(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第nレバー群を構成する所定の前記レバーにおいて前記支点部と各々の前記押下部との間に取り付けられており、前記押下部の押下により前記第n弦がミュートする程度に前記第n弦に接触する弦ミュート部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の弦楽器用コード演奏補助具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の弦楽器用コード演奏補助具においは、所望するコードを構成する1個又は複数の弦押さえはブリッジ・エレメントによって結合していたので、所望するコードが増えることによりブリッジ・エレメントが複雑な形状になったり、複数のブリッジ・エレメントが交差する形状になったりした場合、押下力が弦押さえに均一に加わらない。その結果、ある弦押さえに加わる押下力が必要な押下力よりも弱い場合、的確なコード演奏を行うことが極めて困難であるという問題があった。
【0006】
また、従来の弦楽器用コード演奏補助具においては、指キーは所望のコードを構成する1個又は複数の弦押さえに囲まれた位置に取り付けられていることもあった。そのため、ばねレバーにおいて、ベース手段から指キー(力点)までの距離がベース手段から弦押さえ(作用点)までの距離よりも短くなることがあるので、演者は指キーに対して通常の運指位置にて弦を押さえるよりも大きな力を加えなければならない。これにより、弦押さえが不得手な初心者の演者に対して大きな指の力を強いることになる。その結果、ある弦押さえに加わる押下力が必要な押下力よりも弱い場合、的確なコード演奏を妨げることになるという問題があった。
【0007】
また、従来の弦楽器用コード演奏補助具においては、ブリッジ・エレメントを介して指キーの押下力を弦押さえに適切に伝えるために、指キーの位置は弦押さえ及びブリッジ・エレメントの形状や位置関係に応じて必然的に決められてしまっていた。つまり、指キーの位置を任意に決めることができないため、演者はランダム配置された指キーの位置を覚えなければならないという問題があった。
【0008】
また、従来の弦楽器用コード演奏補助具においては、従来の構成により演奏容易性等の観点から上記以外の種々の問題があった。
【0009】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、所望するコードの運指を覚えておらず押下力の弱い演奏初心者であっても多数のコードを容易かつ正確に演奏することができる弦楽器用コード演奏補助具を提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)前述した目的を達成するため、本発明の弦楽器用コード演奏補助具は、N本の弦(N:正の整数)が指板の長さ方向に張られた弦楽器の第n弦(n:1≦n≦Nを満たす正の整数)に沿って延びる複数本のレバーを指板の幅方向に配列してなる第nレバー群と、指板に対する接離方向DDにレバーを移動自在にしながら第nレバー群の一端を支持する支点部と、レバーの他端側に配置されており、弦楽器の演者による押下に応じて指板に近づく方向にレバーを押下する押下部と、第nレバー群を構成する各々のレバーにおいて支点部と各々の押下部との間の運指位置に取り付けられており、押下部の押下に応じて第n弦を押下する複数の弦押さえ部と、押下部への押下がないときに第n弦と第n弦を押下する複数の弦押さえ部とを離す位置にレバーを制御する位置制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
これにより、1本の弦における運指位置の数に応じてレバーの数を各々増やすことができるので、それらレバーに取り付けられた弦押さえ部に対応する運指位置により構成されるコードの数を増やすことができる。また、各レバーにおいて、支点部から押下部(力点)までの距離が支点部から弦押さえ部(作用点)までの距離よりも長いので、演者の押下力よりも大きな力で弦を押さえることができる。
【0012】
(2)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具において、所望のコードを演奏するために押下される複数本のレバーに各々配置された複数の押下部は、指板の幅方向に直線状に配置されていることが好ましい。
【0013】
これにより、直線状に配置された複数の押下部を、演者の指の先からその付け根までの細長い面を使って演者の指一本で押下することができる。
【0014】
