(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水を収容する分離槽の槽長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置された複数の分離膜を介して処理水を抜き出す活性汚泥処理方法であって、前記分離槽の槽長手方向下流部の被処理水を前記分離槽の槽長手方向上流部へと仕切りの無い同一槽内で循環させることを含む活性汚泥処理方法。
前記分離槽の槽長手方向下流部の被処理水のMLSS濃度を検出する検出器が検出したMLSS濃度と、前記分離槽の槽長手方向上流部の被処理水のMLSS濃度を検出する検出器が検出したMLSS濃度とが、所定の濃度差以上になる場合に、被処理水の循環流量を増加させるように制御することを含む請求項6に記載の活性汚泥処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3の活性汚泥処理装置及び活性汚泥処理方法によっても、処理装置の態様によってはまだ、分離膜の汚染或いは分離膜の目詰まり等による透過水量の低下への抑制対策が十分とは言えない場合がある。
【0008】
上記課題を鑑み、本発明は、分離膜の膜汚染や膜閉塞を抑制でき、長期間安定した処理を行うことが可能な活性汚泥処理装置及び活性汚泥処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、流入水が処理槽の水平方向に押し出し流れとなるような、水平方向に細長い直方体状の槽内に分離膜を多数配置した場合、下流側の分離槽内のMLSS濃度が徐々に高くなるとともに、被処理水の溶解性BODの濃度勾配が流入水の処理量や負荷変動によって大きく影響を受けるという知見を得た。そこで、本発明者は、分離膜が配置される分離槽内に被処理水を循環させるための循環手段を配置したところ、分離膜の膜汚染や膜閉塞が部分的に発生するという問題を抑制でき、且つ長期間安定した処理を行うことが可能であることを見いだした。
【0010】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水から膜分離を用いて処理水を得るための活性汚泥処理装置であって、被処理水を収容し、被処理水から処理水を分離する分離槽と、分離槽内の被処理水中に浸漬され、分離槽の槽長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置された複数の分離膜と、複数の分離膜を介して処理水を抜き出すための処理水抜き出し手段と、分離槽内の槽長手方向下流部の被処理水を分離槽内の槽長手方向上流部へと循環させるための循環手段とを備える活性汚泥処理装置が提供される。
【0011】
本発明は別の一側面において、有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水から膜分離を用いて処理水を得るための活性汚泥処理装置であって、有機性廃水を活性汚泥を用いて好気処理するための好気槽と、好気槽から流入する有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水を収容し、被処理水から処理水を分離するための分離槽とを少なくとも備える処理槽と、分離槽内の被処理水中に浸漬され、分離槽の槽長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置された複数の分離膜と、複数の分離膜を介して処理水を抜き出すための処理水抜き出し手段と、分離槽内の槽長手方向下流部の被処理水を分離槽内の槽長手方向上流部へと循環させるための循環手段とを備える活性汚泥処理装置が提供される。
【0012】
本発明に係る活性汚泥処理装置は一実施態様において、分離槽の槽長手方向上流部に配置され、槽長手方向上流部の被処理水のMLSS濃度を検出する第1の検出器と、分離槽の槽長手方向下流部に配置され、槽長手方向下流部の被処理水のMLSS濃度を検出する第2の検出器と、第1の検出器が検出した被処理水のMLSS濃度と第2の検出器が検出したMLSS濃度とが所定の濃度差以上になる場合に、循環手段による被処理水の循環流量を増加させるように制御する制御手段とを備える。
【0013】
