(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
本教示は、以下の詳細な説明と添付図面とから、より完全に理解されるだろう。
【0011】
【
図1】
図1は、従来技術に係る3部品型ラビニヨキャリアアセンブリの斜視図である。
【
図2】
図2は、例示的な本開示の様々な態様に係るカバー部材に固定されているキャリア部材を有するラビニヨキャリアアセンブリの斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、スリーブ部材とブレーキハブとをさらに含む
図2のキャリアアセンブリの第1の斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、スリーブ部材とブレーキハブとをさらに含む
図2のキャリアアセンブリの第2の斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、焼結前の蝋付け材料保持開口部内に保持されている蝋付けペレットを示す、線5−5に沿った
図3Bの部分断面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図1の従来技術に係る3部品型ラビニヨアセンブリの部分断面図を示す略図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の様々な態様に係る
図2の2部品型ラビニヨキャリアアセンブリの部分断面図を示す略図である。
【
図7】
図7は、カバープレートから延びる一体的なカバー脚部を有するカバープレートを含む粉末金属カバー部材の斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、例示的なスラストワッシャを有する
図7の粉末金属カバー部材の平面図である。
【
図8C】
図8Cは、スラストワッシャからの鉤爪を受け入れる前と受け入れた後の、保持機構を示す、線C−Cに沿った
図8Aの部分断面図である。
【
図8D】
図8Dは、スラストワッシャからの鉤爪を受け入れる前と受け入れた後の、保持機構を示す、線D−Dに沿った
図8Aの部分断面図である。
【
図8E】
図8Eは、スラストワッシャからの鉤爪を受け入れる前と受け入れた後の、保持機構を示す、線E−Eに沿った
図8Aの部分断面図である。
【
図9】
図9は、キャリアプレートから延びる一体的なキャリア脚部を有するキャリアプレートを含む粉末金属キャリア部材の斜視図である。
【
図11】
図11は、本開示の教示の様々な態様に係る例示的なスリーブ部材の平面図である。
【
図13】
図13は、スリーブ部材をさらに含む、
図9の粉末金属キャリア部材の底面図である。
【
図14】
図14は、キャリア部材の上に配置されているカバー部材をさらに含む、
図13のアセンブリの底面図である。
【
図15】
図15は、圧縮動作を示す、例示的な粉末金属ダイプレス(powder metal die press)の略図である。
【
図16】
図16は、圧粉体の半径方向の膨張を伴う、ダイの一部分の下降を示す、
図15の粉末金属ダイプレスの略図である。
【0012】
本明細書で説明される図面は、特定の態様の説明のために、本技術の方法及び装置の特徴のうち、方法及び装置の概略的な特徴を例示することを意図していることに留意されたい。これらの図は、示された態様のあらゆる特徴を必ずしも詳細に反映しているわけではなく、且つ、本技術の範囲内の特定の実施形態を画定又は限定することを必ずしも意図しているわけではない。さらに、特定の態様は、図面の組み合わせからの特徴を組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
