(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続部は、前記機器設置部が前記下端の棒状部材に対して、少なくとも異なる2方向の軸の各々を中心に回転することができるように、前記伸縮部の他端と前記機器設置部とを接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の昇降装置。
前記伸展状態において、少なくとも2つの前記棒状部材が連結された部分の外周面を覆って、当該少なくとも2つの棒状部材を直線状に保持するための固定ケースをさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の昇降装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。また、上・下・前・後・左・右といった方向を示す用語は、説明のために用いるのであって、本発明を限定する趣旨ではない。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る昇降装置100は、対象機器を昇降させるための装置である。本実施の形態では、側面図である
図1に示すように、ため池などの浚渫作業に利用される浚渫船Sに設置され、浚渫用の吸引装置101が対象機器として昇降される例により説明する。
【0017】
浚渫船Sには、甲板Pから水中に通じる上下方向に貫通した昇降孔Qが設けられており、この昇降孔Qを通じて吸引装置101が昇降される。
図1では、昇降孔Qの上方の開口は、前後方向に配置された複数のローラを有するローラコンベアRにより塞がれている。ローラコンベアRによれば、載置された物を、ローラの配置方向である前後方向に容易に移動させることができる。
【0018】
なお、昇降装置100が設置される場所は適宜変更されてもよい。また、昇降装置100により昇降させる対象機器も、吸引装置101に限られず、ソナー(SONAR:Sound navigation and ranging)などに適宜変更されてもよい。
【0019】
昇降装置100は、基台102と、アーム部103と、動力源104と、伸縮部105と、切替部材106と、機器設置部107と、接続部108と、複数の第1突出部材109と、制御装置110とを備える。
【0020】
基台102は、浚渫船Sに固定される部位である。基台102は、例えば上述した甲板から水中に通じる貫通孔の周囲など、甲板の予め定められた位置に固定される。
【0021】
詳細には、本実施の形態に係る基台102は、基部111と、一対の支持部112とを有する。基部111は、浚渫船Sの甲板に固定される。一対の支持部112は、互いに平行に左右に並んで設けられており、各々が基部111から上方へ延びている。
【0022】
一対の支持部112は、軸113と、動力支持部114とを有する。軸113は、各支持部112の先端部(本実施の形態では、上方の端部に相当する。)の近傍にて、一対の支持部112をまたいで左右方向を向いて設けられている。ここで、先端の近傍とは、先端から予め定めた距離離れた位置であって、先端に比較的近い位置をいうものとする。動力支持部114は、各支持部112の基部111と先端部との間で後方へ突き出して設けられており、その間で動力源104の本体117(詳細後述)を左右方向の軸を中心に回転可能に支持する。
【0023】
アーム部103は、吸引装置101を吊り下げるための吊下げ部115を有し、軸113を中心として基台102に対して回転することによって吊下げ部115の高さを変化させる。
【0024】
詳細には、本実施の形態に係るアーム部103は、基端の近傍が左右方向を向く軸113により支持されており、これによって、軸113を中心として基台102に対して回転する。アーム部103は、吊下げ部115に加えて、ロッド取付部116を有する。
【0025】
本実施の形態に係る吊下げ部115は、その先端に設けられた左右方向の貫通孔である。ロッド取付部116は、ロッド118(詳細後述)の先端が左右方向の軸を中心に回転できるように取り付けられる部位であり、先端と基端との間に設けられている。
【0026】
動力源104は、軸113を中心にアーム部103を回転させるための動力を供給する。
【0027】
詳細には、本実施の形態に係る動力源104には、例えば、本体117から延びるロッド118に推力を加えることによって、その長さ方向に進退させるパワーシリンダが採用される。動力源104は、本体117が動力支持部114に左右方向の軸を中心に回転可能に支持されており、ロッド118が一対の支持部112の間を通って前方へ向かうように設けられる。
【0028】