(3)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具は、演者の操作に応じてすべての押下部を同時押下させる集中押下部と、を備えており、集中押下部は、所望のコードの数だけ指板の長さ方向に直線状に配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、1個の集中押下部により複数の押下部を同時押下することができるので、演者の指先を使って演者の指一本で集中押下部を押下することができる。また、複数の集中押下部が直線状に配置されているので、演者の各指を大きく移動させることなく各々の集中押下部を操作することができる。
【0016】
(4)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具において、第nレバー群に配置された押下部及び弦押さえ部は、複数本のレバーに挟まれた位置に各々取り付けられていることが好ましい。
【0017】
これにより、押下方向に対する斜め方向に押下部を押下したとしても、押下部及び弦押さえ部を挟んだ状態で取り付けた2本以上のレバーが互いに支えあうことによって押下によるねじれを抑制してレバーの移動を押下方向に限定するので、弦押さえ部による押下操作を安定させることができる。
【0018】
(5)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具は、指板の幅方向における複数本のレバーの間に設けられる一部又は全部の隙間に配置されており指板の直交方向に延在するガイド部と、を備えることが好ましい。
【0019】
これにより、押下方向に対する斜め方向に押下部を押下したとしても、その押下部が取り付けられたレバーに隣位するガイド部がレバーの横ずれを抑制しながらレバーの移動を押下方向に限定するので、弦押さえ部による押下操作を安定させることができる。
【0020】
(6)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具は、第nレバー群を構成する所定のレバーにおいて支点部と各々の押下部との間に取り付けられており、押下部の押下により第n弦がミュートする程度に第n弦に接触する弦ミュート部と、を備えることが好ましい。
【0021】
これにより、所望のコードの演奏に不要な弦を演者が意図せず弾いてしまったとしても、その不要な弦から奏でる不要音を消すことができる。
【0022】
(7)また、本発明の弦楽器用コード演奏補助具において、レバーは、レバーの延在方向と押下方向との直交方向を法線とする平面状に形成されていることが好ましい。
【0023】
これにより、押下部による押下方向に対してレバーの強度を高めながらレバーの幅寸法が極めて小さくなるので、指板の幅方向に配列される第nレバー群の複数本のレバーの本数を増やすことができる。これにより、弦押さえ部及び押下部の数を増やすことができるので、演奏を所望するコードの数を増やすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の弦楽器用コード演奏補助具によれば、所望するコードの運指を覚えておらず押下力の弱い演奏初心者であっても多数のコードを容易かつ正確に演奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1を説明する。
【0027】
[1]構成
(1)弦楽器用コード演奏補助具1
本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、
図1及び
図2に示すように、ギターやウクレレなどのN本(N:正の整数)の弦10nが指板150の長さ方向LDに張られた弦楽器に用いられる。例えば、本実施形態の弦楽器は、6本(N=6)の弦101〜106がネック151上に設けられた指板150の長さ方向LDに張られた6弦ギターと仮定する。また、例えば、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、弦楽器のネック151の第1〜3フレット161〜163において弦101〜106を押さえるローコードの演奏に用いられると仮定する。
【0028】
また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、
図1に示すように、筐体10と、固定部19と、を備える。
【0029】
本実施形態の筐体10は、指板150の長さ方向LDに延びる直方体状に形成されており、指板150の対向面(
図1においては下面)の全面及びその反対面(
図1においては上面11)におけるネック151のボディ側153の一部の面が集中押下部6の操作に支障がない程度の大きさだけ開放されている。筐体10における指板150の幅方向WDに配置された2つ側面(
図1においては第1弦側側面15及び第6弦側側面14)は、各弦10nに接触させずにネック151における第1弦101及び第6弦106側の両側面又は指板150に接触する大きさ及び位置になっている。
【0030】
