(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記関心領域設定手段は、ユーザ操作に基づいて前記第1の画像上で前記関心領域の入力を受け付けることにより前記関心領域を再設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳説する。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態に係る画像処理装置は、乳房を被検体として、2枚の平板(保持板)で乳房を保持する際の変形推定結果に基づいて、光音響断層画像(PAT画像)の撮像領域を変形前のMRI(Magnetic Resonance Imaging)画像中における対応領域に変換・表示することで、撮像領域の確認・調整を可能とするものである。なお、本実施形態における撮像領域とは、PAT画像を撮像する際の目安となる候補領域のことを表すものとする。実際にPAT画像を撮像する範囲(近赤外光パルスの照射範囲)については、撮像領域を参考にして別途設定してもよい。以下、本実施形態に係る画像診断システムおよび当該画像診断システムに含まれる画像処理装置について説明する。
【0013】
<画像診断システム1の構成>
図1は、本実施形態に係る画像診断システム1の構成を示す。画像診断システム1は、画像処理装置100と、第1医用画像撮像装置180と、第2医用画像撮像装置182と、表示部184と、操作部186と、データサーバ190とを有している。
【0014】
第1医用画像撮像装置180は、MRI装置であり、第1の形状状態(乳房が平板により保持されていない非保持状態)の一例である伏臥位の被検者の乳房を撮像してMRI画像(第1の画像)を取得する。ここで、
図2は、第1医用画像撮像装置180によって撮像された乳房の3次元MRI画像を、被検者の頭尾方向(頭側から足側への方向)に垂直な断面(アキシャル断面)でスライスした場合の2次元画像を示す模式図である。本実施形態では、MRI画像200中の一点を原点とし、被検者の右手から左手への方向を表す軸をX軸、被検者の正面から背面への方向を表す軸をY軸、被検者の足から頭への方向を表す軸をZ軸として定義した座標系を、MRI画像座標系C_MRIとする。
【0015】
第2医用画像撮像装置182は、光音響断層撮像装置(PAT装置)であり、後述する画像処理装置100の撮像領域設定部108により設定される撮像領域の範囲内に近赤外光パルスを照射することによって、被検者の第2の形状状態(乳房が平板により保持されている保持状態)における乳房を撮像してPAT画像(第2の画像)を取得する。ここで、
図3は、第2医用画像撮像装置182による撮像の様子を示す模式図である。
図3に示すように、被検者300は、第2医用画像撮像装置182の上面のベッドで伏臥位の体位をとる。そして、被検体である片側の乳房301を第2医用画像撮像装置182上面の開口部302に挿入する。このとき、照射光が乳房の内部まで届くように、乳房は透明な2枚の保持板(足側の保持板303および頭側の保持板304)により圧迫した状態で保持され、その厚みが薄くなった状態で撮像される。なお、本実施形態では、保持板303および保持板304はいずれも平板であり、乳房と接触する面(以下、保持面と呼ぶ)が平面であるものとする。照射光である近赤外光パルスは、保持板303、304の平面に直交する方向から不図示の光源により照射される。そして、近赤外光パルスの照射に応じて体内で発生した光音響信号は、保持板303、304の平面に直交するように配置された不図示の超音波探触子により受信される。本実施形態では、PAT装置座標系C_PATを以下のように定義する。すなわち、保持板303、304に平行な平面をXY平面とし、被検者の右手から左手への方向を表す軸をX軸、被検者の正面から背面への方向を表す軸をY軸と定義する。また、保持板303、304の法線方向をZ軸とし、被検者の足から頭に向かう方向をZ軸の正方向と定義する。そして、保持板303の内側の平面上における右手側の下端位置を原点とする。
【0016】
また第2医用画像撮像装置182には、さらに乳房の外観画像(第3の画像)を撮像するためのカメラ305が搭載されている。カメラ305は、保持板303を通して足側から乳房の外観を撮像可能な位置に設置されたカメラである。そして、C_CAMは、カメラ305の焦点位置を原点とするカメラ座標系である。ここで、カメラ305は、PAT装置座標系C_PATにおいて校正済みであるものとする。そして、カメラ校正により求められた、カメラ座標系C_CAMからPAT装置座標系C_PATへの座標変換行列T_CtoPおよびカメラ内部パラメータは、既知の情報として画像処理装置100が保持しているものとする。
【0017】
ここで、
図4は、カメラ305によって撮像された乳房の外観画像400を示す模式図である。本実施形態では、外観画像400の右下端を外観画像座標系C_IMGの原点とし、Z=0平面上に外観画像400が位置するものとする。なお、カメラ座標系C_CAMから外観画像座標系C_IMGへの変換には、一般的な手法を用いることができるため、説明を省略する。
【0018】
表示部184は、撮像領域を設定するための撮像領域設定画面と、関心領域を設定するための関心領域設定画面とを表示し、また、画像処理装置100が生成する表示画像を表示する。操作部186は、マウスやキーボード、物理的なスイッチ等であり操作者からの操作の入力を受け付ける。
【0019】
データサーバ190は、第1医用画像撮像装置180により取得されたMRI画像200を保持しており、当該MRI画像200は、後述する画像処理装置100の医用画像取得部102を介して画像処理装置100へ入力される。
【0020】
<画像処理装置100の機能ブロック構成>
画像処理装置100は、データサーバ190、第2医用画像撮像装置182、表示部184、操作部186と接続されている。画像処理装置100は、医用画像取得部102と、外観画像取得部104と、変形情報取得部106と、撮像領域設定部108と、対応領域算出部110と、調整判定部111と、表示画像生成部112と、終了判定部113と、関心領域設定部114と、変換領域算出部116とを備えており、不図示のCPUによりプログラムを読み出して実行することにより各機能ブロックの動作が制御される。
【0021】
医用画像取得部102は、画像処理装置100へ入力されるMRI画像200を取得し、当該MRI画像200を変形情報取得部106および表示画像生成部112へ出力する。
【0022】
外観画像取得部104は、画像処理装置100へ入力される外観画像400を取得し、当該外観画像400を変形情報取得部106、撮像領域設定部108および表示部184へ出力する。
【0023】
変形情報取得部106は、外観画像400に対してMRI画像200を変形位置合わせすることにより変形情報を算出して取得し、当該変形情報を対応領域算出部110へ出力する。
【0024】
