(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6431985
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】新規のフォトクロミック化合物およびこれらの調製のための中間体化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 491/18 20060101AFI20181119BHJP
C07D 491/107 20060101ALI20181119BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20181119BHJP
C07D 209/08 20060101ALI20181119BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
C07D491/18CSP
C07D491/107
C07D487/04 138
C07D209/08
C09K9/02 B
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-531618(P2017-531618)
(86)(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公表番号】特表2018-506510(P2018-506510A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】IB2015059201
(87)【国際公開番号】WO2016092410
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】2014138
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】LT
(73)【特許権者】
【識別番号】517200382
【氏名又は名称】カウナス ユニバーシティ オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シャチクス,アルギルダス
(72)【発明者】
【氏名】マルティナイティス,ヴィータス
(72)【発明者】
【氏名】クリクシュトライティーテ,ソナタ
(72)【発明者】
【氏名】ラガイテ,グレタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェングリス,ミカス
【審査官】
早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/189348(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/035224(WO,A1)
【文献】
GRETA RAGAITE,FAST AND STABLE LIGHT-DRIVEN MOLECULAR SWITCH BASED ON A 5A, 以下備考,DYES AND PIGMENTS,英国,2014年 9月28日,VOL:113,PAGE(S):546 - 553,13-METHANOINDOLO[2,1-B][1,3]BENZOXAZEPINE RING SYSTEM,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.dyepig.2014.09.006
【文献】
日本化学会誌,1993年,7,884−890
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 491/107〜18
C07D 487/04
C07D 209/08
C09K 9/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)または(II)の化合物。
【化1】
(式中、
R
1およびR
2は、各々独立にC
1〜C
3アルキルで
あり;
R
3は、C
1〜C
6アルキル、ベンジル、フェニル、アリルである。)
【請求項2】
R1がメチルであり、R2がメチルであり、R3がエチルまたはベンジルである、請求項1に記載の一般式(I)または(II)の化合物。
【請求項3】
(5aR*,12R*,13S*)−N−エチル−8−メトキシ−6,6−ジメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピノ−12−カルボキサミド(6a)である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
(5aR*,12S*,13S*)−N−エチル−8−メトキシ−6,6−ジメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピノ−12−カルボキサミド(7)である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
(5aR*,12S*,13S*)−(N−ベンジル−8−メトキシ−6,6−ジメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピノ−12−カルボキサミド(6b)である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
5ns未満の特性緩和時間のフォトクロミック特性を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
分子光スイッチとしての、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
一般式(5)の化合物。
【化2】
(式中、R
3は、エチルまたはベンジルである。)
【請求項9】
一般式(4)の化合物。
【化3】
(式中、R
3はエチルまたはベンジルである。)
【請求項10】
式(3)の7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン。
【化4】
【請求項11】
式(2)の1−カルバモイルメチル−5−メトキシ−2,3,3−トリメチル[3H]インドリウムクロリド。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、向上したフォトクロミック特性を有し、分子光スイッチとして使用することができる、新規の二環式架橋[1,3]オキサゼピン誘導体に関する。
【0002】
本発明は、上記新規のフォトクロミック化合物およびこれらの調製のための中間体の製造方法も開示する。
【0003】
〔背景技術〕
