(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出対象にかかる外力およびモーメントの少なくとも一方を検出するためのセンサ素子と、前記センサ素子が検出した検出信号に基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた軸方向における力およびモーメントの少なくも一方の値を第1の値として演算する演算部と、を有する複数の系統と、
前記複数の系統の各々の前記演算部が演算した前記第1の値を比較し、その差が所定量以上の場合は、異常があると判断する異常判断部と、
を備え、
前記複数の系統の少なくとも1つの前記系統の前記演算部は、前記複数の系統の各々の前記センサ素子が検出した複数の前記検出信号に基づいて、前記検出対象に付加される前記軸方向における力およびモーメントの少なくとも一方の値を第2の値として演算し、
前記複数の系統の各々の前記演算部は、互いに通信が可能であり、他の前記系統の前記センサ素子が検出した前記検出信号を、前記他の系統の前記演算部から受信する
ことを特徴とするセンサ装置。
【背景技術】
【0002】
ロボット等の検出対象にかかる外力やモーメント等を検出するための手段として、ひずみゲージ式センサや静電容量式センサ等がある。静電容量式センサは、製造性やコストの面においてひずみゲージ式センサより優れているが、力に対して静電容量値の変化が線形にならないため、検出精度が低いという問題がある。
【0003】
以下、静電容量式センサの検出原理について簡単に説明する。外力が付加されると外力に応じて静電容量式センサを構成する電極対(2つの電極)を設置した筐体にひずみが生じ、ひずみに応じて電極対の距離(電極間の距離)が変化する。電極間の距離に応じて、静電容量値(検出値)が変化するため、この検出値を計測することで、検出対象にかかる外力またはモーメントを計算することができる。
【0004】
ここで、外力と電極対を設置した筐体のひずみとの関係は線形となり、電極対を設置した筐体のひずみと電極間の距離との関係も線形となるが、電極間の距離と検出値(静電容量値)との関係は非線形となる。電極対を構成する2つの電極が平行で、かつ、電極間の距離が電極面積に比べて十分に小さければ、電極間の距離に対して静電容量値は反比例の関係となる。一方で、2つの電極が平行ではなく傾きを持っている場合等の平行コンデンサの条件を満たさない場合は、単純に反比例の関係では表現することができなくなる。
【0005】
測定した値から外力およびモーメント等を求める方法としては、検出した検出値と、検出対象に付加された外力およびモーメントとの関係を示すモデル関数を仮定し、このモデル関数を用いて検出値から外力およびモーメントを求めるという手法が一般的である。このモデル関数は、1個以上の未知のパラメータを含む関数で表現される。
【0006】
以下、一般的なモデル関数の1つである1次多項式のモデル関数を例に挙げて説明する。具体例として、6つのセンサ素子(静電容量式センサ素子)によって外力およびモーメントを検出し、6つのセンサ素子の検出値に基づいて、6つの軸方向における外力およびモーメントを求める場合について考える。
【0007】
6つのセンサ素子の検出値を6次元ベクトルで表すと、以下に示す式(1)のようになる。また、求める外力およびモーメントを6次元ベクトルで表すと、以下に示す式(2)のようになる。
【0008】
【数1】
【0009】
未知のパラメータを、式(3)に示すように6×6の行列で表現したとき、外力およびモーメントに対するモデル関数を、式(4)で表すことができる。
【0010】
【数2】
【0011】
数式(3)で表された行列Cの各パラメータの値を決定するために、複数のパターン(1、・・・、N)の力およびモーメントを検出対象に与えて、センサ素子が検出した値を取得する。取得した複数のデータは、(fi,vi)となる。ただし、i=1、・・・、N、とする。取得した複数のデータ(fi,vi)に基づいて、行列Cの各パラメータの値を決定する。一般的には、二乗誤差の最小化等の予め決められた基準で行列Cの各パラメータを決定する。例えば、二乗誤差の最小化で各パラメータを決定する場合は、下記に示す式(5)のcmが最小となるように、行列Cの各パラメータを決定する。
【0012】
【数3】
【0013】
下記に示す特許文献1には、ひずみゲージ式を用いた多軸センサにおいて、二重に配置した検出部からの検出値の平均をとることで検出精度を向上させることが開示されている。具体的には、軸間の干渉誤差(他軸干渉誤差)を精度の悪化の要因と考え、センサ素子をグループ毎に対称に配置することで、他軸干渉誤差をグループ間で対称に発生させ、検出値の平均値をとることで他軸干渉誤差を打ち消している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るセンサ装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0028】
