とし、フィードファード制御を行う。
(Va/Fa)>(Vo/Fo) …式1
(Vb/Fb)>(Vo/Fo) …式4
△Ta=(Va/Fa)−(Vo/Fo) …式2
△Tb=(
Vb/Fb)−(Vo/Fo) …式5
下式1,4は、制御要素に影響を与える液体原料と調整流体および
オフガスに係る空間容積Va,Vo,Vbを制限することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することができる。また、調整流体の供送量の制御基準を混合槽31での混合開始時に設定し、実測の液体原料の比重測定時およびオフガスの比重測定時からのズレを補正することによって、スパイクノイズ様の発生を防止することが可能となった。
【0037】
〔第2構成例に係る液体燃料ガスの供給方法〕
第2構成例に係る液体燃料ガスの供給方法は、以下の工程から構成される。
(1)液体原料が、貯留槽11から供出され、所望の供送量に調整され、その比重が測定された後、混合槽31に導入される。
(2)オフガスが、貯留槽51から供出され、所望の供送量に調整され、その比重が測定された後、混合槽31に導入される。
(3)調整流体が、貯留槽21から供出され、混合槽31に導入される。
(4)このとき、その供送量は、上記(1)および(2)において測定された比重を指標としたフィードファード制御によって調整される。具体的には、要求される液体燃料ガスの発熱量に対応し、ウォッベ指数が所定値の範囲となるように調整される。
(5)混合槽31内において、導入された液体原料が、低温液体状態または過冷却液体状態で、供送量が制御・調整されて導入された調整流体と混合される。
(6)混合槽31において混合されて作製された液体燃料ガスが、供出部32から供出される。
【0038】
〔本装置の第3構成例〕
本装置の第3構成例の概要を、
図3に示す。第3構成例は、基本構成例に加えて、比重測定手段13から混合槽31に繋がる液体原料の供送流路において、所定の容積に設定可能な空間15を設けることを特徴とする。これによって、空間15の容積を調整しながら比重測定値を基に、調整流体の供送量の調整を行うことができる。なお、図示しないが、本構成を第2構成例に適用した場合には、調整流体の供送量に加えてオフガスの供送量の調整をも行うことができる。上記〔混合条件について〕に示したように、調整流体または調整流体およびオフガスの液体原料への混合条件は、上記のように制御要素に対する影響を与えないように設定する必要がある。特に調整流体およびオフガスの液体原料への混合には、3つの流体の混合条件を調整する必要があり、固定された空間容積を制限するだけでは、液体原料の組成変換が大きい場合には、調整に限界がある。最も供送量の大きな液体原料の供送流路に所定の容積に設定可能な空間15を設けることによって、実測時の時間的・空間的ズレを補正することによって、より効果的にスパイクノイズ様の発生を防止することができる。
【0039】
以上、各構成例について、各説明図を基に説明したが、本装置あるいは本液化装置は、これらに限定されず、その構成要素の組合せあるいは関連する公知の構成要素との組合せを含む広い概念で構成されるものである。
【符号の説明】
【0040】
10 液体原料供送部
11,21 貯留槽
12,22 供送量調整手段
13 比重測定手段
14,24 バルブ
20 調整流体供送部
30 混合部
31 混合槽
32 供出部
40 制御部