撮像領域設定部108は、表示部184に表示されている撮像領域設定画面上でPAT画像の撮像のための撮像領域を設定し、当該撮像領域の情報を対応領域算出部110、表示画像生成部112、および第2医用画像撮像装置182へ出力する。
【0025】
対応領域算出部110は、撮像領域設定部108により設定された撮像領域に対応するMRI画像200中の領域である対応領域を、変形情報取得部106により取得された変形情報に基づいて算出し、当該対応領域の情報を表示画像生成部112および関心領域設定部114へ出力する。
【0026】
調整判定部111は、操作者による操作部186の操作に基づいて、対応領域算出部110により取得された対応領域の調整による関心領域の設定を行うか否かの判定を行う。例えば、不図示のモニタ上に配置された設定ボタンを操作者が不図示のマウス等でクリックするなどして、対応領域の調整による関心領域の設定を行うか否かを入力することにより設定の要否を判定する。
【0027】
表示画像生成部112は、外観画像400に撮像領域を重畳して、撮像領域設定画面に表示するための画像を生成する。また、MRI画像200と、対応領域または関心領域とに基づいて、関心領域設定画面に表示するための画像を生成する。そして、各画像を表示部184へ出力する。
【0028】
終了判定部113は、操作部186の操作に基づいて、撮像領域の設定処理を終了するか否かを判定する。
【0029】
関心領域設定部114は、表示部184の関心領域設定画面上で対応領域を調整することによって関心領域を設定し、当該関心領域を表示画像生成部112および変換領域算出部116へ出力する。
【0030】
変換領域算出部116は、撮像状態の被検体における関心領域の対応領域(以下、変換領域と呼ぶ)を算出し、当該変換領域の情報を撮像領域設定部108へ出力する。
【0031】
なお、上記機能ブロックの構成はあくまでも一例であり、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックを構成するようにしてもよいし、何れかの機能ブロックが更に複数の機能ブロック分かれて構成されてもよい。
【0032】
<画像処理装置100が実施する処理>
次に、
図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係る画像処理装置100が実施する処理の手順について説明する。
【0033】
ステップS5000において、医用画像取得部102は、データサーバ190から画像処理装置100へと入力される、伏臥位の乳房のMRI画像200を取得する。なお、本実施形態では、MRI画像200中における乳頭位置が予め指定されているものとする。
【0034】
ステップS5010において、外観画像取得部104は、第2医用画像撮像装置182から画像処理装置100へと入力される、被検者の乳房の外観画像400を取得する。
【0035】
ステップS5020において、変形情報取得部106は、MRI画像を撮像状態の乳房の形状に変形させるための変形情報を取得する。本実施形態では、外観画像400にMRI画像200を変形位置合わせすることによって、保持前の状態から保持後の状態への変形を表す変形関数F(x,y,z)および、保持後の状態から保持前の状態への逆の変形を表す変形関数F−1(x,y,z)を求める。そして、それらの変形関数を変形情報として用いるものとする。当該位置合わせには、例えば非特許文献1(後述する。)に開示されている、MRI画像に対して平板圧迫による物理変形シミュレーションを施して得られる変形後の乳房形状を、X線マンモグラフィ画像から抽出した乳房の2次元形状に基づいて評価する技術を用いることができる。非特許文献1は、C.Tanner,et al."Breast Shapes on Real and Simulated Mammograms,"Proc.Int.Workshop on Digital Mammography 2010(IWDM 2010),LNCS 6136,pp.540−547,2010.である。
【0036】
なお、本実施形態では、PAT画像座標系C_PATとMRI画像座標系C_MRIとにおける被検者の姿勢が略一致しているものと仮定する。すなわち、2枚の保持板303、304により、MRI画像座標系C_MRIにおけるZ軸方向に沿って乳房が圧縮されるものとする。また、2枚の保持板間の距離(保持後の乳房の厚み)dの計測値が、第2医用画像撮像装置182から画像処理装置100に入力されており、物理変形シミュレーションの際にその情報を用いるものとする。そして、保持前と保持後における乳頭位置が同一となるように、変形関数F(x,y,z)およびF−1(x,y,z)を算出するものとする。
【0037】
なお、変形関数の算出方法は、外観画像400にMRI画像200を変形位置合わせする場合に限らず、他の何れの方法であってもよい。例えば、カメラ305で外観画像400を撮像する代わりに、不図示の距離センサで乳房の外形形状を取得し、それに対してMRI画像200を変形位置合わせしてもよい。あるいは、第2医用画像撮像装置182に備えられた不図示の超音波画像取得部で乳房内部の超音波画像を撮像しておき、それに対してMRI画像200を変形位置合わせしてもよい。
【0038】
ステップS5030において、変形情報取得部106は、MRI画像座標系C_MRIとPAT装置座標系C_PATとの間の剛体変換を求める。すなわち、MRI画像座標系C_MRIからPAT装置座標系C_PATへの座標変換行列T_MtoPを導出する。なお、T_MtoPを含め、以降で説明する座標変換行列は全て座標系の並進と回転を表す4×4行列であるものとする。本実施形態では、PAT装置座標系C_PATとMRI画像座標系C_MRIとにおける被検者の姿勢が略一致していると仮定しており、MRI画像座標系C_MRIからPAT装置座標系C_PATへの座標変換を並進のみで記述できるものとする。この仮定の下で、ステップS5000で取得したMRI画像200中における乳頭位置が、PAT装置座標系C_PATにおける被検者の乳頭位置と一致するように、T_MtoPの並進成分を算出する。
【0039】
ここで、PAT装置座標系C_PATにおける乳頭位置は、例えば、第2医用画像撮像装置182の開口部302の下方から乳房を計測可能な位置に設置された不図示の距離計測装置を用いて取得することができる。すなわち、距離計測装置で乳房の距離画像を撮像し、その画像中の乳頭位置を不図示のマウスやキーボードなどを用いてユーザが手動で指定することによって、PAT装置座標系C_PATにおける乳頭位置を取得することができる。その際に、距離計測装置はPAT装置座標系C_PATにおいて校正済みであるものとする。なお、PAT装置座標系C_PATにおける乳頭位置は、距離計測装置に限らず、例えばデジタイザやステレオカメラ等の、3次元位置を計測可能な他の装置や手段を用いて取得することができる。
【0040】
ステップS5040において、撮像領域設定部108は、第2医用画像撮像装置182の撮像領域の初期設定を行う。例えば、第2医用画像撮像装置182によってPAT画像を撮像可能な範囲の全体を含む長方形を撮像領域の初期値として外観画像400上に設定する。本実施形態では、
