(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記省電力モードが設定された場合、前記テーブルの加速度が前記通常モードよりも小さくなるように前記モータを駆動させるための前記駆動プロファイルに従って前記モータを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記制御部は、前記省電力モードが設定された場合、前記テーブルの最高速度が前記通常モードよりも遅くなるように前記モータを駆動させるための前記駆動プロファイルに従って前記モータを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記制御部は、前記省電力モードが設定された場合、前記テーブルの加速時間が前記通常モードよりも短くなるように前記モータを駆動させるための前記駆動プロファイルに従って前記モータを制御することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記制御部は、前記省電力モードが設定された場合、前記冷却器による前記媒体の冷却量及び前記加熱器による前記媒体の加熱量を前記通常モードよりも小さくすることを特徴とする請求項8に記載のリソグラフィ装置。
前記制御部は、前記テーブルの駆動による前記モータの発熱量と前記加熱器による前記媒体の加熱量との総和が前記冷却器による前記媒体の冷却量と等しくなるように、前記冷却器による前記媒体の冷却量及び前記加熱器による前記媒体の加熱量を前記通常モードよりも小さくすることを特徴とする請求項9に記載のリソグラフィ装置。
前記モータの動作期間は、前記テーブルを駆動させている稼働期間と、前記テーブルの駆動を停止させている待機期間が所定時間以下である第1待機期間と、前記待機期間が前記所定時間よりも長い第2待機期間とを含み、
前記制御部は、前記省電力モードが設定された場合、前記第1待機期間では前記冷却器による前記媒体の冷却量及び前記加熱器による前記媒体の加熱量を前記稼働期間と同一とし、前記第2待機期間では前記冷却器による前記媒体の冷却量及び前記加熱器による前記媒体の加熱量を前記稼働期間よりも小さくすることを特徴とする請求項8乃至10のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記駆動プロファイルは、前記テーブルが前記パターンを形成する時に停止する目標位置へ前記テーブルを駆動する時の駆動プロファイルであることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
前記予め定められた範囲は、前記リソグラフィ装置が単位時間当たりに処理すべき基板の数に基づいて定められた範囲であることを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、パターンを基板に形成するリソグラフィ装置であって、本実施形態では、レチクル(マスク)のパターンを投影光学系によって基板に投影することで、パターンを基板に形成する。また、露光装置100は、本実施形態では、ステップ・アンド・リピート方式を採用するステッパーとして説明するが、ステップ・アンド・スキャン方式を採用するスキャナーであってもよい。
【0017】
露光装置100は、露光本体部101と、温調部102と、制御部150とを有する。露光本体部101は、レチクル110を保持するレチクルテーブル111と、基板113を保持する基板テーブル114と、基板113にレチクル110のパターンを転写する投影光学系112と、基板テーブル114を駆動するリニアモータ115とを有する。制御部150は、CPUやメモリなどを含み、露光装置100の全体(各部)を制御する。
【0018】
温調部102は、エア系温調部と、液系温調部とを有する。まず、エア系温
調部について説明する。チャンバ116の空気流出口117から排気される空気、及び、外気取込口120から取り込まれる空気は、ベース加熱器130で加熱され、冷却器118によって冷却された冷媒ガスと熱交換器131で熱交換を行い(冷却され)、ファン132に吸い込まれる。ファン132に吸い込まれた空気は、精密な温調を行う高感度加熱器137に送られ、高感度加熱器137によって最終目的温度に調整された後、フィルタ138を介して、チャンバ116に供給される。また、チャンバ116に供給される空気は、ベース加熱器130及び高感度加熱器137のそれぞれの流出側に配置された温度センサ134及び136の測定結果に基づいて、温度調整器133及び135のそれぞれによって、所定の温度に制御される。最終目的温度に調整された空気は、フィルタ138からチャンバ116に供給され(流入し)、実線の矢印で示すように、露光本体部101に沿って下方に流れ、空気流出口117から排出される。これにより、露光本体部101の発熱源の熱が除去される。
【0019】
