特許第6430959号(P6430959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6430959少なくとも一つの照明システムをインターフェースするための園芸照明インターフェース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430959
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】少なくとも一つの照明システムをインターフェースするための園芸照明インターフェース
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20181119BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   A01G7/00 601C
   H05B37/02 D
   H05B37/02 L
   H05B37/02 G
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-548832(P2015-548832)
(86)(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公表番号】特表2016-504030(P2016-504030A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】IB2013061024
(87)【国際公開番号】WO2014097138
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】61/740,558
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12198959.4
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】クライン マルセリヌス ペトルス カロルス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ペータース ヘンリクス マリー
(72)【発明者】
【氏名】ファン エヒテルト エステル マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペータース マルク アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】タナセ クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】オナック ハブリエル ユーヘン
(72)【発明者】
【氏名】ニコル セリーヌ キャセリーヌ サラ
(72)【発明者】
【氏名】ファン エルンプト ロブ フランシスクス マリア
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−268111(JP,A)
【文献】 特開平10−22(JP,A)
【文献】 特開2003−79254(JP,A)
【文献】 特開平10−178901(JP,A)
【文献】 特開平10−191787(JP,A)
【文献】 特開平10−178899(JP,A)
【文献】 特開2010−29098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 31/00
A01G 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の生理学的植物反応を、少なくとも調節可能な照明特性を持つ少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換するためのインターフェースであって、
所望の生理学的植物反応を受信するための受信器と、
前記所望の生理学的植物反応を前記制御命令に変換するための、前記受信器に機能的に結合されるプロセッサと、
前記制御命令を送信するための、前記プロセッサに機能的に結合される送信器とを有し、
前記所望の生理学的植物反応が、多次元園芸作用空間内の設定点として定義され、前記多次元園芸作用空間は、所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第三の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第四の次元から選択される少なくとも二つの次元によってあらわされ、
前記プロセッサが、前記多次元園芸作用空間のサブ空間の記述を有するメモリに機能的に結合され、前記サブ空間は、照明システムによって実行可能な制御命令に変換可能な前記多次元園芸作用空間内の点を有し
前記プロセッサが、前記サブ空間内の標的点に前記設定点をマッピングし、照明システムのための対応する制御命令を決定するように構成される、
インターフェース。
【請求項2】
前記所望の生理学的植物反応が多次元園芸作用空間内の設定点として定義され、前記多次元園芸作用空間は、
(i)所望の光合成作用をあらわす第一の次元と所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元を少なくとも有する第一の座標系、
(ii)所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第二の座標系、
(iii)所望のフォトトロピン作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第三の座標系、
のうちの一つによってあらわされる、請求項1に記載のインターフェース。
【請求項3】
前記プロセッサが少なくとも一つの基準に基づいて前記サブ空間内の前記設定点をマッピングするように構成される、請求項1又は2に記載のインターフェース。
【請求項4】
前記多次元園芸作用空間が、所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第三の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第四の次元を少なくとも有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項5】
前記多次元園芸作用空間が追加次元を有し、前記追加次元が所望の気孔開口作用をあらわす、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項6】
前記受信器がさらに、植物のタイプ、少なくとも一つの所望の生理学的植物反応、及び前記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応のためのタイムスケジュール、を特定するためのラベルを少なくとも有する園芸光レシピを受信するように構成され、前記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応は少なくとも一つの園芸作用空間内の座標としてあらわされる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項7】
前記受信器がさらに、前記多次元園芸作用空間内の前記サブ空間を定義する点として定義される生理学的植物反応を実行するための関連する制御命令とともに照明システム識別を有する照明システム定義を受信するように構成され、前記制御命令が前記照明システムによって実行可能であり、前記受信器が前記メモリに照明システム定義を提供するように構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項8】
前記受信器がさらに、感知される光スペクトルをあらわすセンサ値を受信するように構成され、前記プロセッサがさらに前記多次元園芸作用空間内のに前記センサ値をマッピングするように構成される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項9】
前記園芸作用空間に対して前記少なくとも一つの照明システムのサブ空間を表示するための、又はその投影を表示するための、前記プロセッサに機能的に結合されるディスプレイをさらに有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインターフェース。
【請求項10】
前記ディスプレイが、前記サブ空間に対する前記設定点及び前記標的点、その投影の少なくとも一つを表示する、請求項9に記載のインターフェース。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインターフェースと、少なくとも一つの照明システムと、気候制御システムとを有する、園芸システムであって、前記インターフェースが、気候制御システムと機能的に結合され、前記気候制御システムは、少なくとも一つの所望の生理学的植物反応を前記インターフェースに提供し、前記インターフェースがさらに、該インターフェースから制御命令を受信するため、及び前記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応にマッピングされる光を提供するための照明システムと機能的に結合される、園芸システム。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインターフェースと、植物のタイプ、前記多次元園芸作用空間内の少なくとも一つの設定点として定義される少なくとも一つの所望の生理学的植物反応、前記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応のためのタイムスケジュール、を特定するためのラベルを少なくとも有する園芸光レシピを提供するように構成される、園芸光レシピ管理システムとを有する、園芸システムであって、前記インターフェースが前記園芸光レシピを受信するために前記園芸光レシピ管理システムに機能的に結合される、園芸システム。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のインターフェースを有する園芸システムであって、前記多次元園芸作用空間内の前記サブ空間を定義する点として定義される生理学的植物反応を実行するための関連する制御命令とともに照明システム識別を各々が有する、照明システム定義のリポジトリを有する照明管理システムをさらに有し、前記インターフェースが前記リポジトリにアクセスするために前記照明管理システムに機能的に結合される、園芸システム。
