特許第6431064号(P6431064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6431064顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431064
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する器具
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   A61C19/00 M
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-532730(P2016-532730)
(86)(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公表番号】特表2016-527046(P2016-527046A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】GB2014052359
(87)【国際公開番号】WO2015019060
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】1314053.8
(32)【優先日】2013年8月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516034717
【氏名又は名称】モヒンドラ,ナレッシュ クマー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モヒンドラ,ナレッシュ クマー
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/105716(WO,A1)
【文献】 特開2007−325917(JP,A)
【文献】 特開平11−206790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 5/90
A61C 7/08
A45D 44/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法において使用する器具であって、
2つの部分を含んでおり、
それら部分は使用時に上顎または下顎のそれぞれの両側で少なくとも第1臼歯及び/又は第2臼歯と接触するものであり、それぞれの部分は、
I)弾性を備えたエラストマー材料で形成されており、使用時に第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも咬合噛み面と接触する第1層と、
II)前記第1層側に向き、該第1層に接触する第1表面と、該第1層の反対側を向いた第2表面と、該第1表面および該第2表面の境界を画定する1以上の側壁とを含み、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、使用時にバイトプレートを提供する第2層と、
を含んだ複合構造体を含んでおり、
前記それぞれの部分の前記第2層には、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、前記第1層から離れて前記第2表面から少なくとも2mmから20mm延び出ており、使用時には、前記第1層と接触状態の第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部から離れて前記第2表面から延び出るように配置された突起部が提供されており、
前記弾性を備えたエラストマー材料は周囲の温度で硬化する熱硬化性ゴム組成物であり、
前記第2層の前記第1表面は略平坦であり、
前記第2層は、前記第1表面を画定し、前記第1層側に向けて該第1表面から延び出る側壁は有していないことを特徴とする器具。
【請求項2】
前記周囲の温度で硬化する熱硬化性ゴム組成物は硬化シリコンゴムを含んでいる、請求項1記載の器具。
【請求項3】
それぞれの部分の前記第2層には、該第2層に固定されるように前記第1層がその内部に、またはその周囲に成形される複数の開口部及び/又は突出部が提供されている、請求項1記載の器具。
【請求項4】
顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法で使用される器具を製作する方法であって、
該器具は2つの部分を含んでおり、それら部分は使用時に上顎または下顎のそれぞれの両側で少なくとも第1臼歯及び/又は第2臼歯と接触するように意図されており、それぞれの部分は、
I)弾性を備えたエラストマー材料で形成されており、使用時に第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも咬合噛み面と接触する第1層と、
II)前記第1層側に向き、該第1層に接触する第1表面と、該第1層の反対側を向いた第2表面と、該第1表面および該第2表面の境界を画定する1以上の側壁とを含み、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、使用時にバイトプレートを提供する第2層と、
を含んだ複合構造体を含んでおり、
それぞれの部分の前記第2層には、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、前記第1層から離れて前記第2表面から少なくとも2mmから20mm延び出ており、使用時には、前記第1層と接触状態の第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部から離れて前記第2表面から延び出るように配置された突起部が提供されており、
