(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0017】
<導電性接着剤層>
(スキューネスSsk)
本実施形態に係る導電性接着剤層は、その表面におけるスキューネスSskが−3.5以上、2.7以下であることを特徴とする。本実施形態に係る導電性接着剤層100は、
図1に示すように、凸部100a(山)および凹部100b(谷)からなる凹凸表面を有し、その表面性状を特定するパラメータとして、スキューネスSskが特定の範囲に制御されているので、被着体(図示せず)に対する仮止め工程後の密着性に優れ、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれを防止することができる。
【0018】
スキューネスSskは、凹凸表面の平均面を基準とした高さ分布の対称性を示し、スキューネスSskが0の場合には高さ分布が上下に対称(正規分布)な表面となる一方、0よりも小さい場合には細かい谷が多い表面となり、0よりも大きい場合には細かい山が多い表面となる。
【0019】
導電性接着剤層100の表面におけるスキューネスSskの絶対値が大きい場合、すなわち山または谷が多い凹凸表面であると、被着体との接着面積が小さくなり、被着体に対する仮止め工程後の接着強度が不十分となる。
【0020】
そのため、導電性接着剤層100の表面を、スキューネスSskが0を中心とする特定の範囲である、高さ分布が上下に比較的対称な表面にすることにより、被着体との接着面積を増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性を向上させることできる。
【0021】
したがって、スキューネスSskは、谷を少なくして高さ分布が上下に対称な表面に近付けることにより、被着体との接着面積を増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性を向上させる観点から、−3.5以上、好ましくは−3以上、より好ましくは−2.5以上、さらに好ましくは−2以上である。また、山を少なくして高さ分布が上下に対称な表面に近付けることにより、被着体との接着面積を増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性を向上させる観点から、2.7以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0022】
なお、本明細書において、「被着体」とは、例えば、プリント配線基板のベース層を形成するポリイミドフィルムなどの樹脂フィルム、グランド回路を形成する銅箔などの金属層などを意味する。
【0023】
また、本明細書において、「仮止め工程」とは、最終的な固定工程の前に行なう、例えば、120℃に加熱した2枚の加熱板(図示せず)により、導電性接着剤層100と被着体とを、上下方向から挟んで圧力0.5MPaで5秒間押圧する工程を意味する。
【0024】
さらに、本明細書において、「被着体に対する仮止め工程後の密着性に優れ」るとは、仮止め工程後における導電性接着剤層100と被着体との180°ピール強度が0.5N/cm以上であることを意味する。この場合、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれを防止することができる。なお、ピール強度の具体的な測定方法は以下の実施例にて説明する。
【0025】
(最大山高さSp)
また、本実施形態に係る導電性接着剤層100は、表面における最大山高さSpが1.3μm以上、30μm以下であることが好ましい。このように、本実施形態に係る導電性接着剤層100は、その表面性状を特定するパラメータとして、最大山高さSpを特定の範囲に制御することで、被着体に対する仮止め工程後の密着性をより向上させ、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれをより防止することができる。
【0026】
最大山高さSpは、凹凸表面の平均面からの山高さの最大値を示し、最大山高さSpが大きいほど高い山を有する表面となる。
【0027】
導電性接着剤層100の表面における最大山高さSpが大きい場合、すなわち高い山を有する表面であると、その高い山が障害となって被着体との接着面積が小さくなり、このことで被着体に対する仮止め工程後の接着強度が不十分となる。
【0028】
そのため、導電性接着剤層100の表面を、最大山高さSpが特定の範囲である、最も高い山の山高さが比較的低い表面にすることにより、被着体との接着面積をより増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性をより向上させることできる。
【0029】
したがって、最大山高さSpは、被着体との接着面積をより増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性をより向上させる観点から、好ましくは1.3μm以上、より好ましくは1.6μm以上である。また、最も高い山の山高さが比較的低い表面に近付けることにより、被着体との接着面積をより増加させ、被着体に対する仮止め工程後の密着性をより向上させる観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。
【0030】
(その他のパラメータ)
なお、導電性接着剤層100の表面性状を特定するパラメータとしては、スキューネスSskおよび最大山高さSp以外に、例えば、最大谷深さSv、最大山高さSpと最大谷深さSvとの和を示す最大高さSzなどが挙げられるが、本開示はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0031】
一方、算術平均Saは、後述する各実施例および各比較例で示すように、被着体に対する仮止め工程後の密着性とは相関がないことを本発明の発明者によって見出された。この理由として、算術平均Saは、凹凸表面の平均面に対して、各点(山と谷)の高さの差の絶対値の平均を表わすので、その値が小さい場合であっても、高い山と深い谷とが同程度有する凹凸表面が含まれる場合がある。この場合、その高い山と深い谷とが障害となって被着体との接着面積が小さくなり、被着体に対する仮止め工程後の接着強度が不十分となるものと考えられる。したがって、算術平均Saは、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれを防止することができる接着強度を得るための、導電性接着剤層100の表面性状を特定するパラメータとして適当ではない。