図1は、実施の形態におけるセンサ装置10の構成を示す図である。センサ装置10は、複数(N個)のセンサ素子12、変換部14、および、制御部16を有する系統Sを2つ備える。各系統Sの複数のセンサ素子12は、多軸センサ18を構成する。このセンサ素子12は、静電容量式のセンサ素子またはひずみゲージ式のセンサ素子であってもよく、それ以外のセンサ素子であってもよい。
【0029】
2つの系統Sのセンサ素子12、変換部14、および、制御部16を、互いに区別するために、一方の系統(第1の系統)S1のセンサ素子12、変換部14、および、制御部16を、12a、14a、16aで表し、他方の系統(第2の系統)S2のセンサ素子12、変換部14、および、制御部16を、12b、14b、16bで表す場合がある。また、第1の系統S1の多軸センサ18を18aで表し、第2の系統S2の多軸センサ18を18bで表す場合がある。
【0030】
第1の系統S1の多軸センサ18a(複数(N個)のセンサ素子12a)と、第2の系統S2の多軸センサ18b(複数(N個)のセンサ素子12b)とは、互いにロボットの同一の箇所(以下、検出対象と呼ぶ。)に付加される予め決められた複数の軸方向の外力およびモーメントを検出するためのセンサ素子である。
【0031】
各系統S(S1、S2)の変換部14(14a、14b)は、自己の系統S(S1、S2)の複数のセンサ素子12(12a、12b)および制御部16と接続線を介して電気的に接続されている。つまり、変換部14aは、複数のセンサ素子12aおよび制御部16aと電気的に接続され、変換部14bは、複数のセンサ素子12bおよび制御部16bと電気的に接続されている。
【0032】
説明をわかり易くするため、本実施の形態のセンサ装置10は、第1の系統S1のセンサ素子12aの数N、および、第2の系統S2のセンサ素子12bの数Nをともに6個とし、この6つのセンサ素子12a、12bを用いて6軸方向の外力およびモーメントを求めるものとする。6軸の方向の力およびモーメントは、X軸方向の力、Y軸方向の力、Z軸方向の力、X軸回り方向のモーメント、Y軸回り方向のモーメント、および、Z軸回り方向のモーメントとする。なお、各系統Sのセンサ素子12の数と、力およびモーメントを求める軸の数とは同一でなくてもよい。
【0033】
複数(N=6)のセンサ素子12aから構成される第1の系統S1の多軸センサ18aが検出した複数(N=6)の検出信号(検出値)は、第1の系統S1の変換部14aに出力される。変換部14aは、多軸センサ18aが検出した複数(N=6)の検出信号をデジタル信号に変換する。変換部14aによってデジタル信号に変換された複数(N=6)の検出信号(検出値)を、u
1,・・・、u
6、とする。変換部14aは、変換した複数(N=6)のデジタル信号の検出信号u
1,・・・、u
6を、第1の系統S1の制御部16aに出力する。多軸センサ18aが検出した複数(N=6)の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6を6(=N)次元ベクトルUで表記すると、以下の式(6)のようになる。
【0035】
同様に、複数(N=6)のセンサ素子12bから構成される第2の系統S2の多軸センサ18bが検出した複数(N=6)の検出信号(検出値)は、第2の系統S2の変換部14bに出力される。変換部14bは、多軸センサ18bが検出した複数(N=6)の検出信号をデジタル信号に変換する。変換部14bによってデジタル信号に変換された複数(N=6)の検出信号(検出値)を、v
1,・・・、v
6、とする。変換部14bは、変換した複数(N=6)のデジタル信号の検出信号v
1,・・・、v
6を、第2の系統S2の制御部16bに出力する。多軸センサ18bが検出した複数(N=6)の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6を6(=N)次元ベクトルVで表記すると、以下の式(7)のようになる。
【0037】
各系統S(S1、S2)の制御部16(16a、16b)の各々は、CPU等のプロセッサとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し、プロセッサがプログラムを実行することで、本実施の形態の制御部16(16a、16b)として機能する。各系統Sの制御部16は、演算部20と異常判断部22とを有する。2つの系統Sの演算部20および異常判断部22を互いに区別するために、第1の系統S1の演算部20および異常判断部22を、20a、22aで表し、第2の系統S2の演算部20および異常判断部22を、20b、22bで表す場合がある。第1の系統S1の制御部16aと第2の系統S2の制御部16bとは互いに通信可能となっている。制御部16a、16bは、無線によって通信を行ってもよく、制御部16aと制御部16bとを通信線(有線)で接続し、この通信線を介して通信を行ってもよい。
