特許第6430977号(P6430977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430977
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20181119BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   H03H9/25 A
   H03H9/25 C
   H03H9/145 C
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-30450(P2016-30450)
(22)【出願日】2016年2月19日
(65)【公開番号】特開2017-147708(P2017-147708A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 倫之
(72)【発明者】
【氏名】畑山 和重
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ 琢真
(72)【発明者】
【氏名】紺野 順平
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/098678(WO,A1)
【文献】 特開2002−299996(JP,A)
【文献】 特開2014−229661(JP,A)
【文献】 特開2013−021387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列共振器と並列共振器を含むラダー型フィルタである弾性波デバイスであって、
支持基板と、
前記支持基板の上面の一部に接合された1又は複数の圧電基板と、
前記1又は複数の圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含み、前記直列共振器及び前記並列共振器を構成し、前記1又は複数の圧電基板内では各々前記複数の電極指が同じ方向に延びている複数の共振器と、
前記1又は複数の圧電基板それぞれにおいて、前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記1又は複数の圧電基板が接合されていない非接合領域から前記1又は複数の圧電基板上に延在し前記複数の共振器に接続し、前記1又は複数の圧電基板の上面に平行な方向で前記第1方向に交差する第2方向では前記非接合領域から前記1又は複数の圧電基板上に延在していない配線と、を備える弾性波デバイス。
【請求項2】
支持基板と、
前記支持基板の上面の一部に接合された圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含む共振器と、
前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記圧電基板が接合されていない非接合領域から前記圧電基板上に延在し、前記共振器に接続する配線と、を備え、
前記配線は、前記圧電基板の側面における厚さが前記支持基板上及び前記圧電基板上における厚さよりも薄い、弾性波デバイス。
【請求項3】
支持基板と、
前記支持基板の上面の一部に接合された圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含む共振器と、
前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記圧電基板が接合されていない非接合領域から前記圧電基板上に延在し、前記共振器に接続する配線と、を備え、
前記支持基板の前記上面に複数の前記圧電基板が接合され、
前記複数の圧電基板に設けられた前記共振器は前記配線によって互いに接続され、
前記配線は、前記複数の圧電基板のうちの少なくとも1つの圧電基板上に前記非接合領域から延在する方向と残りの圧電基板上に前記非接合領域から延在する方向とが異なる、弾性波デバイス。
【請求項4】
前記配線は、前記圧電基板の上面に平行な方向で前記第1方向に交差する第2方向では前記非接合領域から前記圧電基板上に延在していない、請求項2または3記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記1又は複数の圧電基板の前記第1方向の線膨張係数と前記配線の線膨張係数との差は、前記第2方向の前記1又は複数の圧電基板の線膨張係数と前記配線の線膨張係数との差よりも小さい、請求項記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記圧電基板は回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板又は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である、請求項1から5のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記配線は金、銅、又はニッケルのいずれかで形成されている、請求項1から6のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記非接合領域における前記配線は前記圧電基板よりも厚い、請求項1から7のいずれか一項記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記1又は複数の圧電基板は1つの圧電基板であり、
