特許第6431426号(P6431426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431426
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ステージ装置および顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/26 20060101AFI20181119BHJP
【FI】
   G02B21/26
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-73489(P2015-73489)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-194549(P2016-194549A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2017年12月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「医療情報の高度利用による医療システムの研究開発/がん診断・治療ナビゲーションシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昭弘
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−50358(JP,A)
【文献】 特開2005−333290(JP,A)
【文献】 特開2007−72089(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/038255(WO,A1)
【文献】 特開2003−215466(JP,A)
【文献】 特開2013−55089(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0174862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向および前記第1の方向に対して交差する第2の方向に広がりを有する板状のステージ板と、前記ステージ板とは異なる線膨張係数の板状部材と、を有するステージ装置であって、
ステージ板上で前記板状部材を保持する第1保持手段と、
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記線膨張係数の相違に基づいて前記ステージ板と前記板状部材との間に生じた相対的な変形を前記第1の方向に許容し、前記第2の方向において拘束する第2保持手段と、
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記変形を前記第1の方向に拘束し、前記第2の方向において許容する第3保持手段と、
を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記板状部材は、
前記第2保持手段および前記3保持手段で保持される端部において、前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向に付勢力を発生させる付勢手段と、
前記端部において、前記変形を拘束する方向の開口幅に比べて前記変形を許容する方向の開口幅が長い開口形状を有する開口部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記第2保持手段は、
前記付勢力に基づいて、前記板状部材を前記第3の方向に押下して、前記ステージ板に対する前記板状部材の前記第3の方向の変形を拘束する拘束部材を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記第2保持手段の前記拘束部材は、
前記開口部に挿入される係合部を有し、
前記係合部と前記開口部とが接触した状態で、前記拘束部材は、前記係合部と前記開口部とが接触している前記第2の方向への前記変形を拘束し、
前記係合部と前記開口部との間に隙間がある状態で、前記拘束部材は前記第1の方向への変形を許容する
ことを特徴とする請求項3に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記3保持手段は、
前記付勢力に基づいて、前記板状部材を前記第3の方向に押下して、前記ステージ板に対する前記板状部材の前記第3の方向の変形を拘束する拘束部材を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のステージ装置。
【請求項6】
前記3保持手段の前記拘束部材は、
前記開口部に挿入される係合部を有し、
前記係合部と前記開口部とが接触した状態で、前記拘束部材は、前記係合部と前記開口部とが接触している前記第1の方向への前記変形を拘束し、
前記係合部と前記開口部との間に隙間がある状態で、前記拘束部材は前記第2の方向への変形を許容する
ことを特徴とする請求項5に記載のステージ装置。
【請求項7】
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記変形を前記第1の方向および前記第2の方向において許容する第4保持手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項8】
前記板状部材は、
前記第4保持手段で保持される端部において、前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向に付勢力を発生させる付勢手段を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のステージ装置。