伸縮部105は、折り畳み可能に相互に連結された複数の棒状部材119_1〜119_3から構成されており、当該複数の棒状部材119_1〜119_3の折畳状態と伸展状態とを切り替えることによって伸縮する部位である。棒状部材119_1〜119_3の各々は、例えば、概ね断面が円形の筒状部材の両端に、孔が設けられた板状の部位を有する部材である。棒状部材119_1〜119_3の各々は、中実であってもよいが、軽量化のため、中空である方が望ましい。
【0029】
本実施の形態に係る伸縮部105は、その折畳状態を
図2に示すように、3つの棒状部材119_1〜119_3と、2つの孔が長軸方向に並んで設けられた略楕円状のジョイント平板120_1〜120_2と、ボルト121_1〜121_4とを有する。なお、ボルト121_1〜121_4の各々は、ナットにより着脱可能に取り付けられている。
【0030】
伸縮部105の一端122を含む棒状部材119_1(上端の棒状部材に相当)は、その一端の近傍に、吊下げ部115に取り付けるための貫通孔が設けられている。棒状部材119_1は、その他端の近傍に、左右方向の貫通孔が設けられている。棒状部材119_1の他端の近傍には、その貫通孔とジョイント平板120_1の孔の一方とに挿設されたボルト121_1により、ジョイント平板120_1がボルト121_1の軸を中心に回転可能に取り付けられている。ここで、挿設とは、孔を貫通した状態で設置されていることをいう。
【0031】
また、棒状部材119_1には、他端の近傍の貫通孔よりも一端寄りに、さらに複数の開口部123_1が設けられている。複数の開口部123_1には、アーム部103から機器設置部107を吊り下げられる方向と交差する方向であり、かつ、互いに異なる方向へ突き出す第2突出部材124が着脱可能に取り付けられる(
図9(b)参照)。
図9(b)は、複数の開口部123_1に第2突出部材124が取り付けられた状態を拡大して示す。
【0032】
本実施の形態に係る棒状部材119_1では、他端の近傍の貫通孔よりも一端寄りに貫通孔が設けられており、これにより、左方と右方との各々を向く2つの開口部123_1が形成されている。
【0033】
第2突出部材124は、例えば、外周面の全体に羅溝が設けられた丸棒であって(
図9(b)参照)、貫通孔に挿設されることで、左右の開口部123_1のそれぞれから左方及び右方へ突き出す。第2突出部材124が取り付けられる場合、
図9(b)に示すように、左右のそれぞれからナットNが嵌められ、これによって、第2突出部材124が容易に外れないように取り付けられる。ナットNで取り付けられるため、第2突出部材124の取り付けだけでなく、取り外しも容易である。
【0034】
伸縮部105の他端を含む棒状部材119_3(下端の棒状部材に相当)は、その一端の近傍に、左右方向の貫通孔が設けられている。棒状部材119_3は、その他端に、接続部108が取り付けられている。棒状部材119_3の一端の近傍には、その貫通孔とジョイント平板120_2の孔の一方とに挿設されたボルト121_4により、ジョイント平板120_2がボルト121_4の軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0035】
本実施の形態に係る棒状部材119_3は、一端の近傍の貫通孔よりも他端寄りに、棒状部材119_1の複数の開口部123_1と同様に、左右方向の貫通孔によって形成される2つの開口部123_2を有する。
【0036】
棒状部材119_2は、両端の各々に、左右方向の貫通孔が設けられている。棒状部材119_2の一端の近傍には、その貫通孔とジョイント平板120_1の孔の他方とに挿設されたボルト121_2により、ジョイント平板120_1がボルト121_2の軸を中心に回転可能に取り付けられている。棒状部材119_2の他端の近傍には、その貫通孔とジョイント平板120_2の孔の他方とに挿設されたボルト121_3により、ジョイント平板120_2がボルト121_3の軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0037】
本実施の形態に係る棒状部材119_2は、他端の近傍の貫通孔よりも一端寄りに、棒状部材119_1の2つの開口部123_1と同様に、左右方向の貫通孔によって形成される2つの開口部123_3を有する。
【0038】
このように、棒状部材119_1,119_2の各々がジョイント平板120_1に対して回転可能に接続され、棒状部材119_2,119_3の各々がジョイント平板120_2に対して回転可能に接続される。その結果、複数の棒状部材119_1〜119_3を、折り畳み可能に相互に連結することができる。
【0039】