【0032】
なお、本開示における表面性状は、ISO 25178−6:2010に準拠して測定される値であり、具体的な測定方法は以下の実施例にて説明する。
【0033】
本実施形態に係る導電性接着剤層100は、バインダ樹脂110と、導電性フィラー120とを含有する導電性接着剤により形成される。
【0034】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂110は、特に限定されず、導電性接着剤に用いられる種々の樹脂を用いることができる。このような樹脂として、例えば、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、またはアクリル系などの熱可塑性樹脂;フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、またはアルキッド系などの熱硬化性樹脂などを用いることができる。これらのバインダ樹脂110は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
また、バインダ樹脂110には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、導電性接着剤層100の表面性状(スキューネスSskおよび最大山高さSp)を所定の状態に調整する観点から、樹脂微粒子または無機微粒子を添加することができる。樹脂微粒子としては、例えば、アクリル樹脂微粒子、ポリアクリロニトリル微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリアミド微粒子、またはポリイミド微粒子などが挙げられる。また、無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム微粒子、珪酸カルシウム微粒子、クレー、カオリン、タルク、シリカ微粒子、ガラス微粒子、珪藻土、雲母粉、アルミナ微粒子、酸化マグネシウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、硫酸バリウム微粒子、硫酸アルミニウム微粒子、硫酸カルシウム微粒子、または炭酸マグネシウム微粒子などが挙げられる。これらの樹脂微粒子および無機微粒子は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
(導電性フィラー)
導電性フィラー120は、特に限定されず、導電性接着剤に用いられる金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラーおよびそれらの混合物などを使用することができる。金属フィラーとしては、例えば、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、または金コートニッケル粉などを挙げることができる。これらの金属粉は、例えば、電解法、アトマイズ法、または還元法などにより作製することができる。これらの導電性フィラー120は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、銀粉、銀コート銅粉および銅粉が好ましく、銀コート銅粉がより好ましい。
【0037】
導電性フィラー120の形状は、球状、楕円状、フレーク状、繊維状、または樹枝状(デンドライト状)などが挙げられる。また、金属ナノ粒子とすることもできる。金属ナノ粒子としては、例えば、銀ナノ粒子、または金ナノ粒子などを挙げることができる。
【0038】
導電性フィラー120の平均粒径D50(メジアン径)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、また好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。なお、導電性フィラー120の平均粒径D50は、例えば、レーザ回折式粒子径分布測定装置、またはフロー式粒子像分析装置などの一般に使用される方法により測定することができる。
【0039】
また、導電性フィラー120の平均粒径D50は、導電性接着剤層100の厚さなどに応じて適宜設定すればよい。具体的には、導電性接着剤層100の厚さが5μm程度の場合、好ましくは3μm程度、より好ましくは5μm程度である。また、導電性接着剤層100の厚さが15〜60μm程度の場合、好ましくは20μm程度、より好ましくは15μm程度である。
【0040】
導電性接着剤における導電性フィラー120の含有率は、特に限定されないが、導電性接着剤の用途に応じて適宜設定すればよく、好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。なお、導電性接着剤層100は、異方導電性接着剤層、等方導電性接着剤層のいずれであってもよく、異方導電性接着剤層として使用する場合には、導電性接着剤における導電性フィラー120の含有率は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、また好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。等方導電性接着剤層として使用する場合には、導電性接着剤における導電性フィラー120の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0041】
導電性フィラー120の平均粒径D50と、導電性接着剤における導電性フィラー120の含有率とを、それぞれ上述した特定の範囲にすることで、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれを防止することができるのに適したスキューネスSskを有する、導電性接着剤層100を実現することができる。
【0042】
(任意成分)
導電性接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、希釈剤、沈降防止剤、レベリング剤、カップリング剤、着色剤、または難燃剤などを添加することができる。これらの任意成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、特に、導電性接着剤に難燃性を付与させる観点から、難燃剤を添加することが好ましい。