図6に示すように、撮像領域603を外観画像座標系C_IMGにおいて設定するものとする。そして、外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域の初期値に基づいて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を求める。例えば、設定された撮像領域の4頂点を、まずカメラ座標系C_CAMにおける4点に変換した上で、それら4点とカメラ座標系における原点とを結ぶ4直線と保持板303との4つの交点を求め、PAT装置座標系C_PATにおける4点に変換する。そして、それらの4点に外接する矩形を、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域とする。
【0041】
ステップS5050において、対応領域算出部110は、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域に対応するMRI画像200中における対応領域を算出する。具体的には、まず、ステップS5030で算出した剛体変換(座標変換行列T_MtoP)の逆変換(T_MtoPの逆行列)を用いて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を、MRI画像座標系C_MRIにおける領域に剛体変換する。次に、ステップS5020で取得した変形関数F−1(x,y,z)を用いて当該領域に変形処理を施して、MRI画像座標系C_MRIにおける対応領域を算出する。
【0042】
なお、ステップS5020で算出した変形情報の誤差を考慮して、算出した対応領域を狭めに調整してもよい。例えば、所定の値をマージンとして差し引くことができる。また、ステップS5020で算出した変形情報の中に変形情報を算出する際の誤差に関する情報(例えば位置合わせの残差)も含まれるものとし、その誤差に関する情報に基づいて、差し引くマージンを定めてもよい。例えば、3次元の撮像領域の各面をマージンの分だけ狭く設定し直した上で、MRI画像座標系C_MRIにおける対応領域を算出することができる。そうすることにより、腫瘍等の注目領域が対応領域に含まれているか否かをより厳しく判定することができるため、腫瘍等の注目領域の一部が撮像領域から外れることを防止することができる。
【0043】
ステップS5060において、表示画像生成部112は、外観画像400上に撮像領域(
図6の撮像領域603)を重畳した表示画像を生成し、当該表示画像を表示部184へ出力する。ここで、撮像領域603は、
図6に示すように枠線で表示してもよいし、領域の内部を所定の色やテクスチャを用いて所定の透過度で塗りつぶしてもよい。さらに、不図示のマウスやキーボードなどを用いて、枠線の種類、塗りつぶしの色やテクスチャ、透過度などをユーザが調整できるようにしてもよい。
【0044】
さらに、表示画像生成部112は、MRI画像200と、対応領域(または後述のステップS5080で設定される関心領域)とに基づいて、表示部184の撮像領域設定画面に表示するための画像を生成する。例えば、
図7(A)に示すように、対応領域702(または関心領域)の内部における、MRI画像のボリュームレンダリング画像(MRI_VR画像)700を生成する。すなわち表示画像生成部112は、対応領域内における第1の画像(MRI画像200)のボリュームレンダリング画像を生成する。この場合には、腫瘍701等の注目領域が対応領域702(または関心領域)の内部に含まれているかどうかを確認することができる。逆に、
図7(B)に示すように、対応領域702(または関心領域)の外部における、MRI_VR画像700を生成してもよい。すなわち、表示画像生成部112は、対応領域外における第1の画像(MRI画像200)のボリュームレンダリング画像を生成してもよい。この場合には、腫瘍701等の注目領域の一部が対応領域702(または関心領域)から外れていないかどうかを確認することができる。または、
図7(C)に示すように、MRI画像全体のMRI_VR画像700と、対応領域702(または関心領域)を表す図形とを重畳した画像を生成してもよい。
【0045】
ステップS5070において、調整判定部111は、操作部186を介したユーザ操作に基づいて、MRI画像座標系C_MRIにおける対応領域の調整による関心領域の設定を行うか否かの判定を行う。例えば、不図示のモニタ上に配置された設定ボタンを操作者が不図示のマウスでクリックするなどして、対応領域の調整による関心領域の設定を行うか否かの判定情報を入力する。または、ステップS5060で生成した表示画像上に不図示のマウスカーソルが移動した場合に、対応領域の調整による関心領域の設定を行うと判定してもよい。対応領域の調整による関心領域の設定を行うと判定した場合には、ステップS5080へと処理を進める。一方、対応領域の調整による関心領域の設定を行わないと判定した場合には、ステップS5100へと処理を進める。
【0046】
ステップS5080において、関心領域設定部114は、操作部186を介したユーザ操作に基づいて、MRI画像座標系C_MRIにおける対応領域の調整を行う。そして、調整された領域を新たに関心領域として設定する。例えば、ステップS5060で生成した表示画像を表示部184に表示し、表示された画像上で、対応領域を表す図形の頂点や線や面を不図示のマウスを使って移動させることによって、対応領域を調整(拡大や縮小)することができる。または、対応領域の全体を不図示のマウスを使って移動させることによって調整することもできる。さらに、不図示のキーボードを用いて、対応領域全体の移動量や拡大率等を入力することによって調整してもよい。
【0047】
ステップS5090において、変換領域算出部116は、ステップS5080で設定した関心領域に対応する撮像状態の被検体上の領域(変換領域)を算出する。具体的には、まず、ステップS5020で取得した変形関数F(x,y,z)を用いて、MRI画像座標系C_MRIにおける関心領域に変形処理を施して、MRI画像座標系C_MRIにおける、保持後の形状状態の領域に変換する。そして、ステップS5030で算出した座標変換行列T_MtoPを用いて、PAT装置座標系C_PATにおける領域(変換領域)に剛体変換する。
【0048】
なお、関心領域の設定を変更する度に変換領域を算出するのではなく、関心領域の設定が完了した後に変換領域を算出してもよい。完了の判定は、例えば、不図示のモニタ上に配置された完了ボタンを操作者が不図示のマウスでクリックするなどして入力すればよい。
【0049】
ステップS5100において、撮像領域設定部108は、ステップS5090で算出した変換領域に基づいて、第2医用画像撮像装置182によるPAT画像撮像領域を算出する。具体的には、ステップS5090で算出した変換領域に外接する直方体を算出し、当該直方体を改めて3次元の撮像領域とする。なお、直方体の各線分は、PAT装置座標系C_PATの各軸と平行であるものとし、XY平面に平行な2つの面はZ=0上およびZ=d上に位置するものとする。
