【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明に係るカバーの構成とその使用方法を、図面及び図面代用写真(以下、図と略称する)に基づいて説明する。
<カバーの基本形態1>
本発明に係るカバーは、手で引っ張れば伸びる薄さの合成樹脂製シートで形成され、該カバーの長手方向に沿うセンターライン上には、被装着者の頭部が辛うじて通る大きさの貫通孔が形成され、該貫通孔に被装着者の頭部を通して被ると、被装着者の少なくとも両肩と腹部とが被われる大きさのカバーとなり、その状態の両肩を被う後側のカバー部分をそのままにして、腹部へ垂れる前側のカバー部分を持ち上げて前記貫通孔から被装着者の顔を露出させると、前記貫通孔の周縁がさらに伸びて被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着する貫通孔となり、さらに腹部から持ち上げて頭髪に被せた前記カバー部分が、頭髪全体を包み込むことができる大きさであることを特徴とする。
【0014】
このカバーは、手で引っ張れば伸びる薄さの合成樹脂製シートで形成されている。具体的には、ポリ袋等に使用されるポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等を素材とした非吸水性のシートである。このポリ袋を素材としたシートは、手で引っ張れば、5倍以上は伸びるが、カバーに形成した貫通孔に頭部を通し、その貫通孔から顔を露出させるためには、0.05mm以下の薄さのシートが好ましい。また、引っ張って伸びた貫通孔は、薄くなって肌に密着するが、そのときの密着性と締め付け力を考慮すると、例えば0.03mmから0.015mmの薄さのシートが好ましい。
【0015】
このシートで形成したカバーに、汚れ防止用のケープとしての機能を持たせる場合は、少なくとも被装着者の腹部と背中を被う大きさにする。具体的には、
図1に示すように、横幅L1を50〜90cm、縦幅L2を70〜100cmの略四角形にし、貫通孔2は、カバー1の長手方向に沿うセンターラインCLの略中央部分に設けておく。
【0016】
また、汚れ防止専用のケープを装着した上からカバーを装着する場合は、エプロンのように被装着者の両肩と腹部を被う大きさのカバーとしても良い。この場合は、
図2に示すように、横幅L1が約50cm、縦幅L2が約70cmの大きさであれば足りる。また、貫通孔2は、センターラインCL上の一端寄りに形成しておく。このときのカバー1の外縁と貫通孔2の周縁までの最短距離MLは、貫通孔2が引き伸ばされても破れない程度の長さ、例えば7〜10cm程で良い。
【0017】
また、
図3に示すように、被装着者の前側に垂らすカバー1の長さLLを90〜100cmに伸ばしておけば、カバー1を装着したときの裾1aを、
図4に示すように、テーブルT上に敷き、その上に鏡Mや薬剤N等を並べて、髪染めを行うこともできる。
【0018】
これらのカバー1に設ける貫通孔2の大きさは、被装着者の頭部が辛うじて通る大きさである。例えばポリ袋を素材としたカバー1では、引っ張れば5倍以上は伸びるから、例えば周囲長が53cmの頭部に対し、貫通孔2の周囲長を略38cmとしておく。そうすれば、小さな貫通孔2に頭部を通すときに、貫通孔2が広がって首に嵌るが、元のサイズには戻らない。この例では、薄さが0.02mmのポリ袋で試したが、カバー1の厚みが厚くなれば、貫通孔2の大きさを大きくする必要がある。例えばカバー1を0.04mmのポリ袋でカバー1を形成した場合は、前述の貫通孔2の周囲長を略40cmに広げておけば、0.03mmの薄さと略同程度の抵抗でもって、小さな貫通孔2に頭部を通すことができる。
【0019】
図1のカバー1を装着するときは、貫通孔2に頭部を入れて被った後、そのカバー1のセンターラインCLを被装着者の前後方向に向ける。すると、
図5に示すように、カバー1でもって被装着者の両腕を除く上半身を被うことができる。これにより、カバー1が頭髪に薬剤を施すときの汚れ防止用ケープになる。また、
図3の長いカバー1を装着するときは、前述のように、貫通孔2に頭部を通した後、丈の長いカバー部分を腹部へ垂らし、その裾1aを、
図4のように、テーブルT上に敷く。これにより、テーブルT上に薬剤等が零れても、ケープとして装着した裾1aをテーブルTの汚れ防止用シートとして機能させることができる。また、