【請求項9】
前記第4保持手段は、
前記付勢力に基づいて、前記板状部材を前記第3の方向に押下して、前記ステージ板に対する前記板状部材の前記第3の方向の変形を拘束する押圧受け部材を備える
ことを特徴とする請求項8に記載のステージ装置。
【請求項10】
前記第1保持手段は、
前記第1の方向および前記第2の方向および、前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向において、前記ステージ板に対する前記板状部材の移動を拘束する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項11】
前記第1保持手段における保持面の中心位置は、前記第1の方向および前記第2の方向の基準位置であり、
前記第2保持手段は、前記基準位置を通る第1の方向軸上に配置されており、
前記第3保持手段は、前記基準位置を通る第2の方向軸上に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項12】
前記第2保持手段の拘束部材および前記第3保持手段の拘束部材は、前記ステージ板と同一の線膨張係数を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項13】
前記付勢手段は、前記板状部材の端部に保持された圧縮ばねと、前記圧縮ばねに接続されたボール部材により構成されていることを特徴とする請求項2または8に記載のステージ装置。
【請求項14】
第1の方向および前記第1の方向に対して交差する第2の方向に広がりを有する板状のステージ板と、前記ステージ板とは異なる線膨張係数の板状部材と、を有するステージ装置であって、
ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記線膨張係数の相違に基づいて前記ステージ板と前記板状部材との間に生じた相対的な変形を前記第1の方向に許容し、前記第2の方向において拘束する手段と、
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記変形を前記第1の方向に拘束し、前記第2の方向において許容する手段と、
を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のステージ装置を有することを特徴とする顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドを載置して移動するステージ装置、およびステージ装置を搭載した顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学顕微鏡は、病理学的診断の為に、組織切片の病変部の微細な観察を実現する手段として病理医によって利用されている。顕微鏡検査の際には、観察対象が載せられたスライドガラスを顕微鏡用のステージに載置し、その観察部位が対物レンズの直下(観察視野)にくるようにステージを移動させる。顕微鏡観察にあたっては、適宜測定部位を微小寸法ずつ精密に移動させる必要が生じる。このような要求から、顕微鏡用のステージ装置は、二次元方向に任意に移動できるようにXYステージで構成され、顕微鏡に装着されたXYステージにおいて高精度な位置管理の実現が求める。
【0003】
特許文献1、2には、XYステージの位置決め要素技術に関し、リニアエンコーダなどに用いられるスケールを、測定を行う一方向において高精度に保持するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−64731号公報
【特許文献2】特開2013−7718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、異なる線膨張係数を有する複数の部材が一体に固定されたXYステージの構成において、温度変化が生じると熱膨張により複数の部材間でわずかな伸縮(熱ドリフト)が発生する。各部材の熱伸縮の差によって部材の固定部には応力が発生し、結果としてXYステージを構成する部材にX方向およびY方向の歪が生じ得る。XYステージの位置管理用のガラススケールが歪の影響を受けると、XYステージにおいて高精度な位置管理の実現が困難になり得る。
【0006】
特許文献1、2には、測定を行う一方向において、ガラススケールを高精度に保持する構成については記載されているが、熱膨張により生じた伸縮(熱ドリフト)の影響を抑制する構成については考慮されていない。すなわち、特許文献1、2では、熱膨張により生じた部材の伸縮による歪の発生を抑制する構成については考慮されていない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、熱膨張により生じた部材の伸縮による歪の発生を抑制し、高精度な位置管理が可能なステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の一つの態様によるステージ装置は、第1の方向および前記第1の方向に対して交差する第2の方向に広がりを有する板状のステージ板と、前記ステージ板とは異なる線膨張係数の板状部材と、を有するステージ装置であって、
ステージ板上で前記板状部材を保持する第1保持手段と、
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記線膨張係数の相違に基づいて前記ステージ板と前記板状部材との間に生じた相対的な変形を前記第1の方向に許容し、前記第2の方向において拘束する第2保持手段と、
