特許第6431333号(P6431333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431333
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20181119BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20181119BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20181119BHJP
【FI】
   B23K26/082
   G02B26/10 104Z
   B23K26/00 M
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-211087(P2014-211087)
(22)【出願日】2014年10月15日
(65)【公開番号】特開2016-78074(P2016-78074A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】今井 與一郎
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−104991(JP,A)
【文献】 特開2003−90974(JP,A)
【文献】 特開2008−170579(JP,A)
【文献】 特開2000−117476(JP,A)
【文献】 特開2003−255258(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0119027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を走査させて対象物を加工する加工装置であって、
前記光を反射するミラーを有し、前記ミラーを駆動して前記光を走査させる走査部と、
前記走査部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記光の走査を開始させる前記ミラーの角度が目標角度になるように、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させる前記ミラーの角度を目標走査速度に基づいて得ることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記目標走査速度を第1速度Vとし、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させる位置をPとし、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させてから前記光の走査を開始させるまでの時間をTとした場合、前記目標走査速度を前記第1速度とは異なる第2速度Vとするのに、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させる位置P’を
P’=(V−V)・T+P
を満たすように得、前記位置P’に基づいて、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させるときの前記ミラーの角度を得、
前記位置PおよびP’は、前記光が走査されていると仮定した場合に前記光が照射される前記対象物上の位置であることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記光を走査させる距離が目標距離になるように、前記光の走査を開始してから終了するまでの照射時間を前記目標走査速度に基づいて得ることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標走査速度を1速度とし、前記照射時間をTとし、前記目標距離をLとした場合、前記目標走査速度を前記第1速度とは異なる第2速度Vするのに、前記照射時間の調整時間T’を
T’=T−L/V
を満たすように得ることを特徴とする請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記走査部は、第1方向に光を走査させるための第1走査部と、前記第1方向とは異なる第2方向に光を走査させるための第2走査部とを含み、
前記制御部は、前記第1走査部および前記第2走査部のそれぞれに関して、前記ミラーの駆動を開始させる前記ミラーの角度を得ることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項6】
光を走査させて対象物を加工する加工装置であって、
前記光を反射するミラーを有し、前記ミラーを駆動して前記光を走査させる走査部と、
前記走査部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記光の走査を開始させる前記ミラーの角度が目標角度になるように、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させてから前記光の走査を開始させるまでの時間を目標走査速度に基づいて得ることを特徴とする加工装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記目標走査速度を第1速度とし、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させる位置をPとし、前記目標角度に対応する前記対象物上の位置をPとした場合、前記目標走査速度を前記第1速度とは異なる第2速度Vとするのに、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させてから前記光の走査を開始させるまでの時間T