【0050】
ここで、ステップS5020で算出した変形情報の誤差を考慮して、撮像領域を大きめに調整してもよい。例えば、所定の値をマージンとして付加することができる。また、ステップS5010で算出する変形情報の中に変形情報を算出する際の誤差に関する情報(例えば位置合わせの残差)も含まれるものとし、その誤差に関する情報に基づいて、付加するマージンを定めてもよい。例えば、3次元の撮像領域の各面のうち、XY平面に平行な2つの面を除く4つの面を、マージンの分だけ大きめに設定し直す。これにより、腫瘍701等の注目領域の一部が撮像領域から外れることを防止することができる。
【0051】
なお、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を、さらに外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域に変換し、外観画像400と併せて表示部184の撮像領域設定画面に表示してもよい。その場合、まず、カメラ座標系C_CAMからPAT装置座標系C_PATへの座標変換行列T_CtoPの逆行列を用いて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域をカメラ座標系C_CAMにおける撮像領域に変換する。そして、カメラ座標系C_CAMから外観画像座標系C_IMGに変換して、外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域を算出すればよい。
【0052】
ステップS5110において、終了判定部113は、操作部186の操作に基づいて、撮像領域の設定処理を終了するか否かを判定する。例えば、不図示のモニタ上に配置された終了ボタンを操作者が不図示のマウスでクリックした場合に、終了すると判定する。終了すると判定した場合には、画像処理装置100の処理を終了させる。一方、終了しないと判定した場合には、ステップS5120へと処理を進め、撮像領域の設定を実行する。
【0053】
ステップS5120において、撮像領域設定部108は、操作部186の操作に基づいて、第2医用画像撮像装置182によるPAT画像の撮像領域を調整する。具体的には、外観画像400を表示部184に表示し、表示された当該画像上で、不図示のマウスやキーボードなどを用いて、設定された撮像領域603(2次元の矩形領域)の範囲をユーザが手動で調整する。本実施形態では、被検体(乳房など)の体表上に腫瘍等の注目領域を示すマークがペンなどで描画されているものとし、表示された画像上でユーザが視認した情報に基づき、例えば当該マークの全体が含まれるようにユーザが撮像領域603の範囲を調整する。すなわち、撮像領域設定部108は、操作部186を介したユーザ操作に基づいて第3の画像(外観画像400)上で撮像領域603の入力を受け付けることにより撮像領域を再設定する。
【0054】
さらに、外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域603に基づいて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を、ステップS5040と同様の処理によって求める。例えば、撮像領域603の4頂点を、カメラ座標系C_CAMにおける4点に変換した上で、それら4点とカメラ座標系における原点とを結ぶ4直線と保持板303との4つの交点を求め、PAT装置座標系C_PATにおける4点に変換する。そして、それらの4点に外接する矩形を、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域として設定する。ここで、PAT装置座標系C_PATにおけるZ=0の2次元平面上の撮像領域(矩形領域)をZ=0からZ=d(保持後の平板間の距離)まで押し出すことで形成される直方体の領域を、3次元の撮像領域として設定する。その後、ステップS5050に戻り、以降の処理が繰り返される。すなわち、ステップS5050において、対応領域算出部110は、撮像領域の再設定に応じて対応領域を再算出し、ステップS5060において、表示画像生成部112は、対応領域の再算出に応じて、表示画像を再生成する。
【0055】
以上のようにして、画像処理装置100の一連の処理が実施される。その後、設定された撮像領域に基づいて第2医用画像撮像装置182によるPAT画像の撮像が実施される。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置100は、第1の形状状態(非保持状態)における被検体(例えば、乳房)の第1の画像(MRI画像200)を取得する第1の画像取得部(医用画像取得部102)と、第2の形状状態(保持板303、304により被検体が保持された保持状態)における被検体の撮像領域(撮像領域603)を設定する撮像領域設定部108と、第2の形状状態(保持状態)から第1の形状状態(非保持状態)への被検体の変形情報(変形関数)を取得する変形情報取得部106と、変形情報(変形関数)に基づいて、第1の形状状態(非保持状態)における撮像領域(撮像領域603)の対応領域(対応領域702)を算出する対応領域算出部110と、第1の画像(MRI画像200)と対応領域(対応領域702)とに基づいて表示画像(MRI_VR画像、MIP画像)を生成する表示画像生成部112とを備えている。
【0057】
これにより、PAT画像の撮像領域を設定する際に、被検体を撮像したMRI画像中に当該撮像領域に対応する対応領域を表示することが可能となり、MRI等の参照画像中のうち何れの範囲が撮像されるのかを可視化することができる。そのため、ユーザが表示を確認しながら撮像領域を調整することができる。
【0058】
このように、本実施形態によれば、被検体内における腫瘍等の注目領域が適切に撮像されるようにPAT画像の撮像領域を設定することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る画像処理装置100は、対応領域(対応領域702)を調整することにより(対応領域が拡大縮小等された)関心領域を設定する関心領域設定部114と、設定された関心領域を変形情報に基づいて変形させて、関心領域に対応する、第2の形状状態(保持状態)における変換領域を算出する変換領域算出部116とを備えており、撮像領域設定部108は、算出された変換領域に基づいて被検体の撮像領域を設定する。
【0060】
これにより、MRI等の参照画像中の対応領域の範囲を調整して、よりユーザに関心のある関心領域の設定を行った上で、当該関心領域が含まれるように(被検体内における腫瘍等の注目領域が適切に撮像されるように)撮像領域を設定することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、人体の乳房を被検体とする場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らず、任意の被検体であってもよい。