【請求項14】
所望の生理学的植物反応を、少なくとも一つの調節可能な照明特性を持つ少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換するための方法であって、
所望の生理学的植物反応を受信するステップであって、前記所望の生理学的植物反応が多次元園芸作用空間内の設定点として定義され、前記多次元園芸作用空間が、
(i)所望の光合成作用をあらわす第一の次元と所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元を少なくとも有する第一の座標系、
(ii)所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第二の座標系、
(iii)所望のフォトトロピン作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第三の座標系、
のうちの一つによってあらわされる、ステップと、
前記所望の生理学的植物反応を制御命令に変換するステップであって、前記変換するステップが、前記多次元園芸作用空間のサブ空間内の標的点に前記設定点をマッピングするステップと、前記少なくとも一つの照明システムのための対応する制御命令を決定するステップとを有し、前記サブ空間が前記少なくとも一つの照明システムによって実行可能な、前記少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換可能な、前記多次元園芸作用空間内の点を有する、ステップと、
前記少なくとも一つの照明システムに前記制御命令を送信するステップとを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも一つの照明システムをインターフェースするための園芸照明インターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
園芸照明は当技術分野で既知である。例えばUS2010031562は、照らされる作物の上に設けられるランプなどの複数の光源と、光源用の複数の調光器とを有する、温室内の作物を照らすための温室農業用の照明設備であって、調光器が所定パターンに従って調光器と協働する光源の光強度を周期的に、自動的に変更するための制御手段を備えることを特徴とするものを記載する。US2010031562はそれぞれ温室農業用の方法及び照明設備を提供することを目指す。特に、光源は複数のグループに分割され、照明設備は、使用中に、共同グループによる消費電力が個々のグループの電力変動の和よりも少なく変動するように、より具体的には共同グループによる消費電力が単一グループの電力変動よりも少なく変動するように、より具体的には共同グループによる消費電力が最低限変動するか、若しくは少なくとも実質的に変動しないように、異なるグループのパターンが互いに対して位相シフトされながら、各グループの電力が所定パターンに従って変動するように、設計される。特に、全パターンは同じであるが、互いに対して位相シフトだけされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
植物は光、CO、及びHOを炭水化物(糖)に変換するために光合成の過程を使用する。これらの糖は代謝過程に燃料供給するために使用される。過剰な糖はバイオマス形成のために使用される。このバイオマス形成は茎成長、葉面積の拡大、開花、果実形成などを含む。光合成に関与する光受容体はクロロフィルであり、高等植物においてはカロテノイドもアンテナ色素の一部である。光合成の他には、光周性、屈光性、及び光形態形成も、300nmから800nm波長の光若しくは電磁放射と植物との間の相互作用に関連する代表的な生理学的過程であり:
‐光周性は植物が(例えば開花を誘導するために)光の周期性を感知し測定するために持つ能力をあらわし、
‐屈光性は光の方へ向かう及び光から離れる植物の成長運動をあらわし、
‐光形態形成は光の質と量に応じた形態の変化をあらわす。
【0004】
クロロフィルa及びbの二つの重要な吸収ピークはそれぞれ625‐675nm及び425‐475nmからの赤色及び青色領域にある。さらに、近紫外(300‐400nm)及び遠赤領域(700‐800nm)にも他の局在ピークがある。主な光合成作用は400‐700nmの波長範囲内で起こるようである。この範囲内の放射は光合成有効放射(PAR)とよばれる。
【0005】
フィトクロム光化学系は二つの形態のフィトクロムPr及びPfrを含み、これらはそれぞれ660nmの赤色及び730nmの遠赤色にその感度ピークを持つ。フィトクロム反応は葉拡大、近傍知覚(neighbor perception)、避陰反応、茎成長、種子発芽、及び開花誘導などの異なる反応を誘導する。
【0006】
園芸では、光は光子PAR(光合成有効放射)のnrで定量化されることが多く(400から700nmの全光子の光合成への寄与は等しいとみなされる)、単位面積当たり1秒当たりの光子数(μmol/秒/m;1molは6・1023光子に対応)で測定され、あらわされることができる。
【0007】
植物成長は光の量若しくは光強度だけでなく、植物に対する光のスペクトル組成、持続時間及びタイミングにも依存する。これらのパラメータに関する植物成長のための特定植物に依存する強度、スペクトル組成、持続時間及びタイミングに関する最適な光の組み合わせは、"光レシピ"とよばれる。
【0008】
従来は、植物成長のために日光しか利用できなかった。人工照明及び例えば温室の開発はその目的のための特殊照明装置をもたらした。最初に電球、電熱線に基づく照明装置、及び高圧ナトリウム(HPS)ランプが使用された。HPS及びメタルハライドランプはともにガス放電ランプである(原理は、ガス充填管内の二つの電極間でアーク放電を発生させ、このアーク放電がガス及び存在するメタルハライド若しくはHPSの場合はナトリウムアマルガムをイオン化することに基づく)。白熱電球(真空若しくはハロゲン充填のいずれか)だけは電熱線主にタングステンの原理に基づく。しばしば使用される第三の原理は蛍光灯であり、これもガス放電ランプ(水銀蒸気充填)であり、イオン化水銀によって作られるUV光がガラス管の内部に置かれる蛍光体によって可視光に変換される。三タイプのランプ全てが園芸照明のために使用される(HPSランプはしばしば温室で高い光レベルを生じる同化照明として、白熱電球も温室で(開花誘導のための)開花ランプとして、蛍光灯は日光のない組織培養栽培及び植物栽培チャンバにおいて)。原則としてLED照明は園芸用に使用される従来の光源に取って代わる可能性があり、最終的には取って代わることになり、おそらく全く新しいまだ予想できない植物栽培法を実現するだろう。LEDにより、ほとんどの従来の光源よりも効率的な300‐800nmから任意のスペクトルを生じることが可能になっているが、LEDベースの光源のスペクトル組成を制御することも可能である。LEDは園芸照明において以下のような様々な役割を果たすことができる。
【0009】
補助照明:(例えばトマトの)生産を増大するため、例えば作物価格が高くなり得る秋、冬、及び春の期間に作物生産を延長するため、或いは作物の形態を調整する制御方法として、自然照明を補う照明が使用される。
【0010】
光周期照明:日周の光の持続時間は多くの植物にとって重要である。24時間周期における明期と暗期の比率は多くの植物の開花反応に影響を及ぼす。補助照明を用いてこの比率を操作することは開花の時期を制御することを可能にする。
【0011】
"植物工場"での、及び組織培養用途のための、日光なしの栽培。
【0012】
近い将来、従来の光源は役割を果たし続けるかもしれない。場合によっては、それらは植物栽培のためのより費用効率の高い、及び/又は実績のある人工光源であると判明するかもしれない(おそらく自然光源及び/又は他の人工光源と組み合わせて)。
【0013】
照明装置の様々なメーカーは、スペクトル出力及び/又は強度の両方において異なる特徴を持つ照明装置を提供した。光源はLED光源の導入によりさらにいっそう異なる。さらに、栽培者はその温室において異なるタイプの照明装置を使用し組み合わせ得る。これら異なる照明装置全てを温室において組み合わせること、及び植物成長の適切な段階において最適なタイプの照明を提供することは課題であることが判明している。実際、LED照明はスペクトル組成を経時的に制御可能にする。光の量が関心事となるだけでなく、特に光の質が関心事となり、定義される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、好適にはさらに上記欠点の一つ以上を少なくとも部分的に未然に防ぐ、園芸用途用の照明制御、及び/又は園芸用途用の代替的照明方法を提供することが本発明の一態様である。