前記ステージ板上で前記板状部材を保持し、前記変形を前記第1の方向に拘束し、前記第2の方向において許容する第3保持手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱膨張により生じた部材の伸縮による歪の発生を抑制し、高精度な位置管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による顕微鏡システムの構成を示す図。
図2】実施形態によるステージ装置の構成を示す図。
図3】実施形態によるXステージの概略構成を示す図。
図4A】実施形態のXステージの上面透視図。
図4B】第1保持部の詳細断面図。
図4C】第2保持部の詳細断面図。
図4D】第3保持部の詳細断面図。
図4E】第4保持部の詳細断面図。
図5】XYスケール板を裏面側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0012】
[位置管理顕微鏡システムの構成]
図1は本実施形態による位置管理顕微鏡システム(以下、顕微鏡システム10)の基本構成を示す図である。顕微鏡システム10は、顕微鏡本体101、ステージ装置200、カメラ装着用のアダプタ部300、デジタルカメラ400、制御ユニット500を備える。制御ユニット500は、コントローラ501とディスプレイ502を有する。
【0013】
顕微鏡本体101を構成する鏡基121は、顕微鏡の各種構造物を取り付けるための堅牢な本体フレームである。接眼鏡基122は鏡基121に固定され、接眼鏡筒123(本例では双眼)を接続する。光源ボックス124は、透過観察用の光源(たとえば、ハロゲンランプまたはLEDなど)を収納し、鏡基121に取り付けられる。Z摘み125は、基台130をZ軸方向(上下方向:鉛直方向)へ移動させるための摘みである。
【0014】
基台130には、位置管理機能を提供するステージ装置200が載置される。基台130は、Z摘み125の回転に応じて基台130をZ方向に移動する基台移動機構131により鏡基121に装着されている。126は対物レンズユニットであり、光学倍率に応じた複数種類のユニットが存在する。リボルバ127は、複数種類の対物レンズユニット126を取り付けられる構造を有し、リボルバ127を回転させることにより、所望の対物レンズユニットを顕微鏡による観察のために選択する事が出来る。
【0015】
ステージ装置200は、スライドガラス20を載置し、X方向とY方向を含むXY面上で移動するXYステージを有する。ステージ装置200を構成するXステージ板3(図2)の上面には、XY方向の高精度スケールを具備したXYスケール板2が保持されている。ステージ装置200を構成するXステージ板3の詳細については後述する。ステージ装置200は、たとえばUSBインタフェースケーブル112によりコントローラ501(制御装置)と接続され、コントローラ501からの移動指示に応じてステージ位置をXY方向に移動し、そのステージ位置をコントローラ501に通知する。また、X摘み201、Y摘み202により手動操作によりステージ位置を移動することができる。アダプタ部300は、接眼鏡基122に鏡基マウント128を介してデジタルカメラ400を装着するための装着部として機能する、カメラ装着用のアダプタである。
【0016】
デジタルカメラ400は、アダプタ部300及び鏡基マウント128により、接眼鏡基122と所定の位置関係を保って、着脱可能に顕微鏡本体101に取り付けられる。デジタルカメラ400は、顕微鏡本体101により得られる顕微鏡画像を撮像する。デジタルカメラ400は、エビデンス記録を目的とするもので、例えば、USBインタフェースケーブル111を介してコントローラ501に接続され、コントローラ501からの指示により顕微鏡下の観察像を撮影する。撮影された観察像は、コントローラ501の制御下でディスプレイ502(表示部)に表示される。デジタルカメラ400の撮像機能は、イメージセンサの出力をリアルタイムでモニタに表示するライブビューを行うためのライブ画像撮像機能と、静止画撮像機能を含む。ライブ画像撮像機能は静止画撮像機能よりも低解像度である。また、ライブ画像撮像機能および静止画撮像機能は、撮影された画像(動画、静止画)を所定のインタフェース(本実施形態ではUSBインタフェース)を介して外部装置へ送信することが可能となっている。
【0017】
[ステージ装置200の構成]
ステージ装置200の構成を図2の参照により説明する。図2において、ステージ装置200のXYステージは、平面内の第1の方向(例えば、X方向)と、第1の方向に対して面内方向において交差する第2の方向(例えば、Y方向)に移動可能に構成されている。第1の方向(X方向)および第2の方向(Y方向)に交差する第3の方向(Z方向)は、顕微鏡光軸に対応する。ステージ装置200は、第1の方向および第1の方向に対して交差する第2の方向に広がりを有する板状のXステージ板3(ステージ板)と、Xステージ板3(ステージ板)とは異なる線膨張係数のXYスケール板2(板状部材)と、を有する。
【0018】
以下の説明では、第1の方向の移動機構をXステージ210とよび、第1の方向に対して面内方向において交差する第2の方向の移動機構をYステージ220とよぶ。図2に示すように、Xステージ210はYステージ220上に配置されており、Xステージ210はYステージ220上に構成されたリニアガイドなどの不図示の摺動機構により矢印X方向に移動可能に構成されている。
【0019】
また、Yステージ220は、ステージ装置200のベース部材として機能する基台130上に配置されている。Yステージ220は基台130上に構成されたリニアガイドなどの不図示の摺動機構により矢印Y方向に移動可能に構成されている。
【0020】
ステージ装置200のXYステージは、Xステージ210およびYステージ220により構成される二次元の移動機構として機能する。本実施形態では、Yステージ220上にXステージ210が配置された構成を例示的に説明しているが、本発明の趣旨はこの例に限定されるものではなく、この逆の配置順でXYステージを構成してもよい。