前記1つの圧電基板に前記複数の共振器が設けられている、請求項1記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記1又は複数の圧電基板は複数の圧電基板であり、
前記複数の圧電基板それぞれには前記複数の共振器それぞれが設けられていて、
前記複数の圧電基板に設けられた前記複数の共振器は前記配線によって互いに接続されている、請求項1記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
サファイアなどの支持基板の上面にタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板などの圧電基板が接合された接合基板を用いることで、周波数温度特性が改善された弾性波デバイスが知られている(例えば、特許文献1)。また、圧電基板が支持基板の上面の一部に接合し且つ配線が支持基板の上面の圧電基板が接合されていない領域から圧電基板上に延在した構成において、圧電基板の側面を傾斜面とすることで配線の断線を抑制することが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−343359号公報
【特許文献2】特開2013−21387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の方法では、配線の熱膨張が考慮されてなく、配線の断線を抑制する点において改善の余地が残されている。本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、配線の断線を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、直列共振器と並列共振器を含むラダー型フィルタである弾性波デバイスであって、支持基板と、前記支持基板の上面の一部に接合された1又は複数の圧電基板と、前記1又は複数の圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含み、前記直列共振器及び前記並列共振器を構成し、前記1又は複数の圧電基板内では各々前記複数の電極指が同じ方向に延びている複数の共振器と、前記1又は複数の圧電基板それぞれにおいて、前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記1又は複数の圧電基板が接合されていない非接合領域から前記1又は複数の圧電基板上に延在し前記複数の共振器に接続し、前記1又は複数の圧電基板の上面に平行な方向で前記第1方向に交差する第2方向では前記非接合領域から前記1又は複数の圧電基板上に延在していない配線と、を備える弾性波デバイスである。
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板の上面の一部に接合された圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含む共振器と、前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記圧電基板が接合されていない非接合領域から前記圧電基板上に延在し、前記共振器に接続する配線と、を備え、前記配線は、前記圧電基板の側面における厚さが前記支持基板上及び前記圧電基板上における厚さよりも薄い、弾性波デバイスである。
【0007】
本発明は、支持基板と、前記支持基板の上面の一部に接合された圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続されたバスバーとを含む共振器と、前記複数の電極指が並んだ第1方向で前記支持基板の前記上面のうちの前記圧電基板が接合されていない非接合領域から前記圧電基板上に延在し、前記共振器に接続する配線と、を備え、前記支持基板の前記上面に複数の前記圧電基板が接合され、前記複数の圧電基板に設けられた前記共振器は前記配線によって互いに接続され、前記配線は、前記複数の圧電基板のうちの少なくとも1つの圧電基板上に前記非接合領域から延在する方向と残りの圧電基板上に前記非接合領域から延在する方向とが異なる、弾性波デバイスである。
【0008】
上記構成において、前記配線は、前記圧電基板の上面に平行な方向で前記第1方向に交差する第2方向では前記非接合領域から前記圧電基板上に延在していない構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記1又は複数の圧電基板の前記第1方向の線膨張係数と前記配線の線膨張係数との差は、前記第2方向の前記1又は複数の圧電基板の線膨張係数と前記配線の線膨張係数との差よりも小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記圧電基板は回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板又は回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記配線は金、銅、又はニッケルのいずれかで形成されている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記非接合領域における前記配線は前記圧電基板よりも厚い構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