【0015】
従って本発明は、所望の生理学的植物反応を、少なくとも調節可能な照明特性を持つ少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換するためのインターフェースを提供し、当該インターフェースは以下を有する:
所望の生理学的植物反応を受信するための受信器、
上記所望の生理学的植物反応を上記制御命令に変換するための、上記受信器に機能的に結合されるプロセッサ、及び、
上記制御命令を上記少なくとも一つの照明システムに送信するための、上記プロセッサに機能的に結合される送信器。上記所望の生理学的植物反応は、多次元園芸作用空間内の設定点として定義され、当該多次元園芸作用空間は、所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第三の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第四の次元から選択される少なくとも二つの次元によってあらわされ、上記プロセッサは、上記少なくとも一つの照明システムによって実行可能な制御命令に変換可能な多次元園芸作用空間内の点をあらわす多次元園芸作用空間のサブ空間の記述を有するメモリに機能的に結合され、上記プロセッサは上記サブ空間内の標的点に上記設定点をマッピングし、上記少なくとも一つの照明システムのための対応する制御命令を決定するように構成される。
【0016】
一実施形態において、本発明は所望の生理学的植物反応を、少なくとも調節可能な照明特性を持つ少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換するためのインターフェースを提供し、当該インターフェースは以下を有する:
所望の生理学的植物反応を受信するための受信器、
上記所望の生理学的植物反応を上記制御命令に変換するための、上記受信器に機能的に結合されるプロセッサ、及び、
上記少なくとも一つの照明システムに上記制御命令を送信するための、上記プロセッサに機能的に結合される送信器。
【0017】
上記所望の生理学的植物反応は一実施形態において多次元園芸作用空間内の設定点と定義され、当該多次元園芸作用空間は以下の一つによってあらわされる:
(i)所望の光合成作用をあらわす第一の次元と所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元を少なくとも有する第一の座標系、
(ii)所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第二の座標系、
(iii)所望のフォトトロピン作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第三の座標系。
【0018】
上記プロセッサは、上記少なくとも一つの照明システムによって実行可能な制御命令に変換可能な多次元園芸作用空間内の点をあらわす多次元園芸作用空間のサブ空間の記述を有するメモリに機能的に結合され、上記プロセッサは上記サブ空間内の標的点に上記設定点をマッピングし、上記少なくとも一つの照明システムのための対応する制御命令を決定するように構成される。
【0019】
園芸作用空間座標は例えば温室制御において使用され得る。温室において、作物及び他の植物の成長をサポートする多くの異なるシステムが存在する。実際、この点において、'園芸'は藻類及び同等な生物を育てることにまでも及び得る。
【0020】
固定照明装置を、調光可能な照明装置光源と、及びフルカラー制御可能光源と、一つの照明システムにおいて組み合わせる、並びに園芸作用空間を用いることによって容易なスペクトル制御を可能にする、というアイデアは新しく、エンドユーザ設置業者、気候コンピュータビルダー(プログラマー)及びランプメーカーの両方にとって有益である。
【0021】
園芸作用空間はさらなる目的のために使用されることができる:
1.光に対する植物の反応を予測し、異なる作物のための光レシピを定義するため。
2.ランプメーカーが、植物栽培者にとって適切なランプ光のスペクトル組成を特徴付けることを可能にするため。
3.園芸作用空間のさらなる使用は栽培光の動的スペクトル制御に見られ得る。気候制御システムは関与するランプの光スペクトルを知ることなく正確な座標を通信することによって光の光スペクトルを制御し得る。
4.光センサはスペクトルを測定し、座標を使用して人工光と周辺光の両方のスペクトル組成を定義することができる。
【0022】
温室に存在する既知のシステムは、水及び養分を供給することに関連する供給システム、適切な温度と組成、例えば適切な二酸化炭素濃度で空気を供給する換気システム、及び適切な場所において光の適切な量(強度)及び/又は(スペクトル)組成を提供するための照明システムである。一部の温室において、これらのシステムは気候制御システムによって制御される。
【0023】
既知の温室システムにおいて、栽培者が作物を選択することを可能にする栽培レシピが提供される。そして栽培レシピは気候制御システムに時間ベースデータを与えるか、若しくは供給システムと換気システムのためのタイムスケジュール、及び設定を提供し得る。従来の温室において、照明システムは受動部と能動部から構成され得る。この点において、受動部は自然光量(多くの場合日光)を変化させるための遮光手段を有し得る。能動部は従来、HPS及び白熱光源のような人工照明装置を有する。こうした従来の温室において、気候制御システムは遮光手段を駆動することができてもよく、人工照明装置のオン・オフを切り替えることができてもよい。
【0024】
現代の照明システムでは、LED光源の組み合わせを持つことができるますます多くのLED照明装置が市場に出回っている。一般に、LED光源は狭く明確に定義されたスペクトル出力を持つ。LED照明装置では、複数のLED光源が組み合わされることができ、スペクトル出力の意味で異なるタイプのLED光源さえも組み合わされ得る。
【0025】
光出力は、スペクトル出力、波長対強度曲線の形状、及び強度(この曲線の高さ)の組み合わせとして定義され得る。一部の照明装置において、スペクトル出力と強度の一方を変化させることは他方に影響を及ぼし得る。
【0026】
全ての照明装置は光出力を制御する異なる方法を持ち得る。単純な状況において、一部のLEDベース照明装置のように、LEDはオン若しくはオフに切り替えられることしかできない。従って、このような照明装置において、LEDの多少なりとものオン・オフを切り替えることによって、強度が段階的に制御される。電球のような別の光源において、電球のオン・オフを切り替えることによって、強度は二値的に制御される。例えば調光器を使用することによって、電球光出力は強度だけでなくスペクトルの両方において、ただし独立してではなく、制御される。
【0027】
現在の状況における温室において、栽培者は理論的にはこのようにあらゆる点でその温室内の照明条件を調整することができる可能性がある。しかしながら実際には、植物成長に作用するために光条件を制御することができるためには、例えば気候コンピュータにおけるソフトウェアが、光の、及び最終的には植物によって受容される光の、スペクトル組成と強度を制御するために、設置された照明装置だけでなく温室内のその位置についての非常に詳細な技術情報を持つ必要がある。現在従来の照明では、栽培者は光のスペクトル組成を効果的に制御することができない。光レベルしか制御されることができない。LED照明若しくはLED照明と従来の照明の組み合わせにより、スペクトル組成は例えば気候制御コンピュータによって制御され得る。これを達成するためには、植物レベルにおける光の正確な光レベルとスペクトル組成を作り出すために、設置された照明装置及び温室内のその位置についての詳細な情報が気候コンピュータに利用可能でなければならない。また、最適照明条件を提供する研究機関の結果が、利用可能な照明システムの能力の範囲内の設定に変換される必要がある。
【0028】
最近の動向は、例えば照明装置用の気候コンピュータ及び光制御装置において使用されることができる光レシピを作成することである。光制御装置の他に、周辺光レベル(強度及び/又はスペクトル組成)及び温室内の人工照明装置の光レベルの一つ以上を測定するために光センサも使用されることができる。
【0029】
これら全ての構成要素間の通信は複雑であり、個々の装置に依存する。
【0030】
園芸作用空間の開発は、制御が照明装置と他の構成要素の技術的構成にあまり依存しなくなることを可能にする。別の利点は園芸作用空間の定義により、正確な座標のみが計算され生成される必要があることである。同じ座標は異なる照明装置によって異なるスペクトルを用いて生成され得る。所要の及び/又は所望の照明条件を生成する最も効率的な方法が使用され得る。これはエネルギー効率、費用効率、及び人間工学的要件にすら基づき得る。場合によっては、人が作物若しくは植物の状態を判断することができるべきである。しかしながら植物に対する効果は同じであり得る。
【0031】
園芸作用空間は光に対する植物の反応を予測し、異なる作物のための光レシピを定義するために使用されることができる。園芸作用空間は他方で、ランプメーカーが、植物栽培者にとって意味があり理解可能な方法で、照明装置の出力のスペクトル組成を特徴付けることを可能にし得る。これはランプの効果若しくはランプの品質を栽培者に通信する明確で明白な方法も提供し得る。園芸作用空間のさらなる使用は栽培光の動的スペクトル制御に見られ得る。気候制御システムは、関与するランプの厳密な光スペクトルの詳細な知識なしに、正確な座標を通信することによって照明装置の光スペクトルを制御することができてもよい。光センサは結果として生じるスペクトルを測定し、園芸作用空間内の座標の形で結果を通信することができてもよい。