【0021】
[Xステージ210の構成]
次に、Xステージ210の構成を具体的に説明する。図3に示すように、Xステージ210は、Xステージ210の本体を構成するXステージ板3を有する。Xステージ板3上にXYガラススケール2sと一体に構成されたXYスケール板2が載置される。XYガラススケール2sは、例えば、XYスケール板2の上面に接着されて一体として形成されている。XYスケール板2がXステージ210のXステージ板3上に配置されることにより、XYスケール板2を介してXYガラススケール2sがXステージ210のXステージ板3上に配置される。XYスケール板2上にはスライドガラス20が載せられ、所定位置に保持される。
【0022】
XYガラススケール2sには、X方向移動時の位置管理に使われるX方向の位置情報を計測するためのX方向スケール8(目盛)、及び、Y方向移動時の位置管理に使われるY方向の位置情報を計測するためのY方向スケール7(目盛)が高精度に形成されている。また、XYガラススケール2sには、X方向の位置情報を計測するためのX方向スケールとY方向の位置情報を計測するためのY方向スケールとが交差するように形成されたXYクロスハッチ6が高精度に形成されている。XYクロスハッチ6は、X方向およびY方向の軸合せの基準として使用される。SはXYクロスハッチ6の基準位置である。
【0023】
顕微鏡本体101を構成する鏡基121には、X方向スケール8を読み取るX方向センサ、およびY方向スケール7を読み取るY方向センサが、XYガラススケール2sの上方に配置されている。X方向センサおよびY方向センサの検出結果はコントローラ501(制御装置)に送信され、コントローラ501(制御装置)の位置制御の下、ステージ装置200の位置が制御される。
【0024】
尚、図3に示す構成例では、Xステージ板3の上面側にXYガラススケール2sが支持される構成を例示的に示しているが、実施形態の構成はこの例に限定されない。例えば、XYガラススケール2sが、XYスケール板2を介して、Xステージ板3の下面側に支持されるようにステージ装置200を構成することも可能である。この場合、X方向センサおよびY方向センサは、例えば、XYガラススケール2sの下方の位置で鏡基121に配置される。
【0025】
スライドガラス20がXYスケール板2上に保持されることで、X方向センサおよびY方向センサは、スライドガラス20とXYクロスハッチ6の基準位置Sとの相対位置の情報を取得することが可能になる。コントローラ501(制御装置)は、基準位置Sの情報と、取得した相対位置の情報とに基づいて、スライドガラス20内における被観察物21にステージ装置200を位置決めする位置制御を行うことが可能である。ステージ装置200の位置制御により、病理診断における形態診断や機能診断、デジタルカメラによるエビデンス画像の撮影において、観察位置(スライドガラス20内における被観察物21の位置)を容易に再現することができる。
【0026】
XYガラススケール2s上におけるXYクロスハッチ6、X方向スケール8、およびY方向スケール7における各パターンの作製には、半導体露光装置などのナノ技術が用いられる。たとえば、石英ガラスのガラス基板上に、Y軸方向のラインの集合よりなるX方向スケール8、X軸方向のラインの集合よりなるY方向スケール7を、例えば、5nm〜10nmの精度でナノ技術により一体的に作製する。なお、XYクロスハッチ6、X方向スケール8、およびY方向スケール7を露光装置で描画することにより作製することも可能である。低コスト化を実現するにナノインプリントを用いることも可能である。
【0027】
(ステージを構成する部材の熱変形の影響)
物体の長さは温度上昇と元の長さに比例した量で伸び縮みする、すなわち、ΔL= αLΔt(ΔL:伸び、L :長さ、ΔT :温度上昇)という関係にあり、温度の上昇に対応して長さが変化する割合を線膨張率(線膨張係数)という。線膨張係数αは、単位長さあたりにおける、温度による長さの変化率として定義される。物体の長さをL、温度をt とすると、線膨張係数αは以下の(1)式で定義される。温度が変化する前の元の物体の長さをL、温度がtだけ変化したとの物体の長さをLとすると、Lは以下の(2)式で表すことができる。
【0028】
α=(1/L)・(dL/dt) ・・・(1)
L=L(1+αΔt) ・・・(2)
式(2)より、物体の長さLは、元の温度における物体の長さLと線膨張係数αに比例する。温度変化による物体の長さの変化を少なくするには、例えば、線膨張係数(α)を小さくすること、あるいは、物体の長さを短くすることが有効である。
【0029】
ステージ装置200において、Xステージ板3は、移動部の軽量化を図るとともに、ステージ装置の剛性を確保するため、例えば、アルミニウム合金で構成される。アルミニウム合金の線膨張係数α1は24×10−6/℃である。また、後に説明する並進拘束部材16、並進拘束部材17および押圧受け材18もXステージ板3と同様に、例えば、アルミニウム合金で構成される。これらの部材を、Xステージ板3と同様の線膨張係数を有する部材で構成することにより、温度変化による相対的な変形差(伸縮長差)による応力がXYスケール板2に作用することを抑制し、XYスケール板2に生じる歪を抑制することができる。
【0030】
また、XYガラススケール2sの材質は、高精度位置管理を実現する基準とすべく、線膨張係数が極めて小さい材質であるガラス、例えば、石英ガラスで構成されている。XYスケール板2は、XYガラススケール2sと同様に高精度位置管理を実現する基準とすべく、線膨張係数が極めて小さい材質である、低膨張合金により構成されている。石英ガラスと低膨張合金の両者は同等の線膨張係数α2を有しており、約0.5×10−6/℃である。