種々の種類のフォトクロミック化合物が知られている:インドリンスピロピラン、インドリンスピロオキサジン、ベンゾ−およびナフトピラン、フルギド、ジアリールエテン、キノン、ペリミジンスピロシクロヘキサジエノン[V. Malatesta, Photodegradation of Organic Photochromes In Organic Photochromic and Thermochromic Compounds. Vol.2 Eds. J. C. Crano and R. J. Guglielmetti. Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, 1991, 473 pp.]、インドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサジン。スピロピランおよびスピロオキサジンの溶液をUV照射に曝すことによって、C−O結合が抑制され(brakes)、着色したメロシアニンが形成されるが、これは、分子の熱運動により、または、マイクロ秒間およびミリ秒間の可視光の照射後、初期状態に戻る。公知のフォトクロミック化合物、例えば、インドリノスピロピランは、特許EP 0411884 A1, GB 1270928 A, JP 2006-249622 A, US 5155230, US 5241075等に記載されている。インドリノスピロピランと同様に、ジヒドロインドリンは、UVの照射後に着色体に変換され、熱的に初期状態に戻るが、着色体の持続時間は、インドリンスピロピランと比較して長く、数百ミリ秒間、数分間、また、さらに数時間である[WO 2012/172093; R. Zemribo, J. Fotins, U. A. Holger Kubas et al., Photochromism of dihydroindolizines: part XIV. Synthesis and photophysical behavior of photochromic dihydroindolizine tripodal linkers toward anchoring sensitizers to semiconductor nanoparticles. J. Phys. Org. Chem. 2011, 24 173-184; T. B. Shrestha, J. Melin. Y. Liu, et al., New insights in the photochromic spiro-dihydroindolizine/betaine-system. Photochem. Photobiol. Sci., 2008, 7, 1449-1456]。他の公知の種類のフォトクロミック化合物であるキノンも、非常に速い消色体−着色体の変換を実証しており、これには数百マイクロ秒以内(few till hundreds of microseconds)である[N. P. Gritsan, L. S. Klimenko. J. Photochem. Photobiol. A: Chem. 1993, 70, 103-117]。
【0004】
ペリミジンシクロヘキサジエノンは、極端に長い着色体の持続時間によって特徴づけられ、これは、メロシアニンにおける、E−Zと同様、Z−E立体配座変化の結果、数日間に達する。比較的最近に発見されたフォトクロミック化合物である、ベンゾ−およびナフトピランは、十分な光安定性を有さない。UV照射の作用によって、ピラン環はフラン環へと変換され、最初の化合物はフォトクロミック特性を失う[C. D. Gabbutt, B. M. Heron, S. B. Kolla, et al. Ring contraction during the 6p-electrocyclisation of naphthopyran valence tautomers. Org Biomol Chem 2008;6:3096-3104; US 6410754 B1]。着色した1,3−シクロヘキサジエンフラグメントを有している化合物が形成されるとき、フルギドおよびフルギミドは、UV照射に曝されたときに起こる電子環化反応により特徴づけられる。後者は熱的に安定であり、可視光の照射後にのみ、初期状態に変換され得る。ジアリールエテンも、熱的に安定であり、同様に作用する。
【0005】
いくつかの最も新規な種類のフォトクロミック化合物である、インドール[2,1−b][1,3]ベンズオキサジンは、熱的に不安定な着色体を有するが、これらは、インドリンスピロピランよりも非常に速く、これらの持続時間は、インドリンスピロピランよりも短い[US 8252209]。新規の種類のフォトクロミック化合物である、6−ニトロ−1,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]は、リトアニア特許LT 6024 (WO 2014/035244)に記載され、これらは着色体の持続時間がたったの22〜41nsである。
【0006】
インドリンスピロピランが紫外線照射に曝されるとき、ピラン環の崩壊が起き、着色したメロシアニン体が生じる[V. I. Minkin, Photoswitchable molecular systems based on spiropyrans and spirooxazines, 37-80 pp. In Molecular switches / edited by B. L. Feringa and W. R. Browne. Weinheim, Wiley-VCH, 2011, Vol. 1-2; Spiropyrans. R. C. Bertelson, 11-84 pp. In Organic Photochromic and Thermochromic Compounds, Vol. 1-2, Eds. J. C. Crano, R. J. Guglielmetti, Plenum Press. New York and London, 1999, Vol.1-2.]。形成されたメロシアニンのスピロピランへの熱的変換は、trans−cis再異性化段階に起因して著しく遅れ、当該段階は、着色体が初期スピロピラン体へと戻るときに起こり、これは、ミリ秒間を要する。
【0008】