【0032】
従って、植物光レシピの座標制御領域のみが制御ソフトウェアにおいて実装される必要があり、ランプが所望の色領域内で操作され得る限り使用されることができる。ランプ依存再プログラミングが単純化される。ランプドライバのアーキテクチャはもはや制御ソフトウェアに関連しなくてもよい。光レシピは照明装置に組み込まれる必要がなく、気候制御ソフトウェアのためのソフトウェアアドインとしてエンドユーザに販売されることができる。代替的に、光レシピは例えばインターフェースによってアクセスされ得る遠隔データベースにおいて提供され得る。
【0033】
園芸作用空間の特徴は、植物に提供される光のスペクトル組成が植物関連単位で表現され得るということである。こうした単位は植物吸収及び反応/作用特性から導出される。光のスペクトル組成は園芸作用空間において園芸作用空間内の点若しくは座標に変換される。この点はさらに設置された照明システムへ向かって光強度及びスペクトル組成に変換され通信される。従って、これは栽培者、植物生理学者、生物学者、温室及び温室気候制御システムの開発者、並びにランプメーカーの間での通信を単純化し得る。
【0034】
植物生理学研究において、光スペクトルにおける複数の部分が植物成長における様々な態様に関与することがわかった。長年にわたって、これは複数のいわゆる作用スペクトルの定義をもたらした。これらの作用スペクトルはスペクトル成分の相対的寄与及び植物の成長に対するその相対的効果をあらわす。言い換えれば、これは生物学的反応を誘導する光の異なる波長の相対的有効性を定義する。これらの作用スペクトルはクロロフィルのような植物内の感光性要素の存在にも関連する。
【0035】
文献において明確に定義される作用スペクトルの一つはMcCree作用スペクトルである。この作用スペクトルは平均的植物における光合成の量を光条件に関連付けることを可能にする。これは平均的植物の光合成作用に基づく。その有効性は例えばE.Paradiso et al.,Spectral dependence of photosynthesis and light absorptance in single leaves and canopy in rose,Science Horticulturae 127(2011),pp.548‐554において最近確認されている。McCree曲線は1972年にMcCreeによって初めて確認され、この文献において実証された。
【0036】
他の研究では、屈光性とよばれる効果が特定されている。この効果はフォトトロピンとよばれる植物中の青色受容体によって誘導され、これは屈光性の他に例えば葉緑体移動及び青色光誘導気孔開口を含む。これは例えば光の方へ向かう及び光から離れる植物の成長運動に関与する。これは例えばWinslow R.Briggs and John M.Christie,Phototropins 1 and 2:versatile plant blue‐light receptors,Trends in Plant Science Vol.7 No5,May 2002,pp 204‐210に記載されている。
【0037】
他の研究では、フィトクロムの二つの相互変換可能な形態が特定された。それらはPr及びPfr作用スペクトルともよばれる。フィトクロムの重要性は、葉拡大、近傍知覚、避陰反応、茎成長、種子発芽、及び開花誘導など、それらが関与する異なる生理学的反応によって評価され得る。この点において二つの重要な作用スペクトルは遠赤色光吸収型のフィトクロム(Pfr)と赤色光吸収型のフィトクロム(Pr)である。関連する作用スペクトル及びフィトクロム光平衡の計算は例えばJ.C.Sager et al.,Photosynthetic Efficiency and Phytochrome Photoequilibria Determination Using Spectral Data,American Society of Agricultural Engineers 0001‐2351/88/3106,pp 1882‐1889において特定される。
【0038】
これらの上記で説明され論じられた作用スペクトルは、本明細書において使用される園芸作用空間に組み合わされている。ほとんどの緑色植物について、これらの作用スペクトルが使用されることができる。藻類を含む他の植物の場合、他の作用スペクトルが要求され得る。これらの特異的作用スペクトルは上記で特定された作用スペクトルと同様に使用されることができる。
【0039】
二つの次元を用いることは、限られた量の及び/又はタイプの照明装置が使用される場合に使用され得る照明条件の記述を既に可能にすることがわかった。その場合、これら二つの座標は最良の記述を与えることがわかった。しかしながら、より詳細な園芸作用空間定義を使用することが必要な場合がある。
【0040】
一実施形態において園芸作用座標は光合成作用の量とフォトトロピン作用の量を少なくともあらわす。こうした量を計算するための定義は、重み付けされた寄与を考慮して、光の全関連波長について特定作用への全ての寄与を組み込むことである。この点において、適切な重みは考慮される特定波長における光の強度に依存する。作用量を計算する方法は、各関連波長について相対的作用量をとり、それらの相対量を全関連波長について合計することによる。
【0041】
従って園芸用途において使用され得る園芸作用空間を計算する異なる方法があることが明らかである。
【0042】
本発明では、照明条件に関する通信を可能にし、温室内に存在する照明装置の正確なスペクトル特性から可能な限り独立した、園芸作用空間をもたらすために、複数のステップがとられた。下記定義の利点は明確な定義を可能にすることであり、可能な限り線形の空間を提供し、植物‐生物学的過程において使用され得る様々な他の量の計算を可能にすることである。
【0043】
以下、上記で説明した原理に基づく園芸作用空間の一実施例が詳細に説明される。他の有用な園芸作用空間が可能であってもよい。しかしながら、下記定義は可能な限り線形の空間を提供し、全関係者に洞察を提供し、実際に比較的理解しやすく使用しやすいことがわかった。この園芸作用空間はほとんどの既知の緑色植物のために使用されることができる。
【0044】
四次元園芸作用空間が以下の通り定義され得る。まず、以下の値が定義される:
【0045】
これらの式において、I(λ)はワットでの放射束と定義される。これらの値を使用するために、上記で説明された作用スペクトルは正規化される。以下でより詳細に説明される図5において、正規化作用スペクトルがプロットされる。各作用スペクトルは実際にはその最大値が1になるように正規化される。Pfr(λ)作用スペクトルのために、Pr(λ)作用スペクトルの正規化が、これらの作用スペクトルは実際に相関するため、使用される。そして値W,X,Y,Zが四次元正規化空間に正規化される:
【0046】
園芸作用空間のこの定義の利点は、計算が単純化されること、空間が正規化されるので植物作用の通信が有意義になることである。しかしながらこれらの正規化座標は、絶対光強度の表示も通信されることも要する。最も単純な方法は関連波長にわたってI(λ)の積分"I"を座標と一緒に通信することである。より洗練された方法は園芸作用空間座標の一つをその絶対値で通信することである。園芸作用空間座標の通信において、Y値は光合成量の絶対尺度である。一実施形態において、従ってYは座標の一つとして通信される。一実施形態において、Yはxと一緒に使用される。代替的に、Yはx及びyと一緒に使用される。
【0047】
代替的実施形態において、(z,x,w)若しくは(x,y,w)が最小セットとして使用される。先と同様に、これらの座標の一つがその絶対値("大文字")で使用されることができ、或いは存在しない場合はYが追加され得る。
【0048】
正確な園芸作用座標を正確に示す方法は(W,X,Y,Z)座標を使用することである。光源の光の質をより容易に比較するためには、(x,y,z)が関連するが、w=1−x−y−zであることが留意される。このセット(若しくは空間)から(W,X,Y,Z)座標が計算され得るので、完全座標セットは(x,y,z,Y)である:
W=w(W+X+Y+Z)=w(Y/y)
X=x(Y/y)
Z=z(Y/y)
【0049】
特に、四次元空間において光の質は3D(x,y,z)座標で、光の量はY値で表現され得る。先と同様に、このセット(x,y,z)は光システムに関する計算をするために光強度の表示を持つ必要がある。先と同様に、'I'が追加されることができ、Yが追加されるか若しくはyの代わりに使用されることができ、又は他の座標の一つ以上がその絶対値("大文字")の形で使用され得る。
【0050】
園芸作用空間座標から、植物作用に直接関連する様々な量が計算され得る。これらの計算において、放射束(先と同様、ワット)として定義される、既に述べた総光強度'I'が使用される:
相対的光合成作用=Y/I
相対的フォトトロピン反応=Z/I
【0051】
この点において、PSSはPr/(Pr+Pfr)とも定義される。園芸作用空間の通信及び定義において、説明した通り光学エネルギーの総量は重要なパラメータであることがわかった。上記説明は'I'を通信する代わりに、'Y'が使用される場合に座標の性質にさらなる洞察を与えることを示す。
【0052】
現在の計算において、座標は300‐800nmの光学波長範囲を使用して計算される。その範囲を必要であればより広い波長範囲に拡張することが可能であり得る。例えば、他のより広い波長範囲において活性を示す植物若しくは藻類があり得る。
