(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431406
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】キャップ用ライナーの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/52 20060101AFI20181119BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20181119BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20181119BHJP
B65D 53/06 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
B29C43/52
B29C43/36
B29C43/18
B65D53/06
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-40919(P2015-40919)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-159532(P2016-159532A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】武藤 英泰
(72)【発明者】
【氏名】臼井 文彦
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭47−041398(JP,B1)
【文献】
特開2012−101374(JP,A)
【文献】
特開昭58−183213(JP,A)
【文献】
特開昭56−004441(JP,A)
【文献】
特開2005−350088(JP,A)
【文献】
特開2010−269832(JP,A)
【文献】
特開2015−003325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 33/00−33/76
B65D 53/00−53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなる有底筒状のキャップ本体内に設置されるキャップ用ライナーの製造方法であって、
前記キャップ用ライナーが、前記天板部の内面に接して配される円盤状の摺動層と、該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な合成樹脂である円環状の密封層とを備えるものであり、
樹脂製ディスクを前記キャップ本体内に挿入して前記摺動層とする工程と、
前記摺動層上に前記密封層となる溶融した前記合成樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
前記塗布した前記合成樹脂を円環状の前記密封層に成型する密封層成型工程とを有し、
前記樹脂塗布工程において、前記摺動層が予め加熱された状態で溶融した前記合成樹脂を塗布することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記摺動層を予め加熱する際の前記摺動層の表面温度を、45〜158℃の温度範囲に設定することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記摺動層の表面温度を、塗布される溶融した前記合成樹脂の温度に対して100〜180℃低く設定することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記キャップ本体が、金属製であり、
前記樹脂塗布工程前に、前記キャップ本体内に前記摺動層を設置するシート設置工程を有し、
前記樹脂塗布工程において、前記キャップ本体を誘導加熱によって予め加熱して前記摺動層を加熱することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップ用ライナーの製造方法において、
前記樹脂塗布工程において、前記キャップ本体内の前記摺動層に熱風又は赤外線を当てて加熱することを特徴とするキャップ用ライナーの製造方法。
【請求項6】
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなる有底筒状のキャップ本体内に設置されるキャップ用ライナーの製造装置であって、
前記キャップ用ライナーが、前記天板部の内面に接して配される円盤状の摺動層と、該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な合成樹脂である円環状の密封層とを備えるものであり、
前記キャップ本体内に挿入された樹脂製ディスクである前記摺動層上に前記密封層となる溶融した前記合成樹脂を塗布する樹脂塗布機構と、
前記塗布した前記合成樹脂を円環状の前記密封層に成型する成形金型機構と、
溶融した前記合成樹脂を塗布する際に前記摺動層を予め加熱するシート加熱機構とを備えていることを特徴とするキャップ用ライナーの製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載のキャップ用ライナーの製造装置において、
