(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6430984
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ハンマーとカラビナの着脱構造
(51)【国際特許分類】
B25D 1/00 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
B25D1/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-59875(P2016-59875)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-170572(P2017-170572A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】316003771
【氏名又は名称】株式会社創伝
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼杉 正輝
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0188051(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3058319(JP,U)
【文献】
特開2001−191269(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第01561163(FR,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0297931(US,A1)
【文献】
特開2014−151426(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3177882(JP,U)
【文献】
実公昭18−007935(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D 1/00
B25H 3/00
B25F 5/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマーとカラビナの着脱構造であって、
前記ハンマーは、柄の上端部に固定された金属製の左右方向に長い頭部の上面に開口を有する一対の左右方向の中心部の中心から等しい距離離間した取付け穴を形成し、前記一対の取付け穴に略U字状の係合金具を前記上面との間に隙間が開くように挿入し、前記係合金具を前記頭部に固定した手動工具であり、
前記カラビナは、ほぼC型の本体と開閉部を有し、前記開閉部は閉じる方向へ付勢され、その下端部が前記本体のストッパ部に当接して閉じるようになっており、
前記ハンマーが前記カラビナに装着されたときには、前記頭部の左右方向が上下方向になり、前記係合金具の対向する両端部のうち一方が下端部、他方が上端部として、前記下端部が前記本体の前記ストッパ部側の内側部に当接されると共に、前記上端部が前記開閉部の外側に当接された状態にもってこれ、
前記ハンマーを前記カラビナから外す場合には、
上記の当接された状態で、前記上端部が前記開閉部を開く方向に回動されて前記開閉部が開くことにより、前記係合金具が前記カラビナから抜かれることを特徴とする着脱構造。
【請求項2】
請求項1に記載したハンマーとカラビナの着脱構造において、
前記ハンマーの頭部上面の係合金具に対向する部分に凹部が形成されていることを特徴とする着脱構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載したハンマーとカラビナの着脱構造において、
前記カラビナは、腰ベルトが挿通されるベルト挿通部に、開閉部の下端部がストッパ部に当接して閉じるように固定されていることを特徴とする着脱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンマーに係り、特に腰ベルトに保持して持ち歩くハンマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設作業員などは腰ベルトを装着し、この腰ベルトに取り付けられたホルダに例えば工具としてのハンマーを保持して持ち歩く。そして、作業を行うときにホルダからハンマーを外すようにしている。この際に片手でハンマーをホルダから外す必要がある。これは例えば、高所において作業を行う場合などは片手を開けておく必要があるからである。
特許文献1に記載された工具ホルダ、釘袋の引掛部(以下、工具ホルダ等という。)は、ハンマーの柄を上方から差し込んで頭部を係止させることで、ハンマーを保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−85408号公報
【特許文献2】特開平8−197462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記工具ホルダ等では、柄を上方から差し込み頭部を係止させるだけでハンマーを保持しているため、作業中に屈んだ姿勢からある程度の勢いをつけて立ち上がるなどした場合、柄が工具ホルダ等から上方へ抜けて、ハンマーが落下してしまうおそれがある。作業員が屋根の上などの高所で作業している場合にハンマーが落下すると下方にいる者が危険にさらされることになる。更に、落下したハンマーによって屋根瓦等を破損してしまうこともある。