遊星キャリアアセンブリは、変速機、特に自動車の自動変速機の様々なピニオン歯車と構成部品とを収容するために使用することができる。様々な態様において、本技術は概して、実質的に平らな主要表面を画定する本体部分と、焼結前に未焼結状態において本体部分に形成されて少なくとも3つの互いに半径方向に離間させられた保持機構とを含む、変速機用の粉末金属構成部品を提供する。各保持機構は、本体部の主要表面に隣接した上部領域と、曲率半径を画定する下部領域と、の間を延びて成形構造を有する画定された穴を含むことができる。各穴は、2つの互いに対向する実質的に平行な側壁と、実質的にU字形の底部部分と、によって画定することができる。このU字形の底部部分は、2つの傾斜した底部壁を連結する曲率半径を画定する中央領域を含むことができる。様々な態様において、これらの保持機構は、ダイモールド金型(die mold)から取り外すときの亀裂の発生を最小化するために、互いに協働するように成形され設計されている。
【0014】
これに関連して、同一の軸線に沿って、かつ互いに異なる回転速度で運動する互いに隣接する変速機構成部品間における低摩擦性を維持するために、耐摩耗性のスラストワッシャのような径方向部材(radial member)や軸受部材を、変速機アセンブリの少なくとも1つの粉末金属構成部品に連結することが有利である。スラストワッシャの鉤爪は、粉末金属構成部品内に画定されている保持開口部によって受け入れられて保持される。本技術は、部分的には、例えば焼結前の圧粉体の状態であるときに、カバー部材のような粉末金属構成部品の内部に画定される形成ネットシェイプ成形保持機構(formation net-shaped retention feature)の構造に焦点を当てる。
【0015】
様々な態様において、遊星キャリアアセンブリは、2つの主要な焼結金属構成部品を備える。例えば、キャリアアセンブリの第1の主要構成部品は、キャリアプレートから延びる複数のキャリア脚部を有するキャリアプレートを含む粉末金属キャリア部材を備えることができる。第2の主要構成部品は、カバープレートから延びる複数のカバー脚部を有するカバープレートを含む粉末金属カバー部材を備えることができる。
【0016】
特定の態様では、キャリア脚部のそれぞれの端部とカバー脚部の端部とは、互いに整列されると共に蝋付けされるように、概ね配置されていることが望ましい。様々な構成では、キャリア部材をカバー部材に接合することが、様々なピニオン歯車を収容するように構成されているキャリアアセンブリの内部を画定し、スリーブ部材をキャリアアセンブリに接合することが、ブレーキハブや他の補助部材のような他の構成部品のための取り付け点を提供する。
【0017】
本技術は、ラビニヨ遊星歯車構造を含む様々な遊星歯車列及びアセンブリと共に使用することができる。背景的情報としては、ラビニヨ遊星歯車構造は、様々なギヤ比を実現するための自動変速機で使用可能であり、共通キャリアを共有する2段(two tiers)又は2組(two decks)のピニオンギヤを含む。
図1は、例示的な従来技術の3部品型ラビニヨキャリアアセンブリ20の斜視図である。図示されているように、この典型的な従来技術のキャリアアセンブリ20は、概して、支持部材22と、円筒形シェル又はドラム24と、バッキングプレート又はエンドプレート26とを含む。
【0018】
図2は、本開示の様々な態様による粉末金属カバー部材54に固定されている粉末金属キャリア部材52を有する、例示的な2部品型ラビニヨキャリアアセンブリ50の斜視図である。
【0019】
様々な態様において、キャリア部材52は、単体の一体型の構成部品(即ち、1つの構成部品として形成されている)であってもよく、キャリアプレート56と一体化されて角度方向に互いに離間された複数のキャリア脚部58を含んだ実質的に円形のキャリアプレート56部分を含む。キャリア脚部58は、実質的に均一な長さを備えており、自由端部60まで延びている。例えば、キャリアプレート56の外面56a(
図9参照)とキャリア脚部58の自由端部60との間の距離は、互いに間隔を空けた各キャリア脚部58において概ね同一であってもよい。キャリアプレート52の形状及び設計と同様に、様々な態様において、カバー部材54は、単体の一体型の構成部品(即ち、1つの構成部品として形成されている)であってもよく、カバープレート62と一体化された角度方向に互いに離間された複数のカバー脚部64を含んだ実質的に円形のカバープレート62を含む。カバー脚部64は、自由端部66まで延びる均一な長さを備えてもよい。例えば、カバープレート62の外面62a(