=(P−P)/V
を満たすように得、
前記位置Pは、前記光が走査されていると仮定した場合に前記光が照射される前記対象物上の位置であることを特徴とする請求項6に記載の加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記光を走査させる距離が目標距離になるように、前記光の走査を開始してから終了するまでの照射時間を前記目標走査速度に基づいて得ることを特徴とする請求項6又は7に記載の加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記目標走査速度を第1速度とし、前記照射時間をTとし、前記目標距離をLとした場合、前記目標走査速度を前記第1速度とは異なる第2速度Vとするのに、前記照射時間の調整時間T
=T−L/V
を満たすように得ることを特徴とする請求項8に記載の加工装置。
【請求項10】
前記走査部は、第1方向に前記光を走査させるための第1走査部と、前記第1方向と異なる第2方向に前記光を走査させるための第2走査部とを含み、
前記制御部は、前記第1走査部および前記第2走査部のそれぞれに関して、そのミラーの駆動を開始させてから前記光の走査を開始させるまでの時間を得ることを特徴とする請求項6乃至9のうちいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項11】
前記走査部は、ガルバノミラーを含むことを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を走査させて対象物を加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出された光(レーザ光)を対象物上で移動させることにより対象物を加工する加工装置がある。加工装置では、例えば、光源から射出された光を反射するミラーの回転を制御することにより対象物上で光を移動させる移動部(例えばガルバノスキャナ)が用いられる。しかしながら、移動部では、ミラーの回転を開始させるための指令値が入力されてから、ミラーの回転速度が目標回転速度に達するまでの間に遅れ(サーボ遅れ)が生じうる。このようにサーボ遅れが生じてしまうと、サーボ遅れが生じている期間において対象物上で光を目標速度で移動させることができず、対象物を精度よく加工することが困難になりうる。
【0003】
特許文献1には、光を対象物に照射する周期を示す時系列データをサーボ遅れに応じて生成する方法が提案されている。特許文献1に記載の方法では、ミラーの駆動を開始することと、対象物への光の照射を開始することとがほぼ同じタイミングで行われうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−170783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加工装置では、対象物の加工条件に応じて、対象物上での光の移動速度(走査速度)を変更する場合がある。この場合、特許文献1に記載の方法では、光を対象物に照射する周期を示す時系列データを、走査速度を変更する度に新たに生成する必要があるため、被検面上での光の走査を制御するための処理が煩雑になりうる。
【0006】
そこで、本発明は、光の走査速度の変更に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての加工装置は、光を走査させて対象物を加工する加工装置であって、前記光を反射するミラーを有し、前記ミラーを駆動して前記光を走査させる走査部と、前記走査部を制御する制御部とを含み、前記制御部は、前記光の走査を開始させる前記ミラーの角度が目標角度になるように、前記走査部に前記ミラーの駆動を開始させる前記ミラーの角度を目標走査速度に基づいて得ることを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、光の走査速度の変更に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の加工装置を示す概略図である。
図2】対象物の加工を説明するための図である。
図3】光の走査を開始する位置および加工距離を説明するための図である。
図4】ミラーの駆動を開始するときのミラーの角度を決定する方法を説明するための図である。
図5】調整時間を決定する方法を説明するための図である。
図6】変更時間を決定する方法を説明するための図である。
図7】調整時間を決定する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態の加工装置10について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態の加工装置10を示す概略図である。加工装置10は、例えば、射出部1と、調整部2と、走査部3と、光学系4と、制御部5とを含み、射出部1から射出された光(レーザ光)を対象物上で移動させる(走査する)ことにより対象物6を加工する。制御部5は、例えばCPUやメモリなどを有し、対象物6の加工を制御する(加工装置10の各部を制御する)。
【0013】
