(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431415
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ゴムストリップの搬送装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/30 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
B29D30/30
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-53091(P2015-53091)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-172360(P2016-172360A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】前田 和也
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−228794(JP,A)
【文献】
特開2014−69558(JP,A)
【文献】
特開2012−179833(JP,A)
【文献】
特開2006−248760(JP,A)
【文献】
特開2011−183698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
B65H 5/02−29/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムストリップ供給手段から受け取ったリボン状の未加硫のゴムストリップを、軸心周りで回転されるフォーマーの外周面に長さ方向に搬送する装置であって、
周回可能に案内されかつ上面を搬送面とした第1無端ベルトと、
前記搬送面上に載置されたゴムストリップを、前記搬送面に押し付けて保持させる保持手段とを含み、
前記保持手段は、前記搬送面に対向して配され、前記搬送面で搬送されるゴムストリップにその長さ方向に沿って圧接することにより、ゴムストリップの幅方向の位置ずれを防止する凸状部を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記第1無端ベルトの上方で周回可能に案内され、かつ、搬送面との間でゴムストリップを挟み込んで保持する第2無端ベルトを含み、
前記凸状部は、前記第2無端ベルトの表面から突出しかつ長手方向に連続してのびることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記凸状部は、前記第2無端ベルトの幅方向の中央部に形成されることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記凸状部は、前記搬送面の下流端を含む下流側に配されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記凸状部は、略三角形状の断面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記凸状部の突出量は、0.3〜0.5mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムストリップを搬送する搬送装置に関し、詳しくは、搬送時のゴムストリップの幅方向の位置ずれを防止する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ゴムストリップ供給手段から受け取ったリボン状のゴムストリップをその長さ方向に搬送し、軸心周りで回転するフォーマーの外周面にゴムストリップを貼り付けるストリップ貼付け機を提案している。このようなストリップ貼付け機は、ゴムストリップをフォーマーの軸方向に移動させながら、フォーマーの外周面に連続的に貼り付けることにより、ゴムストリップ巻回体を形成しうる。
【0003】
上記のようなストリップ貼付け機では、ゴムストリップをフォーマーの軸方向に移動させる際、搬送時のゴムストリップに幅方向の応力が作用するため、ひいては、ゴムストリップに幅方向の位置ずれが生じる恐れがあった。このため、従来のストリップ貼付け機は、ゴムストリップを上下から挟んで搬送する上下一対のコンベヤを含み、ゴムストリップの幅方向の位置ずれが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−069558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上記のようなストリップ貼付け機では、例えば、生産性を向上させるために、ゴムストリップの貼り付の高速化が望まれている。