(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431717
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】流体加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/36 20060101AFI20181119BHJP
H05B 6/42 20060101ALI20181119BHJP
H05B 6/44 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
H05B6/36 D
H05B6/42
H05B6/44
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-157548(P2014-157548)
(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公開番号】特開2016-35811(P2016-35811A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−156484(JP,A)
【文献】
特開2003−297537(JP,A)
【文献】
特開2009−174768(JP,A)
【文献】
特開2006−147431(JP,A)
【文献】
実開昭51−041749(JP,U)
【文献】
実開昭54−094935(JP,U)
【文献】
特開2002−106801(JP,A)
【文献】
特開平03−055790(JP,A)
【文献】
特開昭56−065485(JP,A)
【文献】
実開平04−136897(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00−6/10
H05B 6/14−6/44
A47J 31/54
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により発熱して被加熱流体を加熱する発熱体と、
前記発熱体に巻回されて設けられ、前記発熱体の内部に磁束を発生させる誘導コイルとを備え、
前記誘導コイルが、冷却用流体が流れる中空導体管からなる第1コイル要素と、当該第1コイル要素に電気的に接続された中実導線からなる第2コイル要素とを有し、
前記中空導体管を流れた冷却用流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成され、
前記第2コイル要素が、前記第1コイル要素の外周に巻回して設けられている流体加熱装置。
【請求項2】
前記発熱体が、内部に前記被加熱流体を通流させる内部流路を有しており、
前記中空導体管の内部流路が、前記発熱体の内部流路に接続されている請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記誘導コイルの外側を覆うように設けられ、前記発熱体とともに磁路を形成する概略筒形状の鉄心要素をさらに備える請求項1又は2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記発熱体が、概略柱形状をなし、その軸方向両端部それぞれに外側に延出して形成されたフランジ部を有しており、
前記誘導コイルが、前記発熱体の外周において前記2つのフランジ部の間に巻回して設けられており、
前記鉄心要素が、前記誘導コイルの外側を覆うように前記2つのフランジ部の外側端部に設けられている請求項3記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記発熱体の内部流路が、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって前記被加熱流体が流れる第1流路と、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって前記被加熱流体が流れる第2流路とを備え、それら第1流路及び第2流路が互いに連通している請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項6】
前記第2流路が、前記発熱体の中心部に軸方向に沿って形成されており、
前記第1流路が、前記第2流路の外側に軸方向に沿って複数形成されており、
複数の前記第1流路を流れた前記被加熱流体が合流して前記第2流路を流れるように構成されている請求項5記載の流体加熱装置。
【請求項7】
前記発熱体が、非磁性材料から形成された収容体と、当該収容体の内部空間に配置された磁性材料からなる発熱要素とを備える請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項8】
前記フランジ部に設けられ、前記フランジ部との間で熱交換を行う流体が流れる第1流体流通管をさらに備える請求項4記載の流体加熱装置。
【請求項9】
前記第1流体流通管を流れた流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成されている請求項8記載の流体加熱装置。
