特許第6430913号(P6430913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430913
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】防水ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20181119BHJP
   H01R 31/08 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   H01R13/52 Z
   H01R31/08 Q
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-192480(P2015-192480)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-69009(P2017-69009A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2016年5月30日
【審判番号】不服2017-17208(P2017-17208/J1)
【審判請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 幸司
(72)【発明者】
【氏名】武田 裕一
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 大町 真義
【審判官】 尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−009065(JP,U)
【文献】 特開2003−152347(JP,A)
【文献】 特開2011−096636(JP,A)
【文献】 特開2011−210486(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3154637(JP,U)
【文献】 特開平10−322863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線(92)を相互に接続させ且つ水密に分岐させる防水ジョイントコネクタ(10)において、
前記防水ジョイントコネクタ(10)には、内部が水密に保護された少なくとも1つの防水装置(96、98、104、110、124)と、内部が水密に保護されていない少なくとも1つの非防水装置(112)とが、ワイヤハーネス(90)から分岐した前記各電線(92)を介して接続され、
前記防水ジョイントコネクタ(10)は、
車体フレーム(14)及びエンジン(26)を備える車両(12)に取り付けられ、
少なくとも1つの面に開口部(130)が形成された外側ケース(128)と、前記開口部(130)を水密に塞ぎ且つ前記外側ケース(128)の内部と外部とを通気させる防水通気部材(132)とを備え、
前記防水装置(96、98、104、110、124)であるECU(96)と、前記エンジン(26)との間で、固定部材(94)によって、前記防水通気部材(132)が前記固定部材(94)にかからないように、前記ワイヤハーネス(90)と共に前記車体フレーム(14)に固定されていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ(10)。
【請求項2】
請求項1記載の防水ジョイントコネクタ(10)において、
前記防水装置(96、98、104、110、124)のうち、前記ECU(96)以外の少なくとも1つの防水装置は、前記エンジン(26)に取り付けられ、
前記非防水装置(112)の少なくとも1つは、前記車両(12)に取り付けられていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ(10)。
【請求項3】
請求項2記載の防水ジョイントコネクタ(10)において、
前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記エンジン(26)に取り付けられた前記防水装置(98、104)よりも上方に配置されていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ(10)。
【請求項4】
請求項2又は3記載の防水ジョイントコネクタ(10)において、
前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記車両(12)における当該車両(12)を覆うカバー部(60)の内側の箇所に取り付けられていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ(10)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水ジョイントコネクタ(10)において、