図2の短いカバー1を装着するときは、専用のケープを装着した上から
図2のカバー1を装着する。
【0020】
このようにカバー1を装着してから、頭髪に薬剤を施し、続いて
図6、
図7に示すように、後側のカバー部分は、そのままにして、腹部へ垂れる前側のカバー部分だけを持ち上げて貫通孔2から被装着者の顔を露出させる。すると、貫通孔2の周縁は、さらに伸びて
図8に示すように、被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着する。
【0021】
このとき、腹部へ垂れる前側のカバー部分だけを持ち上げて顔を露出させるため、
図9に示すように、貫通孔2のうなじ側は、伸びながら束になり、貫通孔2の前側は、顔で押し広げられて、
図8のように、平面的に広がった状態で顔周りの肌に密着する。このときの貫通孔2の締め付け力は、不快感を覚えるような強いものではなく、それが伸びて薄くなったことにより、適度な強さと幅とでもって肌に密着する。そのため、薬剤の化学反応によって生じた水が薬剤と混ざって垂れてきても、肌に密着した貫通孔2の周縁がそれを阻止するから、薬剤の混じった水分が顔やうなじに垂れることはない。
【0022】
これに対し、従来のヘアキャップは、髪の生え際に沿う縁部にゴム紐の入ったギャザーが設けられ、そのギャザーをゴム紐の締め付け力によって髪の生え際に押し付けているから、ギャザーの隙間から薬剤等が漏れ出ないようにするには、不快感を覚えるような強い締め付け力でもってギャザーを締め付ける必要がある。これに対し、本発明では、手で引っ張れば伸びる薄さの合成樹脂製シートで形成された貫通孔2が、顔で押し広げられることによって顔周りに密着するから、ヘアキャップのような不快感が無く、貫通孔2周縁からは、薬剤の混じった水分は、漏出しないのである。
【0023】
貫通孔2の形状は、頭部を輪切りにしたような形状が好ましいが、貫通孔2の周縁は、柔軟に伸びるから、例えば円形や卵形であってもよいし、伸びたときの貫通孔2の最終形状である、
図9に示すような、被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに沿った形状の相似形の小さな形状であっても良い。
【0024】
また、量産化に備えて、
図10に示すように、所定幅だけ直線状に切り裂いて、その両端部に小さな丸孔2aを開けた貫通孔2であっても良い。この小さな孔2aは、直線状に切り裂いた貫通孔2を頭部に通すときに、その両端部が裂けるのを防止する孔である。また、
図11の符号2bで示すように、略中央部分の貫通孔2から幅の短い横幅の側縁2cへ向けて切断し、その切断部分2bを部分的に重ねて粘着テープ等で繋ぎ合わせることによって、貫通孔2の周囲長が自在に調整できるようにしても良い。この形態のカバー1をケープとして装着するときは、この切断部分2bを開いて、貫通孔2の周縁を首に巻いて閉じる。閉じた切断部分2bは、伸びる粘着テープや接着剤等で繋ぎ合わせておけば、その切断部分2bは、被装着者の肩の稜線に沿うから、
図6、
図7のように、カバー1の前側を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させた場合は、閉じた切断部分2bが耳の上に被さるから、その切断部分2bから薬剤の化学反応で生じた水分等が漏出することはない。
【0025】
<基本形態1のカバーの使用方法の発明>
これらのカバー1を使用するときは、まず、カバー1の貫通孔2に被装着者の頭部を通し、続いて
図5に示すように、そのカバー1でもって被装着者の少なくとも両肩と腹部とを被い、その状態で被装着者の頭髪に薬剤を施す。続いて腹部に垂れる前側のカバー部分を持ち上げて貫通孔から被装着者の顔を露出させることにより、前記貫通孔の周縁を被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着させ、次に腹部から持ち上げて頭髪に被せた前側の前記カバー部分と、両肩に掛かる後側のカバー部分とで、頭髪全体を包み込むことを特徴とする。
【0026】
具体的に説明すると、
図1や
図3の長いカバー1を使用する場合は、まず、カバー1を広げて貫通孔2に頭部を通し、丈の長いカバー部分で被装着者の腹部が被われるようにカバー1の向きを整える。