前記第2層の前記第1表面は略平坦であり、
前記第2層は、前記第1表面を画定し、前記第1層側に向けて該第1表面から延び出る側壁は有しておらず、本方法は、
i)それぞれが前記第2層を含んだ2つの部分を含んだ器具プリフォームを準備するステップと、
ii)周囲温度で硬化し、弾性を備えたエラストマー材料である硬化した熱硬化ゴム組成物を形成する未硬化ゴム組成物を準備するステップと、
iii)前記未硬化ゴム組成物を前記第2層のそれぞれの前記第1表面上に貼り付けるステップと、
iv)前記未硬化ゴム組成物を要求される形状に成形するステップと、
v)前記成形された未硬化ゴム組成物を周囲温度で硬化させるステップと、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記未硬化ゴム組成物はシリコンゴムを含んでいる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
それぞれの部分の前記第2層には、該第2層に固定されるように前記第1層がその内部に、またはその周囲に成形される複数の開口部及び/又は突出部が提供されている、請求項4記載の方法。
【請求項7】
顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法において使用する器具を製作する部分のキットであって、
該器具は2つの部分を含んでおり、それら部分は使用時に上顎または下顎のそれぞれの両側で少なくとも第1臼歯及び/又は第2臼歯と接触するように意図されており、それぞれの部分は、
I)弾性を備えたエラストマー材料で形成されており、使用時に第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも咬合噛み面と接触する第1層と、
II)前記第1層側に向き、該第1層に接触する第1表面と、該第1層の反対側を向いた第2表面と、該第1表面および該第2表面の境界を画定する1以上の側壁とを含み、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、使用時にバイトプレートを提供する第2層と、
を含んだ複合構造体を含んでおり、
それぞれの部分の前記第2層には、軟化点が100℃を超える非変形性の材料で形成され、前記第1層から離れて前記第2表面から少なくとも2mmから20mm延び出ており、使用時には、前記第1層と接触状態の第1臼歯及び/又は第2臼歯の一部から離れて前記バイトプレートの表面から延び出るように配置された突起部が提供されており、前記第2層の前記第1表面は略平坦であり、前記第2層は、前記第1表面を画定し、前記第1層側に向けて該第1表面から延び出る側壁は有しておらず、本キットは、
a)それぞれの部分が前記第2層を含んだ2つの部分を含んでいる器具プリフォームと、
b)i)周囲温度で硬化して、弾性を備えたエラストマー材料である硬化した熱硬化性ゴム組成物を形成する未硬化ゴム組成物、または、
ii)共に混合されると、周囲温度で硬化し、弾性を備えたエラストマー材料である硬化した熱硬化性ゴム組成物を形成する少なくとも2つの構成要素を含んでいる混合組成物を含んでいるキット。
【請求項8】
本キットは、請求項記載の方法によって請求項1記載の器具を製作するための説明書をさらに含んでいる、請求項記載のキット。
【請求項9】
前記未硬化ゴム組成物はシリコンゴムを含んでいる、請求項7または請求項8に記載のキット。
【請求項10】
それぞれの部分の前記第2層には、該第2層に固定されるように前記第1層がその内部に、またはその周囲に成形される複数の開口部及び/又は突出部が提供されている、請求項7記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口内に着用されるように意図された、時の経過に伴い顔面老化及び/又は口内異常機能活動、特には歯軋りを抑制(軽減)させることができる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の姿勢の歪みによって引き起こされる上下顎の整合不良を患う患者が経験する痛みを緩和するために1930年代以降、歯科治療においてはピボット器具が使用されてきた。ピボット器具の元来の目的は上下顎を分離し、歯の歪みによる上下顎の不整合状態を防止し、患者の咬み合わせをさらに快適な位置へと調節させるものであった。一時的な器具の使用は顔面筋肉を弛緩(リラックス)させ、顎と側頭下顎骨関節の関節丘を動作自在なポジションに配置させた。それによって側頭下顎骨関節の障害に関わる痛みが解消した。
【0003】
ピボット器具は患者の口のプラスター型から作成されており、その型は歯科用印象材料により下顎歯の印象を取ることで作成された。型はこの印象からプラスター材料で作成されたが、それは患者の下顎の正確な複製であった。この型は剛質の成形材料からピボット器具を作成するのに使用されたが、それには患者の口内に器具を装着させるワイアクリップが含まれていた。噛み面を提供した器具の成形材料の最良の厚みは、例えば、特定の患者のために正確な噛ポジション(位置および姿勢)を確立するためのコマンドスワロー技法を活用することで決定された。患者は歯科医の指示に従い、歯科医の監視下で痛みが消滅するまで装着(フィット)した器具を着用した。その後に器具は取り外された。この一時的な処置の問題点はこの処置の効果が時に一時的であり、器具が取り外された後には顎が時の経過と共に元の痛みを伴う噛みポジションに戻る傾向にあったことである。
