(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに異なる複数の回路状態を有し、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態のうちいずれか1つの前記回路状態に設定可能な加工電源を有し、電極と加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して電流を流すことで放電加工を行う放電加工機の故障判定方法であって、
前記複数の回路状態の各々が前記加工電源の前記回路状態として設定されたときに、設定された前記回路状態が正常か否かを判断する状態判断ステップと、
前記複数の回路状態の各々に対する前記状態判断ステップの判断結果に基づいて、前記加工電源の故障個所を特定する故障個所特定ステップと、
前記故障個所特定ステップが特定した前記故障個所をオペレータに報知する報知ステップと、
を含み、
電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態の各々を前記加工電源の前記回路状態として順番に設定する設定切換ステップをさらに含み、
前記状態判断ステップは、前記加工電源の前記回路状態が切り換わると、前記切り換わった前記回路状態に対して正常か否かを判断する
ことを特徴とする故障判定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工電源の回路状態を複数の回路状態に設定できるようにしているので、加工電源の構成要素(構成部材)に故障が発生した場合は、故障個所の特定が難しくなるという問題が発生する。故障が発生すると、保守作業者(オペレータ)は、回路状態を切り換えながら、故障個所を絞り込んで特定する。故障個所を絞り込むためには、内部回路の知識が保守作業者に必要となる。内部回路の知識がない保守作業者は、保守資料に記載された保守手順にしたがって故障個所を絞り込まなければならないが、保守作業者のスキルによっては、故障個所の特定が困難となる、または、その特定に多大な時間を要することになる。
【0006】
故障個所の特定を簡易化するためには、加工電源の全ての構成要素(構成部材)に対してアラーム検出手段等を装備しておき、その検出結果を画面に表示させればよい。例えば、ヒューズやブレーカに警報接点付きのアラーム検出手段を搭載して、接点信号をモニタリングしておけばよい。しかしながら、各個所にアラーム検出手段を設けなければならず高コストとなる。また、構成要素(構成部材)が半導体スイッチング素子や抵抗器の場合は、一般にアラーム検出が難しいため、検出するための専用回路が必要となり、高コストとなる。また、専用回路の信頼性も問われることになる。
【0007】
そこで、本発明は、コストが増大することなく簡易に加工電源の故障個所を特定することができる放電加工機および故障判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1の発明は、電極と加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して電流を流すことで放電加工を行う放電加工機であって、互いに異なる複数の回路状態を有し、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態のうちいずれか1つの前記回路状態に設定可能な加工電源と、前記複数の回路状態の各々が前記加工電源の前記回路状態として設定されたときに、設定された前記回路状態が正常か否かを判断する状態判断部と、前記複数の回路状態の各々に対する前記状態判断部の判断結果に基づいて、前記加工電源の故障個所を特定する故障個所特定部と、前記故障個所特定部が特定した前記故障個所をオペレータに報知する報知部と、を備える。
【0009】
この構成により、コストを抑えつつ、簡易に加工電源の故障個所を特定することができ、オペレータは、故障個所を認識することができる。
【0010】
本第1の発明は、前記放電加工機であって、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態の各々を前記加工電源の前記回路状態として順番に設定する設定切換部をさらに備え、前記状態判断部は、前記加工電源の前記回路状態が切り換わると、前記切り換わった前記回路状態に対して正常か否かを判断してもよい。これにより、各回路状態に対して正常か異常かを判断することができる。
【0011】
本第1の発明は、前記放電加工機であって、前記報知部は、前記設定切換部が前記加工電源に設定される前記回路状態を切り換える際に、前記オペレータによる切り換え操作が必要な場合は、その切り換え操作を前記オペレータに報知してもよい。これにより、加工電源の回路状態の切り換えに、オペレータの操作が必要な場合であっても、適切に加工電源の回路状態を切り換えることができる。
【0012】
本第1の発明は、前記放電加工機であって、前記極間にかかる極間電圧を検出する電圧検出部をさらに備え、前記状態判断部は、前記複数の回路状態の各々が前記加工電源の前記回路状態として設定されたときに、前記電圧検出部が検出した前記極間電圧に基づいて、前記回路状態が正常か否かを判断してもよい。回路状態が正常の場合は、極間に電圧が正常に印加され、回路状態が異常の場合は、極間に印加される電圧は、正常時と比べ著しく異なる。したがって、極間電圧を用いることで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。
【0013】
本第1の発明は、前記放電加工機であって、前記状態判断部は、前記電圧検出部が検出した前記極間電圧が、設定された前記加工電源の前記回路状態に対応して予め決められた所定の範囲内にない場合は、前記回路状態が異常であると判断してもよい。これにより、極間電圧と所定の範囲とを比較することで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。また、放電加工機の個体差、電極および加工対象物の材料等に応じて、極間電圧がばらついた場合であっても、そのばらつきを吸収することができる。つまり、正常か異常かの判断がこのばらつきによって受ける影響を防止することができる。
