(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二重鉄筋籠の一般的な製作方法は、
図8に示すようなものであった。すなわち、縦方向に据え付けた外側鉄筋籠1内に内側鉄筋籠2を上方から吊り下ろすことによって挿入していく。内側鉄筋籠2が所定の位置に到達した状態で、ブラケット3の一端を外側鉄筋籠1の外側補強枠4の内側面に溶接固定し、さらに、ブラケット3の他端を内側鉄筋籠2の内側補強枠5の外側面に溶接固定する。これにより、外側鉄筋籠1と内側鉄筋籠2とがブラケット3によって互いに固定され、二重鉄筋籠6が完成する。
【0005】
しかしながら、従来の一般的な製作方法では、ブラケット3を内側鉄筋籠2に溶接固定する際、上方から吊られた状態の内側鉄筋籠2が風や外部からの振動等によって溶接中に揺動してしまうことから、溶接による外側鉄筋籠1と内側鉄筋籠2との固定が非常に難しく、かつ、固定作業に多大な時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、外側鉄筋籠に対する内側鉄筋籠の固定をより簡単かつ短時間で実施できる二重鉄筋籠構造、およびその製作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に従うと、外側鉄筋籠と、外側鉄筋籠内に挿入された内側鉄筋籠とが互いに固定された二重鉄筋籠構造において、
外側鉄筋籠と内側鉄筋籠とは、ブラケットで互いに連結されており、
ブラケットは、内側鉄筋籠の一部を受け入れる第1の受入溝を有して
おり、
前記ブラケットにおける前記第1の受入溝の近傍には、前記内側鉄筋籠の一部に当接する第1の補強部材が設けられている二重鉄筋籠構造が提供される。
【0008】
好ましくは、ブラケットに外側鉄筋籠の一部を受け入れる第2の受入溝が更に設けられる。
【0009】
この発明の他の局面に従うと、外側鉄筋籠と、外側鉄筋籠内に挿入された内側鉄筋籠とが互いに固定された二重鉄筋籠構造において、
外側鉄筋籠と内側鉄筋籠とは、ブラケットで互いに連結されており、
ブラケットは、外側鉄筋籠の一部を受け入れる第2の受入溝を有して
おり、
前記ブラケットにおける前記第2の受入溝の近傍には、前記外側鉄筋籠の一部に当接する第2の補強部材が設けられている二重鉄筋籠構造が提供される。
【0014】
この発明の他の局面に従うと、外側鉄筋籠と、前記外側鉄筋籠内に挿入された内側鉄筋籠とが互いに固定された二重鉄筋籠構造において、
前記外側鉄筋籠と前記内側鉄筋籠とは、ブラケットで互いに連結されており、
前記ブラケットは、前記内側鉄筋籠の一部を受け入れる第1の受入溝を有しており、
前記第1の受入溝の幅は、前記ブラケットの端から奥に行くほど狭くなるように形成されている二重鉄筋籠構造が提供される。
【0015】
この発明の他の局面に従うと、外側鉄筋籠と、前記外側鉄筋籠内に挿入された内側鉄筋籠とが互いに固定された二重鉄筋籠構造において、
前記外側鉄筋籠と前記内側鉄筋籠とは、ブラケットで互いに連結されており、
前記ブラケットは、前記外側鉄筋籠の一部を受け入れる第2の受入溝を有しており、
前記第2の受入溝の幅は、前記ブラケットの端から奥に行くほど狭くなるように形成されている二重鉄筋籠構造が提供される。
【0016】
この発明の別の局面に従うと、外側鉄筋籠に、内側鉄筋籠を挿入していき、外側鉄筋籠に取り付けたブラケットの第1の受入溝に内側鉄筋籠の一部を入れることによって外側鉄筋籠と内側鉄筋籠とを互いに固定する二重鉄筋籠構造の製作方法が提供される。
【0017】
好ましくは、ブラケットは、第2の受入溝を更に有しており、第1の受入溝に内側鉄筋籠の一部を入れ込む前に、第2の受入溝に外側鉄筋籠の一部を入れることによってブラケットを外側鉄筋籠に取り付ける。
【0018】
