(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内容物が収容されたエアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール容器の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを下降させて内容物を吐出する吐出ヘッドであって、
前記ステムを径方向の外側から囲繞するように前記エアゾール容器に固定される固定部材と、
前記固定部材内に挿通される挿通部を有するとともに、前記ステムに、前記ステムの軸線回りに回転可能に装着され、前記軸線回りの回転に伴って下降する回転部材と、を備え、
前記固定部材および前記挿通部のうちのいずれか一方には、いずれか他方に設けられた摺動突部に上下方向に対向し、前記軸線回りに沿う周方向に延びる案内面が形成され、
前記案内面には、前記回転部材が前記軸線回りに回転するときに前記摺動突部が前記周方向に乗り越え可能な乗り越え突起が、前記周方向に隣り合って複数配置され、
前記摺動突部および前記乗り越え突起は、前記摺動突部が前記乗り越え突起を乗り越えるときに、前記摺動突部が前記乗り越え突起上を摺動することで、前記ステムの上方付勢力に抗して前記回転部材を下降させ、
前記回転部材は、
前記ステムに装着される有底筒状の装着部と、
前記ステムから吐出された内容物が各別に通過する複数の成形孔が上下方向に貫通するとともに、上面がこれらの成形孔が開口する造形面とされ、かつ下面が前記装着部の底壁部に上方から対向する供給面とされた板状の本体部を有し、前記供給面から供給され前記複数の成形孔を各別に通過して成形された内容物それぞれにより形成される複数の造形片を、前記造形面上で組み合わせて造形物を形成する造形部と、を備え、
前記装着部と前記造形部との間には、前記ステムから吐出された内容物を前記複数の成形孔それぞれに供給する供給室が設けられ、
前記装着部には、前記ステム内と前記供給室とを連通する連通孔が形成され、
前記供給室には、前記連通孔を通して前記ステムの上端部に対向し、前記ステムから吐出される内容物の直進移動を規制する拡散部材が設けられ、
前記拡散部材は、その全体が前記装着部の底壁部の上面よりも上方に、かつ、前記供給面よりも下方に位置した状態で、周方向に間隔をあけて複数配置されたブリッジ部を介して前記連通孔の開口周縁部に連結されていることを特徴とする吐出ヘッド。
前記案内面には、前記周方向に隣り合って配置された複数の前記乗り越え突起により形成される凹凸部が、前記周方向に複数、間欠的に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出ヘッド。
前記案内面において前記凹凸部同士の間に位置する部分には、前記摺動突部に前記周方向に係止して前記回転部材の更なる回転移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項5記載の吐出ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで本願発明者は、前述の受け皿のような、ステムを下降させて内容物を吐出させる吐出ヘッドをエアゾール容器に適用し、吐出ヘッド付きエアゾール容器を形成することについて検討したところ、エアゾール容器から内容物を所望の吐出量、精度良く吐出することについて改善の余地があることを見出した。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、エアゾール容器から内容物を所望の吐出量、精度良く吐出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る吐出ヘッドは、内容物が収容されたエアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール容器の口部に上方付勢状態で下方移動可能に立設されたステムを下降させて内容物を吐出する吐出ヘッドであって、前記ステムを径方向の外側から囲繞するように前記エアゾール容器に固定される固定部材と、前記固定部材内に挿通される挿通部を有するとともに、前記ステムに、前記ステムの軸線回りに回転可能に装着され、前記軸線回りの回転に伴って下降する回転部材と、を備え、前記固定部材および前記挿通部のうちのいずれか一方には、いずれか他方に設けられた摺動突部に上下方向に対向し、前記軸線回りに沿う周方向に延びる案内面が形成され、前記案内面には、前記回転部材が前記軸線回りに回転するときに前記摺動突部が前記周方向に乗り越え可能な乗り越え突起が、前記周方向に隣り合って複数配置され、前記摺動突部および前記乗り越え突起は、前記摺動突部が前記乗り越え突起を乗り越えるときに、前記摺動突部が前記乗り越え突起上を摺動することで、前記ステムの上方付勢力に抗して前記回転部材を下降させ、前記回転部材は、前記ステムに装着される