次いで、液系温調部について説明する。液系温調部は、基板テーブル114を高加速度で駆動する際に高温になるリニアモータ115の熱を除去する(即ち、リニアモータ115を温調する)。循環ポンプ140は、電気絶縁性が高い冷却液を、破線の矢印で示す方向に循環させて、リニアモータ115(のコイル)を冷却する。かかる冷却液は、循環ポンプ140から熱交換器142に送られ、冷却器118によって冷却された冷媒ガスと熱交換を行う(冷却される)。更に、冷却液は、加熱器141によって所定の温度に加熱されて、リニアモータ115に送り込まれ、基板テーブル114を駆動することでリニアモータ115に生じる熱を除去する。また、加熱器141は、温度センサ143の測定結果に基づいて、温度調整器144によって、所定の温度に制御される。
【0020】
<比較例>
このような温調部102において、背景技術で説明したように、冷却器118の冷却能力、即ち、冷却器118による冷媒ガスの冷却量を一定とする場合を比較例として説明する。エア系温調部では、露光本体部101の発熱量の変化に基づいてベース加熱器130の加熱量を変化させて高感度加熱器137に流入する空気の温度を一定に維持することで精密な温調を可能にしている。液系温調部では、リニアモータ115の発熱量の変化に基づいて加熱器141の加熱量を調整することで、リニアモータ115の急激な発熱の除去と、リニアモータ115の精密温調(温度を一定に維持すること)とを可能にしている。
【0021】
以下、基板テーブル114の制御系の構成及び動作について説明する。基板テーブル114の移動テーブル側にはリニアモータ115の可動子であるマグネットが配置され、基板テーブル114のテーブル定盤側にはリニアモータ115の固定子であるコイルが配置されている。リニアモータ115のコイルに所定の電流を流すことによって、基板テーブル114が駆動される(移動する)。リニアモータ115のコイルには、制御部150からの指令に応じた駆動電流を供給するモータドライバ(不図示)が接続されている。
【0022】
制御部150には、基板テーブル114の位置を検出する位置センサが接続され、位置センサからの現在の基板テーブル114の位置情報がフィードバック信号として入力される。かかる位置センサには、レーザー干渉計やリニアエンコーダなどが用いられる。
【0023】
制御部150は、位置センサから入力された現在の基板テーブル114の位置と基板テーブル114の目標位置との偏差に基づいて、基板テーブル114を目標位置に駆動するための電流指令値をモータドライバに出力する。モータドライバは、制御部150からの電流指令値に応じた電流をリニアモータ115に供給して、基板テーブル114を駆動する。
【0024】
基板テーブル114の加速度α[m/s]とリニアモータ115の電流I[A]との関係式は、以下の式(1)及び(2)で表され、加速度αは、電流Iに比例している。
【0025】
F=m・α=N・I ・・・(1)
α=F/m=N/m・I ・・・(2)
式(1)及び(2)において、Fは、リニアモータ115の推力[N]であり、mは、基板テーブル114の移動質量[kg]であり、Nは、リニアモータ115の推力定数[N/A]である。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)を参照して、基板テーブル114の動作を説明する。
図2(a)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸に基板テーブル114の速度[mm/s]を採用している。
図2(b)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸にリニアモータ115に流れる電流[A]を採用している。
【0027】
図2(a)に示すように、リニアモータ115は、台形駆動と呼ばれる駆動プロファイルに従って基板テーブル114を駆動する。かかる駆動プロファイルは、以下に説明するように、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間で構成される。第1区間は、基板テーブル114を所定の加速度α1[m/s
2]で加速する加速区間である。第2区間は、基板テーブル114を最高速度V
max[m/s]の一定速度で駆動する定速区間である。第3区間は、基板テーブル114を所定の加速度α3[m/s
2]で減速する減速区間である。第4区間は、基板テーブル114が目標位置に停止している区間であって、i線水銀ランプのシャッターを開いて、レチクル110のパターンを基板113に投影する(焼き付ける)露光区間である。
【0028】
以下、第1区間、第2区間及び第3区間の各区間の駆動時間をt1、t2及びt3[s]とすると、基板テーブル114の移動距離L[m]は、以下の式(3)で表される。
【0029】
L=1/2・α1・t1
2+α1・t1・t2+1/2・α3・t3
2 ・・・(3)
ここで、α1=α3=α、t1=t2=t3=tとすると、式(3)は、以下の式(4)で表される。
【0030】
L=2・α・t
2 ・・・(4)