本実施形態の固定部19は、各弦10nに接触させずに筐体10をネック151に固定する。これら固定部19は、ゴム製、革製、プラスティック製その他の筐体10をネック151に固定するために必要な剛性及び弾性を有する固定帯であり、筐体10における指板150の長さ方向LDの両端(筐体10におけるヘッド側側面12付近の端部及びボディ側側面13付近の端部)にそれぞれ配置されている。
【0031】
さらに、この弦楽器用コード演奏補助具1は、
図1〜
図8に示すように、その筐体10の内部に、複数本のレバー2を各々有する複数のレバー群2nと、ガイド部3と、支点部4と、押下部5と、集中押下部6と、弦押さえ部7と、弦ミュート部8と、位置制御部9と、を備えている。
【0032】
(2)レバー群2n
第nレバー群2n(n:1≦n≦Nを満たす正の整数)は、
図2及び
図3に示すように、指板150の長さ方向LDに延びる複数本のレバー2を指板150の幅方向WDに配列してなる。これら第nレバー群2nは、第n弦10nの上方において、弦楽器の第n弦10nに沿って延びる。
【0033】
本実施形態の第nレバー群2nは、第1〜6レバー群21〜26といったように6弦ギターの全弦101〜106に設けられてもよいし(n=1〜6のすべての正の整数)、図示はしないが第4〜6レバー群24〜26のみといったように一部の弦10nに設けられてもよい(n=1〜6のいずれかの1個又は2個以上の正の整数)。
【0034】
本実施形態のレバー2は、レバー2の延在方向(本実施形態においては指板150の長さ方向LD)と指板150に対する接離方向DD(本実施形態においては押下方向PD)との直交方向を法線とする平面状に形成されていることが好ましい。平面状のレバー2は、演者の押下力に負けない程度の高い剛性を持つ金属又は樹脂により形成されていることが好ましい。
【0035】
レバー2の本数は、弦押さえ部7及び弦ミュート部8の合計個数に対して2倍以上の偶数個であることが好ましい。本実施形態の弦押さえ部7及び弦ミュート部8の合計個数は4個であるため、本実施形態のレバー2は各弦10nに対して8本ずつ配列されている。
【0036】
以下、第nレバー群2nにおいて第1弦101から第6弦106へ向かう方向に配列された8本のレバー2をnaレバー2na〜nhレバー2nhという。例えば、第2レバー群22において第1弦101側から数えて第3番目に配列されたレバー2を2cレバー22cという。
【0037】
(3)ガイド部3
ガイド部3は、指板150の幅方向WDにおける複数本のレバー2の間に設けられる一部又は全部の隙間に配置されている。このガイド部3は、指板150の直交方向(離接方向DD)に延在している。
【0038】
本実施形態のガイド部3は、レバー2と同様、レバー2の延在方向(本実施形態においては指板150の長さ方向LD)と指板150に対する接離方向DD(本実施形態においては押下方向PD)との直交方向(本実施形態においては指板150の幅方向WD)を法線とする平面状に形成されていることが好ましい。平面状のガイド部3は、レバー2と同様、演者の押下力に負けない程度の剛性を持つ金属又は樹脂により形成されていることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態のガイド部3は、第nレバー群2nとガイド部3との合計幅寸法を小さくしつつガイド部3のガイド機能を好適に発揮させるため、指板150の幅方向WDにおいて第nレバー群2nを構成する複数本のレバー2の中間に設けられる隙間(例えば、本実施形態の第nレバー群2nが8本のレバー2により構成されている場合には4本目のndレバーと5本目のneレバーとの間に設けられる隙間)、各レバー群2nの間に設けられる隙間(例えば、本実施形態の第1レバー群21と第2レバー群22との間に設けられる隙間)、両側に位置する最外側の第nレバー群と筐体の側面との間に設けられるそれぞれの隙間(本実施形態においては、第1レバー群21と筐体の第1弦側側面15との間に設けられる隙間、及び、第6レバー群26と筐体の第6弦側側面14との間に設けられる隙間)、にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0040】
(4)支点部4
支点部4は、指板150に対する接離方向DDにレバー2を移動自在にしながら第nレバー群2nの一端を支持する。
【0041】
本実施形態の支点部4は、全てのレバー2の一端側(本実施形態においてはネックのヘッド側152)において指板150の幅方向WDからレバー2を貫通する貫通孔41と、ネックのヘッド側152において筐体10の第1弦側側面15及び第6弦側側面14に支持されながら貫通孔41を貫通する丸棒状のピン42と、により構成された回転支点であることが好ましい。
【0042】
(5)押下部5