図2の短いカバー1の場合は、専用のケープを装着した上から短いカバー1を腹部へ垂らして装着する。この状態で頭髪にヘアカラー剤やトリートメント剤を施す。このとき、被装着者の両肩は、裃の肩衣のように広く開放されているから、一人で行う場合でも、被装着者は、両腕を自由に上げて、頭髪に薬剤を施すことができる。
【0027】
薬剤の塗布が終了すると、腹部に垂れるカバー1(以下、この部分を前側のカバー部分という。)を前方へ持ち上げながら貫通孔2から顔を露出させる。このとき、
図6、
図7に示すように、貫通孔2の後側周縁をうなじに沿わせ、前側のカバー部分を前方へ引き上げながら、顔で貫通孔2を押し広げるようにして顔を露出させる。すると、うなじに沿う貫通孔2の周縁が支点となり、そこから貫通孔2の周縁が伸びて、それが
図8、
図9に示すように、被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着する。このときの貫通孔2の締め付け力は、不快感を覚えるような強いものではなく、適度な強さと幅とでもって顔周りに密着する。続いて、
図9に示すように、腹部から持ち上げて頭髪に被せた前側のカバー部分と後側から持ち上げたカバー部分とを頭部で束ね、束ねた部分を、
図12に示すように、クリップ等で止めて、頭髪全体を包み込む。
【0028】
図2の短いカバー1の場合は、後述の
図25や
図34のカバー1と併用して使用する場合と、単独で使用する場合とがある。単独で使用する場合は、貫通孔2の端から裾1aまでの長さLLを60cm程度にし、横幅L1は90cmから1m程度にし、後側のカバー部分の長さMLは、10cmから30cmあれば良い。包み方は、前側のカバー部分を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させた後、両肩に掛かっていたカバー部分を頭頂部へ持ち上げてくしゃくしゃにすると、自然に後側のカバー部分もうなじから後頭部を被うようになる。その上から、前側のカバー部分を被せる。そして、後ろに垂れる前側のカバー部分の裾1aの両端をうなじから額に回して結ぶ。こうすると、
図2の短いカバー1でも、空気を含ませながら頭髪全体を包み込むことができる。また、
図4のようにテーブルTを被う機能を持たせたいときは、
図3のように貫通孔2から裾までの長さLLを1m程度に延ばせば良い。このときの包み方は、前述と同様であるが、前側のカバー部分1aを中表に折って二重にした状態で、貫通孔2から顔を露出させ、その後は、前述と同様に、二重にした前側のカバー部分を頭部に被せて、後側のカバー部分の両端1bを額に回して結ぶ。すると、より多く空気が含まれて、保温・保湿性能を高めることができる。
【0029】
また、
図3の裾1aの長いカバー1でテーブルTを被ったときは、テーブルTに敷いた裾1aを持ち上げ、中表に折って胸元のカバー部分に重ねても良い。そうすれば、テーブルTに敷いたカバー1が薬剤等で汚れていても、それを胸元で重ねることにより、胸元のカバー部分とカバーの裾1aとの間に薬剤等の汚れを閉じ込めることができる。そして、前述同様、腹部に垂れる前側のカバー部分を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させた後、それをくしゃくしゃにして頭部に被せる。続いて、背中から持ち上げた後側のカバー部分をその上に被せて、上下に重なった前後のカバー部分の周縁を閉じれば、頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。また、これに代えて、前述のように、
図9に示すように、包み込むこともできる。
【0030】
頭髪を包み込むときに、カバー1と薬剤の付着した頭髪との間に空気を含ませると、カバー1内を保温・保湿して、薬剤の浸透効果を促進することができる。例えば
図1、
図3のカバー1の場合は、腹部から持ち上げた前側のカバー部分を頭頂部でくしゃくしゃに束ねてから、その上に後側のカバー部分を被せれば、くしゃくしゃにした部分に空気が含まれ、さらにその上に被せたカバー部分との間にも空気が含まれるから、カバー内の空気が外気からの影響を遮断して、頭皮からの熱によってカバー1内が保温・保湿される。加えて、カバー1内で空気の循環が起き、これによって毛髪温度が均一化され、その結果、薬剤の浸透効果が均一になるとともに、薬剤の乾燥も防止される。また、頭髪がカバー1によって密閉に近い状態で被われるから、薬剤の刺激臭を封じ込めることができる。
【0031】
