特許第6431175号(P6431175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6431175飲料用セラミックフィルタ及び該飲料用セラミックフィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6431175
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】飲料用セラミックフィルタ及び該飲料用セラミックフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20181119BHJP
   A47J 31/02 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   A47J31/06
   A47J31/02
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-254969(P2017-254969)
(22)【出願日】2017年12月28日
【審査請求日】2018年2月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年7月3日、株式会社LEAFにて販売。 (2)平成29年8月7日、https://www.youtube.com/watch?v=1dLD1cV0kUgのURLにて電気通信回線を通じて公開。 (3)平成29年8月31日、https://www.youtube.com/watch?v=eoN08DECYlYのURLにて電気通信回線を通じて公開。 (4)平成29年8月31日、https://www.youtube.com/watch?v=wk5ffNrwoMYのURLにて電気通信回線を通じて公開。 (5)平成29年9月1日、http://www.39arita.jp/のURLにて電気通信回線を通じて公開。 (6)平成29年9月20日〜9月22日、東京国際展示場で開催されたSCAJ ワールドスペシャルティコーヒーカンファレンス アンド エキシビジョン 2017にて公開。 (7)平成29年10月4日、合同会社Cafendがhttps://cafend.net/coffee−cerafilter/のURLにて電気通信回線を通じて公開。 (8)平成29年10月17日、株式会社TABI LABOがhttp://tabi−labo.com/284294/39−aritaのURLにて電気通信回線を通じて公開。 (9)平成29年10月17日、株式会社MDLがhttps://www.rakuten.co.jp/bluegiraffe/のURLにて電気通信回線を通じて公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518002376
【氏名又は名称】三河 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】三河 傑
【審査官】 西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−053279(JP,A)
【文献】 特開昭60−132703(JP,A)
【文献】 実開昭63−175526(JP,U)
【文献】 実開昭60−161932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間が3秒〜15秒であり、
全細孔容積が0.230〜0.270cm/gであり、中央細孔直径が100〜160μmである飲料用セラミックフィルタ。
【請求項2】
椀状に形成される請求項1に記載の飲料用セラミックフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飲料用セラミックフィルタの製造方法であって、
アルミナ55〜65質量%、ベントナイト6〜12質量%、非水溶性有機微粒子6〜10質量%、水15〜30質量%が混合された混練物を得る混練工程と、
前記混練物を手作業によりフィルタ型に押し付けて一次成形物を成形する一次成形工程と、
一次成形工程において成形された一次成形物をプレス加工して二次成形物を成形する二次成形工程と、
二次成形工程において成形された二次成形物を焼成する焼成工程と、を備える飲料用セラミックフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用セラミックフィルタ及び該飲料用セラミックフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒーや紅茶等の飲料を淹れる場合に、粉状に挽いたコーヒー豆や茶葉から飲料を抽出して濾過するためにフィルタが用いられる。このような飲料用のフィルタとして、紙製のフィルタが多く用いられる。また、紙製のフィルタに代えて、多数の微細孔が形成された多孔質のセラミック製のフィルタを用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−54760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミック製のフィルタを用いた場合には、紙製のフィルタを用いた場合のように紙に含まれる成分を溶出させずに飲料を抽出及び濾過できる。また、セラミック製のフィルタは、繰り返し使用できる。更に、セラミック製のフィルタを用いて飲料を抽出及び濾過した場合には、飲料中に含まれる油分や雑味がセラミックの微細孔に吸着され、風味に優れた飲料を得られる。