この発明の別の局面に従うと、外側鉄筋籠に、内側鉄筋籠を挿入していき、内側鉄筋籠に取り付けたブラケットの第2の受入溝に外側鉄筋籠の一部を入れることによって外側鉄筋籠と内側鉄筋籠とを互いに固定する二重鉄筋籠構造の製作方法が提供される。
【0019】
好ましくは、ブラケットは、第1の受入溝を更に有しており、第2の受入溝に外側鉄筋籠の一部を入れ込む前に、第1の籠受入溝に内側鉄筋籠の一部を入れることによってブラケットを内側鉄筋籠に取り付ける。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、外側鉄筋籠の一部あるいは内側鉄筋籠の一部を、ブラケットが有する第1の受入溝あるいは第2の受入溝に嵌め込むことにより、外側鉄筋籠と内側鉄筋籠とを互いに固定できる。これにより、内側鉄筋籠を吊り下げた状態で溶接を実施する必要がなくなるので、外側鉄筋籠に対する内側鉄筋籠の固定をより簡単かつ短時間で実施できる二重鉄筋籠構造、およびその製作方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<二重鉄筋籠構造の構成>
【0023】
図1および2を参照して、本実施の形態にかかる二重鉄筋籠構造100の全体構成について説明する。二重鉄筋籠構造100は、大略、外側鉄筋籠110と、内側鉄筋籠120と、ブラケット130とを備えている。
【0024】
二重鉄筋籠構造100によって形成された二重鉄筋籠102は、高層建築物を支えるコンクリート杭のせん断補強用に用いられる構造体である。当該二重鉄筋籠102の周囲に型枠等を組んだ後、型枠内にコンクリートを打つことによってコンクリート杭が完成する。
【0025】
外側鉄筋籠110は、大略、外側主筋112と、外側補強枠114と、外側フープ筋116と、第1の固定金物118とを備えている。
【0026】
外側主筋112は、コンクリート杭に加えられる引張力を主に負担する鉄筋である。本実施の形態では、丸形状の断面を有する長尺の鉄筋が外側主筋112として使用されている。複数の外側主筋112を、互いの長手方向が略平行で、かつ、当該長手方向に直交する断面において、ある点を中心とした仮想円VC1上に各外側主筋112が配置されている。これにより、複数の外側主筋112で略円筒形状の構造体が構成されている。なお、複数の外側主筋112で構成される構造体の形状は略円筒形状に限定されるものではなく、略角筒形状やその他の形状であってもよい。
【0027】
外側補強枠114は、複数の外側主筋112で構成された略円筒形状の構造体の側周に巻回された帯状の部材である。外側補強枠114と複数の外側主筋112とは、各外側主筋112と外側補強枠114とが近接する位置において、第1の固定金物118にてそれぞれ互いに固定されている(
図5参照)。外側補強枠114の材料としては、フラットバー、C形鋼、アングル鋼、組立筋等が考えられる。また、外側補強枠114の固定は、第1の固定金物118によらず、外側主筋112に直接溶接する等の方法を用いてもよい。
【0028】
外側フープ筋116は、複数の外側主筋112で構成された略円筒形状の構造体の側周における外側補強枠114同士の間に巻回された、例えば外側主筋112よりも細径の鉄筋である。外側フープ筋116と複数の外側主筋112とは、各外側主筋112と外側フープ筋116とが近接する位置において、公知の固定金物にてそれぞれ互いに固定してもよいし、溶接等の方法を用いて固定してもよい。
【0029】
なお、図示した外側鉄筋籠110における外側主筋112、外側補強枠114、および外側フープ筋116の数や形状等はすべて例示であり、図示したものに限定する意図ではない。
【0030】
内側鉄筋籠120も、外側鉄筋籠110と同様、大略、内側主筋122と、内側補強枠124と、内側フープ筋126と、第2の固定金物128とを備えている。
【0031】