図7参照)とカバー脚部64の自由端部66との間の距離は、互いに離間した各カバー脚部64において概ね同一であってもよい。2部品型のキャリアアセンブリ50は、キャリア脚部58のそれぞれの端部60とカバー脚部64の端部66とが少なくとも部分的に互いに整列させられており、且つ互いに対して固定されるように、概ね構成されている。様々な態様において、そのそれぞれの端部は、非限定的な例として、適切な蝋付け材料を使用して焼結プロセス中に形成される蝋付け接合部によって互いに接合されている。キャリア部材52とカバー部材54との配置は、様々なピニオンギヤと関連構成部品とを収容するように構成されるキャリアアセンブリ50の内部80(
図5A、
図5B参照)を画定する。
【0020】
図2及びそれに関連する説明は或る選択された実施形態に関するものであり、全体的な機能、目的、及び動作に影響を与えること無くその設計に対して様々な変更を加えることができる。特定の態様では、例えば脚部は、サイズ、形状、及び/又は、長さが全体的又は部分的に不均一であってもよいが、依然として2部品型キャリアアセンブリを形成する。さらに、キャリア部材52とカバー部材54とは、一体型の単体の構成部品であることが好ましいが、キャリア部材52又はカバー部材54の少なくとも一部分が、互いに機械的に(又は、他の形で)締結され、固定され、又は、他の形で互いに接合された2つ以上の構成部品を備える特定の望ましい態様が存在してもよい。
【0021】
粉末冶金技術は、金属粉末から材料又は構成部品を製造する際の様々な方法を範囲内に含む。したがって、特定の又は所望の最終用途にあわせて本技術の粉末金属組成を調整することができる。様々な態様において、キャリア部材52とカバー部材54とは、同一の又は実質的に同じ粉末金属組成を有することが可能である。他の態様では、キャリア部材52とカバー部材54とは、互いに異なる粉末金属組成を有することが望ましいことがある。
【0022】
様々な態様において、キャリアアセンブリ50は、さらに、自動車変速機の機能と共に協働する補助的構成部品を含むことが望ましい場合がある。限定するものではない補助構成部品の例としては、スリーブ、ブレーキハブ、クラッチ、一方向クラッチ、レース(race)、及び軸受等が挙げられる。したがって、キャリアアセンブリ50は、キャリア部材52とカバー部材54の一方又は両方に固定される少なくとも1つの補助構成部品を含んでもよい。補助構成部品は、複数の部品又は組み合わされた構成部品を含むことができることを理解されたい。特定の態様では、補助部材は、蝋付け接合部又は溶接を使用して取り付けることができる。
【0023】
図3Aは、上側を向けたキャリア部材52と共に示された環状スリーブ部材68と、環状ブレーキハブ70と、をさらに含む
図2のキャリアアセンブリ50の第1の斜視図である。
図3Bは、上側を向いたカバー部材54と共に示されたスリーブ部材68と、ブレーキハブ70と、をさらに含む
図2のキャリアアセンブリ50の第2の斜視図である。
図4は、
図2及び
図3のラビニヨキャリアアセンブリ50の分解斜視図である。
【0024】
様々な態様において、スリーブ部材68は、蝋付け接合部又は溶接によってキャリアアセンブリに固定され得る。蝋付け接合部を使用する場合には、スリーブ部材68は、概して、焼結プロセスの温度に耐えることができなければならない。
図5Aは、焼結前において蝋付け材料保持開口部77内に配置されると共に保持される蝋付けペレット75のような例示的な蝋付け材料を含んだキャリアアセンブリ50の追加的な詳細部分を示す、線5−5に沿った
図3Bの部分断面図である。
図5Bは、蝋付け材料が毛細管現象によって分散させられて、キャリア部材52の一部分と、カバー部材54の一部分と、スリーブ部材68の一部分と、の間に蝋付け接合部78を形成した焼結プロセス後の
図5Aの部分断面図を示す。
図5Aには、完全を期すためにブレーキハブ70を示しているが、ブレーキハブ70や他の任意の補助部材は、焼結プロセス後に取り付けられてもよい。
【0025】
図5A及び