【0043】
このような難燃剤としては、例えば、メラミンシアヌレートまたはポリリン酸メラミンなどの窒素系難燃剤;水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムなどの金属水和物;燐酸エステル、赤リン、またはリン酸塩化合物などのリン系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤のなかでは、リン酸塩化合物が好ましい。
【0044】
導電性接着剤に難燃剤を加える場合には、バインダ樹脂110の量100質量部に対し、10質量部〜60質量部を添加することが好ましい。
【0045】
<導電性接着剤層の形成方法>
次に、バインダ樹脂110と、導電性フィラー120とを含有する導電性接着剤を用いて、本実施形態に係る導電性接着剤層100を形成する方法について説明する。
【0046】
(導電性接着剤の調製工程)
まず、所定濃度となるようにバインダ樹脂110を溶剤に溶解させたバインダ樹脂溶液を調製する。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、またはジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本開示はかかる例示のみに限定されるものではない。なお、溶液中のバインダ樹脂110の濃度は、導電性接着剤層100の厚さなどに応じて適宜設定すればよい。
【0047】
次いで、前記で調製したバインダ樹脂溶液に、導電性フィラー120、必要に応じて任意成分を添加した混合懸濁液を撹拌混合することにより、導電性接着剤を調製する。
【0048】
(導電性接着剤の塗工工程)
次に、前記で調製した導電性接着剤を基層130の上に塗工する。基層130としては、例えば、樹脂製のシートまたはフィルムなどを用いることができる。シートやフィルムを構成する材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂などを使用することができる。基層130の表面には、一般に使用されるエンボス加工によって凹凸の微細パターンが施されていてもよい。なお、電磁波シールドフィルムを形成する場合、後述する絶縁保護層またはシールド層の上に導電性接着剤を塗工する。
【0049】
基層130の表面には、必要に応じて離型処理を施してもよい。離型処理としては、例えば、シリコン系離型剤、非シリコン系離型剤、またはメラミン系離型剤などからなる層を基層130の表面に形成することができる。基層130の表面に離型処理を施すことにより、基層130の上に形成した導電性接着剤層100を被着体に貼り付けた後、容易に基層130を剥離することができる。
【0050】
また、基層130の表面には、必要に応じて粘着剤層が設けられていてもよい。基層130の表面に粘着剤層が設けられていることにより、意図せず基層130が導電性接着剤層100から剥がれることを防止することができる。このような粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤またはポリエステル系粘着剤など公知の粘着剤を使用することができる。
【0051】
なお、基層130の厚さは特に限定されるものではなく、適宜、使い易さを考慮して決定することができる。
【0052】
基層130の上に導電性接着剤を塗工する方法としては、特に限定されず、例えば、リップコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、またはスロットダイコーティングなどの方法を用いることができる。
【0053】
(導電性接着剤の乾燥工程)
最後に、基層130の上に塗工された導電性接着剤を加熱乾燥させて溶剤を除去することにより、本実施形態に係る導電性接着剤層100を形成することができる。乾燥方法としては、例えば、温風乾燥、赤外線乾燥、オーブン乾燥、ホットプレート乾燥、または真空乾燥などが挙げられる。
【0054】
以上のようにして得られる本実施形態に係る導電性接着剤層100の厚さは、導電性フィラー120の粒径に応じて調整すればよい。良好な導電性を実現する観点から、導電性接着剤層100の厚さは、導電性フィラー120の平均粒径D50の好ましくは5.5倍以下、より好ましくは3.5倍以下である。また、導電性フィラー120の平均粒径D50の好ましくは+70μm以下(即ち、導電性フィラー120の平均粒径D50をdμmとしたときに、d+70μm以下)、より好ましくは+60μm以下(d+60μm以下)である。良好な塗工を行なう観点から、導電性接着剤層100の厚さは、導電性フィラー120の平均粒径D50の好ましくは0.6倍以上、より好ましくは0.7倍以上である。また、導電性フィラー120の平均粒径D50の好ましくは−7μm以上(d−7μm以上)、より好ましくは−5μm以上(d−5μm以上)である。
【0055】
なお、必要に応じて、導電性接着剤層100における基層130が貼り合わされる面とは反対側の表面に剥離基材(セパレートフィルム)(図示せず)を貼り合わせてもよい。剥離基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートなどのベースフィルム上に、シリコン系または非シリコン系の離型剤や、アクリル系またはポリエステル系などの粘着剤が、導電性接着剤層100に貼り合わされる側の表面に塗工されたものなどが挙げられる。導電性接着剤層100の表面に剥離基材を貼り合わせることにより、導電性接着剤層100の表面に傷が付いたり、異物が付着することを防止することができる。なお、剥離基材の厚さは特に限定されるものではなく、適宜、使い易さを考慮して決定することができる。
【0056】
また、以上の説明では、基層130の上に導電性接着剤を塗布、乾燥することで、所定のスキューネスSskを有する導電性接着剤層100を形成する例を示したが、剥離基材を用いて形成することもできる。この場合、微細パターンを有する剥離基材を用い、導電性接着剤層100の表面に微細パターンを転写することにより、導電性接着剤層100の表面性状を所定の状態とすることもできる。
【0057】
以上説明したように、本開示の導電性接着剤層100は、その表面におけるスキューネスSskが−3.5以上、2.7以下であるので、被着体に対する仮止め工程後の密着性に優れる。このように、本開示の導電性接着剤層100は、仮止め工程後の導電性接着剤層100の位置ずれを防止することができるので、例えば、電磁波シールドフィルムなどに好適に使用することができる。
