【実施例】
【0025】
以下、本発明の一実施例に係るネジ節鉄筋用継手1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0026】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0027】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0028】
図1は、ネジ節鉄筋用継手1を軸方向から視た側面図及び部分拡大図である。
図2は、ネジ節鉄筋用継手1をネジ節鉄筋2に螺合させる前後を示す図である。
図3は、節20の縦断面図である。ネジ節鉄筋用継手1は、ネジ節鉄筋2の端部同士を接合する。ネジ節鉄筋2は、土木建築用コンクリート構造物の端部から突出する補強材であり、外周に平坦面2aとネジ節2bとが設けられている。以下、ネジ節鉄筋2を便宜上区別する場合には、ネジ節鉄筋用継手1に先行して嵌合される先行側の雄側ネジ節鉄筋に参照符号2’を付し、後行側の雌側ネジ節鉄筋に参照符号2’’を付し、これらを総称する場合には、単に数字のみを参照符号とする。
【0029】
ネジ節鉄筋用継手1は、筒状の本体10と、本体10の内周面11に形成された複数の節20と、を備えている。本体10の中央には、グラウト注入孔12が形成され、本体10の側方には、ボルト挿通孔13が形成されている。
【0030】
節20は、本体10の内周面11に本体10の
図1の紙面垂直方向に一致する軸方向Aに沿って所定間隔毎に列状に配置されている。すなわち、節20は、内周面11に螺旋状に形成された突条を軸方向Aに沿って切り欠いたように形成されている。節20の列は、2列であり、互いに対向して配置されている。節20の内周平坦面21は、ネジ節鉄筋2の平坦面2aと隙間c1を空けて対向可能に形成されている。軸方向Aに隣り合う節20、20同士の間は、ネジ節2bの幅に応じた溝23が設けられている。節20は、本体10の周方向Bに沿って延設されており、節20の端部22と本体10の中心Oとを結んだ中心角度は59°に設定されている。節20の端部22は、所定の勾配を設けるのが好ましく、本実施例では、傾斜角6°の勾配を設けている。
【0031】
節20は、
図3(a)に示すように、軸方向Aに沿った断面積が略台形に形成されるのが好ましい。具体的には、節20の下辺長さL1は高さHの略3倍に設定されている。また、節20の上辺長さL2は、ネジ節2bと接触しない範囲内で長く設定されるのが好ましい。なお、節20は、
図3(b)に示すように、断面三角形状の節20であっても構わない。このような断面三角形状の節20では、下辺長さL1と高さHとが略等しく、上辺長さL2が下辺L1の長さの半分以下に形成されており、節20とネジ節2bとの間には、クリアランスc2が確保されている。
【0032】
また、本体10の内周面11には、複数の凹部30が形成されている。凹部30は、軸方向Aに沿って列設されている。凹部30は、本体10の周方向Bに沿って延設されている。凹部30は、側面視、すなわち軸方向から視て、対向する節20間の周方向Bに亘って連続又は略連続するように配置されるのが好ましい。本実施例では、凹部30は側面視で中心角度100°の扇状に形成されており、節20と凹部30とは、側面視で僅かな隙間を空けて断続的に配置されている。
【0033】
次に、隣り合うネジ節鉄筋2同士を接合する手順について、
図4、5に基づいて説明する。
図4(a)は、雄側ネジ節鉄筋2’にネジ節鉄筋用継手1を挿入した状態を示す図であり、
図4(b)は、ネジ節鉄筋用継手1を介して雄側ネジ節鉄筋2’と雌側ネジ節鉄筋2’’とを接続した状態を示す図であり、
図4(c)は、ネジ節鉄筋用継手1を軸方向A回りに90°回転させた状態を示す図であり、
図4(d)は、ネジ節鉄筋用継手1内にグラウト4を用いた充填した状態を示す図である。
図5(a)は、
図4(a)の4A部拡大図であり、
図5(b)は、
図4(b)の4B部拡大図である。
【0034】
まず、
図4(a)及び
図5(a)に示すように、ネジ節鉄筋用継手1を雄側ネジ節鉄筋2’に嵌合させる。ネジ節鉄筋用継手1を雄側ネジ節鉄筋2’に嵌合する際には、ネジ節鉄筋用継手1は、雄側ネジ節鉄筋2’の平坦面2aとネジ節鉄筋用継手1の内周平坦面21とを隙間c1を空けた状態で雄側ネジ節鉄筋2’にスライドさせながら嵌合される。
【0035】
次に、
図4(b)及び
図5(b)に示すように、ネジ節鉄筋用継手1を雄側ネジ節鉄筋2’と雌側ネジ節鉄筋2’’とを跨ぐようにスライドさせる。雌側ネジ節鉄筋2’’の平坦面2aは、雄側ネジ節鉄筋2’の平坦面2aと同一平面状に配置される位置決めされている。ネジ節鉄筋用継手1は、雌側ネジ節鉄筋2’’の平坦面2aとネジ節鉄筋用継手1の内周平坦面21とを隙間c1を空けた状態で、雌ネジ節鉄筋2’’に嵌合される。このとき、節20の端部22に所定の勾配が設けられていることにより、雌側ネジ節鉄筋2’’の回転を許容することができる。その後、ネジ節鉄筋用継手1を軸方向A回りに90°回転させる。
【0036】
ネジ節鉄筋用継手1が回転すると、
図4(c)に示すように、ネジ節鉄筋用継手1が列設された節20の間の溝23にネジ節2bが係合して、ネジ節鉄筋用継手1が雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’に締結される。また、ボルト挿通孔13に挿通された固定ボルト3で雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’とネジ節鉄筋用継手1とを固定するのが好ましい。
【0037】
そして、
図4(d)に示すように、グラウト注入孔12から本体10内にグラウト4を注入し、本体10内をグラウト4で充填して、雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’とネジ節鉄筋用継手1とを一体化する。また、凹部30内で突状に固化したグラウト4は、凹部30と係合することにより、軸方向Aの荷重に対して抵抗する。また、側面視で凹部30が節20の周方向Bの間に亘って形成されていることにより、凹部30とグラウト4とは、軸方向Aの荷重に対して強く係合している。