押下部5は、弦楽器の演者による押下に応じて指板150に近づく方向(押下方向PD)にレバー2を押下する。以下、第nレバー群2nにおいて第1〜3フレット161〜163上に取り付けられた弦押さえ部7を押下する押下部5をn1押下部5n1〜n3押下部5n3という。また、第nレバー群2nに取り付けられる弦ミュート部8を押下する押下部5をnm押下部5nmという。例えば、第2レバー群22において第3フレット163上に取り付けられた弦押さえ部7を押下する押下部5を23押下部523といい、第3レバー群23に取り付けられる弦ミュート部8を押下する押下部5を3m押下部53mという。
【0043】
なお、本明細書において「フレット上」というのは、フレットの真上だけではなく、その近傍も含むフレットの上方であってコードに運指に適切な位置を意味する。例えば、本実施形態の弦押さえ部7が位置する「フレット上」とは、
図2〜4に示すように、フレットの真上よりもヘッド側にずれた位置を意味する。
【0044】
本実施形態の押下部5は、レバー2の他端側(本実施形態においてはネック151のボディ側153)に複数個配置されている。本実施形態の押下部5は、例えばギターの第7〜第15フレット上で好適な位置に配置されている。これらの押下部5は、1本の弦押さえ部7に対して複数個配置することができる。押下部5の個数は、弦押さえ部7の個数ではなく、演奏を所望するコード数に応じて決められる。そのため、第1レバー群21において第1フレット161上に取り付けられた弦押さえ部7を使用するコードが3個ある場合、それを押下する11押下部511が第1レバー群21に3個配置される。
【0045】
また、第nレバー群2nに配置された押下部5は、複数本のレバー2に挟まれた位置に各々取り付けられていることが好ましい。例えば、本実施形態の第nレバー群2nに配置された複数の押下部5は、
図3及び
図4に示すように、8本のレバー2のうちの4組の2本のレバー2(naレバー2na〜nhレバー2nhのうち、naレバー2na及びneレバー2ne、nbレバー2nb及びnfレバー2nf、ncレバー2nc及びngレバー2ng並びにndレバー2nd及びnhレバー2nh)に挟まれた位置において、それら各2本のレバー2を上方から接続する断面U字ブリッジ形状に各々形成されている。ブリッジ状の押下部5は、演者の押下力に負けない程度の高い剛性を持つ金属又は樹脂によりレバー2と一体に形成されていることが好ましい。
【0046】
また、所望のコードを演奏するために押下される複数本のレバー2に各々配置される複数の押下部5は、指板150の幅方向WDに直線状に配置されていることが好ましい。例えば、
図4及び
図5に示すように、第1弦101の第1フレット161のファ音、第2弦102の第3フレット163及び第4弦104のレ音、第3弦103の第2フレット162及び第5弦105のラ音並びに第6弦106のミュートで構成されるコードDmをギターで演奏する場合、3個の弦押さえ部7及び1個の弦ミュート部8はコードDmの運指位置に応じて指板150の幅方向WDに非直線状に配置されている。しかし、それら3個の弦押さえ部7及び1個の弦ミュート部8を各弦10nに押下する4個の押下部5(11押下部511,23押下部523,32押下部532,6m押下部56m)は、
図4に示すように、指板150の幅方向WDに対して直線状に配置されている。なお、上記の場合、第4弦104及び第5弦105は開放弦であって弦の押下が不要であるため、上記した4個の押下部5の配列直線上に第4レバー群24及び第5レバー群25の押下部5は配置されない。
【0047】
(6)集中押下部6
集中押下部6は、
図1及び
図2に示すように、指板150の幅方向WDに対して直線状に配置されたすべての押下部5を演者の操作に応じて同時押下させる。本実施形態の集中押下部6は、指板150の幅方向WDに直線状に延びるカンチレバー2状に形成されており、指板150の幅方向WDに直線配置されたすべての押下部5の上に配置されている。カンチレバー2状の集中押下部6の一端は筐体10の第6弦側側面14に固定されており、その集中押下部6の他端は第1弦側側面15の付近において演者の指で押下しやすい円板のようなボタン状に形成されている。
【0048】
また、集中押下部6は、
図1に示すように、所望のコードの数だけ指板150の長さ方向LDに直線状に配置されていることが好ましい。本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1がギターの第1〜3フレット161〜163間で構成される様々なコード(例えば
図5に示すC,F,G7,Am,Dm,E及びEmの7個のコード)の演奏を補助する場合、その数と同じ個数(例えば
図1及び
図5では7個)の集中押下部6のボタンが指板150の長さ方向LDに一直線状に配置されている。
【0049】
なお、上記と異なりコード数が何十もの多数になる場合や、集中押下部6の操作性をさらに向上させる場合、アコーディオンのボタン配置のように、集中押下部6のボタンが複数列の直線状に配置されていてもよい。
