【実施例】
【0046】
以下、本発明について、実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではない。
【0047】
実施例1.カダベリン生産用新規リシンデカルボキシラーゼの選別
1−1.シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼの選別
カダベリン生産に活用するための新規リシンデカルボキシラーゼを選別するために、アメリカ国立生物情報センター(NCBI)で提供されるBLASTプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastn&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome)を利用して、大腸菌由来リシンデカルボキシラーゼの活性部位ペプチッド配列と、高い類似度を有する好熱性菌株由来リシンデカルボキシラーゼを検索した。具体的には、大腸菌由来リシンデカルボキシラーゼの主要アミノ酸である367番目リシンを中心に、N−末端及びC−末端に、それぞれ15個のアミノ酸を含む、総31個のペプチド配列(GRVEGKVIYETQSTHKLLAAFSQASMIHVKG:配列番号12)を基に、BLASTサーチを進めた。検索結果、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)属微生物、エンテロバクテリア(Enterobacteria)属微生物、エドワードシエラ(Edwardsiella)属微生物、クレブシエラ(Klebsiella)属微生物、セラチア(Serratia)属微生物、エルシニア(Yersinia)属微生物、ヨケネラ(Yokenella)属微生物、ラウルテラ(Raoultella)属微生物、セラチチス(Ceratitis)属微生物、サルモネラ(Salmonella)属微生物、サテレラ(Sutterella)属微生物、シンウェリア(Shimwellia)属微生物、ビブリオ(Vibrio)属微生物、シュードモナス(Pseudomonas)属微生物などが高い相同性を有すると確認された。そのうち、大腸菌のリシンデカルボキシラーゼ程度の活性を有しながら、同時に高い熱安定性を有することができるリシンデカルボキシラーゼを探索することを目的にした。一般的に、好熱性菌株中に存在するタンパク質が、熱安定性が高いと知られているので、探索された菌株のうち、好熱性(46〜60℃)微生物として知られたシュードモナス・サーモトレランスを選択した。
【0048】
1−2.多様なシュードモナス属菌株由来リシンデカルボキシラーゼの選別
シュードモナス・サーモトレランス菌株以外に、他のシュードモナス属菌株由来リシンデカルボキシラーゼを選別するために、シュードモナス種間の相同性が低い4個の菌株(シュードモナス・アルカリゲネス、シュードモナス・レジノボランス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・シンキサンタ)を選定した。米国国立生物情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で提供するnucleotideプログラム及びgenomeプログラムを利用して、前記選定された4個のシュードモナス種由来のリシンデカルボキシラーゼの遺伝子とアミノ酸配列とを確認した。
【0049】
下記表1は、それぞれシュードモナス種由来リシンデカルボキシラーゼに係わるアミノ酸配列相同性を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
PtLDC:シュードモナス・サーモトレランス(P.thermotolerans)由来リシンデカルボキシラーゼ
PaLDC:シュードモナス・アルカリゲネス(P.alcaligenes)由来リシンデカルボキシラーゼ
PrLDC:シュードモナス・レジノボランス(P.resinovorans)由来リシンデカルボキシラーゼ
PpLDC:シュードモナス・プチダ(P.putida)由来リシンデカルボキシラーゼ
PxLDC:シュードモナス・シンキサンタ(P.synxantha)由来リシンデカルボキシラーゼ
【0052】
実施例2.シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子が導入された大腸菌製造、及びそこから発現されたリシンデカルボキシラーゼ活性分析
2−1.シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子による大腸菌の形質転換
シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子の大腸菌への導入、及び大腸菌での発現のための組み換え遺伝子のクローニングを進めた。シュードモナス・サーモトレランスに係わる遺伝情報は、NCBIのGenome(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/)データ情報から確保した。