【請求項10】
前記第1コイル要素により生じる磁束の向きと前記第2コイル要素により生じる磁束の向きとが同一となるように、前記第1コイル要素及び前記第2コイル要素が直列接続されている請求項1乃至9の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項11】
前記第1コイル要素における前記発熱体への接続部分又はその近傍に、前記第2コイル要素又は交流電源が接続される下流側接続端子が設けられており、
前記下流側接続端子に設けられ、前記下流側接続端子との間で熱交換を行う流体が流れる第2流体流通管をさらに備える請求項10記載の流体加熱装置。
【請求項12】
前記第2流体流通管を流れた流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成されている請求項11記載の流体加熱装置。
【請求項13】
前記被加熱流体が水であり、
前記発熱体の誘導発熱により過熱蒸気を生成するものである請求項1乃至12の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により発熱する発熱体を用いて、例えば水等の被加熱流体を加熱する流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体加熱装置として、例えば特許文献1に示すように、絶縁体からなる容器(筒状体)の外周部に巻回された誘導コイルと、前記容器の内部空間に収容されて誘導加熱される金属体とを備えたものがある。この流体加熱装置は、誘導コイルに交流電圧を印加することにより、金属体を誘導加熱する。そして、容器に導入された被加熱流体は、誘導加熱された金属体により加熱されて、容器から導出される。
【0003】
また、従来の流体加熱装置として、例えば特許文献2に示すように、容器の外周部に巻回された誘導コイルと、前記容器の内部空間に収容されて誘導加熱される発熱体と、被加熱流体を予熱して前記容器に導入する予熱管とを備えたものがある。この流体加熱装置は、誘導コイルに交流電圧を印加することにより、発熱体を誘導加熱する。また、この流体加熱装置は、誘導コイルの外側に巻回された予熱管を有しており、誘導コイルへの通電による電磁誘導により予熱管を加熱して、当該予熱管を流れる被加熱流体が予熱されるように構成されている。
【0004】
ここで、上記のような流体加熱装置において、誘導コイルを冷却する構成としては、特許文献3に示すように、誘導コイルに中空導体管を用いて、この中空導体管の内部に冷却用流体を流す構成のものが考えられている。なお、この流体加熱装置は、空中導体管を流れた冷却用流体を被加熱流体として容器内に導入する構成とされている。
【0005】
しかしながら、特許文献3に示すように、中空導体管による巻線は、同断面積の中実導線による巻線と比較して誘導コイルが大型となり、流体加熱装置が大型となってしまうという問題がある。また、中空導体管自体がジュール発熱するため、誘導コイルが高温化してしまい、熱的安全性の面でデメリットとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−147431号公報
【特許文献2】特開2009−174768号公報
【特許文献3】特開2006−064367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、装置全体の小型化を可能にし、被加熱流体を効率良く加熱するだけでなく、熱的安全性を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る流体加熱装置は、電磁誘導により発熱して被加熱流体を加熱する発熱体と、前記発熱体に巻回されて設けられ、前記発熱体の内部に磁束を発生させる誘導コイルとを備え、前記誘導コイルが、冷却用流体が流れる中空導体管からなる第1コイル要素と、当該第1コイル要素に電気的に接続された中実導線からなる第2コイル要素とを有し、前記中空導体管を流れた冷却用流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成され、前記第2コイル要素が、前記第1コイル要素の外周に巻回して設けられていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、誘導コイルの一部を中空導体管から形成しているので、発熱体から外部に漏れ出た熱を吸収して冷却効果を発揮するとともに、誘導コイルの一部を中実導線から形成しているので、誘導コイル全体を小型化することができる。また、中空導体管を流れた冷却用流体を被加熱流体としているので、被加熱流体を予熱することができ、被加熱流体の加熱効率を向上させることができる。さらに、内側に第1コイル要素が巻回されているので、発熱体から外部に漏れ出た熱を利用して、冷却用流体(被加熱流体)を効率良く予熱することができる。さらに、中空導体管からなる第1コイル要素が、発熱体から外部に漏れ出る熱を遮断する機能を発揮するため、流体加熱装置の熱的安全性を向上させることができる。