【0058】
<電磁波シールドフィルム>
図2に示すように、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200は、絶縁保護層210と、絶縁保護層210の表面に設けられた導電性接着剤層100とを有することを特徴とする。このように、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200は、導電性接着剤層として本実施形態に係る導電性接着剤層100を有するので、プリント配線基板などの被着体(図示せず)に対する仮止め工程後の密着性に優れ、仮止め工程後の導電性接着剤層100、すなわち電磁波シールドフィルム200の位置ずれを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200は、プリント配線基板(図示せず)のグランド回路と導通するように、本実施形態に係る導電性接着剤層100を接着することにより、該導電性接着剤層100を電磁波に対するシールドとして機能させることができる。なお、
図3に示すように、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200は、絶縁保護層210と導電性接着剤層100との間にシールド層220を設けることもできる。
【0060】
(絶縁保護層)
絶縁保護層210は、充分な絶縁性を有し、導電性接着剤層100およびシールド層220を保護できれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂などを用いて形成することができる。
【0061】
絶縁保護層210は、材質または硬度若しくは弾性率などの物性が異なる2層以上の積層構造であってもよい。例えば、硬度が低い外層と、硬度が高い内層との積層構造とすれば、外層がクッション効果を有するため、電磁波シールドフィルム200をプリント配線基板に加熱加圧する工程においてシールド層220に加わる圧力を緩和できる。このため、プリント配線基板に設けられた段差によってシールド層220が破壊されることを抑えることができる。
【0062】
絶縁保護層210の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、好ましくは1μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。絶縁保護層210の厚さを1μm以上とすることにより導電性接着剤層100およびシールド層220を充分に保護することができる。また、絶縁保護層210の厚さを20μm以下とすることにより、電磁波シールドフィルム200の屈曲性を確保することができ、屈曲性が要求される部材、例えば、フレキシブルプリント配線基板などにも本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200を適用することが容易となる。
【0063】
(シールド層)
シールド層220は、導電性を有していればよく、例えば、金属薄膜、導電性フィラー、金属蒸着フィルムなどにより構成することができる。金属薄膜は、例えば、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛などのいずれか、または2つ以上を含む合金により構成することができる。金属薄膜は、例えば、金属箔を用いたり、アディティブ法によって金属を堆積したりすることにより製造することができる。アディティブ法としては、例えば、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、化学気相堆積(CVD)法、またはメタルオーガニック堆積(MOCVD)法などを用いることができる。
【0064】
シールド層220が導電性フィラーで構成される場合には、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラーおよびそれらの混合物などを使用することができる。金属フィラーとしては、例えば、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、または金コートニッケル粉などがあり、これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作成することができる。金属粉の形状は、球状、フレーク状、繊維状、または樹枝状などが挙げられる。また、金属ナノ粒子とすることもできる。金属ナノ粒子としては、例えば、銀ナノ粒子、または金ナノ粒子などを挙げることができる。
【0065】
シールド層220の金属材料および厚さは、求められる電磁シールド効果および繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、厚さは、0.1μm〜12μm程度とすることができる。
【0066】
なお、シールド層220を有さず、本実施形態に係る導電性接着剤層100がシールド層として機能する電磁波シールドフィルム200とすることもできる。
【0067】
<電磁波シールドフィルムの形成方法>
次に、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200を形成する方法について説明する。まず、支持フィルム(図示せず)の上に、絶縁保護層210、必要に応じてシールド層220を、一般に使用される方法を用いて順次形成することにより、積層体を得る。支持フィルムとしては、上述した基層130と同様の樹脂製シートまたはフィルムを使用することができる。また、支持フィルムは、その表面に微細パターンを有する支持体フィルム(転写フィルム)を使用してもよい。この場合、絶縁保護層210の表面に微細パターンを転写することにより、絶縁保護層210の表面性状を所定の状態とすることができる。
【0068】
次いで、前記で形成した積層体を基層として、この基層の上に、本実施形態に係る導電性接着剤層100を、上述した導電性接着剤層100の形成方法と同様にして形成することにより、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200を得ることができる。
【0069】
