特許第6431403号(P6431403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431403
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/56 20060101AFI20181119BHJP
   B60N 2/66 20060101ALI20181119BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20181119BHJP
   B60H 1/34 20060101ALN20181119BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20181119BHJP
【FI】
   B60N2/56
   B60N2/66
   A47C7/74 Z
   !B60H1/34 651A
   !B60H1/00 102V
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-31757(P2015-31757)
(22)【出願日】2015年2月20日
(65)【公開番号】特開2016-153266(P2016-153266A)
(43)【公開日】2016年8月25日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】荒田 和善
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−052494(JP,A)
【文献】 特開2003−165325(JP,A)
【文献】 特開2011−156993(JP,A)
【文献】 特開平09−254642(JP,A)
【文献】 特開平10−057201(JP,A)
【文献】 特開2000−125990(JP,A)
【文献】 特表2006−524159(JP,A)
【文献】 特開2007−126047(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0295339(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102009024781(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
B60H 1/00
B60H 1/34
B68G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が座るシートクッションと、
前記シートクッションに座った乗員が背を凭れるシートバックと
を備えた車両用シートであって、
前記シートバックは、
乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、
表面を前記シートカバーで覆われて通気用の穴が上下および左右方向に複数形成された
パッド部材と、
前記シートクッションに座った乗員の腰椎を支えるためのランバー機構部品と、
前記パッド部材の裏面側に配置された送風機と、
前記パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちの前記ランバー機構部品よりも上方の
少なくとも一つの穴と前記送風機とを接続するダクトと、
前記送風機と前記ダクトと前記ランバー機構部品を覆って前記パッド部材の裏面側と密
閉空間を形成するカバーと
を有して前記パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちの前記ランバー機構部品よりも上方の少なくとも一つの穴であって前記ダクトを介して前記送風機と接続する穴の空気の流れと、前記裏面側が前記カバーで覆われた前記パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちの前記ランバー機構部品が設置されている前記シートバックの下部の領域の通気用の穴の空気の流れとが、互いに反対方向であることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シートであって、前記送風機を作動させることにより、前記シー
トカバーの表面から前記パッド部材に形成された複数の通気用の穴のうち前記ダクトと接
続された穴以外の穴を通して前記パッド部材の前記裏面側と前記カバーとで形成された密閉空間内に空気を吸い込み、前記吸い込んだ空気を前記送風機から前記ダクトを介して前記パッド部材に設けた前記ダクトと接続する通気用の穴から前記シートカバーの表面に吹き出すことを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1記載の車両用シートであって、前記送風機を作動させることにより、前記ダク
トを介して前記パッド部材に設けた前記ダクトと接続する通気用の穴から前記シートカバ
ーの表面から空気を吸い込み、前記吸い込んで前記パッド部材の前記裏面側と前記カバーとで形成された密閉空間内に導入した空気を前記パッド部材に形成された複数の通気用の穴のうち前記ダクトと接続された穴以外の穴を通して前記シートカバーの表面から吹き出すことを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