射出部1は、例えばYAGレーザなどの光源を含み、対象物6の加工に用いられる光(レーザ光)を射出する。射出部1は、光の射出と非射出との制御を、光源のオン/オフで行ってもよいが、例えば遮光部材を光路上に出し入れすることで行ってもよい。調整部2は、射出部1から射出された光を並進移動させ、走査部3における所定の位置に光が入射するように光軸の位置を調整する。走査部3は、例えば、ガルバノミラーを含むガルバノスキャナとしうる。走査部3は、対象物上で光を第1方向(例えばX方向)に走査させるための第1走査部3aと、対象物上で光を第1方向と異なる第2方向(例えばY方向)に走査させるための第2走査部3bとを含みうる。第1走査部3aおよび第2走査部3bのそれぞれは、射出部1から射出された光を反射するミラー31とミラー31を駆動する駆動部32を有し、ミラー31を駆動することによりミラー31で反射された光を対象物上で走査させることができる。光学系4(例えばF−θレンズ)は、第1走査部3aのミラー31および第2走査部3bのミラー31で反射された光を焦点距離Fで集光する。ここで、第1実施形態における第1走査部3aおよび第2走査部3bのそれぞれは、例えばガルバノスキャナを含み、駆動部32としてのモータによってミラー31を回転させることにより光を対象物上で走査させるように構成されている。しかしながら、それに限られるものではなく、第1走査部3aおよび第2走査部3bのそれぞれは、例えば、ミラー31を並進移動させることにより光を対象物上で走査させるように構成されてもよい。
【0014】
このように構成された加工装置10における走査部3では、ミラー31の駆動を開始させるための指令値が入力されてから、ミラー31の回転速度が目標回転速度に達するまでの間に遅れ(サーボ遅れ)が生じうる。そのため、走査部3によるミラー31の駆動と射出部1に光の射出とを同じタイミングで開始させてしまうと、対象物上の目標位置から目標走査速度で光の走査を開始することができず、対象物を精度よく加工することが困難になりうる。したがって、第1実施形態の加工装置10(制御部5)は、目標走査速度で光の走査を開始することができるように、射出部1に光の射出を開始させるより前に走査部3にミラー31の駆動を開始させている。このとき、制御部5は、例えば、走査部3にミラー31の駆動を開始させてから射出部1に光の射出を開始させるまでの時間(第1時間)が規定されたデータに基づいて、射出部1および走査部3を制御し、対象物の加工を制御している。また、このデータには、例えば、光の走査を開始してから終了するまでの照射時間(第2時間)も規定されうる。例えば、「A」の文字を一筆書きで対象物上に加工する場合、制御部5は、図2に示すように、対象物上で光を走査させて「A」の各線の加工を開始する前にミラー31の駆動が開始されるように走査部3を制御する。
【0015】
ところで、加工装置10では、対象物6の加工条件に応じて、対象物上での光の走査速度を変更する場合がある。対象物6の加工条件は、例えば、対象物上での光の走査によって対象物上に形成されるパターンの線幅や、光の照射によって対象物上に生じた焦げの状態などを含みうる。この場合、走査部3にミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度を変えずに、既に作成されたデータに基づいて射出部1および走査部3を制御してしまうと、光の走査を開始すべき対象物上の目標位置から光の走査を開始することが困難となりうる。加えて、対象物上で光を走査させた距離(加工距離)を目標距離にすることも困難となりうる。
【0016】
ここで、加工距離は、X方向およびY方向の2次元上のベクトル距離によって表されうる。一般に知られている算出方法としては、光の走査を開始する対象物上の位置(x,y)、光の走査を終了する対象物上の位置を(x,y)とすると、加工距離Lは{(x−x+(y−y0.5によって表されうる。また、加工距離は、X方向、Y方向およびZ方向の3次元上のベクトル距離によって表されてもよい。この場合、光の走査を開始する対象物上の位置を(x,y,z)、光の走査を終了する対象物上の位置を(x,y,z)とすると、加工距離Lは、{(x−x+(y−y+(z−z0.5によって表されうる。
【0017】
図3は、対象物上での光の目標走査速度を第1速度(例えば3000mm/s)にした場合、および第2速度(例えば4000mm/s)にした場合のそれぞれにおいて、光の走査を開始する位置および加工距離を説明するための図である。図3において、横軸は時刻、縦軸は光が照射されると推定される対象物上の位置(推定位置)を表している。推定位置は、射出部1に光を射出させる前においては、射出部1から光が射出されていると仮定したときに光が照射されると推定される対象物上の位置のことである。また、射出部1に光を射出させている間においては、光が実際に照射されると推定される対象物上の位置のことである。どちらの位置もミラー31の角度に対応する。また、横軸の0μsは走査部3にミラー31の駆動を開始させる時刻であり、図中の期間Aは、射出部1に指令値が供給されて射出部1が光を射出している期間、即ち、光の走査を開始してから終了するまでの期間を表している。図3は、説明を簡単にするため、対象物上で一方向に光を走査させる場合について示している。
【0018】