なお、開口部123_1〜123_3は、いずれも、2つに限られず、3つ以上であってもよい。複数の開口部123_1〜123_3は、それぞれ、棒状部材119_1〜119_3の軸方向から見て、等しい角度間隔で設けられることが好ましい。
【0040】
再び
図1を参照して、本実施の形態に係る伸縮部105の一端122は、吊下げ部115に着脱可能に取り付けられている。伸縮部105の一端122を取外すことによって、ジョイント平板120_3を介して接続された棒状部材119_4〜119_5(
図10参照)を追加的に設けることができる。
【0041】
より詳細には、伸縮部105の一端(棒状部材119_1の一端に相当)122は貫通孔を有する。そして、伸縮部105の一端122の貫通孔と吊下げ部115の貫通孔とにボルトBが挿設されており、伸縮部105の一端122は、このボルトBの軸を中心に吊下げ部115に対して回転することができる。また、このボルトBにはナットが螺合し、このナットを着脱することによって、伸縮部105の一端122を吊下げ部115に着脱することができる。
【0042】
切替部材106は、伸縮部105の折畳状態での保持とその解除とを切り替えるための部材である。
【0043】
切替部材106は、折畳状態で保持された状態を示す
図2(a)と、それが解除された状態を示す
図2(b)に示すように、蝶番125で接続された2つの略矩形の挟持部材126により構成される。
【0044】
2つの挟持部材126の各々は、互いに対向する内面に凹部が設けられており、これによって、互いに平行になるように折り畳んだ状態の棒状部材119_1〜119_3の周囲を囲むことができる。
【0045】
また、挟持部材126の一方は、蝶番125が設けられた辺部と平行な辺部の中央に、ネジ部材127を有する。ネジ部材127は、ネジ山が設けられた棒状部と、棒状部の一端に設けられた把持部とを有する。ネジ部材127の棒状部には、ナット128が嵌められている。ネジ部材127の他端は、球状であり、抜け落ちずに自由に回転できるように、挟持部材126の一方に取り付けられている。挟持部材126の他方は、挟持部材126を畳んだ場合に、ネジ部材127の棒状部が内部に配置される切欠き部129が設けられている。
【0046】
折畳状態の棒状部材119_1〜119_3の周囲を囲むように2つの挟持部材126を畳んだ場合、ネジ部材127の棒状部を切欠き部129の中に配置し、把持部を把持しつつナット128を締め付けることができる。これにより、2つの挟持部材126を互いに離間しないように固定され、伸縮部105を折畳状態で保持される。伸縮部105が折畳状態で保持された状態で、ナット128を緩めることで、伸縮部105の折畳状態での保持を解除することができる。
【0047】
機器設置部107は、
図1及び3に示すように、吸引装置101が取り付けられる部位である。本実施の形態に係る機器設置部107には、対象機器としてさらに噴射ノズル130が取り付けられる。
【0048】
吸引装置101は、水底の堆積物を吸引するための装置であり、いわゆるサンドポンプのように水底の泥、砂、土をその周囲の水とともに吸引する。噴射ノズル130は、給水ポンプに接続されており、水底へ向けて水を噴射するためのノズルである。噴射ノズル130から水を噴射することで、水底の堆積物を水中で巻き上げることができる。そのため、噴射ノズル130で水を噴射しながら吸引装置101で水底の堆積物を吸引すると、ある程度の深さの堆積物を確実に吸引することができる。
【0049】
機器設置部107は、
図3(a)に示すように、天板部131と、天板フレーム132と、複数の脚部133と、スカート部134とを有する。なお、
図3(a)は、噴射ノズル130及び第1突出部材109が取り付けられた機器設置部107の斜視図である。
【0050】
天板部131は、平板状の部材であり、本実施の形態では樹脂で作られた矩形の平板である。天板部131は、好ましくは、透明である。
【0051】
天板部131には、第1挿設部135と、第2挿設部136と、第1流水部137と、第2流水部138と、上昇弁139と、降下弁140とを有する。
【0052】
第1挿設部135、第2挿設部136、第1流水部137、第2流水部138の各々は、上下方向の貫通孔を形成する部位である。第1挿設部135は、吸引装置101が挿設される。第2挿設部136は、
図3(a)の斜視図に示すように、噴射ノズル130が挿設される。
【0053】
第1流水部137、第2流水部138のそれぞれには、
図3(b)の断面図に示すように、上昇弁139、降下弁140が対応付けて設けられる。
【0054】