【0014】
本第1の発明は、前記放電加工機であって、前記故障個所と、前記故障個所に対応する前記複数の回路状態の異常パターンとを記憶したテーブルをさらに備え、前記故障個所特定部は、前記テーブルに記憶された異常パターンと、前記複数の回路状態の各々に対する前記状態判断部の判断結果とを比較することで、前記故障個所を特定してもよい。これにより、コストを抑えつつ、簡単に故障個所を抑えることができる。
【0015】
本第2の発明は、互いに異なる複数の回路状態を有し、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態のうちいずれか1つの前記回路状態に設定可能な加工電源を有し、電極と加工対象物とで形成される極間に電圧を印加して電流を流すことで放電加工を行う放電加工機の故障判定方法であって、前記複数の回路状態の各々が前記加工電源の前記回路状態として設定されたときに、設定された前記回路状態が正常か否かを判断する状態判断ステップと、前記複数の回路状態の各々に対する前記状態判断ステップの判断結果に基づいて、前記加工電源の故障個所を特定する故障個所特定ステップと、前記故障個所特定ステップが特定した前記故障個所をオペレータに報知する報知ステップと、を含む。
【0016】
この構成により、コストを抑えつつ、簡易に加工電源の故障個所を特定することができ、オペレータは、故障個所を認識することができる。
【0017】
本第2の発明は、前記故障判定方法であって、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、前記複数の回路状態の各々を前記加工電源の前記回路状態として順番に設定する設定切換ステップをさらに含み、前記状態判断ステップは、前記加工電源の前記回路状態が切り換わると、前記切り換わった前記回路状態に対して正常か否かを判断してもよい。これにより、各回路状態に対して正常か異常かを判断することができる。
【0018】
本第2の発明は、前記故障判定方法であって、前記報知ステップは、前記設定切換ステップが前記加工電源に設定される前記回路状態を切り換える際に、前記オペレータによる切り換え操作が必要な場合は、その切り換え操作を前記オペレータに報知してもよい。これにより、加工電源の回路状態の切り換えに、オペレータの操作が必要な場合であっても、適切に加工電源の回路状態を切り換えることができる。
【0019】
本第2の発明は、前記故障判定方法であって、前記極間にかかる極間電圧を検出する電圧検出ステップをさらに含み、前記状態判断ステップは、前記複数の回路状態の各々が前記加工電源の前記回路状態として設定されたときに、前記電圧検出ステップが検出した前記極間電圧に基づいて、前記回路状態が正常か否かを判断してもよい。回路状態が正常の場合は、極間に電圧が正常に印加され、回路状態が異常の場合は、極間に印加される電圧は、正常時と比べ著しく異なる。したがって、極間電圧を用いることで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。
【0020】
本第2の発明は、前記故障判定方法であって、前記状態判断ステップは、前記電圧検出ステップが検出した前記極間電圧が、設定された前記加工電源の前記回路状態に対応して予め決められた所定の範囲内にない場合は、前記回路状態が異常であると判断してもよい。これにより、極間電圧と所定の範囲とを比較することで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。また、放電加工機の個体差、電極および加工対象物の材料等に応じて、極間電圧がばらついた場合であっても、そのばらつきを吸収することができる。つまり、正常か異常かの判断がこのばらつきによって受ける影響を防止することができる。
【0021】
本第2の発明は、前記故障判定方法であって、前記故障個所と、前記故障個所に対応する前記複数の回路状態の異常パターンとをテーブルとして記憶する記憶ステップをさらに含み、前記故障個所特定ステップは、前記テーブルに記憶された異常パターンと、前記複数の回路状態の各々に対する前記状態判断ステップの判断結果とを比較することで、前記故障個所を特定してもよい。これにより、コストを抑えつつ、簡単に故障個所を抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、これにより、コストを抑えつつ、簡易に加工電源の故障個所を特定することができ、オペレータは、故障個所を認識することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る放電加工機および故障判定方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の放電加工機10の構成図である。放電加工機10は、加工電源12、電極14、電圧検出部16、および、CNC(数値制御装置)18を少なくとも備える。放電加工機10は、電極14と加工対象物(被加工物)Wとの間で形成される極間(隙間)に電圧を印加して電流を流すことで、加工対象物Wに対して放電加工を行う。
【0026】
加工電源12は、電源E、2つのパルス投入回路A、B、4つのリレースイッチRL1〜RL4、および、2つの抵抗R1、R2を備える。電源Eは、直流の電源である。電源Eの正極(+極)は、リレースイッチRL1を介してパルス投入回路(第1のパルス投入回路)Aの正極側入力部PI1に接続されるとともに、リレースイッチRL2を介してパルス投入回路(第2のパルス投入回路)Bの正極側入力部PI2に接続されている。
【0027】
電源Eの負極(−極)は、パルス投入回路Aおよびパルス投入回路Bの負極側入力部NI1、NI2に接続されている。つまり、リレースイッチRL1、RL2は、極間に電圧(パルス電圧)を印加するためのパルス投入回路として、パルス投入回路A、Bのうちどちらを使用するかを切り換えるリレースイッチである。したがって、リレースイッチ(第1のリレースイッチ)RL1およびリレースイッチ(第2のリレースイッチ)RL2は、どちらか一方のみがオン(CLOSE)になり、両方が同時にオン(CLOSE)になることはない。