【0005】
ところで、セラミック製のフィルタにおいては、微細孔の大きさが小さすぎると油分や雑味が過剰に吸着されて飲料の風味が低下してしまうと共に、フィルタに目詰まりが生じやすくなる。一方、微細孔の大きさが大きすぎると油分や雑味が飲料に多く残存してしまいやはり風味が低下してしまう。
【0006】
従って、本発明は、目詰まりが起こりにくく、風味に優れた飲料を得られる飲料用セラミックフィルタ及び該飲料用セラミックフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、セラミックフィルタについて、特定の速度で飲料の濾過が行われるように微細孔を形成することで、風味に優れた濾過が行え、かつ、目詰まりを生じにくくできることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、90℃の湯150mlを導入した場合に係る透過時間が3秒〜15秒である飲料用セラミックフィルタに関する。
【0009】
また、飲料用セラミックフィルタは、椀状に形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間が3秒〜15秒である飲料用セラミックフィルタの製造方法であって、アルミナ55〜65質量%、ベントナイト6〜12質量%、非水溶性有機微粒子6〜10質量%、水15〜30質量%が混合された混練物を得る混練工程と、前記混練物をフィルタ型に押し付けて一次成形物を成形する一次成形工程と、一次成形された一次成形物をプレス加工して二次成形物を成形する二次成形工程と、二次成形工程において成形された二次成形物を焼成する焼成工程と、を備える飲料用セラミックフィルタの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、目詰まりが起こりにくく、風味に優れた飲料を得られるセラミックフィルタ及び該セラミックフィルタの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るセラミックフィルタ、フィルタ受け及びカップを示す斜視図である。
図2図1に示すセラミックフィルタ、フィルタ受け及びカップを分離した状態で示す斜視図である。
図3】本発明のセラミックフィルタの製造工程を示す図である。
図4】本発明のセラミックフィルタの製造工程を示す図である。
図5】実施例のセラミックフィルタの細孔分布を示す図である。
図6】比較例1のセラミックフィルタの細孔分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態のセラミックフィルタ1は、粉状に挽いたコーヒー豆や茶葉から飲料を抽出して濾過する場合に用いられる。このセラミックフィルタ1は、図1及び図2に示すように、多数の微細孔が形成された多孔質セラミックにより椀状に成形される。即ち、セラミックフィルタ1は、椀状のフィルタ全体が濾過機能を有する多孔質セラミックにより一体成形されて構成される。
より詳細には、本実施形態では、セラミックフィルタ1は、縦断面(図4(c)参照)において、底面が下方に膨出する円弧状を有し、側面がわずかに内側に湾曲した曲線状(ほぼ直線状)の内面を有する。また、セラミックフィルタ1の縦断面において、側面同士の成す角度θは、60度程度となっている。
【0014】
また、セラミックフィルタ1の厚みは、セラミックフィルタ1の強度を保つと共に、好適な濾過性能を確保する観点から、2mm〜5mmであることが好ましい。本実施形態では、セラミックフィルタ1の厚みは、2.5mmに形成される。
【0015】
セラミックフィルタ1は、90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間が3秒〜15秒の範囲である。90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間を3秒〜15秒の範囲とすることで、セラミックフィルタ1を用いて抽出及び濾過された飲料を風味に優れたものとできる。また、濾過後のコーヒー豆や茶葉等の被濾過物によりセラミックフィルタ1に詰まりが発生することを抑制できる。また、90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間は3秒〜10秒の範囲であることが好ましく、4秒〜8秒の範囲であることがより好ましい。
【0016】
また、セラミックフィルタ1は、20℃の水150mlを導入した場合にかかる透過時間が5秒〜40秒の範囲であることが好ましい。20℃の水150mlを導入した場合にかかる透過時間を5秒〜40秒の範囲とすることで、セラミックフィルタ1を用いて冷たい飲料(例えば、日本酒や水)を濾過した場合に、まろやかな味の飲料を得られる。また、20℃の水150mlを導入した場合にかかる透過時間は5秒〜20秒の範囲であることが好ましく、7秒〜15秒の範囲であることがより好ましい。