上昇弁139は、第1流水部137を通じて下方から上方へ流体が流れることを阻止するための弁である。降下弁140は、第2流水部138を通じて上方から下方へ流体が流れることを阻止するための弁である。
【0055】
本実施の形態に係る上昇弁139、降下弁140は、いずれも、矩形をした平板状のゴム板である。上昇弁139は、第1流水部137を塞ぐように天板部131の下面に配置され、その一辺近傍がネジ止めなどによって固定される。降下弁140は、第1流水部137を塞ぐように天板部131の上面に配置され、その一辺近傍がネジ止めなどによって固定される。
【0056】
このような上昇弁139により、上方から下方へ流体としての水が流れることを許容しつつ、下方から上方へ水が流れることを阻止することができる。また、このような降下弁140により、下方から上方へ流体としての水が流れることを許容しつつ、上方から下方へ水が流れることを阻止することができる。従って、後述するようにスカート部134で側方が塞がれた状態であっても、機器設置部107が容易に水中を上下に移動することが可能になる。
【0057】
天板フレーム132は、天板部131の縁を囲むフレームである。
【0058】
複数の脚部133の各々は、天板フレーム132から下方へ延びる部材である。本実施の形態では、矩形の天板フレーム132の4隅の各々から脚部133が下方へ延びている。4つの脚部133は、下端が相互に接続されていないので、脚部133の各々が水底に独立して刺さることができ、水底に安定して配置することが可能になる。
【0059】
スカート部134は、複数の脚部133のうちの互いに隣接する脚部133の間に設けられて側方を塞ぐ。スカート部134は、樹脂板部141と、弾性部142とを含む。樹脂板部141は、樹脂製の板であって、隣接する脚部133の各組みについて、天板フレーム132から下方へ予め定められた長さの部分を覆う。樹脂板部141は、好ましくは、透明である。
【0060】
弾性部142は、ゴムなどの弾性部材で作られた部位であって、複数の脚部133を囲む側方のうち、樹脂板部141で覆われていない部分を覆う。すなわち、弾性部142は、隣接する脚部133の各組みについて、下端から予め定められた長さの部分に設けられている。
【0061】
本実施の形態に係る弾性部142は、複数のゴム帯GBから構成されており、ゴム帯GBの幅方向が脚部の長さ方向を向くように配置される。また、ゴム帯GBは、脚部133の長さ方向(上下方向)に、互いに一部が重なり合うように複数並べて設けられる。本実施の形態では、3つのゴム帯GBが上下方向に、ゴム帯GBの下端部が、その下に配置されたゴム帯GBの上端部の外に位置して重なり合うように、並べられる(
図3(a)参照)。このような弾性部142を設けることによって、機器設置部107を水底に設置した際に、機器設置部107の底部と水底との間に生じる隙間を抑制することができる。
【0062】
接続部108は、
図1,2に示すように、伸縮部105の他端と機器設置部107とを接続する。本実施の形態に係る接続部108は、いわゆるユニバーサルジョイントであって、機器設置部107が下端の棒状部材119_3に対して、少なくとも異なる2方向の軸(例えば、前後方向の軸と左右方向の軸)の各々を中心に回転することができるように、伸縮部105の他端と機器設置部107とを接続する。
【0063】
複数の第1突出部材109は、機器設置部107に設けられており、アーム部103から機器設置部107を吊り下げられる方向(本実施の形態では、下方向に相当)と交差する方向であり、かつ、互いに異なる方向へ突き出す。第1突出部材109の各々は、取り外しできないように固定されていてもよいが、本実施の形態では機器設置部107に着脱可能に設けられている。
【0064】
ここで、アーム部103から機器設置部107を吊り下げられる方向は、本実施の形態では下方向に相当する。そのため、アーム部103から機器設置部107を吊り下げられる方向と交差する方向は、本実施の形態では水平面内の各方向に相当する。
【0065】
詳細には、本実施の形態では、2つの第1突出部材109が、雄ネジ部を少なくとも一端部から予め定められた範囲に有する(図示せず)。そして、機器設置部107の上端近傍には、左右の各方向を向けて開放するように設けられた穴であって内周面にねじ山を有する雌ネジ穴部Hが設けられている。2つの第1突出部材109は、各々の雄ネジ部が雌ネジ穴部Hにねじ構造で嵌まり合うこと(螺合すること)により固定されている。これにより、2つの第1突出部材109が、左方向と右方向とのそれぞれに突き出すように、機器設置部107に着脱可能に設けられている。
【0066】