加速度α=1.3[G]=12.74[m/s]、t=30[ms]とすると、式(4)から、基板テーブル114の移動距離L=22.932[mm]となる。
【0031】
リニアモータ115には、第1区間及び第3区間のそれぞれにおいて、最大の電流I
max[A]及び−I
max[A]が供給されている。第1区間及び第3区間のそれぞれにおけるリニアモータ115の消費電力P[W]は、以下の式(5)で表され、リニアモータ115の発熱量J[W・s]は、以下の式(6)で表される。なお、式(5)及び(6)において、Rは、リニアモータ115のコイル両端の抵抗値[Ω]である。なお、発熱量の単位[W・s]は、[J(ジュール)]と等価である。
【0032】
P=R・I
max2 ・・・(5)
J=R・I
max2・(t1+t3) ・・・(6)
また、リニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJは、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間の各区間の駆動時間をt1、t2、t3及びt4として、以下の式(7)で表される。
【0033】
aveJ=R・I
max2・(t1+t3)/(t1+t2+t3+t4) ・・・(7)
ここで、R=20[Ω]、I
max=10[A]、t1=t2=t3=t=30[ms]とすると、P=2000[W]、J=120[W・s]となる。従って、基板テーブル114の停止時間(第4区間)、即ち、t4=80[ms]とすると、aveJ=706[W]となる。
【0034】
上述したように、温調部102の液系温調部は、冷却液を循環させてリニアモータ115の熱(発熱量)を除去し、リニアモータ115の温度を一定に維持することになる。
【0035】
なお、特許文献1には、露光装置100の待機時には、リニアモータ115の発熱量が小さいため、インバータ119によって冷却器118の冷却能力(冷却量)を低く抑える技術が提案されている。但し、かかる技術では、冷却器118の冷却能力を急峻に変化させる(高める)場合(具体的には、露光装置100を待機状態から稼働状態にする場合)に、温度安定時間が必要となる。このような温度安定時間は、生産に寄与することができないため、無駄な時間となるだけでなく、生産に寄与しない電力を消費してしまうことになる。
【0036】
そこで、以下に説明するように、露光装置100の生産計画に基づいてリニアモータ115の発熱量を制御するとともに、リニアモータ115の発熱量と加熱器141の加熱量との総和が冷却器118の冷却量に常に一致するように制御する。露光装置100の生産計画に基づいてリニアモータ115の発熱量を制御することは、単位時間当たりに処理すべき基板の数(生産枚数)、即ち、スループットを可変とすることで可能である。これにより、生産の合間に生じる待機時間を最小にすることが可能となり、リニアモータ115の発熱量と加熱器141の加熱量との総和と冷却器118の冷却量とを等しくすることによる無駄な電力の消費(エネルギーロス)を最小にすることができる。また、露光装置100の生産計画に応じて冷却器118の冷却量を制御することで、温度安定時間を設けることなく生産を行うことを可能とする。また、後述するように、リニアモータ115のピーク電力は、基板テーブル114の速度には比例せずに、基板テーブル114の加速度の2乗に比例する。従って、露光装置100の生産計画に応じて基板テーブル114の加速度を低くすることは、生産時間が長くなったとしても、トータルの消費電力の低減に寄与する。
【0037】
<第1の実施形態>
本実施形態において、制御部150は、基板テーブル114に加えて、冷却器118、詳細には、冷却器118の冷却量を可変とするインバータ119も制御する。本実施形態では、露光装置100の生産計画に応じて基板テーブル114の加速度を制御し、基板テーブル114の加速度に応じて冷却器118の冷却量を制御することで、露光装置100で消費される電力(消費電力)を低減することが可能となる。具体的には、露光装置100の生産計画に応じて、基板テーブル114の加速度を計画的に小さくし、リニアモータ115の発熱量を小さくすることで、冷却器118の冷却量を小さくすることができるため、消費電力を低減することができる。
【0038】
このように、露光装置100は、消費電力を大幅に低減する機能を有する。これにより、露光装置100は、単位時間当たりに処理すべき基板の数(スループット)を満たす範囲において、その処理時間が長くなることを若干に抑えながら、消費電力を大幅に削減することができる。
【0039】
露光装置100では、設定部300において、リニアモータ115の動作モードとして通常モード又は省電力モードが設定される。設定部300は、ユーザによる通常モード又は省電力モードの指定を受け付ける入力部302を含む。設定部300によって省電力モードが設定されると、制御部150は、リニアモータ115及び温調部102を省電力モードで制御する。
【0040】