以上説明したように、本開示の電磁波シールドフィルム200は、導電性接着剤層として、本開示の導電性接着剤層100を有するので、被着体に対する仮止め工程後の密着性に優れ、仮止め工程後の導電性接着剤層100、すなわち電磁波シールドフィルム200の位置ずれを防止することができる。このため、本開示の電磁波シールドフィルム200は、導電性接着剤層100をプリント配線基板のグランド回路と導通させて、導電性接着剤層100を電磁波に対するシールドとして機能させたシールド配線基板とすることができる。
【0070】
<シールド配線基板>
図4に示すように、本実施形態に係るシールド配線基板400は、グランド回路320aを有するプリント配線基板300と、グランド回路320aと導通するようにプリント配線基板300に接着された本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200とを有する。なお、電磁波シールドフィルム200は、シールド層220を有するものであってもよい。
【0071】
プリント配線基板300は、例えば、ベース層310と、ベース層310の上に形成されたグランド回路320aおよび信号回路320bを含むプリント回路320と、グランド回路320aの少なくとも一部を露出するようにベース層310を覆う絶縁層330とを有している。なお、プリント配線基板300は、フレキシブル基板であってもよく、リジッド基板であってもよい。
【0072】
ベース層310および絶縁層330は、どのようなものであってもよいが、例えば、樹脂フィルムなどとすることができる。この場合、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、またはポリフェニレンサルファイドなどの樹脂により形成することができる。プリント回路320は、例えば、ベース層310の上に形成された銅配線パターンなどとすることができる。
【0073】
本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200をプリント配線基板300に接着する際には、電磁波シールドフィルム200をグランド回路320aと導通するように配置する。具体的には、電磁波シールドフィルム200の導電性接着剤層100をグランド回路320a上に配置する。そして、所定の温度(例えば120℃)に加熱した2枚の加熱板(図示せず)により、電磁波シールドフィルム200とプリント配線基板300とを、上下方向から挟んで所定の圧力(例えば0.5MPa)で短時間(例えば5秒間)押圧する。これによって、電磁波シールドフィルム200は、プリント配線基板300に仮止め固定される。
【0074】
この際、本実施形態に係るシールド配線基板400は、プリント配線基板300と、本実施形態に係る電磁波シールドフィルム200とが、本実施形態に係る導電性接着剤層100を介して接着されているので、プリント配線基板300(被着体)に対する仮止め工程後の密着性に優れ、仮止め工程後の電磁波シールドフィルム200の位置ずれを防止することができる。このため、電磁波シールドフィルム200がプリント配線基板300に仮止め固定された状態のシールド配線基板400は、最終的な固定を行なうまで、例えば、シールド配線基板400同士を重ねて保管することができる。
【0075】
次いで、2枚の加熱板の温度を、仮止め固定時よりも高温の所定の温度(例えば170℃)とし、所定の圧力(例えば3MPa)で所定時間(例えば30分)加圧する。これによって、電磁波シールドフィルム200をプリント配線基板300に確実に固定できる。
【0076】
<その他の実施形態>
本実施形態に係る導電性接着剤層100は、電磁波シールドフィルムおよびシールド配線基板に限定されず、例えば、フレキシブルプリント配線基板には、ステンレスなどからなる導電性(金属)補強板が貼り付けられるが、その貼り付けに用いることもできる。この場合、導電性(金属)補強板を電磁波に対するシールドとして機能させることができる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例によって本発明を詳細に説明する。以下の実施例は例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0078】
<導電性接着剤の調製工程>
所定のバインダ樹脂を所定の固形分濃度となるように、溶剤としてトルエン又はメチルエチルケトンに溶解させたバインダ樹脂溶液を調製した。得られたバインダ樹脂溶液に、所定の導電性フィラーおよび必要に応じて任意成分を添加し、遊星式攪拌・脱泡装置を用いて混合撹拌することにより、導電性接着剤を調製した。
【0079】
<電磁波シールドフィルムの作製>
支持フィルムとして、厚さが60μmで、表面に離型処理を施したPETフィルムを用いた。支持フィルムの上に、シリカ粒子、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂およびメチルエチルケトンを含む保護層用組成物(固形分量30質量%)を塗布し、加熱乾燥することにより絶縁保護層を形成した。次いで、絶縁保護層の表面に、シールド層として、厚さが0.5μmの銅箔を形成することにより、積層体(基層)を得た。次いで、得られた積層体のシールド層の表面に、前記で調製した導電性接着剤を塗布、乾燥して所定の厚さの導電性接着剤層を形成することにより、電磁波シールドフィルムを得た。
【0080】
前記で得られた電磁波シールドフィルムを用いて、導電性接着剤層の厚さ、表面性状、および被着体に対する仮止め工程後の密着性を以下の方法により、評価した。
【0081】
<導電性接着剤層の厚さ>
導電性接着剤層を形成した後の電磁波シールドフィルムの厚さから、導電性接着剤層を形成する前の積層体の厚さを引いた値を、導電性接着剤層の厚さとした。なお、それぞれの厚さは、マイクロメーター〔(株)ミツトヨ製、商品名:MDH−25〕を用い、JIS C2151に準拠して測定した。
【0082】
<導電性接着剤層の表面性状>
コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、導電性接着剤層の表面の任意の5か所を測定した。この後、データ解析ソフト(LMeye7)を用いて表面の傾き補正を行ない、ISO 25178−6:2010に準拠して、スキューネスSsk、最大山高さSp、および算術平均Saを求めた。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。また、各数値は5か所を測定した値の平均値とした。