【0028】
パルス投入回路Aおよびパルス投入回路Bの正極側出力部PO1、PO2は、リレースイッチRL3および抵抗(第1の抵抗)R1を介して電極14に接続されるとともに、リレースイッチRL4および抵抗(第2の抵抗)R2を介して電極14に接続されている。
つまり、リレースイッチRL3および抵抗R1と、リレースイッチRL4および抵抗R2とは並列に接続されている。
【0029】
パルス投入回路Aおよびパルス投入回路Bの負極側出力部NO1、NO2は、加工対象物Wに接続されている。つまり、リレースイッチRL3、RL4は、極間に電圧を印加するために抵抗R1、R2の使用を切り換えるリレースイッチである。したがって、リレースイッチ(第3のリレースイッチ)RL3およびリレースイッチ(第4のリレースイッチ)RL4は、どちらか一方のみがオン(CLOSE)になるか、あるいは両方オン(CLOSE)になる。
【0030】
電圧検出部16は、電極14と加工対象物Wとの間で形成される極間にかかる電圧V(以下、極間電圧Vと呼ぶ。)を検出する回路である。電圧検出部16が検出した極間電圧VはCNC18に出力される。CNC18は、極間電圧Vに基づいて加工電源12のどの部品(構成要素、構成部材)が故障しているか否かを特定し、特定した故障個所をオペレータに報知する。また、CNC18は、パルス投入回路A、Bの駆動、および、リレースイッチRL1〜RL4の駆動を制御する。
【0031】
パルス投入回路A、Bは、電源Eの電圧に基づいてパルス電圧を生成し、生成したパルス電圧を極間に印加(投入)してパルス電流を流すものである。つまり、パルス投入回路A、Bによってパルス電圧およびパルス電流が極間に投入される。パルス投入回路Aとパルス投入回路Bとは、異なる周波数のパルス電圧(パルス電流)を生成する。したがって、パルス投入回路Aが生成するパルス電圧(パルス電流)の1パルス当りのエネルギーと、パルス投入回路Bが生成するパルス電圧(パルス電流)の1パルス当りのエネルギーとを異ならせることができる。パルス投入回路A、Bが生成するパルス電圧(パルス電流)の周波数は、CNC18によって制御される。
【0032】
加工電源12は、リレースイッチRL1〜RL4によって互いに異なる複数の回路状態をとることができる。つまり、リレースイッチRL1〜RL4の電気的な接続を切り換えることで複数の回路状態が形成され、加工電源12の回路状態を、複数の回路状態のうちいずれか1つの回路状態に設定することができる。本第1の実施の形態では、加工電源12は、4つの回路状態1〜4をとることができるものとする。したがって、加工電源12の回路状態を、4つの回路状態1〜4のいずれか1つの回路状態に設定することができる。
【0033】
図2は、4つの回路状態1〜4の各々と4つのリレースイッチRL1〜RL4のオンオフ状態との関係を示す図である。リレースイッチRL1がオン(CLOSE)、リレースイッチRL2がオフ(OPEN)、リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)となったときの加工電源12の回路状態を回路状態1とする。つまり、回路状態1のときは、極間には、抵抗R1を介してパルス投入回路Aから出力されるパルス電流が流れることになる。
【0034】
リレースイッチRL1がオフ(OPEN)、リレースイッチRL2がオン(CLOSE)、リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)となったときの加工電源12の回路状態を回路状態2とする。つまり、回路状態2のときは、極間には、抵抗R1を介してパルス投入回路Bから出力されるパルス電流が流れることになる。
【0035】
リレースイッチRL1がオン(CLOSE)、リレースイッチRL2がオフ(OPEN)、リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)となったときの加工電源12の回路状態を回路状態3とする。つまり、回路状態3のときは、極間には、抵抗R2を介してパルス投入回路Aから出力されるパルス電流が流れることになる。
【0036】
リレースイッチRL1がオフ(OPEN)、リレースイッチRL2がオン(CLOSE)、リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)となったときの加工電源12の回路状態を回路状態4とする。つまり、回路状態4のときは、極間には、抵抗R2を介してパルス投入回路Bから出力されるパルス電流が流れることになる。
【0037】
次に、
図3を用いてCNC18の構成を説明する。CNC18は、入力表示部30、制御部32、および、記憶媒体34を備える。入力表示部30は、情報および指示等を入力するためにオペレータによって操作される操作部(入力部)30aと、オペレータに情報を表示するための表示部30bとを備える。この表示部30bは、オペレータに情報を報知するための報知部として機能する。操作部30aは、数値データ入力用のテンキー、各種ファンクションキー、および、キーボード等によって構成される。また、操作部30aは、表示部30bの画面の設けられるタッチパネルを有する。
【0038】
制御部32は、CPU等のプロセッサとプログラムが記憶されたメモリチップとを有し、プロセッサがプログラムを実行することで本第1の実施の形態の制御部32として機能する。記憶媒体34は、制御部32の制御に必要な情報を記憶する。
【0039】
制御部32は、設定切換部40、状態判断部42、故障個所特定部44、および、表示制御部46を備える。なお、
図3に示す制御部32の構成は、故障判定機能の構成を示すものである。オペレータによる入力表示部30の操作部30aの操作によって、故障判定機能が開始されると、制御部32は、加工電源12の故障判定を開始する。オペレータは、入力表示部30の表示部30bの画面を見ながら、操作部30aを操作することで、故障判定機能を開始させる。
【0040】