有底筒状の装着部と、前記ステムから吐出された内容物が各別に通過する複数の成形孔
が上下方向に貫通するとともに、上面がこれらの成形孔が開口する造形面
とされ、かつ下面が前記装着部の底壁部に上方から対向する供給面とされた板状の本体部を有し、
前記供給面から供給され前記複数の成形孔を各別に通過して成形された内容物それぞれにより形成される複数の造形片を、前記造形面上で組み合わせて造形物を形成する造形部と、を備え、前記装着部と前記造形部との間には、前記ステムから吐出された内容物を前記複数の成形孔それぞれに供給する供給室が設けられ、
前記装着部には、前記ステム内と前記供給室とを連通する連通孔が形成され、前記供給室には、
前記連通孔を通して前記ステムの上端部に対向し、前記ステムから吐出される内容物の直進移動を規制する拡散部材が設けられ
、前記拡散部材は、その全体が前記装着部の底壁部の上面よりも上方に、かつ、前記供給面よりも下方に位置した状態で、周方向に間隔をあけて複数配置されたブリッジ部を介して前記連通孔の開口周縁部に連結されていることを特徴とする。
【0007】
この場合、エアゾール容器から内容物を吐出させるときには、回転部材を軸線回りに回転させ、摺動突部に乗り越え突起を周方向に乗り越えさせる。このとき、摺動突部が乗り越え突起上を摺動することで、回転部材が、ステムの上方付勢力に抗してステムとともに下降させられ、エアゾール容器から内容物が吐出される。
摺動突部が乗り越え突起を乗り超え終えたときには、ステムの上方付勢力により回転部材がステムとともに上昇させられ、摺動突部が、直前に乗り越えた一の乗り越え突起と、この一の乗り越え突起に周方向に隣り合う他の乗り越え突起と、の間に形成される中間凹部内に進入し、内容物の吐出が停止される。またこのとき、回転部材が継続して回転すると、摺動突部が前記他の乗り越え突起も乗り越えて内容物が更に吐出される。
ここでこの吐出ヘッドでは、乗り越え突起を小さく形成し、摺動突部が乗り越え突起を乗り越えるために必要な回転力を低く抑えることで、回転部材に加えられる回転力が小さい場合であっても、摺動突部が乗り越え突起を乗り越えるために時間が過度にかかるのを抑制することができる。したがって、摺動突部が乗り越え突起を乗り越える際、回転部材に加えられる回転力の大きさによらず、回転部材の回転速度を同等に保持し、エアゾール容器からの内容物の吐出量を安定させることができる。
なお、前述のように乗り越え突起を小さく形成すると、摺動突部が乗り越え突起を乗り越えるときのステムの下降時間が短くなり内容物の吐出量が少なくなるものの、この吐出ヘッドでは、乗り越え突起が周方向に隣り合って配置されている。したがって、回転部材の回転角度に応じて、摺動突部に複数の乗り越え突起を乗り越えさせることが可能になり、十分な吐出量を安定して確保することができる。
以上のように、この吐出ヘッドによれば、摺動突部が、周方向に隣り合う複数の乗り越え突起を乗り越えることで、回転部材に加えられる回転力の大きさによらず、回転部材の回転角度に応じて十分な吐出量を安定して確保することができる。これにより、エアゾール容器から内容物を所望の吐出量、精度良く吐出することができる。
また、エアゾール容器のステムから吐出された内容物が、供給室を通して複数の成形孔に供給され、これらの成形孔を各別に通過して成形されることで、複数の造形片が形成される。そして、これらの造形片が造形面上で組み合わされることで、造形物が形成される。
ここでこの吐出ヘッドによれば、回転部材の回転角度に応じて内容物の吐出量を安定させることができる。これにより、各成形孔に適量の内容物を供給し、各成形孔により形成される造形片を精度良く形成することが可能になり、造形物を高精度に形成することができる。
【0008】
互いに隣り合う前記乗り越え突起の基端部同士は、前記周方向に直結されていてもよい。
【0009】
この場合、互いに隣り合う乗り越え突起の基端部同士が周方向に直結されているので、より多くの乗り越え突起を周方向に並べることが可能になり、回転部材の回転角度に応じて、確実に十分な吐出量を安定して確保することができる。
【0010】