【0083】
<被着体に対する仮止め工程後の密着性>
導電性接着剤層の被着体に対する仮止め工程後の密着性を、180°ピール試験により測定した。具体的には、まず、電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層と、被着体として片面銅張積層板〔ニッカン工業(株)製、製品名:F30VC1 25RC1 1/2(H)〕のポリイミド面とを、プレス機を用いて温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPaの条件で仮止め固定することにより、試験用試料を得た。
【0084】
次に、前記で得られた試験用試料を、引張試験機〔(株)島津製作所製、商品名:AGS−X50S〕を用い、室温にて、剥離角度:180°方向に、引っ張り速度:50mm/分で片面銅張積層板側から引き剥がし、その破断時の180°ピール強度(最大値)を測定し、以下の評価基準に基づいて、被着体に対する仮止め工程後の密着性を評価した。
【0085】
(評価基準)
○:180°ピール強度が0.5N/cmでも導電性接着剤層と被着体との界面で剥離しなかった(仮止め工程後における導電性接着剤層と被着体との180°ピール強度が0.5N/cm以上)。
×:180°ピール強度が0.5N/cm未満で導電性接着剤層と被着体との界面で剥離した。
【0086】
(実施例1)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が12μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、10質量%とした。
【0087】
実施例1で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが17μmであり、その表面におけるスキューネスSskが1.10、最大山高さSpが11.87、および算術平均Saが2.30であった。
【0088】
また、実施例1で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が3.23N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0089】
(
参考例1)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が5μm、形状が球状及び楕円状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、30質量%とした。
【0090】
参考例1で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが5μmであり、その表面におけるスキューネスSskが1.50、最大山高さSpが9.38、および算術平均Saが0.55であった。
【0091】
また、
参考例1で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が5.74N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0092】
(実施例3)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が12μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、15質量%とした。
【0093】
実施例3で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが15μmであり、その表面におけるスキューネスSskが2.31、最大山高さSpが12.05、および算術平均Saが1.40であった。
【0094】
また、実施例3で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が2.91N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0095】
(
参考例2)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が6μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、65質量%とした。
【0096】
参考例2で得られた導電性接着剤層(等方性)は、その厚さが15μmであり、その表面におけるスキューネスSskが−0.31、最大山高さSpが1.67、および算術平均Saが0.17であった。
【0097】
また、
参考例2で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が4.50N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0098】
(
参考例3)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が6μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、70質量%とした。
【0099】
参考例3で得られた導電性接着剤層(等方性)は、その厚さが15μmであり、その表面におけるスキューネスSskが−2.47、最大山高さSpが1.66、および算術平均Saが0.15であった。
【0100】
また、
参考例3で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が1.93N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0101】
(
参考例4)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が15μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、70質量%とした。
【0102】
参考例4で得られた導電性接着剤層(等方性)は、その厚さが60μmであり、その表面におけるスキューネスSskが−0.18、最大山高さSpが11.21、および算術平均Saが2.82であった。
【0103】
また、