【0038】
演算部20aは、第1の系統S1の多軸センサ18aが検出した複数の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6に基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた複数(N=6)の軸方向の力およびモーメントの値(以下、第1の値と呼ぶ場合がある。)を演算する。ここで、演算部20aが演算した複数(N=6)の軸方向の力およびモーメントの値をf
U1,・・・,f
U6、とする。演算部20aが演算(算出)した複数(N=6)の第1の値f
U1,・・・,f
U6を6(=N)次元ベクトルF
Uで表すと、以下に示す数(8)で表すことができる。
【0040】
同様に、演算部20bは、第2の系統S2の多軸センサ18bが検出した複数の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6に基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた複数(N=6)の軸方向の力およびモーメントの値(以下、第1の値と呼ぶ場合がある。)を演算する。ここで、演算部20bが演算した複数(N=6)の軸方向の力およびモーメントの値をf
V1,・・・,f
V6、とする。演算部20bが演算(算出)した複数(N=6)の第1の値f
V1,・・・,f
V6を6(=N)次元ベクトルF
Vで表すと、以下に示す数(9)で表すことができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、f
U1、f
V1はX軸方向の力を示すものとし、f
U2,f
V2はY軸方向の力を、f
U3,f
V3はZ軸方向の力を示すものとする。また、f
U4、f
V4はX軸回り方向のモーメントを示すものとし、f
U5,f
V5はY軸回り方向のモーメントを、f
U6,f
V6はZ軸回り方向のモーメントを示すものとする。
【0043】
ベクトルUからベクトルF
Uを求めるための複数のパラメータ(第1変換特性情報)c
Uを式(10)に示すようにN×N(ただし、N=6)の行列(変換行列)C
Uで表現したとき、F
U、C
U、Uを、以下の式(11)に示すような関係式(モデル関数)で表すことができる。
【0045】
同様に、ベクトルVからベクトルF
Vを求めるための複数のパラメータ(第1変換特性情報)c
Vを式(12)に示すようにN×N(ただし、N=6)の行列(変換行列)C
Vで表現したとき、F
V、C
V、Vを、以下の式(13)に示すような関係式(モデル関数)で表すことができる。
【0047】
したがって、演算部20aは、式(6)、(8)、(10)、(11)を用いることで、多軸センサ18a(複数のセンサ素子12a)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6に基づいて、複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6を求めることができる。同様に、演算部20bは、式(7)、(9)、(12)、(13)を用いることで、多軸センサ18b(複数のセンサ素子12b)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6に基づいて、複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6を求めることができる。
【0048】
この行列C
Uの複数のパラメータc
Uは、第1の系統S1の演算部20aの記憶媒体(第1の記憶媒体)24に記憶されており、行列C
Vの複数のパラメータc
Vは、第2の系統S2の演算部20bの記憶媒体(第1の記憶媒体)24に記憶されている。ここでも、2つの系統Sの記憶媒体24を区別するために、第1の系統S1の記憶媒体24を24aで表し、第2の系統S2の記憶媒体24を24bで表す場合がある。
【0049】
演算部20aは、演算した第1の値f
U1,・・・,f
U6を自己の系統(第1の系統)S1の異常判断部22aに出力するとともに、他の系統(第2の系統)S2の異常判断部22bに送信する。演算部20bは、演算した第1の値f
V1,・・・,f
V6を自己の系統(第2の系統)S2の異常判断部22bに出力するとともに、他の系統(第1の系統)S1の異常判断部22aに送信する。また、演算部20aは、自己の系統(第1の系統)S1の多軸センサ18aが検出した複数の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6を他の系統(第2の系統)S2の演算部20bに送信する。また、演算部20bは、自己の系統(第2の系統)S2の多軸センサ18bが検出した複数の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6を他の系統(第1の系統)S1の演算部20aに送信する。