前記乗り越え突起は、前記乗り越え突起の基端部から突端部に向かうに従い漸次、前記周方向に小さくなり、前記乗り越え突起の突端部は、前記乗り越え突起の基端部に対して前記周方向に沿った内側に配置されていてもよい。
【0011】
この場合、乗り越え突起が、乗り越え突起の基端部から突端部に向かうに従い漸次、周方向に小さくなり、かつ、乗り越え突起が、乗り越え突起の基端部から突端部に向かうに従い漸次、周方向に小さくなっている。したがって、回転部材を回転させる方向によらず、摺動突部に乗り越え突起を乗り越えさせることが可能になり、吐出ヘッドの操作性を高めることができる。
【0012】
前記案内面は、前記周方向の全周にわたって延び、前記周方向に隣り合って配置された複数の前記乗り越え突起により形成される凹凸部が、前記案内面の全周にわたって配置されていてもよい。
【0013】
この場合、凹凸部が、案内面の全周にわたって配置されている。したがって、固定部材と回転部材との周方向に沿った相対的な位置関係によらず、回転部材の回転角度に応じて内容物の吐出量を安定させることが可能になり、吐出ヘッドの操作性を高めることができる。
【0014】
前記案内面には、前記周方向に隣り合って配置された複数の前記乗り越え突起により形成される凹凸部が、前記周方向に複数、間欠的に配置されていてもよい。
【0015】
この場合、案内面に、凹凸部が、周方向に複数、間欠的に配置されているので、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部単位で調整することが可能になり、吐出ヘッドの操作性を高めることができる。
【0016】
前記案内面は、前記凹凸部同士を前記周方向に連結する平坦部と、前記平坦部に形成された微小突起と、を備えていてもよい。
【0017】
この場合、案内面が、平坦部と、微小突起と、を備えている。したがって、摺動突部が1つの凹凸部を通過した後、平坦部上を摺動して微小突起を乗り越えるときに、回転部材の過度な上下動を規制しながら、乗り越えによるクリック感を、回転部材を介して得ることができる。これにより、摺動突部が1つの凹凸部を通過したことを認識することが可能になり、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部単位で確実に調整することができる。
【0018】
前記案内面において前記凹凸部同士の間に位置する部分には、前記摺動突部に前記周方向に係止して前記回転部材の更なる回転移動を規制する規制部が設けられていてもよい。
【0019】
この場合、案内面において凹凸部同士の間に位置する部分に、規制部が設けられているので、1つの凹凸部を通過した摺動突部が、他の凹凸部を意図せず通過するのを確実に抑制することができる。これにより、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部単位で確実に調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エアゾール容器から内容物を所望の吐出量、精度良く吐出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る造形ヘッド(吐出ヘッド)を説明する。
【0025】
図1から
図5に示すように、造形ヘッド20は、エアゾール容器10に取り付けられる。エアゾール容器10は、吐出孔11から、例えば泡体や高粘性材料など、吐出後に少なくとも一定時間、形状を保持可能な内容物を吐出する。本実施形態では、エアゾール容器10は、有底筒状をなし、このエアゾール容器10の口部12が頂壁13で覆われることで密閉容器状とされている。図示の例では、エアゾール容器10として、内部に液状の内容物が収容されたエアゾール缶を採用している。
【0026】
エアゾール容器10の口部12、胴部14および図示しない底部の各中心軸は、いずれも共通の容器軸O1上に配置されている。頂壁13には、容器軸O1(ヘッド軸O2)回りを周回する方向に延びる環状凹部15が設けられている。環状凹部15は、下側に向けて窪んでいる。
【0027】
エアゾール容器10の口部12には、ステム16が立設されている。ステム16は、口部12に、上方付勢状態で下方移動可能に立設されている。ステム16は、容器軸O1と同軸に配置され、前記環状凹部15よりも小径に形成されている。ステム16は、前記頂壁13を貫通している。ステム16においてエアゾール容器10外に位置する上端部内には、前記吐出孔11が設けられ、エアゾール容器10内に位置する部分には、図示しない吐出弁が設けられている。