【0004】
一部の歯科医は、患者の咬み合わせの状態を永久的に改善して、側頭下顎骨関節からの永久的な痛みの解放を達成すべきであると提唱した。そのような状況では、大抵は歯列矯正処置が施され、歯のポジションが変更され、または歯に人工歯冠が被せられた。
【0005】
1966年に、N.K.モヒンドラ博士は、英国歯科学会誌に論文「スワロー技法における下顎骨のポジションによる咬合垂直高の決定に関する予備報告」を発表した。この論文でモヒンドラ博士は、患者側に問題を発生させることなく、ピボット器具が垂直寸法を下顎骨の通常ポジションを越えて十分に、例えば、19mmまで増加させるのに使用が可能であることを報告した。この報告の前は、医師や歯科医は、垂直寸法は約2mmから3mmを超えては増加されるべきではなく、決して顎の通常ポジションを越えては増加されるべきではないと考えていた。これら実験に使用された器具は、訓練され、認証された歯科技工士によって特殊工房で作成された。
【0006】
2002年には、モヒンドラ博士は、英国歯科学会誌に論文「顔面美に対する垂直寸法増加の効果」を発表した。この論文ではモヒンドラ博士は、ピボット器具の使用によって垂直寸法が増加した患者の80%が5歳から20歳若返って見えると思い、この見方は、患者の前後写真を研究し、同じ結論に到達した独立パネル(団体)によって支持された。
【0007】
その後、モヒンドラ博士は、咬合垂直寸法を永久的に増加させることなく顔面美を改善する顔面若返り器を開発した。この若返り器は初期の歯科器具と同様に、訓練した歯科技工士による特殊工房での個々の患者に合わせた特注品である必要があった。この若返り器は、下顎の全ての歯にフィットするように個別成形された100℃を超える軟化点を有した耐久性の非変形性材料で形成された略U形状の層を含み、使用時には歯列矯正器(バイトプレート)を提供した。2つの突出部が歯列矯正器の表面から延び出ており、顎の両側の第1臼歯の少なくとも一部に亘ってバイトプレート上に配置されていた。それら突出部は、軟化点が50℃を超え、耐久性のある非変形性である材料により製造されており、コマンドスワロー技法によって決定されるそれぞれの患者の咬合垂直高に特注成形された。この若返り器は着脱式であり、器具が患者の口内に存在するとき短時間、咬合垂直寸法を増加させるだけであった。この若返り器はオリジナルのピボット装置を基礎としており、同様に製造された。すなわち、訓練された有資格歯科技工士によって特殊工房で製造されるものであった。
【0008】
US6415794およびUS−A−6539943は激しい運動中にスポーツ選手によって使用される歯科器具を開示する。この器具は4層の別々の材料を含んだ4要素複合材料の咬合後方パッドで成り、さらに、上顎歯と下顎歯を分離し、衝撃および締め応力を吸収するように咬合面と係合が可能な、耐久性で弾性性の材料の第1層と、非軟化性で可撓性の材料の第2層と、硬質で非常に耐久性のある材料の第3層と、軟化性材料の第4層がさらに含まれている。口蓋に対して成形されるよう膨張および収縮するように調節可能な弓形状体が提供されて後方パッドを口に接続し、使用中に口内に咬合後方パッドのポジションを維持し、飲み込みによってパッドを失うことを防止するために舌と係合しないようにする。器具は、例えば、医師または歯科医により、個別仕様の特殊工房の成形プロセスを必要とせずにボイルアンドバイト技法を活用してフィットできる。
【0009】
US−A−6092523は、歯科オーバレイ部分と、その歯科オーバレイ部分にスライド式に取り付けられたガイドランプ部分とを有した鼾防止装置を開示する。この装置は、例えば、医師または歯科医によって、個別仕様の特殊工房の成形プロセスを必要とせずにボイルアンドバイト技法を活用してフィットできる。
【0010】
WO−A−03105716は、顔面老化を抑制する方法で使用される大量生産用の汎用歯科用器具を開示するが、この器具は2部分(部位)を含み、それら部分は使用時に上顎または下顎のそれぞれの両側で後方歯と接触することを想定しており、それぞれの部分は以下の要素を含んだ複合構造を含んでいる:
i)軟化点が35℃から100℃の範囲で、使用中に収縮して後方歯の咬合噛み面をグリップ(保持)する耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料で形成された第1層;および
ii)軟化点が100℃を超え、使用中にバイトプレートを提供する耐久性のある非変形性の材料で形成された第2層;
であって、それぞれの部分の第2層には100℃を超える軟化点の耐久性のある非変形性である材料で形成された突出部が提供されており、それは第1層を離れるように、少なくとも2mmから20mmまでバイトプレートの表面から延び出ており、使用中に突出部は、第1層と接触する第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部の上方にバイトプレートの表面から延び出ている。第1層を形成するのに使用される材料は、沸点、あるいはその近辺の温度の水中に入れられると成形が可能となる。この器具は、当初に器具をマイクロ波オーブン内で、あるいはほぼ沸騰している水中に約30秒間程度、第1層の材料を成形可能となるまで加熱することで患者に装着することができる。患者は口を開く必要があり、器具は患者の下顎の歯上に被せて配置され、その第1層は歯と接触状態に置かれ、2つの突出部は両方の第1臼歯上に置かれる。