【0010】
前記発熱体が、内部に前記被加熱流体を通流させる内部流路を有しており、前記中空導体管の内部流路が、前記発熱体の内部流路に接続されていることが望ましい。
これならば、発熱体及び中空導体管を直接接続しているので、発熱体と中空導体管との間に別の中間容器を設ける必要が無く、装置の小型化に寄与することができる。
【0011】
前記誘導コイルの外側を覆うように設けられ、前記発熱体とともに磁路を形成する概略筒形状の鉄心要素をさらに備えることが望ましい。
これならば、誘導コイルにより生じる磁束の磁気抵抗を小さくして、より多くの磁束を発熱体に通過させることができ、発熱体を効率良く発熱させることができる。また、鉄心要素により誘導コイルの外側を覆っているので、発熱体から外部に漏れ出る熱を鉄心要素内に閉じ込めることができ、流体加熱装置の熱的な安全性を向上させることができる。
【0012】
発熱体の具体的な実施の態様としては、前記発熱体が、非磁性材料から形成された収容体と、当該収容体の内部空間に配置された磁性材料からなる発熱要素とを備えることが望ましい。このように非磁性材料からなる収容体の内部に発熱要素を収容しているので、流体加熱装置の熱的な安全性を向上させることができる。
【0013】
前記発熱体が、概略柱形状をなし、その軸方向両端部それぞれに外側に延出して形成されたフランジ部を有しており、前記誘導コイルが、前記発熱体の外周において前記2つのフランジ部の間に巻回して設けられており、前記鉄心要素が、前記誘導コイルの外側を覆うように前記2つのフランジ部の外側端部に設けられていることが望ましい。
これならば、2つのフランジ部及び鉄心要素により形成される空間内に誘導コイルが配置される構成となるため、発熱体の外側周面から外部に漏れ出る熱を鉄心要素内に閉じ込めるとともに、その熱を利用して、中空導体管を流れる冷却用流体(被加熱流体)を効率良く予熱することができる。
【0014】
前記発熱体の内部流路が、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって前記被加熱流体が流れる第1流路と、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって前記被加熱流体が流れる第2流路とを備え、それら第1流路及び第2流路が互いに連通していることが望ましい。
これならば、発熱体の内部流路が軸方向一端部又は軸方向他端部において折り返す構造となるため、発熱体の内部流路の距離が長くして、発熱体と被加熱流体との接触面積を大きくすることができ、被加熱流体を効率良く加熱することができる。
【0015】
前記第2流路が、前記発熱体の中心部に軸方向に沿って形成されており、前記第1流路が、前記第2流路の外側に軸方向に沿って複数形成されており、複数の前記第1流路を流れた前記被加熱流体が合流して前記第2流路を流れるように構成されていることが望ましい。
これならば、複数の第1流路を有しているので、発熱体と被加熱流体との接触面積を大きくして、被加熱流体を効率良く加熱することができる。また、複数の第1流路を流れた被加熱流体を第2流路に合流させているので、第2流路から被加熱流体を取り出すことによって、加熱された被加熱流体を取り出し易くすることができる。
【0016】
前記流体加熱装置が、前記フランジ部に設けられ、前記フランジ部との間で熱交換を行う流体が流れる第1流体流通管をさらに備えることが望ましい。
これならば、フランジ部の温度調整が可能となり、例えばフランジ部を冷却することができ、装置の熱的な安全性を向上させることができる。
【0017】
前記第1流体流通管を流れた流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成されていることが望ましい。
これならば、例えばフランジ部から外部に漏れ出る熱などのフランジ部の熱を利用して、被加熱流体を予熱することができ、被加熱流体の加熱効率を向上させることができる。
【0018】
誘導コイルの具体的な実施の態様としては、前記第1コイル要素により生じる磁束の向きと前記第2コイル要素により生じる磁束の向きとが同一となるように、前記第1コイル要素及び前記第2コイル要素が直列接続されていることが望ましい。
【0019】
前記第1コイル要素における前記発熱体への接続部分又はその近傍に、前記第2コイル要素又は交流電源が接続される下流側接続端子が設けられており、前記流体加熱装置が、前記下流側接続端子に設けられ、前記下流側接続端子との間で熱交換を行う流体が流れる第2流体流通管をさらに備えることが望ましい。
第1コイル要素(中空導体管)の発熱体への接続部分は、第1コイル要素で予熱された被加熱流体が通過するため、当該接続部分又はその近傍に設けられた下流側接続端子が高温となり、内部抵抗が増加してしまう。このため、第2流体流通管を設けることによって、下流側接続端子の温度調整が可能となり、例えば下流側接続端子の温度を低下させることができ、内部抵抗の増加を抑えて、加熱効率を向上させることができる。