【0062】
<変形例1>
本実施形態では、変形情報を算出する際の誤差に関する情報に基づいて、対応領域または撮像領域を再設定する場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、予め所定のマージンを既知の情報として画像処理装置100が保持しているものとし、その所定のマージンに基づいて算出した領域を再設定するようにしてもよい。その際に、対応領域を狭めに再設定する際の所定のマージンと、撮像領域を広めに再設定する際の所定のマージンとは、夫々異なる値であってもよい。
【0063】
さらに、PAT画像の再構成方法も考慮して所定の値を設定してもよい。例えば、撮像領域よりも広範囲を再構成することができる再構成方法を用いる場合には、所定の値を小さめの値に設定してもよい。
【0064】
<変形例2>
本実施形態では、変形情報を算出する際の誤差に関する情報に基づいて、対応領域や撮像領域を再設定する場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、対応領域や撮像領域とは異なる別の領域を新たに設定して、対応領域や撮像領域とは異なる態様で表示してもよい。その場合、3次元のMRI画像のボリュームレンダリング画像を、新たに設定した領域に基づいて表示してもよい。または、新たに設定した領域と3次元の撮像領域との両方に基づいて表示してもよく、その際には、新たに設定した領域と3次元の撮像領域との間の領域を、異なる態様のボリュームレンダリング画像で表示してもよい。
【0065】
<変形例3>
本実施形態では、3次元の対応領域に基づいて3次元のMRI画像のボリュームレンダリング画像を表示する場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、MRI画像のアキシャル断面(XY平面)と、アキシャル断面で3次元の対応領域を切り取った図形とを表示してもよい。また、アキシャル断面のうち対応領域の内部または外部のみを表示してもよい。その際に、腫瘍701を含むアキシャル断面を選択して表示してもよいし、Z=0とZ=d(保持後の平板間の距離)との間のアキシャル断面を順次表示して、腫瘍701の全体が含まれているかどうかを確認できるようにしてもよい。また、MRI画像のアキシャル断面に限らず、サジタル断面(YZ平面)やコロナル断面(XZ平面)上で対応領域の確認ができるようにしてもよい。さらに、変形MRI画像のアキシャル断面、サジタル断面、コロナル断面に限らず、曲断面を含む任意の断面で対応領域を確認できるようにしてもよい。また、本変形例における断面画像は、断面から所定の範囲内における画素値の最大値を断面上に投影した最大値投影画像(MIP(Maximum Intensity Projection)画像)であってもよい。すなわち、表示画像生成部112は、対応領域外または対応領域内における第1の画像(MRI画像)のボリュームレンダリング画像または最大値投影画像を生成してもよい。
【0066】
<変形例4>
本実施形態では、第1医用画像撮像装置180としてMRI装置を用いる場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)/SPECT(Single Photon Emission CT)装置、3次元超音波装置などを用いることができる。また、その他の何れのモダリティであってもよい。その場合、第1の画像には、X線CT画像、断層画像、超音波画像など、様々な画像が含まれる。これらのモダリティを用いる場合には、平板圧迫変形の推定のみならず、撮像体位が異なることによる変形(例えば仰臥位から伏臥位への重力変形)の推定も行って、変形関数F(x,y,z)を求めておけばよい。なお、仰臥位から伏臥位への重力変形の推定には、例えば非特許文献2(後述する。)に開示されている、重力変形シミュレーションに基づく手法を用いることができる。非特許文献2は、 Y.Hu,et al."A statistical motion model based on biomechanical simulations,"Proc.MICCAI 2008,Part I,LNCS 5241,pp.737−744,2008.である。
【0067】
また、第1医用画像撮像装置180と第2医用画像撮像装置182は同一の撮像装置であってもよく、PAT装置で過去に同じ被検体を撮像した画像を第1の画像としてもよい。また、本実施形態では、第2医用画像撮像装置182としてPAT装置を用いる場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、X線マンモグラフィ装置や超音波診断装置であってもよく、それ以外の何れのモダリティであってもよい。
【0068】
<変形例5>
本実施形態では、第2医用画像撮像装置182によるPAT画像の撮像領域603の初期設定および調整を外観画像400上で行う場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を表す4頂点の座標値を不図示のキーボードなどを用いて直接入力してもよい。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態では、MRI画像中で設定した関心領域に基づいてPAT画像の撮像領域を自動で設定する場合について説明する。以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0070】
<画像診断システム8の構成>
図8は、本実施形態に係る画像診断システム8の構成を示す。なお、
図1と同じ機能を有する処理部については同じ番号、記号を付けており、その説明を省略する。
【0071】
画像診断システム8は、画像処理装置800と、第1医用画像撮像装置180と、第2医用画像撮像装置182と、表示部884と、操作部186と、データサーバ190とを有している。
【0072】
<画像処理装置800の機能ブロック構成>
画像処理装置800は、データサーバ190、第2医用画像撮像装置182、表示部884、操作部186と接続されている。画像処理装置100は、医用画像取得部102と、外観画像取得部104と、変形情報取得部106と、撮像領域設定部108と、表示画像生成部812と、終了判定部813と、関心領域設定部814と、変換領域算出部116とを備えている。ここで、画像処理装置800には、第1実施形態で説明した画像処理装置100の構成における対応領域算出部110が含まれていない。
【0073】
表示画像生成部812は、データサーバ190から医用画像取得部102により取得されたMRI画像200と、関心領域設定部814により設定された関心領域とに基づいて表示画像を生成して、表示部884の関心領域設定画面に表示する。
【0074】
