特許第6432019号(P6432019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6432019
(24)【登録日】2018年11月16日
(45)【発行日】2018年12月12日
(54)【発明の名称】処置具挿入補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20181203BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20181203BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20181203BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20181203BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20181203BHJP
【FI】
   A61B1/00 650
   A61B17/34
   A61M25/092 500
   A61M25/14 512
   A61M25/10 520
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-557818(P2015-557818)
(86)(22)【出願日】2015年1月9日
(86)【国際出願番号】JP2015050500
(87)【国際公開番号】WO2015107994
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-5415(P2014-5415)
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−511247(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/063904(WO,A1)
【文献】 特表2011−515127(JP,A)
【文献】 特開2011−245017(JP,A)
【文献】 特開2012−200552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 1/00
A61M 25/092
A61M 25/10
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具の体内への挿入を補助する筒状の処置具挿入補助具であって、
前記処置具を内部に挿入可能であるとともに前記処置具挿入補助具内に挿入可能な、少なくとも1つのインナーチューブ及び前記少なくとも1つのインナーチューブよりも小径である他のインナーチューブを含む複数のインナーチューブと、
前記処置具挿入補助具の内周面に、先端側から基端側にかけて軸方向に延設された、軸方向垂直断面が同一形状である複数の案内部材とを備え、
前記複数のインナーチューブのそれぞれは、外周面に、前記複数の案内部材のそれぞれに係合して摺動可能とする係合部材を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項2】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端に亘って設けられていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項3】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端における一部に設けられ、少なくとも一つは先端に設けられていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項4】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブは、外周面に親水性加工が施されていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項5】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブは、第1の内径を有する第1のインナーチューブと、第2の内径を有する第2のインナーチューブとからなることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項6】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記処置具挿入補助具の周壁内に先端側から基端側にかけて軸方向に埋設され、基端部を把持して前記処置具挿入補助具を任意方向に屈曲させるように操作可能な第1のワイヤー部材を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項7】
請求項6記載の処置具挿入補助具において、
前記第1のワイヤー部材の操作を一時的に固定する第1のワイヤー固定具を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項8】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブに固定され、基端部を把持して前記インナーチューブを任意方向に屈曲させるように操作可能な第2のワイヤー部材を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項9】
請求項8記載の処置具挿入補助具において、