こうして頭髪全体を包み込めば、貫通孔2の周縁が顔周りに密着し、前後のカバー部分は、裏返しにされて、薬剤等が付着していないために、前開きでない服、例えばTシャツを脱ぐときに、シャツの衿がカバー1に触れても薬剤がシャツに付着することはないし、脱ぐシャツと一緒にカバー1が外れることもない。したがって、家庭で髪を染めるときに前開きの服に着替えるのを忘れていても、慌てることなくTシャツを脱ぐことができる。
【0032】
以上の包み方は、髪を肩下まで垂らさない髪型での包み方であるが、髪を肩から垂らしたままの場合は、垂れた髪を被うことのできる少し長めのカバー1を使用する。そして、
図13に示すように、背中に垂れる後側のカバー部分と、腹部から持ち上げて背中に垂らした前側のカバー部分とで、背中に垂らした頭髪を挟み込むようにする。続いて
図14に示すように、例えば重なった前後のカバー部分の両サイドを中央に折り重ねた後、垂れ下がったカバー1の下端部を持ち上げて、
図15に示すように頭で束ね、束ねた部分をクリップ等で止める。または、背中に垂れ下がるカバー1の下端部を、
図16に示すように、頭部まで持ち上げて被り、その左右両端部を、
図17に示すように顎下で結ぶ。或いは、背中に垂れ下がるカバー1の下端部を肩まで持ち上げて、
図18に示すように、肩掛けのように肩に被せて、両端を喉元で結んでも良い。こうすれば、背中に垂れる頭髪をカバー1内に閉じ込めることができる。
【0033】
<カバーの基本形態2>
次に示すカバーは、基本形態1のカバーにおいて、被装着者の腹部と背中とに分かれて垂れる一方のカバー部分が、上部が開口した袋部に形成され、該袋部は、前記貫通孔の周縁が、被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着した状態において、頭髪全体を包み込むことができる大きさであることを特徴とする。
【0034】
具体的には、このカバー1は、
図19、
図20に示すように、カバー1に形成された貫通孔2に頭部を通して被ると、被装着者の背中と腹部とに分かれて垂れ下がる、上部に開口部3aを備えた一方の袋部3(
図20参照)と、他方の垂れ部4(
図19参照)とを備えている。この袋部3と垂れ部4は、
図19、
図20に示すように、少なくとも被装着者の両肩と腹部とを被う大きさに形成されている。そして、前述と同様に、貫通孔2に頭部を通した後、被装着者の腹部に垂らした垂れ部4又は袋部3を持ち上げて、
図21に示すように、貫通孔2から被装着者の顔を露出させると、
図22、
図23に示すように、貫通孔2の周縁がうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着する。この状態から、背中に垂らした袋部3又は垂れ部4を持ち上げて、袋部3を垂れ部4の上に被せれば、
図24に示すように、袋部3でもって、頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。ここで、ふんわりと包むとは、カバー1を頭髪に押し付けずに、カバー1内に空気を含ませて包むことである。
【0035】
この形態のカバー1は、扁平にすると、
図25に示すように、袋部3が三角形の袋になり、その底辺に開口部3aが形成され、その開口部3aの縁から垂れ部4が続き、その袋部3と垂れ部4の境目中央部分に貫通孔2が形成されている。この
図25のカバー1は、袋部3と垂れ部4を略同じ長さに設定しているが、垂れ部4は、袋部3より短くても長くても良い。また、扁平状態の袋部3は、略三角形になるが、先端をカットした台形でも良いし、四角形でも良い。このカバー1においても、貫通孔2は、被装着者の頭部が辛うじて入る大きさに形成されている。
【0036】
<基本形態2に係るカバーの使用方法の発明>
この形態のカバーを使用するときは、被装着者の頭髪に薬剤を施す前に、前記袋部3の開口部3aを上に向けた状態で貫通孔2に頭部を通し、続いて袋部3と垂れ部4の何れか一方を被装着者の腹部へ垂らし、他方を被装着者の背中に垂らして、被装着者の上半身を被うことを特徴とする。
【0037】
具体的には、
図19、
図20に示すように、袋部3の開口部3aを上に向けた状態で貫通孔2に頭部を通して被り、袋部3を背中に、垂れ部4を腹部に配置する。ただし、その逆の配置でも構わない。何れの配置でも、被装着者の前後に垂らされた袋部3と垂れ部4は、少なくとも被装着者の両肩と腹部を被う大きさであれば良い。したがって、垂れ部4の丈が短いカバー1を使用する場合は、カバー1の下に専用のケープを装着すると良い。