【0017】
更に、セラミックフィルタ1は、水銀圧入法により測定した細孔分布において、全細孔容積が0.230〜0.270cm/gの範囲にあり、中央細孔直径が100〜160μmの範囲にあることが好ましい。セラミックフィルタ1の微細孔を、上記の範囲となるように形成することで、セラミックフィルタ1は、より、目詰まりが起こりにくく、風味に優れた飲料を得られる。
【0018】
本実施形態のセラミックフィルタ1は、材料の配合及び製造方法を以下のように行うことで製造できる。即ち、材料の配合及び製造方法を以下のように行うことで、セラミックフィルタ1に形成される多数の微細孔のサイズ及び空隙率が適切に設定され、これにより、上記の濾過速度が実現される。
【0019】
[セラミックフィルタの製造方法]
次に、本実施形態のセラミックフィルタ1の製造方法につき、図3及び図4を参照しながら説明する。
本実施形態のセラミックフィルタ1の製造方法は、(1)混練工程、(2)一次成形工程、(3)二次成形工程、(4)乾燥工程、及び(5)焼成工程を備える。
【0020】
(1)混練工程
混練工程では、セラミックフィルタ1の材料が粘土状となるように混練される。混練工程においては、アルミナ55〜65質量%、ベントナイト6〜12質量%、非水溶性有機微粒子6〜10質量%、水15〜30質量%が混合されて混練物が得られる(図3(a)参照)。
【0021】
アルミナ、ベントナイト及び非水溶性有機微粒子としては、いずれも粉状のものが用いられる。より具体的には、アルミナは、粒径(中心粒径)が100μm〜500μmのものを用いることが好ましく、150μm〜400μmのものを用いることがより好ましく、200μm〜300μmのものを用いることが更に好ましい。
また、非水溶性有機微粒子としては、例えば粉状の結晶セルロースを用いることができる。
【0022】
本実施形態では、アルミナ55〜65質量%、ベントナイト6〜12質量%、非水溶性有機微粒子6〜10質量%、水15〜30質量%を、この範囲の配合で混合して混練物を得ることで、得られた混練物を用いて製造されたセラミックフィルタ1に好適な微細孔を形成でき、また、適切な空隙率を設定できる。特に、混練工程における非水溶性有機微粒子の含有量を6〜10質量%の範囲とすることで、製造されたセラミックフィルタ1に好適な微細孔を適切な割合で形成できる。また、水分含有量を15〜30質量%の範囲とすることで、後述の一次成形工程における一次成形を容易に行える固さに混練物を形成できる。
尚、アルミナの含有量は、58〜63質量%であることが好ましく、ベントナイトの含有量は、8〜10質量%であることが好ましい。また、非水溶性有機微粒子の含有量は7〜9%であることが好ましく、水分含有量は17〜23質量%であることが好ましい。
【0023】
(2)一次成形工程
一次成形工程では、混練工程で得られた混練物がフィルタ型に押し付けられて一次成形物が成形される。セラミックフィルタ1のフィルタ型としては、石膏製の型が用いられる。具体的には、一次成形工程では、図3(b)に示すように、セラミックフィルタ1の内側を形成する凸状の内型M1の表面に粘土状の固形の混練物が所定の厚さ(3.0〜3.5mm)となるように押し付けられる。これにより、一次成形物が成形される。
このように、一次成形工程において、固形の混練物が所定の厚さとなるように押し付けられて一次成形されることで、次の二次成形工程におけるプレス圧力を高くしすぎることなく二次成形物を成形できる。これにより、製造されるセラミックフィルタ1の水の透過性を高められる。一次成形工程におけるフィルタ型への混練物の押し付けは、人の手により行われることが好ましい。
【0024】
(3)二次成形工程
二次成形工程では、一次成形工程において成形された一次成形物がプレス加工されて二次成形物が成形される。二次成形工程では、図3(c)に示すように、一次成形工程において成形された一次成形物に対して、セラミックフィルタ1の外側を形成する凹状面を有する石膏製の外型M2が被せられる。そして、この外型M2を所定の力にて押圧して一次成形物にプレス加工が施される。
二次成形工程は、例えば、一次成形物が挟み込まれた内型M1及び外型M2を、複数セット(例えば5セット)積み重ねた状態で万力等により圧力を加えて行うことができる。二次成形工程では、1時間程度プレス加工が行われる。これにより、二次成形物が成形される。
ここで、本実施形態では、一次成形工程により一次成形物を成形した後に二次成形(プレス加工)を行うことで、プレス加工により付加される圧力を低く設定できる。これにより、成形された二次成形物中に水分を均一に存在させられるので、製造されるセラミックフィルタ1に形成される微細孔の分布を均質化できる。即ち、一次成形工程を経ずにプレス成形のみでセラミックフィルタを成形した場合には、付加される圧力をより高める必要がある。高い圧力で成形を行うと、混練物中に含まれる水分がプレス加工中に滲出することで成形物中に含まれる水分に隔たりが生じやすくなる。その結果、製造されるセラミックフィルタに形成される微細孔が均質化されにくくなる。
【0025】
(4)乾燥工程