図5Bに詳細に示されているように、スチール製のスリーブ部材68の内周部72に隣接している領域106の少なくとも一部分が、それぞれのキャリア脚部58とカバー脚部64との自由端部60、66に隣接したキャリアアセンブリ50に固定されている。したがって、キャリア部材54は、スリーブ部材68とカバー部材54との両方の一部分に接合されている。図示されているように、キャリア脚部58のそれぞれの端部60と、カバー脚部64の端部66とは、単一の平面内に配置されている蝋付け接合部78によって、互いに整列させられ、且つ、互いに対して固定されている。特定の態様では、本明細書ではスチール製のスリーブ部材68である補助構成部品が、さらに、同一の単一平面内において、蝋付け接合部78によってキャリアアセンブリ50に固定されていてもよい。図示されているように、キャリア脚部58及びカバー脚部64のそれぞれが、互いに実質的に面一に整列させられたそれぞれの内面、すなわち内側壁58a、64aと、蝋付け平面の位置において互いからオフセットされたそれぞれの外面、すなわち外側壁58b、64bと、を画定し、このことが、補助部材のための適切な接合面を提供するだろう。
【0026】
特定の態様では、キャリア脚部58及びカバー脚部64の少なくとも1つが、焼結の前に適切な蝋付け材料を内部に配置することが可能な蝋付け材料保持機構(図示せず)を画定してもよい。例えば、キャリア脚部58の端部60、又は、カバー脚部64の端部66は、蝋付け材料を所定の位置に保持するために適したこれらの内部に画定されている小さな開口部又は穴を含んでもよい。他の態様では、別の補助部材が、追加的又は代替的に、適切な蝋付け材料保持機構を提供してもよい。さらに別の態様では、脚部58、64の一部分が、焼結プロセス中に、蝋付け材料を適切な接合領域に案内するように成形されていてもよい。
【0027】
キャリア部材52とカバー部材54との配置は、少なくとも部分的に、複数のピニオンギヤと様々な他の関連構成部品とを収容するように構成されたキャリアアセンブリ50内の内部空洞80を画定する。キャリア部材52及びカバー部材54の形状は、多くの変形を含んでもよいことを理解されたい。例えば、特定の設計では2つの実質的に互いに平行な平面66、67を画定するカバー部材54の底部が示されているが、自由端部66が平面67と整列させられるように1つの平面だけがあってもよい。様々な態様において、キャリアアセンブリ50は、互いに離間した4つのキャリア脚部58のそれぞれの組に接合された互いに離間した4つのカバー脚部64を含んでもよい。
図5A及び
図5Bに示されるように、環状ブレーキハブ70の内周部82は、例えば溶接接合部84又は同等の締結機構によって、スチール製のスリーブ部材68の外周部74に固定されていてもよい。特定の態様では、スチール製のスリーブ部材68は、焼結プロセスの後に、再成形され、及び/又は、ブレーキハブ70に圧入されてもよく、且つ、その後に、この2つの構成要素が、アセンブリを形成するように互いに溶接されてもよい。
【0028】
図6Aは、
図1の従来技術による3部品型ラビニヨアセンブリの部分断面図を示す概略図である。比較のために、
図6Bは、本開示による
図2の2部品型ラビニヨキャリアアセンブリの部分断面図を示す概略図である。この両方の概略図は、同一のサン軸線36を共有する同一の大きなサンギヤ28と小さいサンギヤ30と、同一の長いピニオン軸線36上のピニオンギヤ34と、短いピニオン軸線40上の短いピニオンギヤ38とを有する構成を示す。
【0029】
図7は、カバープレート62から延びてそれと一体化されたカバー脚部64を有するカバープレート62のような本体部分を含んだ例示的な粉末金属カバー部材54の斜視図であり、
図8Aは、