【0020】
前記第2流体流通管を流れた流体が、前記被加熱流体として前記発熱体により加熱されるように構成されていることが望ましい。
これならば、例えば下流側接続端子から外部に漏れ出る熱などの下流側接続端子の熱を利用して、被加熱流体を予熱することができ、被加熱流体の加熱効率を向上させることができる。
【0021】
前記被加熱流体が水であり、前記発熱体の誘導発熱により過熱蒸気を生成するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、装置全体の小型化を可能にし、被加熱流体を効率良く加熱するとともに、流体加熱装置の熱的安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体加熱装置の構成を模式的に示す図。
【
図3】変形実施形態に係る流体加熱装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明に係る流体加熱装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
<1.装置構成>
本実施形態に係る流体加熱装置100は、被加熱流体である水を加熱して過熱水蒸気を生成するものであり、
図1に示すように、電磁誘導により発熱して被加熱流体を加熱する発熱体2と、当該発熱体2に巻回されて設けられ、発熱体2の内部に磁束を発生させる誘導コイル3と、当該誘導コイル3の外側を覆うように設けられ、発熱体2とともに磁路を形成する概略筒形状の鉄心要素4とを備えている。以下、各部を詳述する。
【0026】
発熱体2は、S45Cなどの炭素鋼から形成されたものであり、概略円柱形状をなすものである。具体的に発熱体2は、内部に被加熱流体が流れる内部流路2Rを有している。
【0027】
発熱体2の内部流路2Rは、軸方向一端部2aから軸方向他端部2bに向かって被加熱流体が流れる第1流路2R1と、軸方向他端部2bから軸方向一端部2aに向かって被加熱流体が流れる第2流路2R2と、それら第1流路2R1及び第2流路2R2とを互いに連通させる接続流路2R3とを有する。
【0028】
第1流路2R1及び第2流路2R2はそれぞれ、発熱体2の軸方向一端部2aから軸方向他端部2bに亘って直線状に形成された直線状流路である。そして、第2流路2R2は、発熱体2の中心部に軸方向に沿って1つ形成されており、第1流路2R1は、第2流路2R2の径方向外側に軸方向に沿って複数(
図2では12本)形成されている。本実施形態では、第2流路2R2の流路断面積は、第1流路2R1の流路断面積よりも大きく形成されている。また、複数の第1流路R1は、互いに同一の流路断面積を有するとともに、第2流路2R2の径方向外側において互いに等間隔となるように形成されている。
【0029】
また、接続流路2R3は、発熱体2の軸方向他端部2bに形成されており、当該軸方向他端部2bにおいて第1流路2R1と第2流路2R2とを連通させるものである。本実施形態の接続流路2R3は、複数の第1流路2R1全てを1つの第2流路2R2に連通させるように形成されている、具体的に接続流路2R3は、発熱体2の軸方向他端部2bの側壁において、複数の第1流路2R1の他端部開口及び第2流路2R2の他端部開口を含むように形成された凹部によって構成されている。
【0030】
さらに、本実施形態の発熱体2は、発熱体2の軸方向一端部2aから導入された被加熱流体を複数の第1流路2R1に分岐して導入するための分岐流路2R4を有している。
【0031】
この分岐流路2R4は、発熱体2の軸方向一端部2aの側壁に形成された導入ポート2P1から導入された被加熱流体を複数の第1流路2R1に分岐して導入するものである。具体的に分岐流路2R4は、発熱体2の軸方向一端部2aの側壁において、複数の第1流路2R1の一端部開口を含むように形成された円環状をなす流路である。
【0032】
このように構成した発熱体2において導入ポート2P1から導入された被加熱流体は、分岐流路2R4により複数の第1流路2R1に分岐して軸方向一端部2aから軸方向他端部2bに向かって流れるとともに、軸方向他端部2bにおいて接続流路2R3により複数の第1流路2R1を流れた被加熱流体が合流して第2流路2R2に流れる。そして、第2流路2R2を軸方向他端部2bから軸方向一端部2aに向かって流れた被加熱流体(過熱水蒸気)は、発熱体2の軸方向一端部2aの側壁に形成された導出ポート2P2から装置外部に導出されて熱処理に利用される。なお、本実施形態では、導出ポート2P2には外部配管H1が接続されている。
【0033】
誘導コイル3は、冷却用流体が流れる中空導体管からなる第1コイル要素31と、当該第1コイル要素31に電気的に接続された中実導線からなる第2コイル要素32とを有している。
【0034】
この第1コイル要素31及び第2コイル要素32は、第1コイル要素31により発熱体2に生じる磁束の向きと第2コイル要素32により発熱体2に生じる磁束の向きとが同一となるように、直列接続されている。
【0035】