インドリノスピロピランからの着色体生成は比較的速いが、温度−および光化学的分解に起因して、これらは少ないサイクルしか耐えられず、空気中の酸素に対して耐性がない[V. Malatesta, Photodegradation of Organic Photochromes In Organic Photochromic and Thermochromic Compounds. Vol.2 Eds. J. C. Crano and R. J. Guglielmetti. Kluwer Academic/Plenum Publishers, New York, 1991, 473 pp.]。それに加えて、メロシアニン体におけるスピロピランは、容易に加水分解できる[Stafforst, T., and Hilvert, D. Kinetic characterization of spiropyrans in aqueous media. Chem. Commun. 2009, 287-288]。
【0009】
インドリンスピロピランの炭素骨格を有し、ピラン環の二重結合が水素化されている、新規の種類のフォトクロミック化合物、すなわち、6−ニトロ−1,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]は、上述のリトアニア特許LT 6024 (WO 2014/035244)に記載されている。
【0011】
このような1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール](A)に対するUV放射の照射後、着色した4−ニトロフェノレートフラグメント(B)が形成されるが、これは、分子熱運動により、数十ナノ秒の間に初期状態に戻る。これは、二重結合を有さない場合、trans−異性体からcis−異性体への異性化が必然ではないためである。しかし、化合物Aは、アルカリ溶媒に対して非常に反応性が高い。不斉炭素原子においてフェノレートの直接(Immediate)の置換基が生じ、4−ニトロフェノールフラグメントを有している着色化合物Cが形成され、水酸化物イオンが溶液中にいくらか存在する場合は、フォトクロミック効果が消える。
【0013】
従って、より速く反応し、アルカリ溶液中でフォトクロミック特性を失わないフォトクロミック化合物を手に入れることが重要である。
【0014】
〔図面の簡単な説明〕
本発明は、図面によって説明される:
図1は、NaOH(1mmol NaOH)添加後の、アセトニトリル中の化合物6aの動的スペクトルを示す。
【0015】
図2は、NaOH(1mmol NaOH)添加後の、アセトニトリル中の化合物6bの動的スペクトルを示す。
【0016】
〔本発明の開示〕
本発明の目的は、メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールにおいて、3,4−ジヒドロピラン環の開環および閉環によって作用し、公知のフォトクロムよりも開環/閉環の速度が速く、中性およびアルカリ性の両方の溶媒中で活性である新規のフォトクロミック化合物を得ることである。
【0017】
この目的を達成するため、一般式(I)および(II)の化合物が提示され、
【0019】
式中、
R
1およびR
2は、各々独立にメチル、エチルであるか、または、スピロ環〔−(CH
2)
4−;−(CH
2)
5−〕の一部であり;
R
3は、C
1〜C
6アルキル、ω−官能化(functionalized)アルキル、ベンジル、フェニル、アリルである。
【0020】
ここで、ω−官能化アルキルは、重合可能な基(ビニル、アクリレート、エポキシ)またはチオール基を有しており、種々の基質に結合することができる。
【0021】
さらに具体的には、本発明は、式中、R
1およびR
2がメチルであり、R
3がエチルまたはベンジルである、一般式(I)または(II)の化合物を対象とする。
【0022】
本発明の好ましい目的化合物は:
(5aR
*,12R
*,13S
*)−N−エチル−6,6,8−トリメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピン−12−カルボキサミド(6a);
(5aR
*,12S
*,13S
*)−N−エチル−6,6,8−トリメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピン−12−カルボキサミド(7);
(5aR
*,12R
*,13S
*)−N−ベンジル−6,6,8−トリメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピン−12−カルボキサミド(6b)である。
【0023】
本発明の目的化合物は、フォトクロミック特性により特徴づけられる。これらは、フォトクロミックスイッチとして使用され得る。
【0024】
本発明の他の目的は、一般式(5)の化合物であり、
【0026】
式中、R
3は、エチルまたはベンジルであり、これらの化合物は、本発明のフォトクロミック化合物を得るための中間体である。
【0027】
また、本発明の他の目的は、化合物(5)の合成において使用される、一般式(4)の化合物であり、
【0029】
式中、R
3は、エチルまたはベンジルである。
【0030】
本発明の他の目的は、化合物(4)の合成に使用される、式(3)の化合物である。
【0032】
本発明の更なる目的は、式(3)の化合物の合成に使用される、式(2)の3H−インドリウム塩である。
【0034】
〔本発明の詳細な説明〕
一般式(I)および(II)の誘導体であるcis−およびtrans−メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドール誘導体を含む、新規の種類のフォトクロミック化合物が開発される。
【0036】
これらの誘導体は、最近発表されたフォトクロミック化合物である、1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール](III)および(IV)と同様に、インドール(A)およびクロマン(B)複素環系から形成される、1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]の骨格を有する。
【0037】
しかし、本発明の化合物は、付加的なC−C結合(太線で上記に示される)を有しており、これは、ピラン環の立体配座の不安定性を抑える。
【0040】
タイプIの化合物に対する紫外線照射の作用下で、3,4−ジヒドロ[2H]ピラン環のC−O結合の切断が起こり、着色した4−ニトロフェノレートフラグメントを有する、着色した両性イオンVを生じる点で、本発明の化合物の構造は特徴的であることが分かった。この部分は、たった1つの結合によって連結しており、この周りを回転することができる。一方で、公知の高速フォトクロムAがUV照射されると、両性化合物Bが生じるが、当該化合物において、4−ニトロフェノレート部分は、回転が可能である3つの単結合を介してインドリウム部分と連結している。構造V(1つの結合)における、1つのC−C結合の周囲を回転可能であることに起因する、自由度の減少は、構造B(3つの結合)と比較して、5nsより速くジヒドロピラン環に戻り、化合物Vが初期構造Iに戻るという点で有利である。