乗員が座るシートクッションと、
前記シートクッションに座った乗員が背を凭れるシートバックと
を備えた車両用シートであって、
前記シートバックは、
乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、
表面を前記シートカバーで覆われて通気用の穴が複数形成されたパッド部材と、
前記パッド部材の裏面側に配置された送風機と、
前記パッド部材に設けた複数の前記通気用の穴のうちの前記パッド部材の上部において少なくとも一つの通気用の穴と前記送風機とを接続するダクトとを有し、
前記パッド部材の上部に形成した前記ダクトと接続する前記少なくとも一つの通気用の穴を通して前記シートカバーの表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しの何れか一方を前記送風機と接続する前記ダクトを用いて行い、前記ダクトと接続する前記少なくとも一つの通気用の穴から前記空気を吸い込むときには前記パッド部材の下部に形成した通気用の穴を通して前記ダクトを用いずに前記シートカバーの表面からの空気の吹き出しを行い、前記ダクトと接続する前記少なくとも一つの通気用の穴から前記空気を吹き出すときには前記パッド部材の下部に形成した通気用の穴を通して前記ダクトを用いずに前記シートカバーの表面からの空気の吸い込みを行うことを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の車両用シートであって、前記送風機としてシロッコファンを用
いたことを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項1又は4に記載の車両用シートであって、前記送風機として軸流ファンを用いた
ことを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車などの車両用シートに係り、特に乗員が着座するシートに空気(風)を送る送風機能を備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートの乗員が着座するシートクッション及びシートクッションに着座した乗員が背を凭れかかるシートバックのそれぞれの快適性を保つために、シートの表面から空気を吸い込んでこの吸い込んだ空気をシートの別な場所から排出するような手段が用いられている。
【0003】
このような構成の一例として、特許文献1には、シートバックの裏側に送風機を取り付けて、送風機を回転させた状態でシートバック表面の側面近くに形成した穴から吸い込み用ダクトを介してシートバックの表面付近の空気を吸い込み、この吸い込んだ空気を吹き出し用ダクトを介して中央部に形成した穴からバックシートの表面に吹き出す構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−52494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートバックの下部には、シートクッションに着座した乗員が背を凭れかかったときに乗員の腰椎を支えるためのランバー機構が備えられている。シートバックの裏面の上部 (上側)は比較的空間があり、送風機とダクトを用いてシートバック表面からの空気の吸い込みや吹き出しを行える。しかし、シートバックの裏面の下部 (下側)はランバー機構があるために比較的空間が狭く、ダクトを配置することが難しい。
【0006】
従って、特許文献1に記載されているような、送風機とダクトを用いてシートバック表面からの空気の吸い込みや吹き出しが行えるのはシートバックの上側に限られてしまい、ランバー機構が設置されているシートバックの下部では、ダクトを用いて表面からの空気の吸い込みや吹き出しを行うことができない。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、ランバー機構が設置されているシートバックの下部を含むシートバック表面の広い領域からの空気の吸い込みや吹き出しを行うことを可能にする車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、乗員が座るシートクッションと、シート
クッションに座った乗員が背を凭れるシートバックとを備えた車両用シートにおいて、シ
ートバックを、乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、表面を
シートカバーで覆われて通気用の穴が上下および左右方向に複数形成されたパッド部材と
、シートクッションに座った乗員の腰椎を支えるためのランバー機構部品と、パッド部材
の裏面側に配置された送風機と、パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちのランバー
機構部品よりも上方の少なくとも一つの穴と送風機とを接続するダクトと、送風機とダク
トとランバー機構部品を覆ってパッド部材の裏面側と密閉空間を形成するカバーとを備え、
パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちのランバー機構部品よりも上方の少なくとも一つの穴であってダクトを介して送風機と接続する穴の空気の流れと、裏面側がカバーで覆われたパッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちのランバー機構部品が設置されているシートバックの下部の領域の通気用の穴の空気の流れとが、互いに反対方向であるように構成した。