しかしながら、ゴムストリップを高速で貼り付ける場合、搬送時のゴムストリップに作用する応力が大きくなり、上記のコンベヤでは、ゴムストリップの幅方向の位置ずれが十分に抑制できない恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、搬送時のゴムストリップの幅方向の位置ずれを防止しうるゴムストリップの搬送装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴムストリップ供給手段から受け取ったリボン状の未加硫のゴムストリップを、軸心周りで回転されるフォーマーの外周面に長さ方向に搬送する装置であって、周回可能に案内されかつ上面を搬送面とした第1無端ベルトと、前記搬送面上に載置されたゴムストリップを、前記搬送面に押し付けて保持させる保持手段とを含み、前記保持手段は、前記搬送面に対向して配され、前記搬送面で搬送されるゴムストリップにその長さ方向に沿って圧接することにより、ゴムストリップの幅方向の位置ずれを防止する凸状部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記搬送装置において、前記保持手段は、前記第1無端ベルトの上方で周回可能に案内され、かつ、搬送面との間でゴムストリップを挟み込んで保持する第2無端ベルトを含み、前記凸状部は、前記第2無端ベルトの表面から突出しかつ長手方向に連続してのびるのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記搬送装置において、前記凸状部は、前記第2無端ベルトの幅方向の中央部に形成されるのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記搬送装置において、前記凸状部は、前記搬送面の下流端を含む下流側に配されるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記搬送装置において、前記凸状部は、略三角形状の断面を有するのが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記搬送装置において、前記凸状部の突出量は、0.3〜0.5mmの範囲であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴムストリップの製造装置は、叙上の如く、周回可能に案内されかつ上面を搬送面とした第1無端ベルトと、搬送面上に載置されたゴムストリップを、搬送面に押し付けて保持させる保持手段とを含んでいる。
【0014】
そして、前記保持手段は、搬送面に対向して配される凸状部を具え、この凸状部が搬送面で搬送されるゴムストリップにその長さ方向に沿って圧接することにより、搬送時のゴムストリップの幅方向の位置ずれをより効果的に防止できる。これにより、ゴムストリップがフォーマーに巻き重ねて形成される巻回体の成形精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の搬送装置の概略側面図である。
【
図3】
図1の搬送装置の第2無端ベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の搬送装置1の概略側面図が示されている。
図1に示されるように、ゴムストリップGの搬送装置1は、ゴムストリップ供給手段(図示省略)から受け取ったリボン状の未加硫のゴムストリップGを、軸心J周りで回転されるフォーマー2の外周面に長さ方向に搬送する。
【0017】
本実施形態の搬送装置1は、例えば、タイヤの製造に用いられる。より具体的には、フォーマー2上で生タイヤを形成する際、インナーライナゴム、サイドウォールゴム、トレッドゴム等の未加硫のゴム部材をストリップ巻回体として製造する装置に用いられる。各ゴム部材は、搬送されるゴムストリップGをフォーマー2の外表面に巻き重ねることにより形成される。
【0018】
ゴムストリップGは、特に限定されないが、例えば、厚さ0.5〜3.0mm程度、巾10〜30mm程度のリボン状に形成されている。
【0019】
ゴムストリップ供給手段としては、ゴムストリップGを押出し形成する所謂スクリュー式等のゴム押出し装置が採用できる。また、他の例としては、ゴム押出し装置から押出されたゴムストリップGを、一旦リールに巻き取った後、このリールからゴムストリップGを巻き戻して供給するリールスタンドが採用できる。
【0020】
本実施形態のフォーマー2は、タイヤ内腔面と略等しい輪郭形状の外周面21Sを有する中子本体21、中子本体21と連結可能に構成された支持軸22、及び、支持軸22を回転可能に軸支する支持台23を含んで構成されている。
【0021】