【0050】
演算部20aは、自己の系統(第1の系統)S1の多軸センサ18aが検出した複数の検出信号u
1,・・・、u
6と、他の系統(第2の系統)S2の多軸センサ18bが検出した複数の検出信号v
1,・・・、v
6とに基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた複数(N=6)の軸方向の力およびモーメントの値(以下、第2の値と呼ぶ場合がある。)をさらに演算する。同様に、演算部20bは、自己の系統(第2の系統)S2の多軸センサ18bが検出した複数の検出信号v
1,・・・、v
6と、他の系統(第1の系統)S1の多軸センサ18aが検出した複数の検出信号u
1,・・・、u
6とに基づいて、複数(N=6)の第2の値をさらに演算する。ここで、演算部20aおよび演算部20bの各々が演算した複数の第2の値をf
W1,・・・,f
W6、とする。複数(N=6)の第2の値f
W1,・・・,f
W6を6(=N)次元ベクトルF
Wで表すと、以下に示す式(14)で表すことができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、f
W1はX軸方向の力を示すものとし、f
W2はY軸方向の力を、f
W3はZ軸方向の力を示すものとする。また、f
W4はX軸回り方向のモーメントを示すものとし、f
W5はY軸回り方向のモーメントを、f
W6はZ軸回り方向のモーメントを示すものとする。
【0053】
ここで、多軸センサ18aが検出した複数(N=6)の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6と多軸センサ18bが検出した複数(N=6)の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6を12(=2・N)次元ベクトルWで表記すると、以下の式(15)のようになる。
【0055】
ベクトルWからベクトルF
Wを求めるための複数のパラメータ(第2変換特性情報)c
Wを式(16)に示すように、(N)×(2・N)の行列(変換行列)C
Wで表現したとき、F
W、C
W、Wを、以下の式(17)に示すような関係式(モデル関数)で表すことができる。ただし、N=6、とする。
【0057】
したがって、演算部20aおよび演算部20bの各々は、式(14)〜(17)を用いることで、多軸センサ18a(複数のセンサ素子12a)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6と多軸センサ18b(複数のセンサ素子12b)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6とに基づいて、複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6を求めることができる。この行列C
Wの複数のパラメータc
Wは、各系統Sの演算部20の記憶媒体(第2の記憶媒体)26に記憶されている。ここでも、2つの系統Sの記憶媒体26を区別するために、第1の系統S1の記憶媒体26を26aで表し、第2の系統S2の記憶媒体26を26bで表す。
【0058】
なお、行列C
U、C
V、C
Wの各パラメータc
U、c
V、c
Wを、本明細書の背景技術で説明したような、二乗誤差の最小化で決定するようにしてもよく、他の手法によって決定してもよい。要は、検出対象に付加された外力およびモーメントと、そのときにセンサ素子12が検出した検出信号に基づいて算出された外力およびモーメントとの誤差が小さくなるように、各各パラメータc
U、c
V、c
Wを決定すればよい。
【0059】
このように、誤差が小さくなるように行列C
Wの各パラメータc
Wを決定し、式(14)〜(17)を用いて第2の値f
W1,・・・,f
W6を求めることで、実際に付加された外力・モーメントと、センサ素子で検出した検出値に基づいて検出した力・モーメントの誤差を低減させることができる。つまり、第1の値f
U1,・・・,f
U6、第1の値f
V1,・・・,f
V6、または、第1の値f
U1,・・・,f
U6と第1の値f
V1,・・・,f
V6との平均をとった値と比較して、誤差を抑えることができる。
【0060】
そのため、制御部16a(演算部20a)および制御部16b(演算部20b)の少なくとも一方は、算出した複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6を外部機器に送信する。制御部16aおよび制御部16bは、外部機器と無線または有線によって通信可能となっている。外部機器は、送られてきた複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6に基づいて、所定の制御(例えば、ロボットの制御等)を行う。