内側主筋122は、コンクリート杭に加えられる引張力を主に負担する鉄筋である。本実施の形態では、丸形状の断面を有する長尺の鉄筋が内側主筋122として使用されている。複数の内側主筋122を、互いの長手方向が略平行で、かつ、当該長手方向に直交する断面において、ある点を中心とした仮想円VC2上に各内側主筋122が配置されている。これにより、複数の内側主筋122で略円筒形状の構造体が構成されている。なお、内側主筋122で構成された構造体の外径は、外側主筋112で構成された構造体の外径よりも小さく設定されており、内側鉄筋籠120が外側鉄筋籠110内に挿入できるようになっている。また、複数の内側主筋122で構成される構造体の形状は略円筒形状に限定されるものではない。内側主筋122で構成された内側鉄筋籠120が外側鉄筋籠110内に挿入できるのであれば、内側主筋122で構成される構造体の形状は、略角筒形状やその他の形状であってもよい。
【0032】
内側補強枠124は、複数の内側主筋122で構成された略円筒形状の構造体の側周に巻回された帯状の部材である。内側補強枠124と複数の内側主筋122とは、各内側主筋122と内側補強枠124とが近接する位置において、第2の固定金物128にてそれぞれ互いに固定されている(
図5参照)。内側補強枠124の材料としては、フラットバー、C形鋼、アングル鋼、組立筋等が考えられる。また、内側補強枠124の固定は、第2の固定金物128によらず、内側主筋122に直接溶接する等の方法を用いてもよい。
【0033】
内側フープ筋126は、複数の内側主筋122で構成された略円筒形状の構造体の側周における内側補強枠124同士の間に巻回された、例えば内側主筋122よりも細径の鉄筋である。内側フープ筋126と複数の内側主筋122とは、各内側主筋122と内側フープ筋126とが近接する位置において、公知の固定金物にてそれぞれ互いに固定してもよいし、溶接等の方法を用いて固定してもよい。
【0034】
なお、図示した内側鉄筋籠120における内側主筋122、内側補強枠124、および内側フープ筋126の数や形状等はすべて例示であり、図示したものに限定する意図ではない。
【0035】
ブラケット130は、外側鉄筋籠110と、当該外側鉄筋籠110内に挿入した内側鉄筋籠120とを互いに固定するためのものであり、
図3に示すように、本体部132と、第1の受入溝134と、第2の受入溝136と、必要に応じて設けられる、第1の補強部材138および第2の補強部材140とを備えている。なお、1つの二重鉄筋籠102に対して複数個のブラケット130が使用される(例えば、
図2では、4つのブラケット130が使用されている)が、使用されるブラケット130の数は特に限定されるものではない。
【0036】
本体部132は、矩形板状の部材であり、外側鉄筋籠110の一部と内側鉄筋籠120の一部との間に架け渡せるように、その長さLが設定されている。本体部132の形状は、本実施例のような矩形板状のものだけでなく、楕円形板状や、幅を広くしたブロック形状等を採用することができる。
【0037】
第1の受入溝134は、内側鉄筋籠120の一部を受け入れる溝であり、好ましくは、図示するように本体部132の一方端部を切り欠いて形成されるが、本体部132に略U字型の金具を固定する方法で形成してもよい。また、第1の受入溝134は、本体部132において、外側鉄筋籠110に対して内側鉄筋籠120が挿入される方向(=第1の方向F)に対向する第1の開口部142を有している。
【0038】
本発明において、「挿入される」とは、相対的な関係において外側鉄筋籠110の内部に内側鉄筋籠120を配置することを意味し、固定された外側鉄筋籠110の内側に内側鉄筋籠120を挿入するように移動させる場合も、固定された内側鉄筋籠120に外側鉄筋籠110を被せるように移動させる場合も含んでいる。そして、「挿入される方向」とは、外側鉄筋籠110が固定されている場合、内側鉄筋籠120が固定されている場合のいずれかを問わず、外側鉄筋籠110と相対的な関係において内側鉄筋籠120が挿入される方向を意味する。例えば、固定された外側鉄筋籠110の上方から内側鉄筋籠120を降下させる場合、下方向が「挿入される方向」となる。逆に、固定された内側鉄筋籠120の上方から外側鉄筋籠110を被せるように降下させる場合、上方向が「挿入される方向」となる。