例えば、ミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度を一定とし、第1速度および第2速度のそれぞれについて対象物上で光を走査させる場合を想定する。そして、第1速度で光を走査させる場合と第2速度で光を走査させる場合との双方において、既に作成された同じデータに基づいて射出部1および走査部3を制御する。この場合、図3に示すように、第1速度と第2速度との間において、光の走査を開始する対象物上の位置、即ち、光の走査を開始するときのミラー31の角度が互いに異なってしまう。また、第1速度で光を走査させる場合の加工距離は距離L、および第2速度で光を走査させる場合の加工距離は距離Lとなり、第1速度と第2速度との間において加工距離も異なってしまう。
【0019】
このような問題を解決するためには、光の走査速度を変える度に、光の走査速度に応じてデータを新たに作成し直すことが考えられる。しかしながら、光の走査速度に応じてデータを新たに作成し直すことは、当該データを作成する処理が煩雑になるため好ましくない。そこで、第1実施形態の加工装置10は、対象物上で光を走査させるべき目標走査速度に基づき、射出部1に光の射出を開始させるときのミラー31の角度が目標角度になるように、走査部3にミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度を決定する。そして、加工装置10は、決定したミラー31の角度から走査部3にミラー31を駆動させる。これにより、対象物上での光の走査速度を変更した場合であっても、対象物上の目標位置から光の走査を開始することができる。また、加工装置10は、光の走査を開始してから終了するまでの照射時間である第2時間を調整するための調整時間を、目標走査速度に基づいて、加工距離が目標距離になるように決定する。そして、加工装置10は、決定した調整時間によってデータを補正する。このように補正したデータに基づいて射出部1および走査部3を制御することにより、対象物6を精度よく加工することができる。
【0020】
以下に、対象物上での光の走査速度を変更する場合における、ミラー31の駆動を開始するときのミラー31の角度、および調整時間を決定する方法について説明する。以下の説明では、データには、走査部3にミラー31の駆動を開始させてから射出部1に光の射出を開始させるまでの第1時間T、および第1速度で光の走査を開始してから終了するまでの第2時間Tが規定されているものとする。また、当該データには、目標走査速度を第1速度とする場合に走査部3にミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度(第1角度)も規定されているものとする。そして、以下の説明では、第1速度Vとは異なる第2速度Vで光を走査させる場合において、ミラー31の駆動を開始するときのミラー31の角度、および調整時間を決定する方法について説明する。
【0021】
まず、第2速度Vで光を走査させる場合に、ミラー31の駆動を開始するときのミラー31の角度(第2角度)を決定する方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、ミラー31の駆動を開始するときのミラー31の角度を決定する方法を説明するための図であり、図3における前半部分を示す図である。図4において横軸は時刻、縦軸は推定位置をそれぞれ示す。制御部5は、対象物上で光を走査させるべき目標走査速度である第2速度およびデータに基づいて、推定位置P’を式(1)から決定する。そして、制御部は、式(1)から決定された推定位置P’に基づいて、当該推定位置P’に対応するミラー31の角度を第2角度として求める。推定位置P’に対応するミラー31の角度は、例えば、推定位置とミラーの角度との対応関係を示す情報に基づいて求めることができる。これにより、加工装置10は、第2速度で光の走査を開始するときのミラーの角度を目標角度にし、対象物上の目標位置Pから第2速度で光の走査を開始することができる。式(1)において、Vは第1速度を、Vは第2速度を、Tは第1時間を、Pは第1角度における推定位置をそれぞれ表す。
P’=(V−V)・T+P ・・・(1)
【0022】
次に、第2速度で光を走査させる場合における調整時間を決定する方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、調整時間を決定する方法を説明するための図である。制御部5は、対象物上で光を走査させるべき目標走査速度である第2速度およびデータに基づいて、調整時間T’を式(2)から決定する。そして、制御部5は、決定した調整時間T’により当該データを補正し、補正されたデータに基づいて対象物6の加工を制御することにより、加工距離が目標距離になるように対象物上で光を走査させることができる。式(2)において、Tは第2時間を、Lは目標距離をそれぞれ表す。ここで、Tには、射出部1に指令値を供給してから射出部1が光を射出するまでの遅れ(ディレイ)が含まれていてもよい。
T’=T−L/V ・・・(2)
【0023】
上述したように、第1実施形態の加工装置10は、目標走査速度を第1速度Vとは異なる第2速度Vとするのに、走査部3にミラーの駆動を開始させる位置P’を、式(1)を満たすように得る。そしてこのP’に基づいて、走査部3にミラーの駆動を開始させるときのミラーの角度を得る。また、加工装置10は、目標走査速度を第1速度Vから第2速度Vとするのに、照射時間の調整時間T’を、式(2)を満たすように得る。加工装置10は、こうして得られた値を用いて対象物の加工を制御することにより、対象物上で光を走査させて対象物を精度よく加工することができる。ここで、走査部3に、第1走査部3aおよび第2走査部3bが含まれる場合は、第1走査部3aおよび第2走査部3bのそれぞれについて、ミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度、および調整時間が決定されうる。