前記第2のワイヤー部材の操作を一時的に固定する第2のワイヤー固定具を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項10】
請求項8記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブは、先端側に、前記第2のワイヤー部材の操作により屈曲可能な屈曲部を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項11】
請求項10記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブは、前記屈曲部における屈曲方向が限定されていることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項12】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記処置具挿入補助具の基端部に装着され前記インナーチューブを導入可能な第1の脱気防止用キャップを備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項13】
請求項12記載の処置具挿入補助具において、
前記第1の脱気防止用キャップは、前記処置具挿入補助具の基端部を閉塞し可撓性を有するシート部材を備え、前記シート部材は、厚さ方向に貫通し前記インナーチューブを導入するためのスリット部を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項14】
請求項12又は請求項13記載の処置具挿入補助具において、
前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端に亘って設けられ、
前記インナーチューブは、基端から第1の所定距離以内において、前記インナーチューブの外周面と前記係合部材の外周面との段差を埋める段差解消部を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項15】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブの基端部に装着され前記処置具を導入可能な第2の脱気防止用キャップを備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項16】
請求項15記載の処置具挿入補助具において、
前記第2の脱気防止用キャップは、前記処置具を導入可能な開閉弁であることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項17】
請求項1記載の処置具挿入補助具において、
前記処置具挿入補助具の外周側に、該処置具挿入補助具に対して進退自在に装着されるか又は該処置具挿入補助具を軸として回動可能に装着されるアウターチューブを備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項18】
請求項17記載の処置具挿入補助具において、
前記アウターチューブの外周面に設けられ、外周方向に突出するように膨張及び収縮自在の2つのバルーン部材とを備え、
前記2つのバルーン部材は、間に所定の間隙を備えることを特徴とする処置具挿入補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡、鉗子等の処置具を体内へ挿入する際に、その挿入を補助する筒状の処置具挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、処置具を体内へ挿入する際に、その挿入を補助する筒状の処置具挿入補助具であって、前記処置具を内部に挿入可能であるとともに前記処置具挿入補助具内に挿入可能な、少なくとも1つのインナーチューブ及び前記少なくとも1つのインナーチューブよりも小径である他のインナーチューブを含む複数のインナーチューブと、前記処置具挿入補助具の内周面に、先端側から基端側にかけて軸方向に延設された、軸方向垂直断面が同一形状である複数の案内部材とを備え、前記複数のインナーチューブのそれぞれは、外周面に、前記複数の案内部材のそれぞれに係合して摺動可能とする係合部材を備えることを特徴とする。
【0003】
従来、処置具挿入補助具として、イメージガイド管路、ライトガイド管路、処置用チャンネル管路、送気・送水用チャンネル管路等を形成する、インナーチューブとしての複数本の可撓性チューブを一体に固定したマルチルーメンチューブ内視鏡が知られている。
【0004】
前記処置具挿入補助具によれば、可撓性チューブによって管路の径及び形状を確保できるようにしたから、使用時における処置具の挿入性を向上することができるとされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−167531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、処置具挿入補助具は、インナーチューブの径よりも大径の処置具を挿入することができない上に、インナーチューブの超えた数の処置具を同時に使用することができないという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、インナーチューブの径や数を変更することができる処置具挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、処置具の体内への挿入を補助する筒状の処置具挿入補助具であって、前記処置具を内部に挿入可能であるとともに前記処置具挿入補助具内に挿入可能なインナーチューブと、前記処置具挿入補助具の内周面に、先端側から基端側にかけて軸方向に延設された複数の案内部材とを備え、前記インナーチューブは、外周面に、前記案内部材に係合して摺動可能とする係合部材を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の処置具挿入補助具は、前記案内部材が、前記処置具挿入補助具の内周面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設されているので、前記係合部材を前記案内部材に係合させて摺動させることにより、前記インナーチューブを回転させることなく前記処置具挿入補助具の内部に挿入することができる。