【0041】
上述のように、本発明は、目的化合物を得るために必要な新規の中間体を含む。
【0042】
著者らの知識に基づくと、中間体(2)(3)(4)(5)は公知の合成方法によって調製されてもよいが、これらは記載しない。一般式(5)の中間体は、例えば、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒドを用いて、一般式(4)の化合物を濃縮することによって得られた。一般式(4)の化合物は、ヨードエタンまたはベンジルクロリドを用いた、7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2−オンのアルキル化によって調製された。式(3)の化合物は、3H−インドリウム塩の環化によって得られ、式(2)の後者の塩は、2−クロロアセトアミドによる2,3,3a−トリメチル−5−メトキシ−3H−インドールのアルキル化によって得られた。有機合成における当業者であれば、本発明の他の化合物の調製方法を理解できる。
【0043】
本発明に提示されている化合物の溶液は、単色紫外光(例えば、Nd:YAGレーザー(EKSPLA NL30);3倍調和振動;波長355nm;パルス持続時間−5ns;パルスエネルギー3mJ)を照射されたとき、酸素原子とキラル中心(アスタリスクで示される)とを連結している結合の異方性切断が起こり、3H−インドリウムカチオンのフラグメントと着色した4−ニトロフェノレートアニオンのフラグメントとを結合している2つの炭素原子の立体配座的に制約がある鎖を含んでいる両性化合物の形成を引き起こすことが処理によってわかった。照射のスイッチを切ると、インドール環系のα−炭素原子に対するフェノレートアニオンの酸素原子の結合の後、化合物の着色体は、初期の消色状態へと熱的に戻る。本発明の化合物である、メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールは、より速い閉環/開環の合計速度によって特徴づけられ、加えて、これらは酸素環境下においても同様に作用する。cis−メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールは、pHの環境に対して、特にアルカリ溶媒に対して反応性が低く、一方で、6−ニトロ−1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]は、塩基に対して非常に反応性が高い。本明細書に記載された化合物は、還流下でエタノール中の水酸化カリウムで処理したとき、対応するインドリノスピロピランの環化反応によって合成された。
【0044】
上記メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールは、以下の一般スキームによって得られる。
【0046】
〔本発明を実施するための形態〕
実際の実施形態の例に関する情報を以下に提示し、本発明の化合物の調製の形態およびこれらの特性を開示する。この情報は、例示の目的のために提示され、本発明の範囲を制限しない。
【0047】
<実施例1>
5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロリド(最初の化合物)
5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール12g(0.063mol)をトルエン(20ml)に溶解し、コンデンサーをフラスコに取り付け、アセチルクロリド9ml(ρ=1.104g/ml、9.94g)を滴下して加えた。混合物を大気温度に冷却した後、当該混合物を5℃で12時間保存した。形成された結晶をろ過し、アセトンおよび冷エーテルで洗浄した。6.6gの黄色み掛かった色の結晶のインドリウムクロリド(46.12%)を得た。融点201〜203℃。
1H NMR (400 MHz, DMSO-D
6): δ 1.45 (s, 6H, 2×CH
3), 2.62 (s, 3H, 2-CH
3), 3.82 (s, 3H, 5-OCH
3), 7.02 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, 6-H), 7.37 (d, J = 2.4 Hz, 1H, 4-H), 7.54 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 7-H).
13C BMR (100 MHz, DMSO-D
6): δ 14.3, 22.0 (2×C), 53.8, 55.9, 109.4, 113.9, 117.2, 134.9, 145.3, 159.7, 193.0. IR (KBr), ν (cm
-1): 3134 (N-H), 3021, 2973, 1623, 1479, 1404, 1289, 1022, 797。
【0048】
<実施例2>
1−カルバモイルメチル−5−メトキシ−2,3,3−トリメチル[3H]インドリウムクロリド(中間体化合物2)
実施例1によって得られた5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロリド(6g、0.026mol)を最少量の水に溶解し、炭酸ナトリウムで中和し、ジエチルエーテル(2×30ml)で抽出した。混合した抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で除去した。得られた残渣(4.8g、0.025mol)にα−クロロアセトアミド(2.6g、0.027mol)を加え、コンデンサーを用いて、o−キシレン(7ml)中にて混合物を140℃で2時間加熱した。冷却後、形成した結晶をろ過し、冷エーテルで洗浄した。エタノールからの再結晶後、5gの生成物を得て、69.7%のこげ茶色の結晶を得た。融点240〜242℃であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6): δ 1.54 (s, 6H, 2 × CH
3), 2.73 (s, 3H, CH
3), 3.85 (s, 3H, O-CH
3), 5.36 (s, 2H, CH
2CO), 7.14 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, 6-H), 7.51 (d, J = 2.4 Hz, 1H, 4-H), 7.79-7.81 (m, 2H, 7-H, 1/2 NH
2), 8.51 (pl.s, 1H, 1/2 NH
2).
