【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1におけるレゾルバの角度位置検出装置を含むモータの制御装置のブロック図を示すものである。
【0027】
図1において、レゾルバ101は一相励磁二相出力の方式であり、モータ113の出力軸の一部に取り付けられる。レゾルバ101は略90度の位相差で振幅変調されたA相、B相の二相の信号を出力する。レゾルバの角度位置検出装置102は、この二相の信号からレゾルバの角度位置を検出し、サーボアンプ112に出力する。サーボアンプ112は検出された角度位置に従い、モータ113の制御及び駆動を行う。また、レゾルバの角度位置検出装置102からは励磁信号が出力され、バッファー回路111を経由してレゾルバ101を励磁する。
【0028】
次に、レゾルバの角度位置検出装置102の内部の構成について説明する。AD変換器103、AD変換器104(AD変換器はアナログデジタル変換器の略称)は、レゾルバ101の出力するA相、B相の各アナログ信号をそれぞれデジタル値に変換する。この変換するタイミングはサンプリング指令信号生成処理部107の出力するサンプリング指令信号に従う。AD変換器103、AD変換器104によってデジタル値に変換された信号はRD変換処理部105においてレゾルバ101の角度位置を示す信号に変換され、インターフェイス処理部110を経由してサーボアンプ112に出力される。サーボアンプ112は検出されたレゾルバ101の角度位置すなわち、モータ113の角度位置に従い、モータ113の制御及び駆動を行う。
【0029】
サンプリング指令信号生成処理部107は基準信号生成処理部108の出力する基準信号を元に所定の位相でAD変換器103、AD変換器104にサンプリング指令信号を出力する。また、励磁信号生成処理部109は基準信号生成処理部108の出力する基準信号を元に励磁信号を生成して出力する。
【0030】
以上のように構成されたモータの制御装置におけるレゾルバの角度位置検出装置について、以下にその動作、作用を説明する。
【0031】
図3(a)にレゾルバ101の出力するA相、B相の各信号を示す。A相、B相の各信号は一般に知られているように、レゾルバ内部において励磁信号(sinωt)を振幅変調した信号であり、互いに90度の位相差で振幅変調される。レゾルバ101の角度位置をθとすると、A相の信号は、Asinθsinωt、B相の信号は、Acosθsinωt で表せる。ここでAは信号の振幅を意味する。
【0032】
図3(b)に基準信号生成処理部108から出力される基準信号を示す。基準信号は励
磁信号生成処理部109に入力される励磁信号の元となる信号であり、レゾルバ101の出力するA相、B相の各信号と同一の周期で繰り返される信号である。また、励磁信号生成処理部109においては前記基準信号を入力し、これに同期した励磁信号を
図3(c)のように出力する。ここでは、基準信号がゼロとなる時刻to、t4及びその中間の時刻t2においてレゾルバ101の出力するA相、B相の各信号が振幅ゼロになると仮定する。
【0033】
時刻t0と時刻t2の中間の時刻t1及び時刻t2と時刻t4の中間の時刻t3において、レゾルバ101の出力するA相、B相の各信号の振幅は最大となり、一般的には時刻t1と時刻t3においてサンプリング指令信号生成処理部107からサンプリング指令信号が出力され、そのタイミングでデジタル値に変換された前記A相、B相の各信号の振幅がRD変換処理部105に入力されレゾルバの角度位置に変換する処理が行われる。この場合、励磁信号の周期の1/2の時間間隔でレゾルバの角度位置に変換する処理が行われる。
【0034】
上記一般的な方法以外の方式としては、時刻t0と時刻t1の中間の時刻t5、時刻t1と時刻t2の中間の時刻t6、時刻t2と時刻t3の中間の時刻t7、時刻t3と時刻t4の中間の時刻t8においてサンプリング指令信号生成処理部107からサンプリング指令信号が出力され、そのタイミングでデジタル値に変換された前記A相、B相の各信号の振幅がRD変換処理部105に入力されレゾルバの角度位置に変換する処理が行われる。この場合、励磁信号の周期の1/4の時間間隔でレゾルバの角度位置に変換する処理が行われる。
【0035】
以上のようにレゾルバの角度位置を検出し、それによりモータを制御することが出来る。
次に前述におけるRD変換処理部105の詳細とその効果について説明する。RD変換処理部105の内部の詳細を
図2に示す。
【0036】
図2に示すRD変換処理部はトラッキングループと呼ばれるものであり、レゾルバの角度位置検出装置において一般に良く用いられる構成である。レゾルバの角度位置の検出値をφとした時、第1のAD変換器103からのA相の信号は第1の乗算処理部201に入力され、余弦波テーブル205からの余弦波信号(cosφ)と乗算され出力される。また、第2のAD変換器104からのB相の信号は第2の乗算処理部202に入力され、正弦波テーブル206からの正弦波信号(sinφ)と乗算され出力される。