本発明に係る活性汚泥処理装置は別の一実施態様において、有機性廃水を脱窒処理するための無酸素槽と、無酸素槽又は好気槽内の被処理水のMLSS濃度を検出する第1の検出器と、分離槽の槽長手方向下流部に配置され、槽長手方向下流部の被処理水のMLSS濃度を検出する第2の検出器と、を更に備え、第1の検出器と第2の検出器とが検出したMLSS濃度が所定の濃度差以上になる場合に、分離槽内部の循環手段による被処理水の循環流量を増加させるように制御する制御手段とを更に備える。
【0014】
本発明に係る活性汚泥処理装置は更に別の一実施態様において、制御手段が、分離槽へ流入する被処理水の流量に対して、分離槽内部の循環手段による被処理水の流量を、設定倍率に比例した流量とするように増加又は減少させるように制御することを含む。
【0015】
本発明に係る活性汚泥処理装置は更に別の一実施態様において、分離槽内に複数の分離膜エレメントをユニット化した分離膜が4台以上配置されている。
【0016】
本発明に係る活性汚泥処理装置は更に別の一実施態様において、循環手段がエアリフトポンプであることを含む。
【0017】
本発明に係る活性汚泥処理装置は更に別の一実施態様において、分離槽の槽長手方向に延在し、槽長手方向に沿って複数の流入口を備え、複数の流入口から被処理水を分離槽内へ流入させるための流入手段を更に備える。
【0018】
本発明は別の一側面において、有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水を収容する分離槽の槽長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置された複数の分離膜を介して処理水を抜き出す活性汚泥処理方法であって、分離槽の槽長手方向下流部の被処理水を分離槽の槽長手方向上流部へと循環させることを含む活性汚泥処理方法が提供される。
【0019】
本発明に係る活性汚泥処理方法は一実施態様において、分離槽の槽長手方向下流部の被処理水のMLSS濃度を検出する検出器が検出したMLSS濃度と、分離槽の槽長手方向上流部の被処理水のMLSS濃度を検出する検出器が検出したMLSS濃度とが、所定の濃度差以上になる場合に、被処理水の循環流量を増加させるように制御することを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、分離膜の膜汚染や膜閉塞を抑制でき、長期間安定した処理を行うことが可能な活性汚泥処理装置及び活性汚泥処理方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであってこの発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る活性汚泥処理装置は、
図1に示すように、有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水から膜分離を用いて処理水を得るための活性汚泥処理装置である。活性汚泥処理装置は、被処理水を収容する分離槽10と、分離槽10内の被処理水中に浸漬され、分離槽10の槽長手方向に沿って互いに間隔をおいて配置された複数の分離膜11と、複数の分離膜11を介して処理水を抜き出すための処理水抜き出し手段12と、分離槽10内の被処理水を分離槽10内で循環させるための循環手段100とを備える。
【0024】
分離槽10は、有機性廃水と活性汚泥とを含有する被処理水から処理水を抜き出すための処理槽であり、
図1に示すように、槽長方向に槽長手方向(
図1矢印方向)を有する。分離槽10の槽長手方向の具体的寸法は特に制限されないが、例えば複数の分離膜エレメントをユニット化した分離膜11を4台以上並列配置する分離槽10に特に好適である。分離槽10内に配置される分離膜11の平面寸法や分離膜11の配置間隔にもよるが、現状の処理設備を考慮すると、より典型的には、分離槽10の槽長が12m以上で縦横比が4以上の反応容器により効果が見られる。
【0025】
処理対象とする有機性廃水(原水)としては、有機物を含有する廃水が用いられる。より具体的には、下水消化汚泥、有機性工場排水、浸出水、畜産廃液、し尿、浄化槽汚泥の混合液等を有機性廃水として用いることができる。