13C BMR (100 MMHz, DMSO-D
6): δ 14.4, 22.6 (2×C), 50.1, 54.5, 56.6, 109.9, 114.9, 116.3, 135.2, 143.9, 161.1, 165.1, 196.4. IR (KBr), ν (cm
-1): 3290 (N-H), 3097, 2977, 1689 (C=O), 1298, 1030, 833。
【0049】
<実施例3>
7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン(中間体化合物3)
実施例2の方法によって合成された1−カルバモイルメチル−5−メトキシ−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムクロリド(5g、0.018mol)を最少量の水に溶解し、炭酸ナトリウムで中和し、ジエチルエーテル(2×25ml)で抽出した。エーテル抽出物を混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で除去した。得られた中和された混合物(5g、0.02mmol)に、エタノール(20ml)および氷酢酸(9.2ml)を加え、混合物を100℃で1時間加熱した。当該混合物を冷却した後、それに水(50ml)を注ぎ、白色結晶を形成し始めるまでNa
2CO
3で中和した。物質をろ過し、水で洗浄し、エタノールから再結晶させた。生成物の収量は2.5g(50%)であり、オフホワイトの結晶であった。融点209〜211℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ1.17 (s, 3H, CH
3), 1.36 (s, 3H, CH
3), 1.50 (s, 3H, CH
3), 3.76 (s, 3H, O-CH
3), 3.77 (AB-q, J = 16.4 Hz, 2H, CH
2), 6.62 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 4-H), 6.64 (d, J = 8.8 Hz, 1H, 7-H), 6.70 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, 6-H), 7.86 (pl. s, 1H, NH).
13C BMR (100 MHz, CDCl
3): δ 21.2, 22.3, 27.5, 47.0, 55.8, 55.9, 92.0, 109.1, 112.8, 113.3, 140.2, 144.3, 155.9, 174.9 (C=O). IR (KBr, cm
-1): 3333 (N-H), 3056, 2975, 1700 (C=O). MS m/z(%): 247 (M + H
+, 100)。
【0050】
<実施例4>
1−エチル−7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン(中間体化合物4a)
実施例3に記載された方法によって合成された7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン2.5g(0.01mol)をジメチルホルムアミド(25ml)に溶解し、新たに粉末化されたKOH(0.85g)を溶液に加えた。アルカリの溶解の後、ヨードエタン(2.45ml)を滴下して加え、3時間撹拌を続けた。混合物を水に注ぎ、エーテル(3×20ml)で抽出した。エーテル抽出物を混合し、HClの5%溶液で洗浄した。Na
2CO
3溶液で中和し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で蒸発させた。生成物の収量は2.3g(82.7%)であり、黄色み掛かった色の樹脂を含む物質であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.04 (s, 3H, CH
3), 1.29 (t, J= 7.2 Hz, 3H, CH
2"CH
3"), 1.40 (s, 3H, CH
3), 1.47 (s, 3H, CH
3), 2.98-3.07 (m, 1H, 1/2
"CH
2"CH
3), 3.63-3.72 (m, 1H, 1/2
"CH
2"CH
3), 3.76 (s, 3H, OCH
3), 3.83 (AB-q, J = 15.2 Hz, 2H, CO-
"CH
2"), 6.59 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 4-H), 6.70-6.71 (m, 2H, Ar-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 14.33, 23.07, 24.11, 27.02, 29.19, 37.23, 50.06, 55.84, 92.69, 108.99, 113.01, 115.36, 142.23, 142.99, 156.05, 171.22 (C=O). IR (KBr), ν (cm
-1): 3029, 2984, 1703 (C=O), 1491, 1273, 1014, 816。
【0051】
<実施例5>
1−ベンジル−7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン(中間体化合物4b)
実施例3に記載された方法によって合成された7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン2.0g(0.008mol)をジメチルホルムアミド(18ml)に溶解し、新たに粉末化されたKOH0.7g(0.12mol)を溶液に加えた。アルカリの溶解の後、ベンジルクロリドを2.8ml(0.024mol、ρ=1.100g/ml、3.08g)滴下して加え、室温で3時間撹拌を続けた。混合物を水に注ぎ、エーテル(3×20ml)で抽出した。混合した抽出物を5%HCl溶液で洗浄し、Na
2CO
3溶液で中和した。溶媒を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、回転蒸発器で蒸発させた。得られた樹脂をカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/アセトン 3:1)で精製した。わずかにオレンジ色の結晶としての生成物の収量は1.4g(51.8%)であり、融点122〜123℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.01 (s, 3H, 9a-CH
3, 1.25 (s, 3H, 9-CH
3), 1.37 (s, 3H, 9-CH