【0031】
XYスケール板2上に固定されるスライドガラス20の材質はガラスであり、XYガラススケール2sやXYスケール板2とほぼ同等の線膨張係数である。XYガラススケール2s、XYスケール板2、およびスライドガラス20は、それぞれ同等の線膨張係数であり、また、これらの線膨張係数はXステージ板3の線膨張係数に比べて小さい。このため、XYガラススケール2s、XYスケール板2、およびスライドガラス20において、温度変化による相対的な変形差(伸縮長差)の影響は小さい。
【0032】
一方、Xステージ板3の線膨張係数(α1=24×10−6/℃)と、XYガラススケール2sおよびXYスケール板2の線膨張係数(α2=約0.5×10−6/℃)とは相違し、両線膨張係数の差分に応じて温度変化による相対的な変形差(伸縮長差)が発生する。両線膨張係数の差分に応じて温度変化による相対的な変形差(伸縮長差)の影響については、以下のXYスケール板2をXステージ板3に保持するための構成により低減する。
【0033】
(XYスケール板2を保持するための構成)
次に、XYスケール板2をXステージ板3に保持(固定)するための構成を説明する。図3に示すようにXステージ板3の上面には、XYスケール板2を配置するための凹部形状を有する段差部25が形成されている。凹部形状の深さは、XYスケール板2の高さ(厚さ)と略同一に構成されている。XYスケール板2がXステージ板3の段差部25に配置された状態で、XYスケール板2の上面と、Xステージ板3の上面とが略同一の高さとなる。
【0034】
段差部25の段差面にはXYスケール板2を保持するための複数の保持部(第1保持部3a1〜第4保持部3a4)が形成されている。第1保持部3a1の基準面および、第2保持部3a2〜第4保持部3a4の保持面は、例えば、円形の断面形状を有しており、第1保持部3a1〜第4保持部3a4の高さは段差部25の段差面に比べて高くなるように形成されている。XYスケール板2を段差部25の段差面上に直接載置する場合に比べて、第1保持部3a1〜第4保持部3a4でXYスケール板2を保持することにより、XYスケール板2とXステージ板3とが接触する部分の接触長を短くすることができる。このような構成することで、温度変化による物体の長さの変化を低減することが可能になる。
【0035】
また、温度変化による物体の長さの変化を低減することにより、熱伸縮の差による応力をXYスケール板2に発生させることなく、高精度にXYスケール板2をXステージ板3に保持(固定)することが可能になる。このようなXYスケール板2の保持構造により、XYガラススケール2sに対する光軸方向(Z方向)における焦点位置を高精度に保持することが可能になる。
【0036】
第1保持部3a1の保持面(基準面)には、接続部材4(雄ねじ部)と接続可能な雌ねじ部が形成されている。接続部材4(雄ねじ部)と第1保持部3a1の雌ねじ部との締結により、XYスケール板2はXステージ板3上にガタ無く一体的に保持(固定)される。
【0037】
第2保持部3a2に配置されるXYスケール板2の端部32には、押圧部材5(付勢部)と、開口部2cが設けられている。第3保持部3a3に配置されるXYスケール板2の端部33には、押圧部材5(付勢部)と、開口部2dが設けられている。また、第4保持部3a4に配置されるXYスケール板2の端部34には、押圧部材5(付勢部)が設けられている。
【0038】
第2保持部3a2〜第4保持部3a4の保持面には、XYスケール板2の端部に設けられた押圧部材5を保持するための開口部13がそれぞれ形成されている。並進拘束部材16は、XYスケール板2の端部32において、押圧部材5を覆うように配置され、並進拘束部材16は接続部材9(雄ねじ部)によりXステージ板3に固定される。並進拘束部材16は、Xステージ板3に固定された状態で、−Y方向のXYスケール板2の並進移動(並進方向の変形)を拘束するとともに、XYスケール板2におけるZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)を拘束する。
【0039】
並進拘束部材17は、XYスケール板2の端部33において、押圧部材5を覆うように配置され、並進拘束部材17は接続部材9(雄ねじ部)によりXステージ板3に固定される。並進拘束部材17は、Xステージ板3に固定された状態で、−X方向のXYスケール板2の並進移動(並進方向の変形)を拘束するとともに、XYスケール板2におけるZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)を拘束する。
【0040】
押圧受け材18は、XYスケール板2の端部34において、押圧部材5を覆うように配置され、押圧受け材18は、接続部材9(雄ねじ部)によりXステージ板3に固定される。押圧受け材18は、XYスケール板2におけるXY方向の移動を許容しつつ、XYスケール板2におけるZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)を拘束する。
【0041】
図5は、図3の表示に対してXYスケール板2を裏面側から見たXYスケール板2の構成を示す図であり、図5を参照して押圧部材5(付勢部)、開口部2c、および開口部2dの配置について説明する。
【0042】
XYスケール板2(板状部材)は、第2保持部3a2および3保持部3a3で保持される端部において、第1の方向および第2の方向に交差する第3の方向に付勢力を発生させる押圧部材5(付勢部)を備える。また、XYスケール板2(板状部材)は、第2保持部3a2および3保持部3a3で保持される端部において、変形を拘束する方向の開口幅に比べて変形を許容する方向の開口幅が長い開口形状を有する開口部を備える。