具体的には、第1コイル要素31及び第2コイル要素32は、発熱体2の外周において、発熱体2の軸方向両端部2a、2bに形成されたフランジ部21、22の間に巻回して設けられている。なお、フランジ部21、22は、発熱体2の軸方向両端部2a、2bそれぞれにおいて、発熱体2の外側周面から径方向外側に延出している。より詳細には、第1コイル要素31が、発熱体2の外周においてフランジ部21、22の間に巻回して設けられており、第2コイル要素32が、第1コイル要素31の外周に巻回して概略同心円状に設けられている。なお、
図1では、第1コイル要素31が二層巻きされており、第2コイル要素32が三層巻きされた状態を示しているが、これに限られず、各コイル要素31、32は、一層巻きであっても良いし、前記以外の多層巻きであっても良い。
【0036】
そして、第1コイル要素31である中空導体管の一端部31aが、発熱体2の軸方向一端部2aの側壁に設けられた導入ポート2P1に接続されている。これにより、中空導体管の内部流路が、発熱体2の内部流路2Rに接続され、中空導体管である第1コイル要素31を流れた冷却用流体が、被加熱流体として発熱体2により加熱される。
【0037】
また、第1コイル要素31の発熱体2への接続部分である一端部31a又はその近傍に、交流電源(不図示)の一方の電源端子が接続される下流側接続端子311が設けられている。また、第1コイル要素31の他端部31bには、第2コイル要素32の一端部又は第2コイル要素32に接続された中間導線が接続される上流側接続端子312が設けられている。なお、第2コイル要素32の他端部は、交流電源の他方の電源端子が接続される。
【0038】
なお、本実施形態では、軸方向一端部2aのフランジ部21には、第1コイル要素31の一端部31a及び他端部31bをフランジ部21の外側に延出させるための例えば貫通孔等の取り出し部211が形成されている。そして、第1コイル要素31の一端部31a及び他端部31bにおいて、フランジ部21の取り出し部211から外側に延出した部分に下流側接続端子311及び上流側接続端子312が設けられている。
【0039】
鉄心要素4は、誘導コイル3の径方向外側の全周を覆うように2つのフランジ部21、22の径方向外側端部に設けられている。この鉄心要素4は、概略円筒形状をなすものであり、前記2つのフランジ部21、22に設けられることによって、発熱体2と同心円状に配置される。この構成により、誘導コイル3(第1コイル要素31及び第2コイル要素32)は、発熱体2の外側周面、2つのフランジ部21、22及び鉄心要素4の内側周面により形成される概略円筒形状をなす空間内に収容された構成となる。
【0040】
本実施形態の鉄心要素4は、幅方向断面が例えばインボリュート曲線状などの湾曲形状をなす湾曲部を有する複数の磁性鋼板41を、幅方向にずらして積み重ねることにより形成された円筒状鉄心である。なお、
図2に示す磁性鋼板41は、湾曲部の幅方向における内径側端部に連続して、当該湾曲部の湾曲方向と同方向に屈曲して形成された屈曲部を有している。
【0041】
このように構成した本実施形態の流体加熱装置100において、第1コイル要素31の下流側接続端子311及び第2コイル要素32の他端部に交流電源により交流電圧を印加することで、発熱体2の内部を軸方向に沿って磁束が通過するとともに、フランジ部21、22を介して鉄心要素4に磁束が流れる。当該磁束の通過によって発熱体2に誘導電流が流れて発熱体2がジュール発熱する。これにより、発熱体2の内部流路2Rを流れる被加熱流体が加熱される。
【0042】
このとき、第1コイル要素31である中空導体管は、交流電圧が印加されることによって通電加熱されるとともに、発熱体2の外側周面から伝わる熱によって加熱される。これにより、発熱体2の内部流路2Rに導入される被加熱流体は、第1コイル要素31によって予熱される。また、第1コイル要素31が発熱体2からの熱を吸収することになり、発熱体2からの熱が第2コイル要素32に伝わり難くなる。
【0043】
また、本実施形態では、フランジ部21、22との間で熱交換を行う流体が流れる第1流体流通管5が設けられている。本実施形態の第1流体流通管5は、フランジ部21、22から熱を受け取り、フランジ部21、22を冷却するための流体が流れている。なお、第1流体流通管5に流れる流体の温度をコントロールすることで、フランジ部21、22を所定温度に保温する構成にもできるし、フランジ部21、22を加熱する構成にもできる。
【0044】
この第1流体流通管5は、フランジ部21、22の軸方向外側面に、直接接触して又は高熱伝導性を有する部材を介して設けられている。具体的に第1流体流通管5は、フランジ部21、22の軸方向外側面において、周方向全体に亘って設けられている。また、第1流体流通管5は、第1コイル要素31である中空導体管に接続されており、第1流体流通管5を流れた流体が第1コイル要素31を流れた後に発熱体2に導入されるように構成されている。なお、第1流体流通管5を流れた流体を、直接発熱体2に導入する構成としても良い。また、フランジ部21、22の内部に、フランジ部21、22と熱交換を行う流体が流れる流路を形成しても良い。