前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記防水通気部材(132)が上方を向くように配置されていることを特徴とする防水ジョイントコネクタ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を相互に接続させ且つ水密に分岐させる防水ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
防水ジョイントコネクタは、複数の電線を相互に接続した状態で水密に分岐させるものであり、複数の電線を介して各種機器に接続される。この場合、機器内部の圧力変化に起因して、当該機器が電線を介し水を吸い上げるおそれがあるので、防水ジョイントコネクタでは、吸い上げられる水を止水することにより、防水性を確保するようにしている。
【0003】
特許文献1には、ハウジング内の接続端子と複数の電線との接続部を弾性防水材で防水被覆した防水ジョイントコネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−9065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような防水ジョイントコネクタでは、弾性防水材の経年劣化等により、防水性が確保できなくなる可能性がある。
【0006】
また、防水ジョイントコネクタには、電線を介して、内部が水密に保護されている防水構造の機器(防水装置)に限らず、内部が水密に保護されていない非防水構造の機器(非防水装置)も接続される場合がある。前述のように、防水ジョイントコネクタの防水性が確保できない場合、非防水装置に水が浸入すると、電線及び防水ジョイントコネクタを介して、防水装置に水が浸入するおそれがある。
【0007】
すなわち、熱によって防水装置の内部が温められ、その後、防水装置の温度が低下すれば、当該防水装置の内部の圧力が低下する。また、防水ジョイントコネクタ及び防水装置は、密閉性が確保されている。そのため、上述のような温度変化が発生する防水装置では、圧力低下に起因して、電線及び防水ジョイントコネクタを介し、非防水装置に浸入した水を吸い上げるおそれがある。
【0008】
従って、止水とは異なる構造の防水ジョイントコネクタが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、経年劣化等の発生を回避しつつ、防水性を確保することができる防水ジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る防水ジョイントコネクタ(10)は、複数の電線(92)を相互に接続させ且つ水密に分岐させる防水ジョイントコネクタ(10)であって、以下の特徴を有する。
【0011】
第1の特徴;前記防水ジョイントコネクタ(10)には、内部が水密に保護された少なくとも1つの防水装置(96、98、104、110、124)と、内部が水密に保護されていない少なくとも1つの非防水装置(112)とが、ワイヤハーネス(90)から分岐した前記各電線(92)を介して接続されている。この場合、前記防水ジョイントコネクタ(10)は、車体フレーム(14)及びエンジン(26)を備える車両(12)に取り付けられ、少なくとも1つの面に開口部(130)が形成された外側ケース(128)と、前記開口部(130)を水密に塞ぎ且つ前記外側ケース(128)の内部と外部とを通気させる防水通気部材(132)とを備え、前記防水装置(96、98、104、110、124)であるECU(96)と、前記エンジン(26)との間で、固定部材(94)によって、前記防水通気部材(132)が前記固定部材(94)にかからないように、前記ワイヤハーネス(90)と共に前記車体フレーム(14)に固定されている。
【0012】
第2の特徴;前記防水装置(96、98、104、110、124)のうち、前記ECU(96)以外の少なくとも1つの防水装置は、前記エンジン(26)に取り付けられ、前記非防水装置(112)の少なくとも1つは、前記車両(12)に取り付けられている。
【0013】
第3の特徴;前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記エンジン(26)に取り付けられた前記防水装置(98、104)よりも上方に配置されている。
【0014】
第4の特徴;前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記車両(12)における当該車両(12)を覆うカバー部(60)の内側の箇所に取り付けられている。
【0015】