なお、複数の第1突出部材109は、機器設置部107に限られず、下端の棒状部材119_3、接続部108に設けられて、アーム部103から機器設置部107を吊り下げられる方向と交差する方向であり、かつ、互いに異なる方向へ突き出していてもよい。この場合、例えば、複数の第1突出部材109は、下端の棒状部材119_3の他端の近傍、接続部108に設けられたネジ山を有する穴の各々に螺合することによって着脱可能に設けられるとよい。
【0067】
また、複数の第1突出部材109は、これらが取り付けられる部材を上方又は軸方向から見て(すなわち、機器設置部107の場合、上方から見て、棒状部材119_3又は接続部108の場合、棒状部材119_3軸方向から見て)、等しい角度間隔で設けられることが好ましい。
【0068】
制御装置110は、吸引装置101、噴射ノズル130に水を供給する給水ポンプ、動力源104などの昇降装置100に含まれる各種機器の動作を制御する。
【0069】
本実施の形態に係る制御装置110は、吸引装置101の吸引量、噴射ノズル130からの水の噴射量を制御する。詳細には、制御装置110は、吸引装置101による単位時間当たりの吸引量が、給水ポンプから供給されて噴射ノズル130からの単位時間当たりの噴射量よりも多くなるように制御する。これによって、吸引装置101から確実に堆積物が吸引されるように、吸引装置101の吸引量と噴射ノズル130からの噴射量とを適切に制御することができる。
【0070】
制御装置110は物理的には、例えば、制御プログラムが予め組み込まれたプロセッサ、電気回路などから構成される。そして、制御装置110は、昇降装置100に含まれる各種機器に配線によって接続されており、この配線を介して各種機器と信号を授受することによって各種機器を制御する。
【0071】
これまで、本発明の一実施の形態に係る昇降装置100の構成について説明した。ここから、本実施の形態に係る昇降装置100の動作について説明する。
【0072】
本実施の形態では、
図4〜12を参照して、水底の堆積物を吸引するために、吸引装置101などが設置された機器設置部107を、浚渫船Sの甲板に設けられた貫通孔を通じて水底に設置する動作の例を説明する。なお、ここでの動作の例は、一例に過ぎず、適宜変更されてもよい。
【0073】
まず、
図1に示すように、ローラコンベアRの上に機器設置部107を載せて、昇降装置100が浚渫船Sの甲板Pの上で組み立てられる。
【0074】
図4に示すように、動力源104のロッド118を本体117から繰り出して、機器設置部107をローラコンベアRの上に浮かせる。この状態で、ローラコンベアRを移動させて、昇降孔Qの上方の穴を開放させる。
【0075】
昇降孔Qの上に左右平行に2本の仮置き棒143を設置し、
図5に示すように、動力源104のロッド118を本体117に繰り入れ、左右の仮置き棒143のそれぞれに左右の第1突出部材109を引っ掛けて止める。仮置き棒143は、機器設置部107を支える強度があればよく、例えば鉄製である。係止とは、引っ掛かって止まっていることをいう。
【0076】
図6に示すように、第1突出部材109を仮置き棒143に係止させた状態で、切替部材106による伸縮部105の折畳状態の保持を解除させる。そして、動力源104のロッド118を本体117から繰り出すと、吊下げ部115が上方へ移動して、伸縮部105が次第に伸びて伸展状態になる。さらに、動力源104のロッド118を本体117から繰り出し、
図7に示すように、第1突出部材109を仮置き棒143の上に浮かせる。これにより、第1突出部材109の仮置き棒143への引っ掛かりが解かれる。
【0077】
動力源104のロッド118を本体117に繰り入れることで、
図8に示すように、吸引装置101及び噴射ノズル130を含む機器設置部107を水中に降下させることができる。機器設置部107が予め定められた長さ水中に降下すると、昇降孔Qの上に左右平行に2本の仮置き棒143が再び設置されるとともに、上端の棒状部材119_1の開口部123_1のそれぞれから左右に突き出すように第2突出部材124が取り付けられる。その後さらに、動力源104のロッド118を本体117に繰り入れ、
図9(a)に示すように、棒状部材119_1に取り付けた第2突出部材124を仮置き棒143に係止させる。
【0078】
図9(b)は、
図9(a)の点線の円で囲んだ部分を前方から見て拡大して示す図である。この図に示すように、左右の第2突出部材124のそれぞれが左右の仮置き棒143に接触することで、第2突出部材124が仮置き棒143に係止される。
【0079】
機器設置部107の底部が未だ水底に着いていない。そのため、第2突出部材124を仮置き棒143に係止させた仮置き状態で、
図10に示すように、ジョイント平板120_3を介して接続された棒状部材119_4,119_5を、ジョイント平板120_4を介して伸縮部105に継ぎ足す。