【0053】
一実施形態において、プロセッサは少なくとも一つの最適化基準に基づいて上記サブ空間において上記設定点を投影若しくはマッピングするように構成される。このような最適化基準は例えば、照明システム若しくは例えば温室の完全照明システムによって使用されるエネルギーの量であり得る。代替的に、栽培者は特定照明システム若しくは照明システム内の光源の使用に関して好みを持ち得る。
【0054】
一実施形態において、多次元園芸作用空間は所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第三の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第四の次元を少なくとも有する。
【0055】
これら四つの次元は一緒に、大部分について植物成長を予測することができることがわかった。これらの次元についての正確な計算は既に上記で説明されている。
【0056】
一実施形態において、多次元園芸作用空間は追加の次元を有し、当該追加の次元は所望の気孔開口作用をあらわす。気孔開口及び可能な作用スペクトルは例えばSilvia Frechilla et al.,"Reversal of Blue Light‐Stimulated Stomatal Opening by Green Light",Plant Cell Physiol.41(2):171‐176(2000)に記載される。この追加の次元は上記で説明された他の次元と同様に定義され得る。
【0057】
一実施形態において、受信器はさらに、植物のタイプ、少なくとも一つの所望の生理学的植物反応、及び当該少なくとも一つの所望の生理学的植物反応のためのタイムスケジュールを特定するためのラベルを少なくとも有する園芸光レシピを受信するように構成され、当該少なくとも一つの所望の生理学的植物反応は少なくとも一つの園芸作用座標としてあらわされる。従って園芸光レシピはタイムスケジュールに対応する一連の園芸作用座標とともにタイムスケジュールを有し得る。従って、植物の成長が制御され方向付けられることができる。複数の光レシピが、インターフェースから離れ得るデータベースに提供されることができる。これは例えばインターネットを介して、ネットワークを介してインターフェースによってアクセスされ得る。
【0058】
一実施形態において、上記受信器はさらに、上記多次元園芸作用空間内の上記サブ空間を定義する点として定義される生理学的植物反応を実行するための関連する制御命令とともに照明システム識別を有する、照明システム定義を受信するように構成され、当該制御命令は上記少なくとも一つの照明システムによって実行可能であり、上記受信器は上記照明システム定義を上記メモリへ提供するように構成される。一実施形態において、複数の照明システム定義が照明データベースにおいて提供され得る。先と同様に、その照明データベースはインターフェースから離れていることができる。これはネットワークを介して、例えばインターネットを介してインターフェースによってアクセスされ得る。このような照明システム定義のセットは照明システム間の迅速なスイッチングを可能にする。これは様々な照明システムを組み合わせることを可能にする。これらの照明システムは相補的若しくは補足的であり得る。これは定義された植物成長をなすために使用される必要がある照明システムの迅速な選択を可能にし得る。
【0059】
一実施形態において、受信器はさらに感知された光スペクトルをあらわすセンサ値を受信するように構成され、プロセッサはさらに上記多次元園芸作用空間内の感知点に上記センサ値をマッピングするように構成される。このように、実際の照明条件を統合することが可能である。これは例えば少なくとも一つの照明システムを制御するためのフィードバックを提供し得る。
【0060】
一実施形態において、インターフェースは、園芸作用空間に対する上記少なくとも一つの照明システムのサブ空間を表示するための、又はその投影を表示するための、上記プロセッサに機能的に結合されるディスプレイをさらに有し、好適にはディスプレイは付加的に上記サブ空間に対する上記設定点及び上記標的点、それらの投影の少なくとも一つを表示する。このようなディスプレイは例えばユーザに、例えば温室内の栽培者に、フィードバックを提供し得る。ディスプレイは例えば携帯端末に組み込まれ、従って例えば温室内で作業中の栽培者にフィードバックを提供し得る。例えばディスプレイを前述のセンサ値と組み合わせ、ディスプレイが上記感知点も含むことを可能にするとき、栽培者は所望の設定ともたらされる結果とを視覚的に及びその場で比較し得る。ディスプレイは視覚的コンピュータスクリーン、例えばLCD若しくはOLEDスクリーンであり得る。これはいわゆるタッチインターフェースを備え得る。
【0061】
本発明はさらに、上記園芸照明インターフェース、少なくとも一つの照明システム、及び気候制御システムを有する園芸システムに関する。この園芸システムにおいて、インターフェースは少なくとも一つの所望の生理学的植物反応を当該インターフェースに提供するための気候制御システムと機能的に結合され、さらに当該インターフェースから制御命令を受信して上記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応へマッピングされた光を提供するための照明システムと機能的に結合される。インターフェースは気候制御システム及び少なくとも一つの照明システムの少なくとも一つから物理的に分離され、離れていてもよい。このような実施形態において、データ転送は既知の方法で、例えばワイヤレスに実現され得る。このような実施形態において、インターフェースは個別のユニットであり、個別のハウジング内に設けられてもよい。代替的に、インターフェースは気候制御システム及び照明システムの少なくとも一つに組み込まれ得る。このような実施形態において、インターフェースは気候制御システム内で実行する、及び従って気候制御システム上で実行するソフトウェアに追加されるか若しくは組み込まれる、ソフトウェア要素若しくはアドオンですらあり得る。これは照明システム内で実行していてもよく、及び/又は照明システム上で実行するソフトウェアに組み込まれてもよい。
【0062】
本発明はさらに、上記園芸照明インターフェースと園芸光レシピ管理システムを有する園芸システムに関する。園芸光管理システムは、植物のタイプ、上記多次元園芸作用空間内の少なくとも一つの設定点として定義される少なくとも一つの所望の生理学的植物反応、上記少なくとも一つの所望の生理学的植物反応のためのタイムスケジュール、を識別するためのラベルを少なくとも有する園芸光レシピを提供するように構成され、上記インターフェースは上記園芸光レシピを受信するために上記園芸光レシピ管理システムに機能的に結合される。光レシピ管理システムはインターフェースから離れていてもよく、例えば園芸システムを使用する温室の物理的位置から離れていてもよい。これはネットワークを介して、例えばインターネットを介してアクセス可能であり得る。インターフェースと光レシピ管理システムは一つ以上の光レシピのような情報を交換してもよく、インターフェースはその後結果として得られる照明システム制御命令を一つ以上の照明システムに提供する。
【0063】
本発明はさらに、上記多次元園芸作用空間内の上記サブ空間を定義する点として定義される生理学的植物反応を実行するための関連する制御命令とともに照明システム識別を各々が有する、照明システム定義のリポジトリを有する照明管理システムをさらに有する、上記園芸照明インターフェースを有する園芸システムに関し、上記インターフェースは上記リポジトリにアクセスするために上記照明管理システムに機能的に結合される。インターフェースと照明管理システムは互いから離れていてもよい。照明管理システムは例えば園芸システムを使用する温室からも離れていてもよい。照明管理システムはネットワークを介して、例えばインターネットを介してインターフェースに結合され得る。インターフェースと照明管理システムは一つ以上の照明システム定義のような情報を交換し、インターフェースはその後結果として得られる照明システム制御命令を一つ以上の照明システムへ提供する。これは例えば、温室内に設置され得る、使用される必要がある利用可能な照明システムの一つ以上を選択し得る。
【0064】
本発明はさらに、感知された光スペクトルをあらわすセンサ値を提供するためのセンサに関し、当該センサは上記センサ値を推定生理学的植物反応に変換するためのセンサインターフェースに機能的に結合され、当該センサインターフェースは以下を有する:
センサ値を受信するための受信器、
上記センサ値を上記推定生理学的植物反応に変換するための、上記受信器に機能的に結合されるプロセッサ、及び、
上記推定生理学的植物反応を送信するための、上記プロセッサに機能的に結合される送信器。
【0065】
上記推定生理学的植物反応は多次元園芸作用空間内の推定点として定義され、当該多次元園芸作用空間は以下のうちの一つによってあらわされる:
(i)所望の光合成作用をあらわす第一の次元と、所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元を少なくとも有する第一の座標系;
(ii)所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第二の座標系、並びに、
(iii)所望のフォトトロピン作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第三の座標系。
【0066】