第5の特徴;前記防水ジョイントコネクタ(10)は、前記防水通気部材(132)が上方を向くように配置されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、防水通気部材によって防水ジョイントコネクタの内部と外部との通気が可能となる。これにより、防水ジョイントコネクタと防水装置とが電線を介して接続されている場合に、熱変化に起因して防水装置の内部で圧力変化が生じても、防水ジョイントコネクタの内部と外部との間で防水通気部材が呼吸することにより、温度変化が発生する防水装置の内部での圧力変化を小さくすることができる。
【0017】
この結果、非防水装置に水が浸入した場合でも、防水装置内部の圧力変化に伴う水の吸い上げを抑制することが可能となる。従って、第1の特徴によれば、従来の止水とは異なる構造で、防水ジョイントコネクタの防水性を確保することができる。また、防水ジョイントコネクタの経年劣化の発生を回避することも可能となる。
【0018】
また、車両のエンジンに防水装置が取り付けられる場合、エンジンの始動又は停止に伴う当該エンジンからの熱に起因して防水装置に温度変化が発生し、防水装置内部の圧力が変化するおそれがある。そこで、本発明の第2の特徴では、防水通気部材が通気することにより、防水装置内部の圧力変化を小さくするようにしている。この結果、例え、非防水装置に水が浸入しても、水の吸い上げを抑制しつつ、防水性を確保することができる。
【0019】
本発明の第3の特徴によれば、エンジンに取り付けられた防水装置よりも上方に防水ジョイントコネクタが配置されている。そのため、エンジンからの熱を受けて温められた防水装置内部の空気は、防水装置から電線及び防水通気部材を介して外部(上方)に抜ける。このように、温かい空気を上方に抜けやすくすることにより、防水装置内部の圧力変化を小さくして、水の吸い上げを阻止すると共に、防水ジョイントコネクタの防水性を容易に確保することができる。
【0020】
本発明の第4の特徴によれば、防水ジョイントコネクタがカバー部で覆われているので、外部からの異物が防水ジョイントコネクタに付着しにくくなる。これにより、防水ジョイントコネクタの通気性を確実に確保することができる。
【0021】
本発明の第5の特徴によれば、防水通気部材が上方を向くように防水ジョイントコネクタを配置することにより、防水通気部材を介して、防水装置内部の空気が外部(上方)に抜けやすくなる。この結果、防水ジョイントコネクタの防水性が確保しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る防水ジョイントコネクタが適用される自動二輪車の右側面図である。
図2図1のエンジン周辺を拡大して図示した右側面図である。
図3】車体カバーを取り外したエンジン周辺の状態を拡大して図示した右側面図である。
図4】防水ジョイントコネクタの取り付け状態を図示した斜視図である。
図5】防水ジョイントコネクタを含む自動二輪車のブロック図である。
図6】防水ジョイントコネクタの一部分解斜視図である。
図7】防水ジョイントコネクタの分解斜視図である。
図8】防水ジョイントコネクタを底面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る防水ジョイントコネクタについて、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0024】
[自動二輪車12の概略構成]
本実施形態に係る防水ジョイントコネクタ10は、図1図3に示す自動二輪車12等の車両に適用される。
【0025】
ここで、防水ジョイントコネクタ10の説明に先立ち、自動二輪車12の概略構成を説明する。なお、以下の説明では、自動二輪車12の進行方向を前方として、前後、左右及び上下の方向を説明する。
【0026】
自動二輪車12は、車体フレーム14を備える。車体フレーム14は、図示しないヘッドパイプと、ヘッドパイプから後方且つ下方に延びるメインパイプ16と、メインパイプ16から後方且つ斜め上方に延びる左右のシートレール18と、メインパイプ16の後端部から後方且つ上方に延びてシートレール18に接続するサポートフレーム20とを有する。
【0027】
メインパイプ16及びシートレール18は、メインフレーム22を構成する。また、メインパイプ16の後部には、ピボットプレート24が垂下して設けられている。さらに、メインフレーム22には、エンジン26が懸架されている。
【0028】
ヘッドパイプは、前輪28を含む前輪操舵部30を操舵自在に軸支する。前輪操舵部30は、ヘッドパイプを挿通するステアリング軸と、ステアリング軸の上端に取り付けられた操舵ハンドル32と、ステアリング軸から略下方に延びて前輪28を回転自在に支持するフロントフォーク34とから構成される。
【0029】
ピボットプレート24は、後輪36を含む後輪操舵部38を操舵自在に軸支する。後輪操舵部38は、ピボットプレート24に車軸方向(左右方向)に渡されるピボット軸と、ピボット軸から後方に延びて後輪36を支えるスイングアーム42と、スイングアーム42及びシートレール18間に渡されるリヤクッション44とから構成される。