【0053】
シュードモナス・サーモトレランスの遺伝体(genomic)DNAを確保した後、それをテンプレートにした重合連鎖反応(PCR)を介して、シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子(ptldc)を増幅した。PCR遂行のために、5_LDC_NdeI(AATATACATATGTACAAAGACCTCCAATTCCCC)(配列番号13)と、3_LDC_XhoI(AATATACTCGAGTCAGATCTTGATGCAGTCCACCG)(配列番号14)とのプライマーを利用し、PfuUltra
TM DNAポリメラーゼ(stratagene社、米国)を使用して、94℃:30秒、55℃:30秒、72℃:2分の条件を30回反復した結果、増幅されたptldc(配列番号2)を確保した。また、N−末端にHis−tagを有するシュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ発現のために、プライマーとして、5_LDC_BamHI(AATATAGGATCCGTACAAAGACCTCCAATTCCCC)(配列番号15)と、3_LDC_SacI(AATATAGAGCTCTCAGATCTTGATGCAGTCCACCG)(配列番号16)とを利用して、前記PCR遂行方法と同一方法によってPCRを行った。次に、PCR遂行から得られた各ptldc遺伝子を、大腸菌発現ベクターであるpET−Deut1にそれぞれ挿入した。その後、ptldc遺伝子がクローニングされたプラスミドを、熱衝撃形質変換方法によって、大腸菌Rosettaに挿入した。形質転換された菌株を、50ml液体LB培地(50mg/mlアンピシリン含む)を利用して、37℃温度条件で培養し、OD600値が0.8に逹したとき、0.4mM濃度のイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を入れ、18℃で48時間培養して発現を誘導した。発現が完了した各シュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼ(PtLDC)は、SDS−PAGEゲル結果を介して確認した(
図2)。前記SDS−PAGEゲル結果を介して、低温で発現されたPtLDCと、His−tagが含まれたPtLDCとが可溶性タンパク質として過発現されたということを確認することができた(
図2のレーン2及びレーン4)。
【0054】
前記ptldc(配列番号2)を含むプラスミドに形質転換された大腸菌Rosetta菌株を、「Escherichia coli CC04−0055」と命名し、2014年7月24日付けで韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託し、受託番号KCCM11559Pを受けた。
【0055】
2−2.大腸菌で発現されたシュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼの活性分析
(1)リシンデカルボキシラーゼの反応性確認
PtLDCと、His−tagが含まれたPtLDCとの反応性を検証するために、可溶性タンパク質(soluble protein)50ml、100mMピリドキサールリン酸(PLP:pyridoxal-phosphate、PLP)、250mMリシンを入れ、200mlの体積で46℃で2時間反応させた。反応緩衝溶液は、50mMリン酸ナトリウム、pH6.2を使用した。空ベクターが導入された菌株を対照群(control)にし、リシンとカダベリンとの量を分析した(
図3)。高性能液体クロマトグラフィー(Waters、Milford、MA)を利用して、リシンとカダベリンとの正確な量を2414 Refractive Indes Detector(Waters、Milford、MA)で分析した。Lysine−HCl試薬と、1,5−ジアミノペンタン(カダベリン)試薬とをSigma(St.Louis、MO)から購入し、1mMクエン酸、10mM酒石酸、24mMエチレンジアミン、5%アセトニトリルで構成された移動相(mobile phase)を利用して、IonoSpher C3−100mm、5mmカラム(column)で分離し、2つの物質を分離及び定量した。対照群の場合は、カダベリンが全く生成されないということを確認することができた。N−末端に、His−tagが挿入されたPtLDCの場合には、72%のリシンを転換させ、PtLDCは、100%のリシンを転換させ、カダベリンが生成されるということを確認することができた。
【0056】
(2)温度及びpHによるリシンデカルボキシラーゼの活性分析