図7の粉末金属カバー部材54の平面図である。本体部分、すなわちカバープレート62は、半径Rを画定すると共に、面取りされているか又は湾曲したエッジ86を含む平らな実質的に平面状の主要表面、すなわち外面62aを有した実質的に円形の形状を備えることができる。様々な態様において、湾曲したエッジ86は機械加工によって形成することができる。カバー脚部の様々な内側壁64aは、ピニオンギヤと他の構成部品を収容するように湾曲させることができ、又は形作ることができる。脚部64の外側壁64bは、外面62aのエッジ86と実質的に整列させられてもよい。カバープレート62は、粉末金属製造プロセス中に、又は、その後に機械加工される形で、様々な開口部とその開口部内に形成された他の機構を有する形に形成されてもよい。例えば、角度方向に離間された第1の複数の開口部88を、長いピニオンギヤ34のピニオンシャフト(図示せず)のために設けることができる。同様に、角度方向に離間された第2の複数の開口部90を、短いピニオンギヤ38のピニオンシャフトのために設けることができる。図示されているように、第2の複数の開口部90は、カバープレート62とカバー脚部64との両方を貫通しており、一方で第1の複数の開口部88は、カバープレート62だけを貫通している。開口部93、95のような追加的な保持機構を設けることもできる。所望の設計に応じて、カバー部材54の他の構成も使用されてもよいということを理解されたい。
【0030】
上述したように、同一の軸線に沿って、かつ互いに異なる回転速度で運動する互いに隣接する変速機構成部品間における摩擦を減少させるか又は低摩擦性を維持するために、変速機アセンブリの少なくとも1つの粉末金属構成部品、例えばカバー部材54の本体部分62に、半径方向部材又は軸受部材を連結することは有益である。様々な態様において、半径方向部材は、互いに異なる速度で回転する2つの構成部品を分離させるように、及び/又は、半径方向及び軸方向の荷重を支持するように構成された任意の公知の構成部品であり得る。一例では、この半径方向部材は耐摩耗性のスラストワッシャとすることができる。他の例では、これらの構成部品間に軸方向の力がある場合であれば、この半径方向部材は、スラスト軸受用のレース(race)とすることができる。この点に関して、
図8Bは、1組の延長部分を有する例示的な半径方向部材として機能する耐摩耗性のスラストワッシャ110、又は、1組の保持機構を介してカバー部材54に連結されている鉤爪112を有する、
図7の粉末金属カバー部材54の平面図である。本明細書で説明するように、カバー部材54の本体部分の実質的に平らな主要表面62aに形成され、半径方向に間隔を置いて配置される少なくとも3つの保持機構は、スラストワッシャ110に対して垂直に特定の距離を延びる協調鉤爪(coordinating claw)112を受け入れると共に、この鉤爪と結合するために十分なものでなければならないと予想される。同時に本技術は、カバー部材が圧粉体として形成されている間、すなわち焼結プロセスの前に、カバー部材内において面形成される(face-formed)か、又はネットシェイプ成形される(net-shaped)ことが可能に成形された保持機構93を提供する。
図8Aと
図8Bは、スラストワッシャ110と共同回転運動するように適切にサイズ決定され、かつ配置され、等間隔に、かつ半径方向に互いに離間させられた4つの保持機構93を有する一例を示す。
【0031】
保持機構93のネットシェイプ成形は、焼結プロセス後の追加的な機械加工作業の必要性を最小限にするだろう。亀裂の危険性の増大させることなく、又は、圧粉体の形成に使用されることがある様々な工具又はプレス/モールド構成部品に潜在的に不具合を生じさせることなく、圧粉体で形成可能なように保持機構93を設計するよう注意が払われなければならないことを理解されたい。
図8Aと
図8Bは、例示的なスラストワッシャ110の相補的な鉤爪112を受け入れるように整列された保持機構93を具体的に示す。様々な態様において、保持機構は、応力減少区域又は低応力区域の本体部分の領域内に位置している。図示されているカバー部材54の例では、各保持機構93は、カバー脚部64に隣接した領域内に形成/プレス成形され、この領域は、延長カバー脚部64を持たない本体部分の他の領域に比べて、より厚い領域を備えてもよい。
【0032】
保持機構93の追加的な詳細部分に関して、
図8Cと
図8Dと
図8Eは、スラストワッシャ110から鉤爪112を受け入れる前と受け入れた後の保持機構をそれぞれ示す
図8Aの線C−C、D−D、E−Eに沿った部分断面図である。各保持機構は、本体部分の中にプレス成形されて、長さ寸法L(
図8C)と、幅寸法W(
図8E)と、深さ寸法D(