【0061】
なお、第1の値f
U1,・・・,f
U6と第1の値f
V1,・・・,f
V6との値の平均をとった場合は、その平均値を、以下の式(18)で表すことができる。式(18)に示すように、これらのモデル関数(関係式)は、式(17)に示すモデル関数(関係式)の範囲に含まれるが、行列(変換行列)C
UVの各パラメータは、誤差が小さくなるように決定されていないため、式(17)に比べ、誤差が大きくなる。
【0063】
各系統S(S1、S2)の異常判断部22(22a、22b)は、第1の系統S1の演算部20aから送られてきた複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6と、第2の系統S2の演算部20bから送られてきた複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6とをそれぞれ比較し、その差(絶対値)|f
U1−f
V1|,・・・,|f
U6−f
V6|、をそれぞれ求める。この差は、軸方向が同一となる第1の値同士を比較して、その差分(絶対値)を得る。そして、各系統Sの異常判断部22(22a、22b)は、算出したそれぞれの差|f
U1−f
V1|,・・・,|f
U6−f
V6|の少なくとも1つが所定量以上であるか否かを判断し、所定量以上であると判断すると、センサ装置10に何らかの異常があると判断する。なお、差の二乗が所定量以上か否かを判断し、差の二乗が所定量以上の場合に異常と判断してもよい。
【0064】
第1の系統S1の異常判断部22a(制御部16a)および第2の系統S2の異常判断部22b(制御部16b)の少なくとも一方は、異常があると判断すると、異常を示す信号を外部機器に送信する。外部機器は、異常を示す信号が送られてくると、センサ装置10に異常があることをオペレータに報知する。報知の方法としては、液晶ディスプレイ等の表示部(図示略)に、センサ装置10に異常があることを表示したり、スピーカ(図示略)から警告音を出力してもよい。
【0065】
[変形例]
上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
【0066】
(変形例1)
図2は、変形例1におけるセンサ装置10Aの構成を示す図である。上記実施の形態と同一の構成または機能については同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。
【0067】
センサ装置10Aは、センサ部50と、制御装置52とを備える。センサ部50は、複数(N=6)のセンサ素子12、変換部14、および、制御部54を有する系統Sを2つ備える。本変形例1でも、第1の系統S1に対応する構成要素(機能も含む)と第2の系統S2に対応する構成要素(機能も含む)を区別するために、第1の系統S1に対応する構成要素については、参照符号の後にaを付し、第2の系統S2に対応する構成要素については、参照符号の後にbを付して説明する場合がある。したがって、例えば、第1の系統S1のセンサ素子12、変換部14、および、制御部54を、12a、14a、54aで表し、第2の系統S2のセンサ素子12、変換部14、および、制御部54を、12b、14b、54bで表す場合がある。複数(N=6)のセンサ素子12aは、第1の系統S1の多軸センサ18a(18)を構成し、複数(N=6)のセンサ素子12bは、第2の系統S2の多軸センサ18b(18)を構成する。
【0068】
各系統S(S1、S2)の制御部54(54a、54b)は、CPU等のプロセッサとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し、プロセッサがプログラムを実行することで、本変形例1の制御部54(54a、54b)として機能する。制御部54(54a、54b)は、演算部20(20a、20b)を有する。
【0069】
変形例1においては、変換部14aは、多軸センサ18a(複数のセンサ素子12a)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)u
1,・・・、u
6を自己の系統(第1の系統)S1の演算部20aに出力するとともに、他の系統(第2の系統)S2の演算部20bに出力する。つまり、変換部14aは、演算部20aと接続線を介して電気的に接続されているとともに、演算部20bとも接続線を介して電気的に接続されている。
【0070】
また、変換部14bは、多軸センサ18b(複数のセンサ素子12b)が検出した複数の検出信号(デジタル信号)v
1,・・・、v
6を自己の系統(第2の系統)S2の演算部20bに出力するとともに、他の系統(第1の系統)S1の演算部20aに出力する。つまり、変換部14bは、演算部20bと接続線を介して電気的に接続されているとともに、演算部20aとも接続線を介して電気的に接続されている。
【0071】