乾燥工程では、図4(a)及び図4(b)に示すように、二次成形工程において成形された二次成形物がフィルタ型Mから取り出され、乾燥される。乾燥工程における乾燥時間は、気温や湿度等により適宜設定できる。乾燥工程における乾燥は、例えば、25℃、60%の湿度の環境において、3日程度行う。
【0026】
(5)焼成工程
焼成工程では、二次成形工程において成形され、乾燥工程において乾燥された二次成形物が焼成される。より詳細には、乾燥工程において乾燥された二次成形物には、まず、バリ仕上げが施される。バリ仕上げにおいては、二次成形物から製品に不要な部分であるバリが削り取られる。その後、バリ仕上げが施された二次成形物は、1200℃〜1300℃にて10時間〜15時間焼成される。この焼成工程において、二次成形物中に含まれる非水溶性有機微粒子が分解されて多数の微細孔が形成される。また、二次成形物中に残存する水分が蒸発することによっても微細孔が形成される。
以上の各工程を経て、セラミックフィルタ1は製造される(図4(c)参照)。
【0027】
本実施形態のセラミックフィルタ1は、図1に示すように、フィルタ受けPと共に使用される。本実施形態のフィルタ受けPは、中央部にセラミックフィルタ1が配置される穴部11が形成された板状部材により構成される。穴部11は、セラミックフィルタ1を少なくとも3点で支持すると共に、セラミックフィルタ1の外面との間に所定の隙間が形成される形状に形成される。このように、穴部11を、セラミックフィルタ1を少なくとも3点で支持すると共に、所定の隙間が形成される形状とすることで、フィルタ全体で濾過可能なセラミックフィルタ1であっても好適に飲料の濾過ができる。また、隙間から濾過された飲料を視認しやすくできる。本実施形態では、フィルタ受けPは、外形及び穴部11がいずれもハート形状に形成される。
【0028】
セラミックフィルタ1によりコーヒーを淹れる場合には、まず、セラミックフィルタ1に挽かれたコーヒー豆を入れる。コーヒー豆の挽き方は、粗挽き又は中挽きであることが好ましい。
次いで、コーヒーカップCの上にフィルタ受けPを配置し、フィルタ受けPの穴部11に挽かれたコーヒー豆が入れられたセラミックフィルタ1を配置する。この状態で、豆全体に湯がかかる程度まで一度湯を注ぎ、しばらく(例えば20秒程度)おく。その後、更に150ml程度の湯をゆっくりと注ぐ。これにより、風味に優れるコーヒーが得られる。
【0029】
以上、本発明のセラミックフィルタの好ましい各実施形態及び実施例につき説明したが、本発明は、上述の各実施形態及び実施例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【実施例】
【0030】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0031】
[実施例1]
上述の製造方法により、実施例のセラミックフィルタ(容量200ml)を製造した。
混練工程では、アルミナ(株式会社不二製作所製、製品名フジランダムA60)3065g、ベントナイト(株式会社ホージュン製、製品名穂高)465g、セルロース微粒子(旭化成株式会社製、製品名セオラスTGF−20)400g、水1070gをミキサーで混合した後、手捏ねにより混練した。
一次成形工程において、混練物を石膏製の内型の表面に手で押し付けて一次成形物を成形した。
二次成形工程において、内型の表面に成形された一次成形物に外型を被せたものを5セット積み重ねて万力にてプレス加工を施し、一時間放置した。
乾燥工程において、二次成形物をフィルタ型から外し、3日間乾燥させた。
焼成工程において、乾燥工程を経た二次成形物にバリ加工を施した後、1260℃で12時間酸化焼成し、実施例のセラミックフィルタを得た。
【0032】
[比較例1]
水の量を2620g(40質量%)とした以外は、実施例と同じ配合にて原料混合物を作製した。原料混合物は、流動性を有する泥漿状態のものであった。作製した泥漿を、圧力を付加した状態で型に注入するいわゆる圧力鋳込みにより実施例のセラミックフィルタと同形状に成形した。成形された成形品をフィルタ型から外し、3日間乾燥させた。そして、実施例と同様にバリ加工を施した後、1260℃で12時間焼成し、比較例1のセラミックフィルタを得た。
【0033】
[比較例2]
ペーパーフィルタ(HARIO株式会社製、製品名V60用 ペーパーフィルタ 02M)を、比較例2のペーパーフィルタとした。
【0034】
[細孔分布測定]
実施例1のセラミックフィルタ及び比較例1のセラミックフィルタにつき、細孔分布を測定した。細孔分布の測定は、Micromeritics社製、AutoPoreIV9520を使用し、水銀圧入法により行った。試験条件を以下の表1に示す。また、試験結果を表2に示す。また、実施例のセラミックフィルタの細孔の頻度分布を図5に、比較例1のセラミックフィルタの細孔の頻度分布を図6に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
[透過速度の測定]
実施例のセラミックフィルタ、比較例1のセラミックフィルタ、及び比較例2のペーパーフィルタそれぞれにつき、20℃の水150mlを透過させた場合、90℃の湯150mlを透過させた場合、及び粉状に挽いたコーヒー10gを入れた状態で90℃の湯150mlを透過させた場合にかかった時間(秒)を測定した。尚、透過速度の測定は、セラミックフィルタ及びペーパーフィルタを乾燥させた状態で行った。