上記プロセッサは上記推定点に上記センサ値をマッピングするように構成される。センサは園芸作用空間を用いて園芸システムに容易に統合される。一実施形態において、センサ値はスペクトル測定データである。このような実施形態において、スペクトルデータは一定の波長間隔で与えられ得る。例えば、値は10nmごと、若しくは20nmごとに与えられ得る。園芸用途のための実施形態において、センサ値は300‐800nmの波長間隔について与えられ得る。センサは分散素子及び空間検出器、例えばCCDストリップ検出器若しくは2D CCDセンサを備え得る。代替的に、センサは一連のフィルタと一つ以上の検出器を備え得る。これは実際当業者に知られている。センサ値は実際には上記で説明した通りX,Y,Z,Wを計算するために使用されるI(λ)値を直接提供し得るか、又はこれはそこからI(λ)が導出され得るセンサ値を提供し得る。
【0067】
本発明はさらに、所望の生理学的植物反応を、少なくとも一つの調節可能な照明特性を持つ少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換するための方法に関し、当該方法は:
所望の生理学的植物反応を受信するステップであって、当該所望の生理学的植物反応は多次元園芸作用空間内の設定点として定義され、当該多次元園芸作用空間は、
(i)所望の光合成作用をあらわす第一の次元と所望のフォトトロピン作用をあらわす第二の次元を少なくとも有する第一の座標系、
(ii)所望の光合成作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第二の座標系、並びに、
(iii)所望のフォトトロピン作用をあらわす第一の次元、所望のフィトクロムPr作用をあらわす第二の次元、及び所望のフィトクロムPfr作用をあらわす第三の次元を少なくとも有する第三の座標系、
の一つによってあらわされる、ステップと、
上記所望の生理学的植物反応を制御命令に変換するステップであって、多次元園芸作用空間のサブ空間内の標的点に上記設定点をマッピングするステップと、上記少なくとも一つの照明システムのための対応する制御命令を決定するステップとを有し、上記サブ空間が、上記少なくとも一つの照明システムによって実行可能な、上記少なくとも一つの照明システムのための制御命令に変換可能な、多次元園芸作用空間内の点を有する、ステップと、
上記制御命令を上記少なくとも一つの照明システムに送信するステップとを有する。
【0068】
本明細書において、照明システムは強度、発光スペクトル、若しくはその両方において適応可能であり得る照明装置を有する。現在、例えばLEDベース照明装置が市販されている。
【0069】
LEDはソリッドステートLEDであり得るが、随意に有機LEDであってもよい。ソリッドステート及び有機LEDの組み合わせも適用され得る。実際、本願はいかなるタイプの照明装置のためのソリューションも提供する。"LED"という語は複数のLEDにも関連し得る。従って、一実施形態において、単一のLED位置において、複数のLED、二つ以上のLEDのLEDパッケージなどが配置され得る。LEDは特に第一の波長範囲において(LED)光を生成するように設計される。
【0070】
LEDに基づくソリッドステート照明の出現は園芸での用途のための機会を提供する。LEDを使用することの主な利点は光のスペクトル組成を植物の光受容体に厳密にマッチするように制御する可能性に由来する。改良された熱制御及びLEDを分配する自由のような付加的な利益と一緒に、これはより最適な製造をもたらし、植物の形態と組成に影響を及ぼすことを可能にする。これは削減されたエネルギー消費(及び関連コスト)も約束する。
【0071】
これらはソリッドステートデバイスであるので、ソリッドステートLEDはデジタル制御システムに容易に組み込まれ、"日積算光量(daily light integral)"照明並びに日出及び日没シミュレーションなどの照明プログラムを容易にする。LEDはガラスエンベロープを持たず水銀を含まないので、現在のランプよりも操作が安全である。
【0072】
LEDは標的のより近くに光を配向することを可能にし、これは温室の屋根と床を通じた損失の低下をもたらし得る。さらに作物においてより良好な配光が達成され得る。これは確実にトマトのようなハイワイヤ作物に当てはまる。
【0073】
インターフェースにおいて、受信器と送信器はソフトウェア実装され得るか、又はハードウェア実装され得る。プロセッサは機械命令を実行する汎用マイクロプロセッサであり得る。メモリはいかなるタイプのメモリであってもよく、例えば汎用マイクロプロセッサに機能的に結合され得るデジタルメモリであり得る。既知のメモリ手段はRAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク及び同様のものである。これらのタイプのメモリはインターフェースに、及び実際にはプロセッサに物理的に接続され得る。代替的に、メモリは無線接続され、これはプロセッサから離れていてもよく、例えばネットワーク若しくはインターネットを介してアクセス可能である。
【0074】
照明システムのための制御命令は単純なオン/オフ命令であり得る。より高度な照明システムにおいて、これらは出力レベル、例えば0%、50%、100%を設定する命令であり得る。これらの設定は例えば0と100の間で連続的であってもよい。例えば異なるタイプのLED光源を使用する、さらにより高度なシステムにおいて、制御命令はどの光源がオン及びオフにスイッチされるべきかを定義し、各光源の出力さえも定義され得る。さらにより高度な光源では、スペクトル出力さえ定義され得る。
【0075】
インターフェースにおいて、多次元園芸作用空間のサブ空間は少なくとも一つの照明システムを用いて実現可能であり得る点の記述である。マッピングにおいて、設定点は単純にサブ空間内の点であり得る。その場合でも、正確な設定点を実際に生成する制御命令を提供しないが、設定点の定義範囲内にあるが例えばこれら制御命令の下での照明システムのエネルギー消費のような基準、又は付加的な熱産生、特定の利用可能な光源の使用、特に自然光源の最適使用のような他の基準を満たす、関連する標的点を見つけることは、価値があり得る。
【0076】
設定点がサブ空間の外側にある場合、近似が計算され得る。これは様々な方法で、様々な最適化基準を用いてなされ得る。例えば、設定点に最も近いサブ空間内の最近点が最初に選択され得る。その後、上記の最適化がなされ得る。
【0077】
"上流"及び"下流"という語は光発生手段(ここでは特に第一の光源)からの光の伝搬に対する項目若しくは特徴の配置に関し、光発生手段からの光のビーム内の第一の位置に対して、光発生手段により近い光のビーム内の第二の位置が"上流"であり、光発生手段から遠い光のビーム内の第三の位置が"下流"である。
【0078】
上記の通り、本発明は先行するクレームのいずれか一つに記載の照明装置からの園芸光を作物の少なくとも一部に供給するステップを有する、園芸用途において栽培光を供給する方法も提供する。特に、方法は(a)植物若しくは作物の対処される部分、(b)一日の時間、(c)人工光以外の光の光強度と配光、(d)作物若しくは植物品種のタイプ、(e)植物若しくは作物の成長段階、(f)園芸作物の段階、(g)収穫期、(h)収穫からの時間、及び(i)園芸施設内の位置、の一つ以上の関数として園芸光のスペクトル強度分布を変化させるステップを有し得る。
【0079】
園芸は人が使用するための(集約)植物栽培に関する。園芸を照明するとき、"園芸"という語は、食用植物(果物、野菜、キノコ、料理用ハーブ)及び非食用作物(花、木及び低木、芝草、ホップ、ブドウ、薬草若しくは飼料用作物)の生産栽培に関連し得る。園芸という語は特に食用作物(トマト、ペッパー、キュウリ及びレタス)、並びにトマトの木、ペッパーの木、キュウリの木などといった、こうした作物を実らせる(可能性がある)植物をあらわし得る。本明細書において園芸は一般に例えば作物及び非作物植物に関連し得る。作物植物の例は米、小麦、大麦、オート麦、ヒヨコ豆、エンドウ、ササゲ、レンズ豆、リョクトウ、ケツルアズキ、ダイズ、インゲンマメ、モスビーン、アマ、ゴマ、グラスピー(Khesari)、サンヘンプ、チリ、ナス、トマト、キュウリ、オクラ、ピーナッツ、ポテト、トウモロコシ、トウジンビエ、ライ麦、アルファルファ、ハツカダイコン、キャベツ、レタス、ペッパー、ヒマワリ、テンサイ、トウゴマ(Castor)、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、ベニバナ、ホウレンソウ、タマネギ、ニンニク、カブ、スクウォッシュ、マスクメロン、スイカ、キュウリ、パンプキン、ケナフ、アブラヤシ、ニンジン、ココナッツ、パパイヤ、サトウキビ、コーヒー、ココア、茶、リンゴ、ナシ、モモ、サクランボ、ブドウ、アーモンド、イチゴ、パイナップル、バナナ、カシュー、ジャガイモ、キャッサバ、タロイモ、ゴム、ソルガム、綿、ライ小麦、キマメ、及びタバコである。特に関心が高いのはトマト、キュウリ、ペッパー、レタス、スイカ、パパイヤ、リンゴ、ナシ、モモ、サクランボ、ブドウ、及びイチゴである。
【0080】
園芸は温室でなされ得る。特に温室でのインターフェース及び/又は方法の応用に関連してインターフェースが使用され得る。照明システムにおいて若しくは照明システムとともに使用されるとき、これらの照明システムは栽培システム内の異なる場所に配置され得る。例えば、照明システムは作物の間、若しくは作物になるものの間に配置され、この配置は"インターライティング"として示される。トマトの木のようなワイヤ上での園芸栽培は、照明システムで対処され得るインターライティングの特定の応用分野であり得る。照明システムは、作物若しくは作物になるものの上にも配置され得る。特に園芸が互いに重なり合う層で栽培されるとき、人工照明が必要である。層で園芸を栽培することは"多層栽培"として示される。多層栽培においても、インターフェース及び/又は方法が適用され得る。