設定切換部40は、リレースイッチRL1〜RL4のオンオフを制御して(電気的な接続を切り換えて)、加工電源12の回路状態を設定する。設定切換部40は、複数の回路状態1〜4の各々を加工電源12の回路状態として順番に設定する。本第1の実施の形態では、設定切換部40は、加工電源12の回路状態を、回路状態1→回路状態2→回路状態3→回路状態4、の順番で切り換えて設定するものとする。この回路状態を切り換えるタイミングは、回路状態を設定してから一定時間が経過したタイミングであってもよく、後述する状態判断部42によって回路状態が正常か否かが判断されたタイミングであってもよい。設定切換部40は、加工電源12の回路状態を切り換えると、切り換えた旨を示す切換信号を状態判断部42に出力する。
【0041】
状態判断部42は、複数の回路状態1〜4の各々が加工電源12の回路状態として設定されたときに、設定された回路状態が正常か否かを判断する。具体的には、状態判断部42は、複数の回路状態1〜4の各々が加工電源12の回路状態として設定されたときに、電圧検出部16が検出した極間電圧Vに基づいて、回路状態が正常か否かを判断する。状態判断部42は、加工電源12の回路状態が切り換わると、そのときに電圧検出部16が検出した極間電圧Vに基づいて、切り換わった回路状態に対して正常か否かを判断する。状態判断部42は、複数の回路状態1〜4の各々に対する判断結果を示す情報を故障個所特定部44に出力する。
【0042】
回路状態が正常の場合は、極間に電圧が正常に印加されるため、極間電圧Vは、所定の範囲内に収まる。しかし、回路状態に異常がある場合は、極間に電圧が正常に印加されないため、極間電圧Vは、前記した所定の範囲外となる。この所定の範囲は、放電加工機10の個体差、電極14および加工対象物Wの材料等に応じてばらつきが生じるため、このばらつきも吸収することができる範囲に設定されている。
【0043】
この所定の範囲は、基準となる電圧Vr(Vrは予め決められた一定の電圧値)に、許容誤差±ε(εは、予め決められた値)を考慮して設定される。そのため、所定の範囲は、Vr−ε〜Vr+ε、で表すことができる。したがって、状態判断部42は、極間電圧Vが、Vr−ε≦V≦Vr+ε、の関係を満たす場合は正常と判断する。例えば、Vrを80Vとし、εを5Vとすると、所定の範囲は、75V〜85Vとなり、極間電圧Vが、75V〜85Vの範囲内にある場合は、正常と判断される。
【0044】
なお、極間に電圧を印加するために用いられるパルス投入回路に応じて、所定の範囲(Vrおよびεの少なくとも一方の値)を変えてもよい。つまり、パルス投入回路Aとパルス投入回路Bとに応じて、所定の範囲を変えてもよい。また、極間に電圧を印加するために使用される抵抗に応じて、所定の範囲(Vrおよびεの少なくとも一方の値)を変えてもよい。つまり、抵抗R1と抵抗R2とに応じて、所定の範囲を変えてもよい。また、複数の回路状態1〜4の各々に対して、所定の範囲を変えてもよい。
【0045】
故障個所特定部44は、複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果に基づいて、加工電源12の故障個所を特定する。
図4Aは、抵抗R1が故障した場合の複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図4Bは、抵抗R2が故障した場合の複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図4Cは、パルス投入回路Aが故障した場合の複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図4Dは、パルス投入回路Bが故障した場合の複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図である。
【0046】
図4Aに示すように、抵抗R1が故障した場合は、状態判断部42によって、抵抗R1を使用する回路状態1、2が異常と判断されるが、抵抗R1を使用しない、つまり、抵抗R2を使用する回路状態3、4は正常と判断される。一方で、
図4Bに示すように抵抗R2が故障した場合は、状態判断部42によって、抵抗R2を使用する回路状態3、4が異常と判断されるが、抵抗R2を使用しない、つまり、抵抗R1を使用する回路状態1、2は正常と判断される。
【0047】
図4Cに示すように、パルス投入回路Aが故障した場合は、状態判断部42によって、パルス投入回路Aを使用する回路状態1、3が異常と判断されるが、パルス投入回路Aを使用しない、つまり、パルス投入回路Bを使用する回路状態2、4は正常と判断される。一方で、
図4Dに示すように、パルス投入回路Bが故障した場合は、状態判断部42によって、パルス投入回路Bを使用する回路状態2、4が異常と判断されるが、パルス投入回路Bを使用しない、つまり、パルス投入回路Aを使用する回路状態1、3は正常と判断される。
【0048】
このように、故障個所特定部44は、複数の回路状態1〜4の各々の異常か正常かを示す異常パターンに基づいて、加工電源12の故障個所を特定することができる。記憶媒体34には、複数の故障個所と、複数の故障個所の各々に対応する複数の回路状態1〜4の異常パターン(
図4A〜
図4Dに示すような情報)とが記憶されたテーブル34aを有する。そして、故障個所特定部44は、テーブル34aに記憶された異常パターンと、複数の回路状態1〜4の各々に対する状態判断部42の判断結果とを比較することで、故障個所を特定する。故障個所特定部44は、特定した故障個所を示す故障個所情報を表示制御部46に出力する。
【0049】
表示制御部46は、故障個所情報と記憶媒体34に記憶されている表示内容情報とに基づいて、故障個所に対応する内容の情報を表示するように入力表示部30(具体的には、表示部30b)を制御する。これにより、入力表示部30の表示部30bに特定された故障個所が表示される。例えば、抵抗R1が故障個所として特定された場合は、表示部30bの画面に、「抵抗R1が故障しています。」といった内容が表示される。なお、CNC18は、スピーカ等の音出力部(報知部)を有し、特定した故障個所を示す音声または警告音を音出力部から出力してもよい。