【0080】
棒状部材119_4,119_5とジョイント平板120_3とは、例えば棒状部材119_1,119_2とジョイント平板120_1と同様に、ボルトとナットを利用して、左右方向の軸を中心に回転可能に取り付けられる。また、棒状部材119_3,119_4とジョイント平板120_4とも、例えば棒状部材119_1,119_2とジョイント平板120_1と同様に、ボルトとナットを利用して、左右方向の軸を中心に回転可能に取り付けられる。
【0081】
動力源104のロッド118を本体117から繰り出し、第2突出部材124を仮置き棒143の上に浮かせる。第2突出部材124の仮置き棒143への引っ掛かりが解かれるので、
図11に示すように、仮置き棒143を昇降孔Qの上から移動させる。これにより、棒状部材119_4,119_5が追加された状態で機器設置部107を降ろすことができる。
【0082】
そのため、動力源104のロッド118を本体117に繰り入れ、機器設置部107をさらに深い水深にまで降ろすことができる。その結果、
図12に示すように、機器設置部107をその底部を水底に着けて設置することができる。
【0083】
このとき、接続部108が2方向の軸を中心に回転することができるので、水底の傾斜に合せて機器設置部107を傾斜させて配置することができる。これにより、機器設置部107の底部と水底との間に生じる隙間を抑制することができる。そのため、天板部131、天板フレーム132、複数の脚部133及びスカート部134で、水底をより確実に区画することが可能になり、堆積物の吸引の効率を上げることが可能になる。
【0084】
また、スカート部134が下方に弾性部142を有しているので、これによっても、機器設置部107の底部と水底との間に生じる隙間が抑制される。そのため、天板部131、天板フレーム132、複数の脚部133及びスカート部134で、水底をより一層確実に区画することが可能になり、堆積物の吸引の効率をより上げることが可能になる。
【0085】
この状態で、吸引装置101吸引量が噴射ノズル130からの噴射量よりも多くなるように、制御装置110の制御の下で吸引装置101と給水ポンプとを稼働させる。これにより、天板部131、天板フレーム132、複数の脚部133及びスカート部134で区画された水底の堆積物を吸引することができる。この区画された水底の浚渫作業が終了すると、これまで
図4〜12を参照して説明した動作と逆の動作を行う。これにより、機器設置部107が、甲板Pよりも上方に引き上げられる。
【0086】
そして、次の浚渫作業の対象となる水底に機器設置部107を配置できる場所へ浚渫船Sを移動させる。その後に、
図4〜12を参照して説明した上述の動作を再び行う。このような動作を繰り替えることで、所望の範囲の水底を浚うことができる。
【0087】
これまで説明したように、本実施の形態に係る昇降装置100は、基台102、アーム部103、動力源104、伸縮部105、切替部材106、機器設置部107、接続部108及び複数の第1突出部材109から構成される。
【0088】
従来とは異なり、ロープを掛け回すウィンチドラム、滑車などを設ける必要がなく、これらを支持する架台も必要もない。そのため、本実施の形態に係る昇降装置100では、軽量かつコンパクトな構成とすることができる。また、これらを組み立てて昇降装置100にすることも容易である。
【0089】
特に、山間部、狭小部にある1000m
2〜2000m
2程度の中小規模のため池の浚渫作業では、部材102〜110などを池のほとりにまで運ぶことが容易になり、浚渫船Sの上で容易に組み立てることができる。そのため、例えば中小規模のため池を除染などに極めて有用である。
【0090】
また、伸縮部105は、ジョイント平板120_1〜120_2で互いに接続された棒状部材119_1〜119_3、或いは、ジョイント平板120_1〜120_4で互いに接続された棒状部材119_1〜119_5により構成される。そのため、ロープ、チェーンなどよりも、吊下げ方向(上下方向)の軸を中心として回転し難い。これにより、概ね所望の向きで機器設置部107を設置することが可能になる。例えば、本実施の形態のように水底に機器設置部107を設置する場合、水底の形状に合わせて機器設置部107の向きを設定して水中に沈めることができる。これにより、機器設置部107を水底に安定して設置して、水底の堆積物をより確実に吸引することが可能になる。
【0091】
本発明の一実施の形態に係る昇降装置100について説明したが、本実施の形態は、次のように変形されてもよい。
【0092】
例えば