前記シート加熱機構が、前記摺動層を予め加熱する際の前記摺動層の表面温度を、45〜158℃の温度範囲に設定することを特徴とするキャップ用ライナーの製造装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のキャップ用ライナーの製造装置において、
前記シート加熱機構が、前記摺動層の表面温度を、塗布される溶融した前記合成樹脂の温度に対して100〜180℃低く設定することを特徴とするキャップ用ライナーの製造装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載のキャップ用ライナーの製造装置において、
前記キャップ本体が、金属製であり、
前記シート加熱機構が、前記キャップ本体内に前記摺動層が設置された状態で、前記キャップ本体を誘導加熱によって予め加熱して前記摺動層を加熱する誘導加熱部を有していることを特徴とするキャップ用ライナーの製造装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載のキャップ用ライナーの製造装置において、
前記シート加熱機構が、前記キャップ本体内の前記摺動層に熱風又は赤外線を当てて加熱するシート直接加熱部を有していることを特徴とするキャップ用ライナーの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動層上にリング状の密封層が形成されたキャップ用ライナーの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PP(ポリプロピレン)等の摺動層の上にリング状の密封層をモールド成形したキャップ用のライナーが知られている。例えば、特許文献1には、円盤状の摺動層と、該摺動層に積層された柔軟な合成樹脂である円環状(リング状)の密封層とを備えたキャップ用ライナー及びその製造装置並びに製造方法が記載されている。このようなリング状の密封層を用いると、ライナーの軽量化が図れると共に原料の削減も図ることが可能である。
【0003】
この装置及び方法では、固定側型板と可動側型板との間に摺動層を設置し、型締め時に、設置されている摺動層上に円環状のキャビティを形成し、該キャビティに溶融した合成樹脂を射出成形することで、リング状の密封層を摺動層上に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5603742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、摺動層の上にリング状の密封層を成形しているが、密封層がリング状であるために接着面積が少なく、摺動層と密封層との接着強度が比較的小さくなってしまう不都合があった。このため、摺動層から密封層を剥がす方向に強い力が加わった場合、密封層に剥がれが生じるおそれがあり、剥がれが生じると中身液が漏れる可能性があった。したがって、摺動層とリング状の密封層とのより高い接着強度が要望されている。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、摺動層上にリング状の密封層を高い接着強度で形成可能なキャップ用ライナーの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法は、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなる有底筒状のキャップ本体内に設置されるキャップ用ライナーの製造方法であって、前記キャップ用ライナーが、前記天板部の内面に接して配される円盤状の摺動層と、該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な合成樹脂である円環状の密封層とを備えるものであり、前記摺動層上に前記密封層となる溶融した前記合成樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、前記塗布した前記合成樹脂を円環状の前記密封層に成型する密封層成型工程とを有し、前記樹脂塗布工程において、前記摺動層が予め加熱された状態で溶融した前記合成樹脂を塗布することを特徴とする。
【0008】
このキャップ用ライナーの製造方法では、溶融した合成樹脂を塗布する際に摺動層を予め加熱するので、摺動層が予備加熱されていることで、その上に塗布される合成樹脂の接着強度が向上し、密封層の高い密着性が得られる。
【0009】
第2の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法は、第1の発明において、前記キャップ本体が、金属製であり、前記樹脂塗布工程前に、前記キャップ本体内に前記摺動層を設置するシート設置工程を有し、前記樹脂塗布工程において、前記キャップ本体を誘導加熱によって予め加熱して前記摺動層を加熱することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、キャップ本体内に摺動層が設置された状態で、キャップ本体を誘導加熱によって予め加熱して摺動層を加熱するので、金属製のキャップ本体が誘導加熱で加熱されることで、天板部上に配された摺動層も加熱することができる。
【0010】