【0030】
シートレール18には、前方から後方に向って、図示はしないが収納ボックス及び燃料タンクが順に取り付けられ、収納ボックス及び燃料タンクには、乗員が着座するシート46が上方から取り付けられている。
【0031】
エンジン26のシリンダヘッド48から排気管50が後方に延び、消音器52に接続されている。エンジン26の下方には、乗員である運転者が足を置くステップ54が設けられている。サポートフレーム20には、乗員である同乗者が足を置く図示しないピリオンステップが取り付けられている。エンジン26には、当該エンジン26を始動させるためのスタータモータ56が取り付けられている。
【0032】
図1及び図2に示すように、車体フレーム14は、車体カバー(カバー部)60で覆われている。車体カバー60は、フロントカウル62と、フロントカウル62の後方から取り付けられ、且つ、メインフレーム22の少なくとも上方及び側方を覆うメインフレームカバー64と、メインフレームカバー64の一部と重なるように取り付けられ、且つ、メインフレーム22の側方を少なくとも覆うメインフレームサイドカバー66とを有する。
【0033】
メインフレームカバー64の下方には、ピボットプレート24の側方を覆う図示しないピボットプレートカバーが設けられている。フロントカウル62及びメインフレームカバー64は、運転者の足の前方を覆うレッグシールド68を構成する。メインフレームカバー64は、前方のフロントカバー70と後方のリヤカバー72との分割構造になっている。
【0034】
ピボットプレート24には、サイドスタンド74が取り付けられている。また、前輪28の上方及び後方を覆うようにフロントフェンダ76が配置される一方で、後輪36の上方及び後方を覆うようにリヤフェンダ78が配置されている。シート46の後部には、グラブレール82が設けられている。
【0035】
操舵ハンドル32には、周囲から覆うようにハンドルカバー84が取り付けられ、ハンドルカバー84にヘッドライト86が取り付けられている。操舵ハンドル32の左右には、後方確認用のミラー88が取り付けられている。
【0036】
[自動二輪車12の電装品]
次に、自動二輪車12に配置される電装品について説明する。
【0037】
図3に示すように、自動二輪車12における車体カバー60の内側には、メインフレーム22に沿ってワイヤハーネス90が配置され、当該ワイヤハーネス90から分岐した電線に各種の電装品が接続されている。なお、図3は、自動二輪車12のエンジン26周辺について、車体カバー60が取り外された状態を図示している。
【0038】
図3及び図4に示すように、右側のシートレール18におけるエンジン26上方の箇所には、ワイヤハーネス90から分岐した複数の電線92に接続された防水ジョイントコネクタ10が配置されている。防水ジョイントコネクタ10は、ワイヤハーネス90と共にテープ等の固定部材94によってシートレール18に固定されている。本実施形態では、防水ジョイントコネクタ10の側面とワイヤハーネス90とを固定部材94により右側のシートレール18にテーピングすることにより、右側のシートレール18に固定した場合を図示している。
【0039】
そして、自動二輪車12において、ワイヤハーネス90には、例えば、下記の電装品が接続されている。
【0040】
シートレール18における防水ジョイントコネクタ10よりも上方且つ後方の箇所には、エンジン26等を制御するECU(Engine Control Unit)96が配置されている。また、エンジン26を構成するシリンダヘッド48の周辺には、燃焼室に燃料を噴射するインジェクタ98と、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ100と、排気ガス中の酸素濃度を検出するO2センサ102と、点火プラグに点火電圧を供給するイグニションコイル104とが配置されている。
【0041】
また、図5のブロック図に示すように、自動二輪車12には、上述の電装品以外にも、下記の電装品が配置されている。
【0042】
すなわち、自動二輪車12には、バッテリ106、クランクパルサ108、フューエルポンプ110、メインスイッチ112、スタータスイッチ114、FIインジケータ116、サイドスタンドスイッチ118、エアインテークソレノイド120、温度センサ122、サービスチェックカプラ124、及び、スタータリレー126も配置されている。
【0043】