【0050】
(7)弦押さえ部7
複数の弦押さえ部7は、
図2及び
図3に示すように、押下部5の押下に応じて第n弦10nを押下する。これら複数の弦押さえ部7は、第nレバー群2nを構成する各々のレバー2において支点部4と各々の押下部5との間の運指位置(本実施形態においてはフレット上)に取り付けられている。本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1はギターの第1〜3フレット161〜163間で構成される様々なコード(例えば
図5に示す7個のコード)の演奏を補助する。そのため、本実施形態の弦押さえ部7が第1〜3フレット161〜163上のいずれかに配置されている場合、第nレバー群2nに取り付けられる弦押さえ部7の個数は0〜3個である。
【0051】
また、第nレバー群2nに配置された弦押さえ部7は、複数本のレバー2に挟まれた位置に各々取り付けられていることが好ましい。例えば、本実施形態の第nレバー群2nに配置された複数の弦押さえ部7は、
図3及び
図4に示すように、8本のレバー2のうちの3組の2本のレバー2(naレバー2na〜nhレバー2nhのうち、nbレバー2nb及びnfレバー2nf、ncレバー2nc及びngレバー2ng並びにndレバー2nd及びnhレバー2nh)に挟まれた位置に設けられている。その場合の弦押さえ部7は、それら各2本のレバー2から指板150に向かって下方に伸びる三角プレート状の支持部71と、指板150に対向する2個の支持部71の先端を接続するゴム製、フェルト製、プラスティック製その他の弦の剛性に負けない程度の剛性を有する素材のパッド部72と、により構成されている。弦押さえ部7の支持部71は、レバー2と同素材で一体形成されていることが好ましい。
【0052】
以下、第nレバー群2nにおいて第1〜3フレット161〜163上に取り付けられた3個の弦押さえ部7をn1〜n3弦押さえ部7n1〜7n3という。例えば、第2レバー群22において第3フレット163上に取り付けられた弦押さえ部7を23弦押さえ部723という。
【0053】
(8)弦ミュート部8
弦ミュート部8は、押下部5の押下により第n弦10nがミュートする程度に第n弦10nに接触する。この弦ミュート部8は、
図2及び
図3に示すように、第nレバー群2nを構成する所定のレバー2において支点部4と各々の押下部5との間に取り付けられている。本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1はギターの第1〜3フレット161〜163間で構成される様々なコード(例えば
図5に示す7個のコード)の演奏を補助する。本実施形態の弦押さえ部7が第1〜3フレット161〜163上に配置されており、押下部5が第7〜第15フレット上に配置されている場合、弦ミュート部8は第4〜第6フレット上に配置されている。
【0054】
また、第nレバー群2nに配置された弦ミュート部8は、複数本のレバー2に挟まれた位置に取り付けられていることが好ましい。例えば、本実施形態の第nレバー群2nに配置された弦ミュート部8は、
図2及び
図3に示すように、8本のレバー2のうちの1組の2本のレバー2(naレバー2na〜nhレバー2nhのうちnaレバー2na及びneレバー2ne)に挟まれた位置に設けられている。その場合の弦ミュート部8は、2本のレバー2から指板150に向かって伸びる三角プレート状の支持部81と、指板150に対向する2個の支持部81の先端を接続するフェルト製、ゴム製その他の弦の振動を抑える制振素材の制振部82と、により構成されている。弦ミュート部8の支持部81は、レバー2と同素材で一体形成されていることが好ましい。
【0055】
以下、第nレバー群2nに取り付けられた弦ミュート部8を第n弦ミュート部8nmという。例えば、第2レバー群22に取り付けられた弦ミュート部8を第2弦ミュート部82mという。
【0056】
(9)位置制御部9
位置制御部9は、押下部5への押下がないときに第n弦10nを押下する複数の弦押さえ部7と第n弦10nとを離す位置にレバー2を制御する。
【0057】
本実施形態の位置制御部9としては、2つの具体例が挙げられる。その一例として、本実施形態の位置制御部9は、
図6に示すように、第nレバー群2nにおけるレバー2の他端側(例えばギターの第7〜第15フレット上)に複数個配置されている。この位置制御部9は、基礎部91と、ストッパ92と、ばね部93と、により構成されていることが好ましい。
【0058】