記1又は複数の圧電基板は1つの圧電基板であり、前記1つの圧電基板に前記複数の共振器が設けられている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記1又は複数の圧電基板は複数の圧電基板であり、前記複数の圧電基板それぞれには前記複数の共振器それぞれが設けられていて、前記複数の圧電基板に設けられた前記複数の共振器は前記配線によって互いに接続されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配線の断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイスの上面図、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面図である。
図2図2(a)から図2(f)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの効果を説明するための断面図である。
図4図4は、42°YカットX伝搬LT基板のウエハ状態の上面図である。
図5図5は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図6図6は、実施例2に係る弾性波デバイスの上面図である。
図7図7は、実施例3に係る弾性波デバイスの上面図である。
図8図8は、実施例4に係る弾性波デバイスの上面図である。
図9図9は、実施例5に係る弾性波デバイスの上面図である。
図10図10は、実施例6に係る弾性波デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の上面図、図1(b)は、図1(a)のA−A間の断面図である。図1(a)及び図1(b)のように、実施例1の弾性波デバイス100は、支持基板10の上面の一部に圧電基板20が接合されている。支持基板10と圧電基板20とは、例えばその境界において支持基板10を構成する原子と圧電基板20を構成する原子とがアモルファス層を形成することにより強固に接合されている。支持基板10は、例えばサファイア基板である。支持基板10の厚さは、例えば75μm〜240μmである。圧電基板20は、例えば42°回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム(LT)基板である。圧電基板20の厚さは、例えば2μm〜4μmである。
【0019】
圧電基板20上に、共振器30が形成されている。共振器30は、例えば弾性表面波共振器である。共振器30は、IDT(Interdigital Transducer)32と、IDT32の両側に設けられた反射器34と、を有する。IDT32は、一対の櫛型電極36を備える。一対の櫛型電極36はそれぞれ、複数の電極指38と複数の電極指38を共通に接続するバスバー40とを有する。IDT32は、圧電基板20内又は表面に弾性波を励振する。反射器34は、弾性波を反射する。すなわち、IDT32で励振される弾性波の主要波は、複数の電極指38が並んだ方向に伝搬する。IDT32及び反射器34は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、又は銅が添加されたアルミニウムなどの金属で形成される。なお、以下において、複数の電極指38が並んで弾性波の主要波が伝搬する方向を第1方向とし、圧電基板20の上面に平行な方向において第1方向に交差(例えば直交)する方向を第2方向とする。
【0020】
支持基板10の上面のうちの圧電基板20が接合されていない非接合領域12にパッド50が設けられている。パッド50は、例えば80μm×80μm程度の大きさで、厚さが2.5μm〜5μm程度である。パッド50は、支持基板10を上面から下面に貫通する貫通配線52を介して、支持基板10の下面に設けられた端子電極54に電気的に接続されている。貫通配線52は、例えば銅又は銀などの金属で形成されていて、直径が40μm〜55μm程度の円柱形状をしている。なお、貫通配線52は、楕円形形状や矩形形状である場合でもよい。圧電基板20は脆いため、クラックなどの発生を抑制する点から、貫通配線52は圧電基板20を貫通せずに支持基板10のみを貫通する場合が好ましく、支持基板10の非接合領域12に設けられる場合が好ましい。
【0021】
パッド50は、支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在する配線56を介して、共振器30に電気的に接続されている。配線56は、第1方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在している。言い換えると、配線56は、圧電基板20の結晶方位のX軸方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在している。配線56は、第2方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上には延在していない。配線56は、例えば金(Au)で形成されていて、厚さが2.5μm〜5μm程度、幅が5μm〜10μm程度である。支持基板10上及び圧電基板20上における配線56の厚さは、例えば圧電基板20の厚さよりも厚くなっている。
【0022】