患者は上顎の歯が突出部の上端と接触するまで下顎を穏やかに持ち上げる必要がある。続いて患者は唇と食道を閉じる。飲み込みによって器具に作用する圧力は第1層の材料を変形させ、下顎の歯の形状に自身を成形させる。器具はその後、患者の口から注意深く取り外され、器具は外気温度に素早く冷却させるために冷水に浸される。器具が冷却されると、第1層の材料の余剰分は快適な器具のフィッティングが達成されるまで切り取られる。ほとんどの患者はフィッティングの際にいかなる問題にも遭遇しないが、一部の患者、特に医師や歯科医の助けなく自分自身で器具を装着した患者は不快を表明し、あるいは、歯の周囲に熱い第1層を成形するときに装置の熱によって引き起こされる火傷さえも経験する(このことは患者が器具の加熱にマイクロ波オーブンを使用し、熱い器具を口内に挿入する前に器具に提供された“ボイルアンドバイト”フィッティングに関する説明書の説明を実行しない場合に起きると思われる)。
【0011】
US−A−8419595は、ボイルアンドバイト技法でフィットされる顔面老化の影響を低減する歯科用器具を開示する。この器具は連続的な底壁と、底壁の側縁部から上方に広がり、底壁に略垂直である連続的な内壁および外壁を有したバイトプレートを含む。
【0012】
US2009/0087812は、シリコンベースの義歯再裏打ち材料(ライナー)でもよい硬化性の弾性材料が“ボイルアンドバイト”材料の代用として使用されている自身でカスタマイズ化が可能な歯科処置トレーを開示する。このトレーは硬化性の弾性材料共々硬化すると、得られる歯科処置トレーが歯に正確にフィットし、歯と形状一致すべくカスタマイズ化できるように形状化されている。そのようなカスタマイズ化は歯の上に歯科処置トレーを保持し、歯科トレーが歯の独特な形状に正確に合致する可能性を高める。もし、例えば、歯が漂白剤または他の歯科剤で処置され、歯の全ての露出した表面が処理対象の薬剤と接触しなければならないのであれば、これは重要である。しかし、歯に対する弾性材料の正確な合致が、容易にフィットし、材料にダメージを与えないで取り外すことを困難にするので、トレーは頻繁な使用には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
汎用の器具のフィッティングのための厳格な説明書に従う患者は不快感や火傷の問題を報告していないが、本発明の目的は、知られた汎用器具のフィッティングの最中に引き起こされる潜在的な問題の被害を蒙らせずに顔面老化を抑制し、顔面老化を抑制する方法に関する高い頻度での使用に適した器具の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の様々な態様は添付の請求の範囲において記載されている。
【0015】
第1の態様において、本発明は顔面老化、及び/又は、口内異常機能活動を抑制する器具を提供するが、この器具は2部分(部位)を含んでおり、それら部分は使用時に上顎または下顎のそれぞれ両側で第1臼歯及び/又は第2臼歯と接触することが意図されており、それぞれの部分は以下の要素を含んだ複合構造物である:
i)耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料で形成され、使用時に第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも咬合面と接触する第1層;および
ii)第1層の方向に向き、第1層と接触する第1表面と、第1層とは反対方向を向いた第2表面と、第1表面と第2表面の境界を画定する1以上の側壁とを含み、100℃を超える軟化点を有した耐久性のある非変形性の材料で形成され、使用時にはバイトプレートを提供する第2層を含み、
それぞれの部分の第2層には耐久性で、100℃を超える軟化点を有した耐久性のある非変形性の材料で形成され、少なくとも2mmから20mmまで第1層から離れるように第2表面から延び出る突起部であって、使用時にその突起部が、第1層と接触する第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部から離れて第2表面から延び出るようにポジションされている突起部が提供されており、それぞれの部分の第2層にはオプションで、第1層を第2層に固定するために第1層がその中またはその周囲に成形されている複数の開口部及び/又は突出部が提供されており、
前記の耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料は周囲温度硬化性(周囲の温度で硬化する)の熱硬化性ゴム組成物であり、
第2層の第1表面は実質的に平坦であり、
第2層は第1表面との境界を画定し、第2表面から離れる方向に第1表面から延び出る側壁は存在しないことを特徴としている。
【0016】
第2の態様において、本発明は第1の態様の器具を製造するための、以下の工程ステップを含んだ方法が提供される:
i)それぞれ上述の第2層を含んでいる2部分を含んだ器具のプリフォームを提供するステップと、
ii)耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料である硬化した熱硬化性ゴム組成物を形成するために周囲温度で硬化する未硬化ゴム組成物を提供するステップを含み、さらに、
iii)上記の未硬化ゴム組成物を第2層のそれぞれの第1表面に適用(付着)するステップと、
iv)複数の開口部及び/又は突出部が存在するときには、未硬化ゴムをそれら複数の開口部及び/又は突出部の内部または周囲に成形することを含んだ、未硬化ゴム組成物を必要な形状に成形するステップと、