【0026】
図1の分離槽10内では、有機性廃水に活性汚泥が添加された被処理水が供給される。分離槽10に供給される被処理水中の好適な活性汚泥濃度(MLSS)は、典型的には5000〜20000mg/Lであり、より典型的には6000〜12000mg/Lである。分離槽10に供給される被処理水の溶解性BODは、典型的には50〜700mg/Lであり、より典型的には100〜300mg/Lである。
【0027】
分離膜11としては、分離孔径が1μm以下(例えば0.1〜0.4μm)の有機高分子素材からなる平膜及び中空糸膜、平膜及び管状のセラミック膜などの、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)等の複数の膜エレメントをユニット化したものが用いられる。分離膜11は、分離槽10の鉛直方向に所定の間隔をそれぞれ空けて槽長手方向(水平方向)に沿って並べられている。
【0028】
図1に示すような槽長手方向に細長い直方形の分離槽10を使用する場合で、循環手段100を設けずに、槽上流側より被処理水を流入させる場合は、例えば膜面積1000m
2の分離膜11を4台以上、より典型的には8台以上、更に典型的には12台以上重ねて配置して運転をしていくと、槽上流側より処理対象水が流入すること、および、槽上流部では槽下流部に比べてMLSS濃度が薄くなることにより、分離槽内でのMLSSに対するBOD負荷が相対的に槽上流部で高くなる。また、分離膜11により処理水が排出されることで、槽長手方向下流部のMLSS濃度が徐々に高くなる現象が顕著になる。これにより、分離槽10内の被処理水に槽長手方向にわたってMLSS濃度の勾配が生じ、先端の分離膜11では被処理水の溶解性BODの影響を受け、分離膜11の一部に膜汚染又は目詰まりがより発生しやすくなる。また、槽下流側の分離膜11では、MLSS濃度が高くなり過ぎる場合がある。その結果、一部の分離膜11の圧力が上昇する問題や、定期洗浄の頻度が高くなり処理効率が低下する問題が生じる。そこで、循環手段100を設けることにより、
図1に示すような槽長手方向に細長い直方形の分離槽10を使用した場合においても、分離槽10内のMLSS濃度差が少なくなることから、分離槽10内でのMLSSに対するBOD負荷をより均一にすることができる。その結果、分離槽10内の一部の分離膜11において、膜汚染や目詰まり、圧力が上昇するといった問題の発生を防ぐことができる。
【0029】
分離槽10内の分離膜11の下部には、図示を省略した散気手段が配置されており、散気手段から供給される気泡の流れを分離膜11の膜面に与えることにより、膜面に付着する活性汚泥等が剥離され、膜面洗浄が行われるようになっている。分離膜11にはそれぞれ処理水抜き出し手段12が接続されており、図示しないポンプ手段又は水位差によって所定の圧力で処理水が抜き取られる。分離膜11の透過流速又は処理水抜き取り時のポンプ圧は分離膜11の配置位置(例えば上流側と下流側)によって調整してもよい。
【0030】
循環手段100の形状は特に限定されるものではないが、一実施態様においては、分離槽10内の分離膜11の底部において槽長手方向に延びる管形状を有しており、分離槽10内の槽長手方向下流部(即ち、
図1の分離槽10においては、被処理水が流入口とは反対にある分離槽10の右端部分)の被処理水を槽長手方向上流部(即ち、
図1の分離槽10において被処理水の流入口側にある分離槽10の左端部分)へと循環させる。
【0031】
分離槽10へ流入する被処理水が処理槽の水平方向に押し出し流れとなるような、水平方向に細長い直方体状の分離槽10内に分離膜11を多数配置した場合、分離槽内の槽長手方向上流部から下流部に向かってMLSS濃度が上昇する濃度勾配が生じる。本実施形態では、循環手段100を配置することにより、分離槽10内の槽長手方向下流部の被処理水を上流部へ返送させて槽内循環を行うことができるため、分離槽10内のMLSS濃度及び水質の均一化が図れる。
【0032】
循環手段100の具体的構成は特に限定されないが、循環手段100の具体例としては、機械式のポンプやエアリフトポンプ等が利用可能である。特に、エアリフトポンプを採用することにより、被処理水を槽内循環するための動力源(電力)の利用を極力小さくすることができるため、より効率的な処理を行うことができる。