上記実施の形態で述べたように、演算部20aは、複数の検出信号u
1,・・・、u
6に基づいて複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6を演算するとともに、複数の検出信号u
1,・・・、u
6と複数の検出信号v
1,・・・、v
6とに基づいて複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6を演算する。演算部20bは、複数の検出信号v
1,・・・、v
6に基づいて複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6を演算するとともに、複数の検出信号v
1,・・・、v
6と複数の検出信号u
1,・・・、u
6とに基づいて複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6を演算する。
【0072】
演算部20a(制御部54a)および演算部20b(制御部54b)の少なくとも一方は、算出した複数の第2の値f
W1,・・・,f
W6を外部機器に送信する。制御部54aおよび制御部54bは、外部機器と無線または有線によって通信可能となっている。外部機器は、送られてきた複数の第2の値f
w1,・・・,f
w6に基づいて、所定の制御(例えば、ロボットの制御等)を行う。なお、演算部20a、20b(制御部54a、54b)は、制御装置52を介して外部機器に複数の第2の値
W1,・・・,f
W6を送信してもよい。
【0073】
制御装置52は、2つの系統S(S1、S2)に対応して2つの制御部60(60a、60b)を備える。2つの制御部60(60a、60b)の各々は、CPU等のプロセッサとプログラムが記憶された記憶媒体とを有し、プロセッサがプログラムを実行することで、本変形例1の制御部60(60a、60b)として機能する。制御部60(60a、60b)は、異常判断部22(22a、22b)を有する。
【0074】
演算部20a(制御部54a)と異常判断部22a(制御部60a)とは、互いに無線または有線によって通信可能となっており、演算部20b(制御部54b)と異常判断部22b(制御部60b)とは、互いに無線または有線によって通信可能となっている。また、異常判断部22a(制御部60a)と異常判断部22b(制御部60b)とは無線または有線によって互いに通信可能となっている。
【0075】
演算部20a(制御部54a)は、算出した複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6を異常判断部22a(制御部60a)に送信する。異常判断部22a(制御部60a)は、演算部20a(制御部54a)から送信された複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6を、異常判断部22b(制御部60b)に送信する。演算部20b(制御部54b)は、算出した複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6を異常判断部22b(制御部60b)に送信する。異常判断部22b(制御部60b)は、演算部20b(制御部54b)から送信された複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6を異常判断部22a(制御部60a)に送信する。
【0076】
異常判断部22aおよび異常判断部22bの各々は、複数の第1の値f
U1,・・・,f
U6と複数の第1の値f
V1,・・・,f
V6とをそれぞれ比較し、その差(絶対値)|f
U1−f
V1|,・・・,|f
U6−f
V6|、をそれぞれ求める。そして、異常判断部22aおよび異常判断部22bは、算出したそれぞれの差|f
U1−f
V1|,・・・,|f
U6−f
V6|の少なくとも1つが所定量以上であるか否かを判断し、所定量以上であると判断すると、センサ装置10Aに何らかの異常があると判断する。なお、差の二乗が所定量以上か否かを判断し、差の二乗が所定量以上の場合に異常と判断してもよい。
【0077】
第1の系統S1の異常判断部22a(制御部60a)および第2の系統S2の異常判断部22b(制御部60b)の少なくとも一方は、異常があると判断すると、異常を示す信号を外部機器に送信する。外部機器は、異常を示す信号が送られてくると、センサ装置10Aに異常があることをオペレータに報知する。報知の方法としては、液晶ディスプレイ等の表示部(図示略)にセンサ装置10Aに異常があることを表示したり、スピーカ(図示略)から警告音を出力してもよい。
【0078】
(変形例2)上記実施の形態および変形例1では、第1の系統S1の演算部20aおよび第2の系統S2の演算部20bは、ともに第2の値f
W1,・・・,f
W6を演算するようにしたが、どちらか一方のみが第2の値f
W1,・・・,f