v)成形された未硬化組成物を硬化させるステップと、
を含んでいる。
【0017】
専門家であれば理解するであろうが、この態様においては、未硬化ゴム祖背物が硬化する際に第2層に取り付けられる硬化熱可塑性ゴム組成物は、歯科用器具の2つの部分のそれぞれの複合構造の第1層を形成する。第1層の取り付けは第2層に複数の開口部及び/又は突出部が提供され、未硬化ゴム組成物が第1層の形成中にそれらの内部または周囲に成形されたときに改善される。専門家には理解されるであろうが、この態様では、未硬化ゴム組成物の必要形状への成形は、未硬化ゴム組成物を患者の必要な歯の周囲に成形することを含む。
【0018】
第3の態様では、本発明は前述の第1態様の器具の製造に適した部分のキットを提供し、そのキットは以下の要素を含んでいる:
a)それぞれ上記の第2層を含んでいる2部分を含んだ器具プリフォーム(器具の母材)と;
b)i)周囲温度で硬化し、耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料である硬化シリコンゴムを形成する未硬化ゴム;または、
ii)混合されると、周囲温度で硬化し、耐久性のある弾性を備えたエラストマー材料である硬化した熱硬化性ゴムを形成する未硬化ゴムを形成する少なくとも2つの構成要素を含んだマルチパック組成物が含まれる。
【0019】
好適には、部分のキットは、第3態様のキットの構成要素を使用した第2態様の方法による第1態様の器具を製造するための説明書を含んでいる。
【0020】
好適には、硬化ゴム組成物は硬化シリコンゴム、およびオプションで、1以上の保存剤、顔料、レオロジー調節剤、染料および充填剤を含んだ群から選択される1以上の他の成分を含んでいる。
【0021】
好適には、未硬化ゴム組成物は未硬化シリコンゴム、およびオプションで、1以上の保存剤、顔料、レオロジー調節剤、染料および充填剤を含んだ群から選択される1以上の他の成分を含んでいる。
【0022】
未硬化ゴム組成物が第2層の表面に適用されているとき、それは好適には少なくとも70Pa・s(70000センチポアズ(cps))の粘度を有し、さらに好適には少なくとも100Pa・s(100000cps)の粘度を有し、さらに好適には少なくとも250Pa・s(250000cps)の粘度を有する。
【0023】
未硬化ゴム組成物が必要な形状に成形されているとき、それは好適には少なくとも100Pa・s(100000cps)の粘度を有し、さらに好適には少なくとも250Pa・s(250000cps)の粘度を有する。
【0024】
未硬化ゴム組成物は周囲温度で硬化する。発生する硬化反応は、器具の装着時(患者の必要とされる歯の周囲での組成物の成形時である成形ステップivの最中)に患者に不快感を与えるような温度にはゴム組成物の温度を上昇させない。好適には、硬化中の組成物の温度は50℃を超えず、さらに好適には40℃を超えない。よって装着中にゴム組成物は患者には暖かく感じられるかも知れないが、患者は口内に不快感や火傷を引き起こす温度には決して曝露されない。
【0025】
本発明の実践に有用であり、及び/又は本発明の実践に使用が可能になるように容易に改質できる、周囲温度で硬化して耐久性の弾性エラストマー材料である硬化熱可塑性ゴム組成物を形成する未硬化ゴム組成物およびその未硬化ゴム組成物を提供するマルチパック組成物は商業的に入手可能であり、産業界で非常に良く知られている。そのようなゴム類は典型的には“義歯ライナー(固定剤)”として宣伝されて販売されている。例えば、PermaSoftTMおよびProSoftTM義歯ライナーがパーマラボラトリーズ社(USA)から入手でき、DOCリラインITTM義歯ライナーがマジェスティックドラッグ社(USA)から入手でき、AcrylineTM義歯ライナーがリーファーマシューチカル社(USA)から入手でき、MucoprenTM軟質ライナー材料がケテンバックLP社(USA)から入手できる。有用な未硬化ゴム組成物は、未硬化ゴムに加えて、保存剤、顔料、レオロジー調節剤、染料および充填剤のうちの1種以上を含むことができる。
【0026】
好適には、未硬化ゴム組成物は未硬化シリコンゴムを含む。適した医学的に利用可能な未硬化シリコンゴムは上述から明らかなように産業界において良く知られている。
【0027】
専門家には理解されようが、未硬化ゴム組成物は周囲温度で硬化する前に大気への曝露が必要なことがある。
【0028】
未硬化ゴム組成物は本発明のキット内で単パック組成物(前記の特徴(b)(i)のごときもの)として提供でき、あるいはマルチパック組成物(特徴(b)(ii)のごときもの)として提供できる。単パック組成物の例には、注入器構造物内に含まれた未硬化ゴム組成物(シリコン槽のごとき類似した注入器構造内でシーラントが提供できる)またはブリスター包装内の未硬化ゴム組成物(前述のケテンバックLP社(USA)のMucoprenTMソフトリライン材料のごときもの)が含まれる。
【0029】
本発明の第1の実施態様の器具では、第2層の第1表面は実質的に平坦であり、第2層は、第1表面の境界を画定し、第2表面から離れる方向に第1表面から広がる側壁を持たない。これは特に有利である。なぜなら、そのような壁が存在しないことでゴム組成物を歯の咬合面全体上に成形させ、口内で露出した他の外表面の全体ではなく一部のみで成形させるからである。このように、第1層が全部の歯ではなく一部の歯のみに装着される傾向にあるので、あるいは歯の周囲の第1層の動きを規制する壁が存在しないので、器具は使用後に比較的に容易に取り外すことができ、器具の使用可能な寿命を延ばす。一方、US2009/0087812でのように歯科用トレーに壁部が提供されており、ゴム組成物が歯の全表面に成形される場合には、器具は歯をさらに安定的に保持する傾向にあり、よって使用後の取り外しにはさらなる努力が必要であり、その結果として器具がダメージを受ける可能性が高まる。