クランクパルサ108は、エンジン26のクランク角を検出し、その検出信号をクランクパルスとしてECU96に出力する。フューエルポンプ110は、燃料タンクからインジェクタ98に燃料を供給する。メインスイッチ112は、運転者の操作に起因してバッテリ106からECU96等に電力を供給させるためのスイッチである。スタータスイッチ114は、運転者の操作に起因してエンジン26を始動させるためのスイッチである。FIインジケータ116は、インジェクタ98等の燃料噴射系統の状態を報知する警告灯である。サイドスタンドスイッチ118は、サイドスタンド74が所定の格納位置に上げられているときに、ECU96に検出信号を出力する。
【0044】
エアインテークソレノイド120は、図3に図示されていないが、エンジン26に取り付けられており、吸気を制御する。温度センサ122は、エンジン26の冷却水の温度を検出する水温センサ、又は、エンジン26及び変速機内の潤滑油の温度を検出する油温センサである。サービスチェックカプラ124は、ECU96と外部コンピュータとを接続して、外部コンピュータとECU96との通信を行わせることにより、故障診断やエンジンセッティングを行うためのカプラである。スタータリレー126は、バッテリ106の電力をスタータモータ56に供給するためのリレーである。
【0045】
これらの電装品は、自動二輪車12における車体カバー60の内側に配置されている。また、図3図5に示した電装品は、一例であり、車体カバー60の内側に配置され、且つ、ワイヤハーネス90に接続される電装品であればよい。
【0046】
[防水ジョイントコネクタ10に接続される電装品]
防水ジョイントコネクタ10は、ワイヤハーネス90から分岐した複数の電線92を相互に接続させ、且つ、水密に分岐させる防水ジョイントである。
【0047】
図5において、防水ジョイントコネクタ10は、複数の電線92を介して、ECU96、インジェクタ98、イグニションコイル104、バッテリ106、フューエルポンプ110、メインスイッチ112、エアインテークソレノイド120及びサービスチェックカプラ124に接続されている。すなわち、防水ジョイントコネクタ10は、バッテリ106から供給される電力を複数の電線92を介して、ECU96、インジェクタ98、イグニションコイル104、フューエルポンプ110、メインスイッチ112、エアインテークソレノイド120及びサービスチェックカプラ124に分配する防水ジョイントとして機能する。つまり、図5において太線で図示した各電線92と防水ジョイントコネクタ10とは、バッテリ106から上記の各電装品への電源供給ラインを構成する。
【0048】
ここで、図5に示す電装品のうち、ECU96は、当該ECU96を構成する電子部品の発熱で温められる電装品である。また、インジェクタ98、スロットルポジションセンサ100、O2センサ102及びイグニションコイル104等は、エンジン26の周辺に配置されており、当該エンジン26の熱で温められる電装品である。
【0049】
さらに、ECU96、インジェクタ98、スロットルポジションセンサ100、O2センサ102及びイグニションコイル104等は、その内部が水密に保護された防水構造の電装品(防水装置)とされている。
【0050】
さらにまた、防水ジョイントコネクタ10、フューエルポンプ110及びサービスチェックカプラ124は、外部の熱によって温められることはないが、その内部が水密に保護された防水構造の電装品(防水装置)である。
【0051】
一方、クランクパルサ108、メインスイッチ112、スタータスイッチ114、FIインジケータ116、サイドスタンドスイッチ118、スタータリレー126及びグランドラインは、その内部が水密に保護されていない非防水構造の電装品(非防水装置)である。なお、メインスイッチ112、スタータスイッチ114及びFIインジケータ116は、操舵ハンドル32の周辺に配置されている非防水装置である。
【0052】
従って、防水ジョイントコネクタ10には、複数の電線92を介して、複数の防水装置(ECU96、インジェクタ98、イグニションコイル104、フューエルポンプ110、サービスチェックカプラ124)と、少なくとも1つの非防水装置(メインスイッチ112)とが接続されている。
【0053】
ここで、防水装置であるインジェクタ98及びイグニションコイル104は、エンジン26の周辺に配置されている。そのため、これらの防水装置は、エンジン26の動作に伴い、当該エンジン26からの熱で温められる。また、これらの防水装置は、密閉性が確保されているので、エンジン26からの熱で温められると、装置内部の空気の圧力が上昇する。一方、エンジン26の停止等に伴い、インジェクタ98及びイグニションコイル104の温度が低下すると、装置内部の空気の圧力が低下する。
【0054】
つまり、インジェクタ98及びイグニションコイル104等のエンジン26周辺に配置される防水装置は、エンジン26からの熱に起因して、温度変化が発生する防水装置である。
【0055】