W6を演算してもよい。また、第1の系統S1の異常判断部22aおよび第2の系統S2の異常判断部22bは、ともに異常があるか否かを判断するようにしたが、どちらか一方のみが異常の判断を行ってもよい。
【0079】
(変形例3)上記実施の形態では、各系統Sに対応して異常判断部22をそれぞれ設けるようにしたが、いずれか1つの系統Sにのみ異常判断部22を設けてもよい。また、上記変形例1では、各系統Sに対応してそれぞれ2つの制御部60a、60b(異常判断部22a、22b)を制御装置52に設けるようにしたが、1つの制御部60(1つの異常判断部22)を制御装置52に設けるようにしてもよい。この場合は、演算部20a、20bは、ともに算出した第1の値f
U1,・・・,f
U6、f
V1,・・・,f
V6を1つの制御部60(異常判断部22)に送信する。
【0080】
(変形例4)センサ装置10、10Aは、3つ以上の系統Sを有していてもよい。
【0081】
(変形例5)センサ装置10、10Aの各系統Sのセンサ素子12の数は1つであってもよい。また、センサ装置10、10Aの演算部20は、複数の軸方向の力およびモーメントではなく、予め決められた1つの軸方向における力またはモーメントを求めてもよい。
【0082】
(変形例6)センサ装置10、10Aの演算部20は、力またはモーメントのどちから一方のみを求めてもよい。
【0083】
(変形例7)上記した変形例1〜6を、矛盾が生じない範囲内で任意に組み合わせてもよい。
【0084】
以上説明したように、上記実施の形態および変形例1〜3のいずれかで説明したセンサ装置10、10Aは、検出対象にかかる外力およびモーメントの少なくとも一方を検出するためのセンサ素子12と、センサ素子12が検出した検出信号に基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた軸方向における力およびモーメントの少なくも一方の値を第1の値として演算する演算部20と、を有する複数の系統Sと、複数の系統Sの各々の演算部20が演算した第1の値を比較し、その差が所定量以上の場合は、異常があると判断する異常判断部22と、を備える。複数の系統Sの少なくとも1つの系統Sの演算部20は、複数の系統Sの各々のセンサ素子12が検出した複数の検出信号に基づいて、前記検出対象に付加される予め決められた軸方向における力およびモーメントの少なくとも一方の値を第2の値として演算する。
【0085】
このように、演算部20が、複数の系統Sのセンサ素子12が検出した検出信号に基づいて、検出対象に付加される軸方向における力およびモーメントの少なくとも一方を第2の値として演算するので、センサ装置10、10Aの検出精度が向上する。つまり、実際に付加された外力・モーメントと、センサ素子12で検出した検出信号に基づいて求めた力・モーメントとの誤差を低減することができる。また、異常判断部22は、系統S毎に演算された第1の値を比較し、その差が所定量以上の場合は、異常と判断するので、センサ装置10、10Aが正常かどうかを精度よく判断することができる。
【0086】
複数の系統Sの各々は、センサ素子12を複数有し、複数の系統Sの各々の演算部20は、予め決められた複数の軸方向における力およびモーメントの少なくとも一方の値を演算してもよい。これにより、演算部20は、複数の軸方向における第1の値、第2の値を求めることができる。したがって、センサ装置10、10Aは、複数の軸方向における力およびモーメントの少なくとも一方を検出することができる。
【0087】
複数の系統Sの各々の演算部20は、自己の系統Sのセンサ素子12が検出した検出信号を第1の値に変換するためのパラメータc(第1変換特性情報)が記憶された記憶媒体24を有する。複数の系統Sの少なくとも1つの系統Sの演算部20は、複数の系統Sの各々のセンサ素子12が検出した検出信号を第2の値に変換するためのパラメータc(第2変換特性情報)が記憶された記憶媒体26をさらに有してもよい。これにより、演算部20は、精度よく第1の値および第2の値を演算することができる。
【0088】
複数の系統Sの各々の演算部20は、互いに通信が可能であり、他の系統Sのセンサ素子12が検出した検出信号を、他の系統Sの演算部20から受信してもよい。これにより、各系統Sの演算部20は、他の系統Sのセンサ素子12が検出した検出信号を取得することができ、第2の値を演算することができる。
【0089】
複数の系統Sの各々は、センサ素子12が検出した検出信号をデジタル信号に変換する変換部14を有し、複数の系統Sの各々の変換部14は、デジタル信号に変換した検出信号を、複数の系統Sの演算部20に出力してもよい。これにより、各系統Sの演算部20は、他の系統Sのセンサ素子12が検出した検出信号を取得することができ、第2の値を演算することができる。
【0090】
異常判断部22は、複数の系統Sの各々に設けられてもよい。これにより、系統S毎にセンサ装置10、10Aが正常か否かを判断することができる。