第3の発明に係るキャップ用ライナーの製造方法は、第1又は第2の発明において、前記樹脂塗布工程において、前記キャップ本体内の前記摺動層に熱風又は赤外線を当てて加熱することを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーの製造方法では、キャップ本体内の摺動層に熱風又は赤外線を当てて加熱しているので、摺動層を直接加熱することができる。
また、熱風又は赤外線を発生させる機構は、誘導加熱方式に比べて簡易かつ小型で済み、装置の省スペース化や低コスト化が可能である。
【0011】
第4の発明に係るキャップ用ライナーの製造装置は、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなる有底筒状のキャップ本体内に設置されるキャップ用ライナーの製造装置であって、前記キャップ用ライナーが、前記天板部の内面に接して配される円盤状の摺動層と、該摺動層に積層され前記摺動層よりも柔軟な合成樹脂である円環状の密封層とを備えるものであり、前記摺動層上に前記密封層となる溶融した前記合成樹脂を塗布する樹脂塗布機構と、前記塗布した前記合成樹脂を円環状の前記密封層に成型する成形金型機構と、溶融した前記合成樹脂を塗布する際に前記摺動層を予め加熱するシート加熱機構とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明に係るキャップ用ライナーの製造装置は、第4の発明において、前記キャップ本体が、金属製であり、前記シート加熱機構が、前記キャップ本体内に前記摺動層が設置された状態で、前記キャップ本体を誘導加熱によって予め加熱して前記摺動層を加熱する誘導加熱部を有していることを特徴とする。
【0013】
第6の発明に係るキャップ用ライナーの製造装置は、第4又は第5の発明において、前記シート加熱機構が、前記キャップ本体内の前記摺動層に熱風又は赤外線を当てて加熱するシート直接加熱部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法および製造装置では、溶融した合成樹脂を塗布する際に摺動層を予め加熱するので、摺動層が予備加熱されていることで、その上に塗布された合成樹脂の接着強度が向上し、密封層の高い密着性が得られる。
したがって、本発明によれば、密封層が剥がれ難く、剥がれによる中身液の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法および製造装置の第1実施形態において、製造工程を概略的な断面で示す説明図である。
【
図2】第1実施形態において、合成樹脂塗布工程を工程順に示す概略的な断面図である。
【
図3】本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法および製造装置の第2実施形態において、製造工程を概略的な断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法および製造装置の第1実施形態を、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態のキャップ用ライナーの製造方法は、
図1に示すように、天板部1aと該天板部1aの周縁から垂下した筒状周壁部1bとからなる有底筒状のキャップ本体1内に設置されるキャップ用ライナー2の製造方法である。
上記キャップ用ライナー2は、天板部1aの内面に接して配される円盤状の摺動層2aと、該摺動層2aに積層され摺動層2aよりも柔軟な合成樹脂である円環状の密封層2bとを備えている。
【0018】
このキャップ用ライナー2の製造方法は、摺動層2a上に密封層2bとなる溶融した合成樹脂Rを塗布する樹脂塗布工程と、塗布した合成樹脂Rを円環状の密封層2bに成型する密封層成型工程とを有している。
また、本実施形態では、キャップ本体1が、金属製であり、樹脂塗布工程前に、キャップ本体1内に摺動層2aを設置するシート設置工程を有している。
上記樹脂塗布工程では、摺動層2aが予め加熱された状態で溶融した合成樹脂Rを塗布する。すなわち、樹脂塗布工程において、キャップ本体1を誘導加熱によって予め加熱して摺動層を加熱する工程を有している。
【0019】
この製造方法に用いる本実施形態のキャップ用ライナーの製造装置は、
図1及び
図2に示すように、摺動層2a上に密封層2bとなる溶融した合成樹脂Rを塗布する樹脂塗布機構4と、溶融した前記合成樹脂Rを円環状の密封層2bに成型する成形金型機構5と、溶融した合成樹脂Rを塗布する際に摺動層2aを予め加熱するシート加熱機構6とを備えている。
また、シート加熱機構6は、キャップ本体1内に摺動層2aが設置された状態で、キャップ本体1を誘導加熱によって予め加熱して摺動層2aを加熱する誘導加熱部7を有している。
【0020】
上記誘導加熱部7は、キャップ本体1の天板部1a下方に配置されるコイル7aを備えている。誘導加熱部7では、コイル7aに高周波の交流電流を流すことで、電磁誘導によってコイル7a上方に対向する天板部1aに渦電流を生じさせ、そのジュール熱で天板部1aを非接触で加熱させることができる。
【0021】
本実施形態のキャップ用ライナーの製造方法について、より詳細に説明する。なお、使用するキャップ本体1には、筒状周壁部1bに内側に突出させたライナー係止突起1cを予め形成しておく。