ハンマーに紐の一端を連結して他端を腰ベルトに繋いでいても、紐がハンマーを持って作業するために必要な長さを有しているため、ハンマーが工具ホルダ等から落下すると屋根瓦等を破損してしまうことに変わりはない。
また、ハンマーの頭部に係合金具を溶接して、腰ベルトに装着したカラビナに係止することも考えられるが、ハンマー使用時における衝撃によって溶接部から破損して係合金具が頭部から外れてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、腰ベルトに付けたカラビナに対し片手で簡単に着脱でき、しかもカラビナに係止する係合金具が頭部から外れるおそれのないハンマーの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、
ハンマーとカラビナの着脱構造であって、前記ハンマーは、柄の上端部に固定された金属製の
左右方向に長い頭部の上面に開口を有する一対の
左右方向の中心部の中心から等しい距離離間した取付け穴を形成し、前記一対の取付け穴に略U字状の係合金具を前記上面との間に隙間が開くように挿入し、前記係合金具を前記頭部に固定した
手動工具であり、前記カラビナは、ほぼC型の本体と開閉部を有し、前記開閉部は閉じる方向へ付勢され、その下端部が前記本体のストッパ部に当接して閉じるようになっており、前記ハンマーが前記カラビナに装着されたときには、前記頭部の左右方向が上下方向になり、前記係合金具の対向する両端部のうち一方が下端部、他方が上端部として、前記下端部が前記本体の前記ストッパ部側の内側部に当接されると共に、前記上端部が前記開閉部の外側に当接された状態にもってこれ、前記ハンマーを前記カラビナから外す場合には、上記の当接された状態で、前記上端部が前記開閉部を開く方向に回動されて前記開閉部が開くことにより、前記係合金具が前記カラビナから抜かれることを特徴とする着脱構造である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したハンマー
とカラビナの着脱構造において、
前記ハンマーの頭部上面の係合金具に対向する部分に凹部が形成されていることを特徴とする着脱構造である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1
または2に記載したハンマー
とカラビナの着脱構造において、
前記カラビナは、腰ベルトが挿通されるベルト挿通部に、開閉部の下端部がストッパ部に当接して閉じるように固定されていることを特徴とする着脱構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハンマーによれば、腰ベルトに付けたカラビナに対し片手で簡単に着脱できる。しかもハンマー使用時において衝撃を受けてもカラビナに係止する係合金具が頭部から外れるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るハンマーを腰ベルトに取り付けたカラビナに係止した状態の斜視図である。
【
図2】
図1のハンマーの一部拡大分解正面図である。
【
図4】
図1のハンマーをカラビナに装着する方法を説明するための図である。
【
図5】
図1のハンマーをカラビナから外す方法を説明するための図である。
【
図6】
図1のハンマーをカラビナから外す方法を説明するための図である。
【
図7】
図1のハンマーをカラビナから外す方法を説明するための図である。
【
図8】
図1のハンマーをカラビナから外す方法を説明するための図である。
【
図9】第2の実施の形態に係るハンマーの一部拡大正面図である。
【
図10】第3の実施の形態に係るハンマーの係合金具を頭部に取り付ける作業を説明するための一部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態に係るハンマー1を
図1から
図8にしたがって説明する。
符号3は金属製の柄を示し、この柄3は、上下の端部を残して合成ゴム製のグリップ部5によって覆われている。柄3の下端部には穴6が形成されている。
符号7は金属製の頭部を示し、この頭部7は中央部分がやや膨らんだ略八角柱を為している。頭部7の左右方向の中心部には柄取付け穴9が形成されており、この柄取付け穴9は頭部7の下面中央部に形成された連結筒部11に連続している。柄3は柄取付け穴9と連結筒部11に下方から差し込まれて固定されている。
【0013】
頭部7には上面から下面に貫通する一対の取付け穴としての金具取付け穴13、15が形成されている。金具取付け穴13、15は丸穴で柄取付け穴9を挟んで備えられている。金具取付け穴13、15は頭部7の左右方向の中心から等しい距離離間して配置されている。
【0014】
符号17は係合金具を示し、この係合金具17は金属製で一対の直状部17a、17bと湾曲部17cとから成るU字状に形成されている。
図2に示すように係合金具17は金具取付け穴13、15に上方から差し込まれており、
図3に示すように一対の直状部17a、17bは金具取付け穴13、15の上側の開口13a、15aの周辺部並びに下側の開口13b、15bの周辺部と溶接されて、溶接部16が形成されている。すなわち、係合金具17は頭部7と合計4箇所において溶接されている。
また、係合金具17の湾曲部17cと頭部7の上面との間には隙間があいており、中空部19が形成されている。
なお、穴6には紐8の一端部が連結された取付けリング10が取り付けられており、紐8の他端部は腰ベルト23に連結されている。紐8はハンマー1を用いて作業をする上で支障のない長さ寸法を有している。