図3を参照して、省電力モードにおける温調部102の冷却器118及び加熱器141の制御について説明する。背景技術で説明したように、リニアモータ115の発熱量と加熱器141による加熱量との総和が冷却器118の冷却量と等しくなるように加熱器141の制御を行っている。
図3には、比較例における冷却器118の冷却量、加熱器141の加熱量及びリニアモータ115の発熱量の関係(高スループット時)も破線で示している。
【0041】
図3を参照するに、本実施形態では、制御部150は、低スループット時には、そのスループットに応じた基板テーブル114の加速度を求める。そして、制御部150は、その加速度に応じた加熱器141の加熱量が最小となるように、インバータ119の運転周波数を低下させ、冷却器118の冷却力を適正に制御することで、無駄な電力の消費を抑えることが可能となる。冷却器118の冷却力は、スループットに応じた発熱量を予め求めたテーブルなどを用いて、制御部150にて簡易的に決定される。
【0042】
図3に示すように、リニアモータ115の動作期間は、基板テーブル114を駆動させている稼働期間と、基板テーブル114の駆動を停止させている待機期間とを含む。また、待機期間は、基板テーブル114の駆動を停止させている期間が所定時間以下である第1待機期間と、基板テーブル114の駆動を停止させている期間が所定時間よりも長い第2待機期間とを含む。第1待機期間では、次の生産までの時間が比較的短く、装置内環境の安定に時間(温度安定時間)を要するため、冷却器118の冷却量を低スループット時よりも小さくすることができない。従って、第1待機期間では、冷却器118の冷却量及び加熱器141の加熱量を稼働期間と同一にしている。一方、第2待機期間では、次の生産までの時間が比較的長いため、冷却器118の冷却量を低スループット時よりも更に小さくすることができる。従って、第1待機期間では、冷却器118の冷却量及び加熱器141の加熱量を稼働期間よりも小さくしている。そして、次の生産が近づいてきたら、第2待機期間を第1待機期間に移行する(即ち、低スループットでの稼働が可能なスタンバイ状態にする)ことで、温度安定時間を設けることなく、次の生産が可能となる。
【0043】
図4(a)及び
図4(b)を参照して、基板テーブル114の動作を説明する。
図4(a)及び
図4(b)には、比較例における基板テーブル114の動作も破線で示している。
図4(a)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸に基板テーブル114の速度[mm/s]を採用している。
図4(b)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸にリニアモータ115に流れる電流[A]を採用している。
【0044】
省電力モードが設定された場合、制御部150は、基板テーブル114の加速度が通常モードよりも小さくなるように駆動プロファイルを変更する。この際、制御部150は、単位時間当たりに処理すべき基板の数を満たす範囲において、基板テーブル114の駆動によるリニアモータ115の発熱量が最小となるように駆動プロファイルを変更するとよい。これにより、基板テーブル114の駆動時間は若干長くなるが、以下に説明するように、リニアモータ115の消費電力Pを低減することができる。
【0045】
図4(a)に示すように、リニアモータ115は、台形駆動と呼ばれる駆動プロファイルに従って基板テーブル114を駆動する。かかる駆動プロファイルは、以下に説明するように、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間で構成される。第1区間は、基板テーブル114を所定の加速度α1’[m/s
2]で加速する加速区間である。第2区間は、基板テーブル114を最高速度V’[m/s]の一定速度で駆動する定速区間である。第3区間は、基板テーブル114を所定の加速度α3’[m/s
2]で減速する減速区間である。第4区間は、基板テーブル114が目標位置に停止している区間であって、i線水銀ランプのシャッターを開いて、レチクル110のパターンを基板113に投影する(焼き付ける)露光区間である。
【0046】
以下、第1区間、第2区間及び第3区間の各区間の駆動時間をt1’、t2’及びt3’[s]とすると、基板テーブル114の移動距離L[m]は、以下の式(8)で表される。
【0047】
L=1/2・α1’・t1’
2+α1’・t1’・t2’+1/2・α3’・t3’
2 ・・・(8)
ここで、α1’=α3’=α’、t1’=t2’=t3’=t’とすると、式(8)は、以下の式(9)で表される。
【0048】
L=2・α’・t’
2 ・・・(9)
式(9)で表される基板テーブル114の移動距離Lは、比較例と同様に、L=22.932[mm]である。例えば、加速度α’を比較例における加速度αの半分、即ち、α’=0.65[G]=6.37[m/s]として、以下に示すように、式(9)に相当する式(9’)を式(10)に変形して計算する。この場合、t’は比較例におけるt=30[ms]の√2(1.414倍)、即ち、t’=42.43[ms]となる。