次に、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法について説明する。図2(a)から図2(f)は、実施例1に係る弾性波デバイス100の製造方法を示す断面図である。図2(a)のように、支持基板10の平坦上面に圧電基板20の平坦下面を例えば直接接合によって接合させる。直接接合は、例えば100℃以下の常温での表面活性化接合で行ってもよい。なお、支持基板10と圧電基板20とを接着剤を用いて接合してもよい。その後、圧電基板20を貫通し且つ支持基板10の途中まで掘り込まれた凹部を形成し、当該凹部に金属膜60を埋め込む。凹部は例えばエッチング法又はブラスト法で形成することができ、金属膜60は例えばメッキ法で形成することができる。
【0023】
図2(b)のように、圧電基板20上に、共振器30を形成する。共振器30は一般的な方法を用いて形成することができる。共振器30を覆う保護膜62を形成する。保護膜62としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。
【0024】
図2(c)のように、共振器30が形成された領域以外の領域において、圧電基板20と金属膜60とを、例えばエッチング法又はブラスト法によって除去する。これにより、支持基板10の上面に、圧電基板20が接合されていない非接合領域12が形成される。
【0025】
図2(d)のように、支持基板10上及び圧電基板20上であって、配線56及びパッド50が形成されない領域を覆ってレジスト膜64を形成する。図2(e)のように、例えば蒸着法及びリフトオフ法を用いて、配線56及びパッド50を形成する。
【0026】
図2(f)のように、金属膜60が露出するまで支持基板10の下面に対して研磨(例えばバックグラインド)を施して、支持基板10を薄くする。これにより、支持基板10を貫通する金属膜60からなる貫通配線52が形成される。その後、支持基板10の下面に、例えば蒸着法及びリフトオフ法を用いて、端子電極54を形成する。これにより、実施例1の弾性波デバイス100が形成される。
【0027】
ここで、図3(a)及び図3(b)を用いて、実施例1の弾性波デバイス100の効果を説明する。図3(a)は、実施例1の弾性波デバイス100における配線56の形成部分を拡大した断面図である。図3(b)は、比較例1の弾性波デバイス1000における配線56の形成部分を拡大した断面図である。なお、図3(a)及び図3(b)では、圧電基板20の厚さT1が2.0μm、配線56の支持基板10上の厚さT2及び圧電基板20上の厚さT3が2.5μm、圧電基板20の側面での幅Wが1.2μmであるとする。また、図3(a)及び図3(b)では、サファイア基板である支持基板10、42°回転YカットX伝搬LT基板である圧電基板20、及びAuからなる配線56の線膨張係数の数値を矢印と共に示している。
【0028】
図3(b)のように、比較例1の弾性波デバイス1000では、配線56は、圧電基板20の結晶方位のZ軸方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在している。42°回転YカットX伝搬LT基板である圧電基板20の結晶方位のZ軸方向の線膨張係数は4.1ppm/℃であることから、配線56の線膨張係数(Au:14.2ppm/℃)との差が比較的大きい。この場合、温度サイクル試験(例えば−40℃〜+125℃)のような温度変化が大きい環境において、配線56と圧電基板20との間の熱膨張差及び熱収縮差に伴う応力が圧電基板20の側面部分に集中し、その結果、圧電基板20の側面での配線56が比較的薄い箇所で断線が起こり易くなる。
【0029】
一方、実施例1の弾性波デバイス100では、配線56は、第1方向(圧電基板20の結晶方位のX軸方向)で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在している。この場合、図3(a)のように、42°回転YカットX伝搬LT基板である圧電基板20の結晶方位のX軸方向の線膨張係数は16.1ppm/℃であることから、配線56の線膨張係数(Au:14.2ppm/℃)との差が比較的小さい。このため、温度サイクル試験のような温度変化が大きい環境に曝された場合でも、配線56と圧電基板20との間の熱膨張差及び熱収縮差が小さく、その結果、熱膨張差及び熱収縮差に伴う応力が小さくなり、圧電基板20の側面での配線56の断線を抑制できる。
【0030】
図4は、42°回転YカットX伝搬LT基板のウエハ状態の上面図である。なお、図4の点線は基板のへき開方向を示している。図4のように、オリエンテーションフラット66に直交する方向を結晶方位のX軸方向(線膨張係数:16.1ppm/℃)とすると、オリエンテーションフラット66に平行な方向の線膨張係数は11ppm/℃となる。つまり、圧電基板20に42°回転YカットX伝搬LT基板を用いた実施例1の弾性波デバイス100では、圧電基板20の第1方向の線膨張係数は16.1ppm/℃で、第2方向の線膨張係数は11ppm/℃となる。この場合、第1方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に配線56を延在させることで、第2方向で延在させる場合に比べて、配線56と圧電基板20との間の線膨張係数の差が小さくなる。このため、配線56の断線を抑制できる。
【0031】
以上のように、実施例1によれば、配線56は、第1方向(複数の電極指38が並んだ方向)で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在している。これにより、配線56が断線することを抑制できる。