図13に示すように、昇降装置200は、伸縮部105が伸展状態である場合に、棒状部材119_1〜119_5のうちの少なくとも2つの棒状部材が連結された部分の外周面を覆う固定ケース244,245,246をさらに備えてもよい。
【0093】
固定ケース244は、伸展状態において、棒状部材119_1と棒状部材119_2とが連結された部分と、棒状部材119_2と棒状部材119_3とが連結された部分の外周面を覆う円筒状の部材である。
図13は、
図12において固定ケース244を取り付けた昇降装置200を示す。図において、棒状部材119_2は、固定ケース244の中にすべて収容されるため、同図には表れていない。このように棒状部材119_1と119_2の連結部分、棒状部材119_2及び棒状部材119_2と119_3の連結部分を覆うことによって、固定ケース244は、伸展状態において、棒状部材119_1〜119_3を直線状に保持する。
【0094】
また、固定ケース244には、開口部123_1と連通する孔部247が設けられており(
図14参照)、その孔部247にボルトB2が
図13に示すように挿設される。ボルトB2は、図示しないナットにより、開口部123_1及び孔部247から容易に外れないように着脱可能に取り付けられている。
【0095】
固定ケース244は、折畳状態では、
図14に示すように棒状部材119_3の外周面を内部に収容するように配置されるとよい。これにより、固定ケース244を伸縮部105と一体化できるので、固定ケース244を伸縮部105と一緒に運搬でき、組み立ての際に固定ケース244を嵌める手間を省くことができる。そのため、運搬し易くするとともに組み立てを容易にすることが可能になる。
【0096】
また、固定ケース244が棒状部材119_3の外周面を覆うときの、固定ケース244の位置を初期位置とする。固定ケース244が、棒状部材119_1と119_2の連結部分、棒状部材119_2及び棒状部材119_2と119_3の連結部分を覆うときの、固定ケース244の位置を固定位置とする。
【0097】
伸縮部105を伸展状態にした際に、固定ケース244を固定位置に設定する場合、固定ケース244を、棒状部材119_1〜119_3に沿って初期位置から固定位置へスライド移動させるとよい。そして、上述のようにボルトB2を挿設して、このボルトB2にナットを嵌めるとよい。このような簡易な作業によって、固定ケース244によって、伸展状態の棒状部材119_1〜119_3を直線状に保持させることができる。このような観点からも、折畳状態で棒状部材119_3の外周面を内部に収容することによって、組み立てを容易にすることが可能になる。
【0098】
再び、
図13を参照する。
固定ケース245は、伸展状態において、棒状部材119_1と棒状部材119_5とが連結された部分の外周面を覆う部材であって、例えばカップリング(軸継手)である。固定ケース245は、ボルトB3とナットにより、棒状部材119_1と119_5との連結部分を覆うように固定される。これによって、固定ケース245は、伸展状態において、棒状部材119_1及び119_5を直線状に保持する。
【0099】
固定ケース246は、伸展状態において、棒状部材119_5と棒状部材119_4とが連結された部分の外周面を覆う部材であって、例えば固定ケース246と同様のカップリングである。固定ケース246は、ボルトB4とナットにより、棒状部材119_5と119_4との連結部分を覆うように固定される。これによって、固定ケース246は、伸展状態において、棒状部材119_5及び119_4を直線状に保持する。
【0100】
このような固定ケース244,245,246をさらに備えることによって、機器設置部107を水底に押し付けた際に、伸展した棒状部材119_1〜119_5が連結部位で屈曲することを防ぐことができる。その結果、機器設置部107を安定して水底に設置することが可能になる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
【解決手段】対象機器としての吸引装置101を昇降させるための昇降装置100は、吸引装置101を吊り下げるための吊下げ部115の高さを動力源104からの動力により変化させるアーム部103と、一端が吊下げ部115に取り付けられ、他端が吸引装置101を含む機器設置部107が取り付けられる部材であって、折畳状態と伸展状態とを切り替えることによって伸縮する伸縮部105と、伸縮部105の折畳状態での保持とその解除とを切り替えるための切替部材106と、例えば機器設置部107に設けられて左右の各方向へ突き出す第1突出部材109と、を備える。伸縮部105は、折り畳み可能に相互に連結された複数の棒状部材119_1〜119_3から構成されている。