【0038】
続いて頭髪に薬剤を施すが、そのときは、前屈みになって薬剤を施す時に、袋部3を腹部へ垂らしておけば、頭髪から垂れる薬剤を受け止めることができる。また、ロングヘアーの場合は、袋部3を背中に垂らし、その中にロングヘアーを納めて薬剤を塗布することができる。ただし、貫通孔2に被装着者の首が嵌った状態では、貫通孔2を中心にしてカバー1を自在に回動させることができるから、袋部3を腹部に配置するか、背中に配置するかは、被装着者の好みに応じて適宜に変えれば良い。さらに、被ると逆三角錐になる袋部3は、後述するように、頭髪に被せた垂れ部4の上から袋部3を被せる。あるいは、背中に垂らしたままでも、垂れ部4と共に頭髪全体を被うことができるから、前述の基本形態1のカバー1よりは、楽に頭髪を包み込むことができる。さらに、頭部に被せた、または、背中に垂らした袋部3は、三角帽子のように、頂点部分に空気溜りができるから、保温性に優れたカバー1となる。
【0039】
続いて薬剤を施した後、腹部に垂らした袋部3又は垂れ部4を前方へ持ち上げながら貫通孔2から被装着者の顔を露出させて、貫通孔2の周縁を被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着させ、続いて頭部に持ち上げた袋部3と垂れ部4とで、頭髪との間に空気を含ませた状態で頭髪全体を包み込むことを特徴とする。
【0040】
具体的には、カバー1自身で、あるいは汚れ防止専用のケープの上にカバー1を重ねた状態で、頭髪にヘアカラー剤やトリートメント剤を施すが、それが終了すると、
図21のように、腹部に垂れる垂れ部4を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させる。また、逆の配置状態では、腹部の袋部3を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させる。すると、
図22、
図23に示すように、貫通孔2の周縁が被装着者のうなじから耳の下を通って額に至る顔周りに密着する。このときの貫通孔2の締め付け力は、不快感を覚えるような強いものではなく、適度な強さと幅とでもって顔周りに密着することは、前述の通りである。なお、
図22、
図23は、腹部に垂らした垂れ部4を頭部に被せた状態である。
【0041】
続いて、腹部から持ち上げた垂れ部4を頭頂部でくしゃくしゃにして頭部に被せ、その上から
図23、
図24に示すように、背中から持ち上げた袋部3を被せる。逆の場合は、
図26、
図27に示すように、背中から持ち上げた垂れ部4をくしゃくしゃにして頭部に被せ、その上から腹部から持ち上げた袋部3を被せる。このようにして、垂れ部4をくしゃくしゃにして頭部に被せた上に袋部3を被せて頭髪全体をふんわりと包み込むのがポイントである。これにより、くしゃくしゃにした垂れ部4の間だけでなく、垂れ部4とその上に被せる袋部3との間にも空気を含ませることができるから、カバー1内は、前述のように、保温・保湿されて薬剤の浸透効果を促進することができる。
【0042】
また、くしゃくしゃにした垂れ部4の上に袋部3を被せる代わりに、次のような方法によって、カバー1内に空気を含ませることができる。例えば
図25に示すカバー1は、袋部3を背中に配置して、貫通孔2から顔を露出させると、
図28に示すように、舟底に設けた貫通孔2から頭部Hを突き出したような状態になるから、前垂れ部4の縁と
図28の左右に分かれたカバー1の上縁部分Eを重ね合わせて閉じ、閉じたその上縁部分Eを捻じってカバー1内に膨らみを持たせれば、
図29のように、カバー1内に空気を含ませることができる。そして、捻じった先端部を、
図30に示すようにクリップF等で止めると、カバー1内に空気を含ませた状態で薬剤の付着した頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。
【0043】
また、
図30では、捻じった先端部を、クリップFで止めているが、そのクリップFに代えて、
図31に示すように、垂れ部4の腹部と接する裏側、すなわち、垂れ部4を頭部に持ち上げたときに表側となる面にループ状の止め部8を形成しておき、その止め部8に指先で摘んだ
図29の先端部を挿入して止めれば、止め部8から引き出された先端部が抜け難くなって、