【0081】
本発明は植物成長と発育を刺激するために使用される人工照明を制御する新たな方法、園芸照明として知られる技術を提供する。特に、人工照明が使用される二つの主要な園芸環境がある。第一に、温室は日光に加えてトップライティング及びキャノピー内(intracanopy)ライティングを用いて作物生産を増加させる。第二に、多層システムにおいて作物は主に日光なしで成長し、従って人工照明にかなり依存する。また、本発明は例えば開花を制御するための光周性照明に関する。
【0082】
"実質的に全ての光"若しくは"実質的に構成される"など、本願で使用される"実質的に"という語は、当業者によって理解される。"実質的に"という語は"完全に"、"全く"、"全て"などを伴う実施形態も含み得る。従って、実施形態において実質的にという形容詞は除去されてもよい。当てはまる場合、"実質的に"という語は90%以上、95%以上など、特に99%以上、さらに特に99.5%以上にも関連し、100%を含み得る。"有する"という語は"有する"という語が"構成される"を意味する実施形態も含む。
【0083】
さらに、記載及びクレームにおける第1、第2、第3などの語は、類似する要素を区別するために使用され、必ずしも起こった順番若しくは時系列をあらわすために使用されない。そのように使用される語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は本明細書に記載若しくは図示した以外の順番での動作が可能であることが理解されるものとする。
【0084】
本明細書において装置はとりわけ動作中に記載される。当業者に明らかである通り、本発明は動作の方法若しくは動作中の装置に限定されない。
【0085】
上述の実施形態は本発明を限定するのではなく例示し、当業者は添付のクレームの範囲から逸脱することなく多くの代替的な実施形態を設計することができることが留意されるべきである。クレームにおいて、括弧の間におかれる任意の参照符号はクレームを限定するものと解釈されてはならない。動詞"有する"及びその活用形の使用はクレームに列挙したもの以外の要素若しくはステップの存在を除外しない。ある要素に先行する冠詞"a"若しくは"an"はかかる要素の複数の存在を除外しない。本発明は複数の個別要素を有するハードウェアを用いて、及び適切にプログラムされたコンピュータを用いて実施され得る。複数の手段を列挙する装置クレームにおいて、これら手段の複数はハードウェアの一つの同じ項目によって具体化され得る。特定の手段が相互に異なる従属クレームに列挙されるという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0086】
本発明はさらに説明に記載される及び/又は添付の図面に図示される特徴的特徴の一つ以上を有する装置に当てはまる。本発明はさらに説明に記載される及び/又は添付の図面に図示される特徴的特徴の一つ以上を有する方法若しくはプロセスに関する。
【0087】
本特許出願で論じられる様々な態様はさらなる利点を提供するために組み合わされ得る。さらに、特徴の一部は一つ以上の分割出願の基礎となり得る。
【0088】
本発明の実施形態は、ほんの一例として、対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】気候制御システムを有し、照明システムを含む、温室の一実施例を概略的に描く。
図2】異なるタイプの照明装置を伴う温室内の植物のセッティングを概略的に描く。
図3】園芸作用空間の計算において使用され得る基本植物作用スペクトルを描く。
図4】McCree対PSSを示す園芸作用空間の投影、及び園芸作用空間内の様々な照明装置の位置を示す。
図5】フォトトロピン対PSSを示す園芸作用空間の投影、及び園芸作用空間内の様々な照明装置の位置を示す。
図6】フォトトロピン対McCreeを示す園芸作用空間の投影、及び園芸作用空間内の様々な照明装置の位置を示す。
図7図4‐6の様々な照明装置の位置を再度示す、(x,y)平面上の垂直なビューとともに園芸作用空間の断面を示す。
図8図4‐6の様々な照明装置の位置を再度示す、(y,z)平面上の垂直なビューとともに園芸作用空間の断面を示す。
図9図4‐6の様々な照明装置の位置を再度示す、(x,z)平面上の垂直なビューとともに園芸作用空間の断面を示す。
図10】インターフェースの複数の実施例を示し、図10は照明システムに機能的に結合されるインターフェースの基本構成を示す。
図11】インターフェースの複数の実施例を示し、図11は温室内の気候コンピュータにおいて実装されるインターフェースを示す。
図12】インターフェースの複数の実施例を示し、図12は気候コンピュータから分離したインターフェースを示す。
図13】インターフェースの複数の実施例を示し、図13は照明制御装置において実装されるインターフェースを示す。
図14】インターフェースの複数の実施例を示し、図14はセンサにおいて実装されるインターフェースを示す。
図15】インターフェースの複数の実施例を示し、図15は照明システムインターフェース部を持つインターフェースの基本構成の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図面は必ずしも原寸通りでない。
【0091】
図1は様々なシステムとともに温室1の一実施例を概略的に示す。このような温室1は例えば本出願人のUS8061080に記載される。これは従来技術の温室1を示す。このような温室1は気候システムを有する。この実施形態において、気候システムは水及び養分を供給するための供給システム2、適切な温度で適切な組成(例えば二酸化炭素量)を持つ空気を供給するための換気システム3を有する。さらに、この温室の気候システムは照明システム4,5を有する。図1の実施形態において、気候システムの構成要素、すなわち供給システム2、換気システム3、及び照明システム4,5は気候制御システム9の送信器8へ送信器7を介して無線結合される。この実施形態において、温室は例えば照明条件、温度、湿度を決定するためのセンサ6をさらに有する。これらのセンサも気候制御システム9へ送信器7を介して無線結合される。この温室において、植物11は基板10内に位置する。
【0092】
図1の実施形態において、照明システム4,5は例えば従来の白熱照明装置のような照明装置を有する能動照明システム4を有するが、LED照明装置も有し得る。照明システム4,5はこの実施形態において受動照明装置5、ここでは入射日光の量を削減するための遮光手段をさらに有する。
【0093】
図2は存在し得る異なるタイプの照明装置4,12とともに温室内の植物11の一実施例を示す。そのようなものとして、これらの照明装置は当業者に既知である。まず、温室は一つ以上の従来の照明装置4を備え得る。これらの従来の照明装置は白熱ベースの照明装置4を有し得る。このタイプの照明装置は様々なメーカーに由来し得る。メーカーによって、同じタイプの照明装置であっても発光スペクトルが異なる可能性がある。さらに、照明装置は経年劣化し、これもその発光スペクトルを変化させ得る。
【0094】
さらに、局所照明を提供した照明装置、及び一般照明を提供する照明装置とは異なる、LED照明装置12のような局部照明装置12が温室内に存在し得る。LED照明装置12により、従来の照明装置よりもさらにいっそう発光スペクトルが変化する可能性があり、及び/又は総光強度が変化する可能性がある。
【0095】
さらに、照明装置は図1に示される一つ以上の遮光装置5を有し得る。これは特定照明装置、すなわち自然照明装置、太陽のための制御装置ともみなされ得る。
【0096】
各々がその独自の発光スペクトルと強度を持つ、これらの照明装置全て(及び実際には遮光装置を含む)を組み合わせることは、栽培者が適切なときにその作物に適切な光条件を与えることを複雑にする。
【0097】
本発明において、照明条件に関する通信を可能にし、温室内に存在する照明装置の正確なスペクトル特性から可能な限り独立した、園芸作用空間をもたらすために、複数のステップがとられた。
【0098】
既に説明した通り、四次元空間が以下の通り定義され得る。最初に、以下の値が定義される:
【0099】
これらの値を使用するために、上記で説明した作用スペクトルがまず正規化される。図3において、正規化作用スペクトルがプロットされる。各作用スペクトルは実際にはその最大値が1になるように正規化される。Pfr(λ)作用スペクトルのために、Pr(λ)作用スペクトルの正規化が、これらの作用スペクトルが実際には相関するため、使用される。そして値W,X,Y,Zが四次元正規化空間に正規化される:
【0100】
園芸作用空間座標の通信において、Y値は最小セットとしてx、yと、又は完全セットとして(w,x,y,z及びY)と一緒に通信される。園芸作用空間座標から、植物作用に直接関連する様々な量が計算され得る。これらの計算において、総光強度が使用される:
相対的光合成作用=Y/I
相対的フォトトロピン反応=Z/I
【0101】