前記処置具挿入補助具には前記案内部材が複数設けられているので、他の前記インナーチューブに対する位置を保持した状態で前記インナーチューブを前記処置具挿入補助具の内部に挿入することができる。そして、前記複数のインナーチューブのそれぞれに前記処置具を挿入することにより、複数の処置具を同時に使用することができる。
【0010】
また、本発明の処置具挿入補助具は、前記インナーチューブは、前記係合部材を介して前記案内部材をそれぞれ個別に摺動可能であるので、一のインナーチューブを前記処置具挿入補助具から引き出して、該一のインナーチューブが挿入されていた空間に、他のインナーチューブを前記処置具挿入補助具に挿入することができる。また、前記一のインナーチューブが挿入されていた空間に、該一のインナーチューブよりも小径である複数の他のインナーチューブを前記処置具挿入補助具に挿入することができる。
【0011】
したがって、本発明の処置具挿入補助具によれば、インナーチューブの径や数を自由に変更することができる。これにより、施術中に前記処置具を個別に交換して、所望の処置具を使用することができる。
【0012】
本発明の処置具挿入補助具において、前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端に亘って設けられていてもよく、或いは、前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端における一部に設けられ、少なくとも一つは先端に設けられているようにしてもよい。
【0013】
前者の場合には、前記インナーチューブを前記処置具挿入補助具内により円滑に挿入することができるとともに、該処置具挿入補助具内に装着済の他の前記インナーチューブに干渉することを確実に防ぐことができる。また、後者の場合には、前記処置具挿入補助具が屈曲している場合であっても、前記インナーチューブを前記処置具挿入補助具内により円滑に挿入することができる。
【0014】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記インナーチューブは、外周面に親水性加工が施されていることが好ましく、この場合には、インナーチューブの挿入をさらに容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記インナーチューブは、第1の内径を有する第1のインナーチューブと、第2の内径を有する第2のインナーチューブとからなるようにしてもよい。前記処置具の外径に適合する内径を有するインナーチューブを用いることにより、種々の処置具を前記処置具挿入補助具で使用することができる。
【0016】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記処置具挿入補助具の周壁内に先端側から基端側にかけて軸方向に埋設され、基端部を把持して前記処置具挿入補助具を任意方向に屈曲させるように操作可能な第1のワイヤー部材を備えることが好ましい。前記第1のワイヤー部材の基端部を把持して操作することにより、前記処置具挿入補助具を任意方向に屈曲させることができ、前記処置具挿入補助具の先端を所望の位置に向けることができる。
【0017】
また、前記第1のワイヤー部材を備える場合には、第1のワイヤー部材の操作を一時的に固定する第1のワイヤー固定具を備えることが好ましい。第1のワイヤー固定具によって第1のワイヤー部材の形状を一時的に固定して前記処置具挿入補助具の先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0018】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記インナーチューブに固定され、基端部を把持して前記インナーチューブを任意方向に屈曲させるように操作可能な第2のワイヤー部材を備えることが好ましい。前記第2のワイヤー部材の基端部を把持して操作することにより、前記インナーチューブの先端を任意方向に屈曲させることができ、前記を所望の位置に向けることができる。また、前記インナーチューブの先端が前記処置具挿入補助具内に収容されているときには、前記インナーチューブの屈曲に追従して前記処置具挿入補助具を屈曲させることができる。
【0019】
また、前記第2のワイヤー部材を備える場合には、第2のワイヤー部材の操作を一時的に固定する第2のワイヤー固定具を備えることが好ましい。第2のワイヤー固定具によって第2のワイヤー部材の形状を一時的に固定して前記インナーチューブの先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0020】