【0028】
エアゾール容器10に対してステム16が押し下げられると、前記吐出弁が開き、エアゾール容器10内の内容物がステム16内を通って吐出孔11から吐出される。吐出孔11からは、泡状となったエアゾール容器10内の内容物が内容物として吐出される。ステム16の押し下げを解除すると、ステム16に作用する上方付勢力によりステム16が上昇するとともに前記吐出弁が閉じられて、内容物の吐出が停止される。
【0029】
造形ヘッド20は、ステム16を下降させて内容物を吐出する。造形ヘッド20は、エアゾール容器10の吐出孔11から吐出された内容物を、単に吐出孔11から吐出された場合とは異形状に成形し、立体形状をなす造形物を造形する。本実施形態では、造形ヘッド20は、造形物として、八重咲きの花、具体的には薔薇を造形する。
【0030】
図1に示すように、造形ヘッド20は、固定部材21と、回転部材22と、を備えている。固定部材21および回転部材22は、筒状に形成され、これらの固定部材21および回転部材22の各中心軸は、いずれも共通軸上に位置している。以下、この共通軸をヘッド軸O2という。ヘッド軸O2は、容器軸O1上に位置している。ヘッド軸O2に沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿うエアゾール容器側を下側といい、反エアゾール容器側を上側という。造形ヘッド20を上下方向から見た平面視において、ヘッド軸O2に直交する方向(造形面に沿う方向)を径方向といい、ヘッド軸O2回りに周回する方向を周方向という。
【0031】
固定部材21は、ステム16を径方向の外側から囲繞するようにエアゾール容器10の口部12に固定される。
固定部材21は、ヘッド軸O2と同軸の多重筒状に形成されている。固定部材21は、エアゾール容器10の口部12に、ヘッド軸O2回りに回転不能に、かつ上昇不能に固定されている。固定部材21は、外筒部23と、内筒部24と、連結部25と、を備えている。
【0032】
外筒部23は、二重筒状に形成され、エアゾール容器10の口部12に径方向の外側から嵌合されている。図示の例では、外筒部23が、口部12に径方向の外側から加締められることで、固定部材21のヘッド軸O2回りの回転移動、および固定部材21の上昇移動が規制されている。
【0033】
内筒部24は、前記環状凹部15内に嵌合されている。内筒部24は、環状凹部15において、径方向の内側を向く外周面に、径方向の内側から嵌合されている。
連結部25は、エアゾール容器10の口部12の上側に配置されている。連結部25は、内筒部24および外筒部23の上端部同士を連結している。
【0034】
回転部材22は、エアゾール容器10の吐出孔11に装着される。回転部材22は、ステム16を介して吐出孔11に装着される。回転部材22は、ステム16に、ヘッド軸O2回りに回転可能に装着され、ステム16に対する回転移動に伴って下降させられる。回転部材22は、装着部26と、造形部27と、挿通部28と、を備えている。
【0035】
装着部26は、ヘッド軸O2と同軸に配置された有底筒状に形成されている。装着部26は、ステム16の上端部に装着され、固定部材21の上側に配置されている。装着部26の底壁部と、固定部材21の連結部25と、の間には、回転部材22の下降を許容する上下方向の許容隙間Sが設けられている。
【0036】
装着部26には、下方に向けて延びる嵌合筒29が設けられている。嵌合筒29は、装着部26の底壁部に開口している。嵌合筒29は、ヘッド軸O2と同軸に配置され、ステム16に回転可能に嵌合されている。嵌合筒29は、ステム16に、径方向の外側から嵌合している。嵌合筒29には、径方向の内側に向けて突出する突出部30が設けられている。突出部30は、ヘッド軸O2と同軸の環状に配置され、ステム16に上側から当接している。突出部30内は、吐出孔11内に連通する連通孔31とされている。
【0037】
図1および
図2に示すように、造形部27は、ヘッド軸O2に直交する板状に形成された本体部32と、本体部32の外周縁から下方に向けて延びる操作筒部33と、を備えている。造形部27は、本体部32および操作筒部33によって全体として有頂筒状に形成されている。
【0038】
本体部32には、装着部26内に嵌合するシール筒部34が設けられている。シール筒部34は、ヘッド軸O2と同軸に配置され、本体部32から下方に向けて延びている。