【0037】
差分処理部203においては前記第1の乗算処理部201の出力と前記第2の乗算処理部202の出力の差が演算され、偏差信号(sin(θ−φ))が、偏差リミッタ207を経由してPI制御器204に入力される。
【0038】
PI制御器204においてはその内部において積分処理の他、ゲイン乗算処理等が行われ、レゾルバの角度位置の検出値φとして出力される。レゾルバの角度位置の検出値φの値は余弦波テーブル205に入力され余弦波信号(cosφ)の値を出力し、また、正弦波テーブル206に入力され正弦波信号(sinφ)を出力する。
【0039】
前述において一般的には偏差リミッタ207は無く、偏差信号(sin(θ−φ))がPI制御器204に直接入力され、前述のように組まれたトラッキングループの作用によって、RD変換処理部105は入力されたA相、B相の信号からレゾルバの角度位置に変換する処理を行なうことが出来る。
【0040】
ただし、この場合、レゾルバ101の出力するA相、B相の各信号に重畳したノイズが
あった時、その影響によって偏差信号(sin(θ−φ))が変動し、そのため、レゾルバの角度位置の検出値φが変動する結果となる。
図6(b)にレゾルバ101の出力するA相の信号を示すが、
図6(a)に示すタイミングにおいてパルス性のノイズが重畳している。この場合、レゾルバは静止しているにも関わらず、前述の一般的なトラッキングループの処理においては、このノイズの影響を受け、
図6(c)に示すようにレゾルバの角度位置の検出値φが大きく変動している。
【0041】
偏差信号(sin(θ−φ))の例を
図4に示す。レゾルバの信号にノイズが重畳した場合、偏差信号は
図4に示す通り大きく変動する信号となる。しかしながら、偏差リミッタ207を備えた場合、制限値LMTを超えた偏差信号は偏差リミッタ207の作用により、制限値LMT以下の値に抑えられる。そのため、トラッキングループにおいては、その作用により、
図6(d)に示すようにレゾルバの角度位置の検出値φの変動量が極めて小さい結果となる。
【0042】
しかしながら、前記制限値LMTが固定値の場合、レゾルバが高速に回転した時を含めレゾルバの角度位置が変化した場合に偏差リミッタ207によって偏差信号の大きさが制限を受けるため応答性が悪化したり、トラッキングループが不安定となり発振的な動作となったりする恐れがある。そこで、偏差リミッタ207の制限値LMTを偏差信号の大きさに従って変化させる処理を組み込むことで応答性あるいは安定性を改善し実用的性能の優れたレゾルバの角度位置検出が可能となる。
【0043】
偏差リミッタ207の具体的な動作を
図5(a)〜(d)にて説明する。
図5(a)は偏差信号であり、偏差信号の大きさが時刻t0にて大きくなり、時刻t4にて小さくなる例を示している。偏差信号の大きさが現在の制限値を超えている時は偏差信号を現在の制限値で制限すると同時に制限値に所定の加算値だけ増加させ、逆に偏差信号の大きさが現在の制限値を超えていない時は偏差信号を制限しないで通過させ、制限値を所定の減算値だけ減少させる。
【0044】
前記所定の加算値と前記所定の減算値は同一値とした場合、制限値は
図5(b)のように変化する。また、偏差信号の大きさが
図5(a)に対しPだけ大きい場合、制限値は
図5(c)のようになり、時刻t0から時刻t2まで、時刻t4から時刻t6まで制限値の変化率は
図5(b)と同一となる。また、前記所定の加算値及び前記所定の減算値を小さくした場合、
図5(d)に示すように
図5(b)あるいは
図5(c)と比較して、制限値の変化率が小さくなる。
【0045】
前記所定の加算値及び前記所定の減算値は一般的にスルーレートと言われる値に相当する性質を有し、これらの値を変えることで、トラッキングループの応答性が変化するため、これらの値を調整することで所望の特性に調整することが可能である。
なお、前記所定の加算値と前記所定の減算値は異なる値とすることで、耐ノイズ性や応答性の微調整が可能となる。
【0046】
上述のとおりトラッキングループの偏差信号において偏差リミッタを設け、偏差信号が所定の制限値を超えた時に前記偏差信号の大きさを制限して出力する同時に前記所定の制限値を増加させ、偏差信号が所定の制限値を超えなかった時に前記所定の制限値を減少させる動作を行うことで、レゾルバの信号にノイズが重畳した場合、特にパルス性のノイズが重畳した場合において、レゾルバの角度位置の検出値φに与える影響を効果的に抑えることが出来、かつ、レゾルバが高速に回転した時を含め応答性や安定性を損なわず実用的性能の優れたレゾルバの角度位置検出が可能となる。