【0038】
次に、ネジ節鉄筋用継手1の継手性能について説明する。
図3(a)に示す断面台形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1、及び、
図3(b)に示す断面三角形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1について、「2015年度版建築物の構造関係技術基準解説書」(国土交通省国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人建築研究所監修、建築物の構造関係技術基準解説書編集委員会編集、全国官報販売協同組合発行、2015年発行)に示す弾塑性域正負繰返し試験を実施した結果を
図6(a)〜(d)に示す。
図6(a)は、継手長254mmにおける節20の断面形状ごとの継手剛性、母材の剛性を示す図であり、
図6(b)は、継手長254mmにおける節20の断面形状ごとのすべり量を示す図であり、
図6(c)は、継手長310mmにおける節20の継手剛性、母材の剛性を示す図であり、
図6(d)は、継手長310mmにおける節20の断面形状ごとのすべり量を示す図である。
【0039】
図6(a)、(b)に示すように、断面三角形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1は継手長254mmでは継手性能が不十分であったところ、断面台形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1は継手長254mmでも良好な継手性能を示していることが分かる。すなわち、同じ継手長であれば、断面台形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1は断面三角形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1よりも優れた継手性能を示すことが分かる。また、
図6(c)、(d)に示すように、断面三角形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1の継手長を310mmまで伸長することにより、断面台形状の節20を有するネジ節鉄筋用継手1と同様に、良好な継手性能を示していることが分かる。
【0040】
このようにして、本実施例に係る発明は、ネジ節鉄筋用継手1の節20とネジ節鉄筋2の平坦面2aとを対向させた状態でネジ節鉄筋用継手1をネジ節鉄筋2に嵌合させることにより、ネジ節鉄筋用継手1をネジ節鉄筋2に対して螺進させることなく、ネジ節鉄筋用継手1を所望の位置に簡便に配置することができる。また、ネジ節鉄筋用継手1がネジ節鉄筋2に対して回転して、列設された複数の節20の溝23にネジ節2bが係合することにより、ネジ節鉄筋用継手1とネジ節鉄筋2とが強固に締結されるため、短い継手長のネジ節鉄筋用継手1でネジ節鉄筋2同士を接合することができる。
【0041】
次に、上述したネジ節鉄筋用継手1の変形例を用いた隣り合うネジ節鉄筋2同士を接合する手順を
図7に基づいて説明する。
図7(a)は、雄側ネジ節鉄筋2’にネジ節鉄筋用継手1を係合させた状態を示す図である。
図7(b)は、ネジ節鉄筋用継手1に雌側ネジ節鉄筋2’’を嵌合させた状態を示す図である。
図7(c)は、ネジ節鉄筋用継手1を軸方向A回りに90°回転させた状態を示す図である。
【0042】
本変形例に係るネジ節鉄筋用継手1は、本体10の一方端から中央付近まで節20が配置され、本体10の他方端から中央付近まで本体10の内周面11にネジ節鉄筋2と係合可能なネジ節40が周設されている。ネジ節40は、公知の構成であり、ネジ節2bと螺合可能なものであれば、如何なるものであっても構わない。なお、節20及びネジ節40は、本体10の端部から中央付近に亘って形成されるものに限定されず、ネジ節鉄筋2の仕様や本体10の長さ等に応じて、節20の形成領域R1及びネジ節40の形成領域R2の大きさを任意に変更しても構わない。
【0043】
まず、
図7(a)に示すように、雄側ネジ節鉄筋2’のネジ節2bにネジ節鉄筋用継手1のネジ節40を螺合させる。
【0044】
次に、
図7(b)に示すように、雌側ネジ節鉄筋2’’は、平坦面2aをネジ節鉄筋用継手1の内周平坦面21と隙間c1を空けた状態で、ネジ節鉄筋用継手1内をスライドさせて嵌合される。その後、ネジ節鉄筋用継手1を軸方向A回りに90°回転させる。
【0045】
そして、
図7(c)に示すように、ネジ節鉄筋用継手1が複数の節20の間の溝23にネジ節2bが係合して、ネジ節鉄筋用継手1が雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’を締結する。その後、ネジ節鉄筋用継手1内をグラウト4で充填して、雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’とネジ節鉄筋用継手1とを一体化する。そして、必要に応じて、固定ボルト等で雄側ネジ節鉄筋2’及び雌側ネジ節鉄筋2’’とネジ節鉄筋用継手1とを固定する。
【0046】
このようにして、本変形例に係る発明は、ネジ節鉄筋用継手1の少なくとも一部に節20を形成することにより、節20の形成領域R1においては、ネジ節鉄筋用継手1の節20とネジ節鉄筋2の平坦面2aとを対向させた状態でネジ節鉄筋用継手1をネジ節鉄筋2に嵌合させ、ネジ節鉄筋用継手1を所望の位置に簡便に配置することができると共に、ネジ節鉄筋用継手1がネジ節鉄筋2に対して回転して、列設された節20の間にネジ節鉄筋2のネジ節2bが係合することにより、ネジ節鉄筋用継手1とネジ節鉄筋2とが強固に締結されるため、短い継手長のネジ節鉄筋用継手1でネジ節鉄筋2同士を接合することができる。
【0047】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなることができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。