まず、園芸作用空間の性質においてより多くの洞察を植物生理学者に与えるために図4‐6が提供される。これらのプロット若しくはグラフにおいて、複数の光源がプロットされる。軸は当業者がその知識に対して可能な作用空間次元を評価することができるように選ばれる。例えば、PSS値がプロットされる。このPSS値は上記の通り計算される。さらに、"McCree"と示されるパラメータがプロットされる。これは実際にはY値であるが1に正規化される。従ってこの値は光合成の量に対する相対尺度を与える。パラメータ"フォトトロピン"もプロットされる。この値は実際には上記で定義されるZ値であり、先と同様に1に正規化される。さらに、"移動(transfer)"と示される小さな点がプロットされる。これらの点は幅1nmの矩形スペクトルを持つ、仮想的な、単色光源の値をあらわす。グラフにおいて、アウトラインは物理的に可能な光源を示す。従って、アウトラインの外側の空間はいかなる光源でも満たされることができない。
【0102】
図4において、異なる光源についてMcCree値がPSSに対してプロットされる。この点において、文献で定義される通り、PSS=Pr/(Pr+Pfr)である。図5はフォトトロピン対PSSを示し、図6はフォトトロピン対McCreeを示す。特にPSSパラメータが非線形性を導入したことが理解されるべきである。従って当業者がグラフ内の距離を解釈することは困難である。図4‐6は園芸作用空間における洞察を与える。これは相互に対する異なる光源及び植物に対するそれらの影響を示す。
【0103】
図7‐9はx,y平面、y,z平面、及びx,z平面上での園芸作用空間のビューを示す。これらのビューにおいて、様々な既存の及び理論的な照明装置がプロットされる。アウトラインは物理的に作られることができる全ての可能な値を示す。従って、この領域の内部の全ての点が作り出されることができる。さらに、様々な符号はこれらの照明装置の園芸作用空間座標を示す。この園芸作用空間は正規化されるので、照明装置の効果を比較的単純に見ることができる。さらに、この空間は線形である。これは実際、光源間に線が描かれることができ、この線上の任意の点はこれら二つの光源の組み合わせであることを意味する。そして実際、これらの点全ては光源の組み合わせの植物に対する効果をあらわす。さらに、線上の相対位置は光源の相対数にも対応する。例えば、光源Aと光源Bの間の線の中間は等しい数の光源A及びBを組み合わせる効果を意味する。
【0104】
図7‐9において、小さな点は先と同様に、図4‐6と同じく園芸作用空間内の単色光源の効果を示す。
【0105】
この実施例では、図7‐9において"LED深赤660nm"、"LED遠赤740nm"、及び"LED青450nm"と示される照明装置を考える。これらの照明装置は実際にはほとんど単色光源である。線がこれらの異なる照明装置を接続する。これらの線は実際には(x,y)平面内の三角形の境界を示す。これら三つの照明装置を用いて、線を含むこの三角形内の全ての点が実現され得る。実際、園芸作用空間の定義は、三角形の中及び上の位置が照明装置の絶対比率に対応するようになっている。従って、例えば"LED青450nm"と"LED深赤660nm"を接続する線の中間の位置は、これらの照明装置をそれらの絶対出力に対して1:1の比率で使用することに対応する。
【0106】
図10‐15において、インターフェースの複数の可能な実施例が概略図に図示される。図10は照明システム4,12に機能的に結合されるインターフェース20の基本構成を示す。図11は温室内の気候コンピュータ9において実装されるインターフェース20を示す。図12は気候コンピュータ9から分離したインターフェース20を示す。図13は照明制御装置24において実装されるインターフェース20を示す。図14はセンサにおいて実装されるインターフェース20の実施形態を示す。図15は照明システムインターフェース部を持つインターフェースの基本構成の実施形態を示す。
【0107】
図10の実施形態において、インターフェース20は光レシピインターフェース部23を有する。光レシピインターフェース部23は光レシピを受信するように構成される。このような光レシピは園芸作用空間内の少なくとも一つの標的点を有する。園芸作用空間内の標的点は所望の生理学的植物反応を定義する。インターフェース20はその入力端において、一つ以上の光レシピ22を含む光レシピデータベース21に機能的に結合される。その出力端において、インターフェース20は一つ以上の照明システム4,12に機能的に結合される。この点において、インターフェース20は有線若しくは無線接続を介して結合されることが多い。
【0108】
図11の実施形態において、インターフェース20は気候コンピュータ9にインストールされる。インターフェース20は気候コンピュータ9上で実行する気候制御ソフトウェアに完全に組み込まれてもよい。代替的に、インターフェース20は気候制御ソフトウェアとデータを交換するアドイン、若しくはアプリケーションに組み込まれ得る。気候コンピュータ9はここでは一つ以上の発光源25と照明コントローラ24を有する照明システム4,12に機能的に結合される。このような照明コントローラ24はここでは発光源に組み込まれるが、他の実装が可能であってもよい。
【0109】
図12の実施形態において、インターフェース20は気候コンピュータ9から分離して実装される。この実施形態において、気候コンピュータ9は遠隔光レシピデータベース21に機能的に結合される。気候コンピュータ9はインターフェース20に機能的に結合される。インターフェース20は、次に、一つ以上の光源25と照明コントローラ24を持つ概略的に示される一つ以上の照明システムに機能的に結合される。実際、この実施形態において、インターフェース20は照明コントローラ24に機能的に結合される。
【0110】
図13において、インターフェース20が実際には照明コントローラ24と一体化される実施形態が示される。一実施形態において、これらは一つの共通ハウジングを共有する。
【0111】
図14において、インターフェース20は一つ以上の照明パラメータを測定するためのセンサに機能的に結合される。実際、この実施形態は多くの可能な実施形態の一つである。この実施形態において、周辺光放射を検出するための検出器26が処理部27に機能的に結合される。検出器26は例えば少なくとも光強度をあらわす信号を提供する。しばしば、このような信号は波長の関数:I(λ)としてとして強度を有する。
【0112】
従来技術のセンサにおいて、出力信号は気候コンピュータ9に提供され得る。この実施形態では、検出器26が波長ベースの強度データを提供するために処理装置27に機能的に結合される。このデータが気候コンピュータ9に提供される。この実施形態において、処理装置27もインターフェース20に機能的に結合される。インターフェース20はさらに気候コンピュータ9に、及び照明システム4,12に機能的に結合され得る。
【0113】
図15において、インターフェース20の別の実施形態が図示される。この実施形態において、インターフェース20は照明システムインターフェース部28を備える。照明インターフェース部28は園芸作用空間座標を受信し、照明コントローラ(不図示)を制御するための制御信号Sを出力する。
【実施例1】
【0114】
光レシピの使用の一実施例は切花としてのチューリップの栽培におけるものである。この実施例において、栽培は三層で温室内で行われる。栽培は温室内で北半球環境で週46及び15の間で行われる。
【0115】
光源は赤色LEDと組み合わせて白色LED若しくは青色LEDのいずれかを持つLED生産モジュールである。
【表1】
ユニット#1について:5.0μmol光子は1W光パワー及び0.89/mのYである。
ユニット#2について:5.2μmol光子は1W光パワー及び0.9/mのYである。
【0116】
見て興味深いことはPSS、Y及びZ値が両ランプタイプについてほとんど同じであることである。これは従って植物に対する効果が同じであり、スペクトル組成は全く異なるがこれら二つの装置が相互交換可能であることを意味する。
【0117】
従って、
ユニット#1に対する15‐30μmol/s/m=3.0‐6.0W光パワー/m、2.67‐5.34のY値、及び(0.32,0.52,0.064)の園芸作用点。
ユニット#2に対する15‐30μmol/s/m=2.9‐5.8W光パワー/m、2.61‐5.22のY値、及び(0.36,0.47,0.058)の園芸作用点。
【0118】
両ユニットは異なる園芸作用点を持つが、PSS値とフォトトロピン作用は同等の光強度下で同等である。従って、植物反応は同等になる。違いは、ユニット#1はエネルギー効率が低く、従ってより大きな設置パワーを要することであり得る。
【0119】
同じ色点とY値を持つ光源は植物成長に対して同じ効果を持つので同等であるが、栽培者が植物の健康を観察するために必要な(人の眼にとって)より良い演色、又はランプの電力消費及び価格などの他の因子が比較され得る。
【0120】
この場合、光レシピは、
0‐7日:(x,y,x)=(0.36,0.47,0.058)及びY=1.36若しくは(x,y,z)=(0.32,0.52,0.064)及びY=1.56;
8‐14日:日光;
15‐21日:(x,y,z)=(0.36,0.47,0.058)及びY=2.72若しくは(x,y,z)=(0.32,0.52,0.064)及びY=3.12
であり得る。
【0121】
光子束の計算:
(N=アボガドロ数;h=プランクの定数;cは光速)
【0122】
上記記載と図面は本発明の一部の実施形態を例示するためであって、保護範囲を限定するためではなく含まれることも明らかである。本開示からさらに多くの実施形態が当業者に明らかになり、それらは本発明の保護と本質の範囲内にあり、従来技術と本特許出願の開示の明白な組み合わせである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図15