【0033】
循環手段100の形状は特に制限されない。例えば、
図1に示すように、分離槽10の槽長手方向下流部の底部から、分離槽10の槽長手方向上流部の上部へ被処理水を返送できるような装置が好適に用いられる。
【0034】
分離槽10の槽長手方向上流部には、槽長手方向上流部の被処理水のMLSS濃度を検出するための検出器18(第1の検出器)が設けられている。槽長手方向下流部には、槽長手方向下流部の被処理水のMLSS濃度を検出するための検出器17(第2の検出器)が設けられている。検出器17および検出器18は制御手段20に接続されている。制御手段20は、検出器17が検出するMLSS濃度と、検出器18が検出するMLSS濃度に基づいて、循環手段100の運転を制御することが可能である。
【0035】
制御手段20は、検出器18が検出したMLSS濃度と検出器17が検出したMLSS濃度とが所定の濃度差以上になる場合に、循環手段100による被処理水の循環流量を増加させるように制御することができる。或いは、検出器18が検出したMLSS濃度が6000〜12000mg/L程度で安定している場合には、制御手段20が検出器17によるMLSS濃度が例えば12000mg/Lを超えた場合に、循環手段100による被処理水の循環流量を増加させるように制御することができる。制御手段20は、検出器18が検出したMLSS濃度と検出器17が検出したMLSS濃度とが所定の濃度差よりも小さくなる場合に、循環手段100による被処理水の循環流量を減少させるように制御してもよい。更に、制御手段20は、分離槽10へ流入する被処理水の流量の増減に基づいて、循環手段100による被処理水の循環流量を増加もしくは減少させるように制御することもできる。
【0036】
循環手段100による被処理水の循環流量の調整方法としては、(1)予め定められた所定の流量(設定流量)で循環手段100により被処理水を随時循環させる方法(流量一定制御)(2)分離槽10へ流入する被処理水の流入水量に比例して、流入水量に対する設定値倍した流量で、循環手段100により被処理水を循環させる方法(流入倍率制御)(3)検出器18が検出したMLSS濃度と検出器17が検出したMLSS濃度との濃度差に応じて、循環手段100による被処理水の循環流量を段階的に上下させていく方法(段階制御)(4)検出器18が検出したMLSS濃度と検出器17が検出したMLSS濃度との濃度差に応じて被処理水の循環流量の増減を比例制御する方法(比例制御)などが利用できる。
【0037】
なお、分離槽10の槽長手方向下流側(
図1の紙面右側)には、分離槽10の槽長手方向下流部の底部から分離槽10内の余剰汚泥を抜き出す余剰汚泥抜き出し手段16が設けられている。
【0038】
余剰汚泥抜き出し手段16は、制御手段20に接続されており、検出器17が検出した分離槽10内の被処理水のMLSS濃度に基づいて、余剰汚泥の抜き取り量の調整、制御手段20が備える制御アルゴリズム或いは外部入力に基づいて制御することも可能である。制御手段20は、更に、処理水抜き出し手段12に接続されていてもよく、処理水抜き出し手段12が抜き出す処理水のポンプ圧などを、制御手段20が備える制御アルゴリズム或いは外部入力に基づいて制御してもよい。
【0039】
循環手段100による被処理水の槽内循環に対する分離槽10の上流側と下流側の被処理水の濃度勾配の変化のシミュレーション結果の例を
図2に示す。
図2の例では、被処理水の流入流量をQ、処理水抜き出し手段12による抜き出し流量を3Qとして、分離槽10の槽長手方向下流部のMLSS濃度を9000mg/Lとなるように調整して定常状態にした場合において、循環手段100による被処理水の循環比を0(従来例)〜4Qに変更した場合の、分離槽10の槽長手方向上流部(流入部MLSS)と槽長手方向下流部(末端部MLSS)の濃度勾配の割合の変化を表している。
【0040】