支持軸22は、例えば、ボールロック機構等を介して、中子本体21の各側面に連結可能に構成されている。支持軸22に連結された中子本体21は、支持軸22とともに軸心J周りで回転可能である。
【0022】
図2には、搬送装置1の概略斜視図が示されている。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の搬送装置1は、周回可能に案内された第1無端ベルト3、搬送方向下流側の貼付けローラ4、及び、ゴムストリップGを第1無端ベルト3に保持させる保持手段5を含んで構成されている。
【0023】
搬送装置1は、上面を搬送面3aとした第1無端ベルト3により、ゴムストリップGをその長さ方向に搬送し、貼付けローラ4を介してフォーマー2にゴムストリップGを搬送する。ゴムストリップGの搬送時、ゴムストリップGは、保持手段5により第1無端ベルト3に保持され、幅方向の位置ずれが防止される。
【0024】
本実施形態の第1無端ベルト3は、第1無端ベルト3を周回可能に案内する複数の案内ローラ6を有するコンベヤ7に含まれている。このコンベヤ7は、本例では、例えば、3次元移動装置(図示省略)などに支持され、少なくとも貼付けローラ4を、フォーマー2の外周面に沿って、軸心J方向に往復移動させうる。なお、コンベヤ7を固定し、フォーマー2を3次元移動装置によって3次元に移動可能に支持することもできる。又、案内ローラ6は、ゴムストリップGの搬送方向に適宜の間隔で複数個配されるのが望ましい。案内ローラ6は、回転駆動される少なくとも1つの駆動ローラを含んでいる。
【0025】
また、本実施形態のコンベヤ7は、案内ローラ6を軸支する一対のフレーム(図示省略)を有している。このフレームは、例えば、上記3次元移動装置などに支持されるとともに、例えば、シリンダ等の適宜の支持部材7aを介して貼付けローラ4を支持している。支持部材7aは、貼付けローラ4を長さ方向に進退移動可能に支持し、搬送されたゴムストリップGをフォーマー2に押し付けて貼着させる。
【0026】
保持手段5は、第1無端ベルト3の搬送面3a上に載置されたゴムストリップGを、搬送面3aに押し付けることにより、第1無端ベルト3にゴムストリップGを保持させる。保持手段5は、搬送面3aに対向して配された凸状部8を具えている。
【0027】
凸状部8は、搬送面3aで搬送されるゴムストリップGにその長さ方向に沿って圧接することにより、搬送時のゴムストリップGの幅方向の位置ずれを防止する。即ち、凸状部8は、ゴムストリップGの幅方向の一部分に集中的に作用し、ゴムストリップGを第1無端ベルト3に保持させる。本実施形態の搬送装置1によれば、搬送時のゴムストリップGの幅方向の位置ずれをより効果的に防止できる。これにより、ゴムストリップGがフォーマー2に巻き重ねて形成されるストリップ巻回体の成形精度を高めることができる。
【0028】
本実施形態の保持手段5は、凸状部8が形成された第2無端ベルト9と、第2無端ベルト9を周回可能に案内する複数の案内ローラ10とを含み、所謂コンベヤ11として構成されている。このコンベヤ11は、例えば、コンベヤ7のフレームに支持され、コンベヤ7とともに、軸心J方向に往復移動される。
【0029】
第2無端ベルト9は、第1無端ベルト3の上方で周回可能に案内される。これにより、第2無端ベルト9は、第1無端ベルト3の搬送面3aとの間でゴムストリップGを挟み込み、第1無端ベルト3とともに、ゴムストリップGをスリップさせることなく長手方向に安定して搬送する。
【0030】
本実施形態の凸状部8は、第2無端ベルト9の表面から突出し、第2無端ベルト9の長手方向に連続してのびている。このような凸状部8は、連続して搬送されるゴムストリップGをその長手方向に沿って圧接し、搬送時のゴムストリップGの幅方向の位置ずれを効果的に防止できる。
【0031】
図3には、第2無端ベルト9の断面図が示されている。凸状部8の断面は特に限定されないが、本実施形態の凸状部8は、略三角形状の断面を有するのが望ましい。このような凸状部8は、ゴムストリップGの幅方向の一点により集中的に圧接し、その頂部のエッジ効果により、ゴムストリップGの幅方向の位置ずれをより効果的に防止できる。また、凸状部8がゴムストリップGに圧接することにより、ゴムストリップGに生じる変形を最小限に抑えることができる。
【0032】
凸状部8の突出量Hは、例えば、0.3〜0.5mmの範囲であるのが望ましい。突出量Hが0.3mm未満の場合、ゴムストリップGの幅方向の位置ずれを十分に防止できないおそれがある。逆に、突出量Hが0.5mmよりも大きい場合、ゴムストリップGの変形が大きくなって、ストリップ巻回体の成形精度を損ねるおそれがある。又、凸状部8のみがゴムストリップGと接触する傾向となり、位置ずれ防止効果の減少を招く。又、ゴムストリップGが第2無端ベルト9の側に粘着して剥離不良が生じるのを防止するため、第2無端ベルト9の幅は、第1無端ベルト3の幅よりも小さくするのが好ましく、特には、第1無端ベルト3の幅の60%以下が好ましい。逆に、上限は、安定した搬送を行うために、第1無端ベルト3の幅の40%以上が好ましい。