操作筒部33は、装着部26に径方向の外側から嵌合されていて、固定部材21を径方向の外側から囲繞している。
【0039】
造形部27は、装着部26に、ヘッド軸O2回りに相対的に回転不能に固定されている。造形部27と装着部26との間には、回り止め部35(
図4参照)が設けられている。回り止め部35は、造形部27および装着部26それぞれに、凹状または凸状に設けられている。造形部27および装着部26の各回り止め部35が互いに係止し合うことで、造形部27と装着部26との相対的な回転移動が規制される。
【0040】
造形部27には、複数の成形孔36が形成されている。複数の成形孔36は、本体部32を上下方向に貫通している。複数の成形孔36は、本体部32において上側を向く造形面37、および本体部32において下側を向く供給面38に各別に開口している。なお造形面37および供給面38は、ヘッド軸O2に直交する方向に延びている。
【0041】
成形孔36は、周方向に延びる長穴状に形成されている。成形孔36は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。成形孔36は、径方向に間隔をあけて複数配置されている。本実施形態では、周方向に間隔をあけて配置された複数の成形孔36が、孔列39を形成していて、この孔列39が、ヘッド軸O2を中心として多重に配置されている。
【0042】
図1に示すように、装着部26と造形部27との間には、供給室40が設けられている。供給室40は、吐出孔11から吐出された内容物を径方向に拡散して複数の成形孔36それぞれに供給する。供給室40は、ヘッド軸O2と同軸に配置され、前記連通孔31を通して吐出孔11に連通している。供給室40の壁面の一部は、前記供給面38により形成されている。
【0043】
供給室40には、吐出孔11に対向する拡散部材41が設けられている。拡散部材41は、表裏面が上下方向を向く板状に形成されている。拡散部材41は、ヘッド軸O2と同軸に配置されている。拡散部材41は、前記連通孔31を通して吐出孔11に対向していて、連通孔31よりも小径に形成されている。拡散部材41は、連通孔31の開口周縁部にブリッジ部42を介して連結されている。ブリッジ部42は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0044】
挿通部28は、固定部材21内に挿通される。挿通部28は、装着部26から下側に向けて延びていて、装着部26と一体に形成されている。挿通部28は、ヘッド軸O2と同軸に配置された筒状に形成されている。挿通部28は、嵌合筒29よりも大径で、固定部材21内に嵌合されている。
固定部材21と回転部材22との間には、変換機構43が設けられている。変換機構43は、回転部材22のステム16に対する回転動作を回転部材22の口部12に対する下降動作に変換する。
【0045】
図3から
図5に示すように、変換機構43は、固定部材21および挿通部28のうちのいずれか一方に設けられた摺動突部44と、いずれか他方に設けられた案内面45と、を備えている。本実施形態では、摺動突部44が挿通部28に設けられ、案内面45が固定部材21に設けられている。摺動突部44は、径方向に突出する一方、案内面45は、周方向に延びるとともに上下方向を向いており、案内面45と摺動突部44とが上下方向に対向している。
【0046】
摺動突部44は、挿通部28の外周面から径方向の外側に向けて突出している。摺動突部44は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。図示の例では、摺動突部44は、周方向に同等の間隔をあけて4つ設けられている。複数の摺動突部44は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。摺動突部44は、正面視において上下方向に凸となる三角形状、図示の例では上側に向けて凸となる二等辺三角形状に形成されている。摺動突部44は、上下方向に対して傾斜して延びる一対の傾斜部44bにより形成されている。摺動突部44の周方向の大きさは、摺動突部44の上下方向の大きさよりも大きい。
【0047】
摺動突部44には、ガイド突部44aが上下方向に連なっている。ガイド突部44aは、挿通部28の外周面から突出していて、摺動突部44から下側に向けて延びている。ガイド突部44aの突出量は、摺動突部44から上下方向に離間するに従い漸次、小さくなっている。ガイド突部44aは、挿通部28が固定部材21内に嵌合されるときに、摺動突部44が固定部材21の内周面を上側から下側に向けて乗り越えて案内面45の下側に到達することをガイドする。