循環手段100による被処理水の槽内循環を行わない従来の場合では、分離槽10内で25%もの濃度勾配が生じているが、槽内循環比を高くすることで濃度勾配が小さくなり、循環比3Qで約15%まで低減されている。本実施形態によれば、分離槽10に流入する被処理水に処理し切れていない成分(未分解の溶解性BOD)などが流入する場合でも、槽内循環がないときに比べて分離槽10に流入する被処理水中の成分濃度を分離槽10内でより均一にすることができる。これにより、従来のように、単一の流入口から被処理水を分離槽10内に流入させるが分離槽10内に循環手段100を持たない場合に比べて、被処理水が流入する領域付近にある分離膜11の膜汚染や膜閉塞が部分的に発生するという問題を抑制でき、且つ長期間安定した処理を行うことが可能になる。
【0041】
(第1の実施の形態の変形例)
図3に示すように、第1の実施の形態の変形例に係る活性汚泥処理装置は、流入手段13を更に備える点が
図1に示す活性汚泥処理装置と異なる。
【0042】
流入手段13は、分離槽10の槽長手方向(
図1矢印方向)に延在し、槽長手方向に沿って複数の流入口14を備える。流入手段13は、例えば、分離膜11の上部に延在する樋状又は管状部材で構成することができ、樋状又管状部材に形成された凹状(又はV状)の切り欠き(ノッチ)からなる複数の流入口14を介して、樋状又は管状部材を流れる被処理水を越流により流出させることができる。このような流入手段13を用いることにより、被処理水を均等に供給するための特別な動力源は不要であり、処理費用を上げることなく、処理効率を向上できる。
【0043】
流入手段13は、被処理水のMLSS濃度又は被処理水の溶解性BODに基づいて、各流入口14から流れる被処理水のMLSS濃度又は被処理水の溶解性BODがそれぞれ均一となるように、各流入口14から前記分離槽10へ流す被処理水の供給水量が調整可能である。
【0044】
流入口14からの供給水量の調整方法としては、例えば、複数の流入口14にそれぞれ流入口14の開口面積を調整可能な可動堰部材15が設けられており、被処理水のMLSS濃度又は被処理水の溶解性BODに基づいて、後述する制御手段20による自動制御或いは操作者による手動作業により、可動堰部材15の高さを変更することができる。
【0045】
或いは、分離槽10の槽長手方向上流側から下流側へ向けて複数の流入口14の間隔を変更する(例えば被処理水のMLSS濃度が高くなる領域の流入口14の間隔が短くなるように流入口14を形成すること、或いは均等配置した流入口14の一部を閉じて分離槽10への被処理水の流入間隔を変更すること)などにより、被処理水の供給水量を調整してもよい。
【0046】
流入手段13は、制御手段20に接続されている。制御手段20は、分離槽10へ供給される被処理水の性状(溶存性有機物量)に基づいて、流入手段13の流入口14の可動堰の開度調整などを、制御手段20が備える制御アルゴリズム或いは外部入力に基づいて制御することが可能である。例えば、検出器17が検出した分離槽10の被処理水のMLSS濃度が設定値以上となる場合に、制御手段20が、流入手段13の各流入口14からの被処理水の供給流量を変更することによって、分離膜11への負荷が槽内でより均等となるように制御することができる。
【0047】
図1に示すような槽長手方向に細長い直方形の分離槽10を使用して従来のように1箇所のみの流入口から被処理水を流入させ、分離槽10において処理を行う場合、分離槽10の槽長手方向上流側には未処理のBOD濃度の高い被処理水が供給されるため、槽長手方向上流側に位置する分離膜11のみの汚染が大きくなる場合がある。または、押し出し流れに沿って槽長手方向下流側の端部にMLSS濃度の濃い領域が発生し、槽長手方向下流側に位置する分離膜11に活性汚泥による膜閉塞が拡がる場合もある。第1の実施の形態の変形例に係る活性汚泥処理装置によれば、流入手段13及び制御手段20が配置されることにより、分離槽10内の被処理水の活性汚泥濃度がより均一となるように制御されるため、従来のように、単一の流入口から被処理水を分離槽10内に流入させる場合に比べて、分離膜の膜汚染や膜閉塞が部分的に発生するという問題を抑制でき、且つ長期間安定した処理を行うことが可能になる。
【0048】
(第2の実施の形態)
活性汚泥を用いた好気処理と膜分離処理とを組み合わせた活性汚泥処理装置を