【0043】
図5に示すように、XYスケール板2は接続部材4によりXステージ板3に固定される。XYスケール板2の端部32には、押圧部材5(付勢部)と、開口部2cが設けられている。開口部2cは、一辺がX軸上に沿って横長に形成された矩形形状を有する。
【0044】
第2保持部3a2の並進拘束部材16(拘束部材)は、開口部2cに挿入される凸部16a(係合部)を有し、凸部16aと開口部2cとが接触した状態で、並進拘束部材16は、凸部16aと開口部2cとが接触している第2の方向への変形を拘束する。凸部16a(係合部)と開口部2cとの間に隙間がある状態で、並進拘束部材16は第1の方向への変形を許容する。
【0045】
すなわち、並進拘束部材16がXステージ板3に固定された状態で、並進拘束部材16に形成されている凸部16aが開口部2cに係合する。並進拘束部材16の凸部16aと開口部2cとが係合した状態で、凸部16aと開口部2cとの間にはX軸方向(+X方向および−X方向)に隙間があり、XYスケール板2はX軸方向に移動可能である。
【0046】
また、並進拘束部材16がXステージ板3に固定された状態で、凸部16aと開口部2cとの間には+Y方向に隙間があり、XYスケール板2は+Y方向に移動可能である。凸部16aと開口部2cとの間には−Y方向には隙間がなく、凸部16aと開口部2cとは接触している。このため、XYスケール板2の−Y軸方向の移動は拘束される。すなわち、並進拘束部材16がXステージ板3に固定された状態で、並進拘束部材16は、−Y方向のXYスケール板2の並進移動(並進方向の変形)を拘束するとともに、XYスケール板2におけるZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)を拘束する。尚、凸部16aと開口部2cとの間において、+Y方向の隙間を無くし、Y軸方向(+Y方向および−Y方向)において、移動を拘束するように構成することも可能である。
【0047】
XYスケール板2の端部33には、押圧部材5と、開口部2dが設けられている。開口部2dは、一辺がY軸上に沿って縦長に形成された矩形形状を有する。
【0048】
第3保持部3a3の並進拘束部材17(拘束部材)は、開口部2dに挿入される凸部17a(係合部)を有し、凸部17aと開口部2dとが接触した状態で、並進拘束部材17は、凸部17aと開口部2dとが接触している第1の方向への変形を拘束する。凸部17a(係合部)と開口部2dとの間に隙間がある状態で、並進拘束部材17は第2の方向への変形を許容する。
【0049】
すなわち、並進拘束部材17がXステージ板3に固定された状態で、並進拘束部材17に形成されている凸部17aが開口部2dに係合する。並進拘束部材17の凸部17aと開口部2dとが係合した状態で、凸部17aと開口部2dとの間にはY軸方向(+Y方向および−Y方向)に隙間があり、XYスケール板2はY軸方向に移動可能である。
【0050】
並進拘束部材17がXステージ板3に固定された状態で、凸部17aと開口部2dとの間には+X方向に隙間があり、XYスケール板2は+X方向に移動可能である。凸部17aと開口部2dとの間には−X方向には隙間がなく、凸部17aと開口部2dとは接触している。このため、XYスケール板2の−X方向の移動は拘束される。すなわち、並進拘束部材17がXステージ板3に固定された状態で、並進拘束部材17は、−X方向のXYスケール板2の並進移動(並進方向の変形)を拘束するとともに、XYスケール板2におけるZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)を拘束する。尚、凸部17aと開口部2dとの間において、+X方向の隙間を無くし、X軸方向(+X方向および−X方向)において、移動を拘束するように構成することも可能である。
【0051】
次に、第1保持部3a1〜第4保持部3a4の断面構造について、図4B図4Eを参照して説明する。図4Aは、ステージ装置200を構成するXステージ210を上面から見た図である。XYスケール板2は、Xステージ板3に対して、接続部材4により保持(固定)されている。XYスケール板2は、並進拘束部材16、並進拘束部材17、および押圧受け材18および各押圧部材5の付勢力により、Xステージ板3に押し付けられ、Z方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)が拘束される。
【0052】
更に、XYスケール板2は、並進拘束部材16により−Y方向の移動(並進方向の変形)が拘束され、並進拘束部材17により−X方向の移動(並進方向の変形)が拘束される。また、XYスケール板2は、押圧受け材18および第4保持部3a4の間で、XY平面内において移動可能に支持されている。
【0053】
4つの保持部(3a1〜3a4)のうち、基準位置Sに最も近い位置に配置されている第1保持部3a1の保持面(基準面)の中心を、XYスケール板2上におけるXY軸の原点(基準位置)とする(図中G)。XY軸の原点G(基準位置)と接続部材4の中心は一致しており、接続部材4は、XY軸の原点G(基準位置)において、XYスケール板2とXステージ板3とを固定する。
【0054】
第1保持部3a1における保持面の中心位置は、第1の方向および第2の方向の基準位置であり、第2保持部3a2は、基準位置を通る第1の方向軸上に配置されており、第2保持部3a2の保持面の中心は、原点G(基準位置)を通るX軸(第1の方向軸)上に配置されている。
【0055】
第3保持部3a3は、基準位置を通る第2の方向軸上に配置されており、第3保持部3a3の保持面の中心は原点Gを通り、X軸(第1の方向軸)と交差する方向のY軸(第2の方向軸)上に配置されている。そして、第4保持部3a4の保持面の中心は原点G(基準位置)に対して対角線上の近傍位置に配置されている。