参考例4で得られた導電性接着剤層は、被着体との界面で剥離したが、その破断時の180°ピール強度が0.5N/cm以上の1.03N/cmであったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が良好であった。
【0104】
(
参考例5)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が8μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、60質量%とした。
【0105】
参考例5で得られた導電性接着剤層(等方性)は、その厚さが15μmであり、その表面におけるスキューネスSskが−2.83、最大山高さSpが3.94、および算術平均Saが1.25であった。
【0106】
また、
参考例5で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が1.85N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め
工程後の密着性が大変良好であった。
【0107】
(
参考例6)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が12μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、70質量%とした。
【0108】
参考例6で得られた導電性接着剤層(等方性)は、その厚さが60μmであり、その表面におけるスキューネスSskが−0.55、最大山高さSpが17.27、および算術平均Saが5.26であった。
【0109】
また、
参考例6で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が4.23N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0110】
(実施例9)
バインダ樹脂として、平均粒径D50が22μmのシリカ粒子を1質量%含有するエポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が12μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、15質量%とした。
【0111】
実施例9で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが36μmであり、その表面におけるスキューネスSskが1.36、最大山高さSpが16.37、および算術平均Saが2.15であった。
【0112】
また、実施例9で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が4.28N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0113】
(実施例10)
バインダ樹脂として、平均粒径D50が22μmのシリカ粒子を2質量%含有するエポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が12μm、形状がデンドライト状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、15質量%とした。
【0114】
実施例10で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが40μmであり、その表面におけるスキューネスSskが1.65、最大山高さSpが22.94、および算術平均Saが2.44であった。
【0115】
また、実施例10で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が4.51N/cmでも被着体との界面で剥離しなかったことから(評価結果:○)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が大変良好であった。
【0116】
(比較例1)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が15μm、形状が球状及び楕円状の銀コート銅粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、5質量%とした。
【0117】
比較例1で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが15μmであり、その表面におけるスキューネスSskが4.05、最大山高さSpが17.81、および算術平均Saが0.98であった。
【0118】
また、比較例1で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が0.5N/cm未満の0.01N/cmで被着体との界面で剥離したことから(評価結果:×)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が不良であった。
【0119】
(比較例2)
バインダ樹脂として、エポキシ系樹脂を用い、導電性フィラーとして、平均粒径D50が23μm、形状が楕円状の銀コートニッケル粉を用いた。導電性接着剤における導電性フィラーの含有率は、35質量%とした。
【0120】
比較例2で得られた導電性接着剤層(異方性)は、その厚さが30μmであり、その表面におけるスキューネスSskが4.01、最大山高さSpが29.54、および算術平均Saが1.63であった。
【0121】
また、比較例2で得られた導電性接着剤層は、180°ピール強度が0.5N/cm未満の0.13N/cmで被着体との界面で剥離したことから(評価結果:×)、被着体に対する仮止め工程後の密着性が不良であった。
【0122】
各実施例および各比較例で用いた導電性フィラーの組成および導電性接着剤層の物性を表1に示す。
【0123】
【表1】
【解決手段】バインダ樹脂110と、導電性フィラー120とを含有する導電性接着剤からなり、表面におけるスキューネスSskが−3.5以上、2.7以下であることを特徴とする。表面における最大山高さSpが1.3μm以上、30μm以下であり、前記導電性フィラーは、平均粒径D50が3μm以上、20μm以下であり、かつ前記導電性接着剤における含有率が10質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。