基礎部91は、第nレバー群2nにおいて複数本のレバー2に挟まれた位置に各々取り付けられていることが好ましい。例えば、本実施形態の第nレバー群2nに配置された複数の基礎部91は、押下部5と同様、8本のレバー2のうちの4組の2本のレバー2(naレバー2na〜nhレバー2nhのうち、naレバー2na及びneレバー2ne、nbレバー2nb及びnfレバー2nf、ncレバー2nc及びngレバー2ng並びにndレバー2nd及びnhレバー2nh)に挟まれた位置において、それら各2本のレバー2を下方から接続する断面U字ブリッジ形状に各々形成されている。ブリッジ状の基礎部91は、演者の押下力に負けない程度の高い剛性を持つ金属又は樹脂によりレバー2と一体に形成されていることが好ましい。
【0059】
ストッパ92は、例えば金属棒など、レバー2の押し下げ移動量を制限する部材である。ストッパ92が棒の場合、基礎部91の下部中央から指板150に向かって下方に延びている。当然のことながら、ストッパ92は各弦10nに接触しないように配置される。ストッパ92の長さは、レバー2に取り付けられた弦押さえ部7が弦10nを指板150まで押し下げるレバー2の移動量、又は、レバー2に取り付けられた弦ミュート部8が弦10nに接触する程度のレバー2の移動量、と同程度となっている。
【0060】
ばね部93は、例えばコイルバネなど、レバー2の押下力に対する反力を生み出す部材である。ばね部93が基礎部91に固定されたコイルバネであり、ストッパ92が上記の棒である場合、ばね部93は、ストッパ92の長さよりも長く、基礎部91と指板150との間に介在する位置であってストッパ92と同軸上に配置されている。当然のことながら、ばね部93は各弦10nに接触しないように配置される。
【0061】
また、他の一例として、本実施形態の位置制御部9は、
図7及び
図8に示すように、第nレバー群2nにおけるレバー2の他端側であって全ての押下部5よりも筐体のボディ側側面13に近い位置(例えばギターの第16〜第18フレット上)に複数個配置されている。この位置制御部9は、基礎部91と、ストッパ92と、ばね部93と、底面部94と、により構成されていることが好ましい。なお、基礎部91、ストッパ92及びばね部93において上記した位置制御部9の一例と同様の構成については以下でその説明を省略する。
【0062】
基礎部91は、下方に凸となるブリッジ状に形成されており、その中央付近において長さ方向LDに延びる楕円孔91aを有する。
【0063】
ストッパ92は、棒状に形成されており、基礎部91の楕円孔91aを貫通している。このストッパ92における指板150側の端部は底面部94に固定されており、底面部94から上方に起立している。このストッパ92の長さは、レバー2が上方に最大限移動したときもストッパ92が基礎部91の楕円孔91aを貫通する状態を維持する程度の長さに設定されている。また、このストッパ92は、その反対の端部に基礎部91の楕円孔91aの短径よりも大きな頭部を有している。
【0064】
ばね部93は、ストッパ92によって貫通された状態で、基礎部91と底面部94との間に挟まれている。
【0065】
筐体部94は、金属製その他の押下部5を介して入力される押下力に負けない程度の剛性を有する素材を用いて平面状に形成されている。底面部94は、長さ方向LDにおいて、筐体のボディ側側面13からレバー2の下方まで延びている。また、この底面部94は、
図8に示すように、弦押さえ部7が弦10nを押下する位置又は弦ミュート部8が弦10nをミュートする位置のどちらかまでレバー2を押し下げたときに、そのレバー2の下方が底面部94に接触する高さに配置されている。また、この底面部94は、筐体10の幅寸法と同様になっており、筐体の第6弦側側面14の内側及び筐体の第1弦側側面15の内側に固定されている。
【0066】
押下部5を介してばね部93の弾性力よりも大きな力でレバー2が押下されると、ばね部93が縮められながらレバー2が下方に押し下げられる。ストッパ92がばね部93の中央に介在しているため、縮められたばね部93は長さ方向LDや幅方向WDに逃げることができない。レバー2が底面部94に接触すると、レバー2の下方移動が終了する。そのレバー2の位置は、弦押さえ部7が弦10nを押下する位置又は弦ミュート部8が弦10nをミュートする位置のどちらかである。
【0067】
また、レバー2への押下力が除かれると、ばね部93の弾性力によりレバー2は上方に移動する。ばね部93の大きな弾性力やその他の何らかの不具合によりレバー2が既定の上方移動量よりも大きく上方に移動した際、そのレバー2の上方移動をストッパ92の頭部が制限する。仮に、ストッパ92の頭部がなくても、レバー2の他端側(ボディ側)においてレバー2の上方に位置する筐体の上面11がそのレバー2の上方移動を制限する。
【0068】
[2]使用方法
図5で示すように、ギターの第1〜3フレット161〜163間で構成されるC,F,G7,Am,Dm,E及びEmの7個のコード演奏を補助する場合、
図1に示すように、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1における集中押下部6が7個設けられる。
【0069】