【0050】
図5に示すフローチャートにしたがって、CNC18(具体的には、制御部32)の動作を説明する。また、オペレータによる操作部30aの操作によって、故障判定機能が開始されると、CNC18は、加工電源12の故障判定を開始し、
図5に示す動作を実行する。
【0051】
まず、加工電源12の故障判定を開始すると、制御部32は、パルス投入回路A、Bを駆動させる(ステップS1)。次いで、制御部32の設定切換部40は、リレースイッチRL1〜RL4を切り換えて、加工電源12の回路状態を回路状態1に設定する(ステップS2)。つまり、設定切換部40は、リレースイッチRL1およびリレースイッチRL3をオン(CLOSE)にするとともに、リレースイッチRL2およびリレースイッチRL4をオフ(OPEN)にする。
【0052】
次いで、状態判断部42は、電圧検出部16が検出した極間電圧Vを取得し(ステップS3)、取得した極間電圧Vが所定の範囲内にあるか否かを判断する(ステップS4)。つまり、状態判断部42は、取得した極間電圧Vが、Vr−ε≦V≦Vr+ε、の関係を満たすか否かを判断する。
【0053】
ステップS4で、極間電圧Vが所定の範囲内にある、つまり、Vr−ε≦V≦Vr+ε、の関係を満たすと判断されると、状態判断部42は、現在の回路状態は正常であると判断して(ステップS5)、ステップS7に進む。一方、ステップS4で、極間電圧Vが所定の範囲内にない、つまり、Vr−ε≦V≦Vr+ε、の関係を満たさないと判断されると、状態判断部42は、現在の回路状態は異常であると判断して(ステップS6)、ステップS7に進む。
【0054】
ステップS7に進むと、設定切換部40は、全ての回路状態1〜4が加工電源12の回路状態として設定されたか否かを判断する。ステップS7で、全ての回路状態1〜4が設定されていないと判断すると、設定切換部40は、リレースイッチRL1〜RL4を切り換えて、加工電源12の回路状態を次の回路状態に設定して(ステップS9)、ステップS3に戻る。例えば、現在設定されている回路状態が回路状態1の場合は、回路状態2に切り換える。したがって、設定切換部40は、リレースイッチRL3、RL4のオンオフ状態をそのままにして、リレースイッチRL1をオン(CLOSE)からオフ(OPEN)に切り換え、リレースイッチRL2をオフ(OPEN)からオン(CLOSE)に切り換える。なお、設定切換部40は、上述したように、回路状態1→回路状態2→回路状態3→回路状態4、の順番で切り換えるものとする。
【0055】
一方、ステップS7で、全ての回路状態1〜4が設定されたと判断すると、故障個所特定部44は、テーブル34aと複数の回路状態1〜4の各々に対する正常・異常の判断結果とに基づいて、故障個所を特定する(ステップS8)。そして、表示部30bは、特定された故障個所を表示することで故障個所をオペレータに報知する(ステップS10)。
【0056】
[第2の実施の形態]
図6は、第2の実施の形態の放電加工機10Aの構成図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。放電加工機10Aは、加工電源12A、電極14、電圧検出部16、および、CNC(数値制御装置)18を少なくとも備える。
【0057】
加工電源12Aは、電源E、パルス投入回路A、2つのリレースイッチRL3、RL4、2つの抵抗R1、R2、および、コネクタCN、および、コンデンサCを備える。電源Eの正極は、パルス投入回路Aの正極側入力部PI1に接続され、電源Eの負極は、パルス投入回路Aの負極側入力部NI1に接続されている。パルス投入回路Aの正極側出力部PO1は、リレースイッチRL3および抵抗R1を介して電極14に接続されるとともに、リレースイッチRL4および抵抗R2を介して電極14に接続されている。パルス投入回路Aの負極側出力部NO1は、加工対象物Wに接続されている。パルス投入回路Aと電極14との接続は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0058】
また、パルス投入回路Aの正極側出力部PO1および負極側出力部NO1は、コンデンサCを介して互いに接続されている。コンデンサCは、極間に並列に接続されており、極間電圧Vを安定化(平滑化)させる。コンデンサCとパルス投入回路Aの正極側出力部PO1との接続点は、パルス投入回路Aの正極側出力部PO1とリレースイッチRL3、RL4との間に位置する。また、コンデンサCとパルス投入回路Aの負極側出力部NO1との接続点は、パルス投入回路Aの負極側出力部NO1と加工対象物Wとの間に位置する。パルス投入回路AとコンデンサCとはコネクタCNを介して接続されている。コネクタCNによってパルス投入回路AにコネクタCNを着脱可能に接続することができる。
【0059】
本第2の実施の形態では、加工電源12Aは、リレースイッチRL3、RL4およびコネクタCNによって、互いに異なる複数の回路状態をとることができる。つまり、リレースイッチRL3、RL4の電気的な接続およびコネクタCNによる電気的な設定を切り換えることで複数の回路状態が形成され、加工電源12Aの回路状態を、複数の回路状態のうちいずれか1つの回路状態に設定することができる。本第2の実施の形態においては、加工電源12Aは、4つの回路状態1A〜4Aをとることができるものとする。したがって、加工電源12Aの回路状態を、4つの回路状態1A〜4Aのいずれか1つの回路状態に設定することができる。なお、本第2の実施の形態では、加工電源12Aの回路状態は、回路状態1A→回路状態2A→回路状態3A→回路状態4A、の順番で切り換えられるものとする。
【0060】
図7は、4つの回路状態1A〜4Aの各々と、2つのリレースイッチRL3、RL4のオンオフ状態およびコネクタCNの状態との関係を示す図である。リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)、コネクタCNがパルス投入回路Aに並列に接続されたときの加工電源12Aの回路状態を回路状態1Aとする。つまり、回路状態1Aのときは、極間にコンデンサCが並列で接続されるとともに、パルス投入回路Aからのパルス電流が抵抗R1を介して極間に流れる。