【0009】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、乗員が座るシートクッションと、
シートクッションに座った乗員が背を凭れるシートバックとを備えた車両用シートにおい
て、シートバックは、乗員が背を凭れる面に配置されて通気性を有するシートカバーと、
表面をシートカバーで覆われて通気用の穴が複数形成されたパッド部材と、パッド部材の
裏面側に配置された送風機と、パッド部材に設けた複数の通気用の穴のうちのパッド部材
の上部において少なくとも一つの通気用の穴と送風機とを接続するダクトとを有し、パッド部材の上部に形成したダクトと接続する少なくとも一つの通気用の穴を通してシートカバーの表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しの何れか一方を送風機と接続するダクトを用いて行い、ダクトと接続する少なくとも一つの通気用の穴から空気を吸い込むときにはパッド部材の下部に形成した通気用の穴を通してダクトを用いずにシートカバーの表面からの空気の吹き出しを行い、ダクトと接続する少なくとも一つの通気用の穴から空気を吹き出すときにはパッド部材の下部に形成した通気用の穴を通してダクトを用いずにシートカバーの表面からの空気の吸い込みを行うようにした。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ランバー機構が設置されているシートバックの下部を含むシートバック表面の広い領域からの空気の吸い込みや吹き出しを行うことが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両用シートの概略の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る車両用シートのシートバックの概略の構成を示す断面図である。
図3】本発明の実施例1に係る車両用シートのシートバックのパッド部材の概略の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例2に係る車両用シートのシートバックの概略の構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施例3に係る車両用シートのシートバックの概略の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、シートバックの裏面を密閉構造にして、シートバックの上部において表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しの何れか一方をダクトを用いて行い、シートバックの下部においてはダクトを用いずにシートバック表面からの空気の吸い込み又は空気の吹き出しの何れか一方を行う構成とした。これにより、ランバー機構が設置されているシートバックの下部でもシートバック表面からの空気の吸い込みや吹き出しを行うことを可能にし、シートバック表面の比較的広い領域、または任意の箇所において空気の吸い込み及び空気の吹き出しを行えるようにした。
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の対象である車両用シート100の外観を示す。車両用シート100は、乗員(図示せず)が座るシートクッション110と、シートクッション110に座った乗員が背を凭れるシートバック120、乗員の頭部を支えるヘッドレスト130を備えている。
【0015】
図2は、車両用シート100のシートバックの断面を模式的に示したものである。121はシートバック120のシートカバーで通気性を有している。122はウレタンで形成されたシートバック120のパッド部材である。パッド部材122の上側には空気吹き出し用の穴123が、また、パッド部材120の下側には多数の空気吸い込み用の穴124が形成されている。
【0016】
図2に示した構成では、説明を簡単にするために、機構部品の図示を省略してある。
【0017】
シートバック120の裏側には、先端部分が空気吹き出し用の穴123にはめ込まれている送風用ダクト211、送風機212、ランバー機構の部品であるランバー機構部品213があり、それらが裏面カバー210で密閉されている。送風機212としては、シロッコファンを用いる。このシロッコファンを用いた送風機212を作動させると、図2で送風機212の左側の面から空気が吸い込まれ、この吸い込まれた空気は送風機212の上面に取り付けられた送風用ダクト211の側に吐き出される。
【0018】
このような構成で、送風機212を作動させると、送風機212は裏面カバー210で閉じられた空間214内の空気を吸い込んで送風用ダクト211の側に空気を送り込み、送風用ダクト211から空気吹き出し用の穴123を通って通気性のあるシートカバー121から矢印Aで示すようにシートカバー121の表面側に空気が吹き出される。
【0019】