【0030】
ここで使用する“器具プリフォーム”とは、第1層を除いた第の態様の器具で成るものである。
【0031】
WO−A−03105716で開示されている汎用器具と同様に、本発明の器具は、コマンドスワロー技法によって決定される両顎の所定の垂直分離を提供するように設計されており、有利には、例えば、医師または歯科医によって、特別仕様の特殊工房プロセスの活用または歯科技工士を必要とせずに装着でき、あるいは市販的に購入でき、個々のユーザ自身で装着できる。器具は顔面老化の兆候を低減させ、及び/又は口内異常機能活動、特に歯軋りを抑制するために患者によって使用されることが意図されている。有利には、器具は、若返り器具とは異なり、患者に個別に合わせて製作する必要はない。
【0032】
顔面老化及び/又は口内異常機能活性を抑制する1つの方法では、第1実施態様の器具が、患者が起きているか寝ているとき、1日の任意の時間に着用できる。好適には、器具は食事中または睡眠中に着用される。器具の使用は一般的には医師または歯科医によって処方され、市販の場合には、添付の使用説明書に基づく。好適には器具は1日に約3時間から約12時間着用される。器具を1日に24時間着用しないことが推奨される。好適には器具は4週間から10週間、典型的には6週間継続的に着用され、使用再開前の好適な間隔は3ヶ月から6ヶ月、例えば4ヶ月である。
【0033】
顔面老化及び/又は口内異常機能活動を、少なくとも当初的に抑制する別な方法では、器具は患者自身によって、ほんの1時間まで1日に2回、3日毎に(すなわち、毎日ではなく、1日置きでもない)着用され、夜間ではなく食事のためでもない。それぞれの患者の筋肉の状態は変動するので(患者によっては、筋肉は非常に緊張状態であり、患者によっては弛緩している)、もし患者が悪い症状、例えば、顔面筋肉の痛みを経験しているなら、患者は器具を着用する時間を短縮させなければならない。患者によっては、当初は一度にほんの数分しか器具を着用できないかも知れないが、筋肉がさらに緩むと、さらに長い時間を着用できるようになる。
【0034】
本発明の器具は、上顎または下顎、好適には下顎の後方歯の噛み面、すなわち咬合面に装着されるように形状化されている。1実施態様では器具はU形状であり、前方歯と後方歯の両方に快適にフィットする。しかし好適には、器具は、それぞれの顎の後方歯のみにフィットする2つの別々の構成部分を含んでおり、それら2つの構成部分を接続する、好適にはプラスチック製またはステンレス製のブリッジ手段を備えている。
【0035】
上顎または下顎の両側側の後方歯にフィットする本発明の器具の2つの部分のそれぞれは、以下を含んだ複合構造である:
i)耐久性のある弾性を備えたエラストマー熱可塑性ゴム材料で形成され、使用時に収縮して後方歯の咬合噛み面に接触して保持する第1層;および
ii)耐久性で非変形可能な軟化点100℃を超える材料で形成され、使用時にはバイトプレートを提供する第2層を含む。
【0036】
第2層には、耐久性のある非変形性の軟化点が100℃を超える材料で形成され、少なくとも約2mmから約20mmまで、好適には約5mmから約15mmまで、最も好適には約7mmから約10mmまで、例えば9mm第1層から離れるように第2層の第2表面から延び出る突起部が提供される。この突起部は、使用時に第1層に接触する第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部を覆うように第2層上に配置される。器具が下顎の歯に装着されると、突起部は下顎の第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部の上方に位置するように第2層上に配置される。同様に、器具が上顎の歯に装着されると、突起部は、上顎の第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部の下側に位置するように第2層上に配置される。従って、装着された器具および第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部を覆うように第2層上に配置される突起部に言及がなされたときには、どちらの顎骨に装着されるかによって、下顎の第1臼歯及び/又は第2臼歯の上側あるいは上顎の第1臼歯及び/又は第2臼歯の下側に存在することを意味する。好適には突起部は第2層と一体的に形成される。好適には突起部は第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部の上に中央的に位置する。さらに好適には突起部の幅は、その上に突起部の配置が意図される臼歯の幅よりも小さい。使用時に患者にとって快適であり、器具が装着されたときに突起部が下顎/上顎の第1臼歯及び/又は第2臼歯の上側/下側に、強制されれば下顎が周囲を旋回するポイントを提供する限りにおいては、突起部の形状は重要ではない。
【0037】