図8E)と、を画定することができる。
図8A及び
図8Cを参照すると、長さ寸法Lは、本体部分の半径Rと実質的に整列させられた縦軸線に沿って延びている。図示されているように、保持機構93は、主要表面、すなわち外面62aに隣接した上部領域114と、下部領域116と、の間を延びる成形構造を有する穴として画定することができる。様々な態様において、下部領域116は、曲率半径118によって画定することができる。上部領域114は、
図8Eに最も適切に示されているように、面取りされた端縁、すなわち曲率半径118を有することもできる。
図8Eは、2つの互いに対向する実質的に平らな側壁122によって画定されている穴を示す。
図8Cと
図8Dは、例えば、曲率半径118によって画定されている中央部分124と、中央部分124に連結されているか又は中央部分124から延びる2つの傾斜した底部壁126とを含む、実質的にU字形の底部を示す。様々な態様において、この2つの傾斜した底部壁126が働きあって、角度αを画定する。非限定的な例としては、これらの図は、約90度の角度αを示しており、各底部壁は、主要表面から概ね約45度の角度で傾斜している。様々な態様において、αに関して90度よりも大きい寸法を有する角度は、工具又は部品の亀裂の危険性をさらに最小化するか又は防止することができるために好ましいだろう。しかしながら、より広い角度は、所望の深さを満足するためには主要表面62aに追加的な空間/表面積の使用を必要とすることがあることを理解されたい。さらに別の態様では、鉤爪のそれぞれの寸法や、本体部分の厚さ、他の開口部等に対する保持機構93の近さ等に応じて、90度未満の角度が好ましい場合がある。
【0033】
図9は、キャリアプレートから延びてそれと一体化されたキャリア脚部58を有するキャリアプレート56部分を含んだ例示的な粉末金属キャリア部材52の斜視図であり、
図10は、
図9の粉末金属キャリア部材52の底面図である。キャリアプレート56は、平らなウェブ表面を有するか、又は、低下させられているか又は傾斜したエッジ92を含む外面56aを有する、概ね円形の形状を備えることができる。様々な態様において、エッジ92は機械加工によって形成することができる。キャリア脚部58の様々な内側壁58aは、ピニオンギヤと他の構成部品とを収容するように湾曲させることができ、又は形作ることができる。脚部58の外側壁58bは、外面56aのエッジ92と概ね整列させられており、互いに離間されたスプライン94を任意に含んでもよい。キャリアプレート56は、粉末金属製造プロセス中に、又は、その後の機械加工中に、様々な開口部と、その中に形成されている他の機構とを伴う形で形成されてもよい。例えば、角度的に互いに離間された第1の複数の開口部96は、長いピニオンギヤ34のピニオンシャフト(図示せず)のために設けることができる。同様に、角度的に互いに離間された第2の複数の開口部98は、短いピニオンギヤ38のピニオンシャフトのために設けることができる。図示されているように、キャリア脚部58の内側壁58aが第2の複数の開口部98の周りに形成されているので、第1及び第2の複数の開口部96、98は、キャリアプレート56だけを貫通している。キャリア部材52の他の構成も、設計に応じて使用されてもよいということを理解されたい。
【0034】
図11は、本開示の教示の様々な態様に係る例示的なスチール製のスリーブ部材68の平面図であり、
図12は、
図11のスリーブ部材68の底面図である。
図13は、複数のキャリア脚部58の端部60に整列させられると共に、これらの端部60上に配置されているスリーブ部材68を含む、
図10のキャリア部材52の底面図である。
図14は、キャリア部材52の上方に配置されているカバー部材54をさらに含む、
図13のアセンブリの底面図である。
【0035】
図11から
図14を参照すると、スリーブ部材68は、内周部72と外周部74とを画定する。内周部72は、ピニオンと他の構成部品とを収容するために、所定の曲率半径を持つ特定の領域を有するように形成することができる。スリーブ部材68の外周部74には、追加的な強度を実現し、且つ、上述したブレーキハブ70のような他の構成部品に溶接するために使用することが可能な延長環状端縁部分104を設けることができる。内周部72と外周部74との間の領域106の一部分は、