3), 3.73 (AB-d, J = 15.2 Hz, 1H, 1/2 CH
2CO), 3.73 (s, 3H, 7-OCH
3), 4.14 (dd, J = 15.5 Hz, J = 5.8 Hz, 2H, CH
2-Ph), 4.95 (AB-d, J = 15.6 Hz, 1H, 1/2 CH
2CO), 6.55 (d, J = 2.5 Hz, 1H, 8-H), 6.69 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.5 Hz, 1H, 6-H), 6.74 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 5-H), 7.21-7.28 (m, 5H, Ar-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 23.3, 23.9, 28.7, 45.4, 50.1, 55.7, 55.8, 93.1, 108.9, 113.0, 115.6, 127.5, 127.6 (2×C), 128.7 (2×C), 137.7, 142.1, 143.2, 156.2, 172.1 (C=O). IR(KBr), ν (cm
-1): 3023, 2969, 1706 (C=O), 1493, 1278, 1027, 730。
【0052】
<実施例6>
N−エチル−2−(5’−メトキシ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ[クロメン−2,2’−インドロ]−1’(3’H)−イル)アセトアミド(中間体化合物5a)
実施例4に記載された方法によって合成された1−エチル−7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン2.5g(0.009mol)および2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド1.52g(0.009mol)を氷酢酸(20ml)に加え、100℃で3時間加熱した。反応終了後、混合物を5%酢酸ナトリウム溶液(250ml)に注ぎ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合した抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で除去した。得られた樹脂をカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/アセトン 3:1)で精製した。紫色アモルファス物質としての生成物の収量は1.3g(33.8%)であり、融点95〜96℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.09 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH
2"CH
3"), 1.26 (s, 3H, 3'-CH
3), 1.3 (s, 3H, 3'-CH
3), 3.25-3.34 (m, 2H,
"CH
2"CH
3), 3.59 (AB-d, J = 17.6 Hz, 1H, 1/2
"CH
2"CO), 3.80 (s, 3H, 5'-OCH
3), 3.87 (AB-d, J = 17.6 Hz, 1H, 1/2
"CH
2"CO), 5.83 (d, J = 10.4 Hz, 1H,
"CH
"=CH), 6.43 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 7'-H), 6.49 (t, J = 5.2 Hz, 1H, NH), 6.72 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, 6'-H), 6.75-6.78 (m, 2H, 4-H, 4'-H), 6.94 (d, J = 10.4 Hz, 1H, CH=
"CH
"), 8.00 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 7-H), 8.03 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, 5-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 15.0, 20.1, 26.1, 27.0, 34.3, 48.8, 52.9, 56.0, 106.6 (スピロ-C), 108.3, 110.0, 111.7, 115.6, 118.3, 120.4, 123.1, 126.3, 129.4, 137.8, 140.0, 141.5, 155.4, 158.8, 169.3 (C=O). IR (KBr), ν (cm
-1): 3403 (N-H), 3065, 2966, 1666 (C=O), 1520, 1481, 1337, 1273, 1089, 951。
【0053】
<実施例7>
N−ベンジル−2−(5’−メトキシ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロスピロ[クロメン−2,2’−インドロ]−1’(3’H)−イル)アセトアミド(中間体化合物5b)
実施例5に記載された方法によって合成された1−ベンジル−7−メトキシ−9,9,9a−トリメチル−9,9a−ジヒドロ−1H−イミダゾ[1,2−a]インドール−2(3H)−オン1.0g(0.003mol)および2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(0.5g、0.003mol)を氷酢酸(10ml)に加え、100℃で3時間加熱した。反応終了後、混合物を5%酢酸ナトリウム溶液(100ml)に注ぎ、酢酸エチル(2×30ml)で抽出した。混合した抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で除去した。得られた樹脂をカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/アセトン 3:1)で精製した。紫色アモルファス物質としての生成物の収量は0.41g(28.7%)であり、融点84〜85℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.18 (s, 3H, 3'-CH
3), 1.27 (s, 3H, 3'-CH
3), 3.71 (AB-d, J = 17.6 Hz, 1H, 1/2
"CH
2"CO), 3.80 (s, 3H, 5'-OCH
3), 3.91 (AB-d, J = 17.6 Hz, 1H, 1/2
"CH