終了判定部813は、関心領域設定部814による関心領域の設定処理を終了するか否かの判定を行う。
【0075】
関心領域設定部814は、表示部884の関心領域設定画面上で関心領域を設定し、当該関心領域の情報を表示画像生成部812および変換領域算出部116へ出力する。
【0076】
表示部884は、関心領域を設定するための関心領域設定画面を表示し、また画像処理装置800が生成する表示画像を表示する。
【0077】
なお、上記機能ブロックの構成はあくまでも一例であり、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックを構成するようにしてもよいし、何れかの機能ブロックが更に複数の機能ブロック分かれて構成されてもよい。
【0078】
<画像処理装置800が実施する処理>
次に、
図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係る画像処理装置800が実施する処理の手順について説明する。
【0079】
本実施形態では、
図5を参照して説明した第1実施形態に係る画像処理装置100が実施する処理のうち、ステップS5040、ステップS5050、ステップS5070、ステップS5080、およびステップS5110の処理は実施されない。そして、ステップS5060およびステップS5100の処理の代わりに、後述のステップS9060、およびステップS9100の処理が行われる点が異なっている。さらに、ステップS9060の処理の前にステップS9055が存在し、ステップS9060の処理の後にステップS9065およびステップS9067が存在する点が異なっている。ステップS9000−S9030、S9090の各処理は、それぞれステップS5000−S5030、S5090の各処理と同様である。以下、主に差異点について説明していく。
【0080】
まず、ステップS9055において、関心領域設定部814は、MRI画像座標系C_MRIにおける関心領域の初期設定を行う。例えば、MRI画像200の全体を含む直方体を関心領域の初期値として設定する。
【0081】
ステップS9060において、表示画像生成部812は、
図10に示すように、MRI画像のボリュームレンダリング画像(MRI_VR画像)1000および関心領域1002に基づいて表示画像を生成し、表示部884の関心領域設定画面に表示する。例えば、
図10(A)に示すように、関心領域の内部をボリュームレンダリング表示すればよい。この場合には、腫瘍1001等の注目領域が関心領域の内部に含まれているかどうかを確認することができる。逆に、
図10(B)に示すように、関心領域の外部をボリュームレンダリング表示してもよい。この場合には、腫瘍1001等の関心領域の一部が対応領域から外れていないかどうかを確認することができる。または、
図10(C)に示すように、MRI画像全体のボリュームレンダリング画像と関心領域を表す図形とを重ねて表示してもよい。
【0082】
ステップS9065において、終了判定部813は、操作部186を介したユーザ操作に基づいて、関心領域の設定処理を終了するか否かを判定する。例えば、不図示のモニタ上に配置された終了ボタンを操作者が不図示のマウスでクリックした場合に、終了すると判定する。終了すると判定した場合には、ステップS9090へと処理を進める。一方、終了しないと判定した場合には、ステップS9067へと処理進める。
【0083】
ステップS9067において、関心領域設定部814は、操作部186を介したユーザ操作に基づいて、MRI画像座標系C_MRIにおける関心領域の範囲の調整を行う。例えば、ステップS9060で生成した表示画像を表示部884の関心領域設定画面に表示し、表示された画像上で、関心領域を表す図形の頂点や線や面を不図示のマウスを使って移動させることによって、関心領域の範囲を調整する。または、関心領域の全体を不図示のマウスを使って移動させることによって調整することもできる。さらに、不図示のキーボードを用いて、関心領域全体の移動量や拡大率等を入力することによって調整してもよい。このように、関心領域設定部814は、ユーザ操作に基づいて第1の画像(MRI画像200)上で関心領域1002の入力を受け付けることにより関心領域1002を再設定する。ステップS9067の処理の後、ステップS9060に戻り、表示画像生成部812は、表示画像を再生成する。
【0084】
ステップS9100において、撮像領域設定部108は、ステップS5090と同様の処理であるステップS9090で算出した変換領域に基づいて、第2医用画像撮像装置182によるPAT画像のための撮像領域を設定する。ここで、ステップS9067により関心領域の再設定がなされている場合、ステップS9090において、変換領域算出部116は、関心領域1002の再設定に応じて変換領域を再算出している。その場合、ステップS9100において、撮像領域設定部108は、変換領域の再算出に応じて、撮像領域を再設定することになる。具体的な処理の中身は、ステップS5100と同様であるため、説明を省略する。
【0085】
なお、ステップS9020において、変形情報取得部106は、変形情報に加えて、第1の形状状態から第2の形状状態への被検体の変形を推定する際の誤差に関する情報をさらに取得してもよい。その場合、ステップS9090において、変換領域算出部116は、変形情報と、誤差に関する情報とに基づいて変換領域を算出してもよい。
【0086】
以上のようにして、画像処理装置800の一連の処理が実施される。その後、設定された撮像領域に基づいて第2医用画像撮像装置182によるPAT画像の撮像が実施される。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置800は、第1の形状状態(非保持状態)における被検体(例えば、乳房)の第1の画像(MRI画像200)を取得する第1の画像取得部(医用画像取得部102)と、第1の画像(MRI画像200)上に被検体の関心領域(関心領域1002)を設定する関心領域設定部814と、第1の形状状態(非保持状態)から第2の形状状態(保持板303、304により被検体が保持された保持状態)への被検体の変形情報(変形関数)を取得する変形情報取得部106と、変形情報(変形関数)に基づいて、第1の形状状態(非保持状態)における関心領域(関心領域1002)に対応する第2の形状状態における領域を算出する領域算出部(110、116)と、当該領域に基づいて、第2の形状状態(保持状態)における被検体の撮像領域を設定する撮像領域設定部108と、を備える。
【0088】
これにより、PAT画像の撮像時とは異なる形状状態の被検体を撮像した参照画像(MRI画像)中で関心領域を設定し、当該関心領域に基づいてPAT画像の撮像領域を自動で設定することができる。また、ユーザが表示を確認しながら関心領域を調整することができるので、撮像領域を適切に設定することができる。
【0089】