図4に示す。第2の実施の形態に係る活性汚泥処理装置は、無酸素槽30、好気槽40及び分離槽10を備えた処理槽1を備える。これらの槽は、同じ躯体に仕切りを設けることによって構築されてもよいし、別躯体として、水路又は配管でそれぞれの槽を接続してもよい。また、好気槽40と分離槽10とは1対1の関係に必ずしもする必要は無く、
図5に示すように、好気槽40に対して複数の分離槽10が接続されていてもよい。
【0049】
図4に示すように、無酸素槽30は、好気槽40の上流側に配置され、有機性排水を無酸素処理するための反応容器である。無酸素槽30内には攪拌手段31が配置され、脱窒菌などを用いて有機性廃水が脱窒処理される。無酸素槽30と好気槽40との間は仕切手段50によって仕切られている。仕切手段50の上部には開口部(図示せず)が設けられており、無酸素槽30から流出する被処理水が開口部から好気槽40へ流入する。
【0050】
好気槽40は、分離槽10の上流側に配置され、無酸素槽30から流出した被処理水を、活性汚泥を用いて好気処理するための反応容器である。好気槽40内には、図示しない散気手段が設けられ、槽内へのDO供給と撹拌が行われる。好気槽40と分離槽10は、仕切手段によって仕切られている。仕切手段の下方には開口部(図示せず)が設けられており、被処理水が開口部から分離槽10へと流入する。
【0051】
分離槽10には、有機性排水を処理過程にある活性汚泥混合液が被処理水として供給される。分離槽10内の好適な活性汚泥濃度(MLSS)は、典型的には5000〜20000mg/Lであり、より典型的には6000〜12000mg/Lである。分離槽10に供給される被処理水の溶解性BODは、典型的には3〜200mg/Lであり、より典型的には10〜100mg/Lである。
【0052】
無酸素槽30の流入口には有機性廃水の流量を検出するための流量計25が配置されており、この流量計25による検出結果が制御手段20へ送られるようになっていてもよい。
【0053】
分離槽10は
図1に示す分離槽10の構成と実質的に同様の構成を採用することができる。なお、
図4の分離槽10では、槽長手方向下流側の被処理水を抜き出して無酸素槽30へ循環させるための循環路180が配置されており、分離槽10中の被処理水の一部が無酸素槽30へ供給されるようになっている。
図4において、循環路180は分離槽10と無酸素槽30の上流部との間に配置されており、循環路180は分離槽10の槽下流部から引抜く場合が図示されているが、引抜箇所は、
図4の例に限定されるものではない。循環路180と循環手段100は独立して制御することが可能であることから、循環路180の循環水量は好気処理により硝化された硝酸性窒素が無酸素槽30へ供給され、無酸素槽30で脱窒反応させることで窒素として除去する為に最適な水量で運転可能である。これにより、循環手段100は分離槽10の槽内のMLSS濃度をより均一にするための運転が可能となるという効果が得られる。
【0054】
好気槽40には、好気槽40内のMLSS濃度を検出するための検出器19(第2の検出器)が設けられている。検出器19は無酸素槽30内に配置されていてもよい。検出器19の代わりに、第1の実施の形態で説明したように、分離槽10内の槽長手方向上流部に検出器を設けてもよい。制御手段20は、検出器19が検出した被処理水中のMLSS濃度の検出値と、検出器17が検出した被処理水中のMLSS濃度の検出値に基づいて、循環手段100による被処理水の循環流量を増加させるように制御する。循環手段100による被処理水の循環流量の制御方法は、第1の実施の形態で説明した方法と同様である。
【0055】
第2の実施形態に係る活性汚泥処理装置によれば、無酸素槽30、好気槽40及び分離槽10を有する直方体状の処理槽1の分離槽10内に循環手段100を設けることにより、分離膜11それぞれに均等に負荷を与えて平準化することができるため、上流側の分離膜11のみに過大に負荷がかかるという状況を抑制することができる。
【0056】
(第2の実施の形態の変形例)
図6に示すように、第2の実施の形態の変形例に係る活性汚泥処理装置は、分離槽10に流入手段13を更に備え、仕切手段60の上部に設けられた開口部(図示せず)から越流により好気槽40内の被処理水が流入手段13へと流入する点が、