結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
[味の評価]
実施例のセラミックフィルタ、比較例1のセラミックフィルタ及び比較例2のペーパーフィルタそれぞれにつき、表1の方法で抽出及び濾過して得たコーヒーの味を評価した。コーヒーの味は、甘味、渋味、苦味、旨味、酸味、油分の項目に分けて評価した。
尚、味の評価は、3名の官能評価により行った。具体的には、ペーパーフィルタを用いて抽出及び濾過を行って得た比較例2のコーヒーを基準として、同等の甘味、渋味、苦味、旨味、酸味、油分である場合を○、比較例2のコーヒーよりも強い甘味、渋味、苦味、旨味、酸味、油分を感じた場合を◎、比較例2のコーヒーよりも弱い甘味、渋味、苦味、旨味、酸味、油分であった場合を△とした。
結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】
表2に示すように、実施例のセラミックフィルタ1は、比較例1のセラミックフィルタに比して、微細孔の大きさ(中央細孔直径)が小さく、また、全細孔容積が大きいことが分かった。また、図5及び図6に示すように、実施例及び比較例1のセラミックフィルタでは、微細孔のサイズ分布は、中央細孔直径の近傍に集中していることが分かった。
【0042】
表3に示すように、比較例1のセラミックフィルタ及び比較例2のペーパーフィルタは、ほぼ同様の速度で水を透過させている。また、比較例1のセラミックフィルタは、比較例2のペーパーフィルタよりも若干早い速度で湯を透過させ、また、コーヒーを抽出・濾過している。
【0043】
一方、実施例のセラミックフィルタは、比較例1のセラミックフィルタ及び比較例2のペーパーフィルタに比して、5倍以上の速度で水及び湯を透過させている。また、コーヒーに関しても、実施例のセラミックフィルタでは、比較例1のセラミックフィルタ及び比較例2のペーパーフィルタに比して30%以上早い速度で抽出・濾過が行われている。
【0044】
以上より、いわゆる圧力鋳込みでセラミックフィルタを成形した場合には、水及び湯の透過速度がペーパーフィルタと同程度となり、透過速度を十分に早くできないことが確認された。これは、圧力をかけて原料の混合物を注入することで、成形物の密度が高くなり、その結果、好適な微細孔の形成が妨げられることが理由として考えられる。
【0045】
また、表4に示すように、実施例のセラミックフィルタを用いて入れたコーヒーは、甘味、渋味、苦味、旨味、酸味、油分すべての項目において、比較例2のペーパーフィルタを用いて淹れたコーヒーよりも優れ、また、甘味を除くすべての項目において、比較例1のセラミックフィルタを用いて淹れたコーヒーよりも優れていることが分かった。尚、比較例2のセラミックフィルタにおいては、甘味についてはペーパーフィルタよりも優れるものの、渋味、苦味、旨味、酸味、油分においては、ペーパーフィルタよりも弱いものとなってしまった。
【0046】
[フィルタの詰まりの評価]
実施例のセラミックフィルタ及び比較例1のセラミックフィルタにつき、粉状に挽いたコーヒー10gを入れた状態で90℃の湯150mlを透過させてコーヒーを淹れた後、セラミックフィルタを水洗いして乾燥させ、再度同様にコーヒーを淹れる作業を繰り返した。
【0047】
その結果、比較例1のセラミックフィルタでは、回数を重ねるに従って湯を透過させるのにかかる時間が増加し、2〜3回目で、湯を全量透過させることができなくなった。
一方、実施例1のセラミックフィルタでは、回数を重ねても湯を透過させる時間にほとんど変化はなく、20回繰り返した後にも、1回目とほぼ同様の速度(65秒)で湯を透過させることができた。
【0048】
以上の結果から、実施例のセラミックフィルタによれば、目詰まりが起こりにくく、風味に優れた飲料を得られることが確認された。尚、実施例のセラミックフィルタの細孔分布の数値に対して、少なくともプラスマイナス10%程度の範囲にセラミックフィルタの細孔分布を設定することで、本実施形態と同様の効果を奏するセラミックフィルタが得られる。
【符号の説明】
【0049】
1 セラミックフィルタ
10 穴部
C カップ
P フィルタ受け
【要約】
【課題】目詰まりが起こりにくく、風味に優れた飲料を得られる飲料用セラミックフィルタ及び該飲料用セラミックフィルタの製造方法を提供すること。
【解決手段】セラミックフィルタ1は、90℃の湯150mlを導入した場合にかかる透過時間が3秒〜15秒である。セラミックフィルタ1の製造方法は、アルミナ55〜65質量%、ベントナイト6〜12質量%、非水溶性有機微粒子6〜10質量%、水15〜30質量%が混合された混練物を得る混練工程と、混練物をフィルタ型に押し付けて一次成形物を成形する一次成形工程と、一次成形工程において成形された一次成形物をプレス加工して二次成形物を成形する二次成形工程と、二次成形工程において成形された二次成形物を焼成する焼成工程と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6