【0015】
次に、このハンマー1をカラビナ21に着脱する方法を説明する。
カラビナ21はベルト挿通部22に固定され、このベルト挿通部22に腰ベルト23が挿通されており、この腰ベルト23を作業員が装着する。
カラビナ21はほぼC型の本体21aに開閉部21bを有し、この開閉部21bは図示しないバネによって閉じる方向へ付勢されており、開閉部21bは、その下端部が本体21aのストッパ部21cに当接して閉じるようになっている。
【0016】
ハンマー1をカラビナ21に装着させる場合には、
図4に示すように柄3のグリップ部5を片手に持ち、係合金具17によって開閉部21bを押して開く。そして、開閉部21bを押しながら、係合金具17を本体21aに通す。開閉部21bは閉じて、その下端部がストッパ部21cに当接し、カラビナ21が輪状になる。
ハンマー1の柄3を持つ手を離せば、係合金具17はカラビナ21の本体21aの内側下部へ移動し、
図1に示すようにハンマー1がカラビナ21によって保持される。
このようにハンマー1は係合金具17がカラビナ21に係合することで保持されているので、作業中に屈んだ姿勢からある程度の勢いをつけて立ち上がるなどした場合でも、ハンマー1がカラビナ21から外れることはない。従って、ハンマー1が落下するのを完全に防止することが可能となる。
【0017】
ハンマー1をカラビナ21から外す場合には、柄3のグリップ部5を片手で持ち、
図5に示すように頭部7を立てるようにして、係合金具17の下端部を本体21aの開閉部21b側の下方内側部に当接させると共に、係合金具17の上端部を開閉部21bの外側に当接させる。そして、柄3を
図5、
図6において時計回りの方向へ回動させ、係合金具17によって開閉部21bを押して開く。開閉部21bを開いたままの状態で
図7に示すように係合金具17を図において左方向へ移動させ、
図8に示すように係合金具17を抜く。これにより、ハンマー1をカラビナ21から外す。
このように、ハンマー1は腰ベルト23に付けたカラビナ21に対し片手で簡単に着脱することができる。
また、係合金具17は金具取付け穴13、15に上方から差し込まれて、頭部7と合計4箇所において溶接されているので、ハンマー1を使用して頭部7に衝撃が加わっても、係合金具17が頭部7から外れるのを防止することが可能である。
【0018】
図9に第2の実施の形態に係るハンマー31を示す。
このハンマー31は頭部37に凹部37aが形成され、係合金具36の上下方向の寸法が小さい点を除き、上記した第1の実施の形態に係るハンマー1と同じ構成部分については上記第1の実施の形態と同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。第3の実施の形態についても同様とする。
ハンマー31は、頭部37の上面の係合金具36に対向する部分に凹部37aが形成され、係合金具36の上下方向の寸法が小さくなっている。従って、中空部39のサイズを第1の実施の形態に係るハンマー1の中空部19と略同様に維持したまま、係合金具36の頭部37の上面から突出する長さ(高さ寸法)を低く抑えることができる。従って、ハンマー31を使用する際に係合金具36が邪魔になるのを完全に防止することが可能となる。
【0019】
図10、
図11に第3の実施の形態に係るハンマー41を示す。
一対の金具取付け穴43、45は有底であり、係合金具47の一対の直状部47a、47bは第1の実施の形態に係るハンマー1の係合金具17の湾曲部17cに連続して形成された直状部17a、17bより短寸法に設定されている。
このハンマー41では直状部47a、47bが金具取付け穴43、45の内周面に接着固定されている。すなわち、金具取付け穴43、45に接着剤を流し込み、直状部47a、47bを挿入することで、直状部47a、47bは金具取付け穴43、45の内周面に対し接着剤を介して固定されている。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、ハンマーの頭部の一方側の端部に釘抜き工具部等を備えたものでも、本発明を適用できるのは勿論である。
また、上記実施の形態で係合金具としてU字状のものを示したが、係合金具は略U字状のものであればよく、直状部と湾曲部とが直角に曲げられている形状や、V字状に近い形状であってもよい。すなわち、係合金具は頭部の上面との間に中空部が形成される形状であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明はハンマー製造業において利用可能性を具備し、本発明のハンマーによれば、腰ベルトに付けたカラビナに対し片手で簡単に着脱できる。しかもハンマー使用時において衝撃を受けてもカラビナに係止する係合金具が頭部から外れるおそれがなくなる。
【符号の説明】
【0022】
1…ハンマー 3…柄 5…グリップ部 6…穴
7…頭部 8…紐 9…柄取付け穴 10…取付けリング
11…連結筒部 13、15…金具取付け穴 16…溶接部
17…係合金具 17a、17b…係合金具の直状部
17c…係合金具の湾曲部 19…中空部 21…カラビナ
21a…カラビナの本体 21b…カラビナの開閉部
21c…カラビナのストッパ部 22…ベルト挿通部 23…腰ベルト
31…ハンマー 36…係合金具 37…頭部
37a…頭部の凹部 39…中空部 41…ハンマー
43、45…金具取付け穴 47…係合金具
47a、47b…係合金具の直状部 47c…係合金具の湾曲部