1実施態様においては、本発明の器具は、顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法での使用に適しており、この方法は、本発明の第1態様の器具を口内の上顎または下顎、好適には下顎に装着させることと、器具を歯間に保持した状態で下顎を反復的に降下させ、続いて下顎を持ち上げ、上顎に対して閉じることによる下顎の運動とを含んでいる。運動は患者が覚醒状態または睡眠状態のときに実行できる。運動は積極的に、例えば、食事中または患者が意識的に運動するときに実行できる。あるいは、運動は消極的に、例えば、患者が睡眠中または単に通常の日常活動中に実行できる。そのような消極的な運動においては、顔面筋肉は新規な休止ポジションに移動する顎によって引き延ばされる。好適には運動は、器具を任意の日に約3時間から12時間継続的に装着することで達成される(器具を1日に24時間着用しないことが推奨される)。好適には運動は毎日、4週間から10週間、典型的には6週間実行される。3ヶ月から6ヶ月、例えば4ヶ月目の運動休止は好適には別な期間の運動を開始する前にとられる。
【0038】
別実施態様では、本発明の第1態様の器具は、顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法での使用に適しており、この方法は、本発明の器具を口内の上顎または下顎、好適には下顎に5分、唇を閉じた状態で装着し、しかし顎同士は離した状態で装着し、上歯(または下歯)が器具の突起部に触れないようにし、顎が不随意的に閉じる回数を数え(またはカウンターで計測し)、上歯(または下歯)に器具の突起部に触れさせることを含む。もし、この間に患者が痛みを感じたら運動を停止させ、口内から器具を取り外すべきである。3日後、患者は器具をその半分の時間だけ着用し、5分まで延ばす。やがて患者は器具を口に入れた状態に慣れ、痛みを感じることなく、患者はその5分間での不随意的な顎の閉じる回数を0にすることができるであろう。従って本発明のさらに別な態様では、個人の顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法が提供され、この方法は、個人の上顎または下顎のいずれかの両側で少なくとも2つの後方の歯に器具を装着させ、唇を閉じ、特定の時間に亘って上歯または下歯を器具の第2層の突起部とそれぞれ接触させるのに十分に不随意的に顎を閉じることを防止するように努める。好適には、この方法は3日毎に反復される。本発明のこの態様は前述の態様と組み合わせることができ、顔面老化及び/又は口内異常機能活動を抑制する方法において、器具は患者に1時間まで、日に2回、3日毎に着用され、夜間と食事中は除く。この組み合わせられた実施態様では、器具を着用する期間(例:1時間)のある時点で患者はその不随意的な顎の閉じ動作を5分間だけ抑制するように努める。
【0039】
本発明の器具を製作する方法では、好適には未硬化ゴム組成物は第2層の第1表面に適用され、好適には5mm厚から15mm厚、さらに好適には8mm厚から12mm厚の未硬化ゴムの層が提供される。オプションで第2層の開口部及び/又は突出部の周囲および患者の対象の歯を含んだ未硬化ゴム組成物の成形後、層の厚みは器具の長さに沿って箇所ごとに異なるであろう。好適には成形後、第1層の厚みは1mmを下回らない。未硬化ゴム組成物が必要な形状に成形されたら、第1層の厚みは硬化中も硬化後も変化しない。
【0040】
コマンドスワロー技法によって決定される両顎の垂直分離を提供するように成形中の器具に調節させることができるのは、器具の複合構造の第1層材料に未硬化ゴムを採用することによる。
【0041】
器具の第2層は、軟化点が100℃を超える、例えば150℃以上を有した非変形性の材料から成形される。そのような材料は当技術業界においては良く知られており、US−A−6092253、US−A−6415794およびUS−A−6539943で説明されているように、ボイルアンドバイト型の歯科用製品の製作に普通に使用されている。適した材料の例には、ポリカーボネート樹脂、高密度ポリエチレンおよびポリプロピレン並びにメチルメタクリレートベース熱可塑材が含まれる。通常に入手できる材料には、エクソン社から入手できるEscoreneHD−6706と、ハンツマン社から入手できるAP6112−HSが含まれる。第2層を製作するのに使用される材料は沸騰水内で軟化してはならない。
【0042】
好適には第2層は約1mm厚から約15mm厚であり、好適には約3mm厚から約9mm厚である。第2層の厚みは装着によって影響を受けない。
【0043】
第2層には、第1表面を離れるように第2層の第2表面から少なくとも約2mmから約20mmまで、好適には約5mmから約15mmまで、最も好適には約7mmから約10mmまで、例えば9mm延び出し、使用中に第1層と接触する第1臼歯及び/又は第2臼歯の少なくとも一部を覆う第2層上に存在するように配置された耐久性のある非変形性の軟化点が100℃を超える材料が提供される。
【0044】
第1層を形成する硬化ゴム組成物は、適用および硬化中に第2層の第1表面に接着する傾向がある。さらに確実に第1層を第2層に接触させることが必要であると考えられるなら、それぞれの部分の第2層には好適には、その中で、またはその周囲で第1層が成形される複数の開口部及び/又は突出部が提供される。
【0045】
本発明の器具は第1層と第2層の間に位置する第3層の材料を含むことができる。もし存在するなら、好適には第3層は耐久性で弾性性の軟化点が100℃を超え、好適には150℃を超える材料により形成される。そのような好適材料は上記した。
【0046】
好適には突起部は第2材料と同一材料で形成され、好適には第2層と一体的に形成される。好適には突起部と第2層は共同で、最も厚い箇所で22mmを超えず、好適には最も厚い箇所で15mmを超えない。