【0056】
(第1保持部の構造)
図4Bは、図4Aのbb断面における第1保持部3a1の断面構造を示す図である。第1保持部3a1は、ステージ板上でXYスケール板2(板状部材)を保持する。第1保持部3a1では、接続部材4によりXYスケール板2がXステージ板3に保持(固定)される。
【0057】
XYガラススケール2sはXYスケール板2上に配置されている。XYスケール板2には、接続部材4を挿入するための穴部2bが形成されている。また、XYスケール板2を保持する第1保持部3a1の保持面にはXステージ板座グリ穴3bが形成されている。接続部材4は、穴部2bおよびXステージ板座グリ穴3bと、ガタなく勘合可能に構成されている。これにより、接続部材4を精度よく原点G(基準位置)に位置合わせすることができる。接続部材4は第1保持部3a1の雌ねじ部と締結して、XYスケール板2とXステージ板3とを原点G(基準位置)において一体的に固定する。
【0058】
(第2保持部近傍の端部32の構造)
図4Cは、図4Aのcc断面を示す図である。第2保持部3a2は、Xステージ板上でXYスケール板2(板状部材)を保持し、線膨張係数の相違に基づいてXステージ板3とXYスケール板2(板状部材)との間に生じた相対的な変形を第1の方向に許容し、第2の方向において拘束する。
【0059】
並進拘束部材16には凸部16aが形成されている。並進拘束部材16がXステージ板3に固定された状態で、XYスケール板2に形成されている開口部2cに対して凸部16aが嵌るように構成されている。並進拘束部材16の凸部16aはX軸上にある開口部2cの側面に、図中の矢印方向にガタなく押し付けられている。
【0060】
また、XYスケール板の端部32には、押圧部材5が設けられている。押圧部材の具体的な構成については、後に図4Eを参照して具体的に説明するが、並進拘束部材16がXステージ板3に固定された状態で、押圧部材5の付勢力は並進拘束部材16の下面(図4Eの下面凹部18aに対応する部分)を押圧する。押圧により押圧部材5が受ける反力はXYスケール板2に伝わり、第2保持部3a2の保持面にXYスケール板2は押し付けられる。押圧部材5の付勢力を用いて、XYスケール板2のZ+方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)は拘束される。第2保持部3a2の並進拘束部材16は、付勢力に基づいて、XYスケール板2(板状部材)をZ−方向(第3の方向)に押下して、Xステージ板に対するXYスケール板2(板状部材)の第3の方向の変形を拘束する拘束部材として機能する。
【0061】
並進拘束部材16の凸部16aと開口部2cとの位置関係は図5を用いて説明したように、並進拘束部材16の凸部16aと開口部2cとが係合した状態で、凸部16aと開口部2cとの間にはX軸方向(+X方向および−X方向)に隙間があり、XYスケール板2はX軸方向に移動可能である。Xステージ板3の第2保持部3a2およびXYスケール板2の端部32において構成された構成によれば、Xステージに熱ドリフトが発生しても、XYスケール板2およびXステージ板3は、X軸上に相対的に自由移動が可能になり、応力の発生を抑制している。
【0062】
(第3保持部近傍の端部33の構造)
図4Dは、図4Aのdd断面を示す図である。第3保持部3a3は、Xステージ板上でXYスケール板2(板状部材)を保持し、線膨張係数の相違に基づいてXステージ板3とXYスケール板2(板状部材)との間に生じた相対的な変形を第1の方向に拘束し、第2の方向において許容する。
【0063】
並進拘束部材17には凸部17aが形成されている。並進拘束部材17がXステージ板3に固定された状態で、XYスケール板2に形成されている開口部2dに対して凸部17aが嵌るように構成されている。並進拘束部材17の凸部17aはY軸上にある開口部2dの側面に、図中の矢印方向にガタなく押し付けられている。
【0064】
また、XYスケール板の端部33には、押圧部材5が設けられている。押圧部材の具体的な構成については、後に図4Eを参照して具体的に説明するが、並進拘束部材17がXステージ板3に固定された状態で、押圧部材5の付勢力は並進拘束部材17の下面(図4Eの下面凹部18aに対応する部分)を押圧する。押圧により押圧部材5が受ける反力はXYスケール板2に伝わり、第3保持部3a3の保持面にXYスケール板2は押し付けられる。押圧部材5の付勢力を用いて、XYスケール板2のZ+方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)は拘束される。第3保持部3a3の並進拘束部材17は、付勢力に基づいて、XYスケール板2(板状部材)をZ−方向(第3の方向)に押下して、Xステージ板に対するXYスケール板2(板状部材)の第3の方向の変形を拘束する拘束部材として機能する。
【0065】
並進拘束部材17の凸部17aと開口部2dとの位置関係は図5を用いて説明したように、並進拘束部材17の凸部17aと開口部2dとが係合した状態で、凸部17aと開口部2dとの間にはY軸方向(+Y方向および−Y方向)に隙間があり、XYスケール板2はY軸方向に移動可能である。Xステージ板3の第3保持部3a3およびXYスケール板2の端部33において構成された構成によれば、Xステージに熱ドリフトが発生しても、XYスケール板2およびXステージ板3は、Y軸上に相対的に自由移動が可能になり、応力の発生を抑制している。
【0066】
(第4保持部の構造)
図4Eは、図4Aのee断面を示しており、第4保持部3a4の断面構造を示す図である。図4Eに示すように押圧部材5は、例えば、ボールプランジャとして構成することが可能である。押圧部材5は、Xステージ板3の上面に対して、鉛直方向に付勢力を発生させる弾性部材5b(圧縮ばね)と、弾性部材5bを保持するハウジング5cと、球形状の部材5a(ボール部材)とを有する。