また、ECU96を構成する電子部品が動作する場合、ECU96は、電子部品の熱で温められる。ECU96も密閉性が確保されているので、電子部品の熱で温められると、ECU96内部の空気の圧力が上昇する。一方、電子部品の動作停止等に伴い、ECU96の温度が低下すると、ECU96内部の空気の圧力が低下する。つまり、ECU96は、電子部品からの熱に起因して、温度変化が発生する防水装置である。
【0056】
従って、非防水装置であるメインスイッチ112に水が浸入した場合、防水装置であるECU96、インジェクタ98及びイグニションコイル104内部の圧力が低下した際、浸入した水は、当該圧力によって防水装置側に吸い上げられるおそれがある。
【0057】
なお、防水ジョイントコネクタ10、フューエルポンプ110及びサービスチェックカプラ124は、エンジン26周辺に配置されていない、上記のような温度変化が発生しない防水装置である。
【0058】
[防水ジョイントコネクタ10の構成]
そこで、本実施形態において、防水ジョイントコネクタ10は、下記の構成を有することにより、防水ジョイントコネクタ10内部の防水性を確保すると共に、防水装置への水の吸い上げを阻止する。
【0059】
すなわち、防水ジョイントコネクタ10は、図3及び図4に示すように、ECU96と、エンジン26に取り付けられた各防水装置(インジェクタ98及びイグニションコイル104)との間に配置されている。
【0060】
そして、防水ジョイントコネクタ10は、複数の電線92が挿入され、且つ、ワイヤハーネス90と共に固定部材94により右側のシートレール18に固定される外側ケース128を有する。外側ケース128の外表面のうち、複数の電線92が挿入される底面とは反対側の上面には、開口部130が形成されている。そして、開口部130は、防水通気部材132で水密に塞がれている。すなわち、防水通気部材132は、固定部材94によるテーピングの邪魔にならない箇所に設けられている。
【0061】
防水通気部材132は、外側ケース128の内部と外部との間で水蒸気を含む空気を通過させる一方で、水分の通過を遮断させる防水通気フィルタであり、ゴアテクス(登録商標)等のPTFE(Polytetrafluoroethylene)製のフィルタであることが望ましい。
【0062】
また、防水ジョイントコネクタ10は、防水通気部材132が上方を向き、且つ、固定部材94にかからないように、シートレール18に固定されている。これにより、外側ケース128の内部と外部との間の通気を容易に確保することができる。
【0063】
そして、防水ジョイントコネクタ10は、例えば、図3図4及び図6図8に示すように、各電線92を相互に接続し、バッテリ106からの電力を各電装品に分配できるような構造であることが好ましい。なお、図5に示すように、防水ジョイントコネクタ10には8本の電線92が接続されているが、図3図4及び図6図8では、説明の容易化のため、3本の電線92が防水ジョイントコネクタ10に接続されている場合にデフォルメして図示している。
【0064】
外側ケース128の底面部分となる蓋体134には、所定間隔で一列にシール孔136が形成されている。また、蓋体134の側部には、ゴム栓138が装着されている。複数の電線92は、各シール孔136にそれぞれ挿入され、各電線92の先端部が外側ケース128内に突き出している。
【0065】
各電線92の先端部は、コネクタケース140に設けられた圧接端子142に配置され、コネクタケース140の係止爪144と、コネクタカバー146の係止片148とが係合することにより圧接される。この結果、各電線92は、圧接端子142を介して、相互に接続される。
【0066】
外側ケース128は、電気絶縁材料からなる有底筒状の部材である。この場合、各電線92の先端部がコネクタケース140及びコネクタカバー146によって圧接された状態で、コネクタケース140及びコネクタカバー146を外側ケース128内に挿入し、ゴム栓138を外側ケース128の開口部周縁150に嵌着させる。これにより、各電線92の先端部、コネクタケース140及びコネクタカバー146が外側ケース128内に水密に収納され、防水ジョイントコネクタ10が形成される。
【0067】
なお、図3図4及び図6図8に示す防水ジョイントコネクタ10は、一例であり、防水性を確保しつつ、各電線92を相互に接続して分岐できるのであれば、どのような構造であってもよいことは勿論である。
【0068】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る防水ジョイントコネクタ10は、複数の電線92を相互に接続させ且つ水密に分岐させる防水ジョイントであって、各電線92を介して、内部が水密に保護された防水装置(ECU96、インジェクタ98、イグニションコイル104、フューエルポンプ110、サービスチェックカプラ124)と、内部が水密に保護されていない非防水装置(メインスイッチ112)とが接続されている。この場合、防水ジョイントコネクタ10は、上面に開口部130が形成された外側ケース128と、開口部130を水密に塞ぎ且つ外側ケース128の内部と外部とを通気させる防水通気部材132とを備える。