例えば、演者がコードDmに対応する集中押下部6(Dm集中押下部6Dm)を押下すると、
図2及び
図4に示すように、その集中押下部6の下に直線状に配置された4個の押下部5(11押下部511,23押下部523,32押下部532,6m押下部56m)が押下される。
【0070】
これら4個の押下部5は、第1レバー群21、第2レバー群22、第3レバー群23及び第6レバー群26のうちの所定のレバー2(1dレバー21d及び1hレバー21h、2bレバー22b及び2fレバー22f、3cレバー23c及び3gレバー23g,6aレバー26a及び6eレバー26e)を介して、3個の弦押さえ部7及び1個の弦ミュート部8(11弦押さえ部711,23弦押さえ部723,32弦押さえ部732,第6弦ミュート部86m)に接続されている。そのため、上記した4個の押下部5(11押下部511,23押下部523,32押下部532,6m押下部56m)が押下されると、3個の弦押さえ部7及び1個の弦ミュート部8(11弦押さえ部711,23弦押さえ部723,32弦押さえ部732,第6弦ミュート部86m)が第1弦101の第1フレット161の運指位置(ファ音)、第2弦102の第3フレット163の運指位置(レ音)及び第3弦103の第2フレット162の運指位置(ラ音)を押さえつつ、第6弦106をミュートする。
【0071】
これにより、演者が一方の手の指1本でDm集中押下部6Dmを押下すると、一方の手の複数の指でコードDmを構成する各弦の運指位置を押さえた状態と同じになる。Dm集中押下部6Dmの下に配置された4個の押下部5(11押下部511,23押下部523,32押下部532,6m押下部56m)から支点部までの距離が3個の弦押さえ部7及び1個の弦ミュート部8(11弦押さえ部711,23弦押さえ部723,32弦押さえ部732,第6弦ミュート部86m)から支点部までの距離よりも長いので、弦押さえ部7が弦を押さえる力よりも小さな力で押下部5を押下することができる。この状態で他方の手で全弦10nを弾くと、演者は指1本でコードDmを正確に演奏することができる。これは、7個のコードのうちの他のコードでも同様に指1本で正確に演奏することができる。
【0072】
その際、集中押下部6に接続する押下部5の押下量は位置制御部9により制限されているので、押下部5を所定量だけ押下すると押下部5の移動が止まる。また、押下部5への押下力を抜くと位置制御部9によりレバー2が指板150から離れる方向に移動するので、弦押さえ部7及び弦ミュート部8は弦10nから離れる。
【0073】
また、押下部5が押下方向PDに直交する指板150の幅方向WDに押された場合、ガイド部3がその方向へのレバー2の移動を制限する。そのため、誤作動で、押下方向PD以外の方向に押下部5が押されたとしても、レバー2は押下方向PDにのみ移動し、弦押さえ部7及び弦ミュート部8は正確に弦10nを押さえる。
【0074】
[3]効果
次に、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1の効果を説明する。
【0075】
(1)本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、N本の弦(N:正の整数)が指板150の長さ方向LDに張られた弦楽器の第n弦(n:1≦n≦Nを満たす正の整数)10nに沿って延びる複数本のレバー2を指板150の幅方向WDに配列してなる第nレバー群2nと、指板150に対する接離方向DDにレバー2を移動自在にしながら第nレバー群2nの一端を支持する支点部4と、レバー2の他端側に配置されており、弦楽器の演者による押下に応じて指板150に近づく方向にレバー2を押下する押下部5と、第nレバー群2nを構成する各々のレバー2において支点部4と各々の押下部5との間の運指位置に取り付けられており、押下部5の押下に応じて第n弦10nを押下する複数の弦押さえ部7と、押下部5への押下がないときに第n弦10nと第n弦10nを押下する複数の弦押さえ部7とを離す位置にレバー2を制御する位置制御部9と、を備えていることを特徴とする。
【0076】
これにより、1本の弦における運指位置の数に応じてレバー2の数を各々増やすことができるので、それらレバー2に取り付けられた弦押さえ部7に対応する運指位置により構成されるコードの数を増やすことができる。また、各レバー2において、支点部4から押下部5(力点)までの距離が支点部4から弦押さえ部7(作用点)までの距離よりも長いので、演者の押下力よりも大きな力で弦10nを押さえることができる。
【0077】
(2)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1において、所望のコードを演奏するために押下される複数本のレバー2に各々配置された複数の押下部5は、指板150の幅方向WDに直線状に配置されていることが好ましい。
【0078】