【0039】
内側鉄筋籠120の「一部」とは、内側鉄筋籠120を構成する部材であればどのようなものでもよい。例えば、内側主筋122や内側補強枠124等に対して溶接またはボルト締め等の適宜の固定手段で外側に向かって取り付けられた、第1の受入溝134に嵌合する突起部材を内側鉄筋籠120の「一部」とすることができる。このように内側補強枠124等から外側に突出する突起部材を用いた場合、外側鉄筋籠110から内側に向かうブラケット130の長さLを短くすることができる。このため、内側鉄筋籠120を挿入している最中に、当該ブラケット130が内側鉄筋籠120の他の部分に誤って接触するおそれが低減する。これにより、挿入作業の最初からブラケット130を外側鉄筋籠110に取り付けておくことができ、挿入作業の途中でブラケット130を取り付ける作業を省略できる。
【0040】
さらに、
図3に示す実施例では、第1の受入溝134の幅W1は、当該第1の開口部142から第1の受入溝134の奥に行くほど狭くなるように形成されている。これに代えて、幅W1を一定に設定してもよい。なお、本実施例では、第1の受入溝134は、内側鉄筋籠120の内側補強枠124を受け入れるようになっているが、内側鉄筋籠120の一部であれば、他の部分を受け入れるようにしてもよい。
【0041】
第2の受入溝136は、外側鉄筋籠110の一部を受け入れる溝であり、好ましくは、図示するように本体部132の他方端部を切り欠いて形成されるが、本体部132に略U字型の金具を固定する方法で形成してもよい。また、第2の受入溝136は、本体部132において、外側鉄筋籠110に対して内側鉄筋籠120が挿入される第1の方向Fとは逆方向(=第2の方向R)に対向する第2の開口部144を有している。
【0042】
外側鉄筋籠110の「一部」とは、外側鉄筋籠110を構成する部材であればどのようなものでもよい。例えば、外側主筋112や外側補強枠114等に対して溶接またはボルト締め等の適宜の固定手段で外側に向かって取り付けられた、第2の受入溝136に嵌合する突起部材を外側鉄筋籠110の「一部」とすることができる。このように外側補強枠114等から内側に突出する突起部材を用いた場合、内側鉄筋籠120から外側に向かうブラケット130の長さLを短くすることができる。このため、内側鉄筋籠120を挿入している最中に、当該ブラケット130が外側鉄筋籠110の他の部分に誤って接触するおそれが低減する。これにより、挿入作業の最初からブラケット130を内側鉄筋籠120に取り付けておくことができ、挿入作業の途中でブラケット130を取り付ける作業を省略できる。
【0043】
さらに、第2の受入溝136の幅W2に関し、
図3に示す実施例では、当該幅W2が一定に設定されているが、これに代えて、第2の開口部144から第2の受入溝136の奥に行くほど幅W2が狭くなるように当該第2の受入溝136を形成してもよい。
【0044】
第1の補強部材138は、本体部132にかかる荷重P1やモーメントM1を軽減し、本体部132が破損するのを防止する部材である。
図3に示すように、第1の補強部材138は、本体部132における第1の受入溝134の近傍から突設されている。
【0045】