【0032】
表1は、各種の圧電基板における第1方向及び第2方向の線膨張係数を示している。表1のように、36°回転YカットX伝搬LT基板、41°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(LN)基板、及び64°回転YカットX伝搬LN基板においても、42°回転YカットX伝搬LT基板と同様に、第1方向の線膨張係数が、第2方向の線膨張係数よりも、配線56の線膨張係数(Au:14.2ppm/℃)に近い。したがって、配線56の断線を抑制する点から、圧電基板20が回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板である場合に、配線56を第1方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に延在させることが好ましい。また、表1から、圧電基板20としては、36°〜42°YカットX伝搬LT基板又は41°〜64°YカットX伝搬LN基板を用いることが好ましい。
【表1】
【0033】
表2は、各種の金属における線膨張係数を示している。表2のように、金(Au)と銅(Cu)とニッケル(Ni)は、線膨張係数が互いに近い。したがって、配線56は、金(Au)で形成される場合に限らず、銅(Cu)又はニッケル(Ni)で形成される場合でもよい。
【表2】
【0034】
なお、圧電基板20は回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板である場合に限られず、圧電基板20の第1方向の線膨張係数と配線56の線膨張係数との差が、圧電基板20の第2方向の線膨張係数と配線56の線膨張係数との差よりも小さい基板であればよい。また、支持基板10は、サファイア基板以外の基板であってもよく、例えばシリコン基板、スピネル基板、ガラス基板、及び酸化アルミニウム基板などの絶縁基板であってもよい。各基板の線膨張係数は、サファイア基板が7.7ppm/℃、シリコン基板が3.4ppm/℃、スピネル基板が5.0ppm/℃、ガラス基板が0.5ppm/℃、酸化アルミニウム基板が7.1ppm/℃である。
【0035】
また、実施例1では、支持基板10の非接合領域12における配線56が圧電基板20よりも厚い場合を例に示したが、この場合に限られない。図5は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイス110の断面図である。図5のように、支持基板10の非接合領域12における配線56が圧電基板20よりも薄い場合でもよい。しかしながら、配線56が圧電基板20よりも薄い場合では、圧電基板20の側方に空間68が形成されるのに対し、配線56が圧電基板20よりも厚い場合では、図1(b)及び図3(a)のように、圧電基板20の側方に空間が形成されずに配線56が存在するようになる。この場合、圧電基板20の側方に存在する配線56によって、圧電基板20の側面上部にかかる応力が大きくなり、配線56に断線が生じ易くなる。したがって、支持基板10の非接合領域12における配線56が、圧電基板20よりも厚い場合に、第1方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に配線56を延在させて、配線56の断線を抑制させることが好ましい。
【0036】
また、圧電基板20の側面における配線56が薄い場合に、圧電基板20の側面で配線56の断線が発生し易くなる。したがって、圧電基板20の側面における配線56が、支持基板10上及び圧電基板20上における配線56よりも薄い場合に、第1方向で支持基板10の非接合領域12から圧電基板20上に配線56を延在させて、配線56の断線を抑制させることが好ましい。
【実施例2】
【0037】
図6は、実施例2に係る弾性波デバイス200の上面図である。図6のように、実施例2の弾性波デバイス200は、圧電基板20上に複数の共振器30a〜30cが設けられたラダー型フィルタである。複数の共振器30a〜30cのうちの共振器30a、30bは直列共振器であって、入力パッド50aと出力パッド50bとの間に直列に接続されている。共振器30cは並列共振器であって、共振器30a、30bの間とグランドパッド50cとの間に接続されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0038】
実施例2のように、1つの圧電基板20上に複数の共振器30a〜30cが設けられている場合でもよい。なお、1つの圧電基板20上に設けられた複数の共振器によってラダー型フィルタが形成されている場合に限られず、ダブルモード型フィルタなどの他のフィルタが形成されている場合でもよいし、フィルタが形成されていない場合でもよい。
【実施例3】
【0039】