【0033】
凸状部8は、第2無端ベルト9の幅方向の中央部に形成されるのが望ましい。このような凸状部8は、ゴムストリップGの幅方向の中央部に圧接し、ゴムストリップGをバランス良く第1無端ベルト3に保持させることができる。
【0034】
上述の作用をより効果的に発揮させるため、他の態様の凸状部8は、第2無端ベルト9の幅方向に複数設けられる。このような凸状部8は、ゴムストリップGの幅方向の位置ずれをより効果的に防止しうる。
【0035】
図1及び
図2に示されるように、凸状部8は、搬送面3aの下流端を含む下流側に配されるのが望ましい。このため、本実施形態の第2無端ベルト9は、搬送面3aの下流端を含む下流側に配されている。このような第2無端ベルト9は、搬送面3aの下流端を含む下流側において、凸状部8によりゴムストリップGの幅方向の位置ずれを防止することができる。搬送時のゴムストリップGの幅方向の位置ずれは、主に、コンベヤ7の往復移動により生じ易い。この位置ずれは、ゴムストリップGの下流側から上流側へと拡大する傾向にある。本実施形態の第2無端ベルト9は、搬送面3aの下流側においてゴムストリップGの位置ずれを防止し、ひいては、ゴムストリップG全体の幅方向の位置ずれを効果的に防止しうる。
【0036】
また、凸状部8は、ゴムストリップGを切断する切断手段12の下流側に配されるのが望ましい。このため、本実施形態の第2無端ベルト9は、切断手段12の下流側から搬送面3aの下流側に向かってのびている。このような第2無端ベルト9は、切断直後のゴムストリップGの上流端(切断端)を含む上流側を凸状部8により圧接し、ゴムストリップGの幅方向の位置ずれを防止することができる。切断手段12により切断されたゴムストリップGは、連続性を失うため、その上流端を含む上流側は、フリーとなって幅方向の位置ずれが生じ易い。このため、少なくとも切断手段12より下流側、或いは、搬送面3aの下流端を含む下流側に第2無端ベルト9を配している。
【0037】
上記実施形態では、保持手段5としてコンベヤ11が用いられ、凸状部8が第2無端ベルト9に設けられる。但し、本発明の他の態様では、保持手段5として複数のローラ(図示省略)が用いられ、凸状部8は、第1無端ベルト3の搬送面3aの上方で回転可能なローラの外周面に形成されても良い。このようなローラは、搬送面3aとの間でゴムストリップGを挟み込み、搬送面3aにゴムストリップGを保持させる。このようなローラは、ゴムストリップGの幅方向の位置ずれを効果的に防止するため、好ましくは、搬送面3aの下流端、及び、切断手段12の下流側近傍に配され、より好ましくは、ゴムストリップGの搬送方向に適宜の間隔で複数個配される。
【0038】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0039】
本発明の搬送装置を含むストリップ巻回体を製造する装置を用い、複数のストリップ巻回体が試作された。各実施例のストリップ巻回体は、表1の仕様に示されるように、異なる凸状部を有する搬送装置を用いて試作された。なお、比較例のストリップ巻回体は、凸状部を有しない搬送装置を用いて試作された。
共通仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
ゴムストリップ形状:幅:23mm
厚さ:1.0mm
フォーマーの周長:1400mm
ゴムストリップの搬送速度:1000mm/秒
ゴムストリップの巻き重ね方法:3mmピッチの等間隔で螺旋状に20周
【0040】
<ずれ量の最大値>
フォーマーの外周面に、ゴムストリップを3mmピッチの等間隔で螺旋状に20周巻き重ねてストリップ巻回体を形成した後、巻き重ねられたゴムストリップの巻き重ね位置が測定された。評価は、予め設定されたピッチ(3mmピッチ)で巻き重ねられたゴムストリップの予定位置と、測定されたゴムストリップの巻き重ね位置とのずれ量の最大値で示されている。
【0041】
【表1】
【0042】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、ずれ量の最大値が小さく、搬送時のゴムストリップの幅方向の位置ずれが防止されていることが確認できる。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送装置
2 フォーマー
3 第1無端ベルト
3a 搬送面
5 保持手段
8 凸状部
G ゴムストリップ