すなわち、第1の受入溝134に内側鉄筋籠120の一部(本実施例では内側補強枠124)を嵌め込んだとき、内側鉄筋籠120の荷重の一部が、第1の受入溝134の最奥におけるブラケット130の本体部132に加わる(図中の矢印P1)。さらに、内側鉄筋籠120の荷重により、本体部132には、第1の受入溝134の幅W1を広げる方向のモーメントが加わる(図中の矢印M1)。本実施例におけるブラケット130のように、本体部132に比較的幅が狭い板材を使用する場合、上述したような内側鉄筋籠120からの荷重P1やモーメントM1によって本体部132が損傷するおそれがある。
【0046】
これに対し、本実施例では、第1の補強部材138が内側鉄筋籠120の一部(本実施例では内側補強枠124)に当接することにより、内側鉄筋籠120からの荷重を本体部132の一部だけでなく、第1の補強部材138でも受けることができる。これにより、内側鉄筋籠120からの荷重P1を分散させてブラケット130で受けることができるようになる。または、第1の補強部材138により第1の受入溝134近傍の剛性を増すことができる。これにより、本体部132にかかるモーメントM1に対する強度が増す。これらの結果、本体部132の一部が損傷するおそれを低減することが可能となる。
【0047】
上述のような効果を生じさせるため、本実施例において、第1の補強部材138は、本体部132における第1の受入溝134の最奥に臨む位置A1、および、第1の受入溝134が受け入れた内側鉄筋籠120の一部に当接することができる、第1の受入溝134に隣接する位置A2に配置されている。もちろん、第1の補強部材138の配置位置はこれらに限定されるものではないし、第1の補強部材138を設けないこともできる。また、第1の補強部材138は、断面が丸形状の部材に限られず、断面が角形状等の他の形状であってもよい。さらに、図示するように、内側鉄筋籠120の一部(本実施例では、内側補強枠124)に沿うように、湾曲させた第1の補強部材138を採用してもよい。また、図示するように、第1の補強部材138を本体部132の両側から突設させてもよいし、一方の側のみから突設させてもよい。さらに、第1の補強部材138の数は、特に限定されない。
【0048】
なお、本明細書全体を通じて、第1の補強部材138が「当接する」とは、内側鉄筋籠120の一部に対して常に当接することに限定されるものではなく、本体部132に荷重P1やモーメントM1が掛かったときに初めて第1の補強部材138が内側鉄筋籠120の一部に当接するような場合も含む。
【0049】
第2の補強部材140も、第1の補強部材138と同様、本体部132にかかる荷重P2やモーメントM2を軽減し、本体部132が破損するのを防止する部材である。第2の補強部材140は、本体部132における第2の受入溝136の近傍から突設されている。
【0050】
すなわち、第2の受入溝136に外側鉄筋籠110の一部(本実施例では外側補強枠114)を嵌め込んだとき、内側鉄筋籠120の荷重の一部が、第2の受入溝136の最奥におけるブラケット130の本体部132にも加わる(図中の矢印P2)。さらに、内側鉄筋籠120の荷重により、本体部132には、第2の受入溝136の幅W2を広げる方向のモーメントが加わる(図中の矢印M2)。本実施例におけるブラケット130のように、本体部132に比較的幅が狭い板材を使用する場合、上述したような内側鉄筋籠120からの荷重P2やモーメントM2によって本体部132が損傷するおそれがある。
【0051】
これに対し、本実施例では、第2の補強部材140が外側鉄筋籠110の一部(本実施例では外側補強枠114)に当接することにより、内側鉄筋籠120からの荷重を本体部132の一部だけでなく、第2の補強部材140でも受けるようになっている。これにより、内側鉄筋籠120からの荷重P2を分散させてブラケット130で受けることができるようになる。または、第2の補強部材140により第2の受入溝136近傍の剛性を増すことができる。これにより、本体部132にかかるモーメントM2に対する強度が増す。これらの結果、本体部132の一部が損傷するおそれを低減することが可能となる。
【0052】