【0048】
案内面45は、固定部材21の内周面に設けられている。固定部材21の内周面には、周方向に延びる配置溝部46が形成されていて、この配置溝部46において上下方向を向く側面により前記案内面45が構成されている。配置溝部46は、径方向の内側に向けて開口しつつ径方向の外側には非開口の窪み状に形成されている。配置溝部46は、周方向の全周にわたって設けられている。配置溝部46は、固定部材21の下端面から下側に向けて開口している。
【0049】
案内面45は、配置溝部46において下側を向く側面により構成されている。案内面45は、周方向の全周にわたって延びている。案内面45には、乗り越え突起47が設けられている。
乗り越え突起47は、回転部材22がヘッド軸O2回りに回転するときに摺動突部44が乗り越え可能に形成されている。乗り越え突起47は、周方向に隣り合って複数配置されている。互いに隣り合う乗り越え突起47の基端部同士は、周方向に直結されている。乗り越え突起47は、案内面45の全周にわたって配置されている。図示の例では、乗り越え突起47は、16個配置されている。
【0050】
複数の乗り越え突起47は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。乗り越え突起47は、乗り越え突起47の基端部から突端部に向かうに従い漸次、周方向に小さくなっている。乗り越え突起47の突端部は、乗り越え突起47の基端部に対して周方向に沿った内側に配置されている。乗り越え突起47の突端部は、乗り越え突起47の基端部における周方向の中央部と、周方向に沿って同等の位置に配置されている。
【0051】
乗り越え突起47は、正面視において上下方向に凸となる三角形状、図示の例では下側に向けて凸となる二等辺三角形状に形成されている。乗り越え突起47は、上下方向に対して傾斜して延びる一対の傾斜部47aにより形成されている。なお乗り越え突起47の基端部は、例えば、固定部材21の平面視において、ヘッド軸O2回りに沿って22.5度の範囲にわたって延びている。
【0052】
互いに隣り合う乗り越え突起47の間には、中間凹部48が形成されている。中間凹部48は、下側に向けて開口している。中間凹部48は、正面視において上下方向に凸となる三角形状、図示の例では上側に向けて凸となる二等辺三角形状に形成されている。中間凹部48は、互いに隣り合う乗り越え突起47において周方向に対向し合う一対の傾斜部47aにより形成されている。
【0053】
乗り越え突起47の正面視形状と中間凹部48の正面視形状とは、互いに上下方向に反転されてなる。乗り越え突起47の正面視形状は、摺動突部44の正面視形状を上下方向に反転してなり、中間凹部48の正面視形状は、摺動突部44の正面視形状と同等とされている。摺動突部44は、中間凹部48内に嵌合されている。
周方向に隣り合って配置された複数の乗り越え突起47は、周方向に延びる凹凸部49を形成する。凹凸部49は、乗り越え突起47と中間凹部48とが周方向に並ぶことで構成される。本実施形態では、1つの凹凸部49が、周方向の全周にわたって連続して延びている。凹凸部49では、周方向に隣り合う傾斜部47aの傾斜の向きが、上下方向に反転し合っている。
【0054】
次に、前記造形ヘッド20の作用について説明する。
【0055】
操作前の初期状態では、摺動突部44が、中間凹部48内に嵌合されていて、摺動突部44の各傾斜部44bが、中間凹部48の各傾斜部47aに近接または当接している。このとき、回転部材22およびステム16は上昇端位置に位置しており、エアゾール容器10から内容物が吐出されることは規制されている。
【0056】
エアゾール容器10から内容物を吐出させるときには、上昇端位置に位置する回転部材22を、ヘッド軸O2回りに回転させ、摺動突部44に乗り越え突起47を乗り越えさせる。このとき、摺動突部44が乗り越え突起47上を摺動することで、摺動突部44が乗り越え突起47により下側に向けて案内され、回転部材22が、ステム16の上方付勢力に抗してステム16とともに許容隙間Sを上下方向に狭めながら下降させられ、エアゾール容器10から内容物が吐出される。
【0057】
摺動突部44が乗り越え突起47の突端部に到達し、回転部材22およびステム16が下降端位置に至ると、摺動突部44が乗り越え突起47を周方向に乗り越える。