図7は、実施例3に係る弾性波デバイス300の上面図である。図7のように、実施例3の弾性波デバイス300では、支持基板10の上面に複数の圧電基板20A、20Bが接合されている。複数の圧電基板20A、20B上には、ラダー型フィルタを形成する複数の共振器30が設けられている。圧電基板20A上に形成されたラダー型フィルタは、送信パッド50Aとアンテナパッド50Cとの間に接続された送信フィルタ70である。圧電基板20B上に形成されたラダー型フィルタは、受信パッド50Bとアンテナパッド50Cとの間に接続された受信フィルタ72である。したがって、実施例3の弾性波デバイス300は、送信フィルタ70と受信フィルタ72とを備えるデュプレクサである。なお、パッド50Dは、グランドパッドである。送信フィルタ70は、送信パッド50Aから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号としてアンテナパッド50Cに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ72は、アンテナパッド50Cから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信パッド50Bに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信帯域と受信帯域は周波数が異なっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0040】
実施例3のように、支持基板10の上面に複数の圧電基板20A、20Bが接合され、複数の圧電基板20A、20Bに設けられた共振器30が配線56によって接続されている場合でもよい。なお、実施例3では、圧電基板20A、20Bの両方に複数の共振器30が設けられている場合を例に示したが、圧電基板20A、20Bの少なくとも一方には1つの共振器30だけしか設けられていない場合でもよい。
【0041】
圧電基板20A、20Bは、同じ材料からなる場合でもよいし、異なる材料からなる場合でもよい。すなわち、圧電基板20A、20Bの一方が回転YカットX伝搬LT基板で他方が回転YカットX伝搬LN基板の場合でもよい。また、圧電基板20A、20Bが共に回転YカットX伝搬LT基板又は回転YカットX伝搬LN基板で、互いの基板のカット角が異なる場合でもよい。
【実施例4】
【0042】
図8は、実施例4に係る弾性波デバイス400の上面図である。図8のように、実施例4の弾性波デバイス400は、支持基板10の上面に複数の圧電基板20a〜20cが接合されている。複数の圧電基板20a〜20cそれぞれには複数の共振器30a〜30cそれぞれが設けられている。複数の共振器30a〜30cはIDT32のみからなり反射器は形成されていない。複数の圧電基板20a〜20cは、第1方向における側面が垂直になっている。このため、IDT32の両側に反射器を設けなくても、弾性波が反射される。その他の構成は、実施例2と同じであるため説明を省略する。
【実施例5】
【0043】
図9は、実施例5に係る弾性波デバイス500の上面図である。なお、図9中の矢印は、複数の圧電基板20a〜20cそれぞれの第1方向を示している。図9のように、実施例5の弾性波デバイス500では、複数の圧電基板20a〜20cのうちの圧電基板20a、20bにおける第1方向と圧電基板20cにおける第1方向とが異なっている。例えば、圧電基板20a、20bにおける第1方向と圧電基板20cにおける第1方向とは直交している。その他の構成は、実施例4と同じであるため説明を省略する。
【0044】
実施例5のように、複数の圧電基板20a〜20cのうちの少なくとも1つの圧電基板20a、20b上に非接合領域12から延在する配線56の方向と、残りの圧電基板20c上に非接合領域12から延在する配線56の方向と、を異ならせることで、実施例4に比べて、共振器間の配線56の長さを短くすることができる。
【実施例6】
【0045】
図10は、実施例6に係る弾性波デバイス600の断面図である。図10のように、実施例6の弾性波デバイス600では、支持基板10の上面の一部に共振器30が設けられた圧電基板20が接合されると共に、共振器80が形成された基板82がバンプ86、88によって支持基板10の非接合領域12に形成されたパッドにフリップチップ接続されている。基板82は例えばシリコン基板であり、共振器80は例えば圧電薄膜共振器である。共振器80は、配線84、バンプ86、88、貫通配線52などを介して、端子電極54に電気的に接続されている。支持基板10の非接合領域12に形成された金属パターン90に共振器30、80を囲む半田92が接合され、且つ、基板82の共振器80が形成された面とは反対側の面に半田92に接合された金属製のリッド94が設けられている。これにより、共振器30、80は、半田92とリッド94からなる封止部96によって気密封止されている。封止部96の外面には金属メッキ膜からなる保護膜98が設けられている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 支持基板
12 非接合領域
20、20A、20B、20a〜20c 圧電基板
30、30a〜30c 共振器
32 IDT
34 反射器
36 櫛型電極
38 電極指
40 バスバー
50 パッド
50a 入力パッド
50b 出力パッド
50c グランドパッド
50A 送信パッド
50B 受信パッド
50C アンテナパッド
50D グランドパッド
52 貫通配線
54 端子電極
56 配線
60 金属膜
62 保護膜
64 レジスト膜
66 オリエンテーションフラット
68 空間
70 送信フィルタ
72 受信フィルタ
80 共振器
82 基板
84 配線
86、88 バンプ
90 金属パターン
92 半田
94 リッド
96 封止部
98 保護膜
100〜600 弾性波デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10