【0049】
L=2・α・t
2=2・α’・t’
2 ・・・(9’)
t’=√(L/2α’)=√(α/α’)・t ・・・(10)
基板テーブル114の加速度は、リニアモータ115のコイルに供給される電流に比例し、リニアモータ115の消費電力は、リニアモータ115に供給される電流の2乗に比例する。従って、リニアモータ115の消費電力は、基板テーブル114の加速度の2乗に比例することになる。
【0050】
リニアモータ115の消費電力P’[W]は、以下の式(11)で表され、リニアモータ115の発熱量J’[W・s]は、以下の式(12)で表される。なお、式(11)及び(12)において、Rは、リニアモータ115のコイル両端の抵抗値[Ω]である。
【0051】
P’=R・I’
2 ・・・(11)
J’=R・I’
2・t1’+R・I’
2・t3’ ・・・(12)
また、リニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ’は、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間の各区間の駆動時間をt1’、t2’、t3’及びt4として、以下の式(13)で表される。
【0052】
aveJ’=R・I’
2・(t1’+t3’)/(t1’+t2’+t3’+t4) ・・・(13)
ここで、R=20[Ω]、I’=5[A]、t1’=t2’=t3’=t’=42.43[ms]とすると、P’=500[W]、J’=42.43[W・s]となる。基板テーブル114の停止時間(第4区間)は比較例と同じt4=80[ms]であるため、aveJ’=205[W]となる。従って、リニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ’は、比較例におけるリニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ=706[W]の0.29倍となる。
【0053】
省電力モードにおける基板テーブル114の加速度、スループット、リニアモータ115の消費電力の最大値(ピーク電力)及びリニアモータ115の発熱量の比較例に対する低減率を以下の
図5、
図6(a)乃至
図6(c)、
図7(a)及び
図7(b)に示す。ここでは、比較例における基板テーブル114の加速度、スループット、リニアモータ115の消費電力の最大値(ピーク電力)、リニアモータ115の発熱量を100%としている。省電力モードにおける基板テーブル114の加速度を比較例における基板テーブル114の加速度の50%に抑えた場合、スループットは82%に低下するが、リニアモータ115のピーク電力及び発熱量のそれぞれは、25%及び29%に低減される。なお、
図6(a)では、横軸に基板テーブル114の加速度を採用し、縦軸にスループットを採用している。
図6(b)では、横軸に基板テーブル114の加速度を採用し、縦軸にリニアモータ115のピーク電力を採用している。
図6(c)では、横軸にスループットを採用し、縦軸にリニアモータ115のピーク電力を採用している。
図7(a)では、横軸に基板テーブル114の加速度を採用し、縦軸にリニアモータ115の発熱量を採用している。
図7(b)では、横軸にスループットを採用し、縦軸にリニアモータ115の発熱量を採用している。
【0054】
また、温調部102の液系温調部は、冷却液を循環させてリニアモータ115の熱(発熱量)を除去するが、リニアモータ115の温度を変化させないようにする。具体的には、基板テーブル114が
図4に示す駆動プロファイルに従って駆動されている場合、即ち、リニアモータ115の平均の発熱量が205[W]である場合には、温調部102の加熱器141の平均の加熱量を20[W]とする。また、基板テーブル114が停止している期間では、加熱器141の平均の加熱量を、リニアモータ115の平均の発熱量205[W]を加算して225[W]とする。その際、冷却器118の平均の冷却量は、リニアモータ115の平均の発熱量と加熱器141の平均の加熱量との総和である225[W]とする。これにより、リニアモータ115の温度を一定に維持することができる。
【0055】
比較例では、基板テーブル114が停止している期間は、加熱器141が冷却液をリニアモータ115のピーク電力に相当する加熱量で加熱することによって、リニアモータ115を温調している。従って、露光装置100の非稼働時であっても、稼働時と同じ消費電力が必要となる。
【0056】