図4に示す活性汚泥処理装置と異なる。流入手段13は、制御手段20に接続されており、制御手段20が流入手段13の流入口14からの被処理水の供給水量と、循環路180を介して無酸素槽30へ循環させる被処理水の流量比等を制御することが可能である。これにより、第2の実施の形態の変形例に係る活性汚泥処理装置によれば、有機性廃水の有機物濃度に変動が生じた場合においても、膜汚染等の問題を抑制しつつより長期間安定的に活性汚泥処理装置を運転することができる。
【0057】
(その他の実施の形態)
本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が明らかとなろう。
【0058】
図4〜
図6に示す活性汚泥処理装置では、上流側から順に無酸素槽30、好気槽40、分離槽10を配置して廃水処理を実施したが、これら槽の配置順序は適宜変更可能である。即ち、処理槽の上流側から順に好気槽40、無酸素槽30、分離槽10と配置し、各槽から得られる流出水を管路で繋げて供給することも勿論可能である。
【0059】
なお、本発明において「槽長手方向下流部」とは、分離槽10の長手方向の中央部から下流側の領域を意味し、より典型的には、分離槽10の槽長手方向の最も下流側に配置された分離膜11に近接する領域を指す。「槽長手方向上流部」とは、分離槽10の長手方向の中央部から上流側の領域を意味し、より典型的には、分離槽10の槽長手方向の最も上流側に配置された分離膜11に近接する領域を指す。
【実施例】
【0060】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0061】
既設2600m
3/日の標準活性汚泥処理を行う施設を、処理量5000m
3/日の処理を行うMBR施設に改造する場合を設定し、モデル試算を行った。
図4に示す活性汚泥処理装置において、表1に示す性状の原水を本発明に係る有機性廃水として、処理量5000m
3/日の廃水処理を行うこととした。処理槽のサイズは、表2に示す無酸素槽250m
3、好気槽125m
3、分離槽500m
3に分けて処理を行った。分離槽内に1台当たり1000m
2の膜面積を持つ分離膜を配置した。分離膜は8台で、分離槽内に均等に配置した。
図7及び
図8に従来方式と本発明の方式(分離槽内に循環手段を持つ方式)の平面概略図を示す。好気槽寄りの被処理水と活性汚泥の混合液は、分離槽内の先頭の分離膜付近に集中するが、本発明では分離槽内の循環手段により、槽下流側のよりMLSS濃度の高い被処理水に希釈・混合される効果が得られた。なお、本モデル試算では、分離槽内を膜エリア1〜4の4つのエリアに分割し、押し出し流れとして試算を行った。
【0062】
原水水質
【表1】
【0063】
処理槽のサイズ
【表2】
【0064】
分離槽から無酸素槽への循環流量を被処理水量の2.5倍、各分離膜のろ過水量は均等として、好気槽MLSS濃度を7500mg/L、分離槽末端でのMLSS濃度を10500mg/Lとし、従来方式と分離槽内の循環水量倍率を流入被処理水量の1、2、3倍で運転した場合の分離槽内のMLSS濃度分布試算結果を
図9に示す。なお、活性汚泥の増加量に相当する余剰汚泥の引抜を行うものとした。
図9より従来法では、膜エリア1のMLSS濃度は約8000mg/Lとなっている。一方、分離槽内で循環を行うことで、その水量倍率を1〜3倍すると膜エリア1でのMLSS濃度は約8600mg/L〜約9200mg/Lに増加する。分離槽上流部である膜エリア1でのMLSS濃度がより高く保持されることで、分離槽上流部においてもより高い負荷で処理を行うことができる。
【0065】
図10に従来法および分離槽内部の循環倍率を1〜3倍した場合の分離槽内の溶解性BODを示す。従来法では先頭の膜エリア1の溶解性BOD、すなわち膜ろ過水には比較的高い溶解性BODが残留する傾向にある。本試算結果ではBOD8.5mg/Lとなった。一方、分離槽内の循環を行いその水量倍率を1倍から3倍に変化させると、膜エリア1における溶解性BODは循環倍率1倍で約72%の6.1mg/L、循環倍率3倍では約45%の3.8mg/L程度の値に縮減することができた。このことから、先頭の分離膜への溶解性BODによる負荷を軽減することができ、その結果、溶解性BODに起因する膜汚染を軽減することが可能となることが分かる。