送風用ダクト211の先端部分は、空気吹き出し用の穴123に隙間がないようにはめ込まれている。また、送風用ダクト211の送風機212と接続する部分は、送風機212の側に密着されている。これにより、送風用ダクト211の内部と送風用ダクト211の外部で裏面カバー210の内部の空間214とは分離されて、それぞれ異なる圧力状態にすることができる。このような状態で、送風機212から送風用ダクト211に送り込まれた空気は、裏面カバー210で閉じられた空間214内に再び戻ることなく空気吹き出し用の穴123を通ってシートカバー121の表面側に吹き出される。
【0020】
一方、空気が吸い込まれた裏面カバー210で閉じられた空間214は気圧が大気圧より低くなり、通気性のあるシートカバー121を介してパッド部材120の下側に形成された多数の空気吸い込み用の穴124から矢印Bで示したように空気が吸い込まれる。
【0021】
このように、裏面カバー210で閉じられた空間214内で送風用ダクト211を用いることにより、送風機212を作動させて送風用ダクト211から空気吹き出し用の穴123を通ってシートカバー121の表面側に吹き出すと同時に、通気性のあるシートカバー121を介してパッド部材120の下側に形成された多数の空気吸い込み用の穴124から裏面カバー210で閉じられた空間214の内部に空気が吸い込むことを、効率良く、かつ、安定して行うことができる。
【0022】
図3に、パッド部材122の斜視図を示す。パッド部材122の上部には空気吹き出し用の穴123が形成されており、下部には空気吸い込み用の穴124が多数形成されている。空気吹き出し用の穴123及び空気吸い込み用の穴124は、パッド部材122を貫通して形成されている。
【0023】
なお、図3に示した例では、空気吹き出し用の穴123を1個だけ形成した例を示したが、空気吹き出し用の穴123を複数個設けてもよい。この場合は、送風用ダクト211の先端部分が、パッド部材122形成した空気吹き出し用の穴123の数だけ分岐させて、それぞれの先端部分を空気吹き出し用の穴123に隙間がないようにはめ込むようにする。
【0024】
また、図3に示した例では、空気吸い込み用の穴124がパッド部材122の下部に複数配置した例を示したが、空気吸い込み用の穴124を空気吹き出し用の穴123の近辺、又はパッド部材122の中央部にも設けるようにしてもよい。また、空気吸い込み用の穴124を、パッド部材122の全面に設けてもよい。
【0025】
このように、送風用ダクト211を用いて送風機212で送られる空気と送風機212に吸い込まれる空気とを分離したことにより、送風機212の空気吸い込み側にダクトを配置する必要がなくなり、ランバー機構部品213が設置されているシートバック120の下部に空気吸い込み用の穴124を設けることができる。
【0026】
これにより、空気吹き出し用の穴123と空気吸い込み用の穴124を、シートバック120に対して任意の位置に設けることが可能になり、乗員の腰部周辺の熱の籠りを防ぎ、除湿を効率よく行うことを可能にした。
【実施例2】
【0027】
実施例1においては送風用ダクト211を用いた場合を説明したが、本実施例においては、空気吸い込み用ダクトを用いた例について、図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、本実施例に係るシートバック120−1の断面図を示す。図4に示した構成において、実施例1で説明した構成と同じものについては、同じ番号を付した。実施例1とは、シートバック120−1の裏側の構成が異なる。穴123は、実施例1においては空気吹き出し用の穴として説明したが、実施例2においては空気吸い込み用の穴とする。また、多数の穴124は、実施例1においては空気吸い込み用の穴として説明したが、実施例2においては空気吹き出し用の穴として説明する。
【0029】
図4に示した構成において、シートバック120−1の裏側には、先端部分が空気吸い込み用の穴123にはめ込まれている空気吸い込み用ダクト221、送風機222、ランバー機構部品213があり、それらが裏面カバー220で密閉されて閉じられた空間224の内部に配置されている。空気吸い込み用ダクト221は、送風機222の空気吸い込み側に密着して接続されており、送風機222の空気排出側は、裏面カバー220で密閉されて閉じられた空間224に開放されている。送風機222としては、実施例1と同様に、シロッコファンを用いる。
【0030】
このような構成で、送風機222を作動させると、送風機222は空気吸い込み用ダクト221から空気吸い込み用の穴123を通し通気性のあるシートカバー121を介して、シートカバー121の表面側から矢印Cで示すように空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、送風機222から裏面カバー220で密閉されて閉じられた空間224内に排出される。送風機222から空気が排出された裏面カバー220で密閉されて閉じられた空間224の内部は、気圧が大気圧よりも高くなり、空気吹き出し用の穴124から通気性のあるシートカバー121を介してシートカバー121の表面側に吹き出される。
【0031】
空気吸い込み用ダクト221の先端部分は、空気吸い込み用の穴123に隙間がないようにはめ込まれている。これにより、送風機222から裏面カバー220で密閉されて閉じられた空間224内に排出された空気は、空気吸い込み用ダクト221の側に戻ることなく、空気吹き出し用の穴124を通って矢印Dで示すように、シートカバー121の表面側に吹き出される。