【0061】
リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)、コネクタCNがパルス投入回路Aに並列に接続されたときの加工電源12Aの回路状態を回路状態2Aとする。つまり、回路状態2Aのときは、極間にコンデンサCが並列で接続されるとともに、パルス投入回路Aからのパルス電流が抵抗R2を介して極間に流れる。
【0062】
リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)、コネクタCNがパルス投入回路Aから取り外されたときの加工電源12Aの回路状態を回路状態3Aとする。つまり、回路状態3Aのときは、極間にはコンデンサCが接続されておらず、パルス投入回路Aからのパルス電流が抵抗R1を介して極間に流れる。
【0063】
リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)、コネクタCNがパルス投入回路Aから取り外されたときの加工電源12Aの回路状態を回路状態4Aとする。つまり、回路状態4Aのときは、極間にはコンデンサCが接続されておらず、パルス投入回路Aからのパルス電流が抵抗R2を介して極間に流れる。
【0064】
図8Aは、コンデンサCが故障した場合の複数の回路状態1A〜4Aの各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図8Bは、抵抗R1が故障した場合の複数の回路状態1A〜4Aの各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図8Cは、抵抗R2が故障した場合の複数の回路状態1A〜4Aの各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図、
図8Dは、パルス投入回路Aが故障した場合の複数の回路状態1A〜4Aの各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図である。
【0065】
図8Aに示すように、コンデンサCが故障した場合は、状態判断部42によって、コンデンサCを使用する回路状態1A、2Aが異常と判断されるが、コンデンサCを使用しない回路状態3A、4Aは正常と判断される。
図8Bに示すように、抵抗R1が故障した場合は、状態判断部42によって、抵抗R1を使用する回路状態1A、3Aが異常と判断されるが、抵抗R1を使用しない、つまり、抵抗R2を使用する回路状態2A、4Aは正常と判断される。
【0066】
図8Cに示すように、抵抗R2が故障した場合は、状態判断部42によって、抵抗R2を使用する回路状態2A、4Aが異常と判断されるが、抵抗R2を使用しない、つまり、抵抗R1を使用する回路状態1A、3Aは正常と判断される。
図8Dに示すように、パルス投入回路Aが故障した場合は、状態判断部42によって、パルス投入回路Aを使用する回路状態、つまり、全ての回路状態1A〜4Aが異常と判断される。
【0067】
なお、状態判断部42は、複数の回路状態1A〜4Aの各々が正常か異常かの判断は、上記第1の実施の形態と同様である。つまり、状態判断部42は、複数の回路状態1A〜4Aの各々が加工電源12Aの回路状態として設定されたときに、電圧検出部16が検出した極間電圧Vに基づいて、回路状態が正常か否かを判断する。
【0068】
そのため、CNC18のテーブル34aには、複数の故障個所と、複数の故障個所の各々に対応する複数の回路状態1A〜4Aの異常パターン(
図8A〜
図8Dに示すような情報)とが記憶されている。そして、CNC18の故障個所特定部44は、テーブル34aに記憶された異常パターンと、複数の回路状態1A〜4Aの各々に対する状態判断部42の判断結果とを比較することで、故障個所を特定する。
【0069】
なお、本第2の実施の形態のCNC18(具体的には、制御部32)の動作は、
図5に示すフローチャートと略同様であるが、本第2の実施の形態では、加工電源12Aの回路状態は、オペレータによる操作がないと回路状態を切り換えられない場合がある。例えば、回路状態2Aから回路状態3Aに切り換える場合は、接続されたコネクタCN(コンデンサC)を取り外さなければならないので、オペレータの操作が必要となる。逆に、コンデンサを接続する場合も、オペレータの操作が必要となる。
【0070】
したがって、
図5のステップS8で、加工電源12Aの回路状態を回路状態2Aから回路状態3Aに切り換える場合は、設定切換部40は、リレースイッチRL3、RL4のオンオフを切り換えるとともに、コネクタCN(コンデンサC)の取り外しを促す表示を行う旨の表示信号とどの回路状態に切り換えるかを示す回路信号を表示制御部46に出力する。
【0071】
そして、表示制御部46は、表示信号および回路信号を受け取ると、回路信号と記憶媒体34に記憶された表示内容情報とに基づいて、切り換える回路状態に対応する内容の情報を表示するように表示部30bを制御する。これにより、表示部30bの表示画面に、「コネクタを取り外して下さい。」といった内容が表示される。そして、オペレータは、コネクタを取り外した後、表示部30bの表示画面に表示されている再開ボタンを押す。表示画面に表示された再開ボタンが押されると、操作部30aのタッチパネルによってそれを検知し、検出した信号が制御部32に出力される。再開ボタンが押されると、ステップS3に進み、状態判断部42は、切り換えられた回路状態3Aで電圧検出部16が検出した極間電圧Vを取得する。
【0072】