例えば、まずアルミニウム合金板の内外面にエポキシフェノール、ポリエステル等の塗料を1〜10μmの厚さで2〜数回焼付け塗装し、これをプレスにてカップ状に打ち抜く。そして、これに、ミシン部、ナール、ライナー係止突起1c等をカップ側面に加工してキャップ本体1を作製する。
【0022】
まず、
図1に示すように、円盤状の摺動層2aをキャップ本体1内に挿入する。この際、樹脂製ディスクである摺動層2aは、ライナー係止突起1cを超えて天板部1aの内面上に載置される。
上記摺動層2aは、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、各種ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)等の硬質の合成樹脂で形成される。
【0023】
また、摺動層2aに使用した硬質シートは、以下のように作製した。まず、硬質の合成樹脂を押出機とTダイとを使って硬質シート用の単層シートを作製する。このときの単層シートの厚さは0.1〜1.0mmの間が好ましい。より好ましくは0.2〜0.8mmの範囲のものである。この合成樹脂は一定の剛性が必要であり、厚さにもよるが曲げ弾性率が400MPa以上であることが好ましい。この硬質シートの表面に必要に応じてコロナ放電処理等を施しても良い。
なお、摺動層2aは、必ずしも合成樹脂だけではなく、例えば両面を合成樹脂でラミネートあるいは塗装したアルミニウムシート等でもよい。
【0024】
次に、摺動層2aを設置したキャップ本体1を誘導加熱部7の上方に設置し、コイル7aに交流電流を流して天板部1aを加熱する。この際、天板部1a上の摺動層2aの表面温度が、45〜158℃になるように天板部1aを加熱する。PPの摺動層2aの場合、摺動層2aの表面温度が45℃よりも低いと十分な接着強度が得られず、158℃を超えると摺動層2aが変形したり、異臭が発生したりする。なお、摺動層2aの表面温度は、65〜105℃の範囲がより好ましい。また、摺動層2aの予熱加熱温度は、塗布される溶融した合成樹脂Rの温度に対して100〜180℃低く設定されることが好ましい。
【0025】
次に、摺動層2aが予熱加熱されている状態で、摺動層2a上に密封層2bとなる溶融した合成樹脂Rを塗布する。
合成樹脂Rとしては、エラストマーまたは樹脂とエラストマーとのブレンド等が良好な結果を示す。エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、塩ビ系エラストマー等が採用可能である。
【0026】
合成樹脂Rは、
図2に示すように、樹脂塗布機構4によって摺動層2a上にリング状に塗布される。この樹脂塗布機構4は、中心軸上に合成樹脂Rの樹脂供給路8aが形成された内側円柱部8と、内側円柱部8の外周に内側円柱部8に対して軸方向に移動可能に設置された外側円筒部9とを備えている。内側円柱部8は、下部に底面が円形の円錐形状部8bと、樹脂供給路8aの下端から半径方向外方に複数分岐し円錐形状部8b上に形成された分岐路8cとを有している。これら分岐路8cの先端は、外側円筒部9が上方に移動した状態で円錐形状部8bの外周上に形成される円環状のギャップ8d内に開口している。
【0027】
上記樹脂供給路8aは、溶融した合成樹脂Rを供給可能な押出機(図示略)に接続されている。
外側円筒部9が上方に移動した状態では、内側円柱部8の円錐形状部8bと外側円筒部9の下部との間に、円環状のギャップ8dが形成されている。すなわち、供給された合成樹脂Rが各分岐路8cからギャップ8d内に押し出されるように設定されている。
【0028】
合成樹脂Rを摺動層2a上に塗布する場合、
図2に(a)に示すように、内側円柱部8および外側円筒部9をキャップ本体1の上部開口部から挿入し、底面の摺動層2a上に内側円柱部8の円錐形状部8bを接触させる。また、外側円筒部9は、上方に移動させておき、各分岐路8cの先端を開口させた状態とする。この状態で、溶融させた合成樹脂Rを樹脂供給路8aに供給する。樹脂供給路8aに供給された合成樹脂Rは、各分岐路8cを介して外周のギャップ8d内に所定量だけ送り出される。
次に、この状態で、
図2の(b)に示すように、外側円筒部9を下方に移動させるとギャップ8d内の合成樹脂Rが下方に押し出され、摺動層2a上にリング状にドロップされる。
【0029】
次に、
図1に示すように、キャップ本体1内に、成形金型機構5の円柱状の成形パンチ10と該成形パンチ10の外周に設けられた円筒状の成形スリーブ11とを挿入し、これらの下部を摺動層2a上の合成樹脂Rに押しつけ型押しを行う。成形パンチ10下部と成形スリーブ11との間には、円環状に延在したキャビティである断面矩形状の溝部10aが形成されている。また、成形パンチ10は、内部に冷却水が流通する冷却水流路(図示略)が形成されており、冷却水により冷却されている。したがって、成形パンチ10と成形スリーブ11との下部を合成樹脂Rに押しつけることで、合成樹脂Rが溝部10aで成形されると共に冷却されて固化し、円環状の密封層2bが形成される。
【0030】