また、前記第2のワイヤー部材を備える場合には、前記インナーチューブは、先端側に、前記第2のワイヤー部材の操作により屈曲可能な屈曲部を備えることが好ましい。前記インナーチューブを前記屈曲部で屈曲させることにより、前記処置具での処置をより容易に行うことができる。
【0021】
また、前記インナーチューブは、前記屈曲部における屈曲方向が限定されていることが好ましい。前記構成によれば、前記インナーチューブを、施術者の意図する方向のみに屈曲させることができ、前記インナーチューブの操作をさらに容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記処置具挿入補助具の基端部に装着され前記インナーチューブを導入可能な第1の脱気防止用キャップを備えることが好ましい。前記第1の脱気防止用キャップによって、前記処置具挿入補助具の前記インナーチューブが挿入されていない箇所や挿入された前記インナーチューブの外周部から、体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。
【0023】
前記第1の脱気防止用キャップは、前記処置具挿入補助具の基端部を閉塞し可撓性を有するシート部材を備え、前記シート部材は、厚さ方向に貫通し前記インナーチューブを導入するためのスリット部を備えることが好ましい。前記インナーチューブが前記処置具挿入補助具に挿入されているときに、前記スリット部が前記インナーチューブ及び前記係合部材の外周面に密着することにより、体腔内を気密に維持することができる。
【0024】
また、前記第1の脱気防止用キャップを備えるとき、前記係合部材は、前記インナーチューブの外周面の先端から基端に亘って設けられるものであって、前記インナーチューブは、基端から第1の所定距離以内において、前記インナーチューブの外周面と前記係合部材の外周面との段差を埋める段差解消部を備えることが好ましい。
【0025】
前記係合部材が前記インナーチューブの外周面から突出することにより形成される段差が前記段差解消部によって解消されるので、体腔内をさらに気密に維持することができる。
【0026】
また、本発明の処置具挿入補助具において、前記インナーチューブの基端部に装着される前記処置具を導入可能な第2の脱気防止用キャップを備えることが好ましい。前記第2の脱気防止用キャップによって、前記処置具が挿入されていない前記インナーチューブから体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。前記第2の脱気防止用キャップとして、例えば開閉弁を用いることができる。
【0027】
ところで、本発明の処置具挿入補助具は、体表面の皮膚、粘膜に侵入路を開口し、開口部から体内へ挿入するようにして使用することもできるが、口腔等の自然開口部から挿入して、胃、腸等の消化管等の管腔壁に侵入路を開口し、開口部から管腔壁を経て体腔内に処置具を挿入し、治療を行う自然開口部越経管腔的内視鏡手術(NOTES)においても使用可能である。
【0028】
そこで、本発明の処置具挿入補助具において、前記処置具挿入補助具の外周側に該処置具挿入補助具に対して進退自在に装着されるか又は該処置具挿入補助具を軸として回動可能に装着されるアウターチューブを備えることが好ましい。
【0029】
また、前記アウターチューブは、前記処置具挿入補助具に対して進退自在に装着されているので、前記アウターチューブの位置を固定した状態で前記処置具挿入補助具のみを前進させて、前記処置具挿入補助具の先端を所望の位置へより近づけることができる。また、前記アウターチューブの位置を固定した状態で前記アウターチューブに対して前記処置具挿入補助具を回動させることにより、前記処置具挿入補助具先端部内に配置された前記インナーチューブを所望の位置に合わせることができる。
【0030】
また、アウターチューブを備えるとき、前記アウターチューブの外周面に設けられ、外周方向に突出するように膨張及び収縮自在の2つのバルーン部材とを備え、前記2つのバルーン部材は、間に所定の間隙を備えることが好ましい。
【0031】
前記アウターチューブの外周面に前記2つのバルーン部材を備えることにより、前記処置具挿入補助具を管腔壁に形成された開口部から体腔内へ挿入し前記間隙に前記管腔壁を位置させた後、前記2つのバルーンを膨張させて前記管腔壁を前記2つのバルーン部材で挟持して固定することができるとともに、前記前記処置具挿入補助具と前記開口部との間から空気や体液等が漏れ出すことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態の処置具挿入補助具を示す説明図。
図2】案内部材の断面を示す説明図であり、図2Aは断面が略台形の案内部材を示し、図2Bは断面が略円形の案内部材を示し、図2Cは断面が矩形の案内部材を示す。
図3】インナーチューブを示す説明図であり、図3Aは長尺の係合部材が設けられたインナーチューブを示し、図3B図3Aの断面を示し、図3Cは短尺の係合部材が設けられたインナーチューブを示す。
図4】インナーチューブの屈曲部を示す説明図であり、図4Aはパターン1の屈曲部を示し、図4Bは、図4AのB−B線における断面図であり、図4Cはパターン2の屈曲部を示す。
図5】インナーチューブの屈曲部を示す説明図であり、図5Aはパターン3の屈曲部を示し、図5B図5AのB−B線における断面図である。
図6】処置具挿入補助具の第1使用状態を示す説明図。
図7】処置具挿入補助具の第2使用状態を示す説明図。
図8】処置具挿入補助具用脱気防止キャップを示す説明図であり、図8Aは断面図、図8Bは平面図である。
図9】段差解消部を備えるインナーチューブを示す説明図であり、図9Aは斜視図であり、図9B図9AのB−B線における断面図。