また、ステップS2で、加工電源12Aの回路状態を回路状態1Aに設定する場合に、コネクタCN(コンデンサC)が取り外されている場合も同様に、設定切換部40は、リレースイッチRL3、RL4のオンオフを切り換えるとともに、コネクタCN(コンデンサC)の接続を促す表示を行う旨の表示信号およびどの回路状態に切り換えるかを示す回路信号を表示制御部46に出力する。そして、表示制御部46は、表示信号および回路信号を受け取ると、表示部30bの表示画面に、「コネクタを接続して下さい。」といった内容を表示する。そして、オペレータは、コネクタを接続した後、表示部30bの表示画面に表示されている再開ボタンを押す。表示画面に表示されている再開ボタンが押されると、操作部30aのタッチパネルによってそれを検知し、検出した信号が制御部32に出力される。再開ボタンが押されると、ステップS3に進み、状態判断部42は、設定された回路状態1Aで電圧検出部16が検出した極間電圧Vを取得する。
【0073】
[第3の実施の形態]
図9は、第3の実施の形態の放電加工機10Bの構成図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみを説明する。放電加工機10Bは、加工電源12B、電極14、電圧検出部16、および、CNC(数値制御装置)18を少なくとも備える。
【0074】
加工電源12Bは、電源E、パルス投入回路Aa、2つのリレースイッチRL3、RL4、2つの抵抗R1、R2、および、ダイオードDを備える。電源Eの正極は、パルス投入回路Aaの正極側入力部PI1に接続され、電源Eの負極は、パルス投入回路Aaの負極側入力部NI1に接続されている。パルス投入回路Aaの正極側出力部PO1は、リレースイッチRL3および抵抗R1を介して電極14に接続されるとともに、リレースイッチRL4および抵抗R2を介して電極14に接続されている。つまり、リレースイッチRL3および抵抗R1と、リレースイッチRL4および抵抗R2とは並列に接続されている。パルス投入回路Aaの負極側出力部NO1は、加工対象物Wに接続されている。パルス投入回路Aaと電極14との接続は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0075】
パルス投入回路Aaの正極側出力部PO1および負極側出力部NO1は、ダイオードDを介して互いに接続されている。ダイオードDは、極間に並列に接続されており、極間電圧Vを成形する。ダイオードDのカソードは、パルス投入回路Aaの正極側出力部PO1に接続され、アノードは、パルス投入回路Aaの負極側出力部NO1に接続されている。ダイオードDのカソードとパルス投入回路Aaの正極側出力部PO1との接続点は、パルス投入回路Aaの正極側出力部PO1とリレースイッチRL3、RL4との間に位置する。また、ダイオードDのアノードとパルス投入回路Aaの負極側出力部NO1との接続点は、パルス投入回路Aaの負極側出力部NO1と加工対象物Wとの間に位置する。
【0076】
本第3の実施の形態では、パルス投入回路Aaは、上記したパルス投入回路Aとは異なり、CNC18(設定切換部40)からの指令値に基づいて、出力(印加)するパルス電圧の極性状態を変えることができる。本説明では、パルス投入回路Aaが出力(印加)する極性状態が正(+)という場合は、正極側出力部PO1に正の電位を、負極側出力部NO1に負の電位を与えるものとする。また、極性状態が負(−)という場合は、正極側出力部PO1に負の電位を、負極側出力部NO1に正の電位を与えるものとする。
【0077】
本第3の実施の形態では、加工電源12Bは、リレースイッチRL3、RL4およびパルス投入回路Aaが出力するパルス電圧の極性状態によって、互いに異なる複数の回路状態をとることができる。つまり、リレースイッチRL3、RL4の電気的な接続およびパルス投入回路Aaによる電気的な設定(極性状態)を切り換えることで複数の回路状態が形成され、加工電源12Bの回路状態を、複数の回路状態のうちいずれか1つの回路状態に設定することができる。本第3の実施の形態においては、加工電源12Bは、4つの回路状態1B〜4Bをとることができるものとする。したがって、加工電源12Bの回路状態を、4つの回路状態1B〜4Bのいずれか1つの回路状態に設定することができる。なお、本第3の実施の形態では、加工電源12Bの回路状態は、回路状態1B→回路状態2B→回路状態3B→回路状態4B、の順番で切り換えられるものとする。
【0078】
図10は、4つの回路状態1B〜4Bの各々と、2つのリレースイッチRL3、RL4のオンオフ状態およびパルス投入回路Aaの極性状態との関係を示す図である。リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)、パルス投入回路Aaの極性状態が正(+)のときの加工電源12Bの回路状態を回路状態1Bとする。つまり、回路状態1Bのときは、パルス投入回路Aaからのパルス電流が抵抗R1を介して極間に流れる。
【0079】
リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)、パルス投入回路Aaの極性状態が正(+)のときの加工電源12Bの回路状態を回路状態2Bとする。つまり、回路状態2Bのときは、パルス投入回路Aaからのパルス電流が抵抗R2を介して極間に流れる。
【0080】
リレースイッチRL3がオン(CLOSE)、リレースイッチRL4がオフ(OPEN)、パルス投入回路Aaの極性状態が負(−)のときの加工電源12Bの回路状態を回路状態3Bとする。つまり、回路状態3Bのときは、パルス投入回路Aaからのパルス電流がダイオードDを流れるため、パルス電流が極間に流れない。
【0081】
リレースイッチRL3がオフ(OPEN)、リレースイッチRL4がオン(CLOSE)、パルス投入回路Aaの極性状態が負(−)のときの加工電源12Bの回路状態を回路状態4Bとする。つまり、回路状態4Bのときは、パルス投入回路Aaからのパルス電流がダイオードDを流れるため、パルス電流が極間に流れない。
【0082】
なお、第3の実施の形態では、回路状態3B、4Bのときは、パルス電流がダイオードDに流れるので、極間にパルス電流が流れず、極間電圧Vが低下する(0Vに近くなる)。そのため、回路状態3B、4Bが正常か異常かを判断する際の所定の範囲は、回路状態1B、2Bが正常か否かを判断するのに用いられる所定の範囲(上記各実施の形態で説明した回路状態1〜4、1A〜4Aが正常か否かを判断するのに用いられる所定の範囲(例えば、75V〜85V))より低い。例えば、回路状態3B、4Bが正常か否かを判断する際の所定の範囲は、0V〜10Vに設定されている。