このように、本実施形態によれば、被検体内における腫瘍等の注目領域が適切に撮像されるようにPAT画像等の撮像領域を設定することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、直方体の関心領域を設定する場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らず、例えば円柱や楕円体など任意の形状の領域であってもよい。また、関心領域は、腫瘍等の注目領域の輪郭を手動または自動で抽出した領域であってもよい。さらに、抽出した領域を包含する直方体等の領域を手動または自動で設定し、当該領域を関心領域としてもよい。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様の変形例をとることができる。
【0091】
(第3実施形態)
第1および第2実施形態では、第2医用画像撮像装置182として、2枚の平板で被検体を保持する方式のPAT装置を用いる場合を例として説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らず、何れの保持方式であってもよい。本実施形態では、被検体を2つの保持部材で挟みこむのではなく、1つの保持部材を体に押し付けることで、被検体が薄くなるように圧迫して保持する方式のPAT装置を用いる場合について説明する。特に、保持部材として伸縮性の保持膜を用いる場合について説明する。以下、本実施形態に係る画像処理装置について、第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0092】
<画像診断システム11の構成>
図11は、本実施形態に係る画像診断システム11の構成を示す。なお、
図1と同じ機能を有する処理部については同じ番号、記号を付けており、その説明を省略する。
【0093】
画像診断システム11は、画像処理装置1100と、第1医用画像撮像装置180と、第2医用画像撮像装置1182と、表示部184と、操作部186と、データサーバ190とを有している。
【0094】
第2医用画像撮像装置1182は光音響断層撮像装置(PAT装置)であり、後述する画像処理装置1100の撮像領域設定部108により設定される撮像領域の範囲内に近赤外光パルスを照射することによって、被検者の第2の形状状態(乳房が保持膜により圧迫された状態)における乳房を撮像してPAT画像(第2の画像)を取得する。ここで、
図12は第2医用画像撮像装置1182による撮像の様子を示す模式図である。被検者は第2医用画像撮像装置1182の上面1202のベッドで伏臥位の体位をとる。そして、被検体である片側の乳房1201を第2医用画像撮像装置1182の上面1202の開口部1203に挿入する。このとき、乳頭から大胸筋に向かう方向の照射光が乳房の内部まで届くように、乳房は透明な保持膜1204により乳頭から大胸筋に向かう方向に圧迫した状態で保持され、その厚みが薄くなった状態で撮像される。ここで、保持膜1204は一定の張力を有しており、乳房1201を挿入する以前は平面状の形状となっている。そして、挿入した乳房1201からの圧力を受けることによって、保持膜1204は変形して撓んだ状態となる。すなわち、本実施形態では、乳房と接触する面(保持面)は曲面となる。
【0095】
第2医用画像撮像装置1182は、照射部1208と超音波探触子1205からなる撮像ユニット1209を備えている。撮像ユニット1209は、該撮像ユニットの上部(撮像ユニット1209からみて上面1202に直交する方向)が撮像されるように、可動ステージ1207に装着されている。照射部1208は、照射光である近赤外光パルスを被検体に向けて照射する。そして、超音波探触子1205は、近赤外光パルスの照射に応じて被検体内で発生した光音響信号を受信する。すなわち、第2医用画像撮像装置1182は、可動ステージ1207によって撮像ユニット1209を撮像領域の範囲内で移動(スキャン)させながら、撮像領域の範囲内の乳房の撮像を行う。本実施形態では、PAT装置座標系C_PATを以下のように定義する。すなわち、上面1202に平行な平面をXZ平面とし、被検者の右手から左手への方向を表す軸をX軸、被検者の足から頭に向かう方向を表す軸をZ軸と定義する。また、上面1202の法線方向をY軸とし、被検者の正面から背面に向かう方向をY軸の正方向と定義する。そして、上面1202における右手側の下端位置を原点とする。
【0096】
また第2医用画像撮像装置1182には、さらに乳房の外観画像(第3の画像)を撮像するための不図示のカメラが搭載されている。このカメラは、保持膜1204を通して被検者の正面側から乳房の外観を撮像可能な位置に設置されている。そして、C_CAMは、カメラの焦点位置を原点とするカメラ座標系である。ここで、カメラは、PAT装置座標系C_PATにおいて校正済みであるものとする。
図14は、カメラによって被検者の正面側から撮像された乳房の外観画像1400を示す模式図である。本実施形態では、Y=0のXZ平面上に外観画像1400が位置するものとする。
【0097】
<画像処理装置1100の機能ブロック構成>
画像処理装置1100は、データサーバ190、第2医用画像撮像装置1182、表示部184、操作部186と接続されている。画像処理装置1100は、医用画像取得部102と、外観画像取得部104と、変形情報取得部1106と、撮像領域設定部108と、対応領域算出部110と、調整判定部111と、表示画像生成部112と、終了判定部113と、関心領域設定部114と、変換領域算出部116とを備えている。
【0098】
変形情報取得部1106は、MRI画像200を保持膜1204により圧迫された状態の乳房に変形位置合わせすることにより変形情報を算出して取得し、当該変形情報を対応領域算出部110へ出力する。
【0099】
<画像処理装置1100が実施する処理>
次に、
図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る画像処理装置1100が実施する処理の手順について説明する。本実施形態では、
図5を参照して説明した第1実施形態に係る画像処理装置100が実施する処理と比較して、ステップS13020、ステップS13040、ステップS13100、およびステップS13120の処理が、対応するステップS5020、ステップS5040、ステップS5100、およびステップS5120の処理と異なっている。
【0100】
ステップS13020において、変形情報取得部1106は、MRI画像を保持膜1204により圧迫された状態の乳房の形状に変形させるための変形情報を取得する。本実施形態に係る画像処理装置1100が実施する処理は、PAT画像座標系C_PATとMRI画像座標系C_MRIとにおける被検者の姿勢が略一致しているものと仮定する。すなわち、保持膜1204により、MRI画像座標系C_MRIにおけるY軸方向に概ね沿って乳房が圧縮されるものとする。また、物理変形シミュレーションの際に、乳房1201の外形形状およびMRI画像200における大胸筋の形状を入力するものとする。
【0101】