図5Bに示されるように、スリーブ部材68をキャリア脚部58に固定するために使用することができる。内周部72は、蝋付け材料保持開口部77を形成するために他の構成部品と協働する蝋付け材料保持機構として構成され得る切り抜き部分102を伴う形で、成形されるか又は打ち抜かれてもよい。例えば、
図3B、
図5A、
図5B、及び
図14に最も適切に示されているように、複数の蝋付け材料保持機構102は、組み立てられた状態で、キャリア部材52及びカバー部材54と協働して、単一の平面内に蝋付け接合部78を形成する焼結プロセスの前に、単一の平面に隣接して蝋付け材料を保持する形状及び寸法の保持開口部77を画定する。
図13及び
図14に示されているように、特定の態様では、少なくとも2つの互いに間隔を置いて配置された蝋付け材料保持機構102は、整列させられたキャリア脚部及びカバー脚部のそれぞれの組ごとに設けても良い。蝋付け材料保持開口部77の位置と個数は、設計及び強度の要件に基づいて変化させてもよい。
【0036】
さらに別の態様では、本教示は、複数のネットシェイプ成形保持機構を内部に有する様々な粉末金属構成部品を形成するための方法を提供する。この方法は、適切な粉末金属混合物をダイモールド金型又はプレス金型に充填することを含むことができる。この充填が完了した後に、この方法は、圧粉体部品を成形するために粉末金属混合物に圧力を加えることを含むだろう。様々な態様では、この部品は、圧粉体の主要表面に画定される少なくとも3つの互いに離間させられた保持機構を含むように成形されるだろう。詳細に上述したように、各保持機構は、2つの互いに対向する実質的に平行な側壁と、実質的にU字形の底部部分と、によって画定される穴を含むことができる。
図15は、例示的な粉末金属ダイプレスアセンブリ(powder metal die press assembly)130の基本的な概略図であり、圧縮作業を示している。粉末金属構成部品の最終形状を調整するために、圧力印加前、圧力印加後、又は、圧力印加中に、様々な工具をダイ金型(die)の中に挿入することができる。例えばプレス130は、ダイ金型構成部品132と、前部又は頂部工具部分134、リブ工具部分136、及び脚部工具部分138のような非限定的な機構を含むことができる。頂部工具部分134は、プレスされた圧粉体部品140に保持機構93を成形及び形成する働きをする複数の突起135を含むことができる。矢印で示されているように、圧粉体部品140に加えられる圧力は、部品140からダイ金型及び工作機械設備に対する半径方向の圧力の作用をもたらす。
【0037】
本技術に係る方法の1つの重要な考察は、例えば、分離工程の間に部品とダイ金型との間の干渉によって部品とダイ金型との分離が妨害されることがないように、部品をダイ金型から分離させるための、部品がプレス状態から釈放状態に至る経路である。圧縮が完了した後に、この方法は、ダイ金型の少なくとも一部分を開くことと、圧粉体が半径方向に膨張することを可能にすることとを含むだろう。このことは、圧粉体部品140に関してダイモールド金型又はアセンブリ130の一部分を上昇又は下降させ、又は、さらには取り外すことを含むだろう。好ましくは、この膨張は、各保持機構のそれぞれの縦軸線(
図8Aに示す)と整列した方向に生じる。この点に関して、圧粉体部品と、ダイモールド金型から延びる突起135との間に、最小限の干渉が生じる。
図16は、
図15の粉末金属ダイプレスの概略図であり、ダイ金型132の一部分の下降を示すと共に、さらに圧粉体の半径方向の膨張を示している。これらの図は本質的に概略的であり、膨張が生じる度合いは、設計に対して及び設計に関連して重要であることが理解されるべきであり、また亀裂の潜在的な伝播及び他の工作機械設備の問題に関連して、これらの図は、この技術を理解することを容易にするために、サイズ的に僅かながら誇張されていることがある。
【0038】
図17は、
図16の部分拡大図であり、亀裂142の潜在的可能性、又は、工具及び/又は部品の不具合を引き起こすか又は増大させることがある実質的に円筒形の突起135を有する従来技術のダイモールド金型を表す。