PtLDCの多様な温度条件(30℃、42℃、50℃、60℃、70℃及び80℃)で酵素的特性を把握するために、相対的な酵素活性(relative activity)を比較した。PtLDCを希釈し、250mMのリシン基質を使用して、60℃で30分間反応させるとき、42mMカダベリンが生成されるということを確認した。このとき使用された緩衝液は、50mMリン酸ナトリウムバッファ(pH6.2)であり、同量の酵素、及び同一反応条件で、温度条件だけ30℃、42℃、50℃、70℃及び80℃で処理し、カダベリンの濃度を分析した。そして、60℃温度反応で生成されたカダベリン量と相対的に比較した(
図4)。
図4から確認することができるように、PtLDCは、60℃で最も高い活性を示した。また、55〜65℃の温度条件では、80%以上の活性を維持すると評価された。
【0057】
追加的に多様なpH(6.2、7.0、8.0及び9.0)に対するリシンデカルボキシラーゼの活性評価を行った。温度条件を60℃に固定し、同量の酵素と同一反応条件で、50mMリン酸ナトリウムバッファ(pH6.2)、50mMトリスバッファ(pH7.0)、100mMリン酸カリウムバッファ(pH8.0)、50mMトリスバッファ(pH9.0)を利用して、それぞれ異なるpHで反応性を比較した(
図5)。pH8.0でPtLDCが最も高い活性を示したが、pH6ないしpH9の条件でも、90%以上の活性が維持されると確認された。各pH条件で生成されるカダベリン量を、pH8.0条件で生成されるカダベリン量と相対的に比較した(
図5)。実験結果を介して、PtLDCは、pH変化または高いpHに対して、高い安定性を有すると評価される。
【0058】
実施例3.シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子が導入された大腸菌製造、及びそこから発現されたリシンデカルボキシラーゼ活性分析
3−1.シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子による大腸菌の形質転換
シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子(paldc)をクローニングするために、5_PaLDC_NdeI(AATATACATATGTACAAAGACCTGAAGTTCCCCATCC)(配列番号17)と、3_PaLDC_XhoI(AATATACTCGAGTCACTCCCTTATGCAATCAACGGTATAGC)(配列番号18)とのプライマーを利用し、精製されたシュードモナス・アルカリゲネスの遺伝体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。重合酵素としてPfuDNAポリメラーゼを使用し、94℃:30秒、55℃:30秒、72℃:2分条件を30回反復してPCRを行った結果、増幅されたpaldc遺伝子(配列番号4)を確保した。
【0059】
得られたpaldc遺伝子は、前記実施例2−1と同一方法によって、大腸菌で低温発現させた後、SDS−PAGEゲルによって、その結果を確認した(
図6)。
図6から分かるように、シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼ(PaLDC)は、不溶性タンパク質としてほとんど発現され、可溶性タンパク質は、SDS−PAGEゲル上で確認されなかった(
図6、レーン1,2参照)。
【0060】
3−2.大腸菌で発現されたシュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼの活性分析
(1)リシンデカルボキシラーゼの反応性確認
PaLDCの反応性を検証するために、前記実施例3−1で得たPaLDCの細胞粉砕液(cell lysate)を13,000rpmで15分間遠心分離させて得た上澄み液(可溶性タンパク質)を利用して、リシン転換反応を行った。可溶性タンパク質50μl、100mM PLP、250mMリシンを、50mMリン酸ナトリウム(pH6.2)緩衝溶液で充填し、200μlの反応体積で46℃で2時間反応させた。その結果、70%リシンが、PaLDCによって、カダベリンに転換されたことを確認することができた(
図7)。
【0061】
(2)温度及びpHによるリシンデカルボキシラーゼの活性分析
シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼの活性のための最適温度条件を求めるために、実施例2−2のような方法によって、30℃、40℃、46℃、60℃の温度条件で酵素活性を評価した。その結果、PaLDCは、50℃で最も良好な活性を有すると確認された(
図8)。
【0062】
また、実施例2−2のような方法によって、シュードモナス・アルカリゲネス由来リシンデカルボキシラーゼのpHに対する活性条件を評価した。その結果、PaLDCは、pH8及びpH9で高い安定性を示し、pH6でも、95%以上の活性が維持されるということを確認した(
図9)。
【0063】
実施例4.シュードモナス・レジノボランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子が導入された大腸菌製造、及びそこから発現されたリシンデカルボキシラーゼ活性分析