【0067】
弾性部材5b(圧縮ばね)の一端(下端)はハウジング5cと固定されており、弾性部材5b(圧縮ばね)の他端(上端)に球形状の部材5a(ボール部材)が接続されている。
【0068】
XYスケール板2には、ハウジング5cを固定するためのハウジング固定部14が形成されている。ハウジング固定部14の内周面には、例えば、雌ねじ部が形成されており、ハウジング5cの外周面には、例えば、雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部および雌ねじ部の係合により、押圧部材5をXYスケール板2に固定することができる。押圧受け材18がXステージ板3に固定された状態で、弾性部材5b(圧縮ばね)により付勢された部材5a(ボール部材)は押圧受け材18の下面凹部18aを押圧する。押圧により押圧部材5が受ける反力はXYスケール板2に伝わり、第4保持部3a4の保持面にXYスケール板2は押し付けられる。弾性部材5bの付勢力を用いて、XYスケール板2のZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)は拘束される。
【0069】
第4保持部3a4の保持面の上にXYスケール板2は載置されており機械的に拘束されていないため、XYスケール板2およびXステージ板3は、相対的にXY方向に移動することが可能である。第4保持部3a4の保持面に形成されている開口部13とハウジング固定部14との間には隙間が設けられており、XYスケール板2およびXステージ板3におけるXY方向の相対的な移動が許容される。XYスケール板2およびXステージ板3のXY方向の移動は、部材5a(ボール部材)と押圧受け材18との点接触による転がり抵抗と、XYスケール板2と第4保持部3a4の保持面との摩擦抵抗を受けるが、これらの抵抗成分は、十分小さく無視できるものである。
【0070】
図4Eに示す例では、押圧部材5の構成として、ボールプランジャを使用しているが、板ばね構造や、磁石吸引力利用する構成で付勢力を与えて、XYスケール板2をXステージ板3の第4保持部3a4の保持面に対して押しつけることも可能である。尚、第4保持部3a4は補助的に機能するもので、例えば、ステージのサイズが小型でありXYスケール板2の浮きや、ばたつきが無視できる構成では、第4保持部3a4を用いずに、先に説明した第1保持部3a1〜第3保持部3a3によりXYスケール板2をXステージ板3に保持(固定)することも可能である。
【0071】
図4Eに示す押圧部材5の構成は、第2保持部3a2および第3保持部3a3においても同様の構成されているものとする。
【0072】
この場合、第2保持部3a2においては、押圧部材5の付勢力は並進拘束部材16の下面(下面凹部18aに対応する部分)を押圧する。押圧により押圧部材5が受ける反力はXYスケール板2に伝わり、第2保持部3a2の保持面にXYスケール板2は押し付けられる。押圧部材の付勢力を用いて、XYスケール板2のZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)は拘束される。
【0073】
第3保持部3a3においては、押圧部材5の付勢力は並進拘束部材17の下面(下面凹部18aに対応する部分)を押圧する。押圧により押圧部材5が受ける反力はXYスケール板2に伝わり、第3保持部3a3の保持面にXYスケール板2は押し付けられる。押圧部材の付勢力を用いて、XYスケール板2のZ方向(鉛直方向)の移動(浮き上がり)は拘束される。
【0074】
本実施形態によれば、熱膨張により生じた部材の伸縮による歪の発生を抑制し、高精度な位置管理が可能になる。
【0075】
熱ドリフトの原因として、光学顕微鏡の周囲環境の温度変化や人体の体温またはモータや駆動軸の発熱によるものがある。顕微鏡ステージに熱ドリフトが生じても、X方向およびY方向において、熱変形を許容する保持構造により、保持部で保持されたXYスケール板に生じる歪の発生を抑制することが可能になる。
【0076】
本実施形態のステージ装置は、熱変形の影響を受けず、XYスケール板をXY基準面に対して安定して保持することがでる。これにより、顕微鏡接眼レンズのXY基準面と垂直に交差する光軸(Z方向)の焦点位置を安定させることが可能になり、焦点のずれによる画像ぼけを防止することができる。
【0077】
X軸上に配置されている第2保持部において、X軸方向に変形可能な構造を設け、Y軸上に配置されている第3保持部において、Y軸方向に変形可能な構造を設けることで、熱ドリフトによる熱膨張差が発生しても各支持部の応力を抑制することができる。
【0078】
これによりXYスケール自体の歪を抑えることができる。また、XYスケールに設けられた位置決めの基準となる目盛に歪を発生させることなく、ステージの移動方向とXYスケール(目盛)の平行度を維持できるので、ステージ装置において、高精度な位置決めが可能になる。また、対物レンズとコンデンサレンズの限られた空間に、コンパクトで、測定精度が安定したXYスケールの保持構造を有するステージ装置を位置管理顕微鏡システムに配置することが可能になる。
【0079】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0080】
2:XYスケール板、2s:XYガラススケール、3:Xステージ板、3a1:第1保持部、3a2:第2保持部、3a3:第3保持部、3a4:第4保持部、4:接続部材、5:押圧部材、16:並進拘束部材、17並進拘束部材、18:押圧受け材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5