このように本実施形態のキャップ用ライナーの製造方法では、溶融した合成樹脂Rを塗布する際に摺動層2aを予め加熱するので、摺動層2aが予備加熱されていることで、その上に塗布される合成樹脂Rの接着強度が向上し、密封層2bの高い密着性が得られる。
また、キャップ本体1内に摺動層2aが設置された状態で、キャップ本体1を誘導加熱によって予め加熱して摺動層2aを加熱するので、金属製のキャップ本体1が誘導加熱で加熱されることで、天板部1a上に配された摺動層2aも加熱することができる。
【0031】
次に、本発明に係るキャップ用ライナーの製造方法および製造装置の第2実施形態について、
図3を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、誘導加熱部7による誘導加熱で天板部1aを加熱し、その熱で摺動層2aも加熱しているのに対し、第2実施形態のキャップ用ライナーの製造方法では、
図3に示すように、シート加熱機構26として、キャップ本体1内の摺動層2aに熱風Wを当てて加熱するシート直接加熱部27を用いている点である。すなわち、第2実施形態では、シート加熱機構26が、複数の送風口27aから熱風Wを吹き出すことができるシート直接加熱部27を備えている。このシート直接加熱部27は、キャップ本体1の上部開口部の上方に配置され、送風口27aから熱風Wを内部の摺動層2aに向けて吹き付けることで、摺動層2aを直接加熱している。
【0033】
このように第2実施形態では、キャップ本体1内の摺動層2aに熱風Wを当てて加熱しているので、摺動層2aを直接加熱することができる。また、熱風を発生させるシート直接加熱部27は、誘導加熱方式に比べて簡易かつ小型で済み、装置の省スペース化や低コスト化が可能である。
【実施例】
【0034】
上記第2実施形態に基づいてキャップ用ライナーを製造し、摺動層の予備加熱温度を変えて密封層の接着強度について評価した。
使用した摺動層は、PPシートで作製し、密封層は、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーで形成した。また、摺動層の表面粗さは、Rz≦20μmに設定した。
【0035】
摺動層の予備加熱は、キャップ本体の上部開口部側から熱風を吹き付けることで行い、その際の摺動層の表面温度を放射温度計で測定し、接着強度と密封性とについて評価した。なお、比較例として、予備加熱を行わずに密封層を形成したものも同様に評価した。これらの評価結果を、表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
上記接着強度の測定は、以下の条件で行った。
・測定温度:室温(常温)
・引張強度:780mm/min
・測定機:SHIMPO製 型番FGC−10
・引っ張り機:ORIENTAL MOTOR 型番4RK25RGN−A(スピードコントロールモーター)4LB20N−2(リニアヘッド)
なお、表1の数値はピーク値を記載している(N=10)。
【0038】
上記密封性の評価は、以下の方法で行った。
まず、作製したライナー付きキャップを缶胴に装着し、そのボトル缶の缶底に穴を開け、水中で5psi/sec(0.35kg/cm
2)で昇圧していき、内圧が漏えいするかどうかを確認した。
このとき、1MPaにて1分間保持し、漏洩しなければ良好(○)、1本以上漏洩したら不良(×)と判定した(サンプル数:N=100)。
【0039】
また、密封性評価サンプルは以下の容量で準備した。
水:275ml(全量338ml)、充填温度85℃、LN2充填
初期内圧設定0.1MPa(1.02kgf/cm
2):at20℃
1日放置し、室温に戻ったサンプルで密封性評価を実施した。
【0040】
これらの評価の結果、摺動層の予備加熱を行った本発明の実施例は、いずれも比較例に比べて接着強度が向上していると共に、良好な密封性が得られている。また、予備加熱の温度が高いほど、接着強度が高くなっていることが分かる。
なお、予備加熱が45℃よりも低いと接着強度の向上が小さく、良好な密封性が得られなかった。また、予備加熱が158℃よりも高いとPPシートの摺動層が変形したり、異臭が発生したりした。
さらに、PPシートの摺動層とエラストマーの密封層との接着力が弱いと、熱と内圧の影響で密封層が摺動層の径方向外側にずれてしまい、ボトル口部から外れてしまうことで密封性が保てなくなることが分かった。
【0041】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、第2実施形態では、熱風を吹き付けて摺動層を直接加熱しているが、赤外線(輻射熱)を当てるシート直接加熱部を設けて、赤外線によって摺動層を直接加熱しても構わない。すなわち、シート直接加熱部として、赤外線を発生可能な電熱線等を有して赤外線を照射する赤外線照射部をキャップ本体の上方に配置し、赤外線照射部から赤外線を摺動層に向けて照射し、加熱するようにしてもよい。
また、シート加熱機構として、第1実施形態の誘導加熱部と第2実施形態のシート直接加熱部とを併用しても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1…キャップ本体、1a…天板部、1b…筒状周壁部、2…キャップ用ライナー、2a…摺動層、2b…密封層、4…樹脂塗布機構、5…成形金型機構、6,26…シート加熱機構、7…誘導加熱部、27…シート直接加熱部、W…熱風