2"CO), 4.45 (d, J = 5.6 Hz, 2H, CH
2-Ph), 5.76 (d, J = 10.2 Hz, 1H,
"CH
"=CH), 6.45 (d, J = 8.0 Hz, 1H, 4-H), 6.60 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 6'-H), 6.71 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, 7'-H), 6.74 (d, J = 2.4 Hz, 1H, 4'-H), 6.83 (t, J = 5.8 Hz, 1H, NH), 6.92 (d, J = 10.2 Hz, 1H, CH=
"CH
"), 7.14-7.17 (m, 2H, Ar-H), 7.27-7.29 (m, 3H, Ar-H), 7.96-7.80 (m, 2H, 5-H, 7-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 20.14, 26.10, 43.43, 48.75, 52.97, 56.06, 106.65 (スピロ-C), 108.23, 110.06, 111.79, 115.61, 118.29, 120.51, 123.03, 126.31, 127.57 (2×C), 127.72, 128.87 (2×C), 129.41, 137.66, 138.0, 139.84, 141.58, 155.38, 158.66, 169.49 (C=O). IR(KBr), ν (cm
-1): 3395 (N-H), 3030, 2930, 1671 (C=O), 1519, 1494, 1481, 1337, 1272, 1089, 951。
【0054】
<実施例8>
(5aR
*,12S
*,13S
*)−および(5aR
*,12R
*,13S
*)−N−エチル−8−メトキシ−6,6−ジメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピノ−12−カルボキサミド(目的化合物6a,7)
実施例6に記載された方法によって合成されたスピロ化合物5a(1g、0.002mol)をエタノール(30ml)に溶解し、細かく粉末化された水酸化カリウム(0.34g、0.006mol)を加え、混合物を2時間還流した。反応終了後、溶媒のほとんどを回転蒸発器で除去し、溶液が濁るまで、残渣に水を滴下して加えた。混合物を5℃で10時間静置した。形成された結晶をろ過し、少量の冷エーテルで洗浄し、エタノールから再結晶させた。酢酸エチル(2×30ml)でろ過物を抽出し、混合した抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を回転蒸発器で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/アセトン 5:1)で精製した。得られた生成物をエタノールから再結晶した。
【0055】
cis−異性体(6a)
収量10.4%、黄色結晶、融点241〜242℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ0.61 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH
2"CH
3"), 1.48 (s, 3H, 6-CH
3), 1.50 (s, 3H, 6-CH
3), 2.16 (d, J = 11.6 Hz, 1H, 14-H
a), 2.20 (dd, J = 11.6 Hz, J = 3.6 Hz, 1H, 14-H
b), 2.81-2.91 (m, 1H, 1/2
"CH
2"CH
3), 3.12-3.23 (m, 1H, 1/2
"CH
2"CH
3), 3.78 (s, 3H, 8-OCH
3), 3.80 (t, J = 3.6 Hz, 13-H), 3.88 (d, J = 4.8 Hz, 1H, 12-H), 6.43 (d, J = 9.2 Hz, 1H, Ar-H), 6.66-6.69 (m, 2H, Ar-H), 6.89-6.92 (m, 2H, Ar-H, NH), 7.98 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 1-H), 8.07 (dd, J = 9.2 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, 3-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 14.7, 23.11, 26.6, 32.9, 33.7, 42.4, 45.5, 56.0, 78.2, 109.6, 111.1, 111.5, 113.1, 116.3, 124.7, 125.1, 125.9, 139.8, 141.4, 142.4, 156.0, 158.4, 169.5 (C=O). IR (KBr), ν (cm
-1): 3288 (N-H), 3071, 2982, 1652 (C=O), 1513, 1344, 1269, 1090, 816。
【0056】
trans−異性体(7)
収量2.5%、黄色み掛かった色の結晶、融点184〜185℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.09 (t, J = 7.2 Hz, 3H, CH
2"CH
3"), 1.37 (s, 3H, 6-CH
3), 1.60 (s, 3H, 6-CH
3), 2.05 (d, J = 11.6 Hz, 1H, 14-H
a), 2.69 (dd, J = 11.6 Hz, J = 4.0 Hz, 1H, 14-H
b), 3.24-3.35 (m, 2H,
"CH
2"CH
3), 3.75 (s, 3H, 8-OCH
3), 3.77 (d, J = 4.0 Hz, 1H, 13-H), 4.31 (s, 1H, 12-H), 5.97 (t, J = 5.2 Hz, 1H, NH), 6.25 (d, J = 8.4 Hz, 1H, 10-H), 6.59 (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.4 Hz, 1H, 9-H), 6.75 (d, J = 2.4 Hz, 1H, 7-H), 6.79 (d, J = 9.2 Hz, 1H, 4-H), 8.03 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, 3-H), 8.16 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 1-H). IR (KBr), ν (cm