4−1.シュードモナス・レジノボランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子による大腸菌の形質転換
シュードモナス・レジノボランス由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子(prldc)をクローニングするために、5_PrLDC_NdeI(AATATACATATGTACAAAGAGCTCAAGTTCCCCGTCCTC)(配列番号19)と、3_PrLDC_XhoI(AATATACTCGAGTTATTCCCTGATGCAGTCCACTGTATAGC)(配列番号20)とのプライマーを利用し、精製されたシュードモナス・レジノボランス遺伝体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。実施例3−1と同一の重合酵素及びPCR遂行条件でPCRを行い、増幅されたprldc(配列番号6)を確保することができた。
【0064】
得られたprldc遺伝子は、前記実施例2−1と同一方法によって、大腸菌で低温発現させた後、SDS−PAGEゲルによって、その結果を確認した(
図6、レーン3,4)。その結果、PrLDCは、低温発現条件でも、ほぼ発現されないということを確認した。
【0065】
4−2.大腸菌で発現されたシュードモナス・レジノボランス由来リシンデカルボキシラーゼの活性分析
(1)リシンデカルボキシラーゼの反応性確認
シュードモナス・レジノボランス由来リシンデカルボキシラーゼ(PrLDC)の反応性を検証するために、前記4−1で得たPrLDCの細胞粉砕液を、13,000rpmで15分間遠心分離させ、上澄み液を利用してリシン転換反応を行った。可溶性タンパク質50μl、100mMPLP、250mMリシンを、50mMリン酸ナトリウム(pH6.2)緩衝溶液で充填し、200μlの反応体積で、46℃で2時間反応させた。リシン転換反応結果、PrLDCによって、66%カダベリンが生成された(
図10)。
【0066】
(2)温度及びpHによるリシンデカルボキシラーゼの活性分析
PrLDCの活性のための最適温度条件を求めるために、実施例2−2のような方法によって、30℃、40℃、46℃、60℃の温度条件で酵素活性を評価した。その結果、PrLDCは、60℃で最も良好な活性を有すると確認された(
図11)。
【0067】
また、実施例2−2のような方法によって、PrLDCのpHによる活性を評価した。その結果、PrLDCは、pH6で最も高い活性を示したが、pH9でも、90%以上の活性を保有するということを確認することができた。(
図12)。
【0068】
実施例5.シュードモナス・プチダ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子が導入された大腸菌製造、及びそこから発現されたリシンデカルボキシラーゼ活性分析
5−1.シュードモナス・プチダ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子による大腸菌の形質転換
シュードモナス・プチダ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子(ppldc)をクローニングするために、5_PpLDC_NdeI(AATATACATATGTACAAAGACCTCCAATTCCCC)(配列番号21)と、3_PpLDC_XhoI(AATATACTCGAGTCACTCCCTTATGCAATCAACGGTATAGC)(配列番号22)とのプライマーを利用し、精製されたシュードモナス・プチダ遺伝体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。重合酵素として、PfuDNAポリメラーゼを使用し、94℃:30秒、55℃:30秒、72℃:2分条件を30回反復してPCRを行った結果、増幅されたppldc遺伝子(配列番号8)を確保した。
【0069】
得られたppldc遺伝子を、前記実施例2−1と同一方法によって、大腸菌で低温発現させた後、SDS−PAGEゲルによって、その結果を確認した(
図13)。
図13のレーン3及び4から分かるように、シュードモナス・プチダ由来リシンデカルボキシラーゼ(PpLDC)は、低温発現条件でも、ほぼ発現されないということを確認した。
【0070】
細胞粉砕液を13,000rpmで15分間遠心分離させ、上澄み液を利用して、リシン転換反応を行った。
【0071】
5−2.大腸菌で発現されたシュードモナス・プチダ由来リシンデカルボキシラーゼの活性分析
(1)リシンデカルボキシラーゼの反応性確認
PpLDCの反応性を検証するために、前記5−1で得たPpLDCの細胞粉砕液(cell lysate)を13,000rpmで15分間遠心分離させ、上澄み液を利用して、リシン転換反応を行った。可溶性タンパク質50μl、100mM PLP、250mMリシンを、50mMリン酸ナトリウム(pH6.2)緩衝溶液で充填し、200μlの反応体積で46℃で2時間反応させた。その結果、16%カダベリンが生成された(