図18は、
図16の部分拡大図であり、本技術の様々な態様に係る保持機構を形成するように成形された突起135を含む。様々な態様では、本技術の突起は、プレスされた圧粉体が各保持機構のそれぞれ縦軸線と整列されている半径方向に膨張することを可能にし、このことが、ダイモールド金型の一部分が保持機構の底部壁に摺動可能に係合することを可能にする。こうした摺動可能な係合、又は、角運動は、特に部品の分離及び排出工程中に、亀裂と不具合とを最小限にすることを補助するだろう。部品140は、アセンブリ130から取り外された後に、既知のパラメーターにしたがって焼結されてもよい。
【0039】
上述の説明は、例示と説明を目的として提示されており、本開示と本開示の適用又は使用を限定することは全く意図されていない。上述の説明は、排他的であることを意図しておらず、又は、この開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個別的な要素又は特徴は、一般的に、その特定の実施形態だけに限定されず、明確に示されないか又は説明されない場合であっても、適用可能である場合には、相互交換可能であり、選択された実施形態において使用することが可能である。さらに、特定の実施形態の個別的な要素又は特徴は様々な形で変化させられてもよい。こうした変形は、本開示からの逸脱と見なされてはならず、こうした変更のすべては、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【0040】
本明細書で使用する場合に、語句「A、B、及び、Cの少なくとも1つ」が、非排他的な論理「又は(or)」を使用して、論理(A又はB又はC)を意味すると解釈されなければならない。方法の様々な段階が、本開示の原理を変更することなしに、異なる順序で実行されてもよいということを理解されたい。範囲(range)の開示が、終点(endpoint)を含む、すべての範囲と、範囲全体内の細分化された範囲(subdivided range)との開示を含む。
【0041】
本明細書で使用される(「背景技術」及び「発明の概要」のような)見出しと副次的な見出しとが、本開示内の論題の概略的な編成のためのものであるにすぎないことが意図されており、技術の開示又はそのあらゆる態様を限定することは意図されていない。上述した特徴を有する複数の実施形態の詳述が、追加の特徴を有する他の実施形態、又は、上述した特徴の様々な組合せを含む他の実施形態を排除することは意図されていない。
【0042】
本明細書で使用される場合に、術語「備える(comprise)」及び「含む(include)」とその変形とが、非限定的であることを意図されており、したがって、連続した項目又はリストの詳説が、本技術の装置及び方法において有用であってもよい他の類似の項目の排除ではない。同様に、術語「可能である(can)」と「してもよい(may)」とこれらの変形とが非限定的であることを意図されており、したがって、一実施形態が特定の要素又は特徴要素を備えることが可能であるか又は備えてもよいという詳述は、これらの要素又は特徴要素を含まない本技術の他の実施形態を排除するものではない。
【0043】
本開示の広範な教示が、様々な形態で具体化されることが可能である。したがって、本開示が特定の具体例を含むが、他の変更が、本明細書と後述する特許請求項との検討から当業者に明らかになるので、本開示の真の範囲がそのように限定されてはならない。1つの側面又は様々な側面に対する本明細書における言及が、実施形態又は特定のシステムに関連して説明されている特定の特徴要素、構造、又は、特徴が、少なくとも1つの実施形態又は側面に含まれているということを意味する。語句「一態様では(in one aspect)」(又は、その変形)の出現が、同一の態様又は同一の実施形態を必ずしも意味するものではない。さらに、本明細書で説明されている様々な方法の段階が、説明されている順序と同じ順序で必ずしも行われなくともよく、及び、方法の段階の各々が、各々の態様又は実施形態において必ずしも必要とされるわけではない。