-1): 3298 (N-H), 3082, 2970, 1650 (C=O), 1510, 1496, 1338, 1268, 1086, 917。
【0057】
<実施例9>
(5aR
*,12S
*,13S
*)−N−ベンジル−8−メトキシ−6,6−ジメチル−2−ニトロ−12,13−ジヒドロ−6H−5a,13−メタノインドロ[2,1−b][1,3]ベンゾオキサゼピノ−12−カルボキサミド(目的化合物6b)
実施例7に記載された方法によって合成されたスピロ化合物5b 0.385g(0.8mmol)をエタノール(10ml)に溶解し、細かく粉末化された水酸化カリウム(0.13g、2.4mmol)を加え、混合物を2時間還流した。反応終了後、溶媒のほとんどを回転蒸発器で除去し、溶液が濁るまで、残渣に水を滴下して加えた。混合物を5℃で10時間静置した。形成された結晶をろ過し、少量の冷エーテルで洗浄し、エタノールから再結晶させた。黄色結晶の収量は23.4%であり、融点218〜219℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.46 (s, 6H, 2×6-CH
3), 2.13 (d, J = 11.6 Hz, 1H, 14-H
a), 2.21 (dd, J = 11.6 Hz, J = 4.0 Hz, 1H, 14-H
b), 3.78 (s, 3H, 8-OCH
3), 3.82 (t, J = 4.0 Hz, 1H, 13-H), 3.93-3.97 (m, 2H, 1/2 CH
2-Ph, 12-H), 4.51 (dd, J = 14.8 Hz, J= 8.0 Hz, 1H, 1/2 CH
2-Ph), 6.46 (d, J = 9.2 Hz, 1H, 4-H), 6.68-6.70 (m, 2H, Ar-H), 6.73-6.75 (m, 2H, Ar-H), 6.79 (d, J = 8.8 Hz, 1H, Ar-H), 7.10-7.16 (m, 3H, Ar-H), 7.28-7.31 (m, 1H, NH), 7.93 (d, J = 2.8 Hz, 1H, 1-H), 7.97 (dd, J = 9.2 Hz, J = 2.8 Hz, 1H, 3-H).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 23.0, 26.6, 33.0, 42.1, 42.8, 45.4, 55.9, 78.3, 109.6, 111.1, 111.3, 113.0, 116.3, 124.6, 125.3, 125.5, 127.4 (2×C), 127.5, 128.5 (2×C), 137.7, 139.8, 141.3, 142.4, 156.0, 158.2, 169.5 (C=O). IR (KBr), ν (cm
-1): 3377 (N-H), 3029, 2975, 1676 (C=O), 1517, 1496, 1340, 1262, 1086, 909。
【0058】
アセトニトリル(10
−5M/L)中の溶液から目的化合物6a,6bおよび7のフォトクロミック特性を決定した。定常状態UV−Vis吸収スペクトルを走査型分光計(Shimadzu UV-3101PC)で記録した。Nd:YAGレーザー 3倍調和振動照射(EKSPLA NL30、1インパルスあたりパルスエネルギー3mJ、λ=355nm、パルス持続時間5ns)を用いて、フラッシュ光分解実験を実施した。パルスの数は、パルスを数えることで決定し、開環型の最大光吸収スペクトルは、初期吸収極大の0.8に達した。励起の波長を光学的に調整したベンゾフェノン(355nmにおいて0.5OD)のMeCN溶液を、量子収量を測定するために使用した。開環体へのフォトクロミック遷移の量子収量を、エネルギー特性(吸光度シグナル対励起パルスエネルギーの差の増加)およびモル減衰係数によって、コントロール溶液と比較して評価した。
【0061】
表に提示されたフォトクロミック特性に関するデータは、本発明の化合物が分子光スイッチとして使用でき、ここで、UV照射下において3,4−ジヒドロ−2H−ピラン環の開環が起きるとともに着色体の化合物が生じ、続いて最初の消色体への熱的リターンが生じる。着色体の形成および消色体へのリターンの総所要時間は、5ns未満である。プロセスは複数回繰り返すことができる。本発明の化合物は、5000サイクル以上作用している間、著しく分解することがない、高い光安定性により特徴づけられる。
【0062】
本発明の化合物は、上述の化合物Aよりも、アルカリ溶媒に対して反応性が低い。類似物質Aのアセトニトリル溶液に、水酸化ナトリウム溶液を滴下する場合、水酸化物イオンはα−C炭素原子を即座に攻撃し、3,4−ジヒドロピラン環は開環し、着色したニトロフェノレートを形成するであろう。
【0064】
一方、
図1に提示されたスペクトルは、水酸化ナトリウムによる化合物6aの処理後、3,4−ジヒドロピランサイクルが安定したままであり、着色した4−ニトロフェノレートアニオンが形成しないことを示す。化合物6b(
図2)は、アルカリ溶媒に対して反応性がより高いが、化合物Aほどは反応性が高くない。化合物6bの動的UV−Visスペクトルを
図2に提示する。
【0065】
まとめると、本発明は、公知の技術分野と比較して、以下の主要な利点を有している。
【0066】
1.本発明のcis−およびtrans−メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールの、着色体形成ならびに初期の消色状態へのリターンの総所要時間は、インドリノスピロピランまたは1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]よりも著しく短い。
【0067】
2.cis−メタノベンズ[f][1,3]オキサゼピノ[3,2−a]インドールは、溶媒の変化に対する特有の耐性により特徴づけられ、UV照射の作用によってのみ、着色体が生じる。アルカリは、[1,3]ベンズオキサジン環を容易には開環せず、着色した4−ニトロフェノールフラグメントを生成しない。
【0068】
3.本発明の化合物は、1’,3,3’,4−テトラヒドロスピロ[クロメン−2,2’−インドール]よりも光崩壊に対する高い耐性により特徴づけられ、5000以上の開環−閉環サイクルに耐える。
【0069】
4.これらの化合物は空気中の酸素に対して反応性が低く、酸素が除去されていない環境でも使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】NaOH(1mmol NaOH)添加後の、アセトニトリル中の化合物6aの動的スペクトルを示す。
【
図2】NaOH(1mmol NaOH)添加後の、アセトニトリル中の化合物6bの動的スペクトルを示す。