【0024】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態の加工装置について説明する。第1実施形態の加工装置10は、射出部1に光の射出を開始させるときのミラー31の角度が目標角度になるように、目標走査速度に基づいて、走査部3にミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度を決定した。第2実施形態の加工装置は、射出部1に光の射出を開始させるときのミラー31の角度が目標角度になるように、目標走査速度に基づいて、第1時間を変更するための変更時間を決定する。第1時間とは、上述したように、走査部3にミラー31の駆動を開始させてから射出部1に光の射出を開始させるまでの時間のことである。また、第2実施形態の加工装置は、射出部1に光の射出を開始させて光の走査を開始してから終了するまでの第2時間を調整するための調整時間を、目標走査速度に基づいて、加工距離が目標距離になるように決定する。そして、加工装置は、決定した変更時間および調整時間によってデータを補正し、補正したデータに基づいて対象物の加工を制御する。
【0025】
以下に、対象物上での光の目標走査速度を変更する場合における変更時間および調整時間を決定する方法について説明する。以下の説明では、データには、走査部3にミラー31の駆動を開始させてから射出部1に光の射出を開始させるまでの第1時間T、および第1速度で光の走査を開始してから終了するまでの第2時間Tが規定されているものとする。また、当該データには、第1速度で光を走査させる場合に走査部3にミラー31の駆動を開始させるときのミラー31の角度も規定されているものとする。そして、以下の説明では、第1速度Vとは異なる第2速度Vで光を走査させる場合における変更時間および調整時間を決定する方法について説明する。ここで、第2実施形態の加工装置は、第1実施形態の加工装置10と装置構成が同様であるため、装置構成の説明は省略する。
【0026】
まず、第2速度で光を走査させる場合における変更時間を決定する方法について、図6を参照しながら説明する。図6は、変更時間を決定する方法を説明するための図であり、図3における前半部分を示す図である。図6において横軸は時刻、縦軸は推定位置をそれぞれ示す。制御部5は、対象物上で光を走査させるべき目標走査速度である第2速度およびデータに基づいて、変更時間Tを式(3)から決定する。そして、制御部5は、決定した変更時間Tにより当該データを補正する。例えば、制御部5は、第1時間Tから変更時間Tを減ずる(T−T)ように当該データを補正する。これにより、第2速度で光を走査させる場合における、走査部3にミラー31の駆動を開始させてから射出部1に光の射出を開始させるまでの時間を求めることができる。その結果、加工装置は、補正されたデータに基づいて対象物の加工を制御することにより、対象物上の目標位置Pから第2速度で光の走査を開始することができる。式(3)において、Vは第2速度を表す。また、位置Pは目標角度における推定位置を、位置Pは第1速度で光を走査させる場合に走査部3にミラー31の駆動を開始させるときの推定位置をそれぞれ表す。
=(P−P)/V ・・・(3)
【0027】
次に、第2速度で光を走査させる場合における調整時間を決定する方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、調整時間を決定する方法を説明するための図である。制御部5は、対象物上で光を走査させるべき目標走査速度である第2速度およびデータに基づいて、調整時間Tを式(4)から決定する。そして、制御部5は、決定した調整時間Tにより当該データを補正する。制御部5は、このように補正されたデータに基づいて対象物の加工を制御することにより、加工距離が目標距離になるように対象物上で光を走査させることができる。式(4)において、Tは第2時間を、Lは目標距離をそれぞれ表す。ここで、Tには、射出部1に指令値を供給してから射出部1が光を射出するまでの遅れ(ディレイ)が含まれていてもよい。
=T−L/V ・・・(4)
【0028】
上述したように、第2実施形態の加工装置は、目標走査速度を第1速度Vとは異なる第2速度Vとするのに、走査部にミラーの駆動を開始させてから光の走査を開始させるまでの変更時間Tを、式(3)を満たすように得る。また、加工装置10は、目標走査速度を第1速度Vとは異なる第2速度Vとするのに、照射時間の調整時間Tを、式(4)を満たすように得る。そして、加工装置は、こうして得られた時間によってデータを補正し、補正したデータを用いて対象物の加工を制御する。これにより、対象物上で光を走査させて対象物を精度よく加工することができる。ここで、走査部3に、第1走査部3aおよび第2走査部3bが含まれる場合は、第1走査部3aおよび第2走査部3bのそれぞれについて、変更時間および調整時間が決定されうる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1:射出部、2:調整部、3:走査部、4:光学系、5:制御部、6:対象物、10:加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7