図14)。
【0072】
(2)温度及びpHによるリシンデカルボキシラーゼの活性分析
PpLDCの活性のための最適温度条件を求めるために、実施例2−2のような方法によって、50℃、60℃、70℃の温度条件で酵素活性を評価した。その結果、PpLDCは、50℃で最も良好な活性を有すると確認された(
図15)。
【0073】
また、実施例2−2のような方法によって、PpLDCのpHに対する活性条件を評価した。その結果、pH6で最も高い活性を示し、pHが高くなれば、反応性が低く評価された(
図16)。
【0074】
実施例6.シュードモナス・シンキサンタ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子が導入された大腸菌製造、及びそこから発現されたリシンデカルボキシラーゼ活性分析
6−1.シュードモナス・シンキサンタ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子による大腸菌の形質転換
シュードモナス・シンキサンタ由来リシンデカルボキシラーゼ遺伝子(pxldc)をクローニングするために、5_PxLDC_NdeI(AATATACATATGTACAAAGACCTCCAATTCCCC)(配列番号23)と、3_PxLDC_XhoI(AATATACTCGAGTCACTCCCTTATGCAATCAACGGTATAGC)(配列番号24)とのプライマーを利用して、精製されたシュードモナス・シンキサンタ遺伝体DNAをテンプレートにしてPCRを行った。遺伝子増幅のために、PfuDNA polymeraseを使用し、94℃:30秒、45℃:30秒、72℃:2分条件を30回反復し、増幅されたpxldcを確保することができた(配列番号10)。
【0075】
得られたpxldc遺伝子は、前記実施例2−1と同一方法によって、大腸菌で低温発現させた後、SDS−PAGEゲルによって、その結果を確認した(
図13)。
図13のレーン7及び8から分かるように、シュードモナス・シンキサンタ由来リシンデカルボキシラーゼ(PxLDC)は、低温発現条件で可溶性タンパク質として過発現されるということを確認することができた。
【0076】
6−2.大腸菌で発現されたシュードモナス・シンキサンタ由来リシンデカルボキシラーゼの活性分析
(1)PxLDCの反応性確認
PxLDCの反応性を検証するために、前記6−1で得たPxLDCの細胞粉砕液を、13,000rpmで15分間遠心分離させ、上澄み液を利用してリシン転換反応を行った。可溶性タンパク質50μl、100mM PLP、250mMリシンを、50mMリン酸ナトリウム(pH6.2)緩衝溶液で充填し、200μlの反応体積で、46℃で2時間反応させた。その結果、25%カダベリンが生成された(
図17)。
【0077】
(2)pHによるリシンデカルボキシラーゼの活性分析
PxLDCの最適pH条件を求めるために、実施例2−2のような方法によって、多様なpH酵素活性を評価した(
図18)。その結果、PxLDCは、pH6で最も高い活性を示し、pHが高くなるほど反応性が低く評価された。
【0078】
実施例7.大腸菌由来リシンデカルボキシラーゼとシュードモナス・サーモトレランス由来リシンデカルボキシラーゼの活性比較分析
7−1.大腸菌由来リシンデカルボキシラーゼクローニング及び発現
大腸菌リシンデカルボキシラーゼ遺伝子であるcadAをクローニングし、EcLDC(配列番号11)を発現させた。PtLDCとEcLDCとのアミノ酸配列の相同性は、36%である。cadA遺伝子がクローニングされたプラスミドを、大腸菌K−12BL21を挿入し、37℃温度条件で培養し、4時間発現を誘導した。発現が完了したEcLDCは、SDS−PAGEゲルを介して確認した結果(
図13;レーン1,2)、EcLDCが可溶性タンパク質として過発現されるということを確認した。
【0079】
7−2.EcLDC及びPtLDCの相対的な酵素活性比較分析
(1)温度による活性比較
実施例2−2のような方法によって、多様な温度条件(37℃、42℃、50℃、60℃、70℃及び80℃)で、EcLDCとPtLDCとの相対的な酵素活性(relative activity)を比較した(
図19)。
【0080】
その結果、EcLDC及びPtLDCいずれも、60℃で最も高い活性を示すと確認された。50℃において、EcLDCは、54%の相対的活性(60℃でのEcLDCの活性を100%と固定)を有し、80℃においては、12%の相対的活性を有すると評価された。PtLDCの場合、50℃で76%の相対的活性(60℃でのPtLDCの活性を100%と固定)を有し、80℃においては、19%の相対的活性を有すると評価された。高温条件において、PtLDCが活性をさらに良好に維持すると確認された。結論として、2つの酵素いずれも、温度による活性の差が大きく示され、相対的な活性は、PtLDCがさらに良好に維持されると評価された。