ここで、PAT装置座標系C_PATにおける乳房1201の外形形状は、例えば、第2医用画像撮像装置1182における乳房を計測可能な位置に設置された1つ以上の距離計測装置1206を用いて取得することができる(
図12の例では距離計測装置1206A、1206B)。すなわち、距離計測装置1206で乳房の距離画像を撮像し、その画像中の乳房領域を不図示のマウスやキーボードなどを用いてユーザが手動で指定することによって、乳房1201の外形形状を取得することができる。その際に、距離計測装置1206はPAT装置座標系C_PATにおいて校正済みであるものとする。ここで、PAT装置座標系C_PATにおける乳頭位置も、距離計測装置1206を用いて取得することができる。なお、乳房1201の外形形状の代わりに、距離計測装置1206を用いて保持膜1204の形状を取得して用いてもよい。
【0102】
また、MRI画像座標系C_MRIにおける大胸筋の形状は、MRI画像200に対して、公知の画像解析手法を適用したり、不図示のマウスやキーボードなどを用いてユーザが手動で指定したりすることによって、取得することができる。
【0103】
ステップS13040において、撮像領域設定部108は、第2医用画像撮像装置182の撮像領域の初期設定を行う。本実施形態では、
図14に示すように、撮像領域1403を外観画像座標系C_IMGにおいて設定するものとする。そして、外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域の初期値に基づいて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を求める。例えば、設定された撮像領域の4頂点を、まずカメラ座標系C_CAMにおける4点に変換した上で、それら4点とカメラ座標系における原点とを結ぶ4直線と上面1202との4つの交点を求め、PAT装置座標系C_PATにおける4点に変換する。そして、それらの4点に外接する矩形を、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域とする。
【0104】
ステップS13100において、撮像領域設定部108は、ステップS11090で算出した変換領域に基づいて、第2医用画像撮像装置1182によるPAT画像撮像領域を算出する。具体的には、ステップS11090で算出した変換領域に外接する直方体を算出し、当該直方体を改めて3次元の撮像領域とする。なお、直方体の各線分は、PAT装置座標系C_PATの各軸と平行であるものとする。
【0105】
ステップS13120において、撮像領域設定部108は、操作部186の操作に基づいて、第2医用画像撮像装置1182によるPAT画像の撮像領域を調整する。具体的には、外観画像1400を表示部184に表示し、表示された当該画像上で、不図示のマウスやキーボードなどを用いて、設定された撮像領域1403(2次元の矩形領域)の範囲をユーザが手動で調整する。さらに、外観画像座標系C_IMGにおける撮像領域に基づいて、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域を、ステップS13040と同様の処理によって求める。例えば、撮像領域の4頂点を、カメラ座標系C_CAMにおける4点に変換した上で、それら4点とカメラ座標系における原点とを結ぶ4直線と上面1202との4つの交点を求め、PAT装置座標系C_PATにおける4点に変換する。そして、それらの4点に外接する矩形を、PAT装置座標系C_PATにおける撮像領域として設定する。ここで、PAT装置座標系C_PATにおけるY=0の2次元平面上の撮像領域(矩形領域)をY=0からY=d(上面1202から保持膜1204の最深部までの距離)まで押し出すことで形成される直方体の領域を、3次元の撮像領域として設定する。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る画像処理装置1100は、第1の形状状態(非保持状態)における被検体(例えば、乳房)の第1の画像(MRI画像200)を取得する第1の画像取得部(医用画像取得部102)と、第2の形状状態(保持膜1204により被検体が保持された保持状態)における被検体の撮像領域を設定する撮像領域設定部108と、第2の形状状態(保持状態)から第1の形状状態(非保持状態)への被検体の変形情報(変形関数)を取得する変形情報取得部1106と、変形情報(変形関数)に基づいて、第1の形状状態(非保持状態)における撮像領域の対応領域を算出する対応領域算出部110と、第1の画像(MRI画像200)と対応領域とに基づいて表示画像(MRI_VR画像、MIP画像)を生成する表示画像生成部112とを備えている。
【0107】
これにより、PAT画像の撮像領域を設定する際に、被検体を撮像したMRI画像中に当該撮像領域に対応する対応領域を表示することが可能となり、MRI等の参照画像中のうち何れの範囲が撮像されるのかを可視化することができる。そのため、ユーザが表示を確認しながら撮像領域を調整することができる。また、本実施形態によれば、両側から乳房を圧迫する構成に比べて、被検者の負担を軽減することができる。
【0108】
<第3実施形態の変形例1>
本実施形態では、1枚の保持膜により被検体が薄くなるように圧迫して保持する場合を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、保持部材としてアーチ状や盥状の形状の容器(保持容器とする)を当てることで、乳房が薄くなるように保持する構成であってもよい。保持容器の形状が既知である場合には、保持容器の形状に合わせて、MRI画像中の被検体の形状が一致するようにMRI画像の変形を推定すればよい。また、保持容器の形状が未知の場合や、保持容器と被検体の間にマッチング剤やマッチング液が存在する場合には、距離計測装置で取得した乳房側面の外形形状に合わせてMRI画像の変形を推定してもよい。また、平面状の保持板を乳頭方向から押し当てて保持する保持形態であってもよい。この場合には、距離計測装置で取得した乳房側面の外形形状と平面の形状を組み合わせて、乳房の外形形状とすればよい。
【0109】
<第3実施形態の変形例2>
本実施形態では、撮像領域1403が2次元の矩形領域である場合を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、撮像領域1403は、可動ステージ1207によって撮像ユニット1209を移動(スキャン)させる方式に応じて、円や楕円で囲まれた領域としてもよい。あるいは、任意の閉曲線で囲まれた領域としてもよい。
【0110】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0111】
100:画像処理装置、102:医用画像取得部、104:外観画像取得部、106:変形情報取得部、108:撮像領域設定部、110:対応領域算出部、111:調整判定部、112:表示画像生成部、113:終了判定部、114:関心領域設定部、116:変換領域算出部