一方、本実施形態では、省電力モードが設定された場合、基板テーブル114の駆動によるリニアモータ115の発熱量が通常モードよりも小さくなり、且つ、単位時間当たりに処理すべき基板の数を満たすように基板テーブル114の駆動プロファイルを変更する。また、基板テーブル114の駆動プロファイルの変更によるリニアモータ115の発熱量の変化に基づいて温調部102によるリニアモータ115の温調量を変更する。換言すれば、リニアモータ115の発熱量が低減されることに応じて、冷却器118の冷却量及び加熱器141の加熱量を低減することが可能である。従って、本実施形態では、露光装置100の生産計画に応じて基板テーブル114の加速度を低くすることで、それ自体の効果としてスループットの低下度合いに比較して基板1枚当たりの処理に要する消費電力を大幅に低減する効果を有する。更に、装置の待機時間を短縮することによる非稼働時の消費電力を低減する効果も有し、トータルの消費電力を低減することができる。
【0057】
<第2の実施形態>
本実施形態では、省電力モードが設定された場合に、基板テーブル114の加速度を変更するのではなく、基板テーブル114の加速時間を変更することで、トータルの消費電力を低減する。
【0058】
図8(a)及び
図8(b)を参照して、基板テーブル114の動作を説明する。
図8(a)及び
図8(b)には、比較例における基板テーブル114の動作も破線で示している。
図8(a)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸に基板テーブル114の速度[mm/s]を採用している。
図8(b)では、横軸に時間[s]を採用し、縦軸にリニアモータ115に流れる電流[A]を採用している。
【0059】
省電力モードが設定された場合、制御部150は、基板テーブル114の加速時間が通常モードよりも短くなるように駆動プロファイルを変更する。従って、基板テーブル114の駆動時間は若干長くなるが、以下に説明するように、リニアモータ115の平均の消費電力に相当する平均の発熱量aveJ”を低減することができる。また、基板テーブル114の加速度が一定であれば、基板テーブル114の加速時間と基板テーブル114の最高速度とは比例するため、基板テーブル114の加速時間を短くすることは、基板テーブル114の最高速度を遅くすることと等価である。
【0060】
図8(a)に示すように、リニアモータ115は、台形駆動と呼ばれる駆動プロファイルに従って基板テーブル114を駆動する。かかる駆動プロファイルは、以下に説明するように、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間で構成される。第1区間は、基板テーブル114を所定の加速度α1[m/s
2]で加速する加速区間である。第2区間は、基板テーブル114を最高速度V”[m/s]の一定速度で駆動する定速区間である。第3区間は、基板テーブル114を所定の加速度α3[m/s
2]で減速する減速区間である。第4区間は、基板テーブル114が目標位置に停止している区間であって、i線水銀ランプのシャッターを開いて、レチクル110のパターンを基板113に投影する(焼き付ける)露光区間である。
【0061】
以下、第1区間、第2区間及び第3区間の各区間の駆動時間をt1”、t2”及びt3”[s]とすると、基板テーブル114の移動距離L[m]は、以下の式(14)で表される。
【0062】
L=1/2・α1・t1”
2+α1・t1”・t2”+1/2・α3・t3”
2 ・・・(14)
ここで、α1=α3=α、t1”=t3”とすると、式(14)は、以下の式(15)で表される。
【0063】
L=α・(t1”
2+t1”・t2”) ・・・(15)
式(15)で表される基板テーブル114の移動距離Lは、比較例と同様に、L=22.932[mm]である。例えば、加速時間t1”を比較例における加速時間t1の半分、即ち、t1”=15[ms]として、以下に示すように、式(15)に相当する式(15’)を式(16)に変形して計算する。この場合、t2”は比較例におけるt=30[ms]の3.5倍、即ち、t2”=105[ms]となる。
【0064】
L=2・α・t
2=α・(t1”
2+t1”・t2”) ・・・(15’)
t2”=(2・t
2−t1”
2)/t1” ・・・(16)
リニアモータ115の消費電力P”[W]は、以下の式(17)で表され、リニアモータ115の発熱量J”[W・s]は、以下の式(18)で表される。なお、式(17)及び(18)において、Rは、リニアモータ115のコイル両端の抵抗値[Ω]である。
【0065】
P”=R・I
2 ・・・(17)
J”=R・I
2・t1”+R・I
2・t3” ・・・(18)
また、リニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ”は、第1区間、第2区間、第3区間及び第4区間の各区間の駆動時間をt1”、t2”、t3”及びt4として、以下の式(19)で表される。
【0066】
aveJ”=R・I
2・(t1”+t3”)/(t1”+t2”+t3”+t4) ・・・(19)
ここで、R=20[Ω]、I=10[A]、t1”=t3”=15[ms]とすると、t2”=105[ms]、P”=2000[W]、J”=60[W・s]となる。基板テーブル114の停止時間(第4区間)は比較例と同じt4=80[ms]であるため、aveJ”=279[W]となる。従って、リニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ”は、比較例におけるリニアモータ115の全処理時間の平均の発熱量aveJ=706[W]の0.40倍となる。