【0081】
(2)pHによる活性比較
さらには、実施例2−2のような方法によって、多様なpH(6.2、7.4、8.0及び9.0)に対する評価を進めた(
図20)。その結果、EcLDCは、pH6で最も高い活性を示すと評価され、pHが上昇するほど、EcLDC酵素活性が大きく低下した。pH9において、EcLDCは、50%ほどの活性が維持された。一方、PtLDCは、pHによる活性変化が大きく観察されず、pH6.2〜9でのpHにおいて、90%以上の活性が維持されるということを確認することができた。それにより、温度及びpHに対して、PtLDCの安定性がEcLDCより高いと評価された。
【0082】
(3)PtLDC及びEcLDCの活性比較
PtLDCとEcLDCとの蛋白質量を定量し、特異的活性(specificactivity)(unit/mg)を評価したとき、PtLDCは、10060(unit/mg)の値、EcLDCは、36335(unit/mg)の値を有した。反応性を比較するとき、EcLDCがPtLDCより約3.6倍高い活性を示した。また、最適温度を比較すれば、2つの酵素いずれも60℃で最適反応を行い、温度変化により、活性が大きく低下するということを確認することができた。しかし、最適pH条件を比較すれば、EcLDCの場合、pHが高くなるにつれ、非活率が高くなるが、PtLDCの場合、pH変化に対しては、酵素活性変化が大きく起こらないと観察された。
【0083】
EcLDCがPtLDCより高い活性を有しているが、リシンデカルボキシラーゼの反応によってpHが上昇すれば、EcLDCの活性がpH変化によって大きく影響を受ける。PtLDCは、相対的pH安定性がEcLDCより高く評価され、リシン転換反応で有利な点を有している。また、リシンを生物転換してカダベリンを商業的に生産するとき、酸処理を介してpH調整が必要であるが、PtLDCは、pH適正部分を緩和することができ、該部分は、カダベリン生物転換で生産コストを低減させる効果を期待することができると評価される
。
本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] 配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと75%以上の配列相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、リシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質。
[2] 前記75%以上の配列相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列は、配列番号3、5、7または9であることを特徴とする、実施形態1に記載のリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質。
[3] 実施形態1に記載のリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質をコーディングするポリヌクレオチド。
[4] 前記ポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列、またはそれと75%以上の配列相同性(配列同一性)を有することを特徴とする、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
[5] 前記75%以上の配列相同性(配列同一性)を有するポリヌクレオチドは、配列番号2、4、8または10の塩基配列であるリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質をコーディングすることを特徴とする、実施形態3に記載のポリヌクレオチド。
[6] 実施形態1に記載のリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質を発現するように形質転換された微生物。
[7] 前記微生物は、エシェリキア属微生物に形質転換されたことを特徴とする、実施形態6に記載の微生物。
[8] 野生型に比べて向上したリシン生産能を有する微生物が、実施形態1に記載のリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質が発現されるように形質転換された、カダベリン生産能を有する微生物。
[9] 前記微生物は、エシェリキア属微生物またはコリネ型微生物であることを特徴とする、実施形態8に記載のカダベリン生産能を有する微生物。
[10] 実施形態1に記載のリシンデカルボキシラーゼ活性を有するタンパク質、または実施形態6に記載の微生物を利用して、リシンからカダベリンに転換する段階と、
前記転換されたカダベリンを回収する段階と、
を含む、カダベリンの製造方法。
[11] 実施形態8に記載の微生物を培地で培養する段階と、
前記微生物または培地からカダベリンを回収する段階と、
を含む、カダベリンの製造方法。