図10】処置具挿入補助具用脱気防止キャップの使用状態を示す説明図であり、図10Aは段差解消用チューブが装着されていないインナーチューブでの使用状態を示し、図10Bは段差解消用チューブが装着されたインナーチューブでの使用状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0034】
図1に示す本実施形態の処置具挿入補助具1は、処置具の体内への挿入を補助するために用いられる。
【0035】
処置具挿入補助具1は、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等からなる可撓性を有する筒状体であり、内部に複数のインナーチューブ2a,2b,2c(2と略記することがある)を挿入可能である。また、処置具挿入補助具1は、内周面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された複数の案内部材3を備えている。
【0036】
案内部材3は、処置具挿入補助具1の内壁面に形成された蟻溝である。本実施形態では、前記蟻溝は、図2Aに示すように、開口部よりも奥側に広がった略台形の断面形状を備えるが、図2Bに示すように、開口部が矩形で奥側が略円形の断面形状を備えるものでもよく、図2Cに示すように、開口部、奥側ともに、矩形の断面形状を備えるものでもよい。
【0037】
また、処置具挿入補助具1の周壁面であって隣り合う案内部材3,3の間には、第1のワイヤー部材6が先端側から基端側にかけて軸方向に埋設されている。第1のワイヤー部材6は、処置具挿入補助具1の基端部よりも後方に延びていて、その基端部に設けられた第1のワイヤー部材用操作部15a(図6参照)を把持して操作することにより、処置具挿入補助具1を周方向に屈曲させてその先端部を所望の方向へ向けることができる。第1のワイヤー部材用操作部15aは、例えばラチェット機構(本発明の第1のワイヤー固定具に相当)によってその操作を一時的に固定することにより、第1のワイヤー部材6の形状を一時的に固定して処置具挿入補助具1の先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0038】
インナーチューブ2は、前記軟性プラスチックからなる可撓性を有する筒状体であり、内視鏡、鉗子等の処置具を内部に挿通可能である。インナーチューブ2は、前記処置具を挿入するためのチャネルを1つ有してもよく、2つ以上有してもよい。インナーチューブ2は外周面に親水性加工が施されている。
【0039】
インナーチューブ2は、本実施形態では、内径及び外径の大きい方から順に、第1の内径及び第1の外径を有する第1のインナーチューブ2aと、第2の内径及び第2の外径を有する第2のインナーチューブ2bと、第3の内径及び第3の外径を有する第3のインナーチューブ2cとからなる。インナーチューブ2a,2b,2cは、互いに色分けされて識別可能となっている。
【0040】
また、インナーチューブ2は、外周面の先端から基端に亘って、案内部材3に係合して摺動可能とする係合部材4と、挿入深さを把握するための目盛(図示せず)とを備えるとともに、先端部に屈曲可能な屈曲部19(図6参照)を備えている。各インナーチューブ2は、手技に応じて、処置具挿入補助具1内に挿入及び取り出し可能となっている。
【0041】
係合部材4は、インナーチューブ2の内径側から外径側へ向かうにつれて拡径する断面形状を備え、本実施形態では略台形の断面形状となっているが、案内部材3に係合可能であれば任意の形状とすることができる。
【0042】
係合部材4は、インナーチューブ2の先端から基端に亘って設けられているか、或いは、インナーチューブ2の外周面の先端から基端における一部に設けられ、少なくとも一つは先端に設けられたものとすることができる。本実施形態では、インナーチューブ2a,2bには、図3A,3Bに示すように、長尺の係合部材4がインナーチューブ2の先端から基端に亘って連続して設けられ、インナーチューブ2cには、図3Cに示すように、複数の短尺の係合部材4が先端から基端に亘って断続的に設けられている。また、図示しないが、係合部材がインナーチューブの外周の先端のみに設けられていてもよい。
【0043】
また、インナーチューブ2の係合部材4には、第2のワイヤー部材7が先端側から基端側にかけて軸方向に埋設されている。第2のワイヤー部材7は、インナーチューブ2の基端部よりも後方に延びていて、その基端部に設けられた第2のワイヤー部材用操作部15b(図6参照)を把持して操作することができる。第2のワイヤー部材7は、インナーチューブ2に固定されているものであればよく、係合部材4に埋め込まれる代わりに、インナーチューブ2の周壁部に埋め込まれていてもよく、インナーチューブ2の外周面に接着されていてもよい。
【0044】
第2のワイヤー部材7は、インナー内視鏡11又は処置具13のチューブ2の先端部が処置具挿入補助具1の先端から突出しているときには、インナーチューブ2の屈曲部19で周方向に屈曲させてその先端部を所望の方向に向けることができる。また、第2のワイヤー部材7は、インナーチューブ2の先端部が処置具挿入補助具1の先端から突出せずインナーチューブ2が処置具挿入補助具1内に収容されているときには、インナーチューブ2の屈曲に追従して処置具挿入補助具1を屈曲させることができる。
【0045】
第2のワイヤー部材用操作部15bは、例えばラチェット機構(本発明の第2のワイヤー固定具に相当)によってその操作を一時的に固定することにより、第2のワイヤー部材7の形状を一時的に固定してインナーチューブ2又は処置具挿入補助具1の先端部を所定の方向へ向けた状態を維持することができる。