【0045】
さらに、本実施形態では、第1コイル要素31の下流側接続端子311との間で熱交換を行う流体が流れる第2流体流通管6が設けられている。本実施形態の第2流体流通管6は、下流側接続端子311から熱を受け取り、下流側接続端子311を冷却するための流体が流れている。なお、第2流体流通管6に流れる流体の温度をコントロールすることで、下流側接続端子311を所定温度に保温する構成にもできるし、下流側接続端子311を加熱する構成にもできる。
【0046】
この第2流体流通管6は、下流側接続端子311に、直接接触して又は高熱伝導性を有する部材を介して設けられている。また、第2流体流通管6は、第1コイル要素31である中空導体管に接続されており、第2流体流通管6を流れた流体が第1コイル要素31を流れた後に発熱体2に導入されるように構成されている。なお、第2流体流通管6を流れた流体を、直接発熱体2に導入する構成としても良いし、第2流体流通管6を第1流体流通管5に接続した構成としても良い。また、下流側接続端子311に第2流体流通管6を一体形成したものであっても良い。
【0047】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した流体加熱装置100によれば、誘導コイル3の一部を中空導体管(第1コイル要素31)から形成しているので発熱体2から外部に漏れ出た熱を吸収して冷却効果を発揮するとともに、誘導コイル3の一部を中実導線(第2コイル要素32)から形成しているので誘導コイル3全体を小型化することができる。また、中空導体管(第1コイル要素31)を流れた冷却用流体を被加熱流体としているので、被加熱流体を予熱することができ、被加熱流体の加熱効率を向上させることができる。さらに、内側に第1コイル要素31が巻回されているので、発熱体2から外部に漏れ出た熱を利用して、冷却用流体(被加熱流体)を効率良く予熱することができる。さらに、中空導体管からなる第1コイル要素31が、発熱体2から外部に漏れ出る熱を遮断する機能を発揮するため、流体加熱装置100の熱的安全性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態の流体加熱装置100によれば、鉄心要素4を発熱体2の2つのフランジ部21、22に設けているので、誘導コイル3により生じる磁束の磁気抵抗を小さくして、より多くの磁束を発熱体2に通過させることができ、発熱体2を効率良く発熱させることができる。また、2つのフランジ部21、22及び鉄心要素4により形成される空間内に誘導コイル3が配置される構成であるので、発熱体2から外部に漏れ出る熱を鉄心要素4内に閉じ込めることができ、流体加熱装置100の熱的安全性を一層向上させることができる。
【0049】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0050】
例えば、前記実施形態における発熱体の内部流路は、複数の第1流路及び1つの第2流路から構成されていたが、複数の第1流路及び複数の第2流路から構成されたものであっても良い。このとき、1つの第1流路に対して1つの第2流路が連通するように構成しても良いし、1つの第1流路に対して複数の第2流路が連通するように構成しても良いし、複数の第1流路に対して1つの第2流路が連通するように構成しても良い。なお、複数の第2流路を有する場合には、複数の第2流路を合流させて発熱体の導出ポートから被加熱流体(過熱水蒸気)を導出することが望ましい。
【0051】
また、前記実施形態の発熱体の内部流路は、軸方向他端部で一回折り返す構成であったが、軸方向他端部及び軸方向一端部で折り返し、全体として複数回折り返す構成としても良い。
【0052】
さらに、前記実施形態では、発熱体全体が磁性材料からなるものであったが、発熱体の一部が磁性材料からなるものであっても良い。具体的には、
図3に示すように、発熱体2が、非磁性材料から形成された収容体201と、当該収容体201の内部空間に配置された磁性材料からなる発熱要素(鉄心要素)202とを備える構成としても良い。
図3に示すものでは、収容体201が概略円筒形状をなし、当該収容体201の側周壁に第1流路2R1が形成されている。また、収容体201に導入ポート2P1及び導出ポート2P2が形成されている。そして、収容体201の内部空間に中心軸方向に沿って概略円柱形状をなす発熱要素202が配置されている。この構成により、収容体201と発熱要素202の間に形成される概略円筒形状をなす空間が第2流路2R2となる。
【0053】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
100・・・流体加熱装置
2・・・発熱体
2R・・・内部流路
2R1・・・第1流路
2R2・・・第2流路
21、22・・・フランジ部
3・・・誘導コイル
31・・・第1コイル要素
311・・・下流側接続端子
32・・・第2コイル要素
4・・・鉄心要素
5・・・第1流体流通管
6・・・第2流体流通管