図30のクリップFの代わりとすることができる。この止め部8は、ケープとして使用するときの垂れ部4の裏側に、ループを形成するトンネル状のバンドとして取り付けられている。なお、止め部8の位置や大きさ、ループの方向は、
図31に示した位置や方向には限定されない。
【0044】
また、
図31に示す垂れ部4の裾1aを長くして、
図4に示すように、その垂れ部4の裾1aをテーブルT上に敷く場合は、テーブルTに敷いた垂れ部4の裾1aを持ち上げて胸元の垂れ部4の上に重ねる、または、そのままの状態で、
図21に示すように、垂れ部4を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させ、それをくしゃくしゃにして頭部に被せてからその上に背中の袋部3を持ち上げて被せれば、
図24のように、頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。この場合のくしゃくしゃにされた垂れ部4は、略2倍の大きさに膨らむから、その上に袋部3を被せれば、カバー1と頭髪との間には、より分厚い空気層が形成されて、保温・保湿効果を更に高めることができる。
【0045】
また、前述のように、家庭で使用するヘアカラー剤の場合は、プロの施術時のように、キャップやラップフイルムを使用しなくても、染まるように作られたものが多いため、
図32に示すように、腹部から持ち上げた袋部3を頭部に被せた後、
図33に示すように、肩に掛かる左右の両端部3dを顎下で結んだだけでも、刺激臭をカバー1内に閉じ込めて保温・保湿することができる。この場合、貫通孔2の周縁は、額に密着し、そこから袋部3が立ち上がって頭髪を被うから、
図33のように、袋部3を頬被りにすると、袋部3の上部先端部3tと、髪の生え際に沿った部分3eに空気を含ませることができるから、家庭で髪を染める場合は、袋部3を頭部に被せて、カバー1内を密閉に近い状態に保つだけでも、内部の空気層で頭髪が保温・保湿され、毛髪温度の均一化が図られるから、染めムラや色ムラなどを防止して、失敗のない染めを行うことができる。そして、白髪染めの場合では、生え際部分を、カバー1の上から優しく押さえることで薬剤を弾き易い白髪に薬剤を密着させることができ、その状態を保持することができるので、染め残しが気になる生え際部分も失敗無く染めることができる。また、美容室や理容室で使用するプロ用の薬剤を使用する場合でも、薬剤に適した室温のときや、空調の風による影響がないときは、この使用方法であっても、薬剤を浸透させるに十分な環境をカバー1内に作り出すことができる。
【0046】
また、このカバー1は、これまでのヘアキャップのように、上から被せるのではなく、袋部3と垂れ部4とをケープのように装着した状態から、腹部に垂らした袋部3又は垂れ部4を持ち上げて貫通孔2から顔を露出させるから、貫通孔2の周縁を薬剤の付着した頭髪に接触させずに、顔周りの肌に密着させることができる。したがって、ヘアキャップを上から被せるこれまでのやり方と比べると、薬剤の顔への付着を気にせずに装着することができるだけでなく、従来のヘアキャップのように、キャップの周縁からはみ出た髪をヘアキャップ内に入れ直す必要がないから、装着が極めて楽になる。
【0047】
また、カバー1を被装着者の上半身を被う大きさに形成している場合は、頭髪に薬剤を施すときは、汚れ防止用のケープになり、さらに袋部3内に頭髪を納めて薬剤を塗布することもできるから、周囲を汚さない安全性の高いカバー1となる。さらに、垂れ部4の裾1a伸ばして、テーブル上に敷くようにすれば、髪染めのときの薬剤がテーブルに垂れたりしても、それを気にせずに、薬剤を塗布することができる。そして、薬剤塗布時の被装着者の動きにも十分対応できる長さと幅を有しているから、裾1aがテーブルTからずれ落ちる心配もない。さらに、頭髪から垂れる薬剤は、逆三角錐の袋部3内に集めた後、下端部に小さな孔を開けて回収することもできるから、粘性の低いサラサラの薬剤を垂れ流す施術が可能となる。また、袋部3の内側に薬剤が付着していれば、それを拭き取ってから被せることになるが、袋部3が逆三角錐であれば、その中に束ねた垂れ部4を納めて空気を含ませることができるから、背中に垂らしたままの袋部3で簡単に頭髪全体をふんわりと包み込むことができる。
【0048】
<カバーの基本形態3>
次に示す形態のカバーは、
図25.