すると、ステム16の上方付勢力により回転部材22がステム16とともに上昇させられ、摺動突部44が、直前に乗り越えた一の乗り越え突起47と、この一の乗り越え突起47に周方向に隣り合う他の乗り越え突起47と、の間に形成される中間凹部48内に進入し、内容物の吐出が停止される。またこのとき、回転部材22が継続して回転すると、摺動突部44が前記他の乗り越え突起47も乗り越えて内容物が更に吐出される。
なお本実施形態では、回転部材22がヘッド軸O2回りのどちら側に回転させられたとしても、摺動突部44が乗り越え突起47を周方向に乗り越え可能とされている。
【0058】
ここでこの造形ヘッド20では、乗り越え突起47を十分に小さく形成し、摺動突部44が乗り越え突起47を乗り越えるために必要な回転力を低く抑えることで、回転部材22に加えられる回転力が小さい場合であっても、摺動突部44が乗り越え突起47を乗り越えるために時間が過度にかかるのを抑制することができる。したがって、摺動突部44が乗り越え突起47を乗り越える際、回転部材22に加えられる回転力の大きさによらず、回転部材22の回転速度を同等に保持し、エアゾール容器10からの内容物の吐出量を安定させることができる。
【0059】
なお、前述のように乗り越え突起47を小さく形成すると、摺動突部44が乗り越え突起47を乗り越えるときのステム16の下降時間が短くなり内容物の吐出量が少なくなるものの、この造形ヘッド20では、乗り越え突起47が周方向に隣り合って配置されている。したがって、回転部材22の回転角度に応じて、摺動突部44に複数の乗り越え突起47を乗り越えさせることが可能になり、十分な吐出量を安定して確保することができる。
【0060】
ところで、エアゾール容器10のステム16から吐出された内容物は、その直進移動が拡散部材41によって規制されながら、連通孔31、および周方向に隣り合うブリッジ部42の間を通して供給室40内に供給される。供給室40内に供給された内容物は径方向に拡散し、前記供給面38から複数の成形孔36に供給される。
内容物が、複数の成形孔36を各別に通過して成形されると、複数の造形片が形成され、これらの造形片が造形面37上で組み合わされることで、造形物が形成される。なお、成形孔36によって造形された造形片は、成形孔36が延びる方向に長く成形される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態に係る造形ヘッド20によれば、摺動突部44が、周方向に隣り合う複数の乗り越え突起47を乗り越えることで、回転部材22に加えられる回転力の大きさによらず、回転部材22の回転角度に応じて十分な吐出量を安定して確保することができる。これにより、エアゾール容器10から内容物を所望の吐出量、精度良く吐出することができる。
【0062】
また、互いに隣り合う乗り越え突起47の基端部同士が周方向に直結されているので、より多くの乗り越え突起47を周方向に並べることが可能になり、回転部材22の回転角度に応じて、確実に十分な吐出量を安定して確保することができる。
【0063】
また乗り越え突起47が、乗り越え突起47の基端部から突端部に向かうに従い漸次、周方向に小さくなり、かつ、乗り越え突起47が、乗り越え突起47の基端部から突端部に向かうに従い漸次、周方向に小さくなっている。したがって、回転部材22を回転させる方向によらず、摺動突部44に乗り越え突起47を乗り越えさせることが可能になり、造形ヘッド20の操作性を高めることができる。
【0064】
また凹凸部49が、案内面45の全周にわたって配置されている。したがって、固定部材21と回転部材22との周方向に沿った相対的な位置関係によらず、回転部材22の回転角度に応じて内容物の吐出量を安定させることが可能になり、造形ヘッド20の操作性を高めることができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の造形ヘッドを、
図6を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0066】
本実施形態の造形ヘッドでは、
図6に示すように、凹凸部49は、案内面45に、周方向に複数、間欠的に配置されている。案内面45は、凹凸部49同士を周方向に連結する平坦部50と、平坦部50に形成された微小突起51と、を備えている。平坦部50は、周方向に沿って真直に延びていて、摺動突部44は、この平坦部50上を摺動する。微小突起51の突出量は、乗り越え突起47の突出量よりも小さい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る造形ヘッドによれば、案内面45に、凹凸部49が、周方向に複数、間欠的に配置されているので、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部49単位で調整することが可能になり、造形ヘッド20の操作性を高めることができる。