【0032】
このように、裏面カバー210で閉じられた空間214内で空気吸い込み用ダクト211を用いることにより、送風機222を作動させて空気吸い込み用ダクト221から空気吸い込み用の穴123を通ってシートカバー121の表面側から空気を吸い込むと同時に、裏面カバー210で閉じられた空間214の内部に空気が多数の空気吹き出し用の穴124から通気性のあるシートカバー121を介してシートカバー121の表面側に吹き出すことを、効率良く、かつ、安定して行うことができる。
【0033】
本実施例におけるパッド部材122に形成する穴123及び124の配置については、実施例1において図3を用いて説明したのと同じであり、空気を吹き出すか吸い込むかの作用が異なるだけであるので、説明を省略する。
【0034】
本実施例によれば、空気吹き出し用の穴124と空気吸い込み用の穴123を、シートバック120−1に対して任意の位置に設けることが可能になり、乗員の腰部周辺の熱の籠りを防ぎ、除湿を効率よく行うことを可能にした。
【実施例3】
【0035】
実施例1では送風用ダクト211を用いた例について説明し、実施例2では空気吸い込み用ダクト221を用いた例について説明したが、本実施例においては、一つのダクトが送風用ダクトと空気吸い込み用ダクトを兼ねる場合の例について説明する。
【0036】
図5は、本実施例に係るシートバック120−2の断面図を示す。図5に示した構成において、実施例1で説明した構成と同じものについては、同じ番号を付した。実施例1とは、シートバック120−2の裏側の構成が異なる。穴123は、実施例1においては空気吹き出し用の穴として説明したが、実施例3においては空気吹き出し用の穴と空気吸い込み用の穴とを兼ねる。また、多数の穴124は、実施例1においては空気吸い込み用の穴として説明したが、実施例3においては空気吹き出し用の穴と空気吸い込み用の穴とを兼ねる。
【0037】
図5に示した構成において、シートバック120−2の裏側には、先端部分が空気吸い込み用の穴と空気吸い込み用の穴とを兼ねる穴123にはめ込まれている空気吸い込み用と空気吹き出し用とを兼ねるダクト231、送風機232、ランバー機構部品213があり、それらが裏面カバー230で密閉されて閉じられた空間234の内部に配置されている。ダクト231は、送風機232の一方側に接続されており、送風機232の他方の側は、裏面カバー230で密閉されて閉じられた空間234に開放されている。実施例1及び実施例2において、送風機212、又は222としてシロッコファンを用いた場合で説明したが、本実施例においては、軸流ファンを用いる。
【0038】
軸流ファンを用いた送風機232は、電気の極性を変えることによりファンの回転方向を変えることができ、それにより空気の流れの方向を変えることができる。
【0039】
すなわち、送風機232の軸流ファンを正転させることにより、実施例1で説明した場合と同様に、裏面カバー230で密閉されて閉じられた空間234の空気を送風機232で吸い込み、この吸い込んだ空気を送風機232からダクト231の側に吹き出す。このダクト231に側に吹き出された空気は、穴123を通り、通気性のあるシートカバー121を介して、シートカバー121の表面側から矢印Eで示すように吹き出される。
【0040】
ダクト231の先端部分は、穴123に隙間がないようにはめ込まれている。これにより、送風機232からダクト231に送り込まれた空気は、裏面カバー230で閉じられた空間234内に再び戻ることなく穴123を通ってシートカバー121の表面側に矢印Eで示すように空気が吹き出される。
【0041】
一方、空気が吸い込まれた裏面カバー230で閉じられた空間234は気圧が大気圧より低くなり、通気性のあるシートカバー121を介してパッド部材120の下側に形成された多数の3穴124から矢印Fで示したように空気が吸い込まれる。
【0042】
また、送風機232の軸流ファンを逆転させることにより、実施例2で説明した場合と同様に、ダクト231側の空気が送風機232により吸い込まれ、この吸い込まれた空気はダクト231と反対の側の裏面カバー230で密閉されて閉じられた空間234の内部に吹き出される。すなわち、送風機232の軸流ファンを逆転させることにより、ダクト231から穴123を通ってシートカバー121の表面側から空気を吸い込むと同時に、裏面カバー230で閉じられた空間234の内部の空気が、多数の穴124から通気性のあるシートカバー121の表面側に矢印Fの向きと反対の向きに空気が吹き出される。
【0043】
このように、送風機232に軸流ファンを用いることにより、送風機232に印加する電圧の極性を変えることで送風機232から空気を送り出す方向を変えることができる。これにより、シートバックの表面で、空気を吸い込む位置と空気を吹き出す位置を切り替えることが可能になる。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・車両用シート 110・・・シートクッション 120・・・シートバック 121・・・シートカバー 122・・・パッド部材 123,124・・・穴 210,220,230・・・裏面カバー 211,221,231・・・ダクト 212,222,232・・・送風機 213・・・ランバー機構部品
図1
図2
図3
図4
図5