【0047】
本発明の器具は、第1層の成形時にコマンドスワロー技法の活用を含んだ方法によって患者に装着させることができる。
【0048】
本発明の器具は顔面老化を低減させるのに有効である。顔面の老化には基本的に2つの要因が関与する。それらは本質的および非本質的な要因である。本質的な要因は基本的に機能退化が関与し、すなわち、例えば60歳までに細胞数が減少することに起因する(典型的には、20歳代の筋肉細胞量のたった60%)。非本質的な要因は、環境的要因による細胞へのダメージが関与する。例えば日光、煙、バクテリアやウィルスによる毒素によるダメージが関与する。関与するプロセスは基本的には慢性炎症の形態である。初期段階の両方のプロセス(細胞死および慢性炎症)は反転が可能である。本発明の器具での運動は初期段階のこれらプロセスを反転させる助けになる。従って顔面老化または炎症状態に関係する全ての疾患は、器具での運動によってある程度緩和できる。例えば、器具での運動は、アルツハイマー症、慢性洞炎、加齢性視力低下、タンゲラセタシス、皮膚の日焼けによるダメージ、ニキビ、および耳の炎症等の細菌による炎症に関係する症状の一部を緩和するのに役立つ。この症例リストは全てを網羅するものではない。
【0049】
本発明の様々な実施態様は、添付の図面に言及する実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】器具プリフォームの平面図である。
図2図1に示される器具プリフォームの位置Aからの側面図である。
図3図1に示される器具プリフォームの底面図である。
図4】本発明の第2態様の未硬化ゴムの2つの帯体が取り付けられた後(すなわちステップiii後)の図1に示される器具プリフォームの底面図である。
図5図4に示される実施例のC−C線に沿った断面図である。
図6図4に示される実施例のC−C線に沿った断面図であるが、未硬化ゴム組成物の2つの帯体が患者の歯と第2層に成形されて硬化された後(すなわちステップiv後)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1から図6に示される器具プリフォーム1(器具の母材)は、軟化点が約190℃であり、商業的に入手できる実質的に透明なポリカーボネートで形成された、それぞれ約1.5mm厚の2つの第2層3を含んでおり、第1表面8、第2表面4、およびそれらの境界を画定するそれら表面間の壁部10を有している。第2層3は使用時にバイトプレートを形成する。第2表面4から第1表面を離れるように延びているのは、第2層3と一体的に形成された突起部5である。その突起部は第2表面4の上方に約3mm延び出している。第2層3の実質的に平坦な第1表面8は、図4図5に示すように、第1表面8に適用され、硬化後に第1層2を提供する未硬化ゴム組成物7の2つの帯体と接触する。別実施態様ではプラスチック帯でもよいステンレス鋼ワイヤ9が2つの第2層3の間にブリッジ手段を形成している。
【0052】
第2層3には、図6に示すように、その中に未硬化ゴム帯体7の成形および硬化後に第1層2が係合して第3層3に固定されるように複数の小さな開口部が提供されている。
【0053】
図4図5に示すように、器具プリフォームおよび未硬化ゴム7の2つの帯体が、患者が口を開いて未硬化ゴムが患者の下顎の歯に配置され、未硬化ゴムが歯と接触し、突起部5が両方の第1臼歯の上に配置される方法によって患者に装着できる。患者はその後、上顎の歯が突起部5の上端に接触するまで穏やかに下顎を持ち上げる必要がある。続いて患者は唇と食道を閉じる。飲み込み動作によって器具プリフォームと未硬化ゴム組成物に適用される圧力は未硬化ゴム組成物を変形させ、下顎の歯の形状に合わせて、第2層3の開口部6内およびその周囲に成形させる。未硬化ゴムを硬化させるために一晩、周囲温度に放置された器具は患者の口から注意深く取り出すことができる。ゴム組成物が硬化すると余分のゴム組成物は患者の口内に快適にフィットするまでナイフまたは剃刀で切り取られる。
【0054】
器具のフィッティングは歯科技工士の手を煩わさずとも、あるいは特別な加工施設での特注成形をせずとも、医師または歯科医によって、または第三者の補助なく患者自身によって容易に実行できる。
【0055】
未硬化ゴム組成物が硬化し、余分が切り取られたら、本発明の器具は顔面老化を抑制するために患者によって使用できる。
【0056】
顔面老化及び/又は口内の異常機能活動を抑制するプロセスは、未硬化ゴムが硬化し、余分が切り取られたら直ちに開始できる。
【0057】
1実施態様では、患者は本発明の器具を口内に、好適には食事の直前に配置する。続いて患者は、例えば食事中または睡眠中に、下顎を持ち上げ、上顎の歯を突起部と接触させ、続いて上顎と下顎の歯を器具周囲で閉じることで下顎を運動させる。そうすることで下顎は保護部周囲で少々旋回され、下顎を動かす顔面筋肉を強く作用させる。そうすることで筋肉は弛緩され、下顎は降下する。好適には運動は1日に約6時間から7時間のペースで約6週間反復される。
【0058】
器具プリフォームは、例えば、注入器またはブリスター包装体内に未硬化ゴム組成物を含んだ単パック組成物と共に、または、共同で混合されて未硬化ゴム組成物を形成する2つの組成物を含んだ2パック組成物と共に、さらにオプションで、本発明の器具を作るための説明書のセットと共にキット形態の部分として梱包できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6