上述のような効果を生じさせるため、本実施例では、第2の補強部材140は、本体部132における第2の受入溝136の最奥に臨む位置A3、および、第2の受入溝136が受け入れた外側鉄筋籠110の一部に当接することができる、第2の受入溝136に隣接する位置A4に配置されている。もちろん、第2の補強部材140の配置位置はこれらに限定されるものではないし、第2の補強部材140を設けないこともできる。また、第2の補強部材140は、断面が丸形状の部材に限られず、断面が角形状等の他の形状であってもよい。さらに、図示するように、外側鉄筋籠110の一部(本実施例では、外側補強枠114)に沿うように、湾曲させた第2の補強部材140を採用してもよい。また、図示するように、第2の補強部材140を本体部132の両側から突設させてもよいし、一方の側のみから突設させてもよい。さらに、第2の補強部材140の数は、特に限定されない。
【0053】
なお、本明細書全体を通じて、第2の補強部材140が「当接する」とは、外側鉄筋籠110の一部に対して常に当接することに限定されるものではなく、本体部132に荷重P2やモーメントM2が掛かったときに初めて第2の補強部材140が外側鉄筋籠110の一部に当接するような場合も含む。
【0054】
<二重鉄筋籠構造を用いた二重鉄筋籠の製作方法>
次に、本実施例に係る二重鉄筋籠構造100を用いた、二重鉄筋籠102の製作方法について説明する。予め、公知の製作方法を用いて外側鉄筋籠110および内側鉄筋籠120をそれぞれ個別に製作しておく。外側鉄筋籠110および内側鉄筋籠120の製作は、コンクリート杭を設置する現場で行われるのが一般的であるが、遠隔地の工場等で製作した後、現場に搬送してきてもよい。
【0055】
然る後、
図4に示すように、コンクリート杭を設置するための穴Hを地面に掘り、重機等を用いて当該穴Hに外側鉄筋籠110を据え付ける。
【0056】
続いて、据え付けた外側鉄筋籠110内に、内側鉄筋籠120を挿入していく。内側鉄筋籠120を外側鉄筋籠110に対して固定する位置(本実施例では、ブラケット130が受け入れる外側補強枠114と内側補強枠124とが同じ高さなる位置)に当該内側鉄筋籠120が到達する少し前に、ブラケット130における第2の受入溝136に対して外側鉄筋籠110の外側補強枠114を第2の方向R(本実施例では、図中、上向き)に嵌め込んで、ブラケット130を外側鉄筋籠110に取り付ける。
【0057】
然る後、内側鉄筋籠120を外側鉄筋籠110内にさらに挿入していき、ブラケット130の第1の受入溝134に対して内側鉄筋籠120の内側補強枠124を嵌め込んで、ブラケット130を内側鉄筋籠120に取り付ける。
【0058】
これにより、
図5に示すように、ブラケット130を介して、外側鉄筋籠110と内側鉄筋籠120とが互いに固定され、二重鉄筋籠102が完成する。二重鉄筋籠102が完成した後、当該二重鉄筋籠102の周囲にコンクリート型枠を設けてコンクリートを流し込むことにより、コンクリート杭が完成する。
【0059】
本実施例に係る二重鉄筋籠102の製作方法によれば、従来の方法のように、外側鉄筋籠110の内側で内側鉄筋籠120を重機等で吊り下げた不安定な状態で、溶接等を用いて外側鉄筋籠110および内側鉄筋籠120を互いに固定する場合とは異なり、第1の受入溝134および第2の受入溝136に、内側鉄筋籠120の内側補強枠124および外側鉄筋籠110の外側補強枠114を嵌め込むだけで、外側鉄筋籠110および内側鉄筋籠120を互いに固定できる。これにより、現場における二重鉄筋籠102の施工時間を大幅に短縮できる。
【0060】