図31に示す基本形態2のカバーにおいて、前記袋部3と前記垂れ部4との境目である、被装着者の肩の稜線部分に沿って、該カバーの左右両端縁から前記貫通孔に達しないまでの切り込みが設けられていることを特徴とする。
【0049】
具体的には、
図34に示すように、カバー1の袋部3と垂れ部4との境目に、該カバー1の左右両端部から貫通孔2に向けて切り込み5を入れている。この切り込み5位置は、カバー1をケープとして装着したときに、肩の稜線に沿う箇所である。また、その切込み深さは、左右両端縁dから貫通孔2の縁に向けて、縁までの距離Dの1/3〜1/2程度である。この切り込み5を入れることにより、カバー1を装着したときに、袋部3の左右の両端部が垂れ部4の左右の両端部から離れるから、垂らした袋部3の開口部3aを、
図35に示すように、より大きく開かせることができる。特にカバー1が薄くなると、袋部3を垂らしたときに、袋部3を逆三角錐に保持させることが難しくなるが、この切り込み5を入れることにより、薄くて腰の弱いカバー1であっても、袋部3を逆三角錐に保持させることができる。なお、この切り込み5は、好ましくは、両肩に設けるのが良いが、片方の肩に設けただけでも、同様な効果を発揮させることができる。
また、垂れ部4を袋部3と同様な逆三角錐の袋状に形成して、腹部側にも同様な袋部を垂らして薬剤を受けるようにしても良い。
【0050】
また、
図34では、扁平状態の袋部3の開口部3aを円弧状に切り取っているが、必ずしも円弧にする必要はなく、肩の稜線に沿って中程まで直線的に切り込みを入れただけでも良い。また、この袋部3または先端部30を、
図36、
図37に示すように、厚手のシートで形成しておけば、袋部3を逆三角錐に広げたときや頭部に被せるときも、袋部3または先端部30の腰の強さでもって、逆三角錐の形状を保持することができる。
【0051】
この形態のカバー1においても、使用方法は、前述のとおりであるが、特に袋部3を頭部に被せたときは、それが三角帽子になって型崩れし難いから、頭部でくしゃくしゃにした垂れ部4をより簡単に包み込むことができるとともに、頭部に被せた状態でも、背中に垂らした状態でも、袋部3内に空気を多く含ませることができるメリットがある。
【0052】
以上説明したカバー1は、何れも折り畳み可能であるから、これを箱に収納する時は、
図38に示すように、折り畳んで積層した状態で箱Baに収納する。或いは
図39に示すように、帯状に連なった複数枚のカバー1をロール状に巻いた状態で箱Bbに収納して取り出せるようにしておく。そうすれば、
図38では、ティッシュのように一枚ずつ箱Baの開口部から取り出して使用することができる。また、
図39では、ラップフイルムのように箱Bbに収納されたロールからカバー1を一枚分引き出しては、後続のカバー1との境目に形成されたミシン目6で切り離して使用することができる。