【0046】
インナーチューブ2の屈曲部19は、周方向の任意の方向に屈曲可能であるものでもよく、特定の方向のみに屈曲するものであってもよい。特定の方向のみに屈曲する可能な屈曲部19は、例えば、図4,5に示す構成により実現できる。
【0047】
図4A,4Bに示すインナーチューブ2は、ポリプロピレンや塩化ビニル等の可撓性樹脂からなる先端側チューブ21及び基端側チューブ22と、チューブ21,22を接続し、チューブ21,22よりも可撓性が低い材料(例えばステンレス)からなるミドルチューブ23からなる。ミドルチューブ23の周壁部には、図4Bにおける上側の領域と下側の領域に、周方向に沿って外周面を貫通して形成され、ミドルチューブ23の周長の1/4程度の幅を有する略I字状の孔部24が3つずつ対向して設けられている。3つの孔部24がミドルチューブ23の長さ方向に並列することにより、ミドルチューブ23の外周面に孔あり部25が長さ方向に形成されるとともに、孔あり部25と孔あり部25との間に、孔部24が形成されていない孔なし部26が設けられている。さらに、係合部材4は、各孔部24に通じる孔部4aを備え、孔部4aでは第2のワイヤー部材7が露出している。
【0048】
この構成を備えることにより、図4A,4Bに示すインナーチューブ2は、第2のワイヤー部材用操作部15bの操作によって、屈曲部19において、孔あり部25の方向に屈曲してその先端部を特定の方向(ここでは、図4Bで矢示される上下方向)に向けることができるが、孔なし部26の方向に屈曲することはできないためその先端部を左右方向に向けることができなくなる。この構成によれば、施術者が所望する方向のみにインナーチューブ2の先端を向けることができる。
【0049】
特定の方向のみに屈曲する屈曲部19の構成は、図4Cに示すように、ミドルチューブ23の外周面に、図4Cにおける上側の領域に3つの孔部24を備えるとともに下側の領域に4つの孔部24を備え、それらの孔部24が互い違いになるように並ぶものであってもよい。
【0050】
また、図5A,Bに示すように、ミドルチューブ23の外周面であって図5Bにおける上側の領域及び下側の領域に、2つの略「?」字形状を脚部24aで連結した形状を有する孔部24を備えるものであってもよい。ここで、孔部24の脚部24aはミドルチューブ23の周方向に沿って形成されていて、複数の脚部24aが長さ方向に並列することにより孔あり部25が形成され、孔あり部25と孔あり部25との間に孔なし部26が形成される。孔なし部26には、孔部24の円弧状の部分24bが位置するものの、脚部24aは位置していない。このため、インナーチューブ2は、屈曲部19において孔なし部26の方向に屈曲されることはなく、孔あり部25の方向のみに屈曲されてその先端部を特定の方向(ここでは、図4Bで矢示される上下方向)に向けることができる。
【0051】
また、特定方向のみに屈曲可能な屈曲部19は、図示しないが、インナーチューブ2の先端から所定距離離間する部位の外周側に、インナーチューブ2よりも可撓性が低い材料からなるチューブが装着され、前記チューブが図4,5に示すような孔あり部及び孔なし部を備える、すなわち、前記チューブの周壁部に、周方向に沿って形成された孔部が長さ方向に並列する孔あり部を長さ方向に備え、孔あり部と孔あり部との間に、前記孔部が形成されていない孔なし部を備えるものであってもよい。
【0052】
さらに、図6に示すように、処置具挿入補助具1の外周面には、アウターチューブ8が処置具挿入補助具1に対して進退自在であって且つ処置具挿入補助具1を軸として回動可能に装着されている。アウターチューブ8は、前記軟性プラスチックからなる可撓性を有する筒状体であり、外周面には親水性加工が施されている。また、アウターチューブ8には、外周面の途中に、外周方向に突出するように膨張及び収縮自在の2つのバルーン部材9a,9bが設けられ、バルーン部材9a,9bには、送気装置に接続された送気チューブが接続されている。
【0053】
また、処置具挿入補助具1の基端部には、図示しない処置具挿入補助具用脱気防止キャップ(本発明の第2の脱気防止用キャップに相当)が装着され、各インナーチューブ2の基端部には、図示しないインナーチューブ用脱気防止キャップ(本発明の第2の脱気防止用キャップに相当)が装着されている(各キャップについては後述する)。処置具挿入補助具用脱気防止キャップによれば、処置具挿入補助具1のインナーチューブ2が挿入されていない箇所や挿入されたインナーチューブ2の外周部から、体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。インナーチューブ用脱気防止キャップによれば、処置具13が挿入されていないインナーチューブ2から体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。
【0054】
また、各インナーチューブ2の基端部には、処置具としての内視鏡11を操作するための内視鏡用操作部12と、処置具13a,13b(13と略記することがある)を操作するための処置具用操作部14と、第1のワイヤー部材6及び第2のワイヤー部材7を操作するための第1のワイヤー部材用操作部15a及び第2のワイヤー部材用操作部15bとが接続されている。
【0055】
次に、図1図6を参照して、処置具挿入補助具1の使用方法について説明する。本実施形態では、自然開口部越経管腔的内視鏡手術(NOTES)を行う場合について説明する。
【0056】