【0083】
図11は、ダイオードDが短絡故障した場合の複数の回路状態1B〜4Bの各々に対する状態判断部42の判断結果を示す図である。ダイオードDが短絡故障した場合は、パルス投入回路Aaの極性状態が正の場合であっても、パルス電流がダイオードDに流れてしまう。そのため、極間電圧Vは所定の範囲(例えば、75V〜85V)外となる。したがって、パルス投入回路Aaの極性状態が正となる回路状態1B、2Bが状態判断部42によって異常と判断される。一方で、ダイオードDが短絡故障していてもしていなくても、パルス投入回路Aaの極性状態が負の場合は、パルス電流がダイオードDに流れる。したがって、回路状態3B、4Bのときは、ダイオードDが短絡故障していても、極間電圧Vは所定の範囲(例えば、0V〜10V)内になり、状態判断部42によって正常と判断される。
【0084】
そのため、CNC18のテーブル34aには、故障個所(ダイオードD)と、この故障個所(ダイオードD)に対応する複数の回路状態1B〜4Bの異常パターン(
図11に示すような情報)とが記憶されている。そして、CNC18の故障個所特定部44は、テーブル34aに記憶された異常パターンと、複数の回路状態1B〜4Bの各々に対する状態判断部42の判断結果とを比較することで、故障個所を特定することができる。
【0085】
なお、抵抗R1、R2、および、パルス投入回路Aaの各々が故障した場合の、各回路状態1B〜4Bの異常判断および故障個所の特定についての説明を省略するが、上記第1および第2の実施の形態で説明したのと同様に行うことができる。また、本第3の実施の形態のCNC18(具体的には、制御部32)の動作は、
図5に示すフローチャートと略同様であるが、加工電源12Bに設定された回路状態が回路状態3B、4Bのときに、ステップS4で、電圧検出部16が検出した極間電圧Vが所定の許容範囲内であるかの判断をする際に用いられる所定の範囲(例えば、0V〜10V)は、回路状態1B、2Bのとき(75V〜85V)と比べ低く設定されている。
【0086】
以上のように、上記第1〜第3の実施の形態で説明した少なくとも1つの放電加工機10(または10A、10B)は、電極14と加工対象物Wとで形成される極間に電圧を印加して電流を流すことで放電加工を行う。放電加工機10(または10A、10B)は、互いに異なる複数の回路状態を有し、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、複数の回路状態のうちいずれか1つの回路状態に設定可能な加工電源12(または12A、12B)と、複数の回路状態の各々が加工電源12(または12A、12B)の回路状態として設定されたときに、設定された回路状態が正常か否かを判断する状態判断部42と、複数の回路状態の各々に対する状態判断部42の判断結果に基づいて、加工電源12(または12A、12B)の故障個所を特定する故障個所特定部44と、故障個所特定部44が特定した前記故障個所をオペレータに報知する報知部(表示部30bまたは音出力部等)と、を備える。これにより、コストを抑えつつ、簡易に加工電源12(または12A、12B)の故障個所を特定することができ、オペレータは、故障個所を認識することができる。
【0087】
放電加工機10(または10A、10B)は、電気的な接続および電気的な設定の少なくとも一方を切り換えることで、複数の回路状態の各々を加工電源12(または12A、12B)の回路状態として順番に設定する設定切換部40をさらに備える。状態判断部42は、加工電源12(または12A、12B)の回路状態が切り換わると、切り換わった回路状態に対して正常か否かを判断する。これにより、各回路状態に対して正常か異常かを判断することができる。
【0088】
報知部(表示部30bまたは音出力部等)は、設定切換部40が加工電源12(または12A、12B)に設定される回路状態を切り換える際に、オペレータによる切り換え操作が必要な場合は、その切り換え操作をオペレータに報知する。これにより、加工電源12(または12A、12B)の回路状態の切り換えに、オペレータの操作が必要な場合であっても、適切に加工電源12(または12A、12B)の回路状態を切り換えることができる。
【0089】
放電加工機10(または10A、10B)は、極間にかかる極間電圧Vを検出する電圧検出部16をさらに備える。状態判断部42は、複数の回路状態の各々が加工電源12(または12A、12B)の回路状態として設定されたときに、電圧検出部16が検出した極間電圧Vに基づいて、回路状態が正常か否かを判断する。回路状態が正常の場合は、極間に電圧が正常に印加され、回路状態が異常の場合は、極間に印加される電圧は、正常時と比べ著しく異なる。したがって、極間電圧Vを用いることで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。
【0090】
状態判断部42は、電圧検出部16が検出した極間電圧Vが、設定された加工電源12(または12A、12B)の回路状態に対応して予め決められた所定の範囲内にない場合は、回路状態が異常であると判断する。回路状態が正常の場合は、極間に印加される電圧は所定の範囲に収まる。これにより、極間電圧Vと所定の範囲とを比較することで、簡単に且つ精度よく回路状態が正常か異常かを判断することができる。また、放電加工機10の個体差、電極14および加工対象物Wの材料等に応じて、極間電圧Vがばらついた場合であっても、そのばらつきを吸収することができる。つまり、正常か異常かの判断がこのばらつきによって受ける影響を防止することができる。
【0091】
放電加工機10(または10A、10B)は、故障個所に対応して複数の回路状態の異常パターンを記憶したテーブル34aをさらに備え、故障個所特定部44は、テーブル34aに記憶された異常パターンと、複数の回路状態の各々に対する状態判断部42の判断結果とを比較することで、故障個所を特定する。これにより、コストを抑えつつ、簡単に故障個所を抑えることができる。