【0067】
省電力モードにおける基板テーブル114の加速時間(最高速度)、スループット、リニアモータ115の消費電力の最大値(ピーク電力)及びリニアモータ115の発熱量の比較例に対する低減率を以下の
図9、
図10(a)乃至
図10(c)に示す。ここでは、比較例における基板テーブル114の加速時間、スループット、リニアモータ115の消費電力の最大値(ピーク電力)、リニアモータ115の発熱量を100%としている。省電力モードにおける基板テーブル114の加速時間を比較例における基板テーブル114の加速時間の50%に抑えた場合、スループットは79%に低下するが、リニアモータ115の平均の発熱量は、40%に低減される。但し、基板テーブル114の加速度は変更していないため、リニアモータ115のピーク電力は、比較例と同じ100%で変わらない。なお、
図10(a)では、横軸に基板テーブル114の加速時間を採用し、縦軸にスループットを採用している。
図10(b)では、横軸に基板テーブル114の加速時間を採用し、縦軸にリニアモータ115の平均の発熱量を採用している。
図10(c)では、横軸にスループットを採用し、縦軸にリニアモータ115の平均の発熱量を採用している。
【0068】
また、温調部102の液系温調部は、冷却液を循環させてリニアモータ115の熱(発熱量)を除去するが、リニアモータ115の温度を変化させないようにする。具体的には、基板テーブル114が
図8に示す駆動プロファイルに従って駆動されている場合、即ち、リニアモータ115の発熱量が279[W]である場合には、温調部102の加熱器141の加熱量を20[W]とする。また、基板テーブル114が停止している期間では、加熱器141の加熱量を、リニアモータ115の平均の発熱量279[W]を加算して299[W]とする。その際、冷却器118の冷却量は、リニアモータ115の発熱量と加熱器141の加熱量との総和である299[W]とする。これにより、リニアモータ115の温度を一定に維持することができる。
【0069】
本実施形態では、リニアモータ115の発熱量が低減されることに応じて、冷却器118の冷却量及び加熱器141の加熱量を低減することが可能である。従って、本実施形態では、露光装置100の生産計画に応じて基板テーブル114の加速時間を短く(最高速度を遅く)することで、それ自体の効果としてスループットの低下度合いに比較して基板1枚当たりの処理に要する消費電力を大幅に低減する効果を有する。更に、装置の待機時間を短縮することによる非稼働時の消費電力を低減する効果も有し、トータルの消費電力を低減することができる。
【0070】
<第3の実施形態>
省電力モードが設定された場合には、温調部102における冷却器118の冷却量や加熱器141の加熱量だけでなく、ファン132や循環ポンプ140の流量を小さくしてもよい。これにより、露光装置100におけるトータルの消費電力を更に低減することができる。
【0071】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、省電力モードが設定された場合に、基板テーブル114の加速度を小さくすることや基板テーブル114の加速時間を短くする(最高速度を遅くする)ことについて説明した。この場合、基板搬送ロボットによる基板113の搬送加速度を小さくすることや基板搬送ロボットによる基板113の搬送加速時間(搬送最高速度)を遅くすることが可能となる。また、水銀ランプのシャッターの開閉なども遅くすることが可能となる。従って、省電力モードが設定された場合に、基板テーブル114の加速度や加速時間に応じて、これらも制御することで、露光装置100におけるトータルの消費電力を更に低減することができる。
【0072】
<第4の実施形態>
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、デバイス(半導体デバイス、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置100を用いて、基板にパターンを形成する(即ち、基板を露光する)工程と、パターンを形成された基板を処理する(例えば、基板を現像する)工程を含む。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施形態では、リソグラフィ装置として露光装置を例に説明したが、これに限定されるものではなく、描画装置やインプリント装置であってもよい。描画装置とは、荷電粒子線(電子線)を用いて基板にパターンを描画するリソグラフィ装置である。インプリント装置とは、基板の上の樹脂とモールド(型)とを接触させた状態で樹脂を硬化させ、硬化した樹脂からモールドを剥離することで基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。