また、本実施例に係るブラケット130では、外側鉄筋籠110に対して内側鉄筋籠120が挿入される第1の方向Fに対向する第1の開口部142を有する第1の受入溝134が形成されているので、外側鉄筋籠110に内側鉄筋籠120を挿入していくだけで、内側鉄筋籠120の一部(本実施例では内側補強枠124)が第1の受入溝134に受け入れられる。このため、従来のように吊り下げた内側鉄筋籠120を所定の位置に合わせて保持する必要がなくなり、二重鉄筋籠102の製作が容易になる。
【0061】
また、本実施例に係るブラケット130では、外側鉄筋籠110に対して内側鉄筋籠120が挿入される第1の方向Fとは反対の方向(=第2の方向R)に対向する第2の開口部144を有する第2の受入溝136が形成されているので、ブラケット130を外側鉄筋籠110の一部(本実施例では外側補強枠114)に対して簡単に取り付けることができる。さらに、第1の受入溝134と第2の受入溝136とが互いに逆方向に形成されているので、外側鉄筋籠110の一部に取り付けたブラケット130に内側鉄筋籠120の一部を受け入れて、外側鉄筋籠110と内側鉄筋籠120とを互いに固定できる。
【0062】
また、第1の受入溝134の幅W1や第2の受入溝136の幅W2を、開口部142,144から奥に行くほど狭くなるように形成することにより、第1の受入溝134や第2の受入溝136に対して、内側鉄筋籠120の一部や外側鉄筋籠110の一部を嵌め込む作業をより簡単に実施できる。
【0063】
<変形例>
(1)
上述した実施形態の製作方法では、内側鉄筋籠120を外側鉄筋籠110に対して固定する位置に当該内側鉄筋籠120が到達する少し前に、ブラケット130を外側鉄筋籠110に取り付けるようにしているが、これに代えて、内側鉄筋籠120が固定位置に到達する少し前に、ブラケット130を内側鉄筋籠120に取り付けてもよい。然る後、第2の受入溝136に外側鉄筋籠110の一部を受け入れることになる。
【0064】
(2)
また、外側鉄筋籠110に対して内側鉄筋籠120が挿入される前段階から、予め、ブラケット130を外側鉄筋籠110あるいは内側鉄筋籠120の所定位置に取り付けておいてもよい。
【0065】
(3)
さらに言えば、上述した実施形態のブラケット130には、内側鉄筋籠120の一部および外側鉄筋籠110の一部をそれぞれ受け入れる第1の受入溝134および第2の受入溝136が形成されているが、これに代えて、第1の受入溝134および第2の受入溝136のいずれか一方のみを形成したブラケット130であってもよい。
【0066】
例えば、第1の受入溝134のみが形成されている場合、当該ブラケット130は、いずれかのタイミングで、外側鉄筋籠110に対して溶接やボルト等の方法で固定される。逆に、第2の受入溝136のみが形成されている場合、当該ブラケット130は、いずれかのタイミングで、内側鉄筋籠120に対して溶接やボルト等の方法で固定される。
【0067】
(4)
また、上述のように、コンクリート杭用の穴Hに外側鉄筋籠110を先に据え付けるのではなく、
図6に示すように、外側鉄筋籠110内に内側鉄筋籠120を挿入して二重鉄筋籠102を形成し、その後、当該二重鉄筋籠102をコンクリート杭用の穴Hに据え付けてもよい。
【0068】
(5)
また、
図4や
図6に示すように、縦向きにした外側鉄筋籠110に対して下方向に内側鉄筋籠120を挿入するのではなく、外側鉄筋籠110を持ち上げて、内側鉄筋籠120を挿入するようにしてもよい。さらに、
図7に示すように、横向きにした外側鉄筋籠110に対して、横方向に内側鉄筋籠120を挿入固定して、二重鉄筋籠102を作成してもよい。
【0069】
(6)
さらに、一般的に、内側鉄筋籠120は、外側鉄筋籠110よりも重量が軽いので、内側鉄筋籠120を重機等で外側鉄筋籠110に挿入するのが有利であるが、これに代えて、穴Hに据え付けた内側鉄筋籠120に対して外側鉄筋籠110を被せるようにして、内側鉄筋籠120を外側鉄筋籠110に挿入してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。