これにより、直線状に配置された複数の押下部5を、演者の指の先からその付け根までの細長い面を使って演者の指一本で押下することができる。
【0079】
(3)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、演者の操作に応じてすべての押下部5を同時押下させる集中押下部6と、を備えており、集中押下部6は、所望のコードの数だけ指板150の長さ方向LDに直線状に配置されていることが好ましい。
【0080】
これにより、1個の集中押下部6により複数の押下部5を同時押下することができるので、演者の指先を使って演者の指一本で集中押下部6を押下することができる。また、複数の集中押下部6が直線状に配置されているので、演者の各指を大きく移動させることなく各々の集中押下部6を操作することができる。
【0081】
(4)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1において、第nレバー群2nに配置された押下部5及び弦押さえ部7は、複数本のレバー2に挟まれた位置に各々取り付けられていることが好ましい。
【0082】
これにより、押下方向PDに対する斜め方向に押下部5を押下したとしても、押下部5及び弦押さえ部7を挟んだ状態で取り付けた2本以上のレバー2が互いに支えあうことによって押下によるねじれを抑制してレバー2の移動を押下方向PDに限定するので、弦押さえ部7による押下操作を安定させることができる。
【0083】
(5)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、指板150の幅方向WDにおける複数本のレバー2の間に設けられる一部又は全部の隙間に配置されており指板150の直交方向に延在するガイド部3と、を備えることが好ましい。
【0084】
これにより、押下方向PDに対する斜め方向に押下部5を押下したとしても、その押下部5が取り付けられたレバー2に隣位するガイド部3がレバー2の横ずれを抑制しながらレバー2の移動を押下方向PDに限定するので、弦押さえ部7による押下操作を安定させることができる。
【0085】
(6)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、第nレバー群2nを構成する所定のレバー2において支点部4と各々の押下部5との間に取り付けられており、押下部5の押下により第n弦10nがミュートする程度に第n弦10nに接触する弦ミュート部8と、を備えることが好ましい。
【0086】
これにより、所望のコードの演奏に不要な弦を演者が意図せず弾いてしまったとしても、その不要な弦から奏でる不要音を消すことができる。
【0087】
(7)また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1において、レバー2は、レバー2の延在方向と押下方向PDとの直交方向を法線とする平面状に形成されていることが好ましい。
【0088】
これにより、押下部5による押下方向PDに対してレバー2の強度を高めながらレバー2の幅寸法が極めて小さくなるので、指板150の幅方向WDに配列される第nレバー群2nの複数本のレバー2の本数を増やすことができる。これにより、弦押さえ部7及び押下部5の数を増やすことができるので、演奏を所望するコードの数を増やすことができる。
【0089】
すなわち、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具によれば、所望するコードの運指を覚えておらず押下力の弱い演奏初心者であっても多数のコードを容易かつ正確に演奏することができる。
【0090】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、ギター以外の弦楽器に対しても本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具を用いることができる。また、本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具は、レバー、弦押さえ部、押下部等所望のコードに対応する部材の個数を増やすことにより、第1〜3フレットよりも大きなフレットを使用する他のコードの演奏にも使用可能である。
【課題】所望するコードの運指を覚えておらず押下力の弱い演奏初心者であっても多数のコードを容易かつ正確に演奏することができる弦楽器用コード演奏補助具を提供すること。
【解決手段】本実施形態の弦楽器用コード演奏補助具1は、第n弦(n:1≦n≦Nを満たす正の整数)101〜106に沿って延びる複数本のレバー2を配列してなる第nレバー群2nと、第nレバー群2nの一端を支持する支点部4と、レバー2の他端側に配置された押下部5と、支点部4と押下部5との間の運指位置に取り付けられた弦押さえ部7と、を備えていることを特徴とする。