【0069】
このように、防水通気部材132によって防水ジョイントコネクタ10の内部と外部との通気が可能となる。これにより、防水ジョイントコネクタ10と防水装置とが電線92を介して接続されている場合に、熱変化に起因して防水装置の内部で圧力変化が生じても、防水ジョイントコネクタ10の内部と外部との間で防水通気部材132が呼吸することにより、温度変化が発生する防水装置の内部での圧力変化を抑制することができる。
【0070】
この結果、非防水装置に水が浸入した場合でも、防水装置内部の圧力変化に伴う水の吸い上げを抑制することが可能となる。従って、本実施形態によれば、従来の止水構造とは異なる構造で、防水ジョイントコネクタ10の防水性を確保することができる。また、防水ジョイントコネクタ10の経年劣化の発生を回避することもできる。
【0071】
また、自動二輪車12のエンジン26に防水装置が取り付けられる場合、エンジン26の始動又は停止に伴うエンジン26からの熱に起因して、防水装置に温度変化が発生し、防水装置内部の圧力が変化するおそれがある。そこで、本実施形態では、防水通気部材132が通気することにより、防水装置内部の圧力変化を小さくするようにしている。この結果、例え、非防水装置に水が浸入しても、水の吸い上げを抑制しつつ、防水性を確保することができる。
【0072】
さらに、防水ジョイントコネクタ10は、エンジン26に取り付けられた防水装置よりも上方に配置されている。そのため、エンジン26からの熱を受けて温められた防水装置内部の空気は、防水装置から電線92及び防水通気部材132を介して外部(上方)に抜ける。このように、温かい空気を上方に抜けやすくすることにより、防水装置内部の圧力変化を小さくして、水の吸い上げを阻止すると共に、防水ジョイントコネクタ10の防水性を容易に確保することができる。
【0073】
さらにまた、防水ジョイントコネクタ10は、自動二輪車12における車体カバー60の内側の箇所に取り付けられている。このように、防水ジョイントコネクタ10が車体カバー60で覆われることにより、外部からの異物が防水ジョイントコネクタ10に付着しにくくなる。これにより、防水ジョイントコネクタ10の通気性を確実に確保することができる。
【0074】
また、防水ジョイントコネクタ10は、防水通気部材132が上方を向くように配置されている。このような配置により、防水通気部材132を介して、防水装置内部の空気が外部(上方)に抜けやすくなる。この結果、防水ジョイントコネクタ10の防水性が確保しやすくなる。
【0075】
なお、上記の説明では、防水ジョイントコネクタ10及び電線92がバッテリ106の電源供給ラインである場合について説明したが、本実施形態では、防水ジョイントコネクタ10及び電線92を信号ラインに適用しても同様の効果が得られることは勿論である。
【0076】
また、本実施形態では、防水ジョイントコネクタ10に接続される防水装置がECU96やエンジン26周辺に配置される防水装置である場合について説明した。本実施形態では、上述の防水装置に限定されることはなく、温度変化が発生する防水装置であれば、上記の各効果が得られる。
【0077】
さらに、本実施形態では、自動二輪車12に防水ジョイントコネクタ10を取り付けた場合について説明したが、防水ジョイントを必要とする他の車両、機器又はシステムに防水ジョイントコネクタ10を使用しても、上記の各効果が得られることは勿論である。
【0078】
以上、本発明について好適な実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は、上記の実施形態の記載範囲に限定されることはない。上記の実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは、当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定されて解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
10…防水ジョイントコネクタ 12…自動二輪車(車両)
18…シートレール 26…エンジン
48…シリンダヘッド 60…車体カバー(カバー部)
90…ワイヤハーネス 92…電線
94…固定部材 96…ECU(防水装置)
98…インジェクタ(防水装置)
104…イグニションコイル(防水装置)
106…バッテリ
110…フューエルポンプ(防水装置)
112…メインスイッチ(非防水装置)
120…エアインテークソレノイド
124…サービスチェックカプラ(防水装置)
128…外側ケース 130…開口部
132…防水通気部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8