【0068】
また案内面45が、平坦部50と、微小突起51と、を備えている。したがって、摺動突部44が1つの凹凸部49を通過した後、平坦部50上を摺動して微小突起51を乗り越えるときに、回転部材22の過度な上下動を規制しながら、乗り越えによるクリック感を、回転部材22を介して得ることができる。これにより、摺動突部44が1つの凹凸部49を通過したことを認識することが可能になり、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部49単位で確実に調整することができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の造形ヘッドを、
図7を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0070】
本実施形態の造形ヘッドでは、
図7に示すように、微小突起51に代えて、規制部52が設けられている。規制部52は、案内面45において凹凸部49同士の間に位置する部分に設けられている。規制部52は、摺動突部44に周方向に係止して回転部材22の更なる回転移動を規制する。規制部52は、平坦部50から下側に向けて延びていて、規制部52の正面視形状は、上下方向に延びる矩形状に形成されている。
【0071】
また本実施形態では、摺動突部44は、正面視において上側に向けて凸となる五角形状に形成されている。摺動突部44は、上側の摺動部53と、下側の係止部54と、を備えている。摺動部53は、正面視において上側に向けて凸となる三角形状に形成されている。係止部54は、摺動部53から下側に向けて延び、正面視において矩形状に形成されている。摺動部53は、乗り越え突起47上を摺動する。係止部54は、規制部52に周方向に係止することで、摺動突部44の周方向に向けた更なる移動を規制する。
なお、規制部52により更なる回転移動が規制された回転部材22では、ヘッド軸O2回りの反対側に向けて回転することで、直前に通過していた凹凸部49を再び通過することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る造形ヘッドによれば、案内面45において凹凸部49同士の間に位置する部分に、規制部52が設けられているので、1つの凹凸部49を通過した摺動突部44が、他の凹凸部49を意図せず通過するのを確実に抑制することができる。これにより、内容物の吐出量を、1つ1つの凹凸部49単位で確実に調整することができる。
【0073】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0074】
例えば、造形部27がなくてもよい。また前記第2実施形態で、微小突起51がなくてもよい。さらに前記第3実施形態で、規制部52の正面視形状が、上下方向に延びる矩形状とは異なる形状に形成されていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、造形部27および装着部26それぞれに凹状または凸状に設けられた回り止め部35を、互いに係止させることで、造形部27と装着部26との相対的な回転移動を規制したが、本発明はこれに限られない。例えば、造形部27の内周面の平面視形状および装着部26の外周面の平面視形状をそれぞれ、同等の形状でかつ同等の大きさの非真円形状に形成し、造形部27内に装着部26を嵌合させることで、造形部27と装着部26との相対的な回転移動を規制してもよい。
【0076】
乗り越え突起47は前記実施形態に示したものに限られない。例えば、乗り越え突起47が、正面視において半円形状に形成されていてもよい。
【0077】
前記実施形態では、摺動突部44が回転部材22に設けられ、案内面45が固定部材21に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば、摺動突部44が固定部材21に設けられ、案内面45が回転部材22に設けられていてもよい。
【0078】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。