まず、処置具挿入補助具1にインナーチューブ2a,2b,2cが挿入された状態において、図6に示すように、患者の口にマウスピース16を装着し、マウスピース16から処置具挿入補助具1を挿入して、喉、食道を経て、処置具挿入補助具1の先端部を胃に到達させる。
【0057】
続いて、第1のインナーチューブ2aに内視鏡11を挿入し、第2のインナーチューブ2b及び第3のインナーチューブ2cには鉗子13a及びメス13bを挿入する。このとき、内視鏡11、鉗子13a及びメス13bは、処置具挿入補助具1の先端から突出せず処置具挿入補助具1内に埋没した状態となっている。
【0058】
次に、内視鏡用操作部12及び処置具用操作部14の操作により、内視鏡11、鉗子13a及びメス13bを処置具挿入補助具1の先端から突出させ、メス13bによって胃壁に侵入路としての開口部17を形成し、開口部17から胃壁外へ処置具挿入補助具1を侵入させる。
【0059】
そして、2つのバルーン部材9a,9bの間に胃壁を位置させ、バルーン部材9a,9
bを膨張させることにより、バルーン部材9a,9bによって胃壁を挟持して固定するとともに、開口部17の開口状態を維持する。
【0060】
さらに、アウターチューブ8から処置具挿入補助具1を突出させて前進させ、必要に応じて、第1のワイヤー部材用操作部15a及び第2のワイヤー部材用操作部15bによって第1のワイヤー部材6及び第2のワイヤー部材7を操作し、処置具挿入補助具1を周方向に屈曲させて先端部を所望の方向へ向けることにより、処置具挿入補助具1の先端部を腹部内臓の被処置部18へ対向させる。
【0061】
次に、第2のワイヤー部材用操作部15bによって第2のワイヤー部材7を操作して第2のインナーチューブ2b及び第3のインナーチューブ2cを屈曲部19で屈曲させることにより、インナーチューブ2b,インナーチューブ2cの先端部を所望の方向へ向け、被処置部18へ対向させる。続いて、インナーチューブ2の先端から鉗子13a及びメス13bを突出させることにより、処置を行う。
【0062】
このとき、被処置部18から処置具13の位置が離れている場合には、アウターチューブ8に対して処置具挿入補助具1を回動させることにより、必要な処置具13が挿通されたインナーチューブ2を所望の位置に合わせ、処置具13を被処置部18に近付けることができる。
【0063】
ところで、施術中に、例えば鉗子13aを他の処置具に交換したい場合がある。他の処置具の外径が鉗子13aの外径よりも小さい場合には、第2のインナーチューブ2bから鉗子13aを取り出して他の処置具を第2のインナーチューブ2bに挿入することにより、他の処置具に交換することができる。しかしながら、他の処置具の内径が第2のインナーチューブ2bの内径よりも大きい場合には、他の処置具を第2のインナーチューブ2bに挿入することができない。
【0064】
そこで、本実施形態の処置具挿入補助具1では、第2のインナーチューブ2bごと鉗子13aを引き出して、第2のインナーチューブ2bの内径よりも大きい内径を備える第1のインナーチューブ2aを挿入する。このとき、処置具挿入補助具1内に、第1のインナーチューブ2aを挿入可能な空間がない場合には、処置具挿入補助具1内に装着されている他のインナーチューブ2b,2cを引き出して前記空間を確保した後に、第1のインナーチューブ2aを挿入する。その後、第1のインナーチューブ2aに他の処置具を挿入することにより、他の処置具への交換が完了する。
【0065】
本実施形態の処置具挿入補助具1によれば、先端側から基端側にかけて軸方向に延設された案内部材3に、インナーチューブ2の係合部材4を係合させて摺動させることにより、処置具挿入補助具1内に装着されている他のインナーチューブ2に対する位置を保持した状態で、第1のインナーチューブ2aを円滑に挿入及び引き出すことができ、所望の処置具を使用できるようになる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の処置具挿入補助具1によれば、インナーチューブ2の径や数を自由に変更することができ、施術中に処置具13を個別に交換して、所望の処置具13を使用することができる。
【0067】
また、本実施形態の処置具挿入補助具1において、インナーチューブ2a,2bの係合部材4は、先端から基端に亘って設けられているので、インナーチューブ2a,2bを処置具挿入補助具1内に円滑に挿入及び引き出すことができる。また、インナーチューブ2cの係合部材4は、先端から基端に亘って断続的に設けられているので、処置具挿入補助具1全体が湾曲した状態であっても、円滑に挿入及び引き出すことができる。
【0068】
また、本実施形態の処置具挿入補助具1によれば、バルーン部材9a,9bを備えるアウターチューブ8が処置具挿入補助具1に対して進退可能であって回動可能に装着されているので、バルーン部材9a,9bで胃壁を挟持してアウターチューブ8を固定した後に、処置具挿入補助具1のみを前進させたり回動させることにより、処置具挿入補助具1の先端部を被処置部18へより近づけることができる。また、バルーン部材9a,9bで胃壁を挟持するので、開口部17から空気や体液等が漏れ出すことを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態では、処置具挿入補助具1にアウターチューブ8を装着して使用する方法について説明したが、アウターチューブ8を装着せずに使用することも可能である。
【0070】
また、本実施形態では、処置具挿入補助具1をNOTESで使用する方法について説明したが、体表面の皮膚、粘膜に侵入路を開口し、開口部から処置具挿入補助具1を体内へ挿入する場合においても使用可能である。
【0071】
また、本実施形態では、バルーン部材9a,9bによって管腔壁を挟持して固定して開口部17の開口状態を維持する(図6参照)が、バルーン部材9a,9bに代えて、図7に示すように開創器30を用いてもよい。開創器30としては、例えば、特開2014−39703号公報に開示された開創器を用いることができる。
【0072】
開創器30は、体腔内側に配置されるリング状の内側固定部材31と、体腔外側に配置されるリング状の外側固定部材(図示せず)と、内側固定部材31及び前記外側固定部材を接続して開口部(図示せず)を拡張して開口状態を維持する筒状の拡張部材32とを備え、前記外側固定部材に開創器用バルブキャップ33が装着されている。開創器用バルブキャップ33は、ポリウレタン等の可撓性材料からなり、前記外側固定部材の開口部を閉塞するシート部材34を備え、シート部材34に厚さ方向に貫通して設けられたスリット部(図示せず)を介して処置具挿入補助具1が導入される。
【0073】
次に、図7図10を参照して、処置具挿入補助具1に装着される処置具挿入補助具用脱気防止キャップ40、インナーチューブ2の基端に装着されるインナーチューブ用脱気防止キャップ50、及び、インナーチューブ2の基端に装着される段差解消用チューブ60について説明する。
【0074】
図8に示す処置具挿入補助具用脱気防止キャップ40は、円形の天蓋部材41と、天蓋部材41を処置具挿入補助具1に気密に装着する装着リング42とを備える。天蓋部材41は、天蓋部材の表面及び裏面に位置する2枚の表層側シート部材43a,43bと、表層側シート部材43a,43bの間に積層された2枚の内層側シート部材44a,44bとからなる。表層側シート部材43a,43bは、シリコーンゴム、ポリウレタン、ポリエチレン等の可撓性樹脂からなり、内層側シート部材44a,44bは、伸縮性を有するとともに表層側シート部材43a,43bに対する滑り性を有するポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の可撓性樹脂からなる。
【0075】
表面側の表層側シート部材43aは、インナーチューブ2が処置具挿入補助具1内に挿入可能な位置に、厚さ方向に貫通する第1の表層側スリット45aを備える。また、表面側の内層側シート部材44a、裏面側の内層側シート部材44b及び裏面側の表層側シート部材43aは、第1の表層側スリット45aに対応する位置に、それぞれ、第1の内層側スリット46a、第2の内層側スリット46b、第2の表層側スリット45bを備える。第1の表層側スリット45a、第1の内層側スリット46a、第2の内層側スリット46b及び第2の表層側スリット45bは、互いに交差するように形成されているので、インナーチューブ2を気密に導入することができる。
【0076】
さらに、図8及び図9に示すように、インナーチューブ2は、基端部であって第1の脱気防止用キャップ40に導入される部分に、インナーチューブ2の外周面と係合部材4の外周面との段差を埋める段差解消用チューブ60が装着されている。段差解消用チューブ60は、図9Bに示すように、外周面が略楕円形状となっていて、内周面はインナーチューブ2の外周面から係合部材4が突出することによって生じた段差を埋める形状となっている。
【0077】
処置具挿入補助具用脱気防止キャップ40に、段差解消用チューブ60が装着されていないインナーチューブ2を導入すると、インナーチューブ2の外周面から係合部材4が突出することによって生じた段差によって、図10Aに示すように、第1の内層側スリット46a及び第2の内層側スリット46bとインナーチューブ2の外周面又は係合部材4の外周面との間に大きな空隙が生じてしまう。
【0078】
一方、処置具挿入補助具用脱気防止キャップ40に、段差解消用チューブ60が装着されたインナーチューブ2を導入すると、段差解消用チューブ60によって前記段差が埋められるため、図10Bに示すように、第1の内層側スリット46a及び第2の内層側スリット46bと段差解消用チューブ60の外周面との間に生じる空隙を小さくすることができ、体腔内の気密性をさらに維持することができる。
【0079】
尚、図7に示すインナーチューブ2において、段差解消用チューブ60の基端側に第2のワイヤー部材用操作部15bが設けられていて、さらに基端側にインナーチューブ用脱気防止キャップ50が装着されている。
【0080】
インナーチューブ用脱気防止キャップ50は、外方から内方に向かって揺動可能な開閉弁(図示せず)を備え、前記開閉弁は、内視鏡11又は処置具13の導入に伴って内方へ開き、内視鏡11又は処置具13の引出しに伴って弁が閉じてインナーチューブ2を閉塞する。インナーチューブ用脱気防止キャップ50によれば、内視鏡11又は処置具13が挿入されていないインナーチューブ2から体腔内の空気が漏れ出ることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0081】
1…処置具挿入補助具、 2,2a,2b,2c…インナーチューブ、 3…案内部材、 4…係合部材、 6…第1のワイヤー部材、 7…第2のワイヤー部材、 8…アウターチューブ、 9a,9b…バルーン部材、 11,13…処置具、 19…屈曲部、 43a,43,44a,44b…第1のシート部材、第2のシート部材、 45a,45b,46a,46b…第1のスリット部、第2のスリット部、 40…第1の脱気防止用